説明

近赤外線吸収組成物、及び近赤外線吸収塗布物

【課題】不可視性と近赤外線吸収能を有し、環境への悪影響が少なく、耐光性と耐湿熱性を具備する近赤外線吸収組成物、及び該組成物を含有する塗布物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される近赤外線吸収化合物と疎水性ポリマーとを少なくとも含有する近赤外線吸収組成物。


(式中、R1a及びR1bは同じであっても異なっても良く、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収組成物、及び近赤外線吸収塗布物に関し、詳しくは高い可視光透過率と耐光性及び耐湿熱性とを兼ね備えた近赤外線吸収組成物、及び近赤外線吸収塗布物に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外吸収色素は、プラズマディスプレイパネル(PDP)やCCD用の赤外線カットフィルムや熱線遮蔽フィルムとしての光学フィルター用途や、追記型光ディスク(CD−R)やフラッシュ溶融定着材料としての光熱変換材料用途、セキュリティーインクや、不可視バーコードインクとしての情報表示材料として用いられており、特に近赤外色素に特長的な性能として、近赤外領域に強い吸収を有することに併せて、目に見えないという不可視性への高い要求がある。また、同時に色素全般に要求される性能として高い堅牢性が要求されている。
【0003】
400nm〜700nmの波長領域に吸収をほとんど持たない不可視性に優れる色素としては、第一にシアニンメチン色素やそのJ会合体が挙げられるが、長いメチン共役鎖は、フレキシブルであるため異性化に伴う吸収形の変化や熱や酸素、求核剤との反応による分解が起こりやすく、堅牢性が低い。
剛直な骨格をもち高堅牢な近赤外吸収色素としては、日本触媒(株)から上市されているバナジルナフタロシアニン色素やBASF(株)から上市されているクオータリレン色素があるが、バナジルフタロシアニンは不可視性が不十分である。また、クオータリレンは溶液など分子分散状態では良好な不可視性を有するものの、濃度を上げると会合により可視域に吸収を生じ、不可視性が失われ、使用形態が限定される。
不可視性に優れ、赤外領域を広くカバーする色素としては、日本化薬(株)等から上市されているジインモニウム色素があるが、還元されやすく、堅牢性は不十分であり、使用形態が限定されてしまう。
このように、現在、不可視性と堅牢性を両立する近赤外色素は上市されておらず、これら性能を両立する近赤外吸収色素の開発が望まれている。
【0004】
一方、近赤外吸収色素の応用例として、特許文献1又は2には有機顔料を有機溶剤、バインダー樹脂とともに溶解または分散させて、フィルムに塗布することで、近赤外線吸収フィルター機能を有するフィルムを作製した例が知られている。
しかし、この使用態様は、有機溶剤を用いるために、環境への影響が大きいという欠点を有していた。また、製造設備も、防爆設備にする必要があり、高額な設備投資を必要とする方式である。
【0005】
さらに、特許文献3又は4に例示されるような水溶性染料を水溶性バインダー、具体的にはゼラチンとともに水に溶解し、フィルムに塗布することで、近赤外線吸収フィルター機能を有するフィルムにしてPDPに利用することが提案されている。
しかし、大量の有機溶剤を用いることなくフィルムに塗布可能な水溶性染料に関しては、耐久性、特に高温高湿度下で、近赤外線吸収能が低下する問題などがあり、改善が求められていた。
【特許文献1】特開平11−231126号公報
【特許文献2】特開2002−138203号公報
【特許文献3】特開平11−109126号公報
【特許文献4】特開2001-228324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い不可視性と近赤外線吸収能を有しながら、環境への悪影響が少なく、十分な耐光性と耐湿熱性とを具備する近赤外線吸収組成物、及び該近赤外線吸収組成物を含有する塗布物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、疎水性ポリマーからなるマトリックス(好ましくは、有機樹脂の水性分散物)中に近赤外線吸収化合物を存在させることで、該近赤外線吸収化合物の分解を抑制して耐久性を改善できることを見出した。また、近赤外線吸収化合物を分散微粒子化して用いることで、堅牢性を改善することができることを見出した。さらに、該近赤外線吸収組成物を含む塗布膜を作製する際に加熱乾燥を行うことで、塗布膜の堅牢性を改善することができることを見出した。これら知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明の課題は、下記の手段により解決された。
<1>下記一般式(1)で表される近赤外線吸収化合物と疎水性ポリマーとを少なくとも含有する近赤外線吸収組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1a及びR1bは同じであっても異なっても良く、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)
【0010】
<2>前記近赤外線吸収化合物が、水性分散微粒子状態で存在することを特徴とする<1>項に記載の近赤外線吸収組成物。
<3>前記疎水性ポリマーが、有機樹脂の水性分散物を形成してなることを特徴とする<1>または<2>項に記載の近赤外線吸収組成物。
【0011】
<4>前記疎水性ポリマーが、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の近赤外線吸収組成物。
<5>支持体上に、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の近赤外線吸収組成物を用いて形成された近赤外線吸収層を有することを特徴とする近赤外線吸収塗布物。
<6>前記近赤外線吸収層を形成する過程において、加熱乾燥を行うことを特徴とする<5>項に記載の近赤外線吸収塗布物。
<7>可視光線の吸収率が30%以下であることを特徴とする<5>又は<6>項に記載の近赤外線吸収塗布物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の近赤外線吸収組成物は、高い不可視性と近赤外線吸収能を有しながら、環境への悪影響が少なく、十分な耐光性と耐湿熱性を具備し、該近赤外線吸収組成物を含む塗布物を提供することができる。
また、本発明の近赤外線吸収組成物は、前記近赤外線吸収化合物と前記疎水性ポリマーとの水性分散物を用いることにより、塗設には、有機溶剤系塗布用設備等の煩雑な設備を要しない。加えて、有機溶剤の使用を著しく低減、ないしは、全く使用することなく製造可能であり、有機溶剤系塗布に比べて環境負荷の低減が可能である。
また、本発明の近赤外線吸収塗布物は、高温高湿下で保存後の近赤外線吸収能の低下や光による近赤外線吸収能の低下を抑制することができる。
さらにまた、本発明の近赤外線吸収塗布物は、耐久性にも優れた光学フィルターを低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の近赤外線吸収組成物は、前記一般式(1)で表される近赤外線吸収化合物と疎水性ポリマーとを少なくとも含有することを特徴とする。また適宜その他の材料を含んでもよい。前記疎水性ポリマーからなるマトリックス中に前記近赤外線吸収化合物を存在させることで、該近赤外線吸収化合物の分解を抑制して高堅牢な近赤外線吸収組成物を構成することができる。
【0014】
(i)近赤外線吸収化合物
以下、一般式(1)で表される近赤外線吸収化合物について説明する。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R1a及びR1bは同じであっても異なっても良く、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)
【0017】
一般式(1)中、R1a、R1bで表されるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30(本発明では、「A〜B」は、「A以上B以下」の意味で用いる。)、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
また、R1a、R1bで表されるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、o−メチルフェニル、p−メチルフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントリルなどが挙げられる。
1a、R1bで表されるヘテロアリール基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロアリール基であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子である。具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ナフトチアゾリル、ベンズオキサゾリル、m−カルバゾリル、アゼピニルなどが挙げられる。
一般式(1)中のR1a及びR1bは、互いに同一でも異なってもよい。
【0018】
2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。置換基としては例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントリルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0019】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、
【0020】
芳香族ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されていてもよい。
【0021】
2又はR3で表される電子吸引性基としては、好ましくはHammettのσp値(シグマパラ値)が0.2以上の電子吸引性基を表し、例えばシアノ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、ヘテロ環基などが挙げられる。これら電子吸引性基はさらに置換されていても良い。
【0022】
ハメットの置換基定数σ値について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Chem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページなどに詳しい。本発明におけるハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基とは電子求引性基であることを示している。σp値として好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.3以上であり、特に好ましくは0.35以上である。
【0023】
具体例としては、シアノ基(0.66)、カルボキシル基(-COOH:0.45)、アルコキシカルボニル基(-COOMe:0.45)、アリールオキシカルボニル基(-COOPh:0.44)、カルバモイル基(-CONH2:0.36)、アルキルカルボニル基(-COMe:0.50)、アリールカルボニル基(-COPh:0.43)、アルキルスルホニル基(-SO2Me:0.72)、またはアリールスルホニル基(-SO2Ph:0.68)などが挙げられる。本明細書において、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、括弧内の値は代表的な置換基のσp値をChem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページから抜粋したものである。
【0024】
さらに、R2及びR3が結合して環を形成する場合は、5ないし7員環(好ましくは5ないし6員環)の環を形成し、形成される環としては通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましく、その具体例としては例えば以下のものが挙げられる。
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオンなど。
(b)ピラゾリノン核:例えば1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オンなど。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オンなど。
(d)オキシインドール核:例えば1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドールなど。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えばバルビツル酸または2−チオバルビツル酸およびその誘導体など。誘導体としては例えば1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2−ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えばローダニンおよびその誘導体など。誘導体としては例えば3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオンなど。
(h)チアナフテノン核:例えば3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイドなど。
(i)2−チオ−2,5−チオゾリジンジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオンなど。
(j)2,4−チオゾリジンジオン核:例えば2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオンなど。
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノンなど。
(l)4−チアゾリジノン核:例えば2−エチルメルカプト−5−チアゾリン−4−オン、2−アルキルフェニルアミノ−5−チアゾリン−4−オンなど。
(m)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオンなど。
(n)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオンなど。
(o)イミダゾリン−5−オン核:例えば2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オンなど。
(p)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオンなど。
(q)ベンゾチオフェン−3−オン核:例えばベンゾチオフェン−3−オン、オキソベンゾチオフェンー3−オン、ジオキソベンゾチオフェンー3−オンなど。
(r)インダノン核:例えば1−インダノン、3−フェニル−1−インダノン、3−メチル−1−インダノン、3,3−ジフェニル−1−インダノン、3,3−ジメチル−1−インダノンなど。
【0025】
なお、環を形成する場合のR2及びR3のσp値を規定することができないが、本発明においてはR2及びR3にそれぞれ環の部分構造が置換しているとみなして、環形成の場合のσp値を定義することとする。例えば1,3−インダンジオン環を形成している場合、R2及びR3にそれぞれベンゾイル基が置換したものとして考える。
【0026】
2及びR3が結合して形成される環としては、好ましくは1,3−ジカルボニル核、ピラゾリノン核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核、2,4−チアゾリジンジオン核、2,4−イミダゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核、2−イミダゾリン−5−オン核、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェン−3−オン核、またはインダノン核であり、更に好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェン−3−オン核、またはインダノン核である。
【0027】
3はヘテロ環であることが特に好ましい。
一般式(1)中の2つのR2は、互いに同一でも異なってもよく、また、2つのR3は、互いに同一でも異なってもよい。
【0028】
4で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、R1a、R1bで説明した置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。R4で表される置換ホウ素の置換基は、R2及びR3について上述した置換基と同義であり、好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。また、R4で表される金属原子は、好ましくは遷移金属、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、又はスズであり、より好ましくはアルミニウム、亜鉛、スズ、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、イリジウム、又は白金であり、特に好ましくはアルミニウム、亜鉛、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、イリジウム、又は白金である。
4は、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。
一般式(1)中の2つのR4は、互いに同一でも異なってもよい。
【0029】
前記一般式(1)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される近赤外線吸収化合物である。
【0030】
【化3】

【0031】
(式中、Z1a及びZ1bは各々独立にアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。R5a及びR5bは各々独立に炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表し、R5a又はR5bとZ1a又はZ1bとが結合して縮合環を形成しても良い。R22及びR23は各々独立にシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜20の含窒素ヘテロアリール基を表し、又はR22及びR23が結合して環状酸性核を表す。R4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、R23と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、R31a及びR31bは各々独立に炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R32はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。R6及びR7は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数4〜10のヘテロアリール基を表し、R6及びR7は結合して環を形成してよく、形成する環としては炭素数5〜10の脂環、炭素数6〜10のアリール環、又は炭素数3〜10のヘテロアリール環である。R8及びR9は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数3〜10のヘテロアリール基を表す。Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表し、R及びR’は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表す。)
【0034】
【化5】

【0035】
(式中、R41a及びR41bは互いに異なる基を表し、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R42はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。Z2は−C=N−と共に含窒素ヘテロ5又は6員環を形成する原子団を表し、含窒素ヘテロ環としてはピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、これらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環、又はこれら縮環の複合体を表す。R44は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、Z2が形成する含窒素ヘテロ環と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)
【0036】
前記一般式(2)について説明する。
前記一般式(2)中、Z1a及びZ1bは各々独立にアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。形成されるアリール環、ヘテロアリール環は、前記一般式(1)におけるR2及びR3の置換基として説明したアリール基、ヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。Z1a及びZ1bは同一であることが好ましい。
5a及びR5bは各々独立に炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表す。具体例には、前記一般式(1)におけるR2及びR3で説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。R5a及びR5bは同一であることが好ましい。
5a又はR5bとZ1a又はZ1bとが結合し縮合環を形成しても良く、該縮合環としてはナフチル環、キノリン環などが挙げられる。
1a又はZ1bが形成するアリール環もしくはヘテロアリール環にR5a又はR5bで表される基を導入することで、不可視性を大きく向上することができる。
【0037】
22及びR23は各々独立にシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜20の含窒素ヘテロアリール基を表し、又はR22及びR23が結合して環状酸性核を表す。具体的には、前記一般式(1)におけるR2及びR3で説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。R4は前記一般式(1)におけるR4と同義であり、好ましい範囲も同様である。R4はR23と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。
【0038】
前記一般式(2)で表される化合物は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはR2及びR3の置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0039】
前記一般式(2)における好ましい組合せとしては、Z1a及びZ1bが各々独立にベンゼン環もしくはピリジン環を形成し、R5a及びR5bが各々独立にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基であり、R22及びR23が各々独立にヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はR22及びR23が結合した環状酸性核であり、R4が水素原子、置換ホウ素、遷移金属原子、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、スズである場合である。特に好ましい組合せとしては、Z1a及びZ1bが共にベンゼン環を形成し、R5a及びR5bが共にアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基であり、R22及びR23が各々独立に含窒素ヘテロ環基とシアノ基もしくはアルコキシカルボニル基との組合せ、又はR22及びR23が結合した環状酸性核であり、R4が水素原子、置換ホウ素、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、イリジウム、白金である場合である。
【0040】
前記一般式(3)について説明する。
一般式(3)中、R31a及びR31bは各々独立に炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表し、具体的には、前記一般式(1)におけるR1a及びR1bで説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。R31a及びR31bは同一であることが好ましい。
32はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0041】
6及びR7は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数4〜10のヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2及びR3の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R6及びR7は結合して環を形成してよく、形成する環としては炭素数5〜10の脂環、炭素数6〜10のアリール環、炭素数3〜10のヘテロアリール環であり、好ましい例としてはベンゼン環やナフタレン環、ビリジン環などが挙げられる。
6及びR7が置換した5員含窒素ヘテロ環を導入し、更にホウ素錯体とすることで、高い堅牢性、高い不可視性を両立する赤外線吸収色素を実現することができる。
【0042】
8及びR9は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数3〜10のヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2及びR3の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表す。R及びR’は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表し、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基である。
【0043】
前記一般式(3)における好ましい組合せとしては、R31a及びR31bが各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、ベンゼン環もしくはピリジン環であり、R32がシアノ基、アルコキシカルボニル基であり、R6及びR7が結合してベンゼン環もしくはピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環を形成し、R8及びR9が各々独立に炭素原子1〜6のアルキル基、フェニル基、ナフチル基であり、Xが酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−であり、R及びR’が各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基である場合である。特に好ましい組合せとしては、R31a及びR31bが共に炭素数1〜10のアルキル基またはベンゼン環であり、R32がシアノ基であり、R6及びR7が結合してベンゼン環もしくはピリジン環であり、R8及びR9が各々独立に炭素原子1〜6のアルキル基、フェニル基、ナフチル基であり、Xが酸素、硫黄である場合である。
【0044】
前記一般式(4)について説明する。
一般式(4)中、R41a及びR41bは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表し、具体的には、前記一般式(1)におけるR1a及びR1bで説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、R41a及びR41bは互いに異なる基を表す。
42はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
2は−C=N−と共に含窒素ヘテロ5又は6員環を形成する原子団を表し、含窒素ヘテロ環としてはピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、これらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環、又はこれら縮環の複合体を表す。
44は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子または置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、Z2が形成する含窒素ヘテロ環と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。
互いに異なるR41a及びR41bで表される基を導入し、Z2が−C=N−と共に形成する含窒素ヘテロ5又は6員環を導入することで、高い堅牢性および高い不可視性、優れた分散性、高い有機溶媒溶解性を付与することができる。
【0045】
前記一般式(4)における好ましい組合せとしては、R41a及びR41bが各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、ベンゼン環もしくはピリジン環であり、R42がシアノ基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルコキシカルボニル基であり、Z2が−C=N−と共にチアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、又はこれらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環を形成し、R44が水素原子、置換ホウ素、遷移金属原子、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、又はスズである場合である。特に好ましい組合せとしては、R41a及びR41bが各々独立に炭素数1〜10のアルキル基またはベンゼン環であり、R42がシアノ基であり、Z2が−C=N−と共にチアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、又はこれらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環を形成し、R44が水素原子、置換ホウ素(置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、ベンゼン環、ピリジン環、又はチオフェン環)、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、イリジウム、又は白金である場合である。
【0046】
以下に、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物(色素化合物)の具体例を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
次に、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物の合成法について説明する。
前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、該当するジケトピロロピロール化合物に、活性メチレン化合物を縮合させ、場合によっては、さらに、ホウ素や金属を反応させることで合成することができる。ジケトピロロピロール化合物は、「ハイパフォーマンス・ピグメンツ(High Performance Pigments)」,Wiley−VCH,2002年,160〜163ページに記載の方法で合成でき、より具体的な例としては米国特許第5,969,154号明細書や特開平9−323993号公報に記載の方法で合成できる。また、ジケトピロロピロール化合物と活性メチレン化合物との縮合反応やその後のホウ素化については、非特許文献Angewante Chemie International Edition of English,第46巻,第3750〜3753ページ(2007年)に従って合成できる。ホウ素化試薬はJ.Med.Chem.第3巻356〜360頁(1976年)を参考にして合成することができる。また、例えばブロモカテコールボランは東京化成工業社より購入して使用することができる。
【0058】
前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、特に限定されないが、好ましくは700〜1050nm、より好ましくは700〜1000nmに吸収極大を有する。前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、波長700nm以上1000nm以下の赤外線を選択的に吸収することが好ましい。
また、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、モル吸光係数εは特に限定されないが、好ましくは50,000〜300,000であり、より好ましくは100,000〜250,000である。
【0059】
前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、IR色素として好ましく用いることができる。不可視であるため化合物の色は透明であることが好ましいが、ごくわずかに緑色、灰色に着色していてもよい。
【0060】
本発明の近赤外線吸収組成物において、前記近赤外線吸収化合物の含有量は、赤外線遮蔽効果を有効に得るためには、透明樹脂(バインダー)固形分に対して5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上が好ましい。また、透明樹脂の物性を保つためには、赤外線吸収色素の量を50質量%以下に抑えることが好ましい。
【0061】
近赤外線吸収層の前記近赤外線吸収化合物は、水性分散微粒子状態で用いることが好ましい。
ここで、水性分散微粒子とは、分散媒としての水に分散させた微粒子をいう。
前記近赤外線吸収化合物を水性分散微粒子状態で用いると、微粒子内部にある化合物同士が会合することにより、前記近赤外線吸収層に高い耐光性と耐湿熱性とを付与できる。
【0062】
前記近赤外線吸収化合物の水性分散微粒子を作製する際、界面活性剤および分散剤を用いて分散の品質を向上させてもよい。界面活性剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性または非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0063】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。
【0064】
水性分散微粒子を作製する分散装置としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アトライター、超音波分散機、ディスパー等が挙げられる。
【0065】
微粒子の体積平均粒子径は10nm以上250nm以下であることが好ましく、20nm以上200nm以下であることがより好ましい。なお、微粒子の体積平均粒子径とは、微粒子そのものの粒子径、又は微粒子に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。
本発明において、微粒子の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150、商品名、日機装社製)を用いることができる。その測定は、微粒子分散体3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行う。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には微粒子の密度を用いる。
【0066】
顔料分散物中の粒子の数平均粒子径が10nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0067】
(ii)疎水性ポリマー
本発明の近赤外線吸収組成物は、前述のとおり、疎水性ポリマーを少なくとも含有することを特徴とする。
本発明の近赤外線吸収組成物に用いる前記疎水性ポリマーは1種類を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
【0068】
本発明の近赤外線吸収組成物に用いる前記疎水性ポリマーの分子量には特に制限はないが、通常、重量平均分子量で3000〜1000000程度のものが好ましい。重量平均分子量が3000未満のものは塗布層の強度が不十分になる場合があり、1000000を超えるものは塗布面状が悪い場合がある。
本発明に用いる前記疎水性ポリマーは、主成分が水である分散媒(本明細書では溶媒と呼ぶこともある)に疎水性の有機樹脂(ポリマー)が分散された有機樹脂(ポリマー)の水性分散物を形成してなることが好ましい。
前記溶媒中に含まれる水の含量は、30〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、70〜100質量%がさらに好ましい。水以外の溶媒としては、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランやブチルセロソルブなど、水に溶解性を有する溶剤が好ましく用いられる。
本発明の近赤外線吸収組成物において、前記疎水性ポリマーの含有量(好ましくは前記ポリマーの前記水性分散物の含有量)は、0.2〜10g/m2が好ましい。0.2g/m2未満の場合は、後述の近赤外線吸収塗布物を形成する際に近赤外線吸収層の膜強度や支持体との密着が弱くなる場合があり、10g/m2を超えると塗布性やムラ、高温高湿度下でのヘイズ上昇の問題を生じる場合がある。
疎水性の前記有機樹脂(ポリマー)としては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の種々のポリマーを使用することができる。但し、水溶性のポリマー(ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなど)だけを本発明においてバインダーとして用いることはできない。水溶性のポリマーだけをバインダーとして用いた場合、高温高湿度下での近赤外線吸収化合物が分解する問題がある。近赤外線吸収層に水溶性のポリマーを含有させる場合は、同一層に上記ポリマーの水性分散物が存在する必要があり、好ましくは該水性分散物が固形分として0.2〜10g/m2塗布されていることが好ましく、水溶性のポリマーを添加する場合、その量は0.2g/m2以下であることが好ましい。
後述の近赤外線吸収塗布物を形成する際に、有機樹脂(ポリマー)層の支持体との密着性を良好にする観点から、本発明の近赤外線吸収組成物に硬化剤(例えばカルボジイミド化合物)を含有させ、後述の近赤外線吸収塗布物を形成する際に、前記硬化剤により硬化させてもよい。本発明においては、良好な作業環境の維持、及び大気汚染防止の観点から、前記ポリマーもカルボジイミド化合物などの前記硬化剤も、エマルジョン形態の水性分散物の状態で使用することが好ましい。
また、前記ポリマーは、カルボジイミド化合物などの硬化剤との架橋反応が可能なように、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの架橋性基を含有することが好ましい。なかでも、水酸基及びカルボキシル基がより好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。前記ポリマー中の水酸基、カルボキシル基等の前記架橋性基の含有量は、0.0001〜1当量/kgが好ましく、特に0.001〜1当量/kgが好ましい。
【0069】
アクリル樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルのいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。上記アクリル樹脂は、上記組成を主成分とし、カルボジイミド化合物との架橋反応が可能なように、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーである。
【0070】
上記ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を挙げることができる。これらの中で、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくは、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。上記ビニル樹脂は、カルボジイミド化合物との架橋反応が可能なように、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル及びポリ酢酸ビニルでは、例えば、ビニルアルコール単位をポリマー中に残すことにより水酸基を有するポリマーとし、他のポリマーについては、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用することにより架橋可能なポリマーとする。
【0071】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)、ポリヒドロキシ化合物と多塩基酸との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール、ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール)、ポリカーボネート系ポリオール、及びポリエチレンテレフタレートポリオールのいずれか一種、あるいはこれらの混合物とポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。上記ポリウレタン樹脂では、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。
【0072】
上記ポリエステル樹脂としては、一般にポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と多塩基酸との反応により得られるポリマーが挙げられる。上記ポリエステル樹脂では、例えば、ポリオールと多塩基酸との反応終了後、未反応として残った水酸基、カルボキシル基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。勿論、水酸基等の官能基を有する第三成分を添加してもよい。
【0073】
上記ポリマーの中で、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましく、特にポリウレタン樹脂が好ましい。
【0074】
尚、前記ポリマーの前記水性分散物の分散状態としては、前記ポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持つもの等いずれでもよい。なお、本発明におけるポリマーの水性分散物(または単に水分散物と呼ぶ)については「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」等に記載されている。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限はなく、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0075】
なお、前記水分散物としては下記のような市販ポリマーを用いてもよい。
スーパフレックス830、460、870、420、420NS(第一工業製薬製ポリウレタン)、ボンディック1370NS、1320NS、ハイドランHw140SF、WLS201、WLS202、WLS213(大日本インキ化学工業製ポリウレタン)、オレスターUD350、UD500、UD600(三井化学製ポリウレタン)、ネオレッツR972、R966、R9660(楠本化成製ポリウレタン)、ファインテックスEs650、Es2200(大日本インキ化学工業製ポリエステル)、バイロナールMD1100、MD1400、MD1480(東洋紡製ポリエステル)、ジュリマーET325、ET410、AT−613、SEK301(日本純薬製アクリル)、ボンコートAN117、AN226(大日本インキ化学工業製アクリル)、ラックスターDS616、DS807(大日本インキ化学工業製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX110、LX206、LX426、LX433(日本ゼオン製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX513、LX1551、LX550、LX1571(日本ゼオン製アクリロニトリル−ブタジエンゴム)(いずれも商品名)。
【0076】
(iii)塗布膜
以下、本発明の近赤外線吸収塗布物(以下、近赤外線吸収塗布膜ということもある。)について説明する。
本発明の近赤外線吸収塗布膜は、前記近赤外線吸収化合物と前記ポリマーの前記水性分散物を含有する前記近赤外線吸収組成物を調製し、前記近赤外線吸収組成物を支持体上に塗布してなる近赤外線吸収層を形成することで作製できる。
前記近赤外線吸収層の塗布方法としては、例えばディップコート法、ローラーコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、ダイコート法などを選択できる。これらのコート法は連続加工を行うことができ、バッチ式の蒸着法などに比べて生産性が優れている。また、薄く均一な塗膜を形成できるスピンコート法も採用し得る。
塗布層を担持した支持体(例えば、ポリエステル等のプラスチックフィルム)は、逐次二軸延伸前、同時二軸延伸前、一軸延伸後で再延伸前、あるいは二軸延伸後のいずれであってもよい。塗布液を塗布するプラスチック支持体の表面は、あらかじめ紫外線照射処理、コロナ放電処理、グロー放電処理などの表面処理を施しておくことが好ましい。
なお、前記近赤外線吸収層は2層以上設けてもよい。近赤外線吸収層の膜厚は、1層当たり、近赤外線遮蔽効果を有効に得るために、0.1μm以上が好ましく、成膜時の溶媒が残留しにくい、成膜の操作性が容易であるなどの点から10μm以下が好ましく、特に0.3〜3μmであることが好ましい。
【0077】
本発明の近赤外線吸収塗布膜を作製する際には、塗設後に加熱乾燥を行うことが好ましい。加熱乾燥により、ポリマー同士が融着し、該塗布膜の耐光性と耐湿熱性を向上することができる。加熱乾燥条件として特に制限はないが具体的には、100〜150℃、1〜10分が好ましく、100〜130℃、1〜5分がより好ましい。
【0078】
本発明の近赤外線吸収塗布膜を透明支持体に塗設して光学フィルターを作製する場合、支持体としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、およびガラス板などを用いることができる。
上記プラスチックフィルムおよびプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
本発明においては、透明性、耐熱性、取り扱いやすさおよび価格の点から、上記プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルム又はトリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。
【0079】
例えばディスプレイ用の近赤外線吸収フィルターなど、透明性が要求される用途には、支持体の透明性は高いことが好ましい。この場合におけるプラスチックフィルムまたはプラスチック板の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフィルムおよびプラスチック板として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
本発明におけるプラスチックフィルムおよびプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
【0080】
本発明における支持体としてガラス板を用いる場合、その種類は特に限定されないが、ディスプレイ用電磁波シールド膜の用途として用いる場合、表面に強化層を設けた強化ガラスを用いることが好ましい。強化ガラスは、強化処理していないガラスに比べて破損を防止できる可能性が高い。さらに、風冷法により得られる強化ガラスは、万一破損してもその破砕破片が小さく、かつ端面も鋭利になることはないため、安全上好ましい。
【0081】
本発明の近赤外線吸収塗布物は、近赤外線領域における吸収率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また可視光領域(450nm〜650nm)の吸収率が30%以下(好ましくは20〜0%)であることが好ましい。
ここで、吸収率とは、λmaxにおける吸光度を100%としたときの、測定波長における吸光度を百分率で表した値をいう。
【0082】
(iv)その他の機能層
本発明の近赤外線吸収塗布膜に、必要に応じてさらに別の機能性を付与してもよい。又は近赤外線吸収層とは別に機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、ディスプレイ用電磁波シールド材用途としては、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層またはアンチグレア層(共にぎらつき防止機能を有する)、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋などの汚れを除去しやすい機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層などを設けることができる。これらの機能層は、銀塩含有層と支持体とを挟んで反対側の面に設けてもよく、あるいは同一面側に設けてもよい。
【0083】
(反射防止性・防眩性)
透光性電磁波シールド膜には、外光反射を抑制するための反射防止(AR:アンチリフレクション)性、または、鏡像の映り込みを防止する防眩(AG:アンチグレア)性、またはその両特性を備えた反射防止防眩(ARAG)性のいずれかの機能性を付与することが好ましい。
これらの性能により、照明器具等の映り込みによって表示画面が見づらくなってしまうのを防止できる。また、膜表面の可視光線反射率が低くすることにより、映り込み防止だけではなく、コントラスト等を向上させることができる。反射防止性・防眩性を有する機能性フィルムを透光性電磁波シールド膜に貼付した場合の可視光線反射率は、2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。
【0084】
上記のような機能性フィルムは、適当な透明基材上に反射防止性・防眩性を有する機能層を設けることにより形成することができる。
反射防止層としては、例えば、フッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、窒化物、硫化物等の無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したもの等で形成することができる。
【0085】
防眩性層としては、0.1μm〜10μm程度の微少な凹凸の表面状態を有する層から形成することができる。具体的には、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂に、シリカ、有機珪素化合物、メラミン、アクリル等の無機化合物または有機化合物の粒子を分散させインキ化したものを塗布、硬化することにより形成することが可能である。
粒子の平均粒径は、1〜40μm程度が好ましい。
また、防眩性層としては、上記の熱硬化型または光硬化型樹脂を塗布した後、所望のグロス値または表面状態を有する型を押しつけ硬化することによっても形成することができる。
防眩性層を設けた場合の透光性電磁波シールド膜のヘイズは0.5%以上20%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以上10%以下である。ヘイズが小さすぎると防眩性が不十分であり、ヘイズが大きすぎると透過像鮮明度が低くなる傾向がある。
【0086】
(ハードコート性)
近赤外線吸収フィルターに耐擦傷性を付加するために、機能性フィルムがハードコート性を有していることも好適である。ハードコート層としてはアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂等が挙げられるが、その種類も形成方法も特に限定されない。ハードコート層の厚さは、1〜50μm程度であることが好ましい。ハードコート層上に上記の反射防止層および/または防眩層を形成すると、耐擦傷性・反射防止性および/または防眩性を有する機能性フィルムが得られ好適である。
ハードコート性が付与された透光性電磁波シールド膜の表面硬度は、JIS(K―5400)に従った鉛筆硬度が少なくともHであることが好ましく、より好ましくは2H、さらに好ましくは3H以上である。
本発明において、透明支持体を挟んで近赤外線吸収層の反対側に、電磁波シールド層、ハードコート層、反射防止層および防眩性層の少なくとも1つを有することが好ましい。すなわち、透明支持体の一方の面に、近赤外線吸収層を先ず形成する。その後、透明支持体の他方の面に、電磁波シールド層、ハードコート層、反射防止層および防眩性層の少なくとも1つを形成する。なお、これらの全ての層を形成することが好ましい。
【0087】
(防汚性)
近赤外線吸収フィルターが防汚性を有していると、指紋等の汚れ防止や汚れが付いたときに簡単に取り除くことができるので好適である。
防汚性を有する機能性フィルムは、例えば透明基材上に防汚性を有する化合物を付与することにより得られる。防汚性を有する化合物としては、水および/または油脂に対して非濡性を有する化合物であればよく、例えばフッ素化合物やケイ素化合物が挙げられる。フッ素化合物として具体的には商品名オプツール(ダイキン社製)等が挙げられ、ケイ素化合物としては、商品名タカタクォンタム(日本油脂社製)等が挙げられる。
【0088】
(紫外線カット性)
近赤外線吸収フィルターには、後述する色素や透明基材の劣化等を防ぐ目的で紫外線カット性を付与することが好ましい。紫外線カット性を有する機能性フィルムは、透明基材自体に紫外線吸収剤を含有させる方法や透明基材上に紫外線吸収層を設けることにより形成することができる。
色素を保護するのに必要な紫外線カット能としては、波長380nmより短い紫外線領域の透過率が、20%以下、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。紫外線カット性を有する機能性フィルムは、紫外線吸収剤や紫外線を反射または吸収する無機化合物を含有する層を透明基材上に形成することにより得られる。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等、従来公知のものを使用でき、その種類・濃度は、分散または溶解させる媒体への分散性・溶解性、吸収波長・吸収係数、媒体の厚さ等から決まり、特に限定されるものではない。
【0089】
なお、紫外線カット性を有する機能性フィルムは、可視光線領域の吸収が少なく、著しく可視光線透過率が低下したり黄色等の色を呈したりすることがないことが好ましい。
また、機能性フィルムに後述する色素を含有する層が形成されている場合は、その層よりも外側に紫外線カット性を有する層が存在することが好ましい。
【0090】
以上に詳細に説明したように、本発明の赤外線吸収性組成物、及びそれを用いた塗布膜は、例えば、プラズマディスプレイ用フィルターとして、プラズマディスプレイの輝度を著しく損なわずに、ディスプレイから放射される800〜1000nm付近の近赤外線線を効率よくカットし、周辺電子機器のリモコン、伝送系光通信等が使用する波長に悪影響を与えず、それらの誤動作を防ぐことができる光学フィルターとして用いることができる。あるいは、耐光性と耐湿熱性に優れた近赤外線吸収フィルターを低環境負荷かつ低コストで提供することが出来る。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0092】
合成例1
[例示化合物(D−17)の調製]
下記スキームに従って、例示化合物(D−17)を調製した。
【0093】
【化16】

【0094】
まず、ジケトピロロピロール化合物(DPP)を、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゾニトリルを原料にして、米国特許第5,969,154号明細書に記載された方法に従って、合成した。
【0095】
ジケトピロロピロール化合物3グラム(1モル当量)とピリジンアセトニトリル1.6グラム(2.5モル当量)をトルエン60mL中で攪拌し、オキシ塩化リン6.5グラム(8モル当量)を加えて4時間加熱還流した。室温(25℃)に冷却してクロロホルム50mLと水20mLを加え、さらに30分攪拌した。分液操作により有機層を取り出し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒クロロホルム)で精製し、さらにクロロホルム/アセトニトリル溶媒を用いて再結晶し、目的化合物(D−17)を3.3グラム、収率70%で得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.35−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.95(d,4H),7.1(d,4H),7.4−7.5(m,4H),7.7(d,4H),7.75(d,2H),8.0(d,2H)
【0096】
合成例2
[例示化合物(D−10)の調製]
前記スキームに従い例示化合物(D−10)を調製した。
ジフェニルボリン酸2−アミノメチルエステル(1.4g、3モル当量)のトルエン溶液(1.2M)に塩化チタン(0.9mL、3モル当量)を添加し、30分間、外接温度100℃で攪拌した。次に、例示化合物(D−17)(2.3g)のトルエン混合液(0.2M)を添加し、さらに2時間加熱還流条件で攪拌した。室温まで冷やし、メタノールを加えたところ、結晶が析出したため、これをろ別し、クロロホルム/メタノールで再結晶を行い、例示化合物(D−10)を3.0g、収率93%で得た。
λmaxはクロロホルム中で779nmであった。モル吸収係数は、クロロホルム中、2.06×105dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.35−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.85(d,4H),6.45(s,8H),7.0(d,4H),7.15(m12H),7.2(m,2H),7.25(m,4H+4H),7.5(m,2H)
【0097】
合成例3
[例示化合物(D−28)の調製]
例示化合物(D−28)を、原料を代えたこと以外は前記と同様にして調製した。構造同定した1H−NMRを示す。
例示化合物(D−28)
1H−NMR(CDCl3):1.9(s,6H),6.65(d,2H),6.7−6.8(m,6H),6.95(m,8H),7.0−7.1(m,4H),7.25−7.35(m,12H),7.5(m,2H),7.85(d,2H)
λmaxはクロロホルム中で752nmであった。モル吸収係数は、クロロホルム中、1.53×105dm3/mol・cmであった。
なお、例示化合物(D−10)、(D−17)の溶液吸収スペクトルを図1に示す。
例示化合物(D−10)、(D−17)及び(D−28)はいずれも近赤外光の吸収性に優れ、400〜500nmの吸収が小さく、不可視性が更に優れることがわかった。
【0098】
実施例1
(近赤外線吸収化合物の水性分散微粒子の製造)
下記表1に示す種類及び質量部の、近赤外線吸収化合物と分散剤とに、水を加え500質量部とした。これにさらに0.1mmφのジルコニアビーズを500質量部添加し、遊星型ボールミルにて300rpmで5時間処理を行い、微細粒子からなる水性分散液を作製した。
その後、前記水性分散液からビーズを濾過で分離し、水性分散液A−1〜A−5を得た。ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150、商品名、日機装社製)によって水性分散液A中の微細粒子の粒径を測定した。平均粒径を下記表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
(近赤外線吸収膜の作製)
水性分散液A−1〜A−5に、下記表2に示す種類のポリマーを添加して、全体を100質量部とした塗布原液に純水を加えて濃度を調整し、ポリエチレンテレフタレート(PET)板に塗布した。さらに、下記表2に示す乾燥方法にて塗布膜を乾燥し、近赤外線吸収膜B−1〜B−17を作製した。なお、塗布液濃度は、得られた膜の吸収スペクトルを測定し、近赤外線吸収化合物のλmaxにおける光学濃度が1.5となるよう調整した。
図2に、近赤外線吸収膜B−4の吸収スペクトルを示す。
図2から明らかなように、λmaxは848nmであり、良好な赤外光吸収性が得られた。また、400〜700nmにほとんど吸収を有せず、優れた不可視性を有することがわかる。
【0101】
(耐光性試験)
得られた近赤外線吸収膜B−1〜B−17を、それぞれ22万ルクスのキセノンランプにて72時間照射した。近赤外線吸収膜B−1〜B−17の分光極大吸収波長における吸光度を測定し、光照射前のそれに対する残存比を求め、耐光性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0102】
(耐湿熱性試験)
得られた各近赤外線吸収膜B−1〜B−17を、60℃90%RTの湿熱試験機内に120時間、設置した。各近赤外線吸収膜B−1〜B−17の分光極大吸収波長における吸光度を測定し、湿熱試験前のそれに対する残存比を求め、耐湿熱性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0103】
【表2】

【0104】
表2から明らかなように、本発明の近赤外線吸収膜B−3〜B−6、B−8、B−9、B−11、B−12、B−14、B−15、B−17は、いずれも良好な耐光性、耐湿熱性を示した。特に、ウレタン樹脂からなるバインダーを用いて、加熱乾燥(130℃5分)を行って得た近赤外線吸収膜B−4、B−12、B−15はいずれも、極めて高い耐光性と耐湿熱性を示した。
【0105】
以上の結果、本発明の近赤外線吸収組成物およびそれにより得られた近赤外線吸収膜は、良好な近赤外線吸収性と不可視性を有すると共に高い耐光性と耐湿熱性を有する、という優れた特徴を有し、光学フィルターや情報記録材料として応用できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、例示化合物D−10及びD−28の溶液吸収スペクトルを表す。
【図2】図2は、実施例1で作製した近赤外線吸収膜B−4の吸収スペクトルを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される近赤外線吸収化合物と疎水性ポリマーとを少なくとも含有する近赤外線吸収組成物。
【化1】

(式中、R1a及びR1bは同じであっても異なっても良く、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)
【請求項2】
前記近赤外線吸収化合物が、水性分散微粒子状態で存在することを特徴とする請求項1に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項3】
前記疎水性ポリマーが、有機樹脂の水性分散物を形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項4】
前記疎水性ポリマーが、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項5】
支持体上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線吸収組成物を用いて形成された近赤外線吸収層を有することを特徴とする近赤外線吸収塗布物。
【請求項6】
前記近赤外線吸収層を形成する過程において、加熱乾燥を行うことを特徴とする請求項5に記載の近赤外線吸収塗布物。
【請求項7】
可視光線の吸収率が30%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の近赤外線吸収塗布物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−90313(P2010−90313A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263220(P2008−263220)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】