説明

退行性脳疾患を予防及び治療するためのハチ毒精製抽出物を含む組成物

本発明は、退行性脳疾患を予防及び治療するためのハチ毒精製抽出物を含む組成物、並びにその使用に関連する。退行性脳疾患の動物モデルを使用することによって、ハチ毒精製抽出物は、ミクログリア細胞の活性化、及び異常な循環行動に対する強力な阻害効果と、これらによる強力な細胞の保護活性を示し、薬剤として退行性脳疾患の治療及び予防に有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、退行性脳疾患を予防及び治療するためのハチ毒精製抽出物を含む組成物、並びにその使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
20世紀において、ヒトの平均寿命が、ライフサイエンスと医薬の急速な発展に伴って増加しているため、高齢者の人口比率の増加を含む新たな社会問題が顕著となっている。特に、脳卒中、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)等の老人性ニューロン疾患は、ニューロン系統の致命的な機能障害であり、増加している。
【0003】
特に、パーキンソン病は、脳の黒質緻密部のニューロン死によって生じ、ニューロン疾患を頻繁に生じる。特に、特発性パーキンソン病は、パーキンソン病患者間で80%超を占め、高齢者の重度の疾患によって生じる病因である(Ennio Espositoら:パーキンソン病の非ステロイド抗炎症剤(Non−steroidal anti−inflammatory drugs in Parkinson’s disease), Exp. Neurol., 205, pp295−312, 2007)。
【0004】
近年の高齢化社会により、パーキンソン病患者数はこれまで増加し、2013年の薬市場は、139%(すなわち、2006年と比較して23億7000万ドル(米ドル))増加すると考えられている。
【0005】
現在、パーキンソン病治療の代表的な薬剤であるレボドーパを使用する薬物治療は、これまで従来利用されている。しかしながら、例えば、一貫性のない投与の必要性、基本的な治療等に対する治療の限界又は不都合(例えば、ドーパミン投与によって生じたニューロン損傷、薬物不耐性による低減した薬剤の効能、不随意運動、悪化した運動障害、長期の薬物治療等に関連した他の逆作用の疾患等の治療後の合併症)といった幾つかの問題がある(Judith L.Miller:パーキンソン病入門(Parkinson’s disease primer), Geriatric Nursing, 23(2), pp69−73, 2002;Fabio Danisi:患者の機能と生活の質を改善するパーキンソン病治療の戦略(Parkinson’s disease−Therapeutic strategies to improve patient function and quality of life), Geriatrics, 57(3), pp46−50, 2002)。
【0006】
したがって、新たな抗パーキンソン病薬を開発すること、及び近年の開発が依然として必要であり、研究は、種々のメカニズム(例えば、ドーパミナージックス(dopaminergics)、ドーパミンアゴニスト、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、アデノシンa2a受容体拮抗剤;ドーパミン受容体アゴニスト、NMDA受容体アゴニスト、酸化防止剤、NSAID、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、神経栄養因子等の神経保護薬;及び、細胞/遺伝子治療、幹細胞分化、移植等の他の治療方法(Jun Takahashi:パーキンソン病の幹細胞治療(Stem cell therapy for Parkinson’s disease), Expert Rev. Neurother., 7(6), pp667−675, 2007))の態様に焦点を置いている。
【0007】
ハチ毒は、ミツバチ、バンブルビー(bumble bee)、コハナバチ等の種々のハチの腹部から滲出したハチの毒液であり、pH 5.2で苦味を有する弱い芳香族性を示す。ハチ毒が、NO、PGE2、TNF−a等の因子の増加によって生じる炎症経路、及び炎症性遺伝子の発現を妨げ、これによって、神経痛、リューマチ、背部痛等の種々の炎症性疼痛を治療することができる強力な抗炎症活性を発生させることが報告されている(Dong Ju Sonら:ハチ毒の抗関節炎、痛みの開放、及び抗癌作用の治療適用、並びにその構成化合物(Therapeutic application of anti−arthritis, pain−releasing, and anti−cancer effect of bee venom and its constituent compounds), Pharmacol. Therapeutics, 115, pp246−270, 2007)。約30%の乾燥生成物、及びメリチン、アパミン、ホスホリパーゼ、アドラピン(adolapine)、ヒアルロニダーゼ、ヒスチジン、ヒスタミン等の約75%のタンパク質が、室温での蒸発後に残存することが報告されている(Meier J.らの文献:動物毒の臨床中毒学(Clinical toxicology of animal venoms and poisons), CRC Press Inc., 1995)。
【0008】
しかしながら、上で引用した文献(それらの開示は引用により本明細書中に組み込まれる)のいずれにおいて、精製ハチ毒抽出物の退行性脳疾患の治療効果又は改善効果について、報告又は開示されていない。
【0009】
退行性脳疾患に対するハチ毒の治療効果を調査するために、本発明の発明者らは、退行性脳疾患の動物モデルを使用する神経保護活性、ミクログリア細胞活性化の阻害効果、及び異常なスピニングモータ等の幾つかの動物モデル試験、並びにヒト臨床実験と共にヒト神経芽腫SH−SY5Y細胞系を集中的に実行した。そして、ハチ毒精製抽出物が、退行性脳疾患の動物モデルを使用することによる、ミクログリア細胞の活性化、及び異常な循環行動に対する強力な阻害効果と、強力な細胞の保護活性を示すことを確認することによって、本発明を完了した。
【0010】
本発明のこれら及び他の目的は、以下に提供される本発明の詳細な開示から明らかになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Ennio Espositoら、Non−steroidal anti−inflammatory drugs in Parkinson’s disease, Exp. Neurol., 205, pp295−312, 2007
【非特許文献2】Judith L. Miller, Parkinson’s disease primer, Geriatric Nursing, 23(2), pp69−73, 2002
【非特許文献3】Fabio Danisi, Parkinson’s disease−Therapeutic strategies to improve patient function and quality of life, Geriatrics, 57(3), pp46−50, 2002
【非特許文献4】Jun Takahashi, Stem cell therapy for Parkinson’s disease, Expert Rev. Neurother., 7(6), pp667−675, 2007
【非特許文献5】Dong Ju Sonら、Therapeutic application of anti−arthritis, pain−releasing, and anti−cancer effect of bee venom and its constituent compounds, Pharmacol. Therapeutics, 115, pp246−270, 2007
【非特許文献6】Meier J.ら、Clinical toxicology of animal venoms and poisons, CRC Press Inc., 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ニューロン細胞を保護することによって退行性脳疾患を予防する治療有効量の有効成分としてのハチ毒精製抽出物を含む、医薬組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、哺乳動物又はヒトのニューロン細胞を保護することによって退行性脳疾患を治療及び予防する医薬組成物の調製のための上述した抽出物の使用も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、ニューロン細胞を保護することによって退行性脳疾患を治療及び予防する有効成分としてのハチ毒精製抽出物を含む、医薬組成物を提供することを目的とする。
【0015】
本明細書に開示される用語「精製抽出物」は、ミツバチ、バンブルビー(bumble bee)、コハナバチ等のハチ毒の粗精製抽出物及び精製抽出物(好ましくは、ミツバチのハチ毒精製抽出物)を含む。
【0016】
具体的には、上述のハチ毒粗精製抽出物は、次の工程を含む手順によって調製した抽出物を含み得る:ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を、水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール(好ましくは水)中で溶解した後、その溶液をろ過して、該溶液から不純物を除去し、凍結乾燥によってそのろ液を乾燥して、本発明のハチ毒粗精製抽出物を得る工程。
【0017】
上述のハチ毒精製抽出物は、次の工程を含む手順によって調製した抽出物を含み得る:上述の工程で調製した乾燥ハチ毒粗精製抽出物を、水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール(好ましくは水)中で溶解した後、その溶液を、塩析法、溶媒析出法、及び遠心分離又は透析を行うための透析膜ろ過から選択される少なくとも1つの精製工程に供し、凍結乾燥によってそのろ液を乾燥して、本発明のハチ毒精製抽出物を得る工程。
【0018】
好ましくは、該ハチ毒精製抽出物は、次の工程を含む手順によって調製した抽出物を含み得る:ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水中で溶解し、ろ過して不純物を除去し、凍結乾燥によって乾燥して、ハチ毒粗精製抽出物を得る工程(第1工程);と、第1工程で調製したハチ毒粗精製抽出物を、蒸留水等の溶媒中で溶解して、ハチ毒水溶性抽出物を得る工程(第2工程);と、その溶液を、膜透析を使用する透析膜ろ過に供して、該膜に含まれる精製抽出物を回収し、凍結乾燥によってそのろ液を乾燥して、本発明以外の他のハチ毒抽出物よりも強力な薬理効果のある、本発明のハチ毒精製抽出物を得る工程(第3工程)。
【0019】
非常に強力な薬理効果のある本発明のハチ毒精製抽出物は、有効成分として、約30%〜90%(w/w%)、好ましくは約35%〜80%(w/w%)、より好ましくは約40%〜60%(w/w%)の量のメリチンを含み得る。
【0020】
本発明は、ヒトを含む哺乳動物のニューロン細胞を保護することによる退行性脳疾患の治療及び予防のための治療剤の調製におけるハチ毒精製抽出物の使用を提供することを目的とする。
【0021】
本発明は、治療有効量のハチ毒精製抽出物を、医薬として許容し得るそのキャリアと共に、ヒトを含む哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物のニューロン細胞を保護することによって退行性脳疾患を治療又は予防する方法を提供することを目的とする。
【0022】
本明細書に開示される用語「退行性脳疾患」は、アルツハイマー型痴呆、脳血管性痴呆、Pick病、クロイツフェルト−ヤコブ病、頭部損傷によって生じた痴呆、パーキンソン病等、好ましくは、ミクログリア細胞の活性化過剰によって生じたパーキンソン病を含む。
【0023】
本発明のハチ毒精製抽出物は、詳細には次のように調製することができる。
【0024】
該ハチ毒精製抽出物は、次の工程を含む手順によって調製することができる: ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール(好ましくは水)中で溶解し、ろ過して不純物を除去し、凍結乾燥によって乾燥して、ハチ毒粗精製抽出物(以下、「HP−1」と表す)を得る工程(第1工程);と、第1工程で調製したハチ毒粗精製抽出物を、水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール(好ましくは水)中で溶解し、その溶液を、塩析法、溶媒析出法、及び遠心分離又は透析を行うための透析膜ろ過から選択される少なくとも1つの精製工程に供し、凍結乾燥によってそのろ液を乾燥して、本発明のハチ毒精製抽出物を得る工程(第2工程)。
【0025】
本発明の第1の好ましい実施態様において、本発明は、次の工程を含む手順によるハチ毒精製抽出物を調製する方法も提供する:ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール(好ましくは水)中で溶解し、ろ過して不純物を除去し、凍結乾燥によって乾燥して、10.2%のホスホリパーゼ、40.5%のメリチン、3.8%のアパミン、1.6%のヒスタミン、1.1%のドーパミン、及び0.3%のアドレナリンを含む、ハチ毒粗精製抽出物(以下、「HP−01」と表す)を得る工程。
【0026】
本発明の第2の好ましい実施態様において、本発明は、次の工程を含むハチ毒精製抽出物を調製する方法も提供する:ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール(好ましくは水)中で溶解し、ろ過して不純物を除去し、凍結乾燥によって乾燥して、ハチ毒粗精製抽出物を得る工程(第1工程);と、第1工程で調製したハチ毒粗精製抽出物を、蒸留水等の溶媒中で溶解して、ハチ毒水溶性抽出物を得る工程(第2工程);と、その溶液をゲルろ過クロマトグラフィに供した後、膜透析を使用するタンパク質透析膜ろ過に供して、塩析を行う工程(第3工程);と、該膜に含まれる精製抽出物を回収し、凍結乾燥によってそのろ液を乾燥して、12.4%のホスホリパーゼ、48.4%のメリチン、4.3%のアパミン、0.9%のヒスタミン、1.4%のドーパミン、及び0.4%のアドレナリンを含む、本発明のハチ毒粗精製抽出物(以下、「HP−01G」と表す)を得る工程(第4工程)。
【0027】
本発明の第3の好ましい実施態様において、本発明は、次の工程を含む手順によるハチ毒精製抽出物を調製する方法も提供する:ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール(好ましくは水)中で溶解し、ろ過して不純物を除去し、凍結乾燥によって乾燥して、ハチ毒粗精製抽出物を得る工程(第1工程);と、第1工程で調製したハチ毒粗精製抽出物を、蒸留水等の溶媒中で溶解して、ハチ毒水溶性抽出物を得る工程(第2工程);と、 その溶液を塩溶に供した後、硫酸アンモニウム等の塩を使用する塩析を行う工程(第3工程);と、その溶液を遠心分離及び凍結乾燥し、上清を得て、上清中に、<0.1%のホスホリパーゼ、<0.1%のメリチン、<0.1%のアパミン、8.4%のヒスタミン、3.1%のドーパミン、及び1.2%のアドレナリンを含み(以下、「HP−01AL」と表す)、そして、沈殿物中に、13.4%のホスホリパーゼ、53.6%のメリチン、5.1%のアパミン、<0.1%のヒスタミン、<0.1%のドーパミン、及び<0.1%のアドレナリンを含む(以下、「HP−01AP」と表す)、本発明のハチ毒精製抽出物を得る工程(第4工程)。
【0028】
本発明の第4の好ましい実施態様において、本発明は、次の工程を含む手順によるハチ毒精製抽出物を調製する方法も提供する:ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール(好ましくは水)中で溶解し、ろ過して不純物を除去し、凍結乾燥によって乾燥して、ハチ毒粗精製抽出物を得る工程(第1工程);と、第1工程で調製したハチ毒粗精製抽出物を、水、メタノール、エタノール若しくはブタノール等の低級アルコール、又はこれらの混合物から選択される析出溶媒(好ましくは50−90%エタノール、より好ましくは60−80%エタノール)中で溶解して、析出物を得る工程(第2工程);と、その溶液を遠心分離及び凍結乾燥し、上清を得て、上清中に、<0.1%のホスホリパーゼ、<0.1%のメリチン、<0.1%のアパミン、12.1%のヒスタミン、6.4%のドーパミン、及び2.2%のアドレナリンを含み(以下、「HP−01SL」と表す)、そして、沈殿物中に、7.8%のホスホリパーゼ、56.4%のメリチン、5.8%のアパミン、<0.1%のヒスタミン、<0.1%のドーパミン、及び<0.1%のアドレナリンを含む(以下、「HP−01SP」と表す)、本発明のハチ毒精製抽出物を得る工程(第3工程)。
【0029】
本発明の第5の好ましい実施態様において、本発明は、次の工程を含む手順によるハチ毒精製抽出物を調製する方法も提供する:ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール(好ましくは水)中で溶解し、ろ過して不純物を除去し、凍結乾燥によって乾燥して、ハチ毒粗精製抽出物を得る工程(第1工程);と、第1工程で調製したハチ毒粗精製抽出物を、水、メタノール、エタノール若しくはブタノール等の低級アルコール、又はこれらの混合物から選択される析出溶媒(好ましくは水)中で溶解する工程(第2工程);と、その溶液を、50kDaの膜フィルターを装備した超遠心分離機を使用する超遠心分離に供して、76.2%のホスホリパーゼ、<0.1%のメリチン、<0.1%のアパミン、<0.1%のヒスタミン、<0.1%のドーパミン、及び<0.1%のアドレナリンを含む、50kDaより高い高分子量のハチ毒精製抽出物(以下、「HP−02A50」と表す)を得る工程(第3工程);と、10kDa膜フィルターを装備した超遠心分離機を使用することによって、50kDa未満の低分子量の画分を再度遠心分離して、<0.1%のホスホリパーゼ、43.2%のメリチン、6.2%のアパミン、<0.1%のヒスタミン、<0.1%のドーパミン、及び<0.1%のアドレナリンを含む、10kDa〜50kDaの高分子量のハチ毒精製抽出物(以下、「HP−03」と表す)、並びに、<0.1%のホスホリパーゼ、<0.1%のメリチン、<0.1%のアパミン、12.8%のヒスタミン、8.1%のドーパミン、及び1.3%のアドレナリンを含む、10kDa未満の低分子量のハチ毒精製抽出物(以下、「HP−04」と表す)を得る工程。
【0030】
本発明の第6の好ましい実施態様において、本発明は、次の工程を含む手順によるハチ毒精製抽出物を調製する方法も提供する:ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール(好ましくは水)中で溶解し、ろ過して不純物を除去し、凍結乾燥によって乾燥して、ハチ毒粗精製抽出物を得る工程(第1工程);と、第1工程で調製したハチ毒粗精製抽出物を、蒸留水等の溶媒中で溶解して、ハチ毒水溶性抽出物を得る工程(第2工程);と、その溶液を、タンパク質透析膜を使用する透析に供する工程(第3工程);と、該膜内の溶液を回収し、該溶液を凍結乾燥して、0.2%のホスホリパーゼ、40.5%のメリチン、3.8%のアパミン、1.6%のヒスタミン、3.1%のドーパミン、及び0.3%のアドレナリンを含む、本発明のハチ毒精製抽出物(以下、「HP−05」と表す)を得る工程。
【0031】
したがって、本発明は、本発明のハチ毒精製抽出物を得るための上述の方法、及び上述の方法によって調製したハチ毒精製抽出物も提供する。
【0032】
本発明のハチ毒精製抽出物は、強力な薬理効果があり、有効成分として、約1%〜80%(w/w%)、好ましくは約3%〜50%(w/w%)、より好ましくは約5%〜20%(w/w%)の量のホスホリパーゼ;と、約30%〜90%(w/w%)、好ましくは約35%〜80%(w/w%)、より好ましくは約40%〜60%(w/w%)の量のメリチン;と、約0.1%〜30%(w/w%)、好ましくは約0.5%〜15%(w/w%)、より好ましくは約1.0%〜10%(w/w%)の量のアパミンと、を含み得る。
【0033】
退行性脳疾患の動物モデルを使用する神経保護活性、ミクログリア細胞活性化の阻害効果、及び異常なスピニングモータ等の幾つかの動物モデル試験、並びにヒト臨床実験と共にヒト神経芽腫SH−SY5Y細胞系によって、ハチ毒精製抽出物が、退行性脳疾患の動物モデルを使用する、ミクログリア細胞の活性化、及び異常な循環行動に対する強力な阻害効果と、強力な細胞の保護活性を示し、薬剤として退行性脳疾患の治療及び予防に有用であり得る。
【0034】
本発明の医薬組成物は、該組成物の全重量に基づいて、約0.01〜50重量%の上述の抽出物を含み得る。
【0035】
本発明の他の態様に基づいて、ニューロン細胞を保護することによる退行性脳疾患の治療及び予防のための上述の調製方法によって調製したハチ毒精製抽出物を含む、医薬組成物を提供する。
【0036】
本発明の別の態様は、ヒトを含む哺乳動物のニューロン細胞を保護することによる退行性脳疾患の治療及び予防のための治療剤の調製における上述の調製方法によって調製したハチ毒精製抽出物の使用である。
【0037】
本発明は、治療有効量のハチ毒精製抽出物を、医薬として許容し得るそのキャリアと共に、ヒトを含む哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物のニューロン細胞を保護することによって退行性脳疾患を治療及び予防する方法を提供することを目的とする。
【0038】
ニューロン細胞を保護することによる退行性脳疾患の治療及び予防のための本発明の組成物は、該組成物の全重量に基づいて、約0.01〜50重量%の上述の抽出物を含み得る。
【0039】
本発明の組成物は、当技術分野で周知の方法の使用に基づいて、従来のキャリア、補助剤又は希釈剤を更に含んでもよい。該キャリアは、使用方法及び適用方法によって、適切な材料として使用することが好ましいが、これに限定されない。適切な希釈剤は、レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Science)(Mack Publishing co, Easton PA)で一覧にて記載されている。
【0040】
次の製剤化方法及び賦形剤は、単なる例示であり、本発明を全く限定するものではない。
【0041】
本願の組成物を含む医薬製剤は、例えば、固形経口製剤として、凍結乾燥調製物、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤、エリキシル剤、丸剤、サシェ剤等の経口剤形;液状経口製剤として、懸濁剤、溶剤、乳剤、シロップ剤、水性薬剤等;クリーム、軟膏、ローション、ゲル、バーム、パッチ、ペースト、スプレー溶液、エアゾール等の局所用調製物;又は、例えば、坐薬、若しくは滅菌溶液、懸濁剤、凍結乾燥調製物、非水性型注射液等の注射可能な調製物、若しくは水性型注射液(好ましくは滅菌した注射可能な調製物)である、非経口剤形の任意の形態で調製することができる。
【0042】
本発明による組成物は、医薬として許容し得るキャリア、補助剤若しくは希釈剤(例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アラビアゴム、アルギン、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油)を含む、医薬組成物として提供することができる。該製剤は、溶媒、添加剤、希釈剤、緩衝剤、等張剤、安定剤、酸化防止剤、鎮痛剤、乳化剤、充填剤、凝集防止剤、滑沢剤、湿潤剤、着香料、保存剤等を更に含み得る。具体的には、該溶媒、添加剤又は希釈剤は、滅菌蒸留水、生理食塩水、pH調整剤、アルブミン、塩化ナトリウム、マンニトール、リンゲル液、グルコース等を含む。粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤、エリキシル剤、丸剤、サシェ剤等の該固形経口製剤は、本発明の抽出物と、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチン等の少なくとも1つの補助剤、必要な場合、製剤化するための付加的な添加剤として、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤を混合することによって、調製することができる。懸濁剤、溶剤、乳剤、シロップ剤、水性薬剤等の該液状経口製剤は、本発明の抽出物と、例えば、製剤化するための湿潤剤、着香料、甘味剤、保存剤、水若しくは流動パラフィン等の一般的な希釈剤以外の他のものである少なくとも1つの補助剤を混合することによって、調製することができる。該非経口剤形としては、例えば、滅菌溶液、懸濁剤、凍結乾燥調製物、非水性型注射液、若しくは水性型注射液といった注射可能な製剤は、基剤として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイル等の植物油、エチルオラート(ethyl olate)等の注射可能なエステルを使用することができる。また、該坐薬は、本発明において、基剤として、ウィテップゾール、マクロゴール、tween61、カカオ脂、ラウリン油、グリセリン−ゼラチン等を使用することができる。
【0043】
本発明の該組成物は、当技術分野で周知の任意の手順を行うことによって、患者への該組成物投与後の有効成分の急速放出、徐放、又は遅延放出を提供するように、製剤化することができる。
【0044】
例えば、本発明の組成物は、注射を製造するのに一般に使用する、油、プロピレングリコール、又は他の溶媒中で溶解することができる。キャリアの適切な一例は、生理食塩水、ポリエチレングリコール、エタノール、植物油、ミリスチン酸イソプロピル等を含むが、これらに限定されない。局所投与において、本発明の抽出物は、軟膏及びクリームの形態で製剤化することができる。
【0045】
医薬剤形の本発明の組成物は、それらの医薬として許容し得る塩の形態で使用することができ、また、単独又は適切な組み合わせで、及び他の薬学的に活性のある化合物と併用して、使用することもできる。
【0046】
本発明の抽出物又は組成物の望ましい用量は、対象の症状と体重、剤形、投与の経路と期間によって変動し、当業者によって選択することができる。しかしながら、望ましい結果を得るために、本発明の抽出物を、1マイクログラムから5 mg/日、好ましくは8マイクログラムから2mg/日、より好ましくは16マイクログラムから1mg/日の量で投与することが一般に推奨される。用量を単回で、又は1日当たり数回に分けて;周期的に(例えば、2日から1週の期間に1回)投与することができるが、これらに限定することは意図されない。本発明の範囲は、当業者によって想到することができる、すべての改良、又は投与量と投与回数の変更、投与経路を含み得る。組成物に関して、本発明の抽出物の量は、該組成物の全重量に基づいて、0.01〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%含み得る。
【0047】
本発明の医薬組成物は、種々の経路によって、哺乳動物(ラット、マウス、家畜又はヒト)等の対象動物に投与することができる。投与のすべての方法が考えられ、例えば、投与は、経口的に、直腸内に、又は静脈内、筋肉内、皮下、皮内、鞘内、硬膜外、若しくは脳室内注射によって、行うことができる。
【0048】
したがって、本発明の抽出物は、毒性及び悪影響がなく、安全に使用することができる。
【0049】
本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明の組成物、使用及び調製において種々の改良及び変更をすることができることは、当業者に明らかである。
【発明の効果】
【0050】
したがって、本発明の抽出物は、毒性及び悪影響がなく、安全に使用することができる。
【0051】
本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明の組成物、使用及び調製において種々の改良及び変更をすることができることは、当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本発明の上述及び他の目的、特徴及び他の利点は、次の添付の図面を採用すると共に、詳細な説明からより明確に理解される。
【0053】
【図1】図1は、HP−01、HP−05、及びメリチン標準のHPLCクロマトグラム比較を示す。
【図2】図2は、対照グループ、MPP+グループ、及び種々のHP−01、HP−05の濃度のSH−SY5Y細胞の細胞生存率を示す。
【図3】図3は、MPTP誘発パーキンソン病動物モデルにおける対照グループ、MPTPグループ、HP−01及びHP−05の神経保護活性の比較を示す(A:線条体(ST)及び黒質(SN)、B:SNのドーパミン作動性ニューロンの数の比較、C:STのTH染色強度の比較)。
【図4】図4は、MPTP誘発パーキンソン病動物モデルにおけるミクログリア細胞に対する対照グループ、MPTPグループ、HP−01及びHP−05の保護効果の比較を表す(矢印:CD11B陽性細胞)。
【図5】図5は、6−OHDA誘発パーキンソン病動物モデルにおける異常循環行動に対する対照グループ、6−OHDAグループ、HP−01及びHP−05の阻害効果の比較を示す。
【図6】図6は、6−OHDA誘発パーキンソン病動物モデルにおける対照グループ、6−OHDAグループ、HP−01及びHP−05の神経保護効果の比較を表す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明の組成物、使用及び調製において種々の改良及び変更をすることができることは、当業者に明らかである。
【0055】
本発明は、次の実施例によって、より明確に説明される。しかしながら、本発明が、いかなる方法においてこれらの実施例に限定されないことを理解する必要がある。
【0056】
次の参考例、実施例、及び試験例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明をさらに説明することが意図される。
【実施例】
【0057】
(実施例1.ハチ毒粗精製抽出物の調製)
ミツバチから回収した10.0gの乾燥ハチ毒を水中で溶解し、シリンジフィルター(Minisart RC 15, 0.20 microm, Sartorius社(Germany)製)を使用し、ろ過によって不純物を除去した。そのろ液を凍結乾燥装置(FDCF−12012, Operon社(Korea)製)で乾燥して、9.76gの乾燥ハチ毒粗精製抽出物(以下、「HP−01」と表す)を得た。乾燥粉末を次の試験の試験試料をして使用した。
【0058】
(実施例2.ゲルろ過クロマトグラフィを使用するハチ毒精製抽出物の調製)
実施例1で調製した乾燥粗精製抽出物100mgを、1.0mlの蒸留水(HPLC等級)中で溶解し、20画分を得るために、表1に開示した条件によって、ゲルろ過クロマトグラフィに供した。それぞれの画分をタンパク質透析膜(Spectra/por 7, Spectrum社(USA)製)に加え、該膜を、500mlの蒸留水(HPLC等級)の入った円筒状のガラスフラスコに浸漬して、90分間撹拌しながら透析を行った。透析による脱塩工程終了後、該膜内に含まれる脱塩溶液を、凍結乾燥機(FDCF−12012, Operon社(Korea)製)を使用して3日間凍結乾燥し、それぞれの精製画分を回収して、74mgのハチ毒精製抽出物(収率:74%)(以下、「HP−01G」と表す)を得た。
表1
【0059】

【0060】
表7に開示した条件によって、HPLCを使用して、HP−01及びHP−01Gの成分を分析した。その結果を表2に示した。
【0061】
表2のとおり、ホスホリパーゼ、メリチン、アパミン、ヒスタミン、ドーパミン、及びアドレナリンの量が、HP−01中にそれぞれ、10.2%、40.5%、3.8%、1.6%、1.1%及び0.3%、HP−01G中にそれぞれ、12.4%、48.4%、4.3%、0.9%、1.4%及び0.4%であることが確認された。
表2
【0062】

【0063】
(実施例3.塩析法を使用するハチ毒精製抽出物の調製)
実施例1で調製した乾燥粗精製抽出物100mgを、5.0mlの蒸留水(HPLC等級)中で溶解し、20mg/mlに調整し、30%硫酸アンモニウム溶液となるように、室温で1時間撹拌しながら、硫酸アンモニウムを滴下することによって、その溶液を塩溶に供した。その溶液をさらに室温で1時間撹拌し、80%溶液となるように、硫酸アンモニウムを滴下することによって、塩析に供した。
【0064】
その溶液を0℃で2時間静置して、十分な塩析時間を付与し、超速遠心分離機(Ultra 5.0, Hanil Science Medical社(Korea)製)を使用して、15,000rpmの速度で15分間遠心分離した。上清を回収し、沈澱を蒸留水5ml(HPLC等級)中で溶解し、それぞれを脱塩及び凍結乾燥して、19mgの上清精製抽出物(以下、「HP−01AL」と表す)と、62mgの沈澱精製抽出物(以下、「HP−01AP」と表す)を得た(全収率:81%)。
【0065】
HP−01AL及びHP−01APの成分を、HPLCを使用して、表7に開示した条件によって分析した。その結果を表3に示した。
【0066】
表3のとおり、ホスホリパーゼ、メリチン、アパミン、ヒスタミン、ドーパミン、及びアドレナリンの量が、HP−01AL中にそれぞれ、<0.1%、<0.1%、<0.1%、8.4%、3.1%及び1.2%、HP−01AP中にそれぞれ、13.4%、53.6%、5.1%、<0.1%、<0.1%及び<0.1%、HP−01中にそれぞれ、10.2%、40.5%、3.8%、1.6%、1.1%及び0.3%であることが確認された。
表3
【0067】

【0068】
(実施例4.溶媒析出法を使用するハチ毒精製抽出物の調製)
実施例1で調製した乾燥粗精製抽出物100mgを、2.5mlの蒸留水(HPLC等級)中で溶解し、−20℃に維持したエタノールをそれに加えて、10mlの75%(v/v)エタノールに調整した。
【0069】
その溶液を0℃で2時間静置して、十分な溶媒析出時間を付与し、超速遠心分離機(Ultra 5.0, Hanil Science Medical社(Korea)製)を使用して、15,000rpmの速度で15分間遠心分離した。上清及び沈澱物を回収し、それぞれを脱塩及び凍結乾燥して、13mgの上清精製抽出物(以下、「HP−01SL」と表す)と、69mgの沈澱精製抽出物(以下、「HP−01SP」と表す)を得た(全収率:82%)。
【0070】
HP−01SL及びHP−01SPの成分を、HPLCを使用して、表7に開示した条件によって分析した。その結果を表4に示した。
【0071】
表4のとおり、ホスホリパーゼ、メリチン、アパミン、ヒスタミン、ドーパミン、及びアドレナリンの量が、HP−01SL中にそれぞれ、<0.1%、<0.1%、<0.1%、12.1%、6.4%及び2.2%、HP−01SP中にそれぞれ、7.8%、56.4%、5.8%、<0.1%、<0.1%及び<0.1%、HP−01中にそれぞれ、10.2%、40.5%、3.8%、1.6%、1.1%及び0.3%であることが確認された。
表4
【0072】

【0073】
(実施例5.超速遠心分離機を使用するハチ毒精製抽出物の調製)
実施例1で調製した乾燥粗精製抽出物100mgを、10mlとなるように蒸留水(HPLC等級)中で溶解し、試料を50kDaの膜フィルターを装備したカートリッジに加えた(カートリッジ、Centrprep YM−50, Milipore社(USA)製)。該試料を、超速遠心分離機(Ultra 5.0, Hanil Science Medical社(Korea)製)を使用して、3,000Gの速度でさらに30分間遠心分離し、2つの異なる画分、すなわち、50kDaより高い分子量である高分子量画分(以下、「HP−02A50」と表す)と、50kDa未満の分子量である低分子量画分以下、「HP−02B50」と表す)を得た。
【0074】
該50kDa未満の分子量である低分子量画分を、10kDaの膜フィルターを装備したカートリッジに加えた(カートリッジ、Centrprep YM−10, Milipore社(USA)製)。試料を、超速遠心分離機(Ultra 5.0, Hanil Science Medical社(Korea)製)を使用して、3,000Gの速度でさらに30分間遠心分離し、2つの異なる画分、すなわち、10kDa〜50kDaの分子量である高分子量画分(以下、「HP−03」と表す)と、10kDa未満の分子量である低分子量画分以下、「HP−04」と表す)を得た。
【0075】
回収した画分を凍結乾燥し、10 mgのHP−02A50、62 mgのHP−03、及び12 mgのHP−04をそれぞれ得た(全収率:84%)。
【0076】
HP−02A50、HP−03及びHP−04の成分を、HPLCを使用して、表7に開示した条件によって分析した。その結果を表5に示した。
【0077】
表5のとおり、ホスホリパーゼ、メリチン、アパミン、ヒスタミン、ドーパミン、及びアドレナリンの量が、HP−02A50中にそれぞれ、76.2%、<0.1%、<0.1%、<0.1%、<0.1%及び<0.1%;HP−03中にそれぞれ、<0.1%、43.2%、6.2%、<0.1%、<0.1%及び<0.1%;及び、HP−04中にそれぞれ、<0.1%、<0.1%、<0.1%、12.8%、8.1%及び1.3%、HP−01中にそれぞれ、10.2%、40.5%、3.8%、1.6%、1.1%及び0.3%であることが確認された。
表5
【0078】

【0079】
(実施例6.透析法を使用するハチ毒精製抽出物の調製)
実施例1で調製した乾燥粗精製抽出物500mgを、電子天秤(CP225D, Sartorius社(Germany)製)で秤量し、2mlの蒸留水(HPLC等級)中で溶解した。試料をタンパク質透析膜(Spectra/por 7, Spectrum社(USA)製)に加え、該膜を、200mlの蒸留水(HPLC等級)の入った円筒状のガラスフラスコに浸漬して、90分間撹拌しながら透析を行った。透析による脱塩工程終了後、該膜内に含まれる脱塩溶液を、凍結乾燥機(FDCF−12012, Operon社(Korea)製)を使用して3日間凍結乾燥し、440mgのハチ毒精製抽出物(収率:88%)(以下、「HP−05」と表す)を得た。
【0080】
HP−05の成分を、HPLCを使用して、表7に開示した条件によって分析した。その結果を表6に示した。
【0081】
表6のとおり、ホスホリパーゼ、メリチン、アパミン、ヒスタミン、ドーパミン、及びアドレナリンの量が、HP−05中にそれぞれ、10.2%、40.5%、3.8%、1.6%、1.1%及び0.3%、HP−01中にそれぞれ、10.2%、40.5%、3.8%、1.6%、1.1%及び0.3%であることが確認された。
表6
【0082】

【0083】
(試験例1.メリチンの量の測定)
ハチ毒の主成分であるメリチンの量を測定するために、ハチ毒のメリチンの量を、HPLCを使用して、表7に開示した条件によって測定した。その結果を次の数式1を使用して分析した。
【0084】
数1
AM(%)=AT(mg) X PS(%)/100 X (PMSM)/(PMST) X 100/ASS(mg)
AM:メリチン(C1312293931)の量
AT:標準の量
PS:標準の純度
PMSM:試料中のメリチンのピーク面積
PMST:標準中のメリチンのピーク面積
ASS:サンプリング試料の量
表7
【0085】

【0086】
図1のとおり、HP−01及びHP−05中のメリチンの量はそれぞれ、40.5%及び43.7%である。
【0087】
(試験例2.神経芽腫細胞系を使用するハチ毒の神経保護活性)
ハチ毒抽出物の神経保護活性を評価するために、ヒト神経芽腫SH−SY5Y細胞を使用して、手順(Yoshihisa Kitamuraら:1−メチル−4−フェニルピリジニウム誘発ヒト神経芽腫SH−SY5Y細胞のアポトーシス死に対する抗パーキンソン病薬の保護効果(Protective effects of the anti−Parkinsonnian drugs Talipexole and Pramipexole against 『c(1−methyl−4−phenypyridinium−induced)c』 apoptotic death in human neuroblastoma SH−SY5Y cells), Mol. Pharmacol., 54 pp1046−1054, 1998)に開示された改良手順によって、実施例で調製したハチ毒抽出物の神経保護活性を測定した。
【0088】
ヒト神経芽腫SH−SY5Y細胞系(韓国細胞株バンク、大韓民国)を、10%ウシ胎仔血清及び1%抗生物質−抗真菌剤溶液を含有する最小必須培地で、37℃、6% CO雰囲気下で培養した。
【0089】
細胞を48穴プレートで、1×10 cells/wellの濃度で24時間培養し、種々の濃度のHP−01(0, 1, 10, 100ng/ml)及びHP−05(0.88, 8.8, 88ng/ml)で処理し、3時間培養した。
【0090】
1mM MPP+(N−メチル−4−フェニルピリジニウムイオン;Sigma社(USA)製)で処理し、24時間培養した。5gのMTT溶液(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド;Sigma社(USA)製)を、5 mg/mlとなるように1LのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中で溶解し、該細胞を0.05 mg/wellになるように37℃で4時間処理した。培養後、分光計(Spectramax Gemini XPS,Molecular device社(USA)製)を使用して、540nmで、試料の吸光度を測定した。
【0091】
結果としては、図2のとおり、HP−01及びHP−05が共に、ニューロン細胞死を顕著に阻害し、強力な神経保護活性を有することが確認された(図2参照)。
【0092】
(試験例3.MPTP誘発退行性脳疾患動物モデルを使用するハチ毒の神経保護活性)
ハチ毒抽出物の神経保護活性を評価するために、MPTP誘発退行性脳疾患動物モデルを使用して、手順(Vernice Jackson−Lewis及びSerge Przedborski:パーキンソン病のMPTPマウス方式のプロトコル(Protocol for the MPTP mouse mode of Parkinson’s disease), Nature Protocols, 2(1) pp.141−151, 2007)に開示された改良手順によって、実施例で調製したハチ毒抽出物の神経保護活性を測定した。
【0093】
体重23〜26gの12週齢の雄C57BL/6マウス(Samtako社(Korea))を、使用前に1週間環境に順応させた。飼育部屋を自動照明システムによって、午前7時から午後7時までの12時間、温度を24℃に調整して制御し、該マウスに、水及び餌を自由に利用できるようにした。
【0094】
パーキンソン病誘発動物モデルを用意するために、該マウスに、食塩水中MPTP(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、30mg/kg;Sigma社(USA)製)を、0.02mlの0.05%試料液(HP−01、HP−05)と共に、24時間毎に5日間、筋肉内注射した。同様に、負の対照として、食塩水を該マウスに注射した。MPTP誘発によるドーパミン作動性ニューロン系統が損傷するか否か、及びハチ毒処置が該系統を保護することができるか否かについて調査するために、MPTP処置の終了時に、免疫組織化学的染色法を使用して、線条体(ST)及び黒質(SN)のTH(チロシンヒドロキシラーゼ)発現の変化を観察した。
【0095】
結果としては、図3のとおり、HP−01及びHP−05で処置したグループが、MPTP単独処置グループ(パーキンソン病誘発グループ)と比較して、強力な神経保護活性を示すが、TH陽性グループの数、及びMPTPで腹腔内処置したグループのニューロンは、線条体(ST)及び黒質(SN)で急激に減少することが確認された(図3参照)。
【0096】
MPTP処置グループの黒質(SN)に含まれるTH陽性細胞の数は、正常グループと比較して、顕著に減少したが、HP−01で処置したグループは、ドーパミン作動性ニューロンに対して保護効果を示した。特に、HP−05で処置したグループは、試料中で最も強力な神経保護活性を示し(MPTPに対してp< 0.05)、また、該HP−05で処置したグループは、MPTP処置グループと比較して、吸光度(OD)の値が増加する傾向を示した。したがって、HP−01及びHP−05が共に、退行性脳疾患とパーキンソン病の治療に有用であり得ることが確認された。
【0097】
(試験例4.MPTP誘発退行性脳疾患動物モデルを使用する、ミクログリア細胞の活性化に対するハチ毒の阻害効果)
ミクログリア細胞の活性化に対するハチ毒抽出物の阻害効果を評価するために、MPTP誘発退行性脳疾患動物モデルを使用して、手順(Vernice Jackson−Lewis及びSerge Przedborski:パーキンソン病のMPTPマウス方式のプロトコル(Protocol for the MPTP mouse mode of Parkinson’s disease), Nature Protocols, 2(1) pp.141−151, 2007;Erwin bezardら:パーキンソン病の遅い発達を再生する慢性MPTPモデル;サルの非運動症状の発達(A chronic MPTP model reproducing the slow evolution of Parkinson’s disease; evolution of motor symptoms in the monkey), Brain Res., 766 pp.107−112, 1997)に開示された改良手順によって、実施例で調製したハチ毒抽出物の阻害効果を決定した。
【0098】
体重23〜26gの12週齢の雄C57BL/6マウス(Samtako社(Korea))を、使用前に1週間環境に順応させた。飼育部屋を自動照明システムによって、午前7時から午後7時までの12時間、温度を24℃に調整して制御し、該マウスに、水及び餌を自由に利用できるようにした。
【0099】
パーキンソン病誘発動物モデルを用意するために、該マウスに、食塩水中MPTP(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、30mg/kg;Sigma社(USA)製)を、0.02mlの0.05%試料液(HP−01、HP−05)と共に、24時間毎に5日間、筋肉内注射した。同様に、負の対照として、食塩水を該マウスに注射した。MPTP誘発によるドーパミン作動性ニューロン系統が損傷するか否か、及びハチ毒処置が該系統を保護することができるか否かについて調査するために、MPTP処置の終了後7日目で、免疫組織化学的染色法を使用して、線条体(ST)及び黒質(SN)のCD11Bで染色されたミクログリア細胞の変化を観察した。
【0100】
結果としては、図4のとおり、HP−01で処置したグループのミクログリア細胞、TH陽性細胞、及びニューロン細胞の数が顕著に減少し、また、HP−05で処置したグループは、いずれの細胞で減少を示さなかったが、多くのミクログリア細胞は、MPTP処置グループでみられた(図4参照)。
【0101】
HP−01及びHP−05の分子生物学的機構を検討するために、CD11Bの変化、ミクログリア細胞マーカーを決定し、MPTP誘発パーキンソン病動物モデルのミクログリア細胞の活性が増加したが、HP−05で処置したグループは、ミクログリア細胞の活性を示さなかった。結果では、HP−05が、脳の炎症反応だけでなく、ミクログリア細胞の活性化も阻害することが確認された。
【0102】
(試験例5.6−OHDA誘発退行性脳疾患動物モデルを使用する、異常な循環行動の変化に対するハチ毒の阻害効果)
異常な循環行動の変化に対するハチ毒抽出物の阻害効果を評価するために、6−OHDA誘発退行性脳疾患動物モデルを使用して、手順(Andreas Schober:パーキンソン病の古典的毒素誘発動物モデル:6−OHDA及びMPTP(Classic toxin−induced animal models of Parkinson’s disease: 6−OHDA and MPTP), Cell Tissue Res., 318 pp.215−224, 2004)に開示された改良手順によって、実施例で調製したハチ毒抽出物の効果を決定した。
【0103】
体重200〜220gの雄SDラット(Samtako社(Korea))を、使用前に1週間環境に順応させた。飼育部屋を自動照明システムによって、午前7時から午後7時までの12時間、温度を24℃に調整して制御し、該ラットに、水及び餌を自由に利用できるようにした。
【0104】
パーキンソン病誘発動物モデルを用意するために、ペントバルビタール注射(50mg/kg、腹腔内)を、麻酔として使用し、6−OHDA溶液(25μg/4μl、0.01% L−アスコルビン酸含有、Sigma社(USA)製)を、使用前に、暗くした冷蔵庫に保存した。6−OHDAを、25μg/4μlの用量で、1μl/分の速度で、26ゲージのHamiltonシリンジによって、特定の脳領域(前頂部に基づいて、AP−0.7mm,ml−2.6mm,V−4.5mm)に注射した。
【0105】
6−OHDAを該ラットに注射した後、HP−01及びHP−05を、処置後14日目及び6−OHDAの注射1週後に該ラットに投与し、アポモルヒネ(0.5mg/kg、皮下、Sigma社(USA)製)を該ラットに注射した。該ラットの回転数を、自動ロトメーターチャンバを使用して、30及び60分毎に測定した。
【0106】
結果としては、6−OHDA処置グループと比較して、HP−01で処置したグループの循環行動が減少し、特に、HP−05で処置したグループが、異常な循環行動を強く阻害することが確認された。したがって、HP−01及びHP−05が共に、退行性脳疾患とパーキンソン病の治療に有用であり得ることが確認された。
【0107】
(実施例6.6−OHDA誘発退行性脳疾患動物モデルを使用するハチ毒の神経保護効果)
ハチ毒抽出物の神経保護活性を評価するために、6−OHDA誘発退行性脳疾患動物モデルを使用して、手順(Andreas Schober:パーキンソン病の古典的毒素誘発動物モデル:6−OHDA及びMPTP(Classic toxin−induced animal models of Parkinson’s disease: 6−OHDA and MPTP), Cell Tissue Res., 318 pp.215−224,2004)に開示された改良手順によって、実施例で調製したハチ毒抽出物の神経保護効果を決定した。
【0108】
体重200〜220gの雄SDラット(Samtako社(Korea))を、使用前に1週間環境に順応させた。飼育部屋を自動照明システムによって、午前7時から午後7時までの12時間、温度を24℃に調整して制御し、該ラットに、水及び餌を自由に利用できるようにした。
【0109】
パーキンソン病誘発動物モデルを用意するために、ペントバルビタール注射(50mg/kg、腹腔内)を、麻酔として使用し、6−OHDA溶液(25μg/4μl、0.01% L−アスコルビン酸含有、Sigma社(USA)製)を、使用前に、暗くした冷蔵庫に保存した。6−OHDAを、25μg/4μlの用量で、1μl/分の速度で、26ゲージのHamiltonシリンジによって、特定の脳領域(前頂部に基づいて、AP−0.7 mm,ml−2.6 mm, V−4.5mm)に注射した。
【0110】
6−OHDA誘発によるドーパミン作動性ニューロン系統が損傷するか否か、及びハチ毒処置が該系統を保護することができるか否かについて調査するために、6−OHDA処置の終了時に、TH免疫組織化学的染色法を使用して、線条体(ST)及び黒質(SN)のドーパミン作動性細胞を観察した。
【0111】
図6のとおり、HP−01及びHP−05で処置したグループが、STでの6−OHDA処置グループと比較して、強力な神経保護活性を示すが、TH陽性グループの数、及び6−OHDAで処置したグループのニューロンは、線条体(ST)及び黒質(SN)で急激に減少した(図6参照)。
【0112】
6−OHDA処置グループの黒質(SN)に含まれるTH陽性細胞の数は、正常グループと比較して、顕著に減少したが、HP−01で処置したグループは、ドーパミン作動性ニューロンに対して保護効果を示した。特に、HP−05で処置したグループは、黒質(SN)及び線条体(ST)の試験で、HP−01で処置したグループよりも強力な神経保護活性を示した。したがって、HP−01及びHP−05が共に、退行性脳疾患とパーキンソン病の治療に有用であり得ることが確認された。
【0113】
(試験例7.臨床試験)
パーキンソン病患者に対するハチ毒抽出物の治療効果を明らかにするために、次の臨床試験を行った。
【0114】
20μgのHP−01を、4人の男性と6人の女性から成る10人のボランティアの脚の特定の経穴(ポイントGB 34)に、3日間隔で15日間、筋肉内注射した。試験の前後に、一般規格、すなわちUPDRS(United Parkinson’s Disease rating Scale)によって、試験試料の治療活性を測定した。UPDRSの基準を4つのグループに分類した。すなわち、UPDRS I(言及、行動、気分:1〜4の内容、全スコア16ポイント);UPDRS II(日常生活動作:5〜17の内容、全スコア52ポイント);UPDRS III(運動器健診:18〜31の内容、全スコア108ポイント);及び、UPDRS IV(運動障害:32〜42の内容、全スコア32ポイント)である。スコアが高くなると、疾患の重症度が悪化するとカウントされる。
【0115】
評価は、試験後のボランティアと評価者間のインタビューによって決定し、UPDRSの変化は、該評価によって互いに比較した。
【0116】
結果では、ボランティア間で個人差が存在するが、ほとんどのボランティアは、全UPDRS値が約10ポイント減少することを示した(表8及び9参照)。
表8
【0117】

表9
【0118】

【0119】
SPSS/PC+パッケージを使用して、一元配置ANOVA分析によって試験結果を分析し(p<0.05)、ダンカンの多重試験によって事後多重比較を分析した。それぞれのグループの値を平均±SDで表した。
【0120】
以下に、製剤化方法及び賦形剤の種類を説明するが、本発明は、それらに限定されない。代表的な調製例を次に説明した。
【0121】
(粉末剤の調製)
HP−01の乾燥粉末300mg
ラクトース100mg
タルク10mg
上述の成分を混合し、密封包装に充填することによって、粉末調製物を調製した。
【0122】
(錠剤の調製)
HP−02A50の乾燥粉末50mg
トウモロコシ澱粉100mg
ラクトース100mg
ステアリン酸マグネシウム2mg
上述の成分を混合し、錠剤化することによって、錠剤調製物を調製した。
【0123】
(カプセル剤の調製)
HP−03の乾燥粉末50mg
トウモロコシ澱粉100mg
ラクトース100mg
ステアリン酸マグネシウム2mg
上述の成分を混合し、従来のゼラチン調製法によりゼラチンカプセルに充填することによって、カプセル調製物を調製した。
【0124】
(注射液の調製(1))
HP−05の乾燥粉末2mg
注射最適量の蒸留水
最適量のpH調整剤
有効成分を溶解し、pHを約7.5に調整した後、すべての成分を2mlのアンプルに充填し、従来の注射液調製法により滅菌することによって、注射液調製物を調製した。
【0125】
(注射液の調製(2))
HP−01の乾燥粉末1mg
注射最適量の蒸留水
最適量のpH調整剤
有効成分を溶解し、pHを約7.5に調整した後、すべての成分を1mlのアンプルに充填し、従来の注射液調製法により滅菌することによって、注射液調製物を調製した。
【0126】
(注射液の調製(3))
1gのHP−01を1000mlの生理食塩水中で溶解した。ウイルス、細菌及び他の不純物等の種々の汚染物質を、抗細菌ろ過器を使用して除去した後、すべての溶液を1mlのバイアルに加えた。その溶液を凍結乾燥によって乾燥し、注射液調製物として使用した。
【0127】
(注射液の調製(4))
HP−05の乾燥粉末0.88mg
上述の成分を滅菌バイアルに充填し、注射用の生理食塩水で希釈した。
【0128】
(注射液の調製(5))
HP−05の乾燥粉末0.88mg
上述の成分を注射用の生理食塩水中で溶解した。ウイルス、細菌及び他の不純物等の種々の汚染物質を、抗細菌ろ過器を使用して除去した後、すべての溶液を1mlのバイアルに加えた。その溶液を凍結乾燥によって乾燥し、注射液調製物として使用した。
【0129】
このように記載された本発明では、同様のものを多くの方法で変更してもよい。このような変更は、本発明の精神及び範囲を逸脱するとはみなされず、すべてのこのような改良は、当業者によって明らかなように、次の特許請求の範囲の範囲内に含まれるように意図される。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明に記載されるとおり、退行性脳疾患の動物モデルを使用することによって、ハチ毒精製抽出物は、ミクログリア細胞の活性化、及び異常な循環行動に対する強力な阻害効果と、これらによる強力な細胞の保護活性を示し、薬剤として退行性脳疾患の治療及び予防に有用であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューロン細胞を保護することによる退行性脳疾患の治療及び予防のための有効成分としてハチ毒精製抽出物を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記精製抽出物が、ミツバチ、バンブルビー、又はコハナバチ等のハチ毒の粗精製抽出物又は精製抽出物である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記精製抽出物が、ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を、水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール中で溶解する工程と、該溶液をろ過して、該溶液から不純物を除去する工程と、本発明のハチ毒粗精製抽出物を得るために凍結乾燥によって該ろ液を乾燥する工程と、を含む手順によって調製される、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記精製抽出物が、上述の工程で調製した前記乾燥ハチ毒粗精製抽出物を、水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール中で溶解する工程と、該溶液を、塩析法、溶媒析出法、及び遠心分離又は透析を行うための透析膜ろ過から選択される少なくとも1つの精製工程に供する工程と、ハチ毒精製抽出物を得るために凍結乾燥によって該ろ液を乾燥する工程と、を含む手順によって調製される、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記精製抽出物が、ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水中で溶解する工程と、不純物を除去するためろ過する工程と、ハチ毒粗精製抽出物を得るために凍結乾燥で乾燥する工程の第1工程;と、
第1工程で調製した該ハチ毒粗精製抽出物を、ハチ毒水溶性抽出物を得るため、蒸留水等の溶媒中で溶解する工程の第2工程;と、該溶液を、膜に含まれる精製抽出物を回収するため、膜透析を使用する透析膜ろ過に供する工程と、他のハチ毒抽出物よりも強力な薬理効果のある、本発明のハチ毒精製抽出物を得るため、凍結乾燥によって該ろ液を乾燥する工程の第3工程と、を含む手順によって調製される、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ハチ毒精製抽出物が有効成分として、約30%〜90%(w/w%)の量のメリチンを含む、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記退行性脳疾患が、アルツハイマー型痴呆、脳血管性痴呆、Pick病、クロイツフェルト−ヤコブ病、頭部損傷によって生じた痴呆、又はパーキンソン病である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記退行性脳疾患がパーキンソン病である、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記退行性脳疾患が、ミクログリア細胞の活性化過剰によって生じたパーキンソン病である、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、固形経口製剤、液状経口製剤、局所用調製物又は非経口剤形の形態である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、凍結乾燥調製物、乳剤、非水性型注射液又は水性型注射液である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、筋肉内に、皮下に又は皮内に投与される水性型注射である、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、請求項1にて説明した本発明の抽出物を、8マイクログラムから2mg/日の量で投与される、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
ヒトを含む哺乳動物のニューロン細胞を保護することによる退行性脳疾患の治療及び予防のための治療剤の調製のための請求項1にて説明した前記ハチ毒精製抽出物の使用。
【請求項15】
請求項1にて説明した治療有効量の前記ハチ毒精製抽出物を、哺乳動物への医薬として許容し得るそのキャリアと共に投与することを含む、ヒトを含む該哺乳動物のニューロン細胞を保護することによって退行性脳疾患を治療又は予防する方法
【請求項16】
ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール中で溶解する工程と、不純物を除去するためにろ過する工程と、10.2%のホスホリパーゼ、40.5%のメリチン、3.8%のアパミン、1.6%のヒスタミン、1.1%のドーパミン、及び0.3%のアドレナリンを含むハチ毒粗精製抽出物を得るため、凍結乾燥で乾燥する工程と、を含む、請求項1にて説明した前記ハチ毒精製抽出物を調製する方法。
【請求項17】
ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール中で溶解する工程と、不純物を除去するためにろ過する工程と、請求項16にて説明した前記ハチ毒粗精製抽出物を得るために凍結乾燥で乾燥する工程の第1工程;と、 第1工程で調製した該ハチ毒粗精製抽出物を、水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール中で溶解する工程と、該溶液を、塩析法、溶媒析出法、及び遠心分離又は透析を行うための透析膜ろ過から選択される少なくとも1つの精製工程に供する工程と、本発明のハチ毒精製抽出物を得るため、凍結乾燥で該ろ液を乾燥する工程との第2工程;と、を含む、請求項1にて説明した前記ハチ毒精製抽出物を調製する方法。
【請求項18】
ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール中で溶解する工程と、不純物を除去するためにろ過する工程と、前記ハチ毒粗精製抽出物を得るために凍結乾燥で乾燥する工程の第1工程;と、ハチ毒水溶性抽出物を得るため、第1工程で調製した該ハチ毒粗精製抽出物を、蒸留水等の溶媒中で溶解する工程の第2工程;と、該溶液をゲルろ過クロマトグラフィに供した後、膜透析を使用するタンパク質透析膜ろ過に供して、塩析を行う工程の第3工程;と、該膜に含まれる精製抽出物を回収する工程と、12.4%のホスホリパーゼ、48.4%のメリチン、4.3%のアパミン、0.9%のヒスタミン、1.4%のドーパミン、及び0.4%のアドレナリンを含む本発明のハチ毒粗精製抽出物を得るため、凍結乾燥で該ろ液を乾燥する工程の第4工程;と、を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール中で溶解する工程と、不純物を除去するためにろ過する工程と、前記ハチ毒粗精製抽出物を得るために凍結乾燥で乾燥する工程の第1工程;と、ハチ毒水溶性抽出物を得るため、第1工程で調製した該ハチ毒粗精製抽出物を、蒸留水等の溶媒中で溶解する工程の第2工程;と、該溶液を塩溶に供した後、硫酸アンモニウム等の塩を使用する塩析を行う工程の第3工程;と、上清を得て、該上清中に、<0.1%のホスホリパーゼ、<0.1%のメリチン、<0.1%のアパミン、8.4%のヒスタミン、3.1%のドーパミン、及び1.2%のアドレナリンを含み、そして、沈殿物中に、13.4%のホスホリパーゼ、53.6%のメリチン、5.1%のアパミン、<0.1%のヒスタミン、<0.1%のドーパミン、及び<0.1%のアドレナリンを含む、本発明のハチ毒精製抽出物を得るため、該溶液を遠心分離及び凍結乾燥する工程の第4工程;と、を含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール中で溶解する工程と、不純物を除去するためにろ過する工程と、前記ハチ毒粗精製抽出物を得るために凍結乾燥で乾燥する工程の第1工程;と、第1工程で調製した該ハチ毒粗精製抽出物を、水、メタノール、エタノール若しくはブタノール等の低級アルコール、又はこれらの混合物から選択される析出溶媒中で溶解して、析出物を得る工程の第2工程;と、上清を得て、該上清中に、<0.1%のホスホリパーゼ、<0.1%のメリチン、<0.1%のアパミン、12.1%のヒスタミン、6.4%のドーパミン、及び2.2%のアドレナリンを含み、そして、沈殿物中に、7.8%のホスホリパーゼ、56.4%のメリチン、5.8%のアパミン、<0.1%のヒスタミン、<0.1%のドーパミン、及び<0.1%のアドレナリンを含む、本発明のハチ毒精製抽出物を得るため、該溶液を遠心分離及び凍結乾燥する工程の第3工程;と、を含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール中で溶解する工程と、不純物を除去するためにろ過する工程と、前記ハチ毒粗精製抽出物を得るために凍結乾燥で乾燥する工程の第1工程;と、第1工程で調製した該ハチ毒粗精製抽出物を、水、メタノール、エタノール若しくはブタノール等の低級アルコール、又はこれらの混合物から選択される析出溶媒中で溶解する工程の第2工程;と、
該溶液を、50kDaの膜フィルターを装備した超遠心分離機を使用する超遠心分離に供して、76.2%のホスホリパーゼ、<0.1%のメリチン、<0.1%のアパミン、<0.1%のヒスタミン、<0.1%のドーパミン、及び<0.1%のアドレナリンを含む、50kDaより高い高分子量のハチ毒精製抽出物を得る工程の第3工程;と、<0.1%のホスホリパーゼ、43.2%のメリチン、6.2%のアパミン、<0.1%のヒスタミン、<0.1%のドーパミン、及び<0.1%のアドレナリンを含む、10kDa〜50kDaの高分子量のハチ毒精製抽出物、並びに、<0.1%のホスホリパーゼ、<0.1%のメリチン、<0.1%のアパミン、12.8%のヒスタミン、8.1%のドーパミン、及び1.3%のアドレナリンを含む、10kDa未満の低分子量のハチ毒精製抽出物を得るため、10kDa膜フィルターを装備した超遠心分離機を使用することによって、50kDa未満の低分子量の画分を遠心分離する工程;と、を含む、請求項17記載の方法。
【請求項22】
ミツバチから回収した乾燥ハチ毒を水、メタノール、エタノール又はブタノール等の低級アルコール中で溶解する工程と、不純物を除去するためにろ過する工程と、前記ハチ毒粗精製抽出物を得るために凍結乾燥で乾燥する工程の第1工程;と、ハチ毒水溶性抽出物を得るため、第1工程で調製した該ハチ毒粗精製抽出物を、蒸留水等の溶媒中で溶解する工程の第2工程;と、該溶液を、タンパク質透析膜を使用する透析に供する工程の第3工程;と、10.2%のホスホリパーゼ、40.5%のメリチン、3.8%のアパミン、1.6%のヒスタミン、3.1%のドーパミン、及び0.3%のアドレナリンを含む、本発明のハチ毒精製抽出物を得るため、該膜内の溶液を回収し、該溶液を凍結乾燥する工程を含む、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−527449(P2012−527449A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511746(P2012−511746)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007234
【国際公開番号】WO2010/134676
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511241251)ヒュオンス カンパニー,リミテッド (1)
【Fターム(参考)】