送信器、通信システム、通信方法
【課題】静電界通信において、伝送媒体または電極の周囲の環境に依存することなく、高い伝達利得を安定して維持すること。
【解決手段】
本発明のある観点によれば、静電界を用いて伝送を行う送信器であって、伝送媒体上に搬送波を出力する第1の電極と、前記第1の電極との間で少なくとも前記伝送媒体の一部を介して静電結合する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて正帰還回路を形成し前記搬送波を発振させる発振部と、を備える送信器が提供される。
【解決手段】
本発明のある観点によれば、静電界を用いて伝送を行う送信器であって、伝送媒体上に搬送波を出力する第1の電極と、前記第1の電極との間で少なくとも前記伝送媒体の一部を介して静電結合する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて正帰還回路を形成し前記搬送波を発振させる発振部と、を備える送信器が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に送信器、通信システム、通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送信器と受信器の間の電界を変化させることで信号を伝達する、静電界通信と呼ばれる技術が提案されている。静電界通信では、放射性の電波を利用して無線通信を行うのではなく、アンテナや伝送媒体間の静電結合を利用して無線通信を行う。
【0003】
下記特許文献1〜3には、静電界通信の伝送媒体として人体を用いる技術が開示されている。こうした技術は人体通信と呼ばれ、携帯機器や人体に装着可能な機器と他の機器との間のデータ伝送などへの応用が期待されている。
【0004】
下記特許文献4、5は、静電界通信の伝送媒体を人体に限らず、また電位差の基準としての経路を不要とすることで利用環境の制約を除去し安定した通信の実現を図っている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−228524
【特許文献2】特開平10−229357
【特許文献3】特表平11−509380
【特許文献4】特開2006−324774
【特許文献5】特開2006−324775
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、通信システムにおいては、伝達利得を高めてより良い通信特性を実現することが求められる。静電界通信では、伝達利得は送受信器の電極及び伝送媒体が空間または大地に対して持つ静電容量に支配される。しかしながら、これら静電容量は電極の形状、電極と伝送媒体間の距離、その他電極の周囲の環境に依存して大きく変わることから、安定して高い伝達利得を維持することが困難であった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、静電界通信において、高い伝達利得を安定して維持することの可能な、新規かつ改良された送信器、通信システム、通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、静電界を用いて伝送を行う送信器であって、伝送媒体上に搬送波を出力する第1の電極と、前記第1の電極との間で少なくとも前記伝送媒体の一部を介して静電結合する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて正帰還回路を形成し前記搬送波を発振させる発振部と、を備えることを特徴とする送信器が提供される。
【0009】
かかる構成によれば、前記第1の電極と前記第2の電極の前記静電結合の静電容量は、前記伝送媒体の特性または周囲の環境に応じて変化し、そのように変化する静電容量を含む前記正帰還回路により前記搬送波が発振される。このとき、当該搬送波の発振周波数は、前記正帰還回路の特性に応じた共振周波数となる。従って、伝送媒体の特性または周囲の環境が変化する場合にも安定して、第1の電極から伝送媒体上に出力される搬送波を共振周波数で発振させることが可能となる。
【0010】
前記送信器は、さらに情報に応じて変調される信号を生成する変調部を備え、前記搬送波によって前記信号を伝送してもよい。かかる構成によれば、安定して共振周波数で発振する搬送波により変調された前記信号を伝送することができる。
【0011】
前記変調部は、前記搬送波の発振状態を変化させることにより前記信号を変調してもよい。かかる構成によれば、変化する前記搬送波の周波数に影響されずに高い伝達利得で情報を伝送することが可能となる。
【0012】
さらに、前記変調部は、前記発振部の出力電圧に加えるオフセットを制御することで、前記搬送波の前記発振状態を変化させてもよい。かかる構成によれば、前記発振部の出力電圧をオフセットにより飽和させて前記搬送波の発振を停止させ、オフセットを無くすことで発振を再開させることができる。
【0013】
その代わりに、前記変調部は、前記発振部の1つ以上の回路定数を制御することで、前記搬送波の前記発振状態を変化させてもよい。かかる構成によれば、回路の発振条件を充足しないように前記発振部の1つ以上の回路定数を変化させて発振を停止させ、再び発振条件を充足させることで発振を再開させることができる。
【0014】
前記変調部は、前記発振部の電源をスイッチングさせることにより前記信号を変調してもよい。かかる構成によれば、変化する前記搬送波の周波数に影響されずに情報を伝送することが可能となる。
【0015】
前記送信器は、前記搬送波によって電力を伝送してもよい。安定して共振周波数で発振する搬送波により電力を供給することができる。
【0016】
前記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、送信器と受信器とが静電界を用いて伝送を行う通信システムであって、前記送信器は、伝送媒体上に搬送波を出力する第1の電極と、前記第1の電極との間で少なくとも前記伝送媒体の一部を介して静電結合する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて正帰還回路を形成し前記搬送波を発振させる発振部と、を備えることを特徴とする通信システムが提供される。
【0017】
かかる構成によれば、静電界を用いて伝送を行う通信システムにおいて、伝送媒体の特性または周囲の環境が変化する場合にも安定して、送信器と受信器との間の伝送媒体上に出力される搬送波を共振周波数で発振させることが可能となる。
【0018】
前記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、静電界を用いて伝送を行う通信方法であって、第1の電極と第2の電極とを少なくとも伝送媒体の一部を介して静電結合させ、前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて形成する正帰還回路により搬送波を発振させ、発振させた前記搬送波を前記第1の電極から出力して伝送を行う、通信方法が提供される。
【0019】
かかる構成によれば、静電界を用いて伝送を行う通信方法において、伝送媒体の特性または周囲の環境が変化する場合にも安定して、伝送媒体上に出力される搬送波を共振周波数で発振させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、静電界通信において、高い伝達利得を安定して維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、添付した図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
まず、図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム10の適用場面の一例を示す概念図である。図1を参照すると、通信システム10は、送信器100と受信器200とを備える。送信器100は、典型的には据え置き型の機器に相当し、例えばPC(パーソナルコンピュータ)やワークステーションなどの汎用目的のコンピュータ、またはICカードの読取装置などの特定目的の通信装置であってもよい。受信器200は、典型的には携帯型の機器に相当し、例えば携帯電話、PDA(携帯情報端末)、または通信機能を備えたゲーム機器若しくは音楽再生機などであってもよい。送信器100は、給電回路102、送信電極110、及び送信電極120を備える。受信器200は、負荷回路202、受信電極210、及び受信電極220を備える。
【0023】
図1の通信システム10において通信を行う場合には、図示しているように、送信電極110と受信電極210、送信電極120と受信電極220がそれぞれ相対するように人為的に配置される。これにより相対する電極間に静電結合が生じ、送信器100の両電極間の位相差が静電結合を介して受信器200の両電極間に伝わることにより、通信が成立する。
【0024】
図2は、通信システム10の適用場面の他の例を示す概念図である。図2に示した送信器100及び受信器200は、典型的にはいずれも前述したような携帯型の機器に相当する。
【0025】
図2の通信システム10において通信を行う場合には、図示しているように、送信器100の一方の電極(例えば送信電極110)と受信器200の一方の電極(例えば受信電極210)が相対するように人為的に配置される。これにより相対する一組の電極間に静電結合が生じる。また、送信器100と受信器200の他方の電極(例えば送信電極120と受信電極220)も共に空間に対して静電容量を持ち、これら電極間にも空間を介した静電結合が生じる。よって、通信システム10は閉ループを形成し、通信が可能となる。
【0026】
図3は、通信システム10の適用場面のさらに別の例を示す概念図である。図3を参照すると、送信器100と受信器200の間に伝送媒体としての人体が存在する。ここでは伝送媒体として人体を示しているが、伝送媒体として例えば銅、鉄等の金属に代表される導電体、純水、ガラス等に代表される誘電体、またはこれらの複合体を用いてもよい。また、本発明の一実施形態として、図1または図2に示しているような送信器100と受信器200の間の空間を伝送媒体として用いてもよい。
【0027】
送信器100及び受信器100は、それぞれ一方の電極(例えば送信電極110と受信電極210)が伝送媒体に相対するように人為的に配置される。これにより、伝送媒体に相対して配置された2つの電極と伝送媒体との間に静電結合が生じる。さらに、送信器100及び受信器100の他方の電極(例えば送信電極120と受信電極220)が伝送媒体から相対的に離れた位置に人為的に配置される。これら2つの電極は空間に対して静電容量を持ち、空間を介して静電結合を生じる。よって、通信システム10は閉ループを形成し、通信が可能となる。
【0028】
図4は、図1〜図3を用いて説明した通信システムについて、各電極の周囲に生じる静電結合の静電容量を構成要素として示した概略図である。
【0029】
図4に示した通信システム10は、前述の例と同様、送信器100と受信器200とを備える。送信器100と受信器200の間には、伝送媒体300が存在する。伝送媒体300は、図1または図2においては相対する一組の電極間の伝送路(送受信器間の空間の一部、及び/または送受信器の筐体(図1、図2には示していない)の一部を含む)、図3においては例えば図中の人体などに相当する。さらに、送受信器の周辺には空間、あるいは大地を意味する空間400が存在する。
【0030】
通信システム10の送信器100は、給電回路102、及び2つの電極110、120を備える。受信器200は、負荷回路202、及び2つの電極210、220を備える。これら送信器100と受信器200の4つの電極のうち、伝送媒体300の近くに配置される電極を信号電極110、210、伝送媒体300から相対的に離れて配置される電極を基準電極120、220とする。
【0031】
図4に容量素子の記号で示しているように、2つの信号電極110、210は共に伝送媒体300と静電結合し、静電容量Csを持つ。また、2つの基準電極120、220は共に空間400と静電結合し、静電容量Crを持つ。この結果、給電回路102、伝送媒体300、負荷回路202、空間400を経由する閉じた回路が形成され、送信器100の両電極間の位相差が静電結合を介して受信器200の両電極間に伝わることにより、後述するように給電回路から負荷回路へ信号、または電力を供給することができる。なお、伝送媒体300も空間400に対して静電容量Cmを持つ。この経路は、給電回路102から負荷回路202への伝送の観点からは損失にあたる。一方、各信号電極が空間400に対して持つ静電容量、及び各基準電極が伝送媒体に対して持つ静電容量は、回路全体に対する寄与が小さいことを想定し、図示を省略している。
【0032】
通信システム10の通信の特性を良好なものとするためには、伝達利得を高くすることが望ましい。通信システム10の伝達利得は前述の静電容量Cs及びCrに支配されるが、これら静電容量は電極の形状、信号電極と伝送媒体間の距離、基準電極と空間の間の距離等に依存して変動し安定しない。また、低周波数帯域では、周波数の低下に比例して伝達利得も低下する。
【0033】
そこで、図4に示しているように給電回路102及び負荷回路202に誘導素子Lを実装し、インピーダンス整合により送信器100と受信器200との間にLC共振を発生させて、伝達利得を向上させることが有効である。
【0034】
給電回路102及び負荷回路202に誘導素子を実装しない場合の回路の伝送特性を式(1)に表す。
【0035】
【数1】
【0036】
なお、式(1)では、伝送媒体300は完全導体であり、給電回路102の信号源インピーダンスr1と負荷回路202の負荷インピーダンスr2は共にrである(r1=r2=r)と仮定している。ここでCpは、各信号電極が伝送媒体300に対して持つ静電容量Csと各基準電極が空間400に対して持つ静電容量Cmの直列合成容量であって、式(2)で表される。
【0037】
【数2】
【0038】
図5は、式(1)の伝送特性をプロットしたものである。横軸は通信に用いる搬送波の周波数[MHz]、縦軸は周波数に対する送受信器間の伝達利得[dB]である。ここでは、給電回路102の信号源インピーダンスr1、負荷回路202の負荷インピーダンスr2を、r1=r2=50Ωとした。また、各信号電極と伝送媒体300の間の静電容量Cs=7pFとした。この数値は、半径5cmの導体円板2枚を1cmの間隔を置いて平行に対向させたときの静電容量に等しい。また、各基準電極と空間400の間の静電容量Cr=3.5pFとした。この数値は、半径5cmの導体円板が空間(または充分に離れた大地)に対して持つ静電容量に等しい。さらに、伝送媒体300と空間400の間の静電容量をCm=150pFとした。この数値は、人体が空間に対して持つ静電容量が100pF程度であることを参考にした値である。図5を参照すると、例えば50MHzの搬送波を用いて通信を行った場合の伝達利得は、約−60dBであることが分かる。
【0039】
一方、伝送媒体300を完全導体と仮定し、図4の給電回路102及び負荷回路202に誘導素子Lを実装する場合の回路の伝送特性を式(3)に表す。
【0040】
【数3】
【0041】
ここで、式(3)の伝送特性は、LC共振を起こしている場合を前提としている。式(3)におけるLC共振の共振周波数は、式(4)で表される。
【0042】
【数4】
【0043】
図6は、式(3)の伝送特性をプロットしたものである。ここでは、実装するインダクタンスの大きさをL=4000μHとした。図6を参照すると、50MHz付近で搬送波がLC共振を生じ、伝達利得のピーク値が約−5dBとなっている。このことから、通信システム10の給電回路102及び負荷回路202に誘導素子Lを実装することで、誘導素子Lを実装しない場合よりも一定の周波数帯域(図6の場合は50MHz付近)の伝送効率を大きく改善できることが分かる。
【0044】
しかしながら、図6において、伝送効率のよい周波数帯域(即ち高い伝達利得を示す周波数帯域)は50MHz付近の狭い帯域に限られている。これは、式(3)の伝送特性を決定付けるパラメータ(例えばCp、Cmなど)が僅かに変化するだけでも急激に伝送効率が低下することを意味している。そして、式(3)の伝送特性を決定付けるこれらパラメータは、前述の通り電極の配置等に依存して大きく変動し得る。よって、図1〜図3に例示した通信システム10の様々な適用場面を想定すると、図4の回路構成において誘導素子のインダクタンスの値を適切に設定するだけでは、持続的に伝送効率の高い通信を行うことは困難であると理解される。
【0045】
そこで、本発明の一実施形態として以下にさらに詳しく説明するように、通信システム10の送信器100において、信号電極110と基準電極120の間の少なくとも伝送媒体300の一部を介する静電結合の静電容量を用いて発振回路を構成する。そのようにして送受信器間の搬送波をインピーダンス整合した共振周波数で発振させ、高い伝達利得を安定して維持することを可能とする。以下、送信器100の詳細な構成に係る6つの実施例について図7〜12を用いて説明する。
【0046】
[第1の実施例]
図7は、第1の実施例における送信器100の構成を示している。図7を参照すると、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図7の通り配置される増幅器132、抵抗器r、及び誘導素子Lを備える。変調部140は、変調器142、電界効果トランジスタ(FET)144、及び抵抗器Rを備える。
【0047】
本実施例は、LC直列共振回路を応用したものである。本実施例では、図示しているように、増幅器132の出力端子から順に、抵抗器r、誘導素子L、信号電極110を直列に接続する。また、基準電極120を増幅器132の入力端子に接続する。通常のLC直列共振回路では、これら信号電極110と基準電極120の代わりに静電容量素子を配置するが、本実施例では、両電極を配置して寄生容量を大きくし、伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合させてこれを搬送波の発振に活用する。これにより、等価回路上では、信号電極110、基準電極120、増幅器132、抵抗器r、及び誘導素子Lによって一巡する正帰還回路が構成されたことになる。
【0048】
信号電極110から伝送媒体300及び空間400を経由して基準電極120に至る静電結合容量をCxとすると、Cxは図4におけるCs、Cm、Crの直列合成容量に相当する。このCxを用いて、本実施例に係るLC直列共振回路の一巡伝達関数H(ω)は式(5)で表される。なお、式中のkは増幅器132の増幅率である。
【0049】
【数5】
【0050】
このとき、発振周波数ωは式(6)で表される。
【0051】
【数6】
【0052】
発振条件は式(7)で表される。
【0053】
【数7】
【0054】
ここで式(7)の発振条件を満たすようにk、r、及びRの値を設定すると、信号電極110から伝送媒体300へ出力される搬送波は、式(6)の周波数で発振する。式(6)の周波数は式(4)の共振周波数に一致している。よって、本実施例に係る送信器100において発振する搬送波は、信号電極110と基準電極120の間の静電容量によらず共振周波数で発振し得ることが分かる。なお、搬送波を発振させるためには、式(7)の左辺が1に等しくなるように各回路定数を設定すれば十分である。しかしながら、正帰還回路内に遅延がある場合には、式(5)の一巡伝達関数が変化するため、当該遅延による影響を考慮し、式(7)の左辺が1より大きくなるように各回路定数を設定するのが好適である。正帰還回路内の遅延の考慮については、後述する他の実施形態についても同様である。
【0055】
一方、図7に示した増幅器132の入力端子は、基準電極120に加えて、変調部140のFET144に接続される。変調器142は、伝送対象の信号に応じてFET144をスイッチングさせることができる。このスイッチングの結果、増幅器132の入力電圧レベルが変化すると、増幅器132の出力電圧に伝送対象の信号に応じたオフセットが生じる。このオフセットを例えば発振部130の電源電圧(図示していない)と同等のレベルにまで大きくすると、出力電圧が飽和して一定となり、発振は停止する。そして、オフセットを無くすと出力電圧が元のレベルに戻って再度発振が生じる。こうした原理を用いて、発振部130、信号電極110及び基準電極120により構成する前述のLC直列発振回路の発振と停止を制御し、その発振状態(発振/停止)に信号を変調して伝送することが可能となる。
【0056】
なお、搬送波の発振状態を制御する方法は、FET144をスイッチングさせる方法に限定されない。例えば、FET144の代わりに発振部130の電源をスイッチングさせてもよい。また、式(7)の発振条件を満たさないように1つ以上の回路定数(r、L、Rなど)を信号に応じて変化させて発振状態を制御してもよい。
【0057】
留意すべき点として、本実施例(本明細書にて後述する他の実施例についても同様)に係る発振回路により発振する搬送波の周波数は、適用環境の特性の変動に応じて変化し、一定とならない。そのため、図4に示した受信器200の負荷回路においては、広帯域にわたる周波数の搬送波を受信できるように、入力インピーダンスを高くし、負荷回路202にインダクタンスを実装しないことが望ましい。
【0058】
また、搬送波の周波数を調整する余地を残しておくために、回路の一部に容量素子を配置して共振周波数の変化する範囲を狭め、または可変容量素子を配置して共振周波数を制御し安定化させてもよい。共振周波数の安定化については、後述する第3の実施例に関連してより詳しく説明する。
【0059】
以上説明した第1の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0060】
なお、送受信器間で高い伝達利得を安定して維持することのできるという本発明の効果は、情報信号を伝送するための通信のみならず、送受信器間の電力の伝送にも適用し得る。一例として、図1に示したような適用場面においてPCから携帯機器へ電力を供給するような場合には、機器間を接続するケーブル等を要することなく、本発明を適用して伝達利得の高い状態で電力を供給することができる。
【0061】
[第2の実施例]
次に、第2の実施例について説明する。図8は、第2の実施例における送信器100の構成を示している。本実施例においても、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図8の通り配置される増幅器132、誘導素子L、及び抵抗器r、R、R1、R2を備える。変調部140は、変調器142、及び電界効果トランジスタ(FET)144を備える。
【0062】
本実施例は、第1の実施例と同様にLC直列発振回路を応用し、増幅器としてオペアンプを使用している。本実施例では、図示しているように、増幅器132の出力端子から順に、抵抗器r、誘導素子L、信号電極110を直列に接続する。また、基準電極120を増幅器132の非反転入力端子と抵抗器Rに接続する。これら信号電極110と基準電極120は、さらに伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合する。これにより、等価回路上では、信号電極110、基準電極120、増幅器132、抵抗器R、及び誘導素子Lによって一巡する正帰還回路が構成されたことになる。抵抗器Rは他方で基準電位点(以下、回路GNDとする)に接続され、増幅器132、即ちオペアンプの入力電位が確定される。増幅器132の反転入力端子は抵抗器R1、R2に接続される。また、他方で抵抗器R1は変調部140のFET144に、抵抗器R2は増幅器132の出力端子に接続され、これによりオペアンプを利用した電圧の増幅が実現される。
【0063】
本実施例に係る発振回路の一巡伝達関数は、第1の実施例と同様に式(5)で表される。ここで、式(5)の増幅比kは、本実施例の場合には式(8)で表される。
【0064】
【数8】
【0065】
よって、本実施例の場合、式(7)の発振条件を満たすようにr、R、R1、及びR2の値を設定することにより、送信器100において発振する搬送波が、信号電極110と基準電極120の間の静電容量によらず共振周波数で発振し得ることが分かる。なお、本実施形態では、増幅器132を用いて非反転増幅回路を構成した場合について図示している。しかしながら、前述の正帰還回路内の遅延が位相に換算してπ以上となる場合には、増幅比kが0以下となるように、必要に応じて非反転増幅回路ではなく反転増幅回路を増幅器132を用いて構成してもよい。
【0066】
本実施例に係る変調部140の役割は、前述の実施例1における役割と同様である。即ち、変調器142は、伝送対象の信号に応じてFET144をスイッチングさせ、発振部130、信号電極110及び基準電極120により構成するLC直列発振回路の発振と停止を制御し、その発振状態(発振/停止)に信号を変調して伝送することができる。その代わりに、FET144の代わりに発振部130の電源をスイッチングさせ、または式(7)の発振条件を満たさないように1つ以上の回路定数(r、R、R1、及びR2など)を信号に応じて変化させて発振状態を制御してもよい。
【0067】
以上説明した第2の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0068】
[第3の実施例]
次に、第3の実施例について説明する。図9は、第3の実施例における送信器100の構成を示している。図9を参照すると、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図9の通り配置される増幅器132、抵抗器R、R1、R2、誘導素子L、及び容量素子Cvを備える。変調部140は、変調器142及び電界効果トランジスタ(FET)144を備える。
【0069】
本実施例は、LC発振回路の一形態として知られるコルピッツ型発振回路を応用したものである。一般的に、コルピッツ型発振回路は、誘導素子及び容量素子を含む正帰還回路と、増幅回路から構成される。本実施例では、図示しているように、信号電極110を誘導素子Lと抵抗器Rに接続する。また、基準電極120を回路GNDと容量素子Cvの間に接続する。これら信号電極110と基準電極120は、さらに伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合する。これにより、等価回路上では、信号電極110、基準電極120、容量素子Cv、及び誘導素子Lによって一巡する正帰還回路が構成されたことになる。
【0070】
一方、増幅器132、抵抗器R、R1、及びR2は、増幅回路を構成するために用いられる。本実施例では、増幅器132の反転入力端子を抵抗器R1とR2の間に、非反転入力端子を変調部140のFET144に、出力端子を抵抗器RとR2の間に接続する。このように構成した増幅回路により、変調部140からの入力電圧は増幅された上で前述の正帰還回路に伝達される。そして、正帰還回路により帰還する電圧との時間差によって、搬送波を発振させることができる。
【0071】
信号電極110から伝送媒体300及び空間400を経由して基準電極120に至る静電結合容量Cxを用いると、本実施例に係る発振回路の一巡伝達関数H(ω)は式(9)で表される。
【0072】
【数9】
【0073】
このとき、発振回路の発振周波数ωは式(10)で表される。なお、記号//は並列合成容量を表す。
【0074】
【数10】
【0075】
式(9)の発振条件は式(11)で表される。
【0076】
【数11】
【0077】
よって、この発振条件を満たすように図9に示した回路を構成することで、本実施例に係る送信器100において、搬送波を共振周波数で発振させることができる。
【0078】
一方、前述したように、図9に示した増幅器132の非反転入力端子は、変調部140のFET144に接続される。これにより、第1の実施例に関連して説明した原理を用いて、伝送対象の信号に応じて変調器142によりFET144をスイッチングさせ、発振回路の発振と停止を制御し、その発振状態に信号を変調して伝送することが可能となる。搬送波の発振状態を制御する方法は、前述のFET144をスイッチングさせる方法に限定されず、FET144の代わりに発振部130の電源(図示していない)をスイッチングさせてもよい。また、式(11)の発振条件を満たさないように1つ以上の回路定数(R1、R2など)を信号に応じて変化させて発振状態を制御してもよい。
【0079】
以上説明した第3の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0080】
ここで、図9に示した静電容量Cvを用いて搬送波の周波数を調整してもよい。この場合の発振周波数は、静電容量Cvと電極間の静電容量との合成容量で決定される。さらにこの静電容量Cvを可変とし、前述の合成容量を一定になるように制御することで、搬送波の周波数の安定化を図ってもよい。例えば、所定の周波数で発振するローカル発振器、ローカル発振器の出力周波数と信号電極110の出力周波数の位相差を検出する位相比較器、及び前記位相差に基づいて可変静電容量Cvの両端の電圧を変化させるループフィルタをさらに備えることで、帰還ループを構成して発振周波数を安定化させることができる。
【0081】
[第4の実施例]
次に、第4の実施例について説明する。図10は、第4の実施例における送信器100の構成を示している。本実施例においても、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図10の通り配置されるトランジスタ134、電源136、誘導素子L、及び容量素子C、Cvを備える。変調部140は、変調器142及び電界効果トランジスタ(FET)144を備える。
【0082】
本実施例は、第3の実施例と同様にコルピッツ型発振回路を応用しているが、増幅回路としてトランジスタ134を使用している点で第3の実施例と異なっている。本実施例では、図示しているように、信号電極110をトランジスタ134のエミッタと容量素子Cvの間に接続する。また、基準電極120を回路GND、及び誘導素子Lと回路GNDの間に接続する。これら信号電極110と基準電極120は、さらに伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合する。これにより、等価回路上では、信号電極110、基準電極120、誘導素子L、及び容量素子Cvによって一巡する正帰還回路が構成されたことになる。
【0083】
また、トランジスタ134のベースは誘導素子Lと容量素子Cvの間に、エミッタは容量素子Cvと信号電極110の間に、コレクタは電源136に接続される。これにより、変調部140からの入力電圧は増幅された上で前述の正帰還回路に伝達される。そして、正帰還回路により帰還する電圧との時間差によって、搬送波を発振させることができる。
【0084】
図10の容量素子Cvは、信号電極110から伝送媒体300及び空間400を経由して基準電極120に至る静電結合容量Cxよりも小さい静電容量を持つものとする。第3の実施例と同様、本実施例の構成する発振回路の伝達関数は式(9)、発振周波数は式(10)で表される。よって、式(11)の発振条件を満たすように図10に示した回路を構成することで、本実施例に係る送信器100において、搬送波を共振周波数で発振させることができる。
【0085】
本実施例においては、第3の実施例と異なり、変調部140のFET144は発振部130の電源136に接続される。そして、伝送対象の信号に応じて変調器142によりFET144の出力を制御することで、電源136からの発振部への電力の供給をスイッチングさせることができる。それにより、本実施例の構成する発振回路の発振と停止を制御し、発振状態に信号を変調して伝送することが可能となる。
【0086】
以上説明した第4の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0087】
[第5の実施例]
次に、第5の実施例について説明する。図11は、第5の実施例における送信器100の構成を示している。図11を参照すると、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図11の通り配置される増幅器132、抵抗器R、R1、R2、及び誘導素子L1、L2を備える。変調部140は、変調器142及び電界効果トランジスタ(FET)144を備える。
【0088】
本実施例は、LC発振回路の一形態として知られるハートリー型発振回路を応用したものである。一般的に、ハートリー型発振回路は、前述のコルピッツ型発振回路の容量素子と並列に接続された誘導素子の中間から電圧の一部を正帰還させる構成をとる。本実施例では、誘導素子L1及びL2のそれぞれ一方の端を回路GNDに接続し、ここを電圧の一部を帰還させる中間点とする。信号電極110は、誘導素子L2と抵抗器Rの間に接続する。また、基準電極120は、誘導素子L1と抵抗器R1の間の配線、及び回路GNDに接続する。これら信号電極110と基準電極120は、さらに伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合し、誘導素子L1及びL2と並列に接続される容量素子の役割を果たす。
【0089】
一方、増幅器132、抵抗器R、R1、及びR2は、第3の実施例と同様に増幅回路を構成するために用いられる。本実施例においても、増幅器132の反転入力端子を抵抗器R1とR2の間に、非反転入力端子を変調部140のFET144に、出力端子を抵抗器RとR2の間に接続する。このように構成した増幅回路により変調部140からの入力電圧は増幅され、さらに正帰還される電圧の入出力の時間差によって搬送波を発振させることができる。
【0090】
信号電極110から伝送媒体300及び空間400を経由して基準電極120に至る静電結合容量Cxを用いて、本実施例に係る発振回路の一巡伝達関数H(ω)は式(12)で表される。
【0091】
【数12】
【0092】
このとき、発振周波数ωは式(13)で表される。
【0093】
【数13】
【0094】
式(12)の発振条件は式(14)で表される。
【0095】
【数14】
【0096】
ここで、誘導素子L1、L2を回路GNDを中間点とする1つの誘導素子(インダクタンスはL1+L2となる)と見なすと、式(13)で表される発振周波数ωは式(4)の共振周波数と同等となる。よって、式(14)の発振条件を満たすように図11に示した回路を構成することで、本実施例に係る送信器100において、搬送波を共振周波数で発振させることができる。
【0097】
本実施例においても、第3の実施例と同様に、発振部130の増幅器132の非反転入力端子は変調部140のFET144と接続される。これにより、第1の実施例に関連して説明した原理を用いて、伝送対象の信号に応じて変調器142によりFET144をスイッチングさせ、発振回路の発振と停止を制御し、その発振状態に信号を変調して伝送することが可能となる。搬送波の発振状態を制御する方法は、前述のFET144をスイッチングさせる方法に限定されず、FET144の代わりに発振回路の電源をスイッチングさせてもよい。また、式(14)の発振条件を満たさないように1つ以上の回路定数(R1、R2、L1、L2など)を信号に応じて変化させて発振状態を制御してもよい。
【0098】
また、搬送波の周波数を調整するために、L1−R1間の配線とL2−R間の配線をつなぐ静電容量Cv(図示していない)を追加的に備えてもよい。この場合、発振周波数は静電容量Cvと信号電極110−基準電極120間の静電結合容量Cxの並列合成容量により決定される。但し、共振周波数で発振させる通信を維持するためには、追加する静電容量CvをCxよりも小さい値とすることが望ましい。また、共振周波数を安定化させるために、第3の実施例に関連する前述の説明と同様、静電容量Cvを可変とし、ローカル発振器、位相比較器、及びループフィルタをさらに備えて静電容量Cvを制御してもよい。
【0099】
以上説明した第5の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0100】
[第6の実施例]
次に、第6の実施例について説明する。図12は、第6の実施例における送信器100の構成を示している。前述の実施例と同様、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図12の通り配置されるトランジスタ134、電源136、誘導素子L1、L2、及び容量素子Cvを備える。変調部140は、変調器142及び電界効果トランジスタ(FET)144を備える。
【0101】
本実施例は、第5の実施例と同様にハートリー型発振回路を応用しているが、増幅回路としてトランジスタ134を使用している点で、第5の実施例と異なっている。本実施例では、誘導素子L1及びL2の中間点をトランジスタ134のエミッタに接続して電圧の一部を帰還させる。信号電極110は、トランジスタ134のベースと容量素子Cvに接続する。また、基準電極120は、回路GND、及び容量素子Cvと誘導素子L2に接続する。これら信号電極110と基準電極120は、さらに伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合し、誘導素子L1及びL2と並列に接続される容量素子の役割を果たす。
【0102】
図12の容量素子Cvは、信号電極110から伝送媒体300及び空間400を経由して基準電極120に至る静電結合容量Cxよりも小さい静電容量を持つものとする。本実施例の構成する発振回路の発振周波数は、第5の実施例と同様、式(13)で決定される。よって、式(14)の発振条件を満たすように図12に示した回路を構成することで、本実施例に係る送信器100において、搬送波を共振周波数で発振させることができる。
【0103】
本実施例においては、第5の実施例と異なり、変調部140のFET144は発振部130の電源136に接続される。そして、伝送対象の信号に応じて変調器142によりFET144の出力を制御することで、電源136からの発振部への電力の供給をスイッチングさせることができる。それにより、本実施例の構成する発振回路の発振と停止を制御し、発振状態に信号を変調して伝送することが可能となる。
【0104】
以上説明した第6の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0105】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。そして、そうした変更例についても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0106】
例えば、一般に、発振回路において配線部分が持つ浮遊静電容量を電極などを接続することにより積極的に大きくし、これを発振に積極的に活用して通信を行う送信器、通信システム及び通信方法は、本発明の技術的範囲に属すると理解されるべきである。
【0107】
また、例えば搬送波の変調方法として、信号に応じて(i)発振部の増幅器の入力電圧レベルを変化させる、(ii)発振部の電源をスイッチングさせる、(iii)1つ以上の回路定数を変化させる、という3つの方法について説明したが、その代わりに発振回路の配線の一部をスイッチングさせてもよい。
【0108】
さらに、前述したように、本発明を静電界通信による情報信号の伝送に適用する代わりに、送信器から受信器への電力の供給に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの適用例を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る通信システムの別の適用例を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る通信システムのさらに別の適用例を示す概略図である。
【図4】一実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【図5】送受信器にインダクタンスを導入しない場合の通信特性をプロットした特性図である。
【図6】送受信器にインダクタンスを導入してLC共振を生じ得る場合の通信特性をプロットした特性図である。
【図7】第1の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【図9】第3の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【図10】第4の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【図11】第5の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【図12】第6の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0110】
10 通信システム
100 送信器
110 信号電極
120 基準電極
130 発振部
140 変調部
200 受信器
300 伝送媒体
400 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に送信器、通信システム、通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送信器と受信器の間の電界を変化させることで信号を伝達する、静電界通信と呼ばれる技術が提案されている。静電界通信では、放射性の電波を利用して無線通信を行うのではなく、アンテナや伝送媒体間の静電結合を利用して無線通信を行う。
【0003】
下記特許文献1〜3には、静電界通信の伝送媒体として人体を用いる技術が開示されている。こうした技術は人体通信と呼ばれ、携帯機器や人体に装着可能な機器と他の機器との間のデータ伝送などへの応用が期待されている。
【0004】
下記特許文献4、5は、静電界通信の伝送媒体を人体に限らず、また電位差の基準としての経路を不要とすることで利用環境の制約を除去し安定した通信の実現を図っている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−228524
【特許文献2】特開平10−229357
【特許文献3】特表平11−509380
【特許文献4】特開2006−324774
【特許文献5】特開2006−324775
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、通信システムにおいては、伝達利得を高めてより良い通信特性を実現することが求められる。静電界通信では、伝達利得は送受信器の電極及び伝送媒体が空間または大地に対して持つ静電容量に支配される。しかしながら、これら静電容量は電極の形状、電極と伝送媒体間の距離、その他電極の周囲の環境に依存して大きく変わることから、安定して高い伝達利得を維持することが困難であった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、静電界通信において、高い伝達利得を安定して維持することの可能な、新規かつ改良された送信器、通信システム、通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、静電界を用いて伝送を行う送信器であって、伝送媒体上に搬送波を出力する第1の電極と、前記第1の電極との間で少なくとも前記伝送媒体の一部を介して静電結合する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて正帰還回路を形成し前記搬送波を発振させる発振部と、を備えることを特徴とする送信器が提供される。
【0009】
かかる構成によれば、前記第1の電極と前記第2の電極の前記静電結合の静電容量は、前記伝送媒体の特性または周囲の環境に応じて変化し、そのように変化する静電容量を含む前記正帰還回路により前記搬送波が発振される。このとき、当該搬送波の発振周波数は、前記正帰還回路の特性に応じた共振周波数となる。従って、伝送媒体の特性または周囲の環境が変化する場合にも安定して、第1の電極から伝送媒体上に出力される搬送波を共振周波数で発振させることが可能となる。
【0010】
前記送信器は、さらに情報に応じて変調される信号を生成する変調部を備え、前記搬送波によって前記信号を伝送してもよい。かかる構成によれば、安定して共振周波数で発振する搬送波により変調された前記信号を伝送することができる。
【0011】
前記変調部は、前記搬送波の発振状態を変化させることにより前記信号を変調してもよい。かかる構成によれば、変化する前記搬送波の周波数に影響されずに高い伝達利得で情報を伝送することが可能となる。
【0012】
さらに、前記変調部は、前記発振部の出力電圧に加えるオフセットを制御することで、前記搬送波の前記発振状態を変化させてもよい。かかる構成によれば、前記発振部の出力電圧をオフセットにより飽和させて前記搬送波の発振を停止させ、オフセットを無くすことで発振を再開させることができる。
【0013】
その代わりに、前記変調部は、前記発振部の1つ以上の回路定数を制御することで、前記搬送波の前記発振状態を変化させてもよい。かかる構成によれば、回路の発振条件を充足しないように前記発振部の1つ以上の回路定数を変化させて発振を停止させ、再び発振条件を充足させることで発振を再開させることができる。
【0014】
前記変調部は、前記発振部の電源をスイッチングさせることにより前記信号を変調してもよい。かかる構成によれば、変化する前記搬送波の周波数に影響されずに情報を伝送することが可能となる。
【0015】
前記送信器は、前記搬送波によって電力を伝送してもよい。安定して共振周波数で発振する搬送波により電力を供給することができる。
【0016】
前記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、送信器と受信器とが静電界を用いて伝送を行う通信システムであって、前記送信器は、伝送媒体上に搬送波を出力する第1の電極と、前記第1の電極との間で少なくとも前記伝送媒体の一部を介して静電結合する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて正帰還回路を形成し前記搬送波を発振させる発振部と、を備えることを特徴とする通信システムが提供される。
【0017】
かかる構成によれば、静電界を用いて伝送を行う通信システムにおいて、伝送媒体の特性または周囲の環境が変化する場合にも安定して、送信器と受信器との間の伝送媒体上に出力される搬送波を共振周波数で発振させることが可能となる。
【0018】
前記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、静電界を用いて伝送を行う通信方法であって、第1の電極と第2の電極とを少なくとも伝送媒体の一部を介して静電結合させ、前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて形成する正帰還回路により搬送波を発振させ、発振させた前記搬送波を前記第1の電極から出力して伝送を行う、通信方法が提供される。
【0019】
かかる構成によれば、静電界を用いて伝送を行う通信方法において、伝送媒体の特性または周囲の環境が変化する場合にも安定して、伝送媒体上に出力される搬送波を共振周波数で発振させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、静電界通信において、高い伝達利得を安定して維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、添付した図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
まず、図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム10の適用場面の一例を示す概念図である。図1を参照すると、通信システム10は、送信器100と受信器200とを備える。送信器100は、典型的には据え置き型の機器に相当し、例えばPC(パーソナルコンピュータ)やワークステーションなどの汎用目的のコンピュータ、またはICカードの読取装置などの特定目的の通信装置であってもよい。受信器200は、典型的には携帯型の機器に相当し、例えば携帯電話、PDA(携帯情報端末)、または通信機能を備えたゲーム機器若しくは音楽再生機などであってもよい。送信器100は、給電回路102、送信電極110、及び送信電極120を備える。受信器200は、負荷回路202、受信電極210、及び受信電極220を備える。
【0023】
図1の通信システム10において通信を行う場合には、図示しているように、送信電極110と受信電極210、送信電極120と受信電極220がそれぞれ相対するように人為的に配置される。これにより相対する電極間に静電結合が生じ、送信器100の両電極間の位相差が静電結合を介して受信器200の両電極間に伝わることにより、通信が成立する。
【0024】
図2は、通信システム10の適用場面の他の例を示す概念図である。図2に示した送信器100及び受信器200は、典型的にはいずれも前述したような携帯型の機器に相当する。
【0025】
図2の通信システム10において通信を行う場合には、図示しているように、送信器100の一方の電極(例えば送信電極110)と受信器200の一方の電極(例えば受信電極210)が相対するように人為的に配置される。これにより相対する一組の電極間に静電結合が生じる。また、送信器100と受信器200の他方の電極(例えば送信電極120と受信電極220)も共に空間に対して静電容量を持ち、これら電極間にも空間を介した静電結合が生じる。よって、通信システム10は閉ループを形成し、通信が可能となる。
【0026】
図3は、通信システム10の適用場面のさらに別の例を示す概念図である。図3を参照すると、送信器100と受信器200の間に伝送媒体としての人体が存在する。ここでは伝送媒体として人体を示しているが、伝送媒体として例えば銅、鉄等の金属に代表される導電体、純水、ガラス等に代表される誘電体、またはこれらの複合体を用いてもよい。また、本発明の一実施形態として、図1または図2に示しているような送信器100と受信器200の間の空間を伝送媒体として用いてもよい。
【0027】
送信器100及び受信器100は、それぞれ一方の電極(例えば送信電極110と受信電極210)が伝送媒体に相対するように人為的に配置される。これにより、伝送媒体に相対して配置された2つの電極と伝送媒体との間に静電結合が生じる。さらに、送信器100及び受信器100の他方の電極(例えば送信電極120と受信電極220)が伝送媒体から相対的に離れた位置に人為的に配置される。これら2つの電極は空間に対して静電容量を持ち、空間を介して静電結合を生じる。よって、通信システム10は閉ループを形成し、通信が可能となる。
【0028】
図4は、図1〜図3を用いて説明した通信システムについて、各電極の周囲に生じる静電結合の静電容量を構成要素として示した概略図である。
【0029】
図4に示した通信システム10は、前述の例と同様、送信器100と受信器200とを備える。送信器100と受信器200の間には、伝送媒体300が存在する。伝送媒体300は、図1または図2においては相対する一組の電極間の伝送路(送受信器間の空間の一部、及び/または送受信器の筐体(図1、図2には示していない)の一部を含む)、図3においては例えば図中の人体などに相当する。さらに、送受信器の周辺には空間、あるいは大地を意味する空間400が存在する。
【0030】
通信システム10の送信器100は、給電回路102、及び2つの電極110、120を備える。受信器200は、負荷回路202、及び2つの電極210、220を備える。これら送信器100と受信器200の4つの電極のうち、伝送媒体300の近くに配置される電極を信号電極110、210、伝送媒体300から相対的に離れて配置される電極を基準電極120、220とする。
【0031】
図4に容量素子の記号で示しているように、2つの信号電極110、210は共に伝送媒体300と静電結合し、静電容量Csを持つ。また、2つの基準電極120、220は共に空間400と静電結合し、静電容量Crを持つ。この結果、給電回路102、伝送媒体300、負荷回路202、空間400を経由する閉じた回路が形成され、送信器100の両電極間の位相差が静電結合を介して受信器200の両電極間に伝わることにより、後述するように給電回路から負荷回路へ信号、または電力を供給することができる。なお、伝送媒体300も空間400に対して静電容量Cmを持つ。この経路は、給電回路102から負荷回路202への伝送の観点からは損失にあたる。一方、各信号電極が空間400に対して持つ静電容量、及び各基準電極が伝送媒体に対して持つ静電容量は、回路全体に対する寄与が小さいことを想定し、図示を省略している。
【0032】
通信システム10の通信の特性を良好なものとするためには、伝達利得を高くすることが望ましい。通信システム10の伝達利得は前述の静電容量Cs及びCrに支配されるが、これら静電容量は電極の形状、信号電極と伝送媒体間の距離、基準電極と空間の間の距離等に依存して変動し安定しない。また、低周波数帯域では、周波数の低下に比例して伝達利得も低下する。
【0033】
そこで、図4に示しているように給電回路102及び負荷回路202に誘導素子Lを実装し、インピーダンス整合により送信器100と受信器200との間にLC共振を発生させて、伝達利得を向上させることが有効である。
【0034】
給電回路102及び負荷回路202に誘導素子を実装しない場合の回路の伝送特性を式(1)に表す。
【0035】
【数1】
【0036】
なお、式(1)では、伝送媒体300は完全導体であり、給電回路102の信号源インピーダンスr1と負荷回路202の負荷インピーダンスr2は共にrである(r1=r2=r)と仮定している。ここでCpは、各信号電極が伝送媒体300に対して持つ静電容量Csと各基準電極が空間400に対して持つ静電容量Cmの直列合成容量であって、式(2)で表される。
【0037】
【数2】
【0038】
図5は、式(1)の伝送特性をプロットしたものである。横軸は通信に用いる搬送波の周波数[MHz]、縦軸は周波数に対する送受信器間の伝達利得[dB]である。ここでは、給電回路102の信号源インピーダンスr1、負荷回路202の負荷インピーダンスr2を、r1=r2=50Ωとした。また、各信号電極と伝送媒体300の間の静電容量Cs=7pFとした。この数値は、半径5cmの導体円板2枚を1cmの間隔を置いて平行に対向させたときの静電容量に等しい。また、各基準電極と空間400の間の静電容量Cr=3.5pFとした。この数値は、半径5cmの導体円板が空間(または充分に離れた大地)に対して持つ静電容量に等しい。さらに、伝送媒体300と空間400の間の静電容量をCm=150pFとした。この数値は、人体が空間に対して持つ静電容量が100pF程度であることを参考にした値である。図5を参照すると、例えば50MHzの搬送波を用いて通信を行った場合の伝達利得は、約−60dBであることが分かる。
【0039】
一方、伝送媒体300を完全導体と仮定し、図4の給電回路102及び負荷回路202に誘導素子Lを実装する場合の回路の伝送特性を式(3)に表す。
【0040】
【数3】
【0041】
ここで、式(3)の伝送特性は、LC共振を起こしている場合を前提としている。式(3)におけるLC共振の共振周波数は、式(4)で表される。
【0042】
【数4】
【0043】
図6は、式(3)の伝送特性をプロットしたものである。ここでは、実装するインダクタンスの大きさをL=4000μHとした。図6を参照すると、50MHz付近で搬送波がLC共振を生じ、伝達利得のピーク値が約−5dBとなっている。このことから、通信システム10の給電回路102及び負荷回路202に誘導素子Lを実装することで、誘導素子Lを実装しない場合よりも一定の周波数帯域(図6の場合は50MHz付近)の伝送効率を大きく改善できることが分かる。
【0044】
しかしながら、図6において、伝送効率のよい周波数帯域(即ち高い伝達利得を示す周波数帯域)は50MHz付近の狭い帯域に限られている。これは、式(3)の伝送特性を決定付けるパラメータ(例えばCp、Cmなど)が僅かに変化するだけでも急激に伝送効率が低下することを意味している。そして、式(3)の伝送特性を決定付けるこれらパラメータは、前述の通り電極の配置等に依存して大きく変動し得る。よって、図1〜図3に例示した通信システム10の様々な適用場面を想定すると、図4の回路構成において誘導素子のインダクタンスの値を適切に設定するだけでは、持続的に伝送効率の高い通信を行うことは困難であると理解される。
【0045】
そこで、本発明の一実施形態として以下にさらに詳しく説明するように、通信システム10の送信器100において、信号電極110と基準電極120の間の少なくとも伝送媒体300の一部を介する静電結合の静電容量を用いて発振回路を構成する。そのようにして送受信器間の搬送波をインピーダンス整合した共振周波数で発振させ、高い伝達利得を安定して維持することを可能とする。以下、送信器100の詳細な構成に係る6つの実施例について図7〜12を用いて説明する。
【0046】
[第1の実施例]
図7は、第1の実施例における送信器100の構成を示している。図7を参照すると、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図7の通り配置される増幅器132、抵抗器r、及び誘導素子Lを備える。変調部140は、変調器142、電界効果トランジスタ(FET)144、及び抵抗器Rを備える。
【0047】
本実施例は、LC直列共振回路を応用したものである。本実施例では、図示しているように、増幅器132の出力端子から順に、抵抗器r、誘導素子L、信号電極110を直列に接続する。また、基準電極120を増幅器132の入力端子に接続する。通常のLC直列共振回路では、これら信号電極110と基準電極120の代わりに静電容量素子を配置するが、本実施例では、両電極を配置して寄生容量を大きくし、伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合させてこれを搬送波の発振に活用する。これにより、等価回路上では、信号電極110、基準電極120、増幅器132、抵抗器r、及び誘導素子Lによって一巡する正帰還回路が構成されたことになる。
【0048】
信号電極110から伝送媒体300及び空間400を経由して基準電極120に至る静電結合容量をCxとすると、Cxは図4におけるCs、Cm、Crの直列合成容量に相当する。このCxを用いて、本実施例に係るLC直列共振回路の一巡伝達関数H(ω)は式(5)で表される。なお、式中のkは増幅器132の増幅率である。
【0049】
【数5】
【0050】
このとき、発振周波数ωは式(6)で表される。
【0051】
【数6】
【0052】
発振条件は式(7)で表される。
【0053】
【数7】
【0054】
ここで式(7)の発振条件を満たすようにk、r、及びRの値を設定すると、信号電極110から伝送媒体300へ出力される搬送波は、式(6)の周波数で発振する。式(6)の周波数は式(4)の共振周波数に一致している。よって、本実施例に係る送信器100において発振する搬送波は、信号電極110と基準電極120の間の静電容量によらず共振周波数で発振し得ることが分かる。なお、搬送波を発振させるためには、式(7)の左辺が1に等しくなるように各回路定数を設定すれば十分である。しかしながら、正帰還回路内に遅延がある場合には、式(5)の一巡伝達関数が変化するため、当該遅延による影響を考慮し、式(7)の左辺が1より大きくなるように各回路定数を設定するのが好適である。正帰還回路内の遅延の考慮については、後述する他の実施形態についても同様である。
【0055】
一方、図7に示した増幅器132の入力端子は、基準電極120に加えて、変調部140のFET144に接続される。変調器142は、伝送対象の信号に応じてFET144をスイッチングさせることができる。このスイッチングの結果、増幅器132の入力電圧レベルが変化すると、増幅器132の出力電圧に伝送対象の信号に応じたオフセットが生じる。このオフセットを例えば発振部130の電源電圧(図示していない)と同等のレベルにまで大きくすると、出力電圧が飽和して一定となり、発振は停止する。そして、オフセットを無くすと出力電圧が元のレベルに戻って再度発振が生じる。こうした原理を用いて、発振部130、信号電極110及び基準電極120により構成する前述のLC直列発振回路の発振と停止を制御し、その発振状態(発振/停止)に信号を変調して伝送することが可能となる。
【0056】
なお、搬送波の発振状態を制御する方法は、FET144をスイッチングさせる方法に限定されない。例えば、FET144の代わりに発振部130の電源をスイッチングさせてもよい。また、式(7)の発振条件を満たさないように1つ以上の回路定数(r、L、Rなど)を信号に応じて変化させて発振状態を制御してもよい。
【0057】
留意すべき点として、本実施例(本明細書にて後述する他の実施例についても同様)に係る発振回路により発振する搬送波の周波数は、適用環境の特性の変動に応じて変化し、一定とならない。そのため、図4に示した受信器200の負荷回路においては、広帯域にわたる周波数の搬送波を受信できるように、入力インピーダンスを高くし、負荷回路202にインダクタンスを実装しないことが望ましい。
【0058】
また、搬送波の周波数を調整する余地を残しておくために、回路の一部に容量素子を配置して共振周波数の変化する範囲を狭め、または可変容量素子を配置して共振周波数を制御し安定化させてもよい。共振周波数の安定化については、後述する第3の実施例に関連してより詳しく説明する。
【0059】
以上説明した第1の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0060】
なお、送受信器間で高い伝達利得を安定して維持することのできるという本発明の効果は、情報信号を伝送するための通信のみならず、送受信器間の電力の伝送にも適用し得る。一例として、図1に示したような適用場面においてPCから携帯機器へ電力を供給するような場合には、機器間を接続するケーブル等を要することなく、本発明を適用して伝達利得の高い状態で電力を供給することができる。
【0061】
[第2の実施例]
次に、第2の実施例について説明する。図8は、第2の実施例における送信器100の構成を示している。本実施例においても、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図8の通り配置される増幅器132、誘導素子L、及び抵抗器r、R、R1、R2を備える。変調部140は、変調器142、及び電界効果トランジスタ(FET)144を備える。
【0062】
本実施例は、第1の実施例と同様にLC直列発振回路を応用し、増幅器としてオペアンプを使用している。本実施例では、図示しているように、増幅器132の出力端子から順に、抵抗器r、誘導素子L、信号電極110を直列に接続する。また、基準電極120を増幅器132の非反転入力端子と抵抗器Rに接続する。これら信号電極110と基準電極120は、さらに伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合する。これにより、等価回路上では、信号電極110、基準電極120、増幅器132、抵抗器R、及び誘導素子Lによって一巡する正帰還回路が構成されたことになる。抵抗器Rは他方で基準電位点(以下、回路GNDとする)に接続され、増幅器132、即ちオペアンプの入力電位が確定される。増幅器132の反転入力端子は抵抗器R1、R2に接続される。また、他方で抵抗器R1は変調部140のFET144に、抵抗器R2は増幅器132の出力端子に接続され、これによりオペアンプを利用した電圧の増幅が実現される。
【0063】
本実施例に係る発振回路の一巡伝達関数は、第1の実施例と同様に式(5)で表される。ここで、式(5)の増幅比kは、本実施例の場合には式(8)で表される。
【0064】
【数8】
【0065】
よって、本実施例の場合、式(7)の発振条件を満たすようにr、R、R1、及びR2の値を設定することにより、送信器100において発振する搬送波が、信号電極110と基準電極120の間の静電容量によらず共振周波数で発振し得ることが分かる。なお、本実施形態では、増幅器132を用いて非反転増幅回路を構成した場合について図示している。しかしながら、前述の正帰還回路内の遅延が位相に換算してπ以上となる場合には、増幅比kが0以下となるように、必要に応じて非反転増幅回路ではなく反転増幅回路を増幅器132を用いて構成してもよい。
【0066】
本実施例に係る変調部140の役割は、前述の実施例1における役割と同様である。即ち、変調器142は、伝送対象の信号に応じてFET144をスイッチングさせ、発振部130、信号電極110及び基準電極120により構成するLC直列発振回路の発振と停止を制御し、その発振状態(発振/停止)に信号を変調して伝送することができる。その代わりに、FET144の代わりに発振部130の電源をスイッチングさせ、または式(7)の発振条件を満たさないように1つ以上の回路定数(r、R、R1、及びR2など)を信号に応じて変化させて発振状態を制御してもよい。
【0067】
以上説明した第2の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0068】
[第3の実施例]
次に、第3の実施例について説明する。図9は、第3の実施例における送信器100の構成を示している。図9を参照すると、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図9の通り配置される増幅器132、抵抗器R、R1、R2、誘導素子L、及び容量素子Cvを備える。変調部140は、変調器142及び電界効果トランジスタ(FET)144を備える。
【0069】
本実施例は、LC発振回路の一形態として知られるコルピッツ型発振回路を応用したものである。一般的に、コルピッツ型発振回路は、誘導素子及び容量素子を含む正帰還回路と、増幅回路から構成される。本実施例では、図示しているように、信号電極110を誘導素子Lと抵抗器Rに接続する。また、基準電極120を回路GNDと容量素子Cvの間に接続する。これら信号電極110と基準電極120は、さらに伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合する。これにより、等価回路上では、信号電極110、基準電極120、容量素子Cv、及び誘導素子Lによって一巡する正帰還回路が構成されたことになる。
【0070】
一方、増幅器132、抵抗器R、R1、及びR2は、増幅回路を構成するために用いられる。本実施例では、増幅器132の反転入力端子を抵抗器R1とR2の間に、非反転入力端子を変調部140のFET144に、出力端子を抵抗器RとR2の間に接続する。このように構成した増幅回路により、変調部140からの入力電圧は増幅された上で前述の正帰還回路に伝達される。そして、正帰還回路により帰還する電圧との時間差によって、搬送波を発振させることができる。
【0071】
信号電極110から伝送媒体300及び空間400を経由して基準電極120に至る静電結合容量Cxを用いると、本実施例に係る発振回路の一巡伝達関数H(ω)は式(9)で表される。
【0072】
【数9】
【0073】
このとき、発振回路の発振周波数ωは式(10)で表される。なお、記号//は並列合成容量を表す。
【0074】
【数10】
【0075】
式(9)の発振条件は式(11)で表される。
【0076】
【数11】
【0077】
よって、この発振条件を満たすように図9に示した回路を構成することで、本実施例に係る送信器100において、搬送波を共振周波数で発振させることができる。
【0078】
一方、前述したように、図9に示した増幅器132の非反転入力端子は、変調部140のFET144に接続される。これにより、第1の実施例に関連して説明した原理を用いて、伝送対象の信号に応じて変調器142によりFET144をスイッチングさせ、発振回路の発振と停止を制御し、その発振状態に信号を変調して伝送することが可能となる。搬送波の発振状態を制御する方法は、前述のFET144をスイッチングさせる方法に限定されず、FET144の代わりに発振部130の電源(図示していない)をスイッチングさせてもよい。また、式(11)の発振条件を満たさないように1つ以上の回路定数(R1、R2など)を信号に応じて変化させて発振状態を制御してもよい。
【0079】
以上説明した第3の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0080】
ここで、図9に示した静電容量Cvを用いて搬送波の周波数を調整してもよい。この場合の発振周波数は、静電容量Cvと電極間の静電容量との合成容量で決定される。さらにこの静電容量Cvを可変とし、前述の合成容量を一定になるように制御することで、搬送波の周波数の安定化を図ってもよい。例えば、所定の周波数で発振するローカル発振器、ローカル発振器の出力周波数と信号電極110の出力周波数の位相差を検出する位相比較器、及び前記位相差に基づいて可変静電容量Cvの両端の電圧を変化させるループフィルタをさらに備えることで、帰還ループを構成して発振周波数を安定化させることができる。
【0081】
[第4の実施例]
次に、第4の実施例について説明する。図10は、第4の実施例における送信器100の構成を示している。本実施例においても、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図10の通り配置されるトランジスタ134、電源136、誘導素子L、及び容量素子C、Cvを備える。変調部140は、変調器142及び電界効果トランジスタ(FET)144を備える。
【0082】
本実施例は、第3の実施例と同様にコルピッツ型発振回路を応用しているが、増幅回路としてトランジスタ134を使用している点で第3の実施例と異なっている。本実施例では、図示しているように、信号電極110をトランジスタ134のエミッタと容量素子Cvの間に接続する。また、基準電極120を回路GND、及び誘導素子Lと回路GNDの間に接続する。これら信号電極110と基準電極120は、さらに伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合する。これにより、等価回路上では、信号電極110、基準電極120、誘導素子L、及び容量素子Cvによって一巡する正帰還回路が構成されたことになる。
【0083】
また、トランジスタ134のベースは誘導素子Lと容量素子Cvの間に、エミッタは容量素子Cvと信号電極110の間に、コレクタは電源136に接続される。これにより、変調部140からの入力電圧は増幅された上で前述の正帰還回路に伝達される。そして、正帰還回路により帰還する電圧との時間差によって、搬送波を発振させることができる。
【0084】
図10の容量素子Cvは、信号電極110から伝送媒体300及び空間400を経由して基準電極120に至る静電結合容量Cxよりも小さい静電容量を持つものとする。第3の実施例と同様、本実施例の構成する発振回路の伝達関数は式(9)、発振周波数は式(10)で表される。よって、式(11)の発振条件を満たすように図10に示した回路を構成することで、本実施例に係る送信器100において、搬送波を共振周波数で発振させることができる。
【0085】
本実施例においては、第3の実施例と異なり、変調部140のFET144は発振部130の電源136に接続される。そして、伝送対象の信号に応じて変調器142によりFET144の出力を制御することで、電源136からの発振部への電力の供給をスイッチングさせることができる。それにより、本実施例の構成する発振回路の発振と停止を制御し、発振状態に信号を変調して伝送することが可能となる。
【0086】
以上説明した第4の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0087】
[第5の実施例]
次に、第5の実施例について説明する。図11は、第5の実施例における送信器100の構成を示している。図11を参照すると、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図11の通り配置される増幅器132、抵抗器R、R1、R2、及び誘導素子L1、L2を備える。変調部140は、変調器142及び電界効果トランジスタ(FET)144を備える。
【0088】
本実施例は、LC発振回路の一形態として知られるハートリー型発振回路を応用したものである。一般的に、ハートリー型発振回路は、前述のコルピッツ型発振回路の容量素子と並列に接続された誘導素子の中間から電圧の一部を正帰還させる構成をとる。本実施例では、誘導素子L1及びL2のそれぞれ一方の端を回路GNDに接続し、ここを電圧の一部を帰還させる中間点とする。信号電極110は、誘導素子L2と抵抗器Rの間に接続する。また、基準電極120は、誘導素子L1と抵抗器R1の間の配線、及び回路GNDに接続する。これら信号電極110と基準電極120は、さらに伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合し、誘導素子L1及びL2と並列に接続される容量素子の役割を果たす。
【0089】
一方、増幅器132、抵抗器R、R1、及びR2は、第3の実施例と同様に増幅回路を構成するために用いられる。本実施例においても、増幅器132の反転入力端子を抵抗器R1とR2の間に、非反転入力端子を変調部140のFET144に、出力端子を抵抗器RとR2の間に接続する。このように構成した増幅回路により変調部140からの入力電圧は増幅され、さらに正帰還される電圧の入出力の時間差によって搬送波を発振させることができる。
【0090】
信号電極110から伝送媒体300及び空間400を経由して基準電極120に至る静電結合容量Cxを用いて、本実施例に係る発振回路の一巡伝達関数H(ω)は式(12)で表される。
【0091】
【数12】
【0092】
このとき、発振周波数ωは式(13)で表される。
【0093】
【数13】
【0094】
式(12)の発振条件は式(14)で表される。
【0095】
【数14】
【0096】
ここで、誘導素子L1、L2を回路GNDを中間点とする1つの誘導素子(インダクタンスはL1+L2となる)と見なすと、式(13)で表される発振周波数ωは式(4)の共振周波数と同等となる。よって、式(14)の発振条件を満たすように図11に示した回路を構成することで、本実施例に係る送信器100において、搬送波を共振周波数で発振させることができる。
【0097】
本実施例においても、第3の実施例と同様に、発振部130の増幅器132の非反転入力端子は変調部140のFET144と接続される。これにより、第1の実施例に関連して説明した原理を用いて、伝送対象の信号に応じて変調器142によりFET144をスイッチングさせ、発振回路の発振と停止を制御し、その発振状態に信号を変調して伝送することが可能となる。搬送波の発振状態を制御する方法は、前述のFET144をスイッチングさせる方法に限定されず、FET144の代わりに発振回路の電源をスイッチングさせてもよい。また、式(14)の発振条件を満たさないように1つ以上の回路定数(R1、R2、L1、L2など)を信号に応じて変化させて発振状態を制御してもよい。
【0098】
また、搬送波の周波数を調整するために、L1−R1間の配線とL2−R間の配線をつなぐ静電容量Cv(図示していない)を追加的に備えてもよい。この場合、発振周波数は静電容量Cvと信号電極110−基準電極120間の静電結合容量Cxの並列合成容量により決定される。但し、共振周波数で発振させる通信を維持するためには、追加する静電容量CvをCxよりも小さい値とすることが望ましい。また、共振周波数を安定化させるために、第3の実施例に関連する前述の説明と同様、静電容量Cvを可変とし、ローカル発振器、位相比較器、及びループフィルタをさらに備えて静電容量Cvを制御してもよい。
【0099】
以上説明した第5の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0100】
[第6の実施例]
次に、第6の実施例について説明する。図12は、第6の実施例における送信器100の構成を示している。前述の実施例と同様、送信器100は、信号電極110、基準電極120、発振部130、及び変調部140を備える。このうち、発振部130及び変調部140が、図4の給電回路102に相当する。発振部130は、図12の通り配置されるトランジスタ134、電源136、誘導素子L1、L2、及び容量素子Cvを備える。変調部140は、変調器142及び電界効果トランジスタ(FET)144を備える。
【0101】
本実施例は、第5の実施例と同様にハートリー型発振回路を応用しているが、増幅回路としてトランジスタ134を使用している点で、第5の実施例と異なっている。本実施例では、誘導素子L1及びL2の中間点をトランジスタ134のエミッタに接続して電圧の一部を帰還させる。信号電極110は、トランジスタ134のベースと容量素子Cvに接続する。また、基準電極120は、回路GND、及び容量素子Cvと誘導素子L2に接続する。これら信号電極110と基準電極120は、さらに伝送媒体300及び空間400を経由して静電結合し、誘導素子L1及びL2と並列に接続される容量素子の役割を果たす。
【0102】
図12の容量素子Cvは、信号電極110から伝送媒体300及び空間400を経由して基準電極120に至る静電結合容量Cxよりも小さい静電容量を持つものとする。本実施例の構成する発振回路の発振周波数は、第5の実施例と同様、式(13)で決定される。よって、式(14)の発振条件を満たすように図12に示した回路を構成することで、本実施例に係る送信器100において、搬送波を共振周波数で発振させることができる。
【0103】
本実施例においては、第5の実施例と異なり、変調部140のFET144は発振部130の電源136に接続される。そして、伝送対象の信号に応じて変調器142によりFET144の出力を制御することで、電源136からの発振部への電力の供給をスイッチングさせることができる。それにより、本実施例の構成する発振回路の発振と停止を制御し、発振状態に信号を変調して伝送することが可能となる。
【0104】
以上説明した第6の実施例に係る送信器100の構成により、共振周波数で発振する搬送波に信号を載せて高い伝達利得を安定して維持しながら静電界通信を行うことができる。
【0105】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。そして、そうした変更例についても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0106】
例えば、一般に、発振回路において配線部分が持つ浮遊静電容量を電極などを接続することにより積極的に大きくし、これを発振に積極的に活用して通信を行う送信器、通信システム及び通信方法は、本発明の技術的範囲に属すると理解されるべきである。
【0107】
また、例えば搬送波の変調方法として、信号に応じて(i)発振部の増幅器の入力電圧レベルを変化させる、(ii)発振部の電源をスイッチングさせる、(iii)1つ以上の回路定数を変化させる、という3つの方法について説明したが、その代わりに発振回路の配線の一部をスイッチングさせてもよい。
【0108】
さらに、前述したように、本発明を静電界通信による情報信号の伝送に適用する代わりに、送信器から受信器への電力の供給に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの適用例を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る通信システムの別の適用例を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る通信システムのさらに別の適用例を示す概略図である。
【図4】一実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【図5】送受信器にインダクタンスを導入しない場合の通信特性をプロットした特性図である。
【図6】送受信器にインダクタンスを導入してLC共振を生じ得る場合の通信特性をプロットした特性図である。
【図7】第1の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【図9】第3の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【図10】第4の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【図11】第5の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【図12】第6の実施例に係る送信器の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0110】
10 通信システム
100 送信器
110 信号電極
120 基準電極
130 発振部
140 変調部
200 受信器
300 伝送媒体
400 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電界を用いて伝送を行う送信器であって、
伝送媒体上に搬送波を出力する第1の電極と、
前記第1の電極との間で少なくとも前記伝送媒体の一部を介して静電結合する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて正帰還回路を形成し前記搬送波を発振させる発振部と、
を備える送信器。
【請求項2】
前記送信器は、さらに情報に応じて変調される信号を生成する変調部を備え、前記搬送波によって前記信号を伝送することを特徴とする、請求項1に記載の送信器。
【請求項3】
前記変調部は、前記搬送波の発振状態を変化させることにより前記信号を変調することを特徴とする、請求項2に記載の送信器。
【請求項4】
前記変調部は、前記発振部の出力電圧に加えるオフセットを制御することで、前記搬送波の前記発振状態を変化させることを特徴とする、請求項3に記載の送信器。
【請求項5】
前記変調部は、前記発振部の1つ以上の回路定数を制御することで、前記搬送波の前記発振状態を変化させることを特徴とする、請求項3に記載の送信器。
【請求項6】
前記変調部は、前記発振部の電源をスイッチングさせることにより前記信号を変調することを特徴とする、請求項2に記載の送信器。
【請求項7】
前記送信器は、前記搬送波によって電力を伝送することを特徴とする、請求項1に記載の送信器。
【請求項8】
送信器と受信器とが静電界を用いて伝送を行う通信システムであって、
前記送信器は、
伝送媒体上に搬送波を出力する第1の電極と、
前記第1の電極との間で少なくとも前記伝送媒体の一部を介して静電結合する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて正帰還回路を形成し前記搬送波を発振させる発振部と、
を備えることを特徴とする、通信システム。
【請求項9】
静電界を用いて伝送を行う通信方法であって、
第1の電極と第2の電極とを少なくとも伝送媒体の一部を介して静電結合させ、
前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて形成する正帰還回路により搬送波を発振させ、
発振させた前記搬送波を前記第1の電極から出力して伝送を行う、
通信方法。
【請求項1】
静電界を用いて伝送を行う送信器であって、
伝送媒体上に搬送波を出力する第1の電極と、
前記第1の電極との間で少なくとも前記伝送媒体の一部を介して静電結合する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて正帰還回路を形成し前記搬送波を発振させる発振部と、
を備える送信器。
【請求項2】
前記送信器は、さらに情報に応じて変調される信号を生成する変調部を備え、前記搬送波によって前記信号を伝送することを特徴とする、請求項1に記載の送信器。
【請求項3】
前記変調部は、前記搬送波の発振状態を変化させることにより前記信号を変調することを特徴とする、請求項2に記載の送信器。
【請求項4】
前記変調部は、前記発振部の出力電圧に加えるオフセットを制御することで、前記搬送波の前記発振状態を変化させることを特徴とする、請求項3に記載の送信器。
【請求項5】
前記変調部は、前記発振部の1つ以上の回路定数を制御することで、前記搬送波の前記発振状態を変化させることを特徴とする、請求項3に記載の送信器。
【請求項6】
前記変調部は、前記発振部の電源をスイッチングさせることにより前記信号を変調することを特徴とする、請求項2に記載の送信器。
【請求項7】
前記送信器は、前記搬送波によって電力を伝送することを特徴とする、請求項1に記載の送信器。
【請求項8】
送信器と受信器とが静電界を用いて伝送を行う通信システムであって、
前記送信器は、
伝送媒体上に搬送波を出力する第1の電極と、
前記第1の電極との間で少なくとも前記伝送媒体の一部を介して静電結合する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて正帰還回路を形成し前記搬送波を発振させる発振部と、
を備えることを特徴とする、通信システム。
【請求項9】
静電界を用いて伝送を行う通信方法であって、
第1の電極と第2の電極とを少なくとも伝送媒体の一部を介して静電結合させ、
前記第1の電極と前記第2の電極の間の前記静電結合の静電容量を用いて形成する正帰還回路により搬送波を発振させ、
発振させた前記搬送波を前記第1の電極から出力して伝送を行う、
通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−213062(P2009−213062A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56510(P2008−56510)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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