説明

送風機、これを備えた電池冷却装置および車両用空調装置

【課題】小型化が図れるとともに、空気の吸込み方向および送風方向を変更できる送風機、この送風機を備えた電池冷却装置および車両用空調装置を提供する。
【解決手段】送風機1のファンケーシング20は、吹出口22が第1開口部11および第2開口部12のいずれにも合うように外側ケース10に対して変位する構成である。さらにファンケーシング20は、吹出口22が第1開口部11および第2開口部12の一方に合う位置にあるときに、一方の開口部に接続される通路と吸込口21に直面する外側ケースの内部空間30とを区画する拡大壁24を有する。このような拡大壁24による区画によって、一方の開口部と他方の開口部とを吸込口21を経由して連通させる通風路31が形成されるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つ以上の異なる方向に選択的に送風することができる送風機に関するものであり、また、この送風機を備えた電池冷却装置および車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の送風機としては、例えば特許文献1および特許文献2に記載の装置が知られている。特許文献1に記載の第1従来技術には、異なる複数の方向に空気を吹き出すことができる車両用空調装置が開示されている。第1従来技術の装置は、ケース部内にターボファン等の遠心式ファンを有しており、ケース部の周壁には所定の間隔を設けて第1吹出口〜第4吹出口が形成されている。さらにケース部内で遠心式ファンの外周部より外側には、遠心式ファンから吹き出される空気の送風方向を変更するロータリ式ドアが設けられている。ロータリ式ドアの周壁には、回転軸の中心部について略点対称となる位置に2つの開口部が形成されている。このロータリ式ドアが回動することによって、周壁と2つの開口部にて第1吹出口〜第4吹出口を開閉し、送風方向を変更することができる。このようにして、2つの開口部を通じて車室内に送風したり、車室外に排気したりして複数の方向に送風を行うことができる。
【0003】
特許文献2に記載の第2従来技術は、遠心式ファンが内蔵されたスクロールケーシングを回動させることによって、送風機から吹き出す空気の方向を所定方向に調整することができる車両用空調装置が開示されている。第2従来技術は、電動式のアクチュエータで歯車を介してスクロールケーシングを遠心式ファンの回転軸を中心として回転変位させる。この方式により、目標吹出温度を満たすように送風方向を決定し、冷却器への送風量および加熱器への送風量を調整している。
【特許文献1】特開平11−139138号公報
【特許文献2】特開2004−338694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1従来技術では、2つの開口部を4つの吹出口のいずれかに合わせることによって送風方向を変更することができるものの、遠心式ファンの吸込口は単一の所定の開口であるため、吸い込まれる空気は一方向に限定される。したがって、吸気方向と吹出し方向の両方を変更することができない。
【0005】
第2従来技術についても、第1従来技術と同様に、スクロールケーシングの吸込口は単一の所定の開口であるので、吸気方向は一方向に限定される。したがって、いずれの従来技術においても、吸気方向と吹出し方向とを逆転させるような送風方向を実施することができない。
【0006】
また、遠心式ファンを使用する場合に、吸気方向と吹出し方向を逆転させるための手段として、遠心式ファンの吸込口の上流側と吹出口の上流側とを連絡する第1連絡通路と、吸込口の下流側と吹出口の下流側とを連絡する第2連絡通路と、吸込口および吹出口のそれぞれを開閉するドアと、を設ける従来例がある。
【0007】
この従来例において、通常の遠心式ファンの吹出口から空気を吹き出す場合には、吸込口および吹出口の両方をドアによって開放すれば、吸込口から吸い込まれた空気は遠心式ファンによって吹出口から吹き出されて送風されるようになる。一方、吹出し方向を逆方向にする場合には、吹出口および吸込口のそれぞれをドアで閉じるようにする。これにより、遠心式ファンの回転により、吹出口の下流側の空気が第2連絡通路を通って流れ、吸込口の下流側から遠心式ファンに吸い込まれ、遠心式ファンから吹き出されて第1連絡通路を通って吸込口の上流側に送られるようになる。このようにして、吹出口の下流側の空気が吸込口の上流側に送られ、空気流れを逆方向に変更することができる。
【0008】
しかしながら、この従来例においては、第1連絡通路、第2連絡通路、および開口を開閉するための装置が必要となり、ダクト等の設備およびその設置空間を要するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化が図れるとともに、空気の吸込み方向および送風方向を変更できる送風機、この送風機を備えた電池冷却装置および車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用することができる。なお、特許請求の範囲および下記各手段に記載の括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【0011】
請求項1に記載の送風機に係る発明は、回転軸(2)に沿う方向に吸い込まれる空気を遠心方向に吹き出す遠心式ファン(23)と、遠心式ファンを取り囲む形状であって、空気を吸い込む吸込口(21)および吸い込んだ空気を吹き出す吹出口(22)が形成されるファンケーシング(20)と、ファンケーシングを内部に有し、少なくとも第1開口部(11)および第2開口部(12)が形成される外側ケース(10)と、第1開口部に接続される第1通路(13)と、第2開口部に接続される第2通路(14)と、を備えている。
【0012】
そして、ファンケーシングは、吹出口が第1開口部および前記第2開口部のいずれにも合うように前記外側ケースに対して変位する構成であり、
さらにファンケーシングは、吹出口が第1開口部および第2開口部の一方に合う位置にあるときに、当該一方の開口部に接続される通路と吸込口に直面する外側ケースの内部空間(30)とを区画する仕切り部(24,24A)を有し、仕切り部による当該区画によって、他方の開口部と一方の開口部とをファンケーシングの吸込口を経由して連通させる通風路(31)が形成されることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、ファンケーシングの吹出口は外側ケースに形成された第1開口部および第2開口部のいずれにも合致可能に構成されるため、遠心式ファンによって吹き出される空気をいずれの開口部からでも吹き出すことができる。さらに、当該吹出し口が一方の開口部に合う位置にあるとき仕切り部によって吹出し側の通路と吸込み側の内部空間とが区画されるため、他方の開口部、ファンケーシングの吸込口、一方の開口部の順に連通させる通風路が形成されて、吹出し側の通路の空気が吸込み側の内部空間に逆流することを防止できる。これにより、送風機による吹出し方向を逆転させる双方向の送風が逆流することなく可能になり、さらに、外側ケースとファンケーシングの位置関係を変更することにより、前述の従来例のように通路を増設することなく、双方向の送風を実現することができる。したがって、装置の小型化が図れるとともに、空気の吸込み方向と送風方向の両方を自在に変更できる送風機が得られる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明についてさらに、吸込口が形成されるファンケーシングの面部(27)は、対向する外側ケースの内壁面(15)に対して所定の長さ離間する位置に設けられており、第1開口部および第2開口部はそれぞれ、吹出口よりも外側ケースの内壁面側に大きく開口する拡大開口部分(11a,12a)を備えており、
仕切り部は、吹出口の周縁部から外側ケースの内壁面側に延びて設けられ、各開口部の拡大開口部分を蔽う拡大壁(24)であることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、拡大壁によって吹出し側の通路と吸込み側の内部空間とが区画されるため、ファンケーシングの吹出口を大きくすることなく、他方の開口部、ファンケーシングの吸込口および一方の開口部を連通させる通風路を形成することができ、吹出し側の通路の空気が吸込み側の内部空間に逆流することを防止できる。また、拡大壁の大きさを各開口部の大きさに適合するように調整して設ければ、各種サイズの開口部を備える外側ケースに対応可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明についてさらに、吸込口が形成されるファンケーシングの面部(27)は、対向する外側ケースの内壁面(15)に対して所定の長さ離間する位置に設けられており、第1開口部および第2開口部はそれぞれ、吹出口よりも外側ケースの内壁面側に大きく開口する拡大開口部分(11a,12a)を備えており、
仕切り部は、吸込口周りのファンケーシングの面部から外側ケースの内壁面側に延びて設けられる壁部(28)であって、外側ケースの内部空間を、吸込口および他方の開口部に面する吸込み側空間(32)と一方の開口部に面する吹出し側空間(33)とに区画することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、ファンケーシングの面部から延びて設けられる壁部によって、吹出し側の通路と吸込み側の通路とが区画されるため、他方の開口部、ファンケーシングの吸込口および一方の開口部を連通させる通風路を形成することができ、吹出し側の通路の空気が吸込み側の内部空間に逆流することを防止できる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、外側ケースはさらに第3通路(17)に接続される第3開口部(16)を有しており、ファンケーシングは、吹出口が第1開口部、第2開口部および第3開口部のいずれにも合うように外側ケースに対して変位する構成であり、
さらに前記ファンケーシングは、吹出口が第1開口部、第2開口部および第3開口部のうち一の開口部に合う位置にあるときに、この一の開口部に接続される通路と吸込口に直面する外側ケースの内部空間とを区画する第1の仕切り部と、残りの開口部のうち一つを吸込口に連通しないように閉塞する第2の仕切り部(29)と、を有することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、外側ケースに3つ以上の開口部が形成されている場合に、3つ以上の通路のうちから選択された一の通路に吹き出す空気を他の通路から選択的に吸気することができる。このように、3つ以上の通路の中から、吸気側通路と吹出側通路を任意に選択することができる。したがって、3つ以上の空間や通風路に存在する空気を所望の場所に移動させることができる送風機を提供できる。
【0020】
請求項5に係る電池冷却装置の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の送風機と、複数個の電池モジュールを通電可能に接続し一体にして構成され、第1通路に設置される電池スタック(50)と、外部に放熱する部品であって第1通路に設置される発熱部品(51)と、を備え、さらに電池スタックは第1通路において発熱部品と送風機との間に設置されることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、双方向の送風を可能とする当該送風機を用い、送風機と発熱部品との間に電池スタックを設けることにより、電池スタックを暖機する必要がある場合は第1通路から第2通路に流れる空気流れを形成して発熱部品からの放熱を吸い込んで排出するようにし、電池スタックを冷却する必要がある場合は第2通路から第1通路に流れる空気流れを形成し、電池スタックを冷却することができる。したがって、電池モジュールの暖機と冷却の選択を送風機の送風方向切り替えによって実現できる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発熱部品は、電池モジュールの充放電に用いられ、スイッチング電源装置によって調整される電力を出力する電子部品であることを特徴とする。この発明によれば、電池モジュールの充放電に用いられる既存の電子部品からの放熱を利用して電池スタックの暖機を行うことができる。また、スイッチング電源装置の作動状態を制御することで放熱量の調整が行えるため、既存の部品を活用した暖機能力の調整が実施できる。
【0023】
請求項7に係る車両用空調装置の発明は、空気を送風する手段として請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の送風機を備え、第1通路および第2通路の一方を車室内空間(100a)に連通させ、他方を車外に連通させるように構成したことを特徴とする。この発明によれば、双方向の送風を可能とする当該送風機を用いることにより、送風機による送風方向を第1通路から第2通路に流れる方向、または第2通路から第1通路に流れる方向に切り替えることによって、複雑な通路を備えることなく、車室内から車外への空気の流れと車外から車室内への空気の流れとの切り替えを自在にする車両用エアコンが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0025】
(第1実施形態)
本発明に係る送風機の一実施形態である第1実施形態について図を参照して説明する。図1は、第1実施形態の送風機1の構成を説明するための斜視図であり、第2開口部12から第1開口部11に向かう空気流れを示している。図2は、図1を下方向に見たときの空気流れおよび通風路31を示した模式図である。図3は、送風機1の内部の構成を説明するための側断面図であり、第2開口部12から第1開口部11に向かう空気流れおよび通風路を示している。
【0026】
本実施形態の送風機1は、空気の吹出し方向を変更可能とする送風機であって、高静圧条件での使用に適した遠心式ファン23と、遠心式ファン23を内部に有するファンケーシング20と、ファンケーシング20を取り囲む形状で内部に有する外側ケース10と、を備えている。第1開口部11には、第1通路13が接続されており、第2開口部12には第2通路14が接続されている。第1通路13および第2通路14は、例えばダクト等により形成された通路である。
【0027】
遠心式ファン23は、回転軸2に沿う方向に吸い込まれる空気を遠心方向に吹き出すファンであり、例えば、シロッコファン、ラジアルファン、ターボファン等である。遠心式ファン23は回転軸2を回転するモータ(図示せず)によって駆動される。
【0028】
外側ケース10は、ファンケーシング20を取り囲む形状に形成された周壁部と、筒状の周壁部を両端側から挟むように蓋をする二つの平板部とによって形成されている。外側ケース10には、空気が通る複数の開口部が設けられており、本実施形態の送風機1では周壁部に第1開口部11および第2開口部12が形成されている。
【0029】
ファンケーシング20は、吸込口21と吹出口22を有するスクロール部を有する形状のケーシングであり、空気を吸い込むための吸込口21が形成されている環状平面部27(ファンケーシングの面部)と、開口が形成されていない平板部と、スクロール面部と、によって囲まれた筐体である。したがって、遠心式ファン23が回転することにより、回転軸2に沿う方向に吸込口21から吸い込まれた空気は、遠心式ファン23の遠心方向(半径方向外方)に吹き出され、ファンケーシング20内の通路を通って吹出口22から吹き出されることになる。吸込口21が形成される環状平面部27(ファンケーシングの面部)は、対向する位置にある外側ケース内の天井面(外側ケースの内壁面)15に対して所定の長さ離間する位置に設けられている。外側ケース内の天井面15と環状平面部27および吸込口21との間に形成された空間は、遠心式ファン23の回転によって負圧空間となる。
【0030】
外側ケース10の内部に配置されているファンケーシング20は、さらに吹出口22が第1開口部11および第2開口部12のいずれにも合うように外側ケース10に対して変位可能な構成である。つまり、ファンケーシング20または外側ケース10を変位させることにより、吹出口22を第1開口部11または第2開口部12に合致させることができ、吸込口21から導入した空気を吹出口22に合致させたいずれかの開口部から吹き出すことができる。外側ケース10またはファンケーシング20を相手方に対して変位させる方法は、回動に伴う変位、回転に伴う変位、直線的移動に伴う変位、またはこれらの組み合わせによる変位を採用できる。本実施形態の送風機1では当該変位として、回動に伴う変位を採用し、これを実現する構成を備える。
【0031】
この回動に伴う変位は、例えば、図3に示すようにファンケーシング20をサーボモータ40等のアクチュエータによって右回りおよび左回りに回動駆動することによって実現する。ファンケーシング20の周壁部の外周面には、周方向に所定長さ延びる歯車41が設けられている。この歯車41と噛み合う外歯車42は、サーボモータ40によって回転駆動されるようになっている。外歯車42の回転によって、歯車41と一体であるファンケーシング20が回転軸2を中心として回動するようになる。つまり、ファンケーシング20は、吹出口22が第1開口部11に合う位置から第2開口部12に合う位置までの範囲を角度変位可能な範囲として回動する(図の回動C)ように構成されている。
【0032】
第1開口部11および第2開口部12の各開口部は、吹出口22よりも外側ケース内の天井面15側に大きく開口する拡大開口部分11a,12aを備えるように、吹出口22よりも大きい開口である。つまり、第1開口部11または第2開口部12を側面視した場合には、ファンケーシング20の環状平面部27と外側ケース内の天井面15との間に形成される外側ケースの内部空間30が拡大開口部分11a,12aを通して見える位置関係にある。したがって、遠心式ファン23が回転することにより、拡大開口部分11aまたは拡大開口部分12aから外部の空気が吸い込まれて外側ケースの内部空間30に取り込まれ、回転軸2に沿う方向に吸込口21に吸い込まれることになる。
【0033】
さらにファンケーシング20は、吹出口22が第1開口部11または第2開口部12に合う位置にあるとき、吹出口22の周縁部から外側ケース内の天井面15側に延びて設けられ拡大開口部分11aまたは拡大開口部分12aを蔽う板状の拡大壁24を備えている。拡大壁24は、吹出口22が第1開口部11および第2開口部12の一方に合う位置にあるときに、一方の開口部に接続される通路と吸込口に直面する外側ケースの内部空間30とを区画する仕切り部として機能する。この拡大壁24が仕切り部として機能することによって、吹出口22と合致していない他方の開口部と吹出口22と合致している一方の開口部とを吸込口22を経由して連通させる通風路31が形成されることになる。
【0034】
図1から図3は、第2通路14から空気を吸込み、第1通路13に吹き出すように吹出し方向を設定した場合を示している。この場合、サーボモータ40の回転とともに外歯車42が回転し、外歯車42の回転量に伴って歯車41は吹出口22が第1開口部11に合致する位置までファンケーシング20を角度変位させ、遠心式ファン23を回転させるようにする。このとき、第2通路14の空気は、吸込み側に大きく開口した第2開口部12の拡大開口部分12aを通り、外側ケースの内部空間30に流入し、吸込口21に吸い込まれる。そして、拡大壁24が、第1開口部11の拡大開口部分11aを外側ケース10の内側から蔽うように蓋をするため、吹出口22から第1通路13に吹き出された空気は、この拡大壁24によって、外側ケースの内部空間30に戻ることなく、第1通路13を流下するようになる。このようにして、第2通路14、外側ケースの内部空間30、吸込口21、吹出口22、第1通路13を連通する通風路31が形成される。
【0035】
さらにこの場合、吹出口22周縁部の両側部からファンケーシング20の周壁部に沿って所定長さ延びて設けられた板状の逆流抑止壁25,26が、外側ケースの内周壁面に接触または接近する位置に設定される。この逆流抑止壁25,26によって、第1通路13に吹き出された空気が外側ケースの内部空間30に流れるための沿面長さが確保されるため、吹出口22から第1通路13に吹き出された空気は、吹出口22周縁部の両側部から漏れて外側ケースの内部空間30に逆流することがない。
【0036】
また、好ましくは、吹出口22が第1開口部11に合う位置に設定されたときに、さらにリンク機構等によりファンケーシング20の周壁部が外側ケースの内周壁側に移動されて、逆流抑止壁25,26が外側ケースの内周壁に接触することである。このような構成により、逆流抑止壁25,26による吹出し空気の漏れがさらに抑止され、一層の逆流防止効果が期待できる。
【0037】
また、逆流抑止壁25,26は、可撓性のある板状部材であることが好ましく、例えば、逆流抑止壁25,26を薄肉の部材に形成して撓みやすいようにしてもよいし、ファンケーシング20よりも軟らかい材質によって形成してもよい。材質を変える場合には、ファンケーシング20を二色成形によって作成し、逆流抑止壁25,26とケーシング部分とを別の材料で一体成形することができる。逆流抑止壁25,26に可撓性をもたすことにより、逆流抑止壁25,26が外側ケース10の内周壁面に沿うように変形しやすくなり、吹出し側通路から外側ケース10の内部空間への空気漏れを抑制する効果を向上することができる。
【0038】
次に、図4および図5を参照して、第1通路13から空気を吸込み、第2通路14に吹き出すように吹出し方向を設定した場合(図1〜図3の場合の逆方向の空気流れである)を説明する。図4は、送風機1についての斜視図であり、第1開口部11から第2開口部12に向かう空気流れを示している。図5は、図4を下方向に見たときの空気流れおよび通風路を示した模式図である。この場合、サーボモータ40の回転とともに外歯車42が回転し、外歯車42の回転量に伴って歯車41は吹出口22が第2開口部12に合致する位置までファンケーシング20を角度変位させ、遠心式ファン23を回転させるようにする。このとき、第1通路13の空気は、吸込み側に大きく開口した第1開口部11の拡大開口部分11aを通り、外側ケースの内部空間30に流入し、吸込口21に吸い込まれる。この場合も、拡大壁24が第2開口部12の拡大開口部分12aを外側ケース10の内側から蔽うように蓋をするため、吹出口22から第2通路14に吹き出された空気は、この拡大壁24によって、外側ケースの内部空間30に戻ることなく、第2通路14を流下するようになる。このようにして、第1通路13、外側ケースの内部空間30、吸込口21、吹出口22、第2通路14を連通する通風路31が形成される。
【0039】
さらにこの場合にも、吹出口22周縁部の両側部からファンケーシング20の周壁部に沿って所定長さ延びて設けられた板状の逆流抑止壁25,26が、外側ケースの内周壁面に接触または接近する位置に設定されるため、吹出口22から第1通路13に吹き出された空気は、吹出口22周縁部の両側部から漏れて外側ケースの内部空間30に逆流することがない。
【0040】
また、吹出し側の通路と外側ケースの内部空間30とを区画する仕切り部は、図6に示すような形態であってもよい。図6は、他の形態の仕切り部を備える送風機1の内部の構成を説明するための側断面図である。図6に示すように、仕切り部は、ファンケーシング20の環状平面部27から吹出口22Aまで延びて設けられる筒部によって構成してもよい。
【0041】
この筒部は、遠心式ファン23から遠心方向に吹き出された空気が吹出口22Aに至るまでに通る通路を形成する。環状平面部27は吹出口22Aの上端部よりも下方に位置するため、筒部の上側面部27Aは環状平面部27から吹出口22Aの上端部に向かって斜め上方に傾斜するようになっている。つまり、吹出口22が第1開口部11または第2開口部12に合致する位置にあるとき、拡大開口部分11aまたは拡大開口部分12aは、斜め上方に延びて設けられた筒部の上側面部27Aによって蔽われて蓋をされることになる。
【0042】
次に、本実施形態の送風機1を適用して好適な装置について図7〜図10にしたがって説明する。まず、第1の適用例は、送風機1を電池冷却装置に用いる例である。図7は、送風機1を搭載した電池冷却装置の構成を示す概略図であり、電池を冷却するときの空気流れを示している。図8は、電池を暖機するときの空気流れを示している。
【0043】
この電池冷却装置は、送風機1と、複数個の電池モジュールを通電可能に接続し一体にして構成され、第1通路13または第2通路14に設置される電池スタック50と、外部に放熱する部品であって電池スタック50が配置されている同様の通路に設置される発熱部品と、を備える。そして、電池スタック50は当該通路において発熱部品と送風機1との間に設置されている。
【0044】
図7および図8では、電池スタック50および発熱部品は第1通路13に設置した例である。図7に示すように電池を冷却する場合には、ファンケーシング20の吹出口22を第1開口部11に合う位置に設定し、遠心式ファン23を回転させることにより、第2通路14から第1通路13への空気流れが形成される。そして、第2通路14の空気が電池スタック50に送風されることで電池スタック50が冷却され、さらに下流側の発熱部品も冷却される。図8に示すように電池を暖機する場合には、ファンケーシング20の吹出口22を第2開口部12に合う位置に設定し、遠心式ファン23を回転させることにより、第1通路13から第2通路14への空気流れが形成される。そして、発熱部品を通過するときに第1通路13の空気は吸熱して温度上昇し、温度上昇した空気が電池スタック50に供給されて電池モジュールが暖められることになる。
【0045】
このように、双方向の送風を可能とする送風機1と発熱部品との間に電池スタック50を設けることにより、電池スタック50を暖機する必要がある場合は発熱部品を通過した空気を電池スタック50に供給するように送風機1の吹出し方向を設定し、電池スタック50を冷却する必要がある場合は発熱部品を通過する前の空気を電池スタック50に供給するように吹出し方向を設定することができる。したがって、電池モジュールの暖機と冷却の選択を送風機1の送風方向の切り替えによって、装置を大型化することなく実現できる。
【0046】
また、発熱部品は、電池モジュールの充放電に用いられ、スイッチング電源装置によって調整される電力を出力する電子部品であることが好ましい。例えば、電子部品の一例としてDC/DCコンバータ51を採用する。電子部品にDC/DCコンバータ51を採用した場合には、既設の機器であるDC/DCコンバータを有効活用するため、暖機用の機器を追加することなく、電池の暖機を実施することができる。
【0047】
DC/DCコンバータ51は、電池モジュールの充放電を制御するために用いられる機器である。DC/DCコンバータ51は、ハイブリッド自動車の発電用および走行用のモータ等の高負荷に電力授受可能に接続された電池スタック50(高圧電池、主機バッテリ)を含む高圧電源系と、低圧負荷に電力を供給する補機バッテリ(低圧電池)を含む低圧電源系と、の間に設けられる電子部品である。DC/DCコンバータ51は、モータ等の高負荷に対する電力授受や低負荷に供給する電力を、パワー素子(スイッチング電源装置の一例)によって調整するように構成されている。
【0048】
また、電池冷却装置は、内燃機関と電池駆動モータとを組み合わせて走行駆動源とする周知のハイブリッド自動車に用いられ、走行用モータの駆動電源等となる電池を冷却するものである。電池は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池、有機ラジカル電池であり、筐体内に収納された状態で自動車の座席下、後部座席とトランクルームとの間の空間、運転席と助手席の間の空間などに配置される。
【0049】
電池冷却装置は、複数個の電池モジュールに電気的に接続され、電池スタック50からの電力供給を制御するために用いられる制御部品を備え、送風機1とともに一体化された一単位を電池パックとして自動車に搭載される。電池スタック50は、例えば筐体内に収納されている。筐体には、車両側に筐体をボルト締め等により固定するための取付部、および機器収納ボックスが設けられている。
【0050】
機器ボックスには、電池状態(例えば電圧、温度等)を監視する各種センサからの検出結果が入力される電池監視ユニットと、電池監視ユニットと通信可能に構成されDC/DCコンバータ51の電力授受を制御するとともに、送風機1のモータの駆動を制御およびファンケーシング20の回動位置の制御を行う制御装置と、各機器を接続するワイヤハーネス等と、が収納されている。電池監視ユニットは、各電池モジュールの状態を監視する電池ECU(電池の電子式制御ユニット)であり、電池スタック50と多数の配線にて接続されている。制御装置および電池監視ユニットは、通信コネクタに接続される通信線を介して車両の各種制御装置と通信可能に構成されている。
【0051】
制御装置は、送風機1の遠心式ファン23の回転数を検出し、遠心式ファン23が吸い込む空気の温度を吸気温度センサによって検出する。制御装置は、吸気温度センサで検出された吸気温度、各種センサで検出した電池温度、および予め記憶された制御プログラムに基づいて演算を行い、電池温度が適正な温度範囲となるように遠心式ファン23の回転数を制御して電池冷却を適切に調整する。制御装置は、例えば電圧のパルス波のデューティー比を変化させて変調するPWM制御を行う。例えば、制御装置は、PWM制御により遠心式ファン23の回転数を目標とする冷却能力に応じて可変制御し、温度センサ等で検出される電池スタック50の温度を制御している。
【0052】
このように発熱部品として、電池モジュールの充放電に用いられ、スイッチング電源装置によって調整される電力を出力する電子部品を採用することにより、電池モジュールの充放電に用いられる既存の電子部品からの放熱を利用して電池スタック50の暖機を行うことができる。さらに、パワー素子(スイッチング電源装置)の作動状態を制御することで放熱量の増加および減少といった調整が行えるため、暖機能力の調整も可能になる。
【0053】
次に、第2の適用例は、送風機1を車両用空調装置に用いる例である。図9は送風機1を搭載した車両用空調装置の構成を示す概略図であり、車外から車室内に空気取り入れるときの空気流れを示している。図10は車室内の空気を車外に排出するときの空気流れを示している。
【0054】
車両100に搭載される車両用空調装置は、空気を送風する手段としての送風機1を備え、第1通路13および第2通路14の一方を車室内空間100aに連通し、他方を車外に連通するように構成した装置である。図9および図10では、フロントエアコン装置60およびリアエアコン装置61のそれぞれに送風機1を搭載した例である。
【0055】
フロントエアコン装置60では、図9に示すようにファンケーシング20の吹出口22を第1開口部11に合う位置に設定し、遠心式ファン23を回転させることにより、第2通路14から第1通路13への空気流れが形成される。これにより、第2通路14に車外の空気を吸い込んで、車室内空間100aに外気を導入する。
【0056】
一方、図10に示すように、ファンケーシング20の吹出口22を第2開口部12に合う位置に設定し、遠心式ファン23を回転させることにより、第1通路13から第2通路14への空気流れが形成される。これにより、乗員の不在時等に第1通路13に車室内空間100aの空気を吸い込んで車外に排出する換気が行われ、車内の熱気を排出することができる。このようにフロントエアコン装置60では、送風機1のファンケーシング20を変位させて吹出口22を自在に切り替えることにより、外気導入および内気排出を容易に実行することができる。
【0057】
リアエアコン装置61では、第1通路13を車室内空間100aの車幅方向両端部の天井付近にまで延びて設けられるようにしている。そして、図9に示すようにファンケーシング20の吹出口22を第1開口部11に合う位置に設定し、遠心式ファン23を回転させることにより、第2通路14から第1通路13への空気流れが形成される。これにより、第2通路14の空気を吸い込んで、車室内空間100aの天井側から吹き出すことができる。第2通路14を車室内空間100aの下方部に接続した場合には車室内空間100aの空気を循環させて空調環境を良化する効果があり、第2通路14を車外に接続した場合には外気を導入して車室内に新鮮な空気を導入する効果がある。
【0058】
一方、図10に示すように、ファンケーシング20の吹出口22を第2開口部12に合う位置に設定し、遠心式ファン23を回転させることにより、第1通路13から第2通路14への空気流れが形成される。これにより、第1通路13に車室内空間100aの天井付近空気を吸い込んで車外に排出する換気が行われる。例えば、乗員の不在時等に天井付近に停留している高温の空気を積極的に排出することができる。このようにリアエアコン装置61では、送風機1を搭載して吹出口22を自在に切り替えることにより、外気導入、内気排出および内気循環を容易に実行できる。
【0059】
本実施形態の送風機1がもたらす作用効果について述べる。送風機1が備えるファンケーシング20は、吹出口22が第1開口部11および第2開口部12のいずれにも合うように外側ケース10に対して変位する構成である。さらにファンケーシング20は、吹出口22が第1開口部11および第2開口部12の一方に合う位置にあるときに、一方の開口部に接続される通路と吸込口21に直面する外側ケースの内部空間30とを区画する拡大壁24を有する。このような拡大壁24による区画によって、一方の開口部と他方の開口部とを吸込口21を経由して連通させる通風路31が形成される。
【0060】
すなわち、ファンケーシング20の吹出口22は外側ケース10に形成された第1開口部11および第2開口部12のいずれにも合致可能に構成されていることにより、遠心式ファン23によって吹き出される空気をいずれの開口部からでも吹き出すことができるようになる。さらに、吹出口22が一方の開口部に合う位置にあるとき、拡大壁24によって吹出し側の通路と吸込み側の内部空間とが区画されるため、他方の開口部、吸込口22、一方の開口部の順に連通させる通風路が形成されて、吹出し側の通路の空気が吸込み側の内部空間に逆流することを防止できる。これにより、送風機1による吹出し方向を逆転させる双方向の送風が逆流することなく実施できる。
【0061】
さらに、外側ケース10に対するファンケーシング20の位置を変更することにより、前述の従来例のように通路を増設することなく、双方向の送風を実現することができる。したがって、装置の小型化が得られ、空気の吸込み方向と送風方向の両方を自在に変更できる送風機が得られる。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態の送風機1の他の形態である送風機1Aについて、図11および図12にしたがって説明する。図11は、送風機1Aの構成を説明するための斜視図であり、第2開口部12から第1開口部11に向かう空気流れを示している。図12は図11を下方向に見たときの空気流れおよび通風路を示した模式図である。図11および図12において前述の第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成部品は、同様の構成部品であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0063】
図11および図12に示すように、送風機1Aは、送風機1に対して他の形態の仕切り部を備える送風機である。送風機1Aの仕切り部は、吸込口周りの環状平面部27から外側ケース内の天井面15側(外側ケース内の内壁面側)に立設されるU字状壁部28を備えている。このU字状壁部28は、ファンケーシング20Aの吸込口21を平面視した場合に、吸込口21を内側に含むように取り囲むU字状の壁部であり、U字の両端部はファンケーシング20Aの周壁部から外方に突出する位置まで延びており、U字状壁部28の上方側端部は外側ケース内の天井面15近傍まで延びている。このような形態のU字状壁部28は、外側ケースの内部空間30を、吸込口21および吸込み側空間32と吹出し側空間33とに区画する。
【0064】
図11および図12は、第2通路14から空気を吸込み、第1通路13に吹き出すように吹出し方向を設定した場合を示している。この場合、サーボモータ40の回転とともに外歯車42が回転し、外歯車42の回転量に伴って歯車41は吹出口22が第1開口部11に合致する位置までファンケーシング20Aを角度変位させ、遠心式ファン23を回転させるようにする。このとき、第2通路14の空気は、吸込み側に大きく開口した第2開口部12の拡大開口部分12aを通り、外側ケース内の吸込み側空間32に流入し、吸込口21に吸い込まれる。そして、U字状壁部28が、外側ケース内の天井面15から吸込口21に向かう下方に形成される吸込み側空間32と、吸込み側空間32の周囲に形成される吹出し側空間33とを区画するため、吹出口22から第1通路13に吹き出された空気は、このU字状壁部28によって、吸込み側空間32に戻ることなく、第1通路13を流下するようになる。このようにして、第2通路14、吸込み側空間32、吸込口21、吹出口22、第1通路13を連通する通風路31が形成される。
【0065】
したがって、環状平面部27から外側ケース内の天井面15近傍まで立設される壁部によって、吹出し側の通路と吸込み側の通路とが区画されるため、吸込み側の開口部、ファンケーシング20Aの吸込口21および吹出し側の開口部を連通させる通風路を形成することができ、送風機1Aの吹出し方向を逆転させる双方向送風が逆流することなく実施できる。
【0066】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態の送風機1の他の形態である送風機1Bについて、図13および図14にしたがって説明する。図13は、送風機1Bの構成を説明するための斜視図であり、第3開口部16から第2開口部12に向かう空気流れを示している。図14(a)〜(c)は送風機1Bについて、変更可能な空気流れおよび通風路を示した模式図である。図13および図14において前述の第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成部品は、同様の構成部品であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0067】
図13および図14に示すように、送風機1Bは、送風機1に対して、外側ケース10Bの周壁部にさらに第3開口部16が形成されている。第3開口部16は第3通路17に接続されており、この構成により、送風機1Aは、少なくとも3つの通路と連通可能な送風機である。そして、ファンケーシング20Bは、吹出口22が第1開口部11、第2開口部12および第3開口部16のいずれにも合うように外側ケース10Bに対して変位する構成である。
【0068】
ファンケーシング20Bは、第1の仕切り部である拡大壁24と、第2の仕切り部である拡大壁29と、第3の仕切り部である板状の拡大壁25B,26Bと、を備えている。吹出口22が第1開口部11、第2開口部12および第3開口部16のうちいずれか一の開口部に合う位置にあるときに、拡大壁24は当該一の開口部に接続される通路と吸込口21に直面する外側ケースの内部空間30とを区画する仕切り部であり、拡大壁29は残りの開口部のうち一つを吸込口21に連通しないように閉塞可能な仕切り部である。拡大壁25B,26Bは吹出口22周縁部の両側部からファンケーシング20Bの周壁部に沿って所定長さ延びて設けられた仕切り部である。
【0069】
また、拡大壁25B,26Bは、可撓性のある板状部材であることが好ましく、例えば、拡大壁25B,26Bを薄肉の部材に形成して撓みやすくしてもよいし、ファンケーシング20Bよりも軟らかい材質によって形成してもよい。材質を変える場合には、ファンケーシング20Bを二色成形によって作成し、拡大壁25B,26Bとケーシング部分とを別の材料で一体成形することができる。拡大壁25B,26Bに可撓性をもたすことにより、拡大壁25B,26Bが外側ケース10Bの内周壁面に沿うように変形しやすくなり、吹出し側通路から外側ケース10Bの内部空間への空気漏れを抑制する効果を向上することができる。
【0070】
図13は、第3通路17から空気を吸込み、第2通路14に吹き出すように吹出し方向を設定した場合を示している。この場合、サーボモータ40の回転により吹出口22が第2開口部12に合致する位置までファンケーシング20Bを角度変位させ、遠心式ファン23を回転させるようにする。このとき、第3通路17の空気は、吸込み側に大きく開口した第3開口部16の拡大開口部分16aを通り、外側ケースの内部空間30に流入し、吸込口21に吸い込まれる。そして、拡大壁24が拡大開口部分12aを外側ケース10Bの内側から蔽うように蓋をし、拡大壁29が拡大開口部分11aを外側ケース10Bの内側から蔽うように蓋をするため、吹出口22から第2通路14に吹き出された空気は、逆流することなく、第2通路14を流下するようになる。このようにして、第3通路17、外側ケースの内部空間30、吸込口21、吹出口22、第2通路14を連通する通風路31が形成される。
【0071】
次に図14(a)は、第1通路13から空気を吸込み、第2通路14に吹き出すように吹出し方向を設定した場合を示している。この場合、サーボモータ40の回転により吹出口22が第2開口部12に合致する位置までファンケーシング20Bを角度変位させ、遠心式ファン23を回転させるようにする。このとき、第1通路13の空気は、吸込み側に大きく開口した第1開口部11の拡大開口部分11aを通り、外側ケースの内部空間30に流入し、吸込口21に吸い込まれる。そして、拡大壁24が拡大開口部分12aを外側ケース10Bの内側から蔽うように蓋をし、拡大壁29が第3開口部16の拡大開口部分16aを外側ケース10Bの内側から蔽うように蓋をするため、吹出口22から第2通路14に吹き出された空気は、逆流することなく、第2通路14を流下するようになる。このようにして、第1通路13、外側ケースの内部空間30、吸込口21、吹出口22、第2通路14を連通する通風路31が形成される。
【0072】
次に図14(b)は、第2通路14から空気を吸込み、第1通路13に吹き出すように吹出し方向を設定した場合を示している。この場合、サーボモータ40の回転により吹出口22が第1開口部11に合致する位置までファンケーシング20Bを角度変位させ、遠心式ファン23を回転させるようにする。このとき、第2通路14の空気は、吸込み側に大きく開口した第2開口部12の拡大開口部分12aを通り、外側ケースの内部空間30に流入し、吸込口21に吸い込まれる。そして、拡大壁24が拡大開口部分11aを外側ケース10Bの内側から蔽うように蓋をし、拡大壁26Bが第3開口部16の空気の流通を遮るため、吹出口22から第1通路13に吹き出された空気は、逆流することなく、第1通路13を流下するようになる。このようにして、第2通路14、外側ケースの内部空間30、吸込口21、吹出口22、第1通路13を連通する通風路31が形成される。
【0073】
次に図14(c)は、第2通路14から空気を吸込み、第3通路17に吹き出すように吹出し方向を設定した場合を示している。この場合、サーボモータ40の回転により吹出口22が第3開口部16に合致する位置までファンケーシング20Bを角度変位させ、遠心式ファン23を回転させるようにする。このとき、第2通路14の空気は、吸込み側に大きく開口した第2開口部12の拡大開口部分12aを通り、外側ケースの内部空間30に流入し、吸込口21に吸い込まれる。そして、拡大壁24が拡大開口部分16aを外側ケース10Bの内側から蔽うように蓋をし、拡大壁25Bが第1開口部11の空気の流通を遮るため、吹出口22から第3通路17に吹き出された空気は、逆流することなく、第3通路17を流下するようになる。このようにして、第2通路14、外側ケースの内部空間30、吸込口21、吹出口22、第3通路17を連通する通風路31が形成される。
【0074】
このように、外側ケース10Bに少なくとも3つの開口部が形成されている送風機1Bにおいては、拡大壁24が吹出し側開口部の拡大開口部分を塞ぎ、拡大壁29,25B,26Bが吸込み側開口部および吹出し側開口部のいずれにも使用されない開口部を塞ぐことにより、吹出し側の通路と吸込み側の通路とが区画されるため、吸込み側の開口部、ファンケーシング20Bの吸込口21および吹出し側の開口部を連通させる通風路を形成することができる。したがって、送風機1Bの吹出し方向を逆転させる双方向送風が逆流することなく実施できる。
【0075】
本実施形態の送風機1Bによれば、3つ以上の通路の中から、吸込み側通路と吹出し側通路を任意に選択することができ、3つ以上の空間や通風路に存在する空気を所望の場所に移動させることができる。
【0076】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態の送風機1の他の形態である送風機1Cについて、図15および図16にしたがって説明する。本実施形態の送風機1Cは、ファンの回転軸に対して略直交する方向に配された回転軸2Cについて、ファンケーシング20Cを回動させて、吹出口22を変位させる構成である。つまり、送風機1Cは、送風機1,1A,1Bと異なって、遠心式ファン23の回転とファンケーシング20Cの回動とが互いに直交する関係にある。図15は、送風機1Cの構成を説明するための斜視図である。図16(a)〜(c)は送風機1Cについて、変更可能な空気流れおよび通風路を示した模式図である。図15および図16において前述の第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成部品は、同様の構成部品であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0077】
図16(a)は、第2通路14から空気を吸込み、第1通路13に吹き出すように吹出し方向を設定した場合を示している。この場合、サーボモータ40の回転により吹出口22が第1開口部11に合致する位置までファンケーシング20Cを角度変位させ、遠心式ファン23を回転させるようにする。このとき、第2通路14の空気は、第3開口部16を通り、外側ケースの内部空間30に流入し、吸込口21に吸い込まれる。そして、逆流抑止壁25,26が外側ケース10Cの内面に沿うような姿勢で配置されるため、吹出口22から第1通路13に吹き出された空気は、逆流することなく、第1通路13を流下するようになる。このようにして、第2通路14、外側ケースの内部空間30、吸込口21、吹出口22、第1通路13を連通する通風路31が形成される。
【0078】
次に図16(b)は、第1通路13から空気を吸込み、第2通路14に吹き出すように吹出し方向を設定した場合を示している。この場合、サーボモータ40の回転により吹出口22が第1開口部11に合致する位置までファンケーシング20Cを角度変位させ、遠心式ファン23を回転させるようにする。このとき、第1通路13の空気は、第1開口部11を通り、外側ケースの内部空間30に流入して回り込んで吸込口21に吸い込まれる。そして、逆流抑止壁25,26が外側ケース10Cの内面に沿うような姿勢で配置されるため、吹出口22から第2通路14に吹き出された空気は、逆流することなく、第2通路14を流下するようになる。このようにして、第1通路13、外側ケースの内部空間30、吸込口21、吹出口22、第2通路14を連通する通風路31が形成される。
【0079】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0080】
例えば、上記実施形態において、ファンケーシング20と外側ケース10との間の相対的な位置変更は、サーボモータ40等のアクチュエータと歯車機構とによって実現されているが、この形態に限定するものではない。例えば、歯車機構の代わりに、プーリおよびベルトを使用した回動変位機構やスライド変位機構であってもよいし、ファンケーシング20の取り付けた軸を直接角度変位させる回動変位機構であってもよい。
【0081】
また、上記実施形態において説明するファンケーシング20と外側ケース10との間の相対的な位置変更は、回動変位の手法であるが、この形態に限定するものではない。例えば、リンク機構を使用したスライド変位機構、当該スライド変位機構と歯車機構等とを組み合わせた機構であってもよい。
【0082】
また、上記実施形態において本発明の送風機が適用される例として、電池冷却装置と車両用空調装置を挙げているが、この他、本発明の送風機は給排気方向を互いに逆転させて使用し得る装置に適用することができる。例えば、建物や空間の給排換気を目的とする給排気用換気装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第1実施形態の送風機の構成を説明するための斜視図であり、第2開口部12から第1開口部11に向かう空気流れを示している。
【図2】図1を下方向に見たときの空気流れおよび通風路を示した模式図である。
【図3】第1実施形態に係る送風機内部の構成を説明するための側断面図であり、第2開口部12から第1開口部11に向かう空気流れおよび通風路を示している。
【図4】第1実施形態の送風機についての斜視図であり、第1開口部11から第2開口部12に向かう空気流れを示している。
【図5】図4を下方向に見たときの空気流れおよび通風路を示した模式図である。
【図6】他の形態の仕切り部を備える送風機1の内部の構成を説明するための側断面図である。
【図7】送風機を搭載した電池冷却装置の構成を示す概略図であり、電池を冷却するときの空気流れを示している。
【図8】送風機を搭載した電池冷却装置の構成を示す概略図であり、電池を暖機するときの空気流れを示している。
【図9】送風機を搭載した車両用空調装置の構成を示す概略図であり、車外から車室内に空気取り入れるときの空気流れを示している。
【図10】送風機を搭載した車両用空調装置の構成を示す概略図であり、車室内の空気を車外に排出するときの空気流れを示している。
【図11】第2実施形態の送風機の構成を説明するための斜視図であり、第2開口部12から第1開口部11に向かう空気流れを示している。
【図12】図11を下方向に見たときの空気流れおよび通風路を示した模式図である。
【図13】第3実施形態の送風機の構成を説明するための斜視図であり、第3開口部16から第2開口部12に向かう空気流れを示している。
【図14】(a)〜(c)は第3実施形態の送風機について、変更可能な空気流れおよび通風路を示した模式図である。
【図15】第4実施形態の送風機の構成および空気流れを説明するための斜視図である。
【図16】(a)および(b)は第4実施形態の送風機について、変更可能な空気流れおよび通風路を示した模式図である。
【符号の説明】
【0084】
2…回転軸、 10…外側ケース、 11…第1開口部、 11a…拡大開口部分、
12…第2開口部、 12a…拡大開口部分、 13…第1通路、 14…第2通路、
15…外側ケース内の天井面、 16…第3開口部、 17…第3通路
20…ファンケーシング、 21…吸込口、22…吹出口、 23…遠心式ファン、
24…拡大壁(仕切り部、第1の仕切り部)、 24A…筒部の上側面部(仕切り部)
27…環状平面部(ケーシングの面部)、 28…U字状壁部、
29…拡大壁(第2の仕切り部)、 30…外側ケースの内部空間、 31…通風路、
32…吸込み側空間、 33…吹出し側空間、 50…電池スタック、
51…DC/DCコンバータ(発熱部品、電子部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(2)に沿う方向に吸い込まれる空気を遠心方向に吹き出す遠心式ファン(23)と、
前記遠心式ファンを取り囲む形状であって、空気を吸い込む吸込口(21)および前記吸い込んだ空気を吹き出す吹出口(22)が形成されるファンケーシング(20)と、
前記ファンケーシングを内部に有し、少なくとも第1開口部(11)および第2開口部(12)が形成される外側ケース(10)と、
前記第1開口部に接続される第1通路(13)と、
前記第2開口部に接続される第2通路(14)と、
を備え、
前記ファンケーシングは、前記吹出口が前記第1開口部および前記第2開口部のいずれにも合うように前記外側ケースに対して変位する構成であり、
さらに前記ファンケーシングは、前記吹出口が前記第1開口部および前記第2開口部の一方に合う位置にあるときに、前記一方の開口部に接続される前記通路と前記吸込口に直面する前記外側ケースの内部空間(30)とを区画する仕切り部(24,24A)を有し、
前記仕切り部の前記区画により、前記他方の開口部と前記一方の開口部とを前記吸込口を経由して連通させる通風路(31)が形成されることを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記吸込口が形成される前記ファンケーシングの面部(27)は、対向する前記外側ケースの内壁面(15)に対して所定の長さ離間する位置に設けられており、
前記第1開口部および前記第2開口部はそれぞれ、前記吹出口よりも前記外側ケースの内壁面側に大きく開口する拡大開口部分(11a,12a)を備えており、
前記仕切り部は、前記吹出口の周縁部から前記外側ケースの内壁面側に延びて設けられ、前記各開口部の拡大開口部分を蔽う拡大壁(24)であることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記吸込口が形成される前記ファンケーシングの面部(27)は、対向する前記外側ケースの内壁面(15)に対して所定の長さ離間する位置に設けられており、
前記第1開口部および前記第2開口部はそれぞれ、前記吹出口よりも前記外側ケースの内壁面側に大きく開口する拡大開口部分(11a,12a)を備えており、
前記仕切り部は、前記吸込口周りの前記ファンケーシングの面部から前記外側ケースの内壁面側に延びて設けられる壁部(28)であって、前記外側ケースの内部空間を、前記吸込口および前記他方の開口部に面する吸込み側空間(32)と前記一方の開口部に面する吹出し側空間(33)とに区画することを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項4】
前記外側ケースは、さらに第3通路(17)に接続される第3開口部(16)を有しており、
前記ファンケーシングは、前記吹出口が前記第1開口部、前記第2開口部および前記第3開口部のいずれにも合うように前記外側ケースに対して変位する構成であり、
さらに前記ファンケーシングは、
前記吹出口が前記第1開口部、前記第2開口部および前記第3開口部のうち一の開口部に合う位置にあるときに、前記一の開口部に接続される前記通路と前記吸込口に直面する前記外側ケースの内部空間とを区画する前記第1の仕切り部と、残りの前記開口部のうち一つを前記吸込口に連通しないように閉塞する第2の仕切り部(29)と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の送風機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の送風機と、複数個の電池モジュールを通電可能に接続し一体にして構成され、前記第1通路に設置される電池スタック(50)と、外部に放熱する部品であって前記第1通路に設置される発熱部品(51)と、を備え、
さらに前記電池スタックは前記第1通路において前記発熱部品と前記送風機との間に設置されることを特徴とする電池冷却装置。
【請求項6】
前記発熱部品は、前記電池モジュールの充放電に用いられ、スイッチング電源装置によって調整される電力を出力する電子部品であることを特徴とする請求項5に記載の送風機。
【請求項7】
空気を送風する手段として請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の送風機を備え、
前記第1通路および前記第2通路の一方を車室内空間(100a)に連通させ、他方を車外に連通させるように構成したことを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−111177(P2010−111177A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283516(P2008−283516)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】