逆ツーハイブリッドシステム
【課題】分子間の相互作用(たとえば、蛋白質/蛋白質、蛋白質/DNA、蛋白質/RNA、またはRNA/RNA間の相互作用)を同定する方法を提供する。
【解決手段】それぞれ第一,第二の逆選択(発現すると細胞の増殖を阻害する)用レポーター遺伝子と、第一,第二の分析用蛋白質を含むハイブリッド蛋白質を発現させる融合遺伝子とを含む、第一,第二の接合コンピテント細胞(酵母)を、特定条件下で別個に維持し、混合した際の該レポーター遺伝子の発現を指標とする。
【解決手段】それぞれ第一,第二の逆選択(発現すると細胞の増殖を阻害する)用レポーター遺伝子と、第一,第二の分析用蛋白質を含むハイブリッド蛋白質を発現させる融合遺伝子とを含む、第一,第二の接合コンピテント細胞(酵母)を、特定条件下で別個に維持し、混合した際の該レポーター遺伝子の発現を指標とする。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
連邦政府の助成研究である旨の記述
本発明は、少なくとも部分的に、連邦政府の助成金を受けて行われたものであるため、政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の背景
本発明は、分子(たとえば、蛋白質および/またはRNA分子)間の相互作用の特徴付けをインビボで行うための方法に関する。
【0003】
非常に多くの生物学的に重要な機能が、DNA分子と蛋白質、RNA分子と蛋白質、2つ以上の蛋白質もしくはRNA分子、またはリガンドとレセプターとの間の、一過性の相互作用に関与している。たとえば、細胞周期のほとんどの段階で、腫瘍抑制遺伝子産物であるpRbは転写因子であるE2Fに結合しその活性を抑制する。E2F活性は、少なくとも7個の蛋白質を含むファミリーによりもたらされる。あるサブファミリー(E2F-1、-2、-3、-4および-5)のメンバーは他のサブファミリー(DP-1および-2)のメンバーとヘテロダイマーを形成する。これらのヘテロダイマーは標的遺伝子のプロモーターに結合し、細胞周期の特定の段階においてその転写を活性化する。
【0004】
E2F/DP複合体の転写活性は、「ポケット」蛋白質と呼ばれる機能的に関連のあるいくつかの蛋白質のいずれによっても抑制される。p107、p130およびpRb(網膜芽腫蛋白質)と呼ばれる蛋白質がこの範囲に含まれる。ポケット蛋白質はE2F/DP複合体と直接相互作用することによりその転写阻害活性を発揮する。E2F活性が必要とされる、細胞周期のG1期からS期への移行期において、ポケット蛋白質がリン酸化され、それによりpRbとE2Fとの解離が起こり、E2F転写因子が活性化される。
【0005】
E2Fとポケット蛋白質との間の、およびE2FとDPファミリーのメンバーとの間の相互作用の生理学的な関連が、いくつかの観察により支持されている:(i)様々な腫瘍において、RB遺伝子の両方のコピーが機能的変異を失っており、野生型のRB遺伝子の再導入により腫瘍形成能が低下する;(ii)実験的な系でE2F-1を過剰発現させると、悪性形質転換が起こる;(iii)pRbキナーゼの正調節サブユニットであるサイクリンDをコードする遺伝子であるPRAD1は、染色体の再構成の結果として、多くの腫瘍において過剰発現する;(iv)ある種のDNA腫瘍ウイルスの腫瘍形成活性には、E2Fと蛋白質との相互作用の破壊が必要である。アデノウイルスのE1A、SV40のラージ(large)T抗体、およびヒトパピローマ(Papilloma)ウイルスのE7などの腫瘍形成蛋白質は、pRbを介したE2Fの抑制を排除することができ、その結果宿主細胞が不適切に細胞周期に入る。pRbとE2Fとの相互作用に影響を与えることなく、腫瘍形成ウイルス蛋白質とpRbとの相互作用を不安定化させることのできる化合物は、これらのウイルスに関係した癌を治療または予防するのに治療的に利用できる。
【0006】
制御蛋白質間の相互作用についての先行する研究により、蛋白質がどのように相互作用するかについて重要なパラダイムが明らかになっている。たとえば、蛋白質/蛋白質相互作用の研究により、いくつかの構造的モチーフ(たとえば、ヘリックス-ループ-ヘリックスモチーフ、SH2およびSH3ドメイン、ならびにロイシンジッパー)が同定された。E2F、Dp、およびポケット蛋白質の一次アミノ酸配列はこれらの既知のモチーフのいずれとも類似していない。従って、この新規の制御蛋白質ファミリーに関する蛋白質/蛋白質相互作用の詳細な研究を可能にする簡便な方法があれば、蛋白質/蛋白質相互作用のための新しいモチーフが明らかになると考えられる。E2F-1/Dp-1相互作用ドメインはE2F-1の第120〜310アミノ酸およびDp-1の第205〜277アミノ酸に位置決定されている。対照的に、E2F-1/pRb相互作用ドメインはE2F-1の第409〜427アミノ酸に位置決定されている。よって、E2F-1上にあるDp-1およびpRb結合部位は重複していない。従って、うまく変異を起こせばE2F-1のpRbへの結合能に影響を与えることなくE2F-1のDP-1への結合能を変えることができると考えられる。同様に、ある種の化学物質も、E2F-1のpRbへの結合能に影響を与えることなくE2F-1のDP-1への結合能を変えることができると考えられる。
【0007】
逆選択マーカー:選択マーカーとは、特定の状況下で選択マーカーを発現する細胞のみの増殖を促進するために用いるものであるが、逆選択マーカーは、特定の状況下で、逆選択マーカーを失った細胞のみの増殖を促進するために用いられるものである。逆選択マーカーは、プラスミド上に存在するときには、そのプラスミドを失った細胞を選択するのに用いることができ、この方法はプラスミド「シャッフリング(Shuffling)」と呼ばれる(たとえば、非特許文献1)。例えば、オロチジン-5'リン酸をコードするura3遺伝子の発現は、5-フルオロ-オロト酸(5-FOA)含有培地の存在下では致死的である。URA3を発現する細胞は、ウラシル非含有培地で培養することにより正の選抜ができ、したがって、培養条件次第でURA3は正または負のいずれの条件にも利用できる。α-アミノアジピン酸リダクターゼをコードするLYS2遺伝子も、逆選択に用いることができる;LYS2を発現する酵母細胞は、一次窒素源としてα-アミノアジピン酸を含む培地上では増殖しない。同様に、α-アミノアジピン酸を含む培地上でのLYS5の発現は致死的である。リジンの生合成に関与するこれらの遺伝子は、リジンを含まない培地で正の選択が可能である。もう一つの逆選択レポーター遺伝子は、アルギニン透過酵素をコードするCAN1遺伝子である。アルギニン非存在下、およびカナバニン存在下でのこの遺伝子の発現は致死的である。同様に、シクロヘキシミド存在下における逆選択遺伝子CYH2の発現は致死的である。逆選択レポーター遺伝子の発現は、転写を活性化する能力を阻害するエストロゲンレセプターの活性化ドメインにおける変異を同定するのに利用されている(非特許文献2)。
【非特許文献1】シコルスキ(Sikorski)およびブーケ(Boeke)、1991, Meth. in Enzymol. 194:302
【非特許文献2】ピーラット(Pierrat)ら、1992, Gene 119:237〜245
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明者らは、逆選択を用いる遺伝学的なスクリーニング・システムが、分子的な相互作用の特徴を双方向的な形で調べるための便利な方法を提供することを発見した。したがって、本発明は、2つの分子(例えば、蛋白質、RNA分子、またはDNA分子)が相互作用するか否かを判定するために用いることができる。さらに、逆選択を用い、また、レポーター遺伝子の発現レベルを測定することによって、2つの分子がどの程度相互作用するのかを判定するために、本発明を用いることができる。したがって、本発明に係る方法は、いずれも、逆選択法を用い、本発明の態様のほとんどが、2つ以上のハイブリッド蛋白質を用いるために、これらの方法は逆ツー・ハイブリッドシステムと名づけられている。本発明は、(i)2つの蛋白質が、2つの別個の核酸ライブラリー(例えば、両方向組合せライブラリー)から発現されうる場合に、第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用することができるか否かを判定するための方法で、原則として、この方法によって、所定のゲノムにおけるすべての蛋白質/蛋白質相互作用を同定することができるようになる方法、(ii)ある化合物が蛋白質/蛋白質相互作用を阻害できるか否かを判定するための方法、(iii)第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用することができ、かつ、第三の蛋白質とは相互作用できないことを判定するための方法、(iv)分析用蛋白質が分析用RNA分子と相互作用することができるか否かを判定するための方法、(v)第一の分析用RNA分子が第二の分析用RNA分子と相互作用することができるか否かを判定するための方法、(vi)蛋白質/蛋白質相互作用に影響する突然変異を同定する(2段階選抜)ための方法、(vii)蛋白質/蛋白質相互作用に影響する、蛋白質の条件的な遺伝子座を同定するための方法、(viii)蛋白質/蛋白質相互作用に影響する補償変異(compensatory mutations)を同定するため(二価遺伝学)の方法、および(ix)蛋白質/DNA相互作用を同定するための方法を提供する。本発明は、また、開示された方法を用いて、分子の相互作用を同定するために有用な、酵母菌株といくつかの遺伝子構築物を特徴とする。
【0009】
本発明は、一つの局面において、第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用できるか否かを判定するための方法を特徴とする。この方法には、以下の段階が含まれる:
(a)第一の集団の複数の細胞が(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用/逆選択用レポーター遺伝子と、(ii)DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分に共有結合した第一の分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子を含む接合受容能のある細胞(接合コンピテント細胞)の第一の集団を提供する段階、
(b)第二集団の複数の細胞が(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用/逆選択用レポーター遺伝子と、(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した第二の分析用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の第二の集団を提供する段階、
(c)逆選択用レポーター遺伝子の発現が該細胞の増殖を阻害するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団を別個に維持する段階、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団を混合する段階、および
(e)第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用できることを測定する指標として、レポーター遺伝子の発現を検出する段階であり、このレポーター遺伝子は、第一の接合コンピテント細胞または第二の接合コンピテント細胞に含まれている第一もしくは第二のレポーター遺伝子または別のレポーター遺伝子であって、第一または第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合されている。
【0010】
本発明のこの局面において、第一および第二の分析用蛋白質のペプチド配列は、意図的に設計したものでも、無作為に作製したものでもよい。必要に応じて、2つの分析用蛋白質のうちの1つの配列を意図的に設計し、もう1つを無作為に作製してもよい。本発明のさらに別の態様において、蛋白質の一部分を意図的に設計し、別の部分を無作為に作製してもよい。好ましくは、本発明のこの局面で用いられる選択用/逆選択用レポーター遺伝子は、URA3、LYS2およびGAL1からなる群より選択される。必要に応じて、第一逆選択用レポーター遺伝子および第二逆選択用レポーター遺伝子は同一のものであってもよく(例えば、逆選択用遺伝子が2つともURA3であってもよい)、2つの異なる逆選択用レポーター遺伝子を用いてもよい(例えば、URA3とLYS2)。
【0011】
第二の局面において、本発明は、分析用化合物が、第一の分析用蛋白質と第二の分析用蛋白質との間の結合を阻害または妨害できるか否かを判定するための方法を特徴とする。この方法には、以下の段階が含まれる。すなわち、
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子を含み、(ii)DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分に共有結合した第一の分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子を含み、また、(iii)分析用化合物の非存在下で第一の分析用蛋白質に結合する遺伝子活性化部分に共有結合した第二の分析用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子を含む細胞を提供する段階、
(b)逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、この細胞と分析用化合物とを接触させる段階、
(c)この化合物が、第一の分析用蛋白質と第二の分析用蛋白質との間の結合を阻害または妨害できることを示す指標として、逆選択用レポーター遺伝子の発現の阻害を検出すること。
【0012】
本発明のこの局面において、第一の分析用蛋白質および第二の分析用蛋白質は、分析用化合物が存在しないときには、互いに作用し合うことが分かっていなければならない。分析用蛋白質の適切な組み合わせには、例えば、cFosとcJun、cJunとcJun、およびE2F1とpRbが含まれる。分析する化合物は、小さな有機分子または蛋白質(例えば、核酸ライブラリーの核酸によってコードされている蛋白質または無作為に作製されたペプチド配列)など、いかなる分子でもよい。分析用化合物として用いられる、好ましい蛋白質の例には、アデノウイルスのE1A、SV40のラージT抗原、およびヒト・パピローマウイルスのE7が含まれる。細胞の増殖を測定することによって、通常は、逆選択用レポーター遺伝子が発現されると細胞毒性となるような化合物の存在下で、逆選択用レポーター遺伝子の発現が阻害されたことを検出することができる。本発明のこの態様において、適切な逆選択用レポーター遺伝子には、URA3、LYS2、GAL1、CYH2およびCAN1が含まれる。
【0013】
本発明は、また、第一の分析用蛋白質が、第二の分析用蛋白質と相互作用することができ、第三の分析蛋白質とは相互作用できないことを判定するための方法を特徴とする。この方法には、以下の段階が含まれる。すなわち、
(a)(i)遺伝子活性化部分に共有結合した第一の分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子、
(ii)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合したレポーター遺伝子、
(iii)第一のDNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合することはできるが、第二のDNA結合蛋白質認識部位には特異的に結合することができないDNA結合部分に共有結合した第二分析用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子、
(iv)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子、および
(v)第二のDNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合することができるが、第一のDNA結合蛋白質認識部位には特異的に結合することができない第二のDNA結合部分に共有結合した第三の分析用蛋白質を含む第三のハイブリッド蛋白質を発現させる第三の融合遺伝子
を含む細胞を提供する段階、
(b)レポーター遺伝子の発現を検出することができ、その発現によって、細胞の増殖は阻害されないが、逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、細胞を維持する段階、ならびに
(c)第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用できることを示し、また、第一の分析用蛋白質が第三の分析用蛋白質とは相互作用できないことを示す指標として、細胞の増殖と選択用レポーター遺伝子の発現とを検出すること。
【0014】
必要に応じて、ポリペプチド、核酸、または有機小分子などの分析用化合物の存在下で、第一の分析用蛋白質が、第二の分析用蛋白質と相互作用することができ、第三の分析蛋白質とは相互作用できないことを測定することができる。ポリペプチドが、分析用化合物として作用するとき、このポリペプチドは、無作為に作製されたポリペプチド配列でも、意図的に設計されたポリペプチド配列でも、核酸ライブラリーの中に含まれている核酸によってコードされているものでもよい。さらに、分析用蛋白質はいずれも、無作為に作製されたポリペプチド配列または好ましい蛋白質を突然変異させたものを含むことができる。有用な逆選択用レポーター遺伝子には、URA3、LYS2、GAL1、CYH2およびCAN1が含まれる。好ましいレポーター遺伝子には、LEU2、TRP1、HIS3およびLacZが含まれる。
【0015】
本発明は、さらに、分析用RNA分子が分析用蛋白質と相互作用することができるか否かを判定するための方法を特徴とする。この方法は、
(a)第一の集団の複数の細胞が、
(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合された選択用/逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)分析用RNA分子が無作為でないRNA分子に共有結合している第一のハイブリッドRNA分子を発現させる第一の融合遺伝子、および
(iii)第一のDNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分で、無作為でないRNA分子に特異的に結合することができるRNA結合部分に共有結合したDNA結合部分を有する第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子を含む、接合コンピテント細胞の第一集団を提供する段階、
(b)第二の集団の複数の細胞が、
(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用/逆選択用レポーター遺伝子、および
(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した分析用蛋白質を発現させる第三融合遺伝子を含む接合コンピテント細胞の第二の集団を提供する段階、
(c)選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現が集団の細胞の増殖を阻害するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団を別個に維持する段階、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団を混合する段階、ならびに
(e)分析用RNA分子が分析用蛋白質と相互作用できることを測定する指標として、選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出することを含む。
【0016】
必要に応じて、分析用RNA分子および/または分析用蛋白質には、無作為に作製したヌクレオチドもしくはアミノ酸配列が含まれていてもよく、または分析用RNA分子および/または分析用蛋白質を、意図的に設計することもできる。選択的に、蛋白質(例えば、意図的に設計された蛋白質または無作為に作製された蛋白質、核酸ライブラリーの核酸によってコードされている蛋白質)のような分析用化合物(例えば、相互作用の解離因子または安定化因子)の存在下で、分析用RNA分子と分析用蛋白質とが相互作用できることを測定することができる。好ましい選択用/逆選択用レポーター遺伝子には、URA3、LYS2およびGAL1が含まれる。
【0017】
本発明は、さらに、第一の分析用RNA分子が第二の分析用RNA分子と相互作用することができるか否かを判定するための方法を特徴とする。この方法は、
(a)第一集団の複数の細胞が、
(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合された選択用/逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)第一の無作為でないRNA分子に共有結合した第一の分析用RNA分子を含む第一のハイブリッドRNA分子を発現させる第一の融合遺伝子、および
(iii)第一のDNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分で、第一の無作為でないRNA分子に特異的に結合できる第一のRNA結合部分に共有結合したDNA結合部分を含む、第一ハイブリッド蛋白質を発現させる第二融合遺伝子を含む、接合コンピテント細胞の第一集団を提供する段階、
(b)第二集団の複数の細胞が、
(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用/逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)第二の無作為でないRNA分子に共有結合した第二の分析用RNA分子を含む第二のハイブリッドRNA分子を発現させる第三融合遺伝子、および
(iii)第二の無作為でないRNA分子に特異的に結合することができる第二のRNA結合部分に共有結合した遺伝子活性化部分を発現させる第四の融合遺伝子を含む接合コンピテント細胞の第二集団を提供する段階、
(c)選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団とを別個に維持する段階、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団とを混合する段階、および
(e)第一の分析用RNA分子が、第二の分析用蛋白質と相互作用できることを測定する指標として、逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出することを含む。
【0018】
必要に応じて、第一および/または第二の分析用RNA分子は、無作為に作製したRNA配列を含むことができる。分析用化合物として用いられる蛋白質またはRNA分子のアミノ酸配列またはRNA配列は、意図的に設計することも、無作為に作製することもできる(例えば、核酸ライブラリーの中に含まれている核酸によってコードされているもの)。本発明のこの局面において、好ましい選択用/逆選択用レポーター遺伝子には、URA3、LYS2およびGAL1が含まれる。好ましくは、第一のRNA結合部分は、第二の無作為でないRNA分子に結合せず、第二のRNA結合部分は、第一の無作為でないRNA分子に結合しない。
【0019】
別の局面において、本発明は、分析用DNA分子が、分析用蛋白質と相互作用できるか否かを判定するための方法を特徴とする。この方法には、
(a)(i)分析用DNA分子に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子、および(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した分析用蛋白質を発現させる融合遺伝子、を含む細胞を提供する段階、ならびに
(b)該分析用DNA分子が該分析用蛋白質と相互作用することができることを示す指標として、該逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出することが含まれる。
必要に応じて、DNAを無作為に作製することができ、および/または蛋白質は、無作為に作製したペプチド配列を含むことができる。
【0020】
さらに別の局面において、本発明は、参照用蛋白質が分析用蛋白質と相互作用する能力に影響するような、参照用蛋白質における突然変異を同定するための方法を特徴とする。この方法は、
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用レポーター遺伝子、
(iii)第一の分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子、および
(iv)参照用蛋白質をコードする遺伝子の変異遺伝子の核酸ライブラリーの中にコードされている候補変異参照蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現する第二の融合遺伝子を含み、さらに、第一または第二のハイブリッド蛋白質の一方が、DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分も含み、第一または第二のハイブリッド蛋白質の他方が、遺伝子活性化部分も含んでいる細胞を提供する段階、ならびに
(b)参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じか、それよりも高いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖が阻害されるが、参照用蛋白質で得られる発現レベルよりも低いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖が阻害されないような条件下で、細胞を維持する段階、
(c)別の段階において、逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されないような条件下で、細胞を維持し、第一の分析用蛋白質が、変異参照用候補蛋白質と相互作用できることを示す指標として、選択用レポーター遺伝子の発現を検出することを含む。
【0021】
必要に応じて、本方法は、参照用蛋白質が第一の分析用蛋白質と相互作用する能力に影響する、参照用蛋白質における突然変異を示すために、候補となる変異参照用蛋白質の配列を参照用蛋白質の配列と比較することを含めることができる。必要に応じて、第二の融合遺伝子は、機能的C末端タグをコードすることができ、また、本明細書で説明されているように、選択用レポーター遺伝子の発現を検出するか、別の方法(例えば、UV光によるGFPの検出)によって、候補となる変異蛋白質のC末端が存在することを示すC末端タグの存在を測定することができる。
【0022】
別の局面において、本発明は、第一の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用する能力が低下するが、第二の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用することができるような、参照用蛋白質の条件的突然変異を同定するための方法を特徴とする。この方法は、
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用レポーター遺伝子、
(iii)参照用蛋白質をコードする遺伝子の変異遺伝子の核酸ライブラリーの中にコードされている変異参照用候補蛋白質を含む、第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子、および
(iv)第二の蛋白質を含む第二ハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子を含む細胞を提供する段階、ここで
第一のハイブリッド蛋白質または第二のハイブリッド蛋白質の一方が、DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分も含み、第一のハイブリッド蛋白質または第二のハイブリッド蛋白質のもう一方が、遺伝子活性化部分も含んでいる、
(b)参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じか、それよりも高いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖が阻害されるが、参照用蛋白質で得られる発現レベルよりも低いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖が阻害されないような条件下で、細胞を維持する段階、
(c)別の段階において、逆選択用レポーター遺伝子の発現によって細胞の増殖が阻害されないような条件下で細胞を維持する段階、および変異参照用候補蛋白質が第二の蛋白質と相互作用することができることを示す指標として、選択用レポーター遺伝子の発現を検出する段階、ならびに
(d)別の段階において、一つのパラメータ以外は、段階(c)と同じ条件で細胞を維持し、変異参照用候補蛋白質が第二の蛋白質と相互作用することができることを示す指標として、選択用レポーター遺伝子の発現を検出する段階、(段階(c)の条件下では、選択用レポーター遺伝子が発現するが、段階(d)の条件下では、選択用レポーター遺伝子が発現しなければ、条件的変異体であることが示される)。
【0023】
必要に応じて、本方法は、第一の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用する能力が低下するが、第二の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用することができるという、参照用蛋白質の変異体を同定するための方法として、変異参照用候補蛋白質の配列を参照用蛋白質の配列と比較することを含むことができる。
【0024】
段階(b)で細胞が維持される条件と、段階(c)で細胞が維持される条件とは、実施者が希望するままに、いかようにも変更することができる。例えば、第一の増殖条件と第二の増殖条件とを、温度および/または薬物の存在(例えば、ホルムアミドまたは重水素)によって変えることができる。
【0025】
本発明は、また、第一および第二の変異参照蛋白質が互いに相互作用できるようになるが、それぞれ、第二および第一の参照蛋白質とは相互作用できない、第一および第二の参照蛋白質における補償変異(compensatory mutation)を同定するための方法を特徴とする。本方法は、
(a)第一の集団の複数の細胞が、
(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第一の逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第一の選択用レポーター遺伝子、
(iii)遺伝子活性化部分に共有結合し、第一の参照用蛋白質の変異遺伝子の核酸ライブラリーの中にコードされている第一の候補変異参照用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子、および
(iv)第一の逆選択用マーカーを含み、DNA結合部分に共有結合した第二の参照用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子を含むプラスミドを含む接合コンピテント細胞の第一の集団を提供する段階、
(b)第二の集団の複数の細胞が、
(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の選択用レポーター遺伝子、
(iii)DNA結合部分に共有結合し、第二の参照用蛋白質の変異遺伝子の核酸ライブラリーの中にコードされている第二の候補変異参照用蛋白質を含む第三のハイブリッド蛋白質を発現させる第三の融合遺伝子、および
(iv)第二の逆選択用マーカーを含み、DNA結合部分に共有結合した第一の参照用蛋白質を含む第四のハイブリッド蛋白質を発現させる第四の融合遺伝子を含むプラスミド
を含む接合コンピテント細胞の第二の集団を提供する段階、
(c)第一および第二の参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じか、それよりも高いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖が阻害されるが、参照用蛋白質で得られる発現レベルよりも低いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖を阻害するような条件下で、別個に、第一および第二の接合コンピテント細胞集団を維持する段階、
(d)逆選択用マーカーの発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、第一および第二の接合コンピテント細胞集団を維持する段階、
(e)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団を維持する段階、
(f)第一および第二の候補蛋白質が互いに相互作用するが、第一および第二の参照用蛋白質とは相互作用しないことを測定する指標として、選択用レポーター遺伝子の発現を検出することを含む。
【0026】
必要に応じて、本方法は、第一および第二の参照用蛋白質における補償変異(compensatory mutation)を同定するための方法として、互いに相互作用する第一および第二の候補変異蛋白質の配列を、第一および第二の参照用蛋白質の配列と比較することを含むことができる。
【0027】
本発明は、さらに、本発明のさまざまな局面を実施する上で有用ないくつかの遺伝子構築物を特徴とする。一つの局面において、この遺伝子構築物には、(i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)酵母のプロモーター、(iv)核局在をコードするシグナル配列、および(v)細菌の複製開始点が含まれる。核局在をコードする好ましいシグナル配列は、SV40のラージT抗原の核局在をコードするシグナル配列である。好ましいプロモーターは、ADH1プロモーターであり、好ましい遺伝子構築物は、プラスミドp2.5である。
【0028】
別の局面において、遺伝子構築物には、(i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)プロモーター、(iv)細菌の複製開始点、(v)逆選択マーカー、および(vi)DNA結合部分を発現させる配列が含まれる。好ましくは、遺伝子構築物は、プラスミドp97.CYH2である。
【0029】
さらに別の局面において、遺伝子構築物には、(i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)プロモーター、(iv)細菌の複製開始点、(v)逆選択マーカー、および(vi)遺伝子活性化部分を発現させる配列が含まれる。好ましくは、遺伝子構築物は、pMV257である。
【0030】
より一般的には、本発明は、上流域の抑制配列と、逆選択用レポーター遺伝子の転写を媒介することができるDNA結合部分(例えば、天然の、または再構成された転写因子)に対するDNA結合蛋白質認識部位を含むプロモーターに機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子を有する何らかの遺伝子構築物(例えば、プラスミドまたは染色体)を特徴とする。好ましいプロモーターには、SPO13プロモーターが含まれ、好ましい逆選択用レポーター遺伝子には、URA3遺伝子が含まれる。好ましいDNA結合蛋白質認識部位は、Gal14に対する結合部位である。したがって、好ましい遺伝子構築物はSPAL:URA3である。
【0031】
さらに、本発明は、
(i)上流域の抑制配列と、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位、とを含むプロモーターに機能的に結合している逆選択用レポーター遺伝子をゲノムに組み込んだ酵母細胞を特徴とするが、この酵母細胞は、
(i)逆選択用レポーター遺伝子によってコードされている蛋白質と実質的に同一の天然に存在する蛋白質、および
(ii)天然に存在する蛋白質で、それが発現すると、それを有する細胞が増殖する上で有利になるような蛋白質を1個ももたないものである。このような酵母細胞には、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対するDNA結合蛋白質認識部位を含むSPO13プロモーターが含まれうる。好ましい酵母細胞には、MaV103、MaV203およびMaV99が含まれる。
【0032】
本発明の前述した各局面の好ましい態様において、細胞集団の細胞は、酵母細胞であり、好ましくは、この酵母とは、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)である。必要に応じて、測定対象の2つの分子の相互作用を解離または安定させる化合物を同定する方法において、分析用化合物の存在下で、2個以上の分子が相互作用する能力を測定することができる。従来の遺伝子発現法を用いて、分析用化合物を細胞の中で発現させることができる。または分析用化合物を培地に加えるだけにすることもできる。本発明において用いられる酵母菌株を、化合物の取り込みを向上させるために化学処理する(例えば、ポリミキシンBの9残基ペプチド)ことができる(例えば、ボグスラウスキ(Boguslawski)ら、Mol. Gen. Genet. 199:401〜405 およびAntimicrob. Agents and Therapies 29:330〜332 参照)。分析用化合物を増殖培地に加えるときには、外来化合物の比較的高率な取り込みレベルを示す酵母変異株である、erg6、ise1、ISE2、およびsrb1などのサッカロマイセス・セレビシアエの変異株が特に有用である。接合細胞を作出するために、接合コンピテント酵母細胞の2つの集団を用いるときには、これら2集団は、親和性のある接合型の接合コンピテント細胞を含んでいなければならない(例えば、MATaとMATα)。
【0033】
必要に応じて、本発明に係る方法を、蛋白質またはRNA分子を変異させるための方法と組み合わせることができる。蛋白質、および/またはRNA分子の相互作用の原因となるアミノ酸残基またはヌクレオチドを同定するためにである。例えば、2つの蛋白質の一方または両方における変異で、2つの蛋白質が相互作用できなくなるような変異は、それらの位置にあるアミノ酸が、野生型の蛋白質の相互作用能力に寄与していることを示す。同様に、2つの相互作用する蛋白質における補償変異(compensatory mutation)によって、これに対応する野生型蛋白質の相互作用能力の原因となる重要なアミノ酸が明らかになる。本発明は、また、蛋白質/蛋白質、蛋白質/RNA、蛋白質/DNA相互作用、またはRNA/RNA相互作用に影響する条件的アレルを同定するための方法を提供する。いったん同定されれば、条件的アレルにより、蛋白質またはRNA分子の機能の特徴を調べるために用いることのできる検出可能な表現形質が提供される。相互作用分子の1つに突然変異を起こさせ、一定の条件(例えば、許容的条件)では、その野生型パートナーと相互作用できるが、別の条件(例えば、制約的条件)では相互作用できないような変異体を同定することによって、このような対立遺伝子を同定することができる。
【0034】
好ましくは、各レポーター遺伝子は、遺伝子活性化部分が存在しないと転写を阻害するような抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている。したがって、レポーター遺伝子は、その発現が、転写因子の存在または不在に対して高度に反応するような位置に置かれなければならない。例えば、URA3遺伝子が用いられるときには、この対立遺伝子は、転写因子がないときには、Ura-Foarという表現型を付与し、転写因子があるときには、Ura+Foasという表現型を付与する。SPO13など、一定のプロモーターは、当然、上流域にある抑制配列を含んでいる。従来からのクローニング法を用いて、このような配列を別のプロモーターに組み込むことができる。逆選択用レポーター遺伝子を用いると、細胞の増殖阻害を検出することによって、この遺伝子の発現を検出することができる。
【0035】
1個以上のレポーター遺伝子を用いるときは、これらのレポーター遺伝子を、必要に応じて、DNA結合蛋白質認識部位だけで互いに同一のプロモーターに連結させることができる。好ましくは、レポーター遺伝子は、滴定可能な選択を考慮した遺伝子であり、これによって、条件の範囲の中で、細胞の増殖を測定することができる(例えば、5-FOA濃度)。
【0036】
さまざまなDNA結合部分と遺伝子活性化部分が、本発明のさまざまな局面において使用するのに適している。一般的に、転写因子のDNA結合ドメインまたは遺伝子活性化ドメインを用いることができる。必要に応じて、VP16の遺伝子活性化ドメインを用いることができる。DNA結合蛋白質認識部位、遺伝子活性化部分およびDNA結合部分はすべて、同一の転写因子に対応することもできるし、別個の転写因子に対応することもできる。有用な結合部位には、酵母の蛋白質であるGAL4、細菌の蛋白質であるLexA、酵母の金属結合因子Ace1に対する結合部位が含まれる。これらの結合部位は、抑制されたプロモーターとともに、容易に用いることができる(例えば、SPO13プロモーターを、GAL、LEX、およびACE1DNA結合部位と組み合わせて、それぞれ、SPAL、SPEX、およびSPACEプロモーターの基礎として用いることができる)。その他の有用な転写因子には、サッカロマイセス・セレビシアエのGCN4蛋白質(例えば、ホープ(Hope)およびシュトルール(Struhl)1986, Cell 46:885〜894を参照)、およびサッカロマイセス・セレビシアエのADR1蛋白質(例えば、クマール(Kumar)ら、1986,Cell 51:941〜951を参照)が含まれる。DNA結合蛋白質認識部位は、用いられる転写因子のDBに対する結合部位を1個以上含まなければならい。用いることのできるDNA結合蛋白質認識部位の数には制限はないが、結合部位の数は、好ましくは、1個から100個の間で、より好ましくは、1個から20個であるが、さらに好ましくは、結合部位の数は1個から16個の間である。結合部位の数は、測定法の望ましい感度等の要因によって調整することができる。
【0037】
必要に応じて、レポーター遺伝子に対する遺伝子(例えば、SPALX:URA3)を、半数体または2倍体の細胞のゲノムの中に組み込むことができる。必要に応じて、遺伝子を組み合わせて用いることもできる。例えば、SPALX:URA3をゲノムの中に置き、SPEX:URA3をプラスミド上に置くことができる。また、SPALX:URA3をプラスミドから発現させて、SPACEX:URA3を染色体上に置くこともできる。
【0038】
「解離化合物」とは、2つの分子が結合するのを妨害したり阻害する何らかの分子を意味する。解離化合物(本明細書においては、「解離因子」ともいわれる)の実施例は、ポリペプチド、核酸、および小さな有機分子(すなわち、1 KD以下の分子量を有する分子)である。
【0039】
「レポーター遺伝子」とは、その発現を、2つの分析用分子が相互作用することができるか(すなわち、蛋白質/蛋白質、蛋白質/RNA、RNA/RNA、または蛋白質/DNA相互作用)を測定する指標として測定できる遺伝子を意味する。有用なレポーター遺伝子は、そのプロモーターの中に、再構成された転写因子が結合するか、調査の対象であるDNA結合蛋白質が結合するDNA結合蛋白質認識部位を有する。このような遺伝子には、制限はないが、lacZ、アミノ酸生合成遺伝子(例えば、酵母のLEU2、HIS3、LYS2、またはTRP1)、URA3遺伝子、核酸生合成遺伝子、バクテリアのクロラムフェニコール・トランスアセチラーゼ(cat)遺伝子、およびバクテリアのgus遺伝子などが含まれる。また、これらに含まれるものには、緑色蛍光蛋白質遺伝子のような、蛍光マーカーをコードする遺伝子がある。一定の遺伝子が、後述されるように、「選択用」、「逆選択用」、または「選択用/逆選択用」レポーター遺伝子であるとみなされている。
【0040】
「分析用」蛋白質、RNA分子、またはDNA分子は、本発明に係る方法によって、その機能(すなわち、別の分子と相互作用する能力)の特徴を調べられている分子を意味する。
【0041】
「DNA結合」蛋白質とは、核酸と特異的に相互作用することができる多数の蛋白質の何れかを意味する。例えば、本発明で用いられているDNA結合蛋白質は、遺伝子のプロモーターの中の塩基配列と特異的に相互作用する転写因子の一部でもよい。またはDNA結合蛋白質は、天然の、または人工的にレポーター遺伝子のプロモーターの中に挿入された配列と特異的に相互作用する何らかの蛋白質であってもよい。蛋白質/DNA相互作用の特徴が分かっていれば、DNA結合蛋白質が、選ばれたレポーター遺伝子のプロモーターの中にある部位に結合することによって、レポーター遺伝子の転写を活性化するために、DNA結合蛋白質を遺伝子活性化部分に共有結合させることもできる。
【0042】
「選択用」マーカーとは、ある遺伝子が発現すると、それを含む細胞が増殖する上で有利になるようにする遺伝子を意味する。選択用マーカーの例には、制限はないが、LEU2、TRP1、およびHIS3が含まれる。本明細書で説明されている一定の選択用マーカーは、選択用マーカーを含むプラスミドを有する細胞の増殖を促進するために用いることができる。プラスミド上に位置している選択用マーカーに機能的に結合しているプロモーターは、そのマーカーにとって本来のプロモーターでもよいし、またはこのマーカーは、本来機能的に結合しているプロモーター以外のプロモーターに工学的に操作できるように結合しているものでもよい。一般的に、本発明で用いられているプラスミド(例えば、相互作用する分子または解離因子を発現させるために用いられるプラスミド)の上に位置している選択用マーカーに機能的に結合しているプロモーターは、調査の対象である分子相互作用を測定するために用いられるレポーター遺伝子のプロモーターの中に含まれているDNA結合蛋白質認識部位と機能的に同一のDNA結合蛋白質認識部位を含まない。言い換えると、レポーター遺伝子の転写に介在するDNA結合蛋白質は、選択用マーカーの転写にも介在するものであってはならず、選択用マーカーの転写に介在するDNA結合蛋白質は、レポーター遺伝子の転写にも介在してはならない。
【0043】
「スクリーニングできる」レポーター遺伝子とは、細胞に選択的な増殖有利性を付与するという方法以外の方法によって、細胞の中で、その発現を検出できる遺伝子を意味する。スクリーニングできるレポーター遺伝子の実施例は、lacZ遺伝子である。必要に応じて、スクリーニングできるレポーター遺伝子は、酵母細胞のゲノムの中に組み込むこともできる。スクリーニングできるレポーター遺伝子のプロモーターを、その細胞の中で用いられる他のレポーター遺伝子とは別のものにすることは、必須ではないが、好ましい。スクリーニングできるレポーター遺伝子は、2つの分子が相互作用して転写因子を再構成できるかを測定するために、本発明において用いることができる。このように、スクリーニングできるレポーター遺伝子に機能的に結合しているプロモーターは、再構成された転写因子、または遺伝子活性化部分に融合したDNA結合蛋白質が結合できるDNA結合蛋白質認識部位を含んでいるはずである。
【0044】
「逆選択用」マーカーとは、それが発現されると、それを含む細胞の増殖が阻害される遺伝子を意味する。逆選択レポーター遺伝子の実施例には、URA3、LYS2、GAL1、CYH2、およびCAN1が含まれる。これらのマーカーはプラスミドを除去するために用いることができる。
【0045】
「選択用」レポーター遺伝子とは、ある一定の条件下で発現されると、それを含む細胞が、増殖上有利になるようなレポーター遺伝子を意味する。
【0046】
「逆選択用」レポーター遺伝子とは、ある一定の条件下で発現されると、それを含む細胞の増殖が阻害されるようなレポーター遺伝子を意味する。逆選択レポーター遺伝子の実施例には、URA3、LYS2、GAL1、CYH2、およびCAN1が含まれる。
【0047】
「選択用/逆選択用」レポーター遺伝子とは、ある一定の条件下で発現されると、それを含む細胞が致死になるが、別の条件下で発現されると、それを含む細胞の増殖が選択的に有利になるようなレポーター遺伝子を意味する。したがって、1個の遺伝子を、選択用レポーター遺伝子と、逆選択用レポーター遺伝子の両方に用いることができる。選択用/逆選択用レポーター遺伝子の例には、URA3、LYS2、およびGAL1が含まれる。選択用/逆選択用レポーター遺伝子が用いられる本発明の局面のすべてにおいて、選択用レポーター遺伝子と逆選択用レポーター遺伝子を組み合わせたものを、1個の選択用/逆選択用レポーター遺伝子の代わりに用いることができる。例えば、本発明の第一の局面において、各接合コンピテント細胞には、(i)選択用レポーター遺伝子、および(ii)逆選択用レポーター遺伝子を備えさせることができる。このような2個の遺伝子が、1個の選択用/逆選択用レポーター遺伝子の代わりをするときには、これらのレポーター遺伝子は、同一のプロモーターに機能的に結合されていることが好ましい。特に、レポーター遺伝子は、同一のDNA結合蛋白質認識部位を有するプロモーターに機能的に結合されているのが好ましい。
【0048】
「DNA結合蛋白質認識部位」とは、所定のポリペプチド(すなわち、DNA結合蛋白質)と特異的に相互作用するのに必要十分なDNA分節を意味する。
「共有結合した」とは、2つの分子が、直接的にせよ、間接的にせよ、共有結合によって連結していることを意味する。例えば、「共有結合した」蛋白質または蛋白質部分同士は、直接的に隣接しているか、同じハイブリッド蛋白質の中の1個以上のアミノ酸のつながりによって隔てられている。
「蛋白質」とは、天然のポリペプチドまたはペプチドの全部または一部を構成するか、天然には存在しないポリペプチドまたはペプチドを構成するアミノ酸配列を意味する。
【0049】
「DNA結合部分」とは、特異的なポリペプチドが、特定のDNA配列(すなわち、DNA結合蛋白質認識部位)に結合するようにさせることができるアミノ酸のつながりを意味する。
「RNA結合部分」とは、特異的なポリペプチドが、特定のRNA配列(すなわち、RNA結合蛋白質認識部位)に結合するようにさせることができるアミノ酸のつながりを意味する。
「ハイブリッド」蛋白質、RNA分子、またはDNA分子とは、2個以上の共有結合したポリペプチド、RNA分子、またはDNA分子のキメラを意味する。
【0050】
「遺伝子活性化部分」とは、アミノ酸のつながりで、それが結合している調節領域(すなわち、プロモーター)を有する遺伝子の発現を誘導することができるものを意味する。
「機能的に結合した」とは、適当な分子(例えば、転写活性化蛋白質または転写活性化ドメインを含む蛋白質)が制御配列に結合すると、遺伝子が発現できるような様式で、遺伝子および制御配列(例えば、プロモーター)が連結していることを意味する。
「無作為に作製された」配列とは、予め決定された配列をもたない配列を意味する。すなわち、これは、合成される前に決定されているDNA、RNAまたは蛋白質の配列またはモチーフを有する「意図的に設計された」配列とは対照的なものである。無作為に作製された配列は、核酸ライブラリーに由来することもある。
【0051】
「変異した」とは、部位特異的なまたはランダムな突然変異誘発のいずれかによって、配列が変化することを意味する。変異した配列は、点突然変異、挿入突然変異、欠失突然変異、または転位突然変異を含む。
「プロモーター」とは、転写を行わせることができる最小限の配列を意味するが、このような要素は、もとの遺伝子の5'または3'側領域に位置しうる。
「抑制」配列とは、一定の条件下で、それに連結している遺伝子の発現を阻害するDNA配列を意味する。
【0052】
核酸「ライブラリー」とは、5個以上のDNA分子のセットを意味する。このようなライブラリーには、異なるDNA分子が、何百、何千、何百万と入っていることがある。
「両方向組合せライブラリー」とは、2つの別個の親となる発現ライブラリーから作製した、相互作用するハイブリッド分子の組合せの非常に大きなセットを意味する。典型的には、このセットの規模は、ほぼ、それぞれの親ライブラリーの複雑さの所産である。
「補償(compensatory)」変異とは、相互作用する一組の分子(例えば、蛋白質)における突然変異で、これらの分子が互いに相互作用できるようにさせるが、野生型の分子とは相互作用できない突然変異を意味する。
「集団接合(mass mating)」とは、非常に多数の接合細胞を作出するために、相補的な接合型を有する酵母の接合コンピテント細胞懸濁液を混合することを意味する。典型的には、1010から1012個までの接合細胞が作出される。好ましくは、細胞の懸濁液は、1:1の比率(細胞数:細胞数)で混合される。
【0053】
「機能的C末端タグ」とは、分析用蛋白質のC末端に位置するアミノ酸のつながりを意味し、全長の蛋白質が検出可能なレベルで発現していることを示す分析用蛋白質のカルボキシ末端が元のままであることを確認するために、それが存在することを測定することができるものを意味する。例えば、機能的C末端タグは、別の蛋白質(例えば、pRb、p107またはp130)と相互作用できる配列(例えば、E2F1のポケット結合ドメイン)でありうる。必要に応じて、機能的C末端タグは、別の蛋白質の結合がなくとも検出できる配列でもよい。例えば、GFP(緑色蛍光蛋白質)は、機能的C末端タグとして有用であり、UV光によって検出することができる。
【0054】
本発明は、いくつかの特徴および利点を提供する。例えば、本発明によって、ペプチドまたはRNA分子をコードするcDNAクローンの2つのライブラリーを同時にスクリーニングすることができるようになる。「集団接合(mass mating)」法を用いて、所与のシステムにおけるすべての分子の組合せについて、同一の条件下で、さまざまな分子の機能的な関係を調べる反応を1回だけ行なう。さらに、相互作用する分子は、いずれも事前に同定されている必要はない。本発明は、1×1013もの相互作用を発生させたり、スクリーニングしたりするのを容易にする。したがって、本発明によって、分子の多数の組合せのスクリーニングが容易になり、相対的に稀な会合作用や解離作用を検出できる可能性が高くなる。本発明を大規模に用いて、調査の対象である2つのライブラリーで起こる相互作用のすべて、または大部分についての、蛋白質/蛋白質結合マップを作成することができる。相互作用する分子の組合せで可能なもののを一つずつ含む酵母細胞を、分子の相互作用をカタログ化する方法で、プレートの上に組織だって培養することができる。例えば、調査の対象である蛋白質をコードするDNAをプローブとして用いて、固体担体(例えば、ニトロセルロースフィルター)に並べられた酵母コロニーから抽出したDNAに対してハイブリダイゼーションを行なうことができる。調査の対象であるDNAがハイブリダイズする酵母コロニーを同定することによって、調査の対象であるDNAによってコードされている調査の対象である蛋白質と相互作用する分子を含む酵母菌株が直ちに同定される。そして、ハイブリダイゼーションで陽性を示したコロニーに由来する酵母細胞から、相互作用する分子をコードする遺伝子をいくつかクローニングすることができる。
【0055】
本発明は、比較的稀な会合作用を検出するために高感度で用いることもできる。したがって、本発明は、組合せライブラリーの構築に当たって最も重大な問題の一つである、相互作用する可能性のある分子の大規模な集団から、相互作用するいくつかの組合せを同定するという問題に取り組む。
【0056】
また、本発明により、望ましくない相互作用を分離または阻害するが、望ましい相互作用を分離または阻害しない分子を同定することができるようになる。例えば、本発明は、ウイルス蛋白質が宿主細胞の分子に結合するのを分離または阻害するが、宿主細胞の分子が好ましい分子に結合するのには影響を与えない化合物を同定することを容易にする。さらに、本発明によって、1種類の培地上(例えば、1枚のプレート上)でこれらの解離化合物が同定できるようになり、治療用化合物のスクリーニングが、迅速で簡便な処理となる。化合物があるところで、レポーター遺伝子の発現の増加を測定することによって、分子の相互作用を安定させる化合物を迅速かつ簡便に同定することもできる。
【0057】
本発明は、また、調査の対象である薬物(例えば、解離因子または安定化因子)の標的で、関連する分子の相互作用が未知の標的を同定するためにも用いることができる。この方法は、酵母細胞の集団を用いるが、集団の各細胞は、両方向組合せライブラリーから採った、相互作用する分子を一組ずつ含んでいる。集団の各細胞を、調査の対象である薬物に曝し、薬物があると、レポーター遺伝子をさまざまなレベルで(例えば、高いレベルまたは低いレベルで)発現させるコロニーは、調査の対象である薬物の標的となるハイブリッド蛋白質を含む細胞であることを示している。これらの細胞の中にコードされているハイブリッド蛋白質は、従来の方法によって同定することができる。
【0058】
本発明では、低コピー数のプラスミドを用いることができるため、調査の対象である蛋白質、およびRNA分子を、生理学的に適当なレベルで発現させることができる。低コピー数のプラスミドから、調査の対象である分子を発現させると、実施者は、相互作用分子のさまざまな組合せの間の僅かな違いを検出することができるはずである。遺伝子を多コピー数プラスミドから過剰発現させると、相互作用する分子の組合せで、似ていないもの同士も、時として、レポーター遺伝子の発現レベルが同じように見えるため、蛋白質の組合せの間の差異を検出することが難しくなる傾向にある。別個の酵母細胞におけるハイブリッド蛋白質の発現レベルに関する再現性は、低コピー数プラスミドを用いて、至適化することができる。
【0059】
本発明の一定の態様は、偽陽性の4つのタイプが発生することを(別のシステムで得られる発生率に較べると)抑える。偽陽性として分類される相互作用には、
(i)(a)同じ細胞型において、(b)同じ細胞内区分において、または(c)同じ発生段階において発現されないため、生理的条件下では明らかに相互作用することができない蛋白質、
(ii)生物学的に適当でない、不正なオープンリーディングフレームの発現によってできた蛋白質、または
(iii)特異的な相互作用するパートナーを必要としないで、独力で、レポーター遺伝子の転写に介在する蛋白質の間の相互作用が含まれる。これらの偽陽性の出現は、高度にプロモーター依存的である(バーテル(Bartel)ら、1993, Biofeedback 14:920〜924)。さらに、大腸菌からの無作為な配列の0.1%は、真核細胞中のDBに融合させると、(つまり、ADの機能として)転写を活性化させることができることが示されている(マ(Ma)およびプタシュネ(Ptashne)、1987, Cell 51:113〜119)。
【0060】
生理学的に適正なレベルで、ハイブリッド蛋白質の発現レベルを維持することによって、本発明は、最初の2つに分類された偽陽性が回収されるのを防止することができる。必要に応じて、本発明を実施するにあたり、「三重選択法」を用いることによって、偽陽性を拾う機会を減少させることもできる。三重選択では、3つのレポーター遺伝子が、DNA結合蛋白質認識部位以外は異なった配列を有するプロモーターに機能的に結合されている(図1)。3つの異なるプロモーターに機能的に結合した3つのレポーター遺伝子を用いることによって、3番目の分類の偽陽性を回収する可能性が除去される。
【0061】
本発明が、抗原へのモノクローナル抗体の結合を検出するために用いられるときには、本発明は、以下の特徴を提供する。免疫システムと同じように、本発明は、本来、組合せを扱うものであるため、本発明で用いられる集団接合(mass mating)法によって、相互作用する分子の多数の組合せを解析するのが容易になる。さらに、本発明およびPCR突然変異誘発法、ならびに本明細書で説明されている滴定可能な選択法によって、免疫システムの体細胞の純化能力を合成的に再現することができる。
【0062】
本発明は、また、蛋白質またはRNA分子の突然変異遺伝子を単離するための簡便な方法を提供する。従来の突然変異遺伝子単離法は、ある分子の特定の領域(例えば、関連する分子間で保存されているドメイン)が前もって示唆されていることに基づいて行われるが、本発明は、その分子に関する事前の知識がない状態でも、また、突然変異誘発法に見られる偏りなしに、多数の突然変異遺伝子を作出し、スクリーニングすることを可能にする。
【0063】
本発明は、分子間(例えば、蛋白質/蛋白質)の相互作用の構造と調節に関する情報を提供するための手段として用いることができる。本発明を用いて調べることができる、特に興味深い分子間の相互作用には、ウイルスと宿主細胞の構成成分との間における蛋白質/蛋白質の相互作用が含まれる。これらの相互作用を阻止または防止できる解離化合物は、ウイルスの病原性を抑制するための治療薬として用いることができる。
【0064】
詳細な説明
略号
本明細書中で用いた略号には以下のものが含まれる:
AA アミノ酸
AD 活性化ドメイン
DB、DBD DNA結合ドメイン
5-FOA 5-フルオロ-オロチン酸
GBS GAL4結合配列
ORF オープンリーディングフレーム
URS 上流抑制配列
Prom プロモーター
Term ターミネーター
CEN 動原体
ARS 酵母複製起点
RP レプリカ培養
2 mu 酵母2μプラスミド複製起点
ORI 細菌複製起点
3AT 3-アミノトリアゾール
【0065】
本発明の詳細な実施例を提供する前に本発明のいくつかの要素を説明する。
標準的ツーハイブリッドシステム:酵母ツーハイブリッド系は、一対の蛋白質の会合を検出するために使用されてきた(例えば、フィールズ(Fields)ら、米国特許第5,283,173号を参照)。この方法は、1つの転写因子の2つの分離可能なドメインのインビボでの再構成を含む。この転写因子のDNA結合ドメイン(DB)は、選択されたプロモーターの認識のために必要である。活性化ドメイン(AD)は、細胞の転写装置のその他の要素との接触のために必要である。この系において、転写因子は複数のハイブリッド蛋白質を用いることによって再構成される。一つのハイブリッド体は、ADおよび対象となる第1の蛋白質を含む。第2のハイブリッド体は、DBおよび対象となる第2の蛋白質を含む。対象の第1および第2の蛋白質が相互作用する場合には、ADおよびDBが物理的に非常に近接し、それによって転写因子が再構成される。蛋白質の会合は、再構成された転写因子がレポーター遺伝子の転写を活性化する能力を解析することによって測定することができる。
【0066】
有用なレポーター遺伝子は、DBによって特異的に認識されるプロモーターと機能的に結合したものである。ツーハイブリッド系では典型的には、パン酵母サッカロマイセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)、およびその発現を適切な条件において選択することができるレポーター遺伝子を用いる。このツーハイブリッドシステムは、第2のあらかじめ選択した蛋白質と相互作用する蛋白質をコードする遺伝子をクローニングするための便利な方法を提供する。このような実験では、無作為に作製した配列をADと融合させ、対象となる蛋白質をDBと融合させるために、cDNAライブラリーが構築される。この「一方向性の」スクリーニング法では、クローンの一つのライブラリーから発現された蛋白質が、あらかじめ選択された対象となる蛋白質と相互作用する能力を試験する。2つのライブラリーを用いる方法(一つはADと融合させたもの、もう一つはDBと融合させたもの)は記載されていない。
【0067】
レポーター遺伝子:本明細書に記載したレポーター遺伝子は、プラスミド上に位置させることもでき、一倍体または二倍体の細胞のゲノムに組み込むこともできる。その発現が解析の対象となるレポーター遺伝子は、そのレポーター遺伝子の転写を指向する配列を有するプロモーターと機能的に結合している。このレポーター遺伝子は、転写因子の遺伝子活性化部分がその遺伝子と近接した場合に(例えば、転写因子を再構成するためにハイブリッド蛋白質を用いること、またはDNA結合蛋白質の遺伝子活性化部分と共有結合することによって)、発現するような位置に置かれている。また、このレポーター遺伝子は、転写因子の存在または存在しないことに対してそれを高度に反応させる調節配列と機能的に結合させることもできる。例えば、特異的な転写因子が存在しない場合に、高度に反応性のURA3対立遺伝子は、細胞にUra- Foar表現型を付与する。特異的な転写因子の存在下では、高度に反応性のURA3対立遺伝子は、細胞にUra+ Foas表現型を付与する。レポーター遺伝子を有する細胞(すなわち、形質転換を受けた酵母細胞)は通常、遺伝子の野生型のコピー(例えば、URA3遺伝子)を含むが、外来性レポーター遺伝子をゲノムに組み込み、野生型遺伝子と置換することもできる。レポーター遺伝子をプロモーターと連結し、そのレポーター遺伝子を細胞に導入するためには、従来の方法および基準を用いることができる。
【0068】
プロモーター:レポーター遺伝子の発現のために適切なプロモーターは、そのレポーター遺伝子と結合した場合に、適切な分子(すなわち、転写活性化ドメインを有する蛋白質)の存在下においてその発現を指向することができ、転写活性化ドメインの非存在下では、そのレポーター遺伝子の転写を指向しないものである。有用なプロモーターの一例は、酵母SPO13プロモーターである。その他の有用なプロモーターには、上流抑制配列を含むプロモーター(例えば、バイダル(Vidal)ら、1995. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:2370〜2374)、および転写活性化ドメインの非存在下においてレポーター遺伝子の発現を抑制するものが含まれる。プロモーターがレポーター遺伝子の転写を指向する能力は、遺伝子発現を解析する従来の方法(例えば、遺伝子産物もしくはそのmRNAの検出、または細胞の増殖のためにそのレポーター遺伝子の発現が必要な条件下における、細胞増殖の検出)によって測定することができる。
【0069】
一つまたはそれ以上のDNA結合蛋白質認識部位を含むプロモーターの誘導物を構築するためには、従来の分子生物学の技法を用いることができる。例えば、SPOプロモーターを操作して、GAL4結合配列(GBS)の一つまたはそれ以上のコピーを含むようにすることができる。GAL4に対する天然型のプロモーターにおけるDNA結合部位の特徴は詳細に解明されているため、比較的高い親和性でGAL4が結合する合成配列を作成することが可能である。SPO13プロモーターと機能的に結合したURA3対立遺伝子を、SPO13/GAL/URA3の代わりにSPALX:URA3と呼ぶ。ここで、Xはプロモーターに存在するGBSの数を示す。その他の有用なDNA結合蛋白質認識部位には、LexAおよびAce1結合部位が含まれる。このほか、ある蛋白質があるDNA配列と結合する能力を測定する場合には、DNA結合蛋白質認識部位は野生型のDNA結合蛋白質認識部位でもよく、そのDNA配列が蛋白質と相互作用する能力を試験するための、対象となる任意の人為的に設計された配列であっても無作為に作成された配列であってもよい。
【0070】
酵母菌株:本発明に用いる酵母菌株は、標準的な方法を用いて増殖および保管を行うことができる。サッカロマイセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)は、本発明において特に有用である。本発明の特定の面においては、接合能力を有する2つの酵母細胞を接合させることが望ましい。例えば、ある方法においては、接合能力を有する1つの細胞内で活性化ドメインを含むハイブリッド蛋白質を発現させ、接合能力を有する第2の細胞内でDNA結合ドメインを含むハイブリッド蛋白質を発現させる。このような場合、転写因子は、第1および第2の接合能力を有する細胞を接合させることによって再構成される。明らかに、この2つの接合能力を有する細胞の接合型には適合性が必要である。例えば、接合能力を有する1つの細胞はMATa接合型であり、接合能力を有するもう一方の細胞はMATαであることができる。どちらの細胞型でどちらのハイブリッド蛋白質が発現されるかは問題とはならない。
【0071】
分子相互作用の特徴分析のために好ましい酵母細胞は、(i)上流抑制配列、および(ii)DNA結合蛋白質認識部位を有するプロモーターと機能的に結合した逆選択可能なレポーター遺伝子がそのゲノム内に組み込まれたものである。好ましい酵母細胞は、(i)逆選択可能なレポーター遺伝子によってコードされる蛋白質と実質的に同一な天然型の蛋白質、および(ii)発現した場合(例えば、プラスミドから)に、それを含む細胞に増殖面での利点を付与する少なくとも一つの天然型の蛋白質、を含まない。さらに、酵母細胞は、ゲノムに組み込まれた形で、選択可能なマーカー(例えば、HIS3)および/またはその発現をスクリーニングすることができる遺伝子(例えば、lacZ)を含むことができる。このような3つの遺伝子(すなわち、逆選択可能なレポーター遺伝子、選択可能なマーカー、およびスクリーニングが可能なマーカー)が細胞のゲノムに組み込まれている場合、この3つの遺伝子のプロモーターは、DNA結合蛋白質認識部位を除いて、別個であることが好ましい(図1)。別個のプロモーターを用いることにより、偽陽性が得られる確率は低下する。
【0072】
本発明者らは、以下の特徴を有する一連の酵母菌株を構築した:(i)ツーハイブリッド体を発現し、ヒスチジンを含まない培地上でGAL1:HIS3に対する依存性を示す2つのプラスミドの選択のための一連の非復帰性の栄養要求性変異株:leu2、trp1、およびhis3、(ii)プラスミドシャッフリングを促進するための2つの劣性薬物耐性変異株(can1およびcyh2)、および(iii)3つの組み込まれたGAL4で誘導可能なレポーター遺伝子(Gal1:HIS3、Gal1:lacZ、およびSPAL:URA3、図1)。これらの特徴を有する、両方の接合型(MATαおよびMATa)の酵母菌株を作製した。
【0073】
本発明において特に用いるものは、以下に説明する酵母菌株MaV103およびMaV203である。被験化合物(例えば、解離因子の可能性のあるもの)の取り込みが必要に応じて、化合物の取り込み能力が比較的高いため、erg6変異株が特に有用である。酵母細胞の透過性化処理のためのその他の方法を用いてもよい。これらには、ポリミキシンBノナペプチドなどの化学物質による処理が含まれる。
【0074】
プラスミドp2.5の構築:本発明者らは、本発明において試験することができる解離化合物(例えば、蛋白質またはRNA分子)を合成するために有用な、p2.5と命名した新規なプラスミドを設計した(図2)。さらに一般的には、このプラスミドは、酵母細胞において好ましい遺伝子を発現させるために用いることができる。このプラスミドは、解離化合物をコードするcDNAライブラリーの作成を可能とし、以下の特徴を提供する:(i)プラスミドの多数のコピーの維持を可能ととするための2μmの配列、(ii)プラスミドを好ましくは、本発明に用いるハイブリッド単御悪またはハイブリッドRNA分子をコードする遺伝子構築物(すなわち、複数のプラスミド)とは独立に選択することができるようにする選択可能なマーカー、(iii)強力な構成性プロモーターである酵母ADH1プロモーター、(iv)GAL4認識部位、(v)ポリリンカーの上流に位置し、コードされたポリペプチドの宿主細胞の核への輸送を促進する核局在化シグナル、および(vi)細菌複製起点。プラスミドp2.5は、ADH1プロモーターを含むpPC86のXhoI-XhoI断片を、pRS323のXhoI部位に挿入し、続いて、ポリリンカーおよびADH1ターミネーターを含むpPC86のSalI-BamHI断片をpRS323のSalI-BamHI部位に挿入することによって作製した(シコルスキ(Sikorski)ら、1989, Genetics 122:19〜27)。
【0075】
ハイブリッド蛋白質の産生のためのプラスミドの構築:プラスミドp97.CYH2およびpMV257は、本発明において、対象となる可能性のある相互作用性分子と融合させたGAL4-DBまたはADをそれぞれ有するハイブリッド蛋白質を産生するために有用である(図10B)。これらのプラスミドは、CTH2をコードする配列をpPC97(DBプラスミドの場合)、またはpPC97(ADプラスミドの場合)に挿入することによって産生される(図10A)。p97.CYH2およびpMV257はいずれも、(i)酵母ARS4複製起点、(ii)酵母CEN6動原体配列、(iii)選択可能なマーカー(例えば、pPC97についてはLEU2、pPC86についてはTRP1)、(iv)酵母ADH1プロモーターおよびターミネーター、(v)GAL4-DB(pPC97の場合)またはGAL4-AD(pPC86の場合)、(vi)核シグナル配列をコードし、DBまたはADドメインのフレームに位置したSV40ラージT抗原配列、(vii)細菌複製起点、および(viii)CYH2逆選択可能マーカー、を有する。当業者には、ハイブリッド蛋白質を産生するために多数の同様のプラスミドを用いることができることは周知である。例えば、(単純ヘルペスウイルスからの)VP16またはAce1のDBまたはADを含むハイブリッド蛋白質は、GAL4-DBまたは-ADの位置に、代わりにVP16またはAce1 DBもしくはAce1 ADをコードする配列を有するプラスミドを用いて産生することができる。同様に、Leu2およびTrp1以外の選択可能なマーカーを用いることもできる。これらのプラスミドは、従来の分子生物学的方法を用いて構築することができる。一般に、これらのプラスミドの一つを含む酵母細胞を選択するためには、この酵母細胞はプラスミドの非存在下では、選択可能なマーカーに対応する機能的遺伝子産物を発現しない必要がある。例えば、p97.CYH2による形質転換を受ける酵母細胞は、leu2変異を有する必要がある。これにより、p97.CYH2を含む形質転換株を、ロイシンを含まない培地上で選択することができる。酵母菌株MaV103およびMaV203は、p97.CYH2およびpMV257とともに用いる場合に特に有用である。
【0076】
蛋白質/蛋白質相互作用の解析:本発明は、蛋白質/蛋白質相互作用を同定するための便利な方法を提供する。この方法は、接合能力を有する2つの細胞(例えば酵母)の集団を用いる。選択可能な/逆選択可能なレポーター遺伝子(例えば、URA3遺伝子)を、DNA結合蛋白(例えば、GAL4などの転写因子)に対する認識部位を少なくとも一つ含むプロモーター(例えば、SPO13プロモーター)と機能的に結合させるためには、従来のクローニング法を用いることができる。必要に応じて、選択可能な/逆選択可能なレポーター遺伝子を酵母細胞のゲノムに組み込むために従来の方法を用いることができる。
【0077】
蛋白質/RNA相互作用の解析:酵母細胞において種々の蛋白質またはRNA分子を発現させるために、従来のクローニング法を用いることができる。RNA結合部分およびそれが結合する非ランダムRNA分子には制限はない。一般に、RNA結合部分は50アミノ酸未満で構成されることが好ましい。好ましくは、この非ランダムRNA分子は長さ10〜1000ヌクレオチドの範囲であり、さらに好ましくは、この非ランダムRNA分子は長さ10〜100ヌクレオチドの範囲である。適切なRNA結合部分およびそれが結合する非ランダムRNA分子の一例は、鉄反応要素結合蛋白質および鉄反応要素である。
【0078】
RNA/RNA相互作用の解析:本発明の逆ツーハイブリッド系を用いて、多数のRNA/RNA相互作用を同定することができる。本発明のこの面において用いるために適した発現プラスミドの構築は、一般に知られたクローニング法を用いることによって達成することができる。蛋白質/RNA相互作用の同定に有用な非ランダムRNA分子およびRNA結合部分は、RNA/RNA相互作用の同定にも有用である。
【0079】
DNA/蛋白質相互作用の解析:本発明は、蛋白質/DNA相互作用の特徴分析のために用いることもできる。本発明のこの面において、対象となるDNA配列(「被験DNA配列」)は、逆選択可能なレポーター遺伝子と機能的に結合したプロモーターの内部に含まれる。この意味において、被験DNA配列は、DNA結合蛋白質認識部位として作用する。対象となる蛋白質(「被験蛋白質」)が、その被験DNA配列と結合する能力を検討する。本発明のこの面において、「被験蛋白質」は、遺伝子活性化部分を有するハイブリッド蛋白質として産生され、ハイブリッド蛋白質の被験DNA配列との結合によって逆選択可能なレポーター遺伝子の転写が活性化される。必要に応じて、この被験DNA配列および/または被験蛋白質配列は、意図的に設計されたものでも、無作為に作製されたものでも、または意図的に設計された部分と無作為に作製された部分の両方を含むものでもよい。必要に応じて、被験DNA配列および/または被験蛋白質をコードする遺伝子は、核酸ライブラリーに由来することができる。したがって、両方向組合せライブラリーを作成し、本発明のこの面におけるスクリーニングを行うことができる。本明細書に記載した、蛋白質/蛋白質相互作用の特徴分析のための方法、ならびに蛋白質/蛋白質相互作用に影響を及ぼす化合物および変異を同定するための方法は、適切な変更を施すことにより、蛋白質/DNA相互作用の特徴分析のために用いることができる。
【0080】
解離化合物の同定:可能性のある解離化合物は、培養系に対してそれを単純に添加することによって細胞に導入することができる。可能性のある解離化合物の多くは十分に低分子であるため、エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれる。また、解離化合物がRNA分子または蛋白質であれば、希望するRNAまたは蛋白質を発現するDNA構築物によって細胞に形質転換を施すことによって細胞内で産生することができる。解離化合物は、再構成された転写因子を有する細胞を、再構成された転写因子が逆選択可能なレポーター遺伝子の発現を指向するような条件下において、固形培地にまず平板培養することによって迅速に同定することができる。この方法により、培地上に非増殖性細胞の層が作られる。
【0081】
続いて、検査対象の化合物を、非増殖性細胞の層の上に、秩序だった様式(例えば、格子状などのパターンを形作るように)で付着させる。固形培地に溶液として添加された化合物は、徐々に培地全体に拡散し、培地中に化合物の一定の濃度勾配が作られる。解離化合物は、細胞増殖を防止する逆選択可能なレポーター遺伝子の発現が転写因子の解離によって抑制されるため、化合物が付着した部分で細胞が増殖することによって同定することができる。解離化合物の添加に反応して増殖した細胞も勾配を形成すると考えられる。つまり、解離化合物が添加されたプレート上の位置では最も多くの細胞が増殖する可能性が高いと考えられる。増殖している細胞の最も中心の位置には、高濃度の化合物の毒性のためにリング状の非増殖性部分が生じる可能性もある。この増殖に関するリングの直径は、解離化合物の強度を反映するとともに、解離のために必要な化合物の濃度を反映する。
【0082】
感受性の最適化:典型的には、解離因子がそれとして同定される以前には、相互作用する一対の分子のいずれか一方に対するその相対的親和性は未知である。したがって、解離因子を同定するために好ましい条件は、レポーター遺伝子の転写活性のわずかな低下でも認識可能なものである必要がある。最大感度が得られる条件は、プロモーター内のDNA結合蛋白認識部位の数を最小にし、宿主細胞に薬物感受性(例えばFoas)表現型を付与するために十分な、最低の濃度の薬物(例えば5-FOA)を用いることによって確立することができる。
【0083】
本発明者らは、本発明のその他の態様を実践するための指標となる、本発明の種々の面に関するいくつかの実施例を以下に説明する。
レポーター遺伝子の誘導可能な発現:本発明において用いるレポーター遺伝子の発現を、転写因子によって誘導することができることを示すために、本発明者らは、再構成されたGAL4蛋白質がSPALX:URA3対立遺伝子の発現を誘導する能力を測定した。この実施例において、本発明者らは5つのGBSを有するSPAL5:URA3対立遺伝子を用いた。本発明者らは、(i)全長の野生型GAL4蛋白質、または(ii)同一細胞において2つの別々の分子として発現されるGAL4-DB(第1〜147アミノ酸)およびGAL4-AD(第768〜881アミノ酸)、の存在下において付与されるUraおよび5-FOA表現型を分析した。全長のGAL4転写因子を発現した形質転換株は、強力かつ堅固に調節されたUra+およびFoas表現型を示したが、GAL4-DBおよびGAL4-ADを2つの別々の分子おとして発現した形質転換株は、転写因子を再構成する能力を有する分子を欠いているために、強力かつ堅固に調節されたUra-およびFoar表現型を示した。Foas表現型の強度は、形質転換を受けていない野生型の対照株と同程度であった(図3)。予想された通り、URA3のヌル(null)対立遺伝子(ura3-52)を含む細胞には、いずれの蛋白質(GAL4、GAL4-DB、またはGAL4-AD)とも効果はみられなかった(図3)。
【0084】
転写因子を再構成するための2つのハイブリッド分子の使用:ここでは、本発明者らは、レポーター遺伝子の発現を誘導するために2つのハイブリッド分子を用いることが可能であることを示す。本発明者らは、このことを2つの異なる一対の蛋白質について示す。各々の対の蛋白質は相互作用することが知られている。第1の蛋白質の対は、cFosおよびcJunであり、両者は比較的高い親和性で相互作用する。第2の蛋白質の対はpRbおよびE2F1であり、これらは比較的低い親和性で相互作用する。本発明者らは、GAL4転写因子の再構成を示すために、これらの2対の蛋白質およびSPALX:URA3対立遺伝子を用いた。これらの実験では、合計4種のハイブリッド分子を使用した。第1の蛋白質の対については、cFosの相互作用ドメインをGAL4-DBと共有結合させ(すなわち、融合させ)、cJunの相互作用ドメインをGAL4-ADと共有結合させた。第2の蛋白質の対については、pRbの相互作用ドメインをGAL4-DBと融合させ、E2F1の相互作用ドメインをGAL4-ADと融合させた(図4)。
【0085】
これらの融合蛋白質のそれぞれをコードするDNA分子を、ADH1プロモーターおよび選択可能なマーカーを含む動原体プラスミドを用いて作製した。この場合に、DBを発現しているプラスミドは選択可能なマーカーとして酵母LEU2遺伝子を有し、ADを発現しているプラスミドは選択可能なマーカーとして酵母Trp1遺伝子を有する。陰性対照として、cFos、cJun、pRb、またはE2F1の相互作用ドメインの非存在下において、GAL4-DBおよびGAL4-ADを別々に発現させた。Foas表現型が、感受性の高い転写測定手段を提供することを示すために、本発明者らは、それらの蛋白質がFoaA表現型を誘導する能力と、それらがGAL4で誘導可能なGAL1:lacZレポーター遺伝子に由来するβガラクトシダーゼ活性の発現を誘導する能力とを比較した。
【0086】
本発明者らは、cFosおよびcJunの相互作用ドメイン、ならびにpRbおよびE2F1の相互作用ドメインが、インビボにてGAL4転写因子を再構成することができることを見いだした。DB-cFosハイブリッド体およびAD-cJunハイブリッド体を発現する細胞培養系も、GAL1:lacZに由来する著しいレベルのβガラクトシダーゼ活性を示した。同様に、GAL4-DB-pRbハイブリッド体およびGAL4-AD-E2F1ハイブリッド体を発現する細胞培養系も、GAL1:lacZに由来する著しいレベルのβガラクトシダーゼ活性を示した。DB-cFosおよびAD-cJun、ならびにDB-E2F1およびAD-pRbが転写因子を再構成する能力に関する定量的な評価を提供するために、これらのハイブリッド分子を用いてGAL4を再構成することによって得たβガラクトシダーゼ活性のレベルと、本来の全長のGAL4蛋白質によって得たレベルとを比較した(図5)。本来のGAL4蛋白質によって誘導されたGAL1:lacZレポーター遺伝子の転写では、比活性3,000単位のβガラクトシダーゼが産生された。DB-cFosおよびAD-cJunによって再構成されたGAL4蛋白質では、比活性100単位のβガラクトシダーゼが得られた。DB-pRbおよびAD-E2F1によって再構成されたGAL4蛋白質では、比活性わずか0.5単位のβガラクトシダーゼが得られたのみであった。これらのデータは、cFosとcJunとの相互作用が比較的強いことを示すとともに、pRbとE2F1との相互作用は比較的弱いとはいえ、解析で検出することができることを示している(図5)。
【0087】
増殖閾値の限界の決定:必ずしも必要ではないが、2つの分子の相互作用にわずかな影響しか及ぼさないような化合物または変異を検出する理想的な条件下において、逆選択法を実施するためには、「増殖閾値の限界」を決定することが有用である。増殖閾値の限界とは、最小数のGBSとともに用いた場合に、細胞の増殖を防止するために必要な、薬物(例えば、5-FOA)の最低濃度のことである。必要な薬物の濃度が高いほど、転写因子を再構成する2つの分子間の相互作用は強い。必要に応じて、本発明に用いるGBSの数を変えることもできる。
【0088】
本発明者らは、GAL4転写因子を再構成する、以下の3種の異なった相互作用性蛋白質の対について、増殖閾値の限界を規定した:(i)cFos/cJun、(ii)cJun/cJun、および(iii)pRb/E2F1。SPO13:URA3プロモーター内にGBSを含まない対照細胞は、GAL4蛋白質の存在下においても5-FOAに対する感受性を示さなかった。同様に、GAL4-DBまたはGAL4-ADを発現する細胞も、それらを会合させるポリペプチド(すなわち、相互作用ドメイン)の非存在下において、GBSの数にかかわらず、5-FOAに対して耐性であった。これに対して、cFos/cJun、cJun/cJun、またはpRb/E2F1によって再構成されたGAL4は、5-FOA感受性の表現型を呈した。
【0089】
この例において、転写因子の再構成にかかわる相互作用の相対的な強度は以下の通りである:cFos/cJun>cJun/cJun>pRb/E2F1。それぞれの相互作用に関して検討した5-FOAの濃度の範囲では、GBSの数が増加するに従って、種々の濃度の5-FOAに関する5-FOA感受性の勾配が観察された。これらのデータは、5-FOAに関する増殖閾値の限界が、cFos/cJunについては0.05%、pRb/E2F1については0.1%、cJun/cJunについては0.2%であることを示している(図6)。
【0090】
プラスミドp2.5の解析:プラスミドp2.5の操作性に関する証拠を提供するため、本発明者らは、このプラスミドが転写に誤った影響を及ぼさないことを確認した。本発明者らは、pRbを発現するがADを発現しない、p2.5の誘導物を構築した(p2.5pRb)。生来のGAL4を発現している酵母細胞にp2.5pRbを導入した場合、このプラスミドは、宿主細胞のUraまたはFoa表現型に影響を及ぼさず、このプラスミドがGAL4依存的な転写機能に影響を及ぼさないことが示された。この結果は、pRbがSPAL:URA3の発現に陽性の効果を及ぼさないことを示している。細胞内におけるこのプラスミドの発現により、DB-pRbおよびAD-E2F1を発現している細胞にFoas表現型が付与される結果、このプラスミドは著明な量のpRbを産生した(図7)。本発明者らは、ウェスタンブロット分析により、ハイブリッド分子の発現レベルがp2.5pRbプラスミドを含む細胞で変化しないことを示している。これらの所見は、本発明に関して検討の対象となる解離化合物の候補を発現させるために、p2.5プラスミドが有用であることを示している。
【0091】
SPAL:URA3対立遺伝子を含む酵母菌株の構築:SPO13:URA3構築物は、プラスミドpPL128から入手した(R.ストリッチ(Strich)およびR.エスポシト(Esposito)、刊行物????による)。この構築物は、完全に機能するSPO13プロモーター、およびSPO13の最初の15アミノ酸と、最初のメチオニンコドンを除く全長のUra3蛋白質とが融合した融合蛋白質をコードするORFを含む。GAL4結合部位(GBS)を挿入する前に、SmaI-BamHI二重消化によってSPO13:URA3断片をpPL128から切り出し、ClaIで消化し、クレノウ酵素で処理し、続いてBamHIで消化したpBSKプラスミド(ストラタジーン社(Stratagene))にクローニングした。その結果得られたプラスミドpMV252は、SPO13プロモーター内部の-170位および-368位に2つのEcoRI部分を持ち、-213位にユニークなHindIII部位を有する。GBSは、プラスミドGAL4-5/E1bCAT(リリー(Lillie)ら、1989, Nature 338:39〜44)に由来する。HindIII-XbaI二重消化により、このプラスミドから5つのGBSを含む断片を切り出し、続いてクレノウ酵素で処理してこの断片を平滑末端化した。本発明者らは、配列決定およびPCR分析により、2種のプラスミドpMV262-11およびpMV262-12が、それぞれGBSを5個および15個含むことを同定した。
【0092】
SPAL:URA3構築物は、ura3-52遺伝子座における組み込み型組換えにより、ポリメラーゼ連鎖反応の産物との相同組換えによって(すなわち、ギャップ修復法によって)酵母ゲノムに導入し、それぞれのSPAL:URA3対立遺伝子を作製した。5'プライマーは、プロモーターの上流に位置するURA3配列の40ヌクレオチド(-257〜-218位)とSPOプロモーターの20ヌクレオチド(-370〜-351位)とが融合した(5'-GAAGGTTAATGTGGCTGTGGTTTCAGGGTCCATAAAGCTTGTCCTGGAAGTCTCATGGAG-3';配列番号:1)を含むJB516である(ローゼ(Rose)ら、1984 Gene 29:113〜124;バッキンガム(Buckingham)ら、1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:9406〜9410)。3'プライマーは、3'URA3(URA3の+656〜+632ヌクレオチド)(5'-TCAGGATCCCTAGGTTCCTTTGTTACTTCTTCCG-3';配列番号:2)である(ローゼ(Rose)ら、1984 Gene 29:113〜124)。テンプレートとしてpMV262-11またはpMV262-12を用いる標準的なPCR反応条件により、それぞれ、希望するサイズ(1,000bp)の産物、または1,000〜1,300bpの範囲の産物の混合物が産生される。
【0093】
このPCR産物は酵母株MaV82に直接形質転換のために導入され、形質転換株はウラシルを含まない培地上で選択される。酵母株MaV82は、GAL4を発現するプラスミド、pCL1による形質転換を受けたMaV52である(フィールズ(Fields)ら、1989, Nature 340:245〜246)。MaV52(MATa ura3-52 leu2-3, 112 trpl-901 hisΔ200 ade2-101 gal4Δ gal80Δ GAL1:lacZ GAL1:HIS@lys2 can1R cyh2R)は、(GAL1:lacZ@URA3を除去するための)5-FOAによる選択、および引き続きY153のCan選択を行うことによって入手した(ブーケ(Boeke)ら、1984, Mol. Gen. Gen. 197:345〜346、およびダルフィー(Durfee)ら、1993, Genes and Development 7:555〜569)。PCR産物の5'端の40ヌクレオチド、およびura3-52のTy挿入部とPCR産物の3'端の間の320ヌクレオチドを用いることにより、ura3-52遺伝子座における二重相同組換え事象または遺伝子変換事象が期待される(ロシュタイン(Rothstein), 1983, Methods Enzymol. 101:202〜211;バウディン(Baudin)ら、1993, Nucleic Acids Research 21:3329〜3330、およびロゼ(Rose)ら、1984, Mol. Gen. Genet. 193:557〜560)。
【0094】
pCLプラスミドの損失による試験では、形質転換株のほぼ50%が、期待されたGAL4-依存性のUra+表現型を呈した。SPAL:URA3対立遺伝子の組み込みが確認され、ゲノムDNAをテンプレートとして用いるPCR反応においてGBSの数を推定した。種々の形質転換株のうち、MaV99は10個のGBSを含み、したがってSPAL10:URA3である。5'プライマーはJB536である(URA3配列の-298〜-276ヌクレオチド;5'-GCGAGGCATATTTATGGTGAAGG-3';配列番号:3)。3'プライマーは13-5である(SPO13アンチセンス配列の-124〜-145ヌクレオチド;5'-CATTTCCGTGCAAGGTACTAAC-3';配列番号:4)(バッキンガム(Buckingham)ら、1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:9406〜9410)。MaV108株(GAL1:HIS3融合体を含まないMATa)、MaV103株(GAL1:HIS3融合体を含むMATa)、およびMaV203株(GAL1:HIS3融合体を含まないMATα)。MaV103およびMaV203は、MaV99とPCY2との間の接合体の減数分裂性分離個体である(シャブレイ(Chevray)ら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5789〜5793)。
【0095】
プラスミドの構築:cFosおよびcJunのハイブリッド蛋白質(DB-cFos、AA 132〜211(pPC76);DB-Jun、AA 250〜334(pPC75);AD-cJun、AA 250〜334(pPC79))は、以前に記載されている(シャブレイ(Chevray)ら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5789〜5793)。その他の蛋白質は、それらがGAL4-DB(AA 1〜147)またはGAL4-AD(AA 768〜881)、プラスミドpPC97(GAL4-DBの場合)(pPC97はpPC86のポリリンカーを含むpPC62である)、またはpPC86(GAL4-ADの場合)とともに同じフレームに位置するようにPCR産物をクローニングすることによって作製した(シャブレイ(Chevray)ら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5789〜5793)。野生型の配列を有する蛋白質を産生するためには、同じくPCR産物をp97.CYH2にクローニングした。このプラスミドのCYH2遺伝子は、プラスミドシャッフリングおよび細胞からのプラスミドの除去を促進する。DB-pRbはpRbのAA 302〜928を含み、DB-pRbΔ22はエクソン22に欠失がある変異型pRbのAA 281〜894を含み、DB-p107はp107のAA 372〜10678を含み、AD-E2F1はAA411のチロシンがシステインに変異した変異型E2F1のAA 342〜437を含み、AD-E2F4はE2F4のAA 1〜413を含む(ヒーベルト(Hiebert)ら、1992, Genes & Development 6:177〜185;ホワイト(Whyte)ら、1988, Nature 334:124〜129;ヘリン(Helin)ら、1993, Mol. Cell. Biol. 13:6501〜6508;サルデット(Sardet)ら、1995, Proc. Natl. Acad. Sci)。
【0096】
p2.5誘導体は、PCR産物をp2.5にクローニングすることによって作製した。E1A#2はE1AのAA 30〜132を含み、E1A#4はE1AのAA 30〜86および120〜139を含み、E1A-CR1はE1AのAA 1〜120を含み、pRBはpRbのAA 302〜928を含み、E1A-CR2はE1AのAA 76〜139を含む。DB-DP1と相互作用する能力を持ち、宿主細胞に対して有毒でないAD-E2F1ハイブリッド体を単離するために、本発明者らは、DB-DP1ハイブリッド体を発現している酵母細胞のcDNAライブラリーのスクリーニングを実施した。その他の可能性のある相互作用性分子の中から、本発明者らは、E2F1のAA 159〜437を含むAD-E2F1融合体を単離した。
【0097】
変異誘発性ギャップ修復法:ポリメラーゼ連鎖反応(RCR)を用いる変異誘発性ギャップ修復法は、選択した配列に変異を誘発させる便利な方法を提供する(ミュールラッド(Muhlrad)ら、1992, Yeast 8:79〜82)。この方法では、変異を生じさせたい配列をコードするDNAを、DNA分子への不正確なヌクレオチドの編入が起こりやすい条件下でPCR反応系において増殖させる。このような条件には、比較的高いマンガンレベルおよび/または種々のヌクレオチドの不均等な混合がある。この方法において使用するPCRプライマーは、線状化された発現プラスミドの一部と相同な配列を両端に有する直線状のPCR産物を生じる。続いて酵母細胞に、直線化されたプラスミドおよびPCR産物による同時形質転換を施す。直線化されたプラスミドのインビボでの修復により、高い頻度で、変異を生じた配列を含む安定な環状プラスミドが形成される。
【0098】
補償変異:補償変異とは、変異を生じた分子同士は相互作用するが、それぞれの対応する野生型の蛋白質またはRNA分子とは相互作用しないような、相互作用性分子(例えば、RNA分子または蛋白質)の対における変異である。補償変異の例には、互いに接触する荷電残基の逆転を引き起こす変異が含まれる。例えば、2つの野生型の蛋白質(XおよびY)において、相互作用性分子Xの正に荷電した残基と相互作用性分子Yの負に荷電した残基との接触が起こるとする。このXおよびYにおける補償変異の一つは、Xが負に荷電した残基を含むように変異し、Yの相互作用部位が正に荷電した残基を含むように変異するものである。補償変異は、分子の相互作用ドメインのサイズの変化を含んでもよい。例えば、相互作用のパートナーであるXの一部が相互作用性分子Yの内腔領域と適合する場合には、Xに生じた補償変異によって相互作用ドメインのサイズが大きくなり、Yに生じた補償変異によって、Xの拡大した相互作用ドメインに順応するように相互作用のための内腔が拡大する場合が考えられる。
【0099】
相互作用性分子における補償変異に関して知っておくことは、これらの変異が2つの分子の相互作用に不可欠な部分で起こることが多いため、科学者にとって有意義である。補償変異は、相互作用性分子の適切な折りたたみに関して重要な接触性残基、アミノ酸またはリボヌクレオチドなどの、分子間相互作用に関与する重要な残基を規定すると考えられている。今日までに蛋白質における補償変異が同定され、蛋白質のX線結晶構造が判明しているものでは、結晶構造によって同定された相互作用性残基と、補償変異に関して同定された相互作用残基との間に明らかな相関が示されている。分子の機能においてこのような極めて重要な役割を有する残基を同定することは、蛋白質および/またはRNA分子の間の好ましくない(すなわち、疾患に関連した)相互作用を遮断することによって機能する治療的化合物を合理的に設計するために非常に重要である。
【0100】
条件変異株:蛋白質およびRNA分子の構造および機能の研究は、対象となる分子に関する条件変異株を同定することによって容易となる。これらの条件対立遺伝子は、許容しうる条件下では野生型の機能を果たすことが可能であるが、細胞を制限的な条件下に移行させた場合には、分子が機能する能力に検出可能な変化を生じる。条件対立遺伝子の単離においては、その結果生じる構造的および/または機能的な変化が軽微であることが多いとの事実のために、その頻度がかなり低いことが妨げとなる。多くの古典的な方法では、広範囲の欠失または部位指定変異のいずれかの作成を指向する方法を用いて、相互作用性分子をコードする遺伝子にインビトロで改変を加える。このような方法には長い時間がかかると思われる。さらに、古典的な方法では、(i)許容的であると指定された条件下で機能を有する、および(ii)制限的であると指定された条件下で機能を持たない、対立遺伝子を選択することはできない。
【0101】
合成ライブラリ中にコードされる蛋白質を用いた蛋白質/蛋白質相互作用の同定
合成ライブラリを含む酵母菌株の構築:本発明者らは、酵母菌株MaV103の表現型の特徴付けを行い、この菌株を用いておよびMaV203と様々なハイブリッド蛋白質とを用いてリバース・ツーハイブリッド法を試みた(図8)。本発明のリバース・ツーハイブリッド法の機能性を示すために、本発明者らは、限られた数の未知のパラメーターを有する2つの合成ライブラリを用いて(i)双方向ライブラリにおける頻度が10-6である相互作用の同定に集団接合法(mass mating method)が利用できるか否か、および(ii)接合細胞(mated cells)の形成に先立って、自己活性化接合能を有するクローンを排除するために用いる逆選択法の効率、を判定するために設計した再構築(すなわち、再構成)実験を行った。この「双方向組み合わせライブラリ」(BCL)を作成するのに用いた方法の概略を図9に示す。
【0102】
合成ライブラリの構築:DNA結合部分と融合したポリペプチドを有するクローンのライブラリには、GAL4-DBを用いた(図10)。本発明者らは、pRb、p107、p130、p21、サイクリンD2、cFos、cJun、DCC1、またはdE2Fの様々な形態を含む15のハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドを作成するために、GAL4-DBベクターを用いた(図11)。15のハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドを希釈するために、様々なプラスミド各1ngおよびGAL4-DBのみを(すなわち、別のポリペプチドとのハイブリッド蛋白質としてではなく)発現するプラスミド1μgを含むDNA混合液を調製した。これらはそれぞれ内生のADを含むため、GAL4-ADと融合したポリペプチドが存在しなくても、DB-DCC1およびdE2Fをコードするハイブリッド蛋白質の両者とも、レポーター遺伝子の転写を活性化できる。これらのハイブリッドは両者とも、3AT耐性(ヒスチジン非存在下)および5-FOA感受性の表現型をMaV103細胞に付与することができる。この解析では、これらの偽陽性を検出し除外するために、これらのハイブリッド蛋白質を対照として用いた。
【0103】
GAL4-ADベクターを用いて、活性化ドメインと融合したポリペプチドを有するハイブリッド蛋白質の合成ライブラリのアッセンブルを行った(図10)。様々な形態のcdk2、cJUN、E2F-1、E2F-2、E2F-3、またはE2F-4を含む、ハイブリッド蛋白質のライブラリを作成するのに15のポリペプチドを用いた(図11)。ADハイブリッド蛋白質のライブラリには、自己活性化するクローン(すなわち、偽陽性)はひとつも含まれていなかった。様々なハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドを希釈するために、本発明者らは様々なプラスミド各1ngおよびGAL4-ADのみを発現するプラスミド(すなわち、別のポリペプチドとのハイブリッド蛋白質としてではない)1μgを含むDNA混合液を調製した。
【0104】
ADおよびDB分子をコードするプラスミドの混合物を用いて、レポーター遺伝子の同一のセットを含む酵母菌株を別々に形質転換した。プラスミドの合成ライブラリのひとつを用いて、MATα株のひとつであるMaV203を形質転換させた。プラスミドの他の合成ライブラリは、MATα株のひとつであるMaV103に導入した。2つの交換可能な接合型(mating type)の酵母がこれら2つのライブラリに用いられていれば、どのライブラリをどの接合型の細胞に形質転換させてもかまわない。形質転換された酵母細胞は、ロイシンまたはトリプトファンのいずれかを欠く寒天培地上に置き、それぞれLEU2またはTRP1マーカーを用いて形質転換体を選抜する。MATa Leu+の形質転換体はGAL4-DBに融合したポリペプチドのライブラリを用いて得られる半数体のクローンであり、またMatα Trp+の形質転換体はGAL4-ADに融合したポリペプチドのライブラリを用いて得られた半数体のクローンであった。
【0105】
逆選択:それぞれ独立して転写を活性化することのできる接合能を有するクローンを排除するために、逆選択法を用いた。第1の選択段階で得られたLeu+およびTrp+のコロニーは、別々に、0.2%の5-FOAを含む培地で直接レプリカ培養した(図12)。この培地上では、非活性化クローンに対応するコロニーのみがさらに増殖した。必要に応じて、逆選択の段階を繰り返すこともでき、この場合は、2回行った。図12に示すとおり、不適切に転写が活性化されたクローンは全て、5-FOAを用いた逆選択により完全に排除された(プレートの右側にある細胞の大きな区分は、この実験で用いた対照を表す;5-FOA非存在下における逆選択で回収したコロニーの数(下方左のパネル)と5-FOA逆選択で得られた数(下方右のパネル)とを比較されたい)。5-FOA逆選択を2回行った後には、ヒスチジンを欠き3ATを含む培地上で自己活性化能を有するクローンは検出されなかった。
【0106】
集団接合法(Mass-mating method):非活性化クローンを含むことを示す、逆選択段階で生き残った細胞を採集し、液体培地に再懸濁した。2つの細胞系の各々から約1010個の細胞を、109細胞/mLの濃度となるよう、別々に10mLの培地に再懸濁した。次に、2種の細胞懸濁液を混合し、接合細胞の形成(すなわち接合)に適した条件下で一晩培養した。この場合には、接合能を有する細胞の混合物を、YEPDを含む15cmのプレート上、栄養豊富な培地に塗布し、得られた接合細胞をロイシンおよびトリプトファンの両方を欠く培地で再び培養した。本発明者らのデータから、接合効率は約10%であることが示された。本発明者らは、これらのデータに基づき、懸濁液の量を数リットルにまで増加させた場合、1013個までの接合細胞がこの集団接合法(mass mating method)で選択できる、との結論を得た。これらのデータにより、反応液量を数リットルにスケールアップすることにより、1013組の相互作用蛋白質が生成され、スクリーニングされることが示唆される。
【0107】
選択:集団接合法で得られた接合細胞を、ADおよびDBをコードするプラスミドの存在について選択する固形培地上で培養した。本明細書では、ロイシンおよびトリプトファンの両方を欠く培地を用いた。これらのプレート上で増殖するコロニーを、ロイシン、トリプトファンおよびヒスチジンを欠き20mMの3ATを含む培地上でレプリカ培養した。
【0108】
陰性対照として、別のポリペプチドと融合させることなく、GAL4-DBまたはGAL4-ADをコードするプラスミドでのみ形質転換した半数体細胞からの2倍体細胞の形成を誘導した。陰性対照から得られた5x105個の2倍体細胞のうち、ロイシンおよびトリプトファンの両方を欠く培地上で生き残ったものはひとつもなく、擬陽性がひとつも得られないことが示された。
【0109】
陽性対照として、DB-FosまたはAD-cJunのいずれかのハイブリッド蛋白質を発現する細胞の合成ライブラリを2つ構築した。これらのライブラリを1:100に希釈し、2倍体細胞を形成させ、ロイシン、トリプトファン、およびヒスチジンを欠くプレート上で選択した。この条件下では、生き残る細胞は約10-4の期待頻度で得られた(約50,000の2倍体細胞から12個の3AT耐性コロニーが得られた)。
【0110】
対照的に、この手順を用いて、合成ライブラリを含む細胞からは、3AT含有培地上で積極的に増殖するコロニーが得られた。試験した5x106個の2倍体のうち、400個の3AT耐性コロニーが回収された。この実施例における2倍体細胞を、ロイシンおよびトリプトファンを欠乏する培地で培養し、つぎに、ロイシン、ヒスチジン、およびトリプトファンを欠き3ATを含む培地で培養した。必要に応じて、接合細胞を、3ATを含みロイシン、ヒスチジン、およびトリプトファンを欠く培地で直接培養することもできる。
【0111】
回収された400個のコロニーを、URA3遺伝子の発現の指標としての5-FOAに対する感受性について調べた。またX-gal含有培地上でβ-ガラクトシダーゼ活性についても調べた。試験したクローンの約95%がURA3およびlacZ遺伝子を発現していた。これらのコロニーのうち、120個についてさらに解析した。これらのコロニーからプラスミドを抽出し、大腸菌内で増幅した後抽出した。相互作用蛋白質の80対をコードするプラスミドの挿入断片を塩基配列解析により同定した。塩基配列解析で得られたデータ(図13)により、(i)期待される相互作用のほとんどがこの方法により検出されること;および(ii)cFos/cJun相互作用が、おそらくはこれらのポリペプチドをコードするDNAの大きさが比較的小さいために、高い頻度で再構成されること、が示された。従って、本発明により、蛋白質-蛋白質相互作用を同定するための、簡便で効果的な方法が提供される。
【0112】
分子間相互作用を破壊する化合物の同定
再構成した転写因子の解離:本発明者らは、2つの分子の相互作用を破壊する(すなわち、その相互作用を妨げる、または解離を引き起こす)化合物により阻害が起こるような、レポーター遺伝子の転写阻害を本発明により検出可能か否かを試験した。この方法は2つのハイブリッド分子が相互作用して転写を媒介する能力を破壊する化合物(すなわち、解離因子(dissociators))の同定に用いることができる。有効な化合物は、レポーター遺伝子(たとえば、SPALX:URA3)の発現の低下を引き起こす。たとえば、レポーター遺伝子がURA3である場合、解離因子はFoar表現型を宿主細胞に付与する。したがって、本発明は蛋白質/蛋白質相互作用を破壊する分子を同定するための簡便な方法を提供する。
【0113】
本発明者らは、2つの相互作用蛋白質のうち、DBまたはADを欠くいずれかひとつを細胞内で過剰発現させることにより、この系において転写がブロックされることを見いだした。過剰発現したDBまたはADを欠く相互作用蛋白質は、2つのハイブリッド分子と競合してレポーター遺伝子の転写活性化を妨げる。これらのデータは、解離化合物は細胞内で生産され、本発明で同定できることの証拠となる。
【0114】
本発明により、2つの相互作用分子の解離が検出できるもう一つの例として、本発明者らは第3の蛋白質、E1Aを、AD-E2FおよびDB-pRb、またはAD-E2FおよびDB-p107のハイブリッド分子のいずれかを発現する細胞内で過剰発現させた。本発明者らは、アデノウイルスE1A蛋白質の、pRbおよびp107に結合してpRb/E2Fおよびp107/E2F4を解離させる能力について測定した。これらの研究において、簡便なクローニング法を用いてE1Aのコード配列をプラスミドp2.5のポリリンカーに挿入することにより、AD-E2FおよびDB-pRbまたはDB-p107のいずれかを発現する酵母細胞内で、E1Aが発現された。本発明者らは、酵母菌株におけるE1Aの発現により、Foas表現型が保護されることを見いだし(図14)、これは本発明がDB-pRb/AD-E2FおよびDB-p107/AD-E2F相互作用の両者についてその解離を検出できることを示す。
【0115】
いくつかの観察結果から、E1Aに媒介される解離が特異的であることが示唆される:(i)E1Aの過剰発現は、様々なハイブリッド蛋白質の定常状態のレベルには影響しなかった;(ii)E1A蛋白質の発現は、DB-DP1/AD-E2F相互作用の結果であるFoas表現型に何ら影響を与えなかった;(iii)哺乳類細胞においてpRb/E2Fの解離に必須であることが知られている保存領域II(CR2)は、Foas表現型に必須であった;および(iv)DB配列のいずれも存在しないとき、pRbの過剰発現により、DB-pRb/AD-E2F1を発現する細胞においてE1Aと同程度にFoas表現型が保護されるが、DB-p107/AD-E2F4のFoas表現型は保護されなかった(図14)。
【0116】
解離化合物の力を強める:必要に応じて、薬物(たとえば、5-FOA)の致死を引き起こす濃度範囲にわたって、2つの相互作用ハイブリッド分子(たとえば、蛋白質)を解離する化合物の能力を調べることにより、解離因子の力を特徴づけることができる。たとえば、最初の解析は、比較的弱い解離化合物を同定するために、比較的低い5-FOA濃度(すなわち、増殖しきい値に近い濃度)、および少数のGBSsを用いて行うことができる。2回目の解析では、5-FOAの濃度および/またはGBSsの数を高め、より強力な解離因子を同定する。解析は繰り返して行うことができる。この方法は、解離化合物の設計にも有用である。弱い解離化合物がひとたび同定されれば、それを改変して(たとえば、標準的な技術により行うことのできる、アミノ酸、ヌクレオチド、または化学基の置換)、次の解析で試験することができる。改変によって強められた解離化合物は、もとの分子と比較してより厳密な条件下(たとえば、より高濃度の5-FOA)で、細胞の増殖を促進する(すなわち、相互作用を阻害する)能力により同定できる。
【0117】
解離化合物の同定のための2倍体酵母菌株の使用:必要に応じて、レポーター遺伝子の2コピーを有する酵母の2倍体菌株を用いて解離化合物を同定することができる。たとえば、SPALX:URA3の2コピーを有する2倍体株を用いることにより、Foas表現型が自然に復帰変異してFoarクローンが出現する可能性を減らすことができる。従って、2倍体株を用いることにより、この方法の感度が高まる。解離化合物は半数体または2倍体のいずれを用いても同定できるが、2倍体を使用するのが好ましい。
【0118】
本発明者らは、Foas表現型が復帰する原因となる変異が、SPAL:URA3レポーター遺伝子に結合したシスに作用する変異に相当することを見いだした。理論上、シスおよびトランスに作用する変異は両者ともにFoas表現型の復帰につながる。シスに作用する変異はSPALX:URA3アレルのプロモーターにある反復GBSsの欠失に関与している可能性が高く、一方トランスに作用する変異は、プラスミドの配列間の遺伝子変換現象、または相互作用分子のコード配列におけるノックアウト変異である可能性が高い。
【0119】
Foas表現型の復帰につながる自然変異の性質を特徴付けるために、本発明者らは2つのレポーター遺伝子(GAL1:HIS3およびGAL1:lacZ)の発現がFoarコロニーにおいて変化した(すなわち、自然変異体)か否かを調べた。本発明者らのデータから、HIS3およびlacZの発現はこれらの細胞内で変化がないことが示され、この復帰変異はSPALX:URA3プロモーターに結合したシスに作用する変異であることが示唆される。従って、2コピーのSPALX:URA3レポーター遺伝子を含む酵母の2倍体株は、自然復帰変異体が出現する頻度を減少させると考えられる。この頻度は10-6×10-6=10-12と計算される。自然復帰変異の頻度は、cFos/cJunハイブリッド蛋白質を発現する半数体細胞からFoarコロニーが得られる割合を、2倍体細胞から得られる割合と比較することにより、実験的に得ることもできる。
【0120】
分子間相互作用の特徴付けのための変異の使用
変異を起こした相互作用分子の同定:本発明者らはまた、本発明により、相互作用を無効にする生理学的に関連した変異が検出できるか否かについて試験した。本発明の重要な指針のひとつは、相互作用分子を解離させるような変異により、DNA結合蛋白質の認識部位に機能的に結合したレポーター遺伝子の発現を、検出可能な程度にまで減少させられることである。たとえば、pRb/E2F1相互作用対の網膜芽腫蛋白質で変異が起こると、その変異が2つの分子の相互作用に関わる残基に関係した変異であるならば、細胞はFoarの表現型を示すはずである。本発明によりレポーター遺伝子の転写の減少を検出できるか否かを試験するために、本発明者らはエクソン22を欠失しているためにE2F1と会合できないpRbアレルを用いた。この形のpRbをGAL4-DBとのハイブリッド蛋白質として発現させ、これをハイブリッド蛋白質DB-pRbΔ22と名付けた。E2F1はGAL4-ADとのハイブリッド蛋白質として発現された。本発明者らは、これらの蛋白質が酵母で発現することにより、DB-pRbΔ22の発現レベルが野生型のpRbの発現レベルに匹敵するものであっても、Foar表現型を生じることを見出した(図15)。本発明者らはまた、pRbと結合できないE2F1の変異アレル(AD-E2FY411C)を有するハイブリッド蛋白質による相互実験も行った。この変異アレルの発現によっても、Foar表現型となる(図15)。これらのデータから、本発明の逆ツーハイブリッドシステムが、2つの分子の会合を妨げる変異の検出に用いることができるということのさらなる証拠が提供される。
【0121】
構造的および機能的に重要な残基を決定する微妙な変異を同定するための二段階選抜法の使用:本発明者らは、DP1と相互作用する能力を媒介するE2F1内の残基を同定するために、二段階選抜法を用いた。この方法は、図16に概略を示した計略に基づいている。まず、DP1とE2F1とが互いに結合する能力に影響を及ぼす変異を同定し、第2段階で、これらの蛋白質間の相互作用を完全には止めないような変異を同定した。この方法は、DP1と相互作用するE2F1の能力を完全に破壊するような変異は、蛋白質の大きさを変えてしまう変異(たとえば、ナンセンス変異、欠失、または挿入)などの、無益な変異であるかもしれない、という前提に基づいている。この方法により、蛋白質/蛋白質相互作用を穏やかに変化させるようなアレル(たとえば、アレルのライブラリから選択されるアレル)の同定が容易になる。
【0122】
この二段階選抜法の実施例において、本発明者らは、GAL1:HIS3レポーター遺伝子(ダルフィー(Durfee)ら、1993,Genes & Dev. 7:555〜569)を用いた。このレポーター遺伝子は、His表現型の程度が判定できる、すなわち、His表現型を、HIS3酵素活性の特異的阻害物質である3ATの濃度を広範囲に変えて判定できることから、本法に特に適している(図17)。GAL1:HIS3を発現する細胞は、ヒスチジンを欠き高濃度の3ATを含む培地上で増殖する。この場合、DB-DP1/AD-E2F1の発現により、細胞は最高100mMの3ATを含む培地上で増殖できるようになった(図17)。この二段階選抜法では、最初の選択は0.1%の5-FOAで行い、第2の選択は10mMの3AT(ヒスチジン欠乏培地上)で行った。
【0123】
これらの実験において、DB-DP1ハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドで、SPAL10:URA3アレルを含む酵母菌株MaV103を形質転換した。形質転換体は、ロイシン欠乏培地で選択した。E2F1の配列は、AD-E2F1(E2F1のAA 159〜437)をコードするプラスミドを鋳型として用いPCRで増幅した。用いた5'側のプライマーは、ADのコード配列内に位置する配列に対応している。このプライマーの配列は、ADおよびE2F1の最初のアミノ酸(AA 159)のつなぎ目の約100塩基対上流に位置していた。用いた3'側のプライマーは、E2F1のORFの停止コドンに隣接した配列に対応している。これらのプライマーおよびこのE2F1の鋳型を用いて、増幅される配列に変異を誘発するために、様々な条件で何度かPCR増幅反応を行った。これらの何度かの反応において、PCRを用いて配列中に変異を誘発するため、マンガン濃度および/またはヌクレオチドの相対的濃度を従来の方法に従って変化させた。変異誘発の最適条件は増幅断片の長さと配列とに依存するが、適切な条件を選択することにより、単一のペトリ皿で事実上スクリーニングできる程多くの酵母コロニーから変異株を検出するのに十分高い頻度で、かつ増幅配列中に複数の変異が起こるのを回避するのに十分低い頻度で変異を誘発できる。
【0124】
ギャップ修復法:変異を起こした配列をプラスミドに組み込むため、ギャップ修復法を用いた(図18Aおよび18B)。この場合、AD-E2F1プラスミドを、E2F1配列の中ほどに位置する単一のBglII部位で制限酵素消化して線状化した。別の方法としては、E2F1の増幅のためのPCRプライマーが、プラスミドの配列およびPCR断片の配列に対応している場合には、ポリリンカー内で線状化した「空の」ADプラスミドを用いることができる。
【0125】
ギャップの修復のために、100ngの増幅したPCR断片および100ngの線状化したプラスミドで、DB-DP1を発現する酵母細胞を、酢酸リチウム法により共形質転換した。この実施例では、形質転換体はロイシンおよびトリプトファンを欠く増殖培地上で選択した。栄養豊富な増殖培地上で2日間増殖させた後、形質転換体をロイシンおよびトリプトファンを欠き0.1%の5-FOAを含む培地(Sc-L-T+5FOA培地)上でレプリカ培養することにより、第一段階の選択を行った(図19)。プレート上のコロニーの数およびマンガン濃度およびヌクレオチドの組成(すなわち変異誘発の程度)の間に相関が見いだされた。5-FOAを含みロイシンおよびトリプトファンを欠く培地上で増殖するコロニーを回収するために、ロイシンおよびトリプトファンを欠くプレート上でレプリカ培養した(図19)。
【0126】
選択の第二段階として、これらのプレート上のコロニーを、ロイシン、トリプトファン、およびヒスチジンを欠き、低濃度の3ATを含むプレート上でレプリカ培養した。これらのプレート上で増殖するコロニーは、DP-1と相互作用するE2F1の能力に弱い影響を与える変異がE2F1内に起こっていることが予測された(図19)。二段階選抜法で得られたデータを代表するデータを表1に示す。
【0127】
〔表1〕
形質転換体の数 5-FoaRの数 3ATRの数
DNAなし 0 nt nt
環状AD-E2F1 10,000 2〜3 0
空のAD(pPC86) 10,000 10,000 0
PCR断片のみ 0 nt nt
線状プラスミドのみ 500 0 0
PCR+プラスミド 10,000 500 20〜30
【0128】
選択法の第二段階で増殖したコロニーの表現型を確認するために、まずそれらのコロニーを、単一コロニーを得るためつついてSc-L-Tプレートにストリークすることにより精製した。次に、精製したコロニー4個をSc-L-Tプレートにパッチし、つづいてヒスチジンを欠き0.1%の5-FOA、10mMの3AT、およびX-galを含む培地でレプリカ培養した。この条件下でも増殖するコロニーのみをさらに解析した。最初に選択したコロニーの約90%が、この追加試験を通過した。これらの細胞から抽出したDNAを用いて大腸菌細胞を形質転換し、形質転換された細胞をアンピシリン含有培地で選択した。得られたコロニーは、DB-DP1またはAD-E2F1のいずれかのハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドを含んでいた。AD-E2F1をコードするプラスミドは、形質転換された大腸菌細胞から得たDNAを制限処理解析することにより同定した。
【0129】
AD-E2F1をコードするプラスミドは、GAL1:HIS3およびSPAL10:URA3アレルを含み、DB-DP1を発現する酵母細胞に再び導入した。形質転換された細胞はSc-L-T培地で選択した。4個の形質転換体をSc-L-T培地にパッチし、つぎにロイシン、トリプトファン、およびヒスチジンを欠き0.1%の5-FOA、10mMの3AT、およびX-galを含む培地でレプリカ培養した(図20)。陽性対照として、野生型のDB-E2F1アレルをGAL1:HIS3およびSPAL10:URA3アレル(図20、下列)を含む細胞に再導入し、および空のADプラスミドであるpPC86(すなわち、E2F1を欠くプラスミド)を陰性対照として用いた。
【0130】
AD-E2F1-34アレルは、変異アレルで期待される表現型を再試験していないプラスミドの例を示す。言い換えれば、AD-E2F1-34の増殖およびβ-gal表現型は、野生型のAD-E2F1と区別できなかった。AD-E2F1-34が野生型のアレルと同一であるとの仮説は、AD-E2F1-34の配列に何ら変異がないことが示された、AD-E2F1-34の塩基配列解析により、確認された。野生型のアレルのなかには大腸菌へのシャッフリングの過程で回収されたものもあるが、回収されたアレルの約90%は、期待通り、変異株であった。
【0131】
12個のAD-E2F1アレルの塩基配列決定を行い、12のアレルのうちの11において、E2F1をコードする1.2kbの配列中に単一のヌクレオチド置換が検出された。これらのアレルのうち6個で、変異はマークボックス2(Marked Box 2)(MB2)ドメインと呼ばれるドメインに位置していた(図21)。MB2ドメインは、18アミノ酸が伸長したものである。変異がこの18アミノ酸領域内に集中していることから、MB2ドメインはE2F1のDP1との結合に必要であることが示唆される。5個のヒトE2F蛋白質間で、蛋白質のこの領域内で高度な相同性があるという観察からも、MB2ドメインがこの役割を果たしているという推測がさらに支持される(図21、上)。
【0132】
さらに、(i)この方法で作製され同定されたさまざまな変異と、(ii)検出されたさまざまな表現型(図20)との間に相関があるという観察結果からも、二段階選抜法の有用性がさらに支持される。たとえば、E2F1とDp1との相互作用に強く影響する(すなわち、このアレルを発現する細胞は5-FOAに対して高度の耐性を示した(図20))E2F1-31アレルは、MB2ドメインの小さなインフレームの欠失に関与していた(図21)。対照的に、2つの変異を有するアレルであるE2F1-30は、相互作用に比較的穏やかな影響を与えた;このアレルを含む細胞は5-FOA上でほとんど増殖しない。このアレルでは2つの変異が見つかっているが、両方ともE2Fファミリーの異なるメンバーの間では完全には保存されていないMB2ドメインの中に位置しており(図21、上端および下端)、このことからこれらの残基は相互作用にはそれほど重要ではないことが示唆される。保存的変異を有するアレルが相互作用および増殖表現型に中程度の影響を及ぼしたという事実は、これらのデータに一致している。これらのアレル(E2F1-20、-32、および-65)においては、変異によって第284アミノ酸のイソロイシンがスレオニンまたはアスパラギンのいずれかに置換されていた。必要に応じて、変異遺伝子産物の機能をさらに調べるために、これらの変異アレルを酵母細胞に再導入することができる。
【0133】
二段階選抜法による比較的強度な変異の単離:本発明者らは、二段階選抜法の第1段階において、DP1との相互作用能を失ったE2F1の8個のアレルを単離し、塩基配列決定した(図19)。これらのアレルをそれぞれ塩基配列決定したところ、E2F1蛋白質が短くなる原因となりうるナンセンス変異、欠失、または挿入が明らかとなった。短くなった変異体の選択を避けるため、二段階選抜法の変法を用いて、DP1との結合能を失っているが、pRbとの相互作用能は保持しているようなE2F1変異アレルの同定を行った。このアプローチの基盤となる原理は、pRb結合部位がE2F1アレルのC末端ドメインに位置しているため(結合部位はE2F1の第159〜437アミノ酸の第409〜427アミノ酸を含む)、蛋白質を短くすることなくE2F1のDP1への結合が排除される変異(すなわち、pRbとの結合に影響する)は、容易に同定することができるというものである(図22)。本発明者らは、DB-pRbハイブリッド蛋白質を発現するプラスミドを構築した(pRbの第302〜928アミノ酸を用いた)。
【0134】
選択法の第一段階として、細胞をSc-L-T培地で2日間増殖させ、Sc-L-T+5-FOA(0.1%)培地でレプリカ培養した(図19の通り)。DB-DP1を発現するプラスミドは、非選択的培地上での細胞の増殖により排除され、DB-DP1プラスミドを失いAD-E2F1プラスミドを保持している細胞は、レプリカ培養した後、適当な選択培地におけるその増殖能を検定することにより同定される。DB-DP1プラスミドを失ったコロニーを同定するための別の方法は、DB-DP1プラスミド上の逆選択マーカーを発現させ、逆選択マーカーの発現が致死的となるような培地上で細胞を増殖させること(プラスミド・シャッフリング)である。たとえば、DB-DP1をコードするプラスミドを、CYH2遺伝子を発現するよう操作し、DB-DP1を発現する細胞を、シクロヘキシミド含有培地で排除することができる。選択の第2段階において、AD-E2F1含有細胞を、寒天プレート上でローン(lawn)を形成させ、DB-pRbプラスミドを含む細胞と接合させ、選択可能なレポーター遺伝子の発現を測定した。次に、得られた接合細胞について、ヒスチジン、ロイシン、およびトリプトファンを欠き10mMの3ATを含む培地上で試験した。この解析で陽性であったクローンは、変異が起こっているが、短くなってはいないE2F1アレルを有することを示す。試験した350のFoarのコロニーのうち、12個のコロニーがpRbを含む細胞との接合後に陽性であると評価された。
【0135】
この方法の別の態様において、定法を用いてE2F1以外の蛋白質をADに融合させることができる。必要に応じて、変異を起こしたい蛋白質をADではなくDBと融合することもできる。この方法で再構成される転写因子はGAL4以外のものでもよい(たとえば、LexAまたはAce1が使用できる)。加えて、レポーター遺伝子の組み合わせにより第1段階における逆選択および第2段階における正の選択(好ましくは、測定可能な表現型で)ができるのであれば、URA3およびHIS3以外のレポーター遺伝子を使用できる。
【0136】
機能的C末端タグ:この二段階選抜法で特徴づけられる変異蛋白質が、単に野生型蛋白質が短くなっただけではないようにするため、機能的C末端タグを、上記のクローンで発現される任意の蛋白質のC末端に共有結合させることができる。このような機能的C末端タグは、上記に開示した実施例のpRb結合ドメインと同様に機能すると考えられる。機能的C末端タグは蛋白質との結合ドメインを含む一連のアミノ酸である。pRb結合ドメインは、長さが18アミノ酸であり、特徴的な蛋白質の構造を劇的に変化させる可能性が低いため、特に有用である。変異蛋白質のカルボキシ末端の有無について解析するために、機能的C末端タグに特異的に結合する蛋白質を、DB(または変異蛋白質がDBと融合している場合にはAD)とのハイブリッド蛋白質として細胞に導入する。次に、このプラスミドから発現されるハイブリッド蛋白質およびハイブリッドとして存在する変異蛋白質が転写因子を再構成できるか否かを解析できる。全長蛋白質を保持する細胞を選択するために、適当な培地上での正の選択を用いることができる。
【0137】
二段階選抜法における強力な変異を同定するための、同様ではあるが別の方法としては、GAL4-AD-E2F1-GFP(緑色蛍光蛋白質)を含むトリブリッド蛋白質の構築が含まれる(チャルフィー(Chalfie)ら、1994、Science 263:802〜805)。この方法において、緑色蛍光蛋白質が機能的C末端タグとして作用し、得られる融合蛋白質のアレルであるAD-E2F1-GreenについてDB-DP1との相互作用能を解析することができる。緑色の蛍光蛋白質を発現し、ハイブリッド蛋白質がその内部で相互作用するような細胞は、それらの有する、3AT耐性、Foa耐性、β-gal陽性の表現型により同定できる。加えて、緑色蛍光蛋白質を発現する細胞は、UVライトの下で蛍光を発する。よって、この緑色蛍光蛋白質は、変異アレルの選択に使用することができる。強度のおよび軽度の変異の選択において、全長を有する相互作用蛋白質(たとえば、E2F1)の正常レベルでの発現は、細胞抽出物のウェスタンブロット解析により確認できる。
【0138】
新たに単離されたアレルが同様の表現型を示すか否かを決定するために、蛋白質結合解析を用いることができる。たとえば、各E2Fアレルについて、様々なE2Fアレルをコードする配列をPCRで増幅する、インビトロ結合解析で試験できる。適当な5'プライマーの例としては、ファージのT7ポリメラーゼプロモーター配列に対応する25塩基を有するもの、および活性化ドメインのなかでも活性化ドメインとE2F1の第159アミノ酸(すなわち、E2F1の最初のアミノ酸)との境の近傍に対応する20塩基を有するものがある。適当な3'プライマーとしては、E2F1配列の3'末端に対応するものがある。この配列を増幅したPCR産物は、インビトロ転写/翻訳系に用いて対応する蛋白質を生成させることができる。変異蛋白質は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼに結合した野生型DP1を有するハイブリッド蛋白質と結合できる。相互作用する蛋白質の組はグルタチオンアガロースビーズで精製され、ビーズから遊離され、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析される。
【0139】
補償変異(compensatory mutations)の同定:二段階選抜法で同定される変異についての情報はさらに、2つの蛋白質(本明細書ではE2F1およびDP-1)の相互作用を復活させる野生型のパートナー(例としてDP-1)の変異を作りだし、同定することにより得られる。たとえば、この方法では、E2F1結合ドメインをコードするDP-1の配列は、PCRにより増幅し変異を導入することができる。ギャップ修復法と同様に、PCR産物で次に特異的なAD-E2F1変異プラスミドを含む酵母細胞を、対応する領域内で線状化したDB-DP-1と共に共形質転換する。形質転換体を次に3ATを含みヒスチジンを欠く培地でレプリカ培養し、生き残ったコロニーをさらに解析した。各アレルを大腸菌内で増幅し、塩基配列決定し、酵母に再導入して、変異体の対が相互作用していることをその表現型で確かめる。この過程を様々な変異を有する多くのアレルについて行うことにより、蛋白質/蛋白質相互作用を示す遺伝地図を構築できる。
【0140】
「二価遺伝学(bivalent genetics)」による補償変異対の比較的大きなセットの単離:二段階選抜法および双方向組み合わせライブラリの構築までのスキームは、本明細書で「二価遺伝学(bivalent genetics)」と呼ぶ遺伝的方法が実行可能であることを示唆している。この方法を用いれば、相互作用分子をコードする遺伝子内で起こった補償変異の対を数多く選択することが可能である。接合型の異なる酵母菌株で行った2回の独立した実験では、相互作用を変化させる変異のライブラリはまず「二段階選抜法」のやり方に従って作成される。第2段階で、これら2つの変異アレルのライブラリを集団接合法により互いに反応させ、組み合わせライブラリ(combinatorial library)の構築で行うのと同様の一連の段階において補償変異(相互作用が復活される)を選択する。
特に、「二価遺伝学(bivalent genetics)」は、比較的大きな補償変異の対のセットを回収することができる方法を意味し、「二段階選抜法」は、決まった様式で起こる分子間相互作用を変化させる有益な変異を回収することができる方法を意味する。
【0141】
条件アレル(conditional alleles)の単離:また本発明により、相互作用分子の条件アレルの生産および同定が容易となる。本発明は多数の変異アレル(約1010)のスクリーニングに便利な方法を提供するため、本発明を用いれば比較的まれな条件アレルの検出が容易に行える。二段階選抜法における条件アレル(Conditional Alleles in a Two-Step Selection) (CATS)と名付けられたこの方法では、2つの相互作用分子のうちの1つに変異を起こすことにより、特定の条件(すなわち、許容的条件)下では相手、つまり野生型のアレルと相互作用するが、他の条件(すなわち、制限的条件)下では相互作用しない、条件変異アレルを単離する。多数の条件のうち、実験者が選択したいかなる条件も、許容的条件または制限的条件として使用できる。温度の違いで許容的条件と制限的条件との違いを特徴づけることが多いが、本発明では温度変化の利用のみに限定されない。たとえば、薬物の存在または非存在により許容的条件と制限的条件との違いを決定することもできる。
【0142】
CATS法は、選択可能/逆選択可能なレポーター遺伝子を用いた逆選択法の利用に依存し、この方法はより一般的な、上述の二段階選抜法に類似している。CATS法に用いた方法の概略を図23Bに示した。この方法では、目的とする相互作用分子を、転写因子のDBおよびADに別々に融合し、選択可能な/逆選択可能なレポーター遺伝子(たとえば、URA3遺伝子)を含む酵母菌株に融合する。PCR変異導入法(上述)を用いて相互作用する相手のひとつを変異させ、そのPCR産物をギャップ修復のための情報により細胞に導入した。ADおよびDBを発現するプラスミド上にある選択可能なマーカーを用いて、ギャップが修復され、野生型の相互作用分子をコードするプラスミドが維持されているものを選択することができる。
【0143】
得られた形質転換体は、次に、逆選択可能なレポーター遺伝子を発現する細胞の増殖を阻害する薬物(たとえば、5-FOA)を含む培地上でレプリカ培養し、形質転換体を制限的条件下で培養する。様々な形質転換体のうち、目的とする分子の相互作用に影響する変異アレルを含む細胞のみが、この最初の(負の)選択段階で選ばれる。
【0144】
第二の選択段階で、許容的条件下で機能する変異アレルが選択される。最初の段階で生き残った細胞は、選択可能な/逆選択可能な遺伝子を発現する細胞を正に選択するような培地に移す(たとえば、レプリカ培養により)。相互作用する分子の一方の条件アレルを含む細胞が増殖するはずである。
【0145】
次に変異アレルの回収および特徴付けを、プラスミドDNAの抽出および細菌内での増幅、続いて定法によるDNAおよびコードされている蛋白質の特徴付けにより行う。本発明で同定される条件アレルは、相互作用する2つの分子の能力を変化させることから、これらの条件アレルは相互作用に必須の残基または塩基を示している。すでに述べた通り、分子内の相互作用ドメインの同定は、医薬品の合理的な設計および生物学的プロセスの詳細な理解のために非常に重要である。
【0146】
本発明者らはCATSを用いて、cJunの、36℃ではcFosと相互作用するが30℃では相互作用しない条件アレルの単離を行った(図24)。これらのデータは、36℃では、cFosおよび変異cJunによりGAL4転写因子が再構成され、URA3を発現させて5-FOA上で増殖する細胞を死に至らしめることを示している。対照的に、条件アレルを発現する細胞は制限的な温度で増殖し、相互作用は妨げられて、細胞は5-FOA上で増殖できる。よって、これらのデータから、本発明が、普遍的な技術によりさらに特徴付けを行える分子の条件アレルを単離および同定するための簡便な方法を提供することが示された。
【0147】
その他の態様
RNA分子、DNA分子または蛋白質のいろいろな相互作用を、本発明により測定できる。たとえば、本発明で解析できる相互作用には、抗体と抗原との、レセプターとリガンドとの、制限酵素とその切断するDNA部位との、およびウイルス蛋白質と宿主の蛋白質との相互作用も含まれる。たとえば、本発明は、HIVプロウイルスで起こる蛋白質/蛋白質相互作用の同定に利用できる。この方法では、HIV蛋白質はADおよびDBハイブリッド蛋白質の形で別々に発現されるので、HIV蛋白質が完全な転写因子を再構成する能力について解析する。したがって、本発明により、全ゲノム上にコードされている全ての蛋白質/蛋白質相互作用の同定に便利な方法が提供される。HIVの蛋白質/蛋白質相互作用の同定ができれば、蛋白質/蛋白質相互作用の破壊により、治療面での有効性を付与する化合物の発見が容易になる。同様の方法で、本発明はHIV蛋白質およびヒトT細胞を活性化する蛋白質間の相互作用の同定を行うこともできる。
【0148】
本発明はまた、モノクローナル抗体の単離および特徴付けにも使用できる。この方法では、抗原/抗体結合反応を用いて転写因子の再構成を行う。この方法では、抗原およびDNA結合部分(たとえば、GAL4のDB)がハイブリッド蛋白質として発現される;イムノグロブリン重鎖および遺伝子活性化部分(たとえば、GAL4のAD)がハイブリッド蛋白質として発現される;そして、イムノグロブリン軽鎖が核局在化配列との融合蛋白質として発現される(図25)。抗原と結合する抗体の能力を、レポーター遺伝子の発現を検出することにより解析する。免疫系の性質が組み合わせによるものであることから考えて、組み合わせ的な性質をもち精製が可能な本発明は、抗体/抗原相互作用の同定に特に適している。
【0149】
必要に応じて、自己活性化能を有するハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドを、「シャッフリング」逆選択マーカーを含むDBおよびADベクターを用いて、細胞から除去することができる。これらの遺伝子により、ハイブリッド蛋白質をコードする遺伝子が組み込まれてDBまたはADプラスミドのいずれかが失われた細胞を選択することが可能となる。シャッフリングの際には、逆選択可能なレポーター遺伝子の発現を、DBまたはADプラスミドを含まないものを選択する条件下で試験することができるので、この解析で陽性を示すクローンを以降の解析段階から除外することができる。本発明で使用した蛋白質およびRNA分子の発現に用いたプラスミドに、選択可能なマーカーを付与することにより、このプラスミドが細胞内で保持されていることを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】DNA結合蛋白認識配列を除いて異なる配列を有するプロモーターと機能的に結合した3種類のレポーター遺伝子を図示したものである。
【図2】プラスミドp2.5のマップである。
【図3】細胞にSPAL5:URA3対立遺伝子を導入して、細胞にFoas表現型を付与することができることを示す酵母細胞の写真である。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成の完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成の完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まず、5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかの中で増殖させた。
【図4】DB-cFos、AD-cJun、DB-pRb、およびAD-E2F1を発現させるために用いた遺伝子構築物を図示したものである。
【図5】GAL4転写因子と種々の相互作用性蛋白質とを細胞内で再構成した酵母細胞の写真である。再構成によってSPAL5:URA3対立遺伝子の発現が誘導され、細胞にFoasが付与される。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。これらの実験には、逆選択が可能なレポーター遺伝子SPAL9:URA3を含む酵母株MaV103を用いた。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まず、5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかで増殖させた。
【図6】転写因子を再構成する種々の相互作用性蛋白質に関する5-FOAの増殖閾値の限界を規定する酵母細胞の写真である。すなわち、cFos/cJun(0.05%)、pRb/E2F1(0.1%)、およびcJun/cJun(0.2%)であった。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まずに5-FOAを図示した濃度で含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかで増殖させた。
【図7】解離因子の非存在下において転写因子を再構成する分子を発現している細胞内において、解離化合物を発現させるために細胞プラスミドp2.5が使用可能であることを示す酵母細胞の写真である。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まずに5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかの中で増殖させた。Rb#1およびRb#2はRbをコードする2つの独立した単離物である。
【図8】いくつかの異なる増殖条件下において、種々のハイブリッド蛋白質のいずれかを発現している酵母MaV103株のさまざまな表現型を示す写真である。3ATとして示した図面は、Sc-L-T-H(ロイシン、トリプトファン、およびヒスチジンを含まない)でのものである。X-galとして示した図面は、Sc-L-T培地を含み、β-ガラクトシダーゼの基質として機能する5-ブロモ-3-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-gal)を20mg/ml含むものである。
【図9】相互作用性分子の収集物(すなわち、両方向組合せライブラリー(BCL))を作製するために用いた逆ツーハイブリッド法(reverse two-hybrid method)の一例を図示したものである。
【図10A】逆選択可能なCYH2マーカーを挿入したプラスミドを図示したものである。
【図10B】GAL4-ADまたはGAL4-DBとのハイブリッド蛋白質を作成するために用いたプラスミドを図示したものである。
【図11】MaV103を用いて実施した一方向性の(すなわち、古典的な)ツーハイブリッド・スクリーニングの結果をまとめた図である。通常のツーハイブリッド系と比較すると、陽性例の数は相対的に少ない。「再試験」とは、3つの表現型に対して陽性であったクローンを意味する。X→Yとは、Y蛋白質が同定されたXクローンの数である。
【図12】2つの自己活性化クローンを含む合成ライブラリーを含有する酵母細胞の写真である。左下の図面は、Sc-L-T-H培地を含み、3ATを含むプレートの写真である。右下の図面に示したプレートで増殖している細胞は、Sc-LからSC-l+5-FOA、SC-L-T-H+3ATにレプリカ平板培養したものである。陰性対照として、Sc-Lプレートのヒスチジンを含まない3ATプレートへの直接レプリカ培養も実施し、結果として得られた細胞を左下の図面に示した。各々のプレートの右側にある大きな斑状領域は対照細胞を示す。対照は、上から順にpPC97/pPC86、Db-pRb/AD-E2F1、Fos/Jun、および非処理Gal4である。
【図13】合成ライブラリーとの間に観察された相互作用をまとめた図である。
【図14】AD-E2F1およびDB-pRb、またはAD-E2F1およびDB-p107のハイブリッド分子のいずれかを発現している細胞において、E1Aが過剰発現している酵母細胞の写真である。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まず、5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかの中で増殖させた。E1a#2およびE1a#4は、それぞれ30〜132位のアミノ酸、ならびに30〜86位および120〜139位のアミノ酸を意味する。
【図15】変異株pRbΔ22がE2F1と相互作用する能力を持たないことを本発明の方法によって検出することができることを示す、酵母細胞の写真である。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まず、5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかの中で増殖させた。
【図16】DP1と相互作用する能力を媒介するE2F1中の残基を同定するために用いた二段階選抜法を図示したものである。
【図17】GAL1:HIS3およびSPAL9:URA3レポーター遺伝子によって「滴定可能な」表現型が付与されることを示す酵母細胞の写真である。
【図18A】PCR変異誘発およびインビボギャップ修復のために用いた方策を図示したものである。
【図18B】PCR変異誘発およびインビボギャップ修復のために用いた方策を図示したものである。
【図19】二段階選抜法の第1および第2の段階における酵母細胞の増殖を示す一連の写真である。それぞれの段階において、レプリカ平板培養(RP)によって生存コロニーを移し変えた。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まず、5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかの中で増殖させた。
【図20】二段階選抜法の第2の段階において得られたE2F1対立遺伝子の表現型を示す一連の写真である。
【図21】二段階選抜法によって得られたマークボックス2(Marked Box 2)ドメインおよび種々の変異を図示したものである。
【図22】E2F1およびそれに関してすでに記載された機能的ドメインを図示したものである。
【図23A】二段階選抜法をまとめた図である。
【図23B】条件アレル(すなわち、CATS)を同定するための2段階法を図示したものである。
【図24】DB-FosおよびAD-Junの条件アレルを発現している酵母細胞の一連の写真である。この図は、Junの条件アレルが、30℃ではAD-JunおよびDR-Fosの相互作用を防止するが、36℃では防止しないことを示している。
【図25】抗原/抗体相互作用を同定するために有用な方策を図示したものである。
【背景技術】
【0001】
連邦政府の助成研究である旨の記述
本発明は、少なくとも部分的に、連邦政府の助成金を受けて行われたものであるため、政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の背景
本発明は、分子(たとえば、蛋白質および/またはRNA分子)間の相互作用の特徴付けをインビボで行うための方法に関する。
【0003】
非常に多くの生物学的に重要な機能が、DNA分子と蛋白質、RNA分子と蛋白質、2つ以上の蛋白質もしくはRNA分子、またはリガンドとレセプターとの間の、一過性の相互作用に関与している。たとえば、細胞周期のほとんどの段階で、腫瘍抑制遺伝子産物であるpRbは転写因子であるE2Fに結合しその活性を抑制する。E2F活性は、少なくとも7個の蛋白質を含むファミリーによりもたらされる。あるサブファミリー(E2F-1、-2、-3、-4および-5)のメンバーは他のサブファミリー(DP-1および-2)のメンバーとヘテロダイマーを形成する。これらのヘテロダイマーは標的遺伝子のプロモーターに結合し、細胞周期の特定の段階においてその転写を活性化する。
【0004】
E2F/DP複合体の転写活性は、「ポケット」蛋白質と呼ばれる機能的に関連のあるいくつかの蛋白質のいずれによっても抑制される。p107、p130およびpRb(網膜芽腫蛋白質)と呼ばれる蛋白質がこの範囲に含まれる。ポケット蛋白質はE2F/DP複合体と直接相互作用することによりその転写阻害活性を発揮する。E2F活性が必要とされる、細胞周期のG1期からS期への移行期において、ポケット蛋白質がリン酸化され、それによりpRbとE2Fとの解離が起こり、E2F転写因子が活性化される。
【0005】
E2Fとポケット蛋白質との間の、およびE2FとDPファミリーのメンバーとの間の相互作用の生理学的な関連が、いくつかの観察により支持されている:(i)様々な腫瘍において、RB遺伝子の両方のコピーが機能的変異を失っており、野生型のRB遺伝子の再導入により腫瘍形成能が低下する;(ii)実験的な系でE2F-1を過剰発現させると、悪性形質転換が起こる;(iii)pRbキナーゼの正調節サブユニットであるサイクリンDをコードする遺伝子であるPRAD1は、染色体の再構成の結果として、多くの腫瘍において過剰発現する;(iv)ある種のDNA腫瘍ウイルスの腫瘍形成活性には、E2Fと蛋白質との相互作用の破壊が必要である。アデノウイルスのE1A、SV40のラージ(large)T抗体、およびヒトパピローマ(Papilloma)ウイルスのE7などの腫瘍形成蛋白質は、pRbを介したE2Fの抑制を排除することができ、その結果宿主細胞が不適切に細胞周期に入る。pRbとE2Fとの相互作用に影響を与えることなく、腫瘍形成ウイルス蛋白質とpRbとの相互作用を不安定化させることのできる化合物は、これらのウイルスに関係した癌を治療または予防するのに治療的に利用できる。
【0006】
制御蛋白質間の相互作用についての先行する研究により、蛋白質がどのように相互作用するかについて重要なパラダイムが明らかになっている。たとえば、蛋白質/蛋白質相互作用の研究により、いくつかの構造的モチーフ(たとえば、ヘリックス-ループ-ヘリックスモチーフ、SH2およびSH3ドメイン、ならびにロイシンジッパー)が同定された。E2F、Dp、およびポケット蛋白質の一次アミノ酸配列はこれらの既知のモチーフのいずれとも類似していない。従って、この新規の制御蛋白質ファミリーに関する蛋白質/蛋白質相互作用の詳細な研究を可能にする簡便な方法があれば、蛋白質/蛋白質相互作用のための新しいモチーフが明らかになると考えられる。E2F-1/Dp-1相互作用ドメインはE2F-1の第120〜310アミノ酸およびDp-1の第205〜277アミノ酸に位置決定されている。対照的に、E2F-1/pRb相互作用ドメインはE2F-1の第409〜427アミノ酸に位置決定されている。よって、E2F-1上にあるDp-1およびpRb結合部位は重複していない。従って、うまく変異を起こせばE2F-1のpRbへの結合能に影響を与えることなくE2F-1のDP-1への結合能を変えることができると考えられる。同様に、ある種の化学物質も、E2F-1のpRbへの結合能に影響を与えることなくE2F-1のDP-1への結合能を変えることができると考えられる。
【0007】
逆選択マーカー:選択マーカーとは、特定の状況下で選択マーカーを発現する細胞のみの増殖を促進するために用いるものであるが、逆選択マーカーは、特定の状況下で、逆選択マーカーを失った細胞のみの増殖を促進するために用いられるものである。逆選択マーカーは、プラスミド上に存在するときには、そのプラスミドを失った細胞を選択するのに用いることができ、この方法はプラスミド「シャッフリング(Shuffling)」と呼ばれる(たとえば、非特許文献1)。例えば、オロチジン-5'リン酸をコードするura3遺伝子の発現は、5-フルオロ-オロト酸(5-FOA)含有培地の存在下では致死的である。URA3を発現する細胞は、ウラシル非含有培地で培養することにより正の選抜ができ、したがって、培養条件次第でURA3は正または負のいずれの条件にも利用できる。α-アミノアジピン酸リダクターゼをコードするLYS2遺伝子も、逆選択に用いることができる;LYS2を発現する酵母細胞は、一次窒素源としてα-アミノアジピン酸を含む培地上では増殖しない。同様に、α-アミノアジピン酸を含む培地上でのLYS5の発現は致死的である。リジンの生合成に関与するこれらの遺伝子は、リジンを含まない培地で正の選択が可能である。もう一つの逆選択レポーター遺伝子は、アルギニン透過酵素をコードするCAN1遺伝子である。アルギニン非存在下、およびカナバニン存在下でのこの遺伝子の発現は致死的である。同様に、シクロヘキシミド存在下における逆選択遺伝子CYH2の発現は致死的である。逆選択レポーター遺伝子の発現は、転写を活性化する能力を阻害するエストロゲンレセプターの活性化ドメインにおける変異を同定するのに利用されている(非特許文献2)。
【非特許文献1】シコルスキ(Sikorski)およびブーケ(Boeke)、1991, Meth. in Enzymol. 194:302
【非特許文献2】ピーラット(Pierrat)ら、1992, Gene 119:237〜245
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明者らは、逆選択を用いる遺伝学的なスクリーニング・システムが、分子的な相互作用の特徴を双方向的な形で調べるための便利な方法を提供することを発見した。したがって、本発明は、2つの分子(例えば、蛋白質、RNA分子、またはDNA分子)が相互作用するか否かを判定するために用いることができる。さらに、逆選択を用い、また、レポーター遺伝子の発現レベルを測定することによって、2つの分子がどの程度相互作用するのかを判定するために、本発明を用いることができる。したがって、本発明に係る方法は、いずれも、逆選択法を用い、本発明の態様のほとんどが、2つ以上のハイブリッド蛋白質を用いるために、これらの方法は逆ツー・ハイブリッドシステムと名づけられている。本発明は、(i)2つの蛋白質が、2つの別個の核酸ライブラリー(例えば、両方向組合せライブラリー)から発現されうる場合に、第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用することができるか否かを判定するための方法で、原則として、この方法によって、所定のゲノムにおけるすべての蛋白質/蛋白質相互作用を同定することができるようになる方法、(ii)ある化合物が蛋白質/蛋白質相互作用を阻害できるか否かを判定するための方法、(iii)第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用することができ、かつ、第三の蛋白質とは相互作用できないことを判定するための方法、(iv)分析用蛋白質が分析用RNA分子と相互作用することができるか否かを判定するための方法、(v)第一の分析用RNA分子が第二の分析用RNA分子と相互作用することができるか否かを判定するための方法、(vi)蛋白質/蛋白質相互作用に影響する突然変異を同定する(2段階選抜)ための方法、(vii)蛋白質/蛋白質相互作用に影響する、蛋白質の条件的な遺伝子座を同定するための方法、(viii)蛋白質/蛋白質相互作用に影響する補償変異(compensatory mutations)を同定するため(二価遺伝学)の方法、および(ix)蛋白質/DNA相互作用を同定するための方法を提供する。本発明は、また、開示された方法を用いて、分子の相互作用を同定するために有用な、酵母菌株といくつかの遺伝子構築物を特徴とする。
【0009】
本発明は、一つの局面において、第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用できるか否かを判定するための方法を特徴とする。この方法には、以下の段階が含まれる:
(a)第一の集団の複数の細胞が(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用/逆選択用レポーター遺伝子と、(ii)DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分に共有結合した第一の分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子を含む接合受容能のある細胞(接合コンピテント細胞)の第一の集団を提供する段階、
(b)第二集団の複数の細胞が(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用/逆選択用レポーター遺伝子と、(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した第二の分析用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の第二の集団を提供する段階、
(c)逆選択用レポーター遺伝子の発現が該細胞の増殖を阻害するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団を別個に維持する段階、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団を混合する段階、および
(e)第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用できることを測定する指標として、レポーター遺伝子の発現を検出する段階であり、このレポーター遺伝子は、第一の接合コンピテント細胞または第二の接合コンピテント細胞に含まれている第一もしくは第二のレポーター遺伝子または別のレポーター遺伝子であって、第一または第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合されている。
【0010】
本発明のこの局面において、第一および第二の分析用蛋白質のペプチド配列は、意図的に設計したものでも、無作為に作製したものでもよい。必要に応じて、2つの分析用蛋白質のうちの1つの配列を意図的に設計し、もう1つを無作為に作製してもよい。本発明のさらに別の態様において、蛋白質の一部分を意図的に設計し、別の部分を無作為に作製してもよい。好ましくは、本発明のこの局面で用いられる選択用/逆選択用レポーター遺伝子は、URA3、LYS2およびGAL1からなる群より選択される。必要に応じて、第一逆選択用レポーター遺伝子および第二逆選択用レポーター遺伝子は同一のものであってもよく(例えば、逆選択用遺伝子が2つともURA3であってもよい)、2つの異なる逆選択用レポーター遺伝子を用いてもよい(例えば、URA3とLYS2)。
【0011】
第二の局面において、本発明は、分析用化合物が、第一の分析用蛋白質と第二の分析用蛋白質との間の結合を阻害または妨害できるか否かを判定するための方法を特徴とする。この方法には、以下の段階が含まれる。すなわち、
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子を含み、(ii)DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分に共有結合した第一の分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子を含み、また、(iii)分析用化合物の非存在下で第一の分析用蛋白質に結合する遺伝子活性化部分に共有結合した第二の分析用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子を含む細胞を提供する段階、
(b)逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、この細胞と分析用化合物とを接触させる段階、
(c)この化合物が、第一の分析用蛋白質と第二の分析用蛋白質との間の結合を阻害または妨害できることを示す指標として、逆選択用レポーター遺伝子の発現の阻害を検出すること。
【0012】
本発明のこの局面において、第一の分析用蛋白質および第二の分析用蛋白質は、分析用化合物が存在しないときには、互いに作用し合うことが分かっていなければならない。分析用蛋白質の適切な組み合わせには、例えば、cFosとcJun、cJunとcJun、およびE2F1とpRbが含まれる。分析する化合物は、小さな有機分子または蛋白質(例えば、核酸ライブラリーの核酸によってコードされている蛋白質または無作為に作製されたペプチド配列)など、いかなる分子でもよい。分析用化合物として用いられる、好ましい蛋白質の例には、アデノウイルスのE1A、SV40のラージT抗原、およびヒト・パピローマウイルスのE7が含まれる。細胞の増殖を測定することによって、通常は、逆選択用レポーター遺伝子が発現されると細胞毒性となるような化合物の存在下で、逆選択用レポーター遺伝子の発現が阻害されたことを検出することができる。本発明のこの態様において、適切な逆選択用レポーター遺伝子には、URA3、LYS2、GAL1、CYH2およびCAN1が含まれる。
【0013】
本発明は、また、第一の分析用蛋白質が、第二の分析用蛋白質と相互作用することができ、第三の分析蛋白質とは相互作用できないことを判定するための方法を特徴とする。この方法には、以下の段階が含まれる。すなわち、
(a)(i)遺伝子活性化部分に共有結合した第一の分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子、
(ii)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合したレポーター遺伝子、
(iii)第一のDNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合することはできるが、第二のDNA結合蛋白質認識部位には特異的に結合することができないDNA結合部分に共有結合した第二分析用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子、
(iv)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子、および
(v)第二のDNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合することができるが、第一のDNA結合蛋白質認識部位には特異的に結合することができない第二のDNA結合部分に共有結合した第三の分析用蛋白質を含む第三のハイブリッド蛋白質を発現させる第三の融合遺伝子
を含む細胞を提供する段階、
(b)レポーター遺伝子の発現を検出することができ、その発現によって、細胞の増殖は阻害されないが、逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、細胞を維持する段階、ならびに
(c)第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用できることを示し、また、第一の分析用蛋白質が第三の分析用蛋白質とは相互作用できないことを示す指標として、細胞の増殖と選択用レポーター遺伝子の発現とを検出すること。
【0014】
必要に応じて、ポリペプチド、核酸、または有機小分子などの分析用化合物の存在下で、第一の分析用蛋白質が、第二の分析用蛋白質と相互作用することができ、第三の分析蛋白質とは相互作用できないことを測定することができる。ポリペプチドが、分析用化合物として作用するとき、このポリペプチドは、無作為に作製されたポリペプチド配列でも、意図的に設計されたポリペプチド配列でも、核酸ライブラリーの中に含まれている核酸によってコードされているものでもよい。さらに、分析用蛋白質はいずれも、無作為に作製されたポリペプチド配列または好ましい蛋白質を突然変異させたものを含むことができる。有用な逆選択用レポーター遺伝子には、URA3、LYS2、GAL1、CYH2およびCAN1が含まれる。好ましいレポーター遺伝子には、LEU2、TRP1、HIS3およびLacZが含まれる。
【0015】
本発明は、さらに、分析用RNA分子が分析用蛋白質と相互作用することができるか否かを判定するための方法を特徴とする。この方法は、
(a)第一の集団の複数の細胞が、
(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合された選択用/逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)分析用RNA分子が無作為でないRNA分子に共有結合している第一のハイブリッドRNA分子を発現させる第一の融合遺伝子、および
(iii)第一のDNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分で、無作為でないRNA分子に特異的に結合することができるRNA結合部分に共有結合したDNA結合部分を有する第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子を含む、接合コンピテント細胞の第一集団を提供する段階、
(b)第二の集団の複数の細胞が、
(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用/逆選択用レポーター遺伝子、および
(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した分析用蛋白質を発現させる第三融合遺伝子を含む接合コンピテント細胞の第二の集団を提供する段階、
(c)選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現が集団の細胞の増殖を阻害するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団を別個に維持する段階、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団を混合する段階、ならびに
(e)分析用RNA分子が分析用蛋白質と相互作用できることを測定する指標として、選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出することを含む。
【0016】
必要に応じて、分析用RNA分子および/または分析用蛋白質には、無作為に作製したヌクレオチドもしくはアミノ酸配列が含まれていてもよく、または分析用RNA分子および/または分析用蛋白質を、意図的に設計することもできる。選択的に、蛋白質(例えば、意図的に設計された蛋白質または無作為に作製された蛋白質、核酸ライブラリーの核酸によってコードされている蛋白質)のような分析用化合物(例えば、相互作用の解離因子または安定化因子)の存在下で、分析用RNA分子と分析用蛋白質とが相互作用できることを測定することができる。好ましい選択用/逆選択用レポーター遺伝子には、URA3、LYS2およびGAL1が含まれる。
【0017】
本発明は、さらに、第一の分析用RNA分子が第二の分析用RNA分子と相互作用することができるか否かを判定するための方法を特徴とする。この方法は、
(a)第一集団の複数の細胞が、
(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合された選択用/逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)第一の無作為でないRNA分子に共有結合した第一の分析用RNA分子を含む第一のハイブリッドRNA分子を発現させる第一の融合遺伝子、および
(iii)第一のDNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分で、第一の無作為でないRNA分子に特異的に結合できる第一のRNA結合部分に共有結合したDNA結合部分を含む、第一ハイブリッド蛋白質を発現させる第二融合遺伝子を含む、接合コンピテント細胞の第一集団を提供する段階、
(b)第二集団の複数の細胞が、
(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用/逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)第二の無作為でないRNA分子に共有結合した第二の分析用RNA分子を含む第二のハイブリッドRNA分子を発現させる第三融合遺伝子、および
(iii)第二の無作為でないRNA分子に特異的に結合することができる第二のRNA結合部分に共有結合した遺伝子活性化部分を発現させる第四の融合遺伝子を含む接合コンピテント細胞の第二集団を提供する段階、
(c)選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団とを別個に維持する段階、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団とを混合する段階、および
(e)第一の分析用RNA分子が、第二の分析用蛋白質と相互作用できることを測定する指標として、逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出することを含む。
【0018】
必要に応じて、第一および/または第二の分析用RNA分子は、無作為に作製したRNA配列を含むことができる。分析用化合物として用いられる蛋白質またはRNA分子のアミノ酸配列またはRNA配列は、意図的に設計することも、無作為に作製することもできる(例えば、核酸ライブラリーの中に含まれている核酸によってコードされているもの)。本発明のこの局面において、好ましい選択用/逆選択用レポーター遺伝子には、URA3、LYS2およびGAL1が含まれる。好ましくは、第一のRNA結合部分は、第二の無作為でないRNA分子に結合せず、第二のRNA結合部分は、第一の無作為でないRNA分子に結合しない。
【0019】
別の局面において、本発明は、分析用DNA分子が、分析用蛋白質と相互作用できるか否かを判定するための方法を特徴とする。この方法には、
(a)(i)分析用DNA分子に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子、および(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した分析用蛋白質を発現させる融合遺伝子、を含む細胞を提供する段階、ならびに
(b)該分析用DNA分子が該分析用蛋白質と相互作用することができることを示す指標として、該逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出することが含まれる。
必要に応じて、DNAを無作為に作製することができ、および/または蛋白質は、無作為に作製したペプチド配列を含むことができる。
【0020】
さらに別の局面において、本発明は、参照用蛋白質が分析用蛋白質と相互作用する能力に影響するような、参照用蛋白質における突然変異を同定するための方法を特徴とする。この方法は、
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用レポーター遺伝子、
(iii)第一の分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子、および
(iv)参照用蛋白質をコードする遺伝子の変異遺伝子の核酸ライブラリーの中にコードされている候補変異参照蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現する第二の融合遺伝子を含み、さらに、第一または第二のハイブリッド蛋白質の一方が、DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分も含み、第一または第二のハイブリッド蛋白質の他方が、遺伝子活性化部分も含んでいる細胞を提供する段階、ならびに
(b)参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じか、それよりも高いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖が阻害されるが、参照用蛋白質で得られる発現レベルよりも低いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖が阻害されないような条件下で、細胞を維持する段階、
(c)別の段階において、逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されないような条件下で、細胞を維持し、第一の分析用蛋白質が、変異参照用候補蛋白質と相互作用できることを示す指標として、選択用レポーター遺伝子の発現を検出することを含む。
【0021】
必要に応じて、本方法は、参照用蛋白質が第一の分析用蛋白質と相互作用する能力に影響する、参照用蛋白質における突然変異を示すために、候補となる変異参照用蛋白質の配列を参照用蛋白質の配列と比較することを含めることができる。必要に応じて、第二の融合遺伝子は、機能的C末端タグをコードすることができ、また、本明細書で説明されているように、選択用レポーター遺伝子の発現を検出するか、別の方法(例えば、UV光によるGFPの検出)によって、候補となる変異蛋白質のC末端が存在することを示すC末端タグの存在を測定することができる。
【0022】
別の局面において、本発明は、第一の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用する能力が低下するが、第二の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用することができるような、参照用蛋白質の条件的突然変異を同定するための方法を特徴とする。この方法は、
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用レポーター遺伝子、
(iii)参照用蛋白質をコードする遺伝子の変異遺伝子の核酸ライブラリーの中にコードされている変異参照用候補蛋白質を含む、第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子、および
(iv)第二の蛋白質を含む第二ハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子を含む細胞を提供する段階、ここで
第一のハイブリッド蛋白質または第二のハイブリッド蛋白質の一方が、DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分も含み、第一のハイブリッド蛋白質または第二のハイブリッド蛋白質のもう一方が、遺伝子活性化部分も含んでいる、
(b)参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じか、それよりも高いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖が阻害されるが、参照用蛋白質で得られる発現レベルよりも低いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖が阻害されないような条件下で、細胞を維持する段階、
(c)別の段階において、逆選択用レポーター遺伝子の発現によって細胞の増殖が阻害されないような条件下で細胞を維持する段階、および変異参照用候補蛋白質が第二の蛋白質と相互作用することができることを示す指標として、選択用レポーター遺伝子の発現を検出する段階、ならびに
(d)別の段階において、一つのパラメータ以外は、段階(c)と同じ条件で細胞を維持し、変異参照用候補蛋白質が第二の蛋白質と相互作用することができることを示す指標として、選択用レポーター遺伝子の発現を検出する段階、(段階(c)の条件下では、選択用レポーター遺伝子が発現するが、段階(d)の条件下では、選択用レポーター遺伝子が発現しなければ、条件的変異体であることが示される)。
【0023】
必要に応じて、本方法は、第一の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用する能力が低下するが、第二の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用することができるという、参照用蛋白質の変異体を同定するための方法として、変異参照用候補蛋白質の配列を参照用蛋白質の配列と比較することを含むことができる。
【0024】
段階(b)で細胞が維持される条件と、段階(c)で細胞が維持される条件とは、実施者が希望するままに、いかようにも変更することができる。例えば、第一の増殖条件と第二の増殖条件とを、温度および/または薬物の存在(例えば、ホルムアミドまたは重水素)によって変えることができる。
【0025】
本発明は、また、第一および第二の変異参照蛋白質が互いに相互作用できるようになるが、それぞれ、第二および第一の参照蛋白質とは相互作用できない、第一および第二の参照蛋白質における補償変異(compensatory mutation)を同定するための方法を特徴とする。本方法は、
(a)第一の集団の複数の細胞が、
(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第一の逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第一の選択用レポーター遺伝子、
(iii)遺伝子活性化部分に共有結合し、第一の参照用蛋白質の変異遺伝子の核酸ライブラリーの中にコードされている第一の候補変異参照用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子、および
(iv)第一の逆選択用マーカーを含み、DNA結合部分に共有結合した第二の参照用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子を含むプラスミドを含む接合コンピテント細胞の第一の集団を提供する段階、
(b)第二の集団の複数の細胞が、
(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の逆選択用レポーター遺伝子、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の選択用レポーター遺伝子、
(iii)DNA結合部分に共有結合し、第二の参照用蛋白質の変異遺伝子の核酸ライブラリーの中にコードされている第二の候補変異参照用蛋白質を含む第三のハイブリッド蛋白質を発現させる第三の融合遺伝子、および
(iv)第二の逆選択用マーカーを含み、DNA結合部分に共有結合した第一の参照用蛋白質を含む第四のハイブリッド蛋白質を発現させる第四の融合遺伝子を含むプラスミド
を含む接合コンピテント細胞の第二の集団を提供する段階、
(c)第一および第二の参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じか、それよりも高いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖が阻害されるが、参照用蛋白質で得られる発現レベルよりも低いレベルで逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、細胞の増殖を阻害するような条件下で、別個に、第一および第二の接合コンピテント細胞集団を維持する段階、
(d)逆選択用マーカーの発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、第一および第二の接合コンピテント細胞集団を維持する段階、
(e)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の第一集団と第二集団を維持する段階、
(f)第一および第二の候補蛋白質が互いに相互作用するが、第一および第二の参照用蛋白質とは相互作用しないことを測定する指標として、選択用レポーター遺伝子の発現を検出することを含む。
【0026】
必要に応じて、本方法は、第一および第二の参照用蛋白質における補償変異(compensatory mutation)を同定するための方法として、互いに相互作用する第一および第二の候補変異蛋白質の配列を、第一および第二の参照用蛋白質の配列と比較することを含むことができる。
【0027】
本発明は、さらに、本発明のさまざまな局面を実施する上で有用ないくつかの遺伝子構築物を特徴とする。一つの局面において、この遺伝子構築物には、(i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)酵母のプロモーター、(iv)核局在をコードするシグナル配列、および(v)細菌の複製開始点が含まれる。核局在をコードする好ましいシグナル配列は、SV40のラージT抗原の核局在をコードするシグナル配列である。好ましいプロモーターは、ADH1プロモーターであり、好ましい遺伝子構築物は、プラスミドp2.5である。
【0028】
別の局面において、遺伝子構築物には、(i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)プロモーター、(iv)細菌の複製開始点、(v)逆選択マーカー、および(vi)DNA結合部分を発現させる配列が含まれる。好ましくは、遺伝子構築物は、プラスミドp97.CYH2である。
【0029】
さらに別の局面において、遺伝子構築物には、(i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)プロモーター、(iv)細菌の複製開始点、(v)逆選択マーカー、および(vi)遺伝子活性化部分を発現させる配列が含まれる。好ましくは、遺伝子構築物は、pMV257である。
【0030】
より一般的には、本発明は、上流域の抑制配列と、逆選択用レポーター遺伝子の転写を媒介することができるDNA結合部分(例えば、天然の、または再構成された転写因子)に対するDNA結合蛋白質認識部位を含むプロモーターに機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子を有する何らかの遺伝子構築物(例えば、プラスミドまたは染色体)を特徴とする。好ましいプロモーターには、SPO13プロモーターが含まれ、好ましい逆選択用レポーター遺伝子には、URA3遺伝子が含まれる。好ましいDNA結合蛋白質認識部位は、Gal14に対する結合部位である。したがって、好ましい遺伝子構築物はSPAL:URA3である。
【0031】
さらに、本発明は、
(i)上流域の抑制配列と、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位、とを含むプロモーターに機能的に結合している逆選択用レポーター遺伝子をゲノムに組み込んだ酵母細胞を特徴とするが、この酵母細胞は、
(i)逆選択用レポーター遺伝子によってコードされている蛋白質と実質的に同一の天然に存在する蛋白質、および
(ii)天然に存在する蛋白質で、それが発現すると、それを有する細胞が増殖する上で有利になるような蛋白質を1個ももたないものである。このような酵母細胞には、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対するDNA結合蛋白質認識部位を含むSPO13プロモーターが含まれうる。好ましい酵母細胞には、MaV103、MaV203およびMaV99が含まれる。
【0032】
本発明の前述した各局面の好ましい態様において、細胞集団の細胞は、酵母細胞であり、好ましくは、この酵母とは、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)である。必要に応じて、測定対象の2つの分子の相互作用を解離または安定させる化合物を同定する方法において、分析用化合物の存在下で、2個以上の分子が相互作用する能力を測定することができる。従来の遺伝子発現法を用いて、分析用化合物を細胞の中で発現させることができる。または分析用化合物を培地に加えるだけにすることもできる。本発明において用いられる酵母菌株を、化合物の取り込みを向上させるために化学処理する(例えば、ポリミキシンBの9残基ペプチド)ことができる(例えば、ボグスラウスキ(Boguslawski)ら、Mol. Gen. Genet. 199:401〜405 およびAntimicrob. Agents and Therapies 29:330〜332 参照)。分析用化合物を増殖培地に加えるときには、外来化合物の比較的高率な取り込みレベルを示す酵母変異株である、erg6、ise1、ISE2、およびsrb1などのサッカロマイセス・セレビシアエの変異株が特に有用である。接合細胞を作出するために、接合コンピテント酵母細胞の2つの集団を用いるときには、これら2集団は、親和性のある接合型の接合コンピテント細胞を含んでいなければならない(例えば、MATaとMATα)。
【0033】
必要に応じて、本発明に係る方法を、蛋白質またはRNA分子を変異させるための方法と組み合わせることができる。蛋白質、および/またはRNA分子の相互作用の原因となるアミノ酸残基またはヌクレオチドを同定するためにである。例えば、2つの蛋白質の一方または両方における変異で、2つの蛋白質が相互作用できなくなるような変異は、それらの位置にあるアミノ酸が、野生型の蛋白質の相互作用能力に寄与していることを示す。同様に、2つの相互作用する蛋白質における補償変異(compensatory mutation)によって、これに対応する野生型蛋白質の相互作用能力の原因となる重要なアミノ酸が明らかになる。本発明は、また、蛋白質/蛋白質、蛋白質/RNA、蛋白質/DNA相互作用、またはRNA/RNA相互作用に影響する条件的アレルを同定するための方法を提供する。いったん同定されれば、条件的アレルにより、蛋白質またはRNA分子の機能の特徴を調べるために用いることのできる検出可能な表現形質が提供される。相互作用分子の1つに突然変異を起こさせ、一定の条件(例えば、許容的条件)では、その野生型パートナーと相互作用できるが、別の条件(例えば、制約的条件)では相互作用できないような変異体を同定することによって、このような対立遺伝子を同定することができる。
【0034】
好ましくは、各レポーター遺伝子は、遺伝子活性化部分が存在しないと転写を阻害するような抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている。したがって、レポーター遺伝子は、その発現が、転写因子の存在または不在に対して高度に反応するような位置に置かれなければならない。例えば、URA3遺伝子が用いられるときには、この対立遺伝子は、転写因子がないときには、Ura-Foarという表現型を付与し、転写因子があるときには、Ura+Foasという表現型を付与する。SPO13など、一定のプロモーターは、当然、上流域にある抑制配列を含んでいる。従来からのクローニング法を用いて、このような配列を別のプロモーターに組み込むことができる。逆選択用レポーター遺伝子を用いると、細胞の増殖阻害を検出することによって、この遺伝子の発現を検出することができる。
【0035】
1個以上のレポーター遺伝子を用いるときは、これらのレポーター遺伝子を、必要に応じて、DNA結合蛋白質認識部位だけで互いに同一のプロモーターに連結させることができる。好ましくは、レポーター遺伝子は、滴定可能な選択を考慮した遺伝子であり、これによって、条件の範囲の中で、細胞の増殖を測定することができる(例えば、5-FOA濃度)。
【0036】
さまざまなDNA結合部分と遺伝子活性化部分が、本発明のさまざまな局面において使用するのに適している。一般的に、転写因子のDNA結合ドメインまたは遺伝子活性化ドメインを用いることができる。必要に応じて、VP16の遺伝子活性化ドメインを用いることができる。DNA結合蛋白質認識部位、遺伝子活性化部分およびDNA結合部分はすべて、同一の転写因子に対応することもできるし、別個の転写因子に対応することもできる。有用な結合部位には、酵母の蛋白質であるGAL4、細菌の蛋白質であるLexA、酵母の金属結合因子Ace1に対する結合部位が含まれる。これらの結合部位は、抑制されたプロモーターとともに、容易に用いることができる(例えば、SPO13プロモーターを、GAL、LEX、およびACE1DNA結合部位と組み合わせて、それぞれ、SPAL、SPEX、およびSPACEプロモーターの基礎として用いることができる)。その他の有用な転写因子には、サッカロマイセス・セレビシアエのGCN4蛋白質(例えば、ホープ(Hope)およびシュトルール(Struhl)1986, Cell 46:885〜894を参照)、およびサッカロマイセス・セレビシアエのADR1蛋白質(例えば、クマール(Kumar)ら、1986,Cell 51:941〜951を参照)が含まれる。DNA結合蛋白質認識部位は、用いられる転写因子のDBに対する結合部位を1個以上含まなければならい。用いることのできるDNA結合蛋白質認識部位の数には制限はないが、結合部位の数は、好ましくは、1個から100個の間で、より好ましくは、1個から20個であるが、さらに好ましくは、結合部位の数は1個から16個の間である。結合部位の数は、測定法の望ましい感度等の要因によって調整することができる。
【0037】
必要に応じて、レポーター遺伝子に対する遺伝子(例えば、SPALX:URA3)を、半数体または2倍体の細胞のゲノムの中に組み込むことができる。必要に応じて、遺伝子を組み合わせて用いることもできる。例えば、SPALX:URA3をゲノムの中に置き、SPEX:URA3をプラスミド上に置くことができる。また、SPALX:URA3をプラスミドから発現させて、SPACEX:URA3を染色体上に置くこともできる。
【0038】
「解離化合物」とは、2つの分子が結合するのを妨害したり阻害する何らかの分子を意味する。解離化合物(本明細書においては、「解離因子」ともいわれる)の実施例は、ポリペプチド、核酸、および小さな有機分子(すなわち、1 KD以下の分子量を有する分子)である。
【0039】
「レポーター遺伝子」とは、その発現を、2つの分析用分子が相互作用することができるか(すなわち、蛋白質/蛋白質、蛋白質/RNA、RNA/RNA、または蛋白質/DNA相互作用)を測定する指標として測定できる遺伝子を意味する。有用なレポーター遺伝子は、そのプロモーターの中に、再構成された転写因子が結合するか、調査の対象であるDNA結合蛋白質が結合するDNA結合蛋白質認識部位を有する。このような遺伝子には、制限はないが、lacZ、アミノ酸生合成遺伝子(例えば、酵母のLEU2、HIS3、LYS2、またはTRP1)、URA3遺伝子、核酸生合成遺伝子、バクテリアのクロラムフェニコール・トランスアセチラーゼ(cat)遺伝子、およびバクテリアのgus遺伝子などが含まれる。また、これらに含まれるものには、緑色蛍光蛋白質遺伝子のような、蛍光マーカーをコードする遺伝子がある。一定の遺伝子が、後述されるように、「選択用」、「逆選択用」、または「選択用/逆選択用」レポーター遺伝子であるとみなされている。
【0040】
「分析用」蛋白質、RNA分子、またはDNA分子は、本発明に係る方法によって、その機能(すなわち、別の分子と相互作用する能力)の特徴を調べられている分子を意味する。
【0041】
「DNA結合」蛋白質とは、核酸と特異的に相互作用することができる多数の蛋白質の何れかを意味する。例えば、本発明で用いられているDNA結合蛋白質は、遺伝子のプロモーターの中の塩基配列と特異的に相互作用する転写因子の一部でもよい。またはDNA結合蛋白質は、天然の、または人工的にレポーター遺伝子のプロモーターの中に挿入された配列と特異的に相互作用する何らかの蛋白質であってもよい。蛋白質/DNA相互作用の特徴が分かっていれば、DNA結合蛋白質が、選ばれたレポーター遺伝子のプロモーターの中にある部位に結合することによって、レポーター遺伝子の転写を活性化するために、DNA結合蛋白質を遺伝子活性化部分に共有結合させることもできる。
【0042】
「選択用」マーカーとは、ある遺伝子が発現すると、それを含む細胞が増殖する上で有利になるようにする遺伝子を意味する。選択用マーカーの例には、制限はないが、LEU2、TRP1、およびHIS3が含まれる。本明細書で説明されている一定の選択用マーカーは、選択用マーカーを含むプラスミドを有する細胞の増殖を促進するために用いることができる。プラスミド上に位置している選択用マーカーに機能的に結合しているプロモーターは、そのマーカーにとって本来のプロモーターでもよいし、またはこのマーカーは、本来機能的に結合しているプロモーター以外のプロモーターに工学的に操作できるように結合しているものでもよい。一般的に、本発明で用いられているプラスミド(例えば、相互作用する分子または解離因子を発現させるために用いられるプラスミド)の上に位置している選択用マーカーに機能的に結合しているプロモーターは、調査の対象である分子相互作用を測定するために用いられるレポーター遺伝子のプロモーターの中に含まれているDNA結合蛋白質認識部位と機能的に同一のDNA結合蛋白質認識部位を含まない。言い換えると、レポーター遺伝子の転写に介在するDNA結合蛋白質は、選択用マーカーの転写にも介在するものであってはならず、選択用マーカーの転写に介在するDNA結合蛋白質は、レポーター遺伝子の転写にも介在してはならない。
【0043】
「スクリーニングできる」レポーター遺伝子とは、細胞に選択的な増殖有利性を付与するという方法以外の方法によって、細胞の中で、その発現を検出できる遺伝子を意味する。スクリーニングできるレポーター遺伝子の実施例は、lacZ遺伝子である。必要に応じて、スクリーニングできるレポーター遺伝子は、酵母細胞のゲノムの中に組み込むこともできる。スクリーニングできるレポーター遺伝子のプロモーターを、その細胞の中で用いられる他のレポーター遺伝子とは別のものにすることは、必須ではないが、好ましい。スクリーニングできるレポーター遺伝子は、2つの分子が相互作用して転写因子を再構成できるかを測定するために、本発明において用いることができる。このように、スクリーニングできるレポーター遺伝子に機能的に結合しているプロモーターは、再構成された転写因子、または遺伝子活性化部分に融合したDNA結合蛋白質が結合できるDNA結合蛋白質認識部位を含んでいるはずである。
【0044】
「逆選択用」マーカーとは、それが発現されると、それを含む細胞の増殖が阻害される遺伝子を意味する。逆選択レポーター遺伝子の実施例には、URA3、LYS2、GAL1、CYH2、およびCAN1が含まれる。これらのマーカーはプラスミドを除去するために用いることができる。
【0045】
「選択用」レポーター遺伝子とは、ある一定の条件下で発現されると、それを含む細胞が、増殖上有利になるようなレポーター遺伝子を意味する。
【0046】
「逆選択用」レポーター遺伝子とは、ある一定の条件下で発現されると、それを含む細胞の増殖が阻害されるようなレポーター遺伝子を意味する。逆選択レポーター遺伝子の実施例には、URA3、LYS2、GAL1、CYH2、およびCAN1が含まれる。
【0047】
「選択用/逆選択用」レポーター遺伝子とは、ある一定の条件下で発現されると、それを含む細胞が致死になるが、別の条件下で発現されると、それを含む細胞の増殖が選択的に有利になるようなレポーター遺伝子を意味する。したがって、1個の遺伝子を、選択用レポーター遺伝子と、逆選択用レポーター遺伝子の両方に用いることができる。選択用/逆選択用レポーター遺伝子の例には、URA3、LYS2、およびGAL1が含まれる。選択用/逆選択用レポーター遺伝子が用いられる本発明の局面のすべてにおいて、選択用レポーター遺伝子と逆選択用レポーター遺伝子を組み合わせたものを、1個の選択用/逆選択用レポーター遺伝子の代わりに用いることができる。例えば、本発明の第一の局面において、各接合コンピテント細胞には、(i)選択用レポーター遺伝子、および(ii)逆選択用レポーター遺伝子を備えさせることができる。このような2個の遺伝子が、1個の選択用/逆選択用レポーター遺伝子の代わりをするときには、これらのレポーター遺伝子は、同一のプロモーターに機能的に結合されていることが好ましい。特に、レポーター遺伝子は、同一のDNA結合蛋白質認識部位を有するプロモーターに機能的に結合されているのが好ましい。
【0048】
「DNA結合蛋白質認識部位」とは、所定のポリペプチド(すなわち、DNA結合蛋白質)と特異的に相互作用するのに必要十分なDNA分節を意味する。
「共有結合した」とは、2つの分子が、直接的にせよ、間接的にせよ、共有結合によって連結していることを意味する。例えば、「共有結合した」蛋白質または蛋白質部分同士は、直接的に隣接しているか、同じハイブリッド蛋白質の中の1個以上のアミノ酸のつながりによって隔てられている。
「蛋白質」とは、天然のポリペプチドまたはペプチドの全部または一部を構成するか、天然には存在しないポリペプチドまたはペプチドを構成するアミノ酸配列を意味する。
【0049】
「DNA結合部分」とは、特異的なポリペプチドが、特定のDNA配列(すなわち、DNA結合蛋白質認識部位)に結合するようにさせることができるアミノ酸のつながりを意味する。
「RNA結合部分」とは、特異的なポリペプチドが、特定のRNA配列(すなわち、RNA結合蛋白質認識部位)に結合するようにさせることができるアミノ酸のつながりを意味する。
「ハイブリッド」蛋白質、RNA分子、またはDNA分子とは、2個以上の共有結合したポリペプチド、RNA分子、またはDNA分子のキメラを意味する。
【0050】
「遺伝子活性化部分」とは、アミノ酸のつながりで、それが結合している調節領域(すなわち、プロモーター)を有する遺伝子の発現を誘導することができるものを意味する。
「機能的に結合した」とは、適当な分子(例えば、転写活性化蛋白質または転写活性化ドメインを含む蛋白質)が制御配列に結合すると、遺伝子が発現できるような様式で、遺伝子および制御配列(例えば、プロモーター)が連結していることを意味する。
「無作為に作製された」配列とは、予め決定された配列をもたない配列を意味する。すなわち、これは、合成される前に決定されているDNA、RNAまたは蛋白質の配列またはモチーフを有する「意図的に設計された」配列とは対照的なものである。無作為に作製された配列は、核酸ライブラリーに由来することもある。
【0051】
「変異した」とは、部位特異的なまたはランダムな突然変異誘発のいずれかによって、配列が変化することを意味する。変異した配列は、点突然変異、挿入突然変異、欠失突然変異、または転位突然変異を含む。
「プロモーター」とは、転写を行わせることができる最小限の配列を意味するが、このような要素は、もとの遺伝子の5'または3'側領域に位置しうる。
「抑制」配列とは、一定の条件下で、それに連結している遺伝子の発現を阻害するDNA配列を意味する。
【0052】
核酸「ライブラリー」とは、5個以上のDNA分子のセットを意味する。このようなライブラリーには、異なるDNA分子が、何百、何千、何百万と入っていることがある。
「両方向組合せライブラリー」とは、2つの別個の親となる発現ライブラリーから作製した、相互作用するハイブリッド分子の組合せの非常に大きなセットを意味する。典型的には、このセットの規模は、ほぼ、それぞれの親ライブラリーの複雑さの所産である。
「補償(compensatory)」変異とは、相互作用する一組の分子(例えば、蛋白質)における突然変異で、これらの分子が互いに相互作用できるようにさせるが、野生型の分子とは相互作用できない突然変異を意味する。
「集団接合(mass mating)」とは、非常に多数の接合細胞を作出するために、相補的な接合型を有する酵母の接合コンピテント細胞懸濁液を混合することを意味する。典型的には、1010から1012個までの接合細胞が作出される。好ましくは、細胞の懸濁液は、1:1の比率(細胞数:細胞数)で混合される。
【0053】
「機能的C末端タグ」とは、分析用蛋白質のC末端に位置するアミノ酸のつながりを意味し、全長の蛋白質が検出可能なレベルで発現していることを示す分析用蛋白質のカルボキシ末端が元のままであることを確認するために、それが存在することを測定することができるものを意味する。例えば、機能的C末端タグは、別の蛋白質(例えば、pRb、p107またはp130)と相互作用できる配列(例えば、E2F1のポケット結合ドメイン)でありうる。必要に応じて、機能的C末端タグは、別の蛋白質の結合がなくとも検出できる配列でもよい。例えば、GFP(緑色蛍光蛋白質)は、機能的C末端タグとして有用であり、UV光によって検出することができる。
【0054】
本発明は、いくつかの特徴および利点を提供する。例えば、本発明によって、ペプチドまたはRNA分子をコードするcDNAクローンの2つのライブラリーを同時にスクリーニングすることができるようになる。「集団接合(mass mating)」法を用いて、所与のシステムにおけるすべての分子の組合せについて、同一の条件下で、さまざまな分子の機能的な関係を調べる反応を1回だけ行なう。さらに、相互作用する分子は、いずれも事前に同定されている必要はない。本発明は、1×1013もの相互作用を発生させたり、スクリーニングしたりするのを容易にする。したがって、本発明によって、分子の多数の組合せのスクリーニングが容易になり、相対的に稀な会合作用や解離作用を検出できる可能性が高くなる。本発明を大規模に用いて、調査の対象である2つのライブラリーで起こる相互作用のすべて、または大部分についての、蛋白質/蛋白質結合マップを作成することができる。相互作用する分子の組合せで可能なもののを一つずつ含む酵母細胞を、分子の相互作用をカタログ化する方法で、プレートの上に組織だって培養することができる。例えば、調査の対象である蛋白質をコードするDNAをプローブとして用いて、固体担体(例えば、ニトロセルロースフィルター)に並べられた酵母コロニーから抽出したDNAに対してハイブリダイゼーションを行なうことができる。調査の対象であるDNAがハイブリダイズする酵母コロニーを同定することによって、調査の対象であるDNAによってコードされている調査の対象である蛋白質と相互作用する分子を含む酵母菌株が直ちに同定される。そして、ハイブリダイゼーションで陽性を示したコロニーに由来する酵母細胞から、相互作用する分子をコードする遺伝子をいくつかクローニングすることができる。
【0055】
本発明は、比較的稀な会合作用を検出するために高感度で用いることもできる。したがって、本発明は、組合せライブラリーの構築に当たって最も重大な問題の一つである、相互作用する可能性のある分子の大規模な集団から、相互作用するいくつかの組合せを同定するという問題に取り組む。
【0056】
また、本発明により、望ましくない相互作用を分離または阻害するが、望ましい相互作用を分離または阻害しない分子を同定することができるようになる。例えば、本発明は、ウイルス蛋白質が宿主細胞の分子に結合するのを分離または阻害するが、宿主細胞の分子が好ましい分子に結合するのには影響を与えない化合物を同定することを容易にする。さらに、本発明によって、1種類の培地上(例えば、1枚のプレート上)でこれらの解離化合物が同定できるようになり、治療用化合物のスクリーニングが、迅速で簡便な処理となる。化合物があるところで、レポーター遺伝子の発現の増加を測定することによって、分子の相互作用を安定させる化合物を迅速かつ簡便に同定することもできる。
【0057】
本発明は、また、調査の対象である薬物(例えば、解離因子または安定化因子)の標的で、関連する分子の相互作用が未知の標的を同定するためにも用いることができる。この方法は、酵母細胞の集団を用いるが、集団の各細胞は、両方向組合せライブラリーから採った、相互作用する分子を一組ずつ含んでいる。集団の各細胞を、調査の対象である薬物に曝し、薬物があると、レポーター遺伝子をさまざまなレベルで(例えば、高いレベルまたは低いレベルで)発現させるコロニーは、調査の対象である薬物の標的となるハイブリッド蛋白質を含む細胞であることを示している。これらの細胞の中にコードされているハイブリッド蛋白質は、従来の方法によって同定することができる。
【0058】
本発明では、低コピー数のプラスミドを用いることができるため、調査の対象である蛋白質、およびRNA分子を、生理学的に適当なレベルで発現させることができる。低コピー数のプラスミドから、調査の対象である分子を発現させると、実施者は、相互作用分子のさまざまな組合せの間の僅かな違いを検出することができるはずである。遺伝子を多コピー数プラスミドから過剰発現させると、相互作用する分子の組合せで、似ていないもの同士も、時として、レポーター遺伝子の発現レベルが同じように見えるため、蛋白質の組合せの間の差異を検出することが難しくなる傾向にある。別個の酵母細胞におけるハイブリッド蛋白質の発現レベルに関する再現性は、低コピー数プラスミドを用いて、至適化することができる。
【0059】
本発明の一定の態様は、偽陽性の4つのタイプが発生することを(別のシステムで得られる発生率に較べると)抑える。偽陽性として分類される相互作用には、
(i)(a)同じ細胞型において、(b)同じ細胞内区分において、または(c)同じ発生段階において発現されないため、生理的条件下では明らかに相互作用することができない蛋白質、
(ii)生物学的に適当でない、不正なオープンリーディングフレームの発現によってできた蛋白質、または
(iii)特異的な相互作用するパートナーを必要としないで、独力で、レポーター遺伝子の転写に介在する蛋白質の間の相互作用が含まれる。これらの偽陽性の出現は、高度にプロモーター依存的である(バーテル(Bartel)ら、1993, Biofeedback 14:920〜924)。さらに、大腸菌からの無作為な配列の0.1%は、真核細胞中のDBに融合させると、(つまり、ADの機能として)転写を活性化させることができることが示されている(マ(Ma)およびプタシュネ(Ptashne)、1987, Cell 51:113〜119)。
【0060】
生理学的に適正なレベルで、ハイブリッド蛋白質の発現レベルを維持することによって、本発明は、最初の2つに分類された偽陽性が回収されるのを防止することができる。必要に応じて、本発明を実施するにあたり、「三重選択法」を用いることによって、偽陽性を拾う機会を減少させることもできる。三重選択では、3つのレポーター遺伝子が、DNA結合蛋白質認識部位以外は異なった配列を有するプロモーターに機能的に結合されている(図1)。3つの異なるプロモーターに機能的に結合した3つのレポーター遺伝子を用いることによって、3番目の分類の偽陽性を回収する可能性が除去される。
【0061】
本発明が、抗原へのモノクローナル抗体の結合を検出するために用いられるときには、本発明は、以下の特徴を提供する。免疫システムと同じように、本発明は、本来、組合せを扱うものであるため、本発明で用いられる集団接合(mass mating)法によって、相互作用する分子の多数の組合せを解析するのが容易になる。さらに、本発明およびPCR突然変異誘発法、ならびに本明細書で説明されている滴定可能な選択法によって、免疫システムの体細胞の純化能力を合成的に再現することができる。
【0062】
本発明は、また、蛋白質またはRNA分子の突然変異遺伝子を単離するための簡便な方法を提供する。従来の突然変異遺伝子単離法は、ある分子の特定の領域(例えば、関連する分子間で保存されているドメイン)が前もって示唆されていることに基づいて行われるが、本発明は、その分子に関する事前の知識がない状態でも、また、突然変異誘発法に見られる偏りなしに、多数の突然変異遺伝子を作出し、スクリーニングすることを可能にする。
【0063】
本発明は、分子間(例えば、蛋白質/蛋白質)の相互作用の構造と調節に関する情報を提供するための手段として用いることができる。本発明を用いて調べることができる、特に興味深い分子間の相互作用には、ウイルスと宿主細胞の構成成分との間における蛋白質/蛋白質の相互作用が含まれる。これらの相互作用を阻止または防止できる解離化合物は、ウイルスの病原性を抑制するための治療薬として用いることができる。
【0064】
詳細な説明
略号
本明細書中で用いた略号には以下のものが含まれる:
AA アミノ酸
AD 活性化ドメイン
DB、DBD DNA結合ドメイン
5-FOA 5-フルオロ-オロチン酸
GBS GAL4結合配列
ORF オープンリーディングフレーム
URS 上流抑制配列
Prom プロモーター
Term ターミネーター
CEN 動原体
ARS 酵母複製起点
RP レプリカ培養
2 mu 酵母2μプラスミド複製起点
ORI 細菌複製起点
3AT 3-アミノトリアゾール
【0065】
本発明の詳細な実施例を提供する前に本発明のいくつかの要素を説明する。
標準的ツーハイブリッドシステム:酵母ツーハイブリッド系は、一対の蛋白質の会合を検出するために使用されてきた(例えば、フィールズ(Fields)ら、米国特許第5,283,173号を参照)。この方法は、1つの転写因子の2つの分離可能なドメインのインビボでの再構成を含む。この転写因子のDNA結合ドメイン(DB)は、選択されたプロモーターの認識のために必要である。活性化ドメイン(AD)は、細胞の転写装置のその他の要素との接触のために必要である。この系において、転写因子は複数のハイブリッド蛋白質を用いることによって再構成される。一つのハイブリッド体は、ADおよび対象となる第1の蛋白質を含む。第2のハイブリッド体は、DBおよび対象となる第2の蛋白質を含む。対象の第1および第2の蛋白質が相互作用する場合には、ADおよびDBが物理的に非常に近接し、それによって転写因子が再構成される。蛋白質の会合は、再構成された転写因子がレポーター遺伝子の転写を活性化する能力を解析することによって測定することができる。
【0066】
有用なレポーター遺伝子は、DBによって特異的に認識されるプロモーターと機能的に結合したものである。ツーハイブリッド系では典型的には、パン酵母サッカロマイセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)、およびその発現を適切な条件において選択することができるレポーター遺伝子を用いる。このツーハイブリッドシステムは、第2のあらかじめ選択した蛋白質と相互作用する蛋白質をコードする遺伝子をクローニングするための便利な方法を提供する。このような実験では、無作為に作製した配列をADと融合させ、対象となる蛋白質をDBと融合させるために、cDNAライブラリーが構築される。この「一方向性の」スクリーニング法では、クローンの一つのライブラリーから発現された蛋白質が、あらかじめ選択された対象となる蛋白質と相互作用する能力を試験する。2つのライブラリーを用いる方法(一つはADと融合させたもの、もう一つはDBと融合させたもの)は記載されていない。
【0067】
レポーター遺伝子:本明細書に記載したレポーター遺伝子は、プラスミド上に位置させることもでき、一倍体または二倍体の細胞のゲノムに組み込むこともできる。その発現が解析の対象となるレポーター遺伝子は、そのレポーター遺伝子の転写を指向する配列を有するプロモーターと機能的に結合している。このレポーター遺伝子は、転写因子の遺伝子活性化部分がその遺伝子と近接した場合に(例えば、転写因子を再構成するためにハイブリッド蛋白質を用いること、またはDNA結合蛋白質の遺伝子活性化部分と共有結合することによって)、発現するような位置に置かれている。また、このレポーター遺伝子は、転写因子の存在または存在しないことに対してそれを高度に反応させる調節配列と機能的に結合させることもできる。例えば、特異的な転写因子が存在しない場合に、高度に反応性のURA3対立遺伝子は、細胞にUra- Foar表現型を付与する。特異的な転写因子の存在下では、高度に反応性のURA3対立遺伝子は、細胞にUra+ Foas表現型を付与する。レポーター遺伝子を有する細胞(すなわち、形質転換を受けた酵母細胞)は通常、遺伝子の野生型のコピー(例えば、URA3遺伝子)を含むが、外来性レポーター遺伝子をゲノムに組み込み、野生型遺伝子と置換することもできる。レポーター遺伝子をプロモーターと連結し、そのレポーター遺伝子を細胞に導入するためには、従来の方法および基準を用いることができる。
【0068】
プロモーター:レポーター遺伝子の発現のために適切なプロモーターは、そのレポーター遺伝子と結合した場合に、適切な分子(すなわち、転写活性化ドメインを有する蛋白質)の存在下においてその発現を指向することができ、転写活性化ドメインの非存在下では、そのレポーター遺伝子の転写を指向しないものである。有用なプロモーターの一例は、酵母SPO13プロモーターである。その他の有用なプロモーターには、上流抑制配列を含むプロモーター(例えば、バイダル(Vidal)ら、1995. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:2370〜2374)、および転写活性化ドメインの非存在下においてレポーター遺伝子の発現を抑制するものが含まれる。プロモーターがレポーター遺伝子の転写を指向する能力は、遺伝子発現を解析する従来の方法(例えば、遺伝子産物もしくはそのmRNAの検出、または細胞の増殖のためにそのレポーター遺伝子の発現が必要な条件下における、細胞増殖の検出)によって測定することができる。
【0069】
一つまたはそれ以上のDNA結合蛋白質認識部位を含むプロモーターの誘導物を構築するためには、従来の分子生物学の技法を用いることができる。例えば、SPOプロモーターを操作して、GAL4結合配列(GBS)の一つまたはそれ以上のコピーを含むようにすることができる。GAL4に対する天然型のプロモーターにおけるDNA結合部位の特徴は詳細に解明されているため、比較的高い親和性でGAL4が結合する合成配列を作成することが可能である。SPO13プロモーターと機能的に結合したURA3対立遺伝子を、SPO13/GAL/URA3の代わりにSPALX:URA3と呼ぶ。ここで、Xはプロモーターに存在するGBSの数を示す。その他の有用なDNA結合蛋白質認識部位には、LexAおよびAce1結合部位が含まれる。このほか、ある蛋白質があるDNA配列と結合する能力を測定する場合には、DNA結合蛋白質認識部位は野生型のDNA結合蛋白質認識部位でもよく、そのDNA配列が蛋白質と相互作用する能力を試験するための、対象となる任意の人為的に設計された配列であっても無作為に作成された配列であってもよい。
【0070】
酵母菌株:本発明に用いる酵母菌株は、標準的な方法を用いて増殖および保管を行うことができる。サッカロマイセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)は、本発明において特に有用である。本発明の特定の面においては、接合能力を有する2つの酵母細胞を接合させることが望ましい。例えば、ある方法においては、接合能力を有する1つの細胞内で活性化ドメインを含むハイブリッド蛋白質を発現させ、接合能力を有する第2の細胞内でDNA結合ドメインを含むハイブリッド蛋白質を発現させる。このような場合、転写因子は、第1および第2の接合能力を有する細胞を接合させることによって再構成される。明らかに、この2つの接合能力を有する細胞の接合型には適合性が必要である。例えば、接合能力を有する1つの細胞はMATa接合型であり、接合能力を有するもう一方の細胞はMATαであることができる。どちらの細胞型でどちらのハイブリッド蛋白質が発現されるかは問題とはならない。
【0071】
分子相互作用の特徴分析のために好ましい酵母細胞は、(i)上流抑制配列、および(ii)DNA結合蛋白質認識部位を有するプロモーターと機能的に結合した逆選択可能なレポーター遺伝子がそのゲノム内に組み込まれたものである。好ましい酵母細胞は、(i)逆選択可能なレポーター遺伝子によってコードされる蛋白質と実質的に同一な天然型の蛋白質、および(ii)発現した場合(例えば、プラスミドから)に、それを含む細胞に増殖面での利点を付与する少なくとも一つの天然型の蛋白質、を含まない。さらに、酵母細胞は、ゲノムに組み込まれた形で、選択可能なマーカー(例えば、HIS3)および/またはその発現をスクリーニングすることができる遺伝子(例えば、lacZ)を含むことができる。このような3つの遺伝子(すなわち、逆選択可能なレポーター遺伝子、選択可能なマーカー、およびスクリーニングが可能なマーカー)が細胞のゲノムに組み込まれている場合、この3つの遺伝子のプロモーターは、DNA結合蛋白質認識部位を除いて、別個であることが好ましい(図1)。別個のプロモーターを用いることにより、偽陽性が得られる確率は低下する。
【0072】
本発明者らは、以下の特徴を有する一連の酵母菌株を構築した:(i)ツーハイブリッド体を発現し、ヒスチジンを含まない培地上でGAL1:HIS3に対する依存性を示す2つのプラスミドの選択のための一連の非復帰性の栄養要求性変異株:leu2、trp1、およびhis3、(ii)プラスミドシャッフリングを促進するための2つの劣性薬物耐性変異株(can1およびcyh2)、および(iii)3つの組み込まれたGAL4で誘導可能なレポーター遺伝子(Gal1:HIS3、Gal1:lacZ、およびSPAL:URA3、図1)。これらの特徴を有する、両方の接合型(MATαおよびMATa)の酵母菌株を作製した。
【0073】
本発明において特に用いるものは、以下に説明する酵母菌株MaV103およびMaV203である。被験化合物(例えば、解離因子の可能性のあるもの)の取り込みが必要に応じて、化合物の取り込み能力が比較的高いため、erg6変異株が特に有用である。酵母細胞の透過性化処理のためのその他の方法を用いてもよい。これらには、ポリミキシンBノナペプチドなどの化学物質による処理が含まれる。
【0074】
プラスミドp2.5の構築:本発明者らは、本発明において試験することができる解離化合物(例えば、蛋白質またはRNA分子)を合成するために有用な、p2.5と命名した新規なプラスミドを設計した(図2)。さらに一般的には、このプラスミドは、酵母細胞において好ましい遺伝子を発現させるために用いることができる。このプラスミドは、解離化合物をコードするcDNAライブラリーの作成を可能とし、以下の特徴を提供する:(i)プラスミドの多数のコピーの維持を可能ととするための2μmの配列、(ii)プラスミドを好ましくは、本発明に用いるハイブリッド単御悪またはハイブリッドRNA分子をコードする遺伝子構築物(すなわち、複数のプラスミド)とは独立に選択することができるようにする選択可能なマーカー、(iii)強力な構成性プロモーターである酵母ADH1プロモーター、(iv)GAL4認識部位、(v)ポリリンカーの上流に位置し、コードされたポリペプチドの宿主細胞の核への輸送を促進する核局在化シグナル、および(vi)細菌複製起点。プラスミドp2.5は、ADH1プロモーターを含むpPC86のXhoI-XhoI断片を、pRS323のXhoI部位に挿入し、続いて、ポリリンカーおよびADH1ターミネーターを含むpPC86のSalI-BamHI断片をpRS323のSalI-BamHI部位に挿入することによって作製した(シコルスキ(Sikorski)ら、1989, Genetics 122:19〜27)。
【0075】
ハイブリッド蛋白質の産生のためのプラスミドの構築:プラスミドp97.CYH2およびpMV257は、本発明において、対象となる可能性のある相互作用性分子と融合させたGAL4-DBまたはADをそれぞれ有するハイブリッド蛋白質を産生するために有用である(図10B)。これらのプラスミドは、CTH2をコードする配列をpPC97(DBプラスミドの場合)、またはpPC97(ADプラスミドの場合)に挿入することによって産生される(図10A)。p97.CYH2およびpMV257はいずれも、(i)酵母ARS4複製起点、(ii)酵母CEN6動原体配列、(iii)選択可能なマーカー(例えば、pPC97についてはLEU2、pPC86についてはTRP1)、(iv)酵母ADH1プロモーターおよびターミネーター、(v)GAL4-DB(pPC97の場合)またはGAL4-AD(pPC86の場合)、(vi)核シグナル配列をコードし、DBまたはADドメインのフレームに位置したSV40ラージT抗原配列、(vii)細菌複製起点、および(viii)CYH2逆選択可能マーカー、を有する。当業者には、ハイブリッド蛋白質を産生するために多数の同様のプラスミドを用いることができることは周知である。例えば、(単純ヘルペスウイルスからの)VP16またはAce1のDBまたはADを含むハイブリッド蛋白質は、GAL4-DBまたは-ADの位置に、代わりにVP16またはAce1 DBもしくはAce1 ADをコードする配列を有するプラスミドを用いて産生することができる。同様に、Leu2およびTrp1以外の選択可能なマーカーを用いることもできる。これらのプラスミドは、従来の分子生物学的方法を用いて構築することができる。一般に、これらのプラスミドの一つを含む酵母細胞を選択するためには、この酵母細胞はプラスミドの非存在下では、選択可能なマーカーに対応する機能的遺伝子産物を発現しない必要がある。例えば、p97.CYH2による形質転換を受ける酵母細胞は、leu2変異を有する必要がある。これにより、p97.CYH2を含む形質転換株を、ロイシンを含まない培地上で選択することができる。酵母菌株MaV103およびMaV203は、p97.CYH2およびpMV257とともに用いる場合に特に有用である。
【0076】
蛋白質/蛋白質相互作用の解析:本発明は、蛋白質/蛋白質相互作用を同定するための便利な方法を提供する。この方法は、接合能力を有する2つの細胞(例えば酵母)の集団を用いる。選択可能な/逆選択可能なレポーター遺伝子(例えば、URA3遺伝子)を、DNA結合蛋白(例えば、GAL4などの転写因子)に対する認識部位を少なくとも一つ含むプロモーター(例えば、SPO13プロモーター)と機能的に結合させるためには、従来のクローニング法を用いることができる。必要に応じて、選択可能な/逆選択可能なレポーター遺伝子を酵母細胞のゲノムに組み込むために従来の方法を用いることができる。
【0077】
蛋白質/RNA相互作用の解析:酵母細胞において種々の蛋白質またはRNA分子を発現させるために、従来のクローニング法を用いることができる。RNA結合部分およびそれが結合する非ランダムRNA分子には制限はない。一般に、RNA結合部分は50アミノ酸未満で構成されることが好ましい。好ましくは、この非ランダムRNA分子は長さ10〜1000ヌクレオチドの範囲であり、さらに好ましくは、この非ランダムRNA分子は長さ10〜100ヌクレオチドの範囲である。適切なRNA結合部分およびそれが結合する非ランダムRNA分子の一例は、鉄反応要素結合蛋白質および鉄反応要素である。
【0078】
RNA/RNA相互作用の解析:本発明の逆ツーハイブリッド系を用いて、多数のRNA/RNA相互作用を同定することができる。本発明のこの面において用いるために適した発現プラスミドの構築は、一般に知られたクローニング法を用いることによって達成することができる。蛋白質/RNA相互作用の同定に有用な非ランダムRNA分子およびRNA結合部分は、RNA/RNA相互作用の同定にも有用である。
【0079】
DNA/蛋白質相互作用の解析:本発明は、蛋白質/DNA相互作用の特徴分析のために用いることもできる。本発明のこの面において、対象となるDNA配列(「被験DNA配列」)は、逆選択可能なレポーター遺伝子と機能的に結合したプロモーターの内部に含まれる。この意味において、被験DNA配列は、DNA結合蛋白質認識部位として作用する。対象となる蛋白質(「被験蛋白質」)が、その被験DNA配列と結合する能力を検討する。本発明のこの面において、「被験蛋白質」は、遺伝子活性化部分を有するハイブリッド蛋白質として産生され、ハイブリッド蛋白質の被験DNA配列との結合によって逆選択可能なレポーター遺伝子の転写が活性化される。必要に応じて、この被験DNA配列および/または被験蛋白質配列は、意図的に設計されたものでも、無作為に作製されたものでも、または意図的に設計された部分と無作為に作製された部分の両方を含むものでもよい。必要に応じて、被験DNA配列および/または被験蛋白質をコードする遺伝子は、核酸ライブラリーに由来することができる。したがって、両方向組合せライブラリーを作成し、本発明のこの面におけるスクリーニングを行うことができる。本明細書に記載した、蛋白質/蛋白質相互作用の特徴分析のための方法、ならびに蛋白質/蛋白質相互作用に影響を及ぼす化合物および変異を同定するための方法は、適切な変更を施すことにより、蛋白質/DNA相互作用の特徴分析のために用いることができる。
【0080】
解離化合物の同定:可能性のある解離化合物は、培養系に対してそれを単純に添加することによって細胞に導入することができる。可能性のある解離化合物の多くは十分に低分子であるため、エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれる。また、解離化合物がRNA分子または蛋白質であれば、希望するRNAまたは蛋白質を発現するDNA構築物によって細胞に形質転換を施すことによって細胞内で産生することができる。解離化合物は、再構成された転写因子を有する細胞を、再構成された転写因子が逆選択可能なレポーター遺伝子の発現を指向するような条件下において、固形培地にまず平板培養することによって迅速に同定することができる。この方法により、培地上に非増殖性細胞の層が作られる。
【0081】
続いて、検査対象の化合物を、非増殖性細胞の層の上に、秩序だった様式(例えば、格子状などのパターンを形作るように)で付着させる。固形培地に溶液として添加された化合物は、徐々に培地全体に拡散し、培地中に化合物の一定の濃度勾配が作られる。解離化合物は、細胞増殖を防止する逆選択可能なレポーター遺伝子の発現が転写因子の解離によって抑制されるため、化合物が付着した部分で細胞が増殖することによって同定することができる。解離化合物の添加に反応して増殖した細胞も勾配を形成すると考えられる。つまり、解離化合物が添加されたプレート上の位置では最も多くの細胞が増殖する可能性が高いと考えられる。増殖している細胞の最も中心の位置には、高濃度の化合物の毒性のためにリング状の非増殖性部分が生じる可能性もある。この増殖に関するリングの直径は、解離化合物の強度を反映するとともに、解離のために必要な化合物の濃度を反映する。
【0082】
感受性の最適化:典型的には、解離因子がそれとして同定される以前には、相互作用する一対の分子のいずれか一方に対するその相対的親和性は未知である。したがって、解離因子を同定するために好ましい条件は、レポーター遺伝子の転写活性のわずかな低下でも認識可能なものである必要がある。最大感度が得られる条件は、プロモーター内のDNA結合蛋白認識部位の数を最小にし、宿主細胞に薬物感受性(例えばFoas)表現型を付与するために十分な、最低の濃度の薬物(例えば5-FOA)を用いることによって確立することができる。
【0083】
本発明者らは、本発明のその他の態様を実践するための指標となる、本発明の種々の面に関するいくつかの実施例を以下に説明する。
レポーター遺伝子の誘導可能な発現:本発明において用いるレポーター遺伝子の発現を、転写因子によって誘導することができることを示すために、本発明者らは、再構成されたGAL4蛋白質がSPALX:URA3対立遺伝子の発現を誘導する能力を測定した。この実施例において、本発明者らは5つのGBSを有するSPAL5:URA3対立遺伝子を用いた。本発明者らは、(i)全長の野生型GAL4蛋白質、または(ii)同一細胞において2つの別々の分子として発現されるGAL4-DB(第1〜147アミノ酸)およびGAL4-AD(第768〜881アミノ酸)、の存在下において付与されるUraおよび5-FOA表現型を分析した。全長のGAL4転写因子を発現した形質転換株は、強力かつ堅固に調節されたUra+およびFoas表現型を示したが、GAL4-DBおよびGAL4-ADを2つの別々の分子おとして発現した形質転換株は、転写因子を再構成する能力を有する分子を欠いているために、強力かつ堅固に調節されたUra-およびFoar表現型を示した。Foas表現型の強度は、形質転換を受けていない野生型の対照株と同程度であった(図3)。予想された通り、URA3のヌル(null)対立遺伝子(ura3-52)を含む細胞には、いずれの蛋白質(GAL4、GAL4-DB、またはGAL4-AD)とも効果はみられなかった(図3)。
【0084】
転写因子を再構成するための2つのハイブリッド分子の使用:ここでは、本発明者らは、レポーター遺伝子の発現を誘導するために2つのハイブリッド分子を用いることが可能であることを示す。本発明者らは、このことを2つの異なる一対の蛋白質について示す。各々の対の蛋白質は相互作用することが知られている。第1の蛋白質の対は、cFosおよびcJunであり、両者は比較的高い親和性で相互作用する。第2の蛋白質の対はpRbおよびE2F1であり、これらは比較的低い親和性で相互作用する。本発明者らは、GAL4転写因子の再構成を示すために、これらの2対の蛋白質およびSPALX:URA3対立遺伝子を用いた。これらの実験では、合計4種のハイブリッド分子を使用した。第1の蛋白質の対については、cFosの相互作用ドメインをGAL4-DBと共有結合させ(すなわち、融合させ)、cJunの相互作用ドメインをGAL4-ADと共有結合させた。第2の蛋白質の対については、pRbの相互作用ドメインをGAL4-DBと融合させ、E2F1の相互作用ドメインをGAL4-ADと融合させた(図4)。
【0085】
これらの融合蛋白質のそれぞれをコードするDNA分子を、ADH1プロモーターおよび選択可能なマーカーを含む動原体プラスミドを用いて作製した。この場合に、DBを発現しているプラスミドは選択可能なマーカーとして酵母LEU2遺伝子を有し、ADを発現しているプラスミドは選択可能なマーカーとして酵母Trp1遺伝子を有する。陰性対照として、cFos、cJun、pRb、またはE2F1の相互作用ドメインの非存在下において、GAL4-DBおよびGAL4-ADを別々に発現させた。Foas表現型が、感受性の高い転写測定手段を提供することを示すために、本発明者らは、それらの蛋白質がFoaA表現型を誘導する能力と、それらがGAL4で誘導可能なGAL1:lacZレポーター遺伝子に由来するβガラクトシダーゼ活性の発現を誘導する能力とを比較した。
【0086】
本発明者らは、cFosおよびcJunの相互作用ドメイン、ならびにpRbおよびE2F1の相互作用ドメインが、インビボにてGAL4転写因子を再構成することができることを見いだした。DB-cFosハイブリッド体およびAD-cJunハイブリッド体を発現する細胞培養系も、GAL1:lacZに由来する著しいレベルのβガラクトシダーゼ活性を示した。同様に、GAL4-DB-pRbハイブリッド体およびGAL4-AD-E2F1ハイブリッド体を発現する細胞培養系も、GAL1:lacZに由来する著しいレベルのβガラクトシダーゼ活性を示した。DB-cFosおよびAD-cJun、ならびにDB-E2F1およびAD-pRbが転写因子を再構成する能力に関する定量的な評価を提供するために、これらのハイブリッド分子を用いてGAL4を再構成することによって得たβガラクトシダーゼ活性のレベルと、本来の全長のGAL4蛋白質によって得たレベルとを比較した(図5)。本来のGAL4蛋白質によって誘導されたGAL1:lacZレポーター遺伝子の転写では、比活性3,000単位のβガラクトシダーゼが産生された。DB-cFosおよびAD-cJunによって再構成されたGAL4蛋白質では、比活性100単位のβガラクトシダーゼが得られた。DB-pRbおよびAD-E2F1によって再構成されたGAL4蛋白質では、比活性わずか0.5単位のβガラクトシダーゼが得られたのみであった。これらのデータは、cFosとcJunとの相互作用が比較的強いことを示すとともに、pRbとE2F1との相互作用は比較的弱いとはいえ、解析で検出することができることを示している(図5)。
【0087】
増殖閾値の限界の決定:必ずしも必要ではないが、2つの分子の相互作用にわずかな影響しか及ぼさないような化合物または変異を検出する理想的な条件下において、逆選択法を実施するためには、「増殖閾値の限界」を決定することが有用である。増殖閾値の限界とは、最小数のGBSとともに用いた場合に、細胞の増殖を防止するために必要な、薬物(例えば、5-FOA)の最低濃度のことである。必要な薬物の濃度が高いほど、転写因子を再構成する2つの分子間の相互作用は強い。必要に応じて、本発明に用いるGBSの数を変えることもできる。
【0088】
本発明者らは、GAL4転写因子を再構成する、以下の3種の異なった相互作用性蛋白質の対について、増殖閾値の限界を規定した:(i)cFos/cJun、(ii)cJun/cJun、および(iii)pRb/E2F1。SPO13:URA3プロモーター内にGBSを含まない対照細胞は、GAL4蛋白質の存在下においても5-FOAに対する感受性を示さなかった。同様に、GAL4-DBまたはGAL4-ADを発現する細胞も、それらを会合させるポリペプチド(すなわち、相互作用ドメイン)の非存在下において、GBSの数にかかわらず、5-FOAに対して耐性であった。これに対して、cFos/cJun、cJun/cJun、またはpRb/E2F1によって再構成されたGAL4は、5-FOA感受性の表現型を呈した。
【0089】
この例において、転写因子の再構成にかかわる相互作用の相対的な強度は以下の通りである:cFos/cJun>cJun/cJun>pRb/E2F1。それぞれの相互作用に関して検討した5-FOAの濃度の範囲では、GBSの数が増加するに従って、種々の濃度の5-FOAに関する5-FOA感受性の勾配が観察された。これらのデータは、5-FOAに関する増殖閾値の限界が、cFos/cJunについては0.05%、pRb/E2F1については0.1%、cJun/cJunについては0.2%であることを示している(図6)。
【0090】
プラスミドp2.5の解析:プラスミドp2.5の操作性に関する証拠を提供するため、本発明者らは、このプラスミドが転写に誤った影響を及ぼさないことを確認した。本発明者らは、pRbを発現するがADを発現しない、p2.5の誘導物を構築した(p2.5pRb)。生来のGAL4を発現している酵母細胞にp2.5pRbを導入した場合、このプラスミドは、宿主細胞のUraまたはFoa表現型に影響を及ぼさず、このプラスミドがGAL4依存的な転写機能に影響を及ぼさないことが示された。この結果は、pRbがSPAL:URA3の発現に陽性の効果を及ぼさないことを示している。細胞内におけるこのプラスミドの発現により、DB-pRbおよびAD-E2F1を発現している細胞にFoas表現型が付与される結果、このプラスミドは著明な量のpRbを産生した(図7)。本発明者らは、ウェスタンブロット分析により、ハイブリッド分子の発現レベルがp2.5pRbプラスミドを含む細胞で変化しないことを示している。これらの所見は、本発明に関して検討の対象となる解離化合物の候補を発現させるために、p2.5プラスミドが有用であることを示している。
【0091】
SPAL:URA3対立遺伝子を含む酵母菌株の構築:SPO13:URA3構築物は、プラスミドpPL128から入手した(R.ストリッチ(Strich)およびR.エスポシト(Esposito)、刊行物????による)。この構築物は、完全に機能するSPO13プロモーター、およびSPO13の最初の15アミノ酸と、最初のメチオニンコドンを除く全長のUra3蛋白質とが融合した融合蛋白質をコードするORFを含む。GAL4結合部位(GBS)を挿入する前に、SmaI-BamHI二重消化によってSPO13:URA3断片をpPL128から切り出し、ClaIで消化し、クレノウ酵素で処理し、続いてBamHIで消化したpBSKプラスミド(ストラタジーン社(Stratagene))にクローニングした。その結果得られたプラスミドpMV252は、SPO13プロモーター内部の-170位および-368位に2つのEcoRI部分を持ち、-213位にユニークなHindIII部位を有する。GBSは、プラスミドGAL4-5/E1bCAT(リリー(Lillie)ら、1989, Nature 338:39〜44)に由来する。HindIII-XbaI二重消化により、このプラスミドから5つのGBSを含む断片を切り出し、続いてクレノウ酵素で処理してこの断片を平滑末端化した。本発明者らは、配列決定およびPCR分析により、2種のプラスミドpMV262-11およびpMV262-12が、それぞれGBSを5個および15個含むことを同定した。
【0092】
SPAL:URA3構築物は、ura3-52遺伝子座における組み込み型組換えにより、ポリメラーゼ連鎖反応の産物との相同組換えによって(すなわち、ギャップ修復法によって)酵母ゲノムに導入し、それぞれのSPAL:URA3対立遺伝子を作製した。5'プライマーは、プロモーターの上流に位置するURA3配列の40ヌクレオチド(-257〜-218位)とSPOプロモーターの20ヌクレオチド(-370〜-351位)とが融合した(5'-GAAGGTTAATGTGGCTGTGGTTTCAGGGTCCATAAAGCTTGTCCTGGAAGTCTCATGGAG-3';配列番号:1)を含むJB516である(ローゼ(Rose)ら、1984 Gene 29:113〜124;バッキンガム(Buckingham)ら、1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:9406〜9410)。3'プライマーは、3'URA3(URA3の+656〜+632ヌクレオチド)(5'-TCAGGATCCCTAGGTTCCTTTGTTACTTCTTCCG-3';配列番号:2)である(ローゼ(Rose)ら、1984 Gene 29:113〜124)。テンプレートとしてpMV262-11またはpMV262-12を用いる標準的なPCR反応条件により、それぞれ、希望するサイズ(1,000bp)の産物、または1,000〜1,300bpの範囲の産物の混合物が産生される。
【0093】
このPCR産物は酵母株MaV82に直接形質転換のために導入され、形質転換株はウラシルを含まない培地上で選択される。酵母株MaV82は、GAL4を発現するプラスミド、pCL1による形質転換を受けたMaV52である(フィールズ(Fields)ら、1989, Nature 340:245〜246)。MaV52(MATa ura3-52 leu2-3, 112 trpl-901 hisΔ200 ade2-101 gal4Δ gal80Δ GAL1:lacZ GAL1:HIS@lys2 can1R cyh2R)は、(GAL1:lacZ@URA3を除去するための)5-FOAによる選択、および引き続きY153のCan選択を行うことによって入手した(ブーケ(Boeke)ら、1984, Mol. Gen. Gen. 197:345〜346、およびダルフィー(Durfee)ら、1993, Genes and Development 7:555〜569)。PCR産物の5'端の40ヌクレオチド、およびura3-52のTy挿入部とPCR産物の3'端の間の320ヌクレオチドを用いることにより、ura3-52遺伝子座における二重相同組換え事象または遺伝子変換事象が期待される(ロシュタイン(Rothstein), 1983, Methods Enzymol. 101:202〜211;バウディン(Baudin)ら、1993, Nucleic Acids Research 21:3329〜3330、およびロゼ(Rose)ら、1984, Mol. Gen. Genet. 193:557〜560)。
【0094】
pCLプラスミドの損失による試験では、形質転換株のほぼ50%が、期待されたGAL4-依存性のUra+表現型を呈した。SPAL:URA3対立遺伝子の組み込みが確認され、ゲノムDNAをテンプレートとして用いるPCR反応においてGBSの数を推定した。種々の形質転換株のうち、MaV99は10個のGBSを含み、したがってSPAL10:URA3である。5'プライマーはJB536である(URA3配列の-298〜-276ヌクレオチド;5'-GCGAGGCATATTTATGGTGAAGG-3';配列番号:3)。3'プライマーは13-5である(SPO13アンチセンス配列の-124〜-145ヌクレオチド;5'-CATTTCCGTGCAAGGTACTAAC-3';配列番号:4)(バッキンガム(Buckingham)ら、1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:9406〜9410)。MaV108株(GAL1:HIS3融合体を含まないMATa)、MaV103株(GAL1:HIS3融合体を含むMATa)、およびMaV203株(GAL1:HIS3融合体を含まないMATα)。MaV103およびMaV203は、MaV99とPCY2との間の接合体の減数分裂性分離個体である(シャブレイ(Chevray)ら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5789〜5793)。
【0095】
プラスミドの構築:cFosおよびcJunのハイブリッド蛋白質(DB-cFos、AA 132〜211(pPC76);DB-Jun、AA 250〜334(pPC75);AD-cJun、AA 250〜334(pPC79))は、以前に記載されている(シャブレイ(Chevray)ら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5789〜5793)。その他の蛋白質は、それらがGAL4-DB(AA 1〜147)またはGAL4-AD(AA 768〜881)、プラスミドpPC97(GAL4-DBの場合)(pPC97はpPC86のポリリンカーを含むpPC62である)、またはpPC86(GAL4-ADの場合)とともに同じフレームに位置するようにPCR産物をクローニングすることによって作製した(シャブレイ(Chevray)ら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5789〜5793)。野生型の配列を有する蛋白質を産生するためには、同じくPCR産物をp97.CYH2にクローニングした。このプラスミドのCYH2遺伝子は、プラスミドシャッフリングおよび細胞からのプラスミドの除去を促進する。DB-pRbはpRbのAA 302〜928を含み、DB-pRbΔ22はエクソン22に欠失がある変異型pRbのAA 281〜894を含み、DB-p107はp107のAA 372〜10678を含み、AD-E2F1はAA411のチロシンがシステインに変異した変異型E2F1のAA 342〜437を含み、AD-E2F4はE2F4のAA 1〜413を含む(ヒーベルト(Hiebert)ら、1992, Genes & Development 6:177〜185;ホワイト(Whyte)ら、1988, Nature 334:124〜129;ヘリン(Helin)ら、1993, Mol. Cell. Biol. 13:6501〜6508;サルデット(Sardet)ら、1995, Proc. Natl. Acad. Sci)。
【0096】
p2.5誘導体は、PCR産物をp2.5にクローニングすることによって作製した。E1A#2はE1AのAA 30〜132を含み、E1A#4はE1AのAA 30〜86および120〜139を含み、E1A-CR1はE1AのAA 1〜120を含み、pRBはpRbのAA 302〜928を含み、E1A-CR2はE1AのAA 76〜139を含む。DB-DP1と相互作用する能力を持ち、宿主細胞に対して有毒でないAD-E2F1ハイブリッド体を単離するために、本発明者らは、DB-DP1ハイブリッド体を発現している酵母細胞のcDNAライブラリーのスクリーニングを実施した。その他の可能性のある相互作用性分子の中から、本発明者らは、E2F1のAA 159〜437を含むAD-E2F1融合体を単離した。
【0097】
変異誘発性ギャップ修復法:ポリメラーゼ連鎖反応(RCR)を用いる変異誘発性ギャップ修復法は、選択した配列に変異を誘発させる便利な方法を提供する(ミュールラッド(Muhlrad)ら、1992, Yeast 8:79〜82)。この方法では、変異を生じさせたい配列をコードするDNAを、DNA分子への不正確なヌクレオチドの編入が起こりやすい条件下でPCR反応系において増殖させる。このような条件には、比較的高いマンガンレベルおよび/または種々のヌクレオチドの不均等な混合がある。この方法において使用するPCRプライマーは、線状化された発現プラスミドの一部と相同な配列を両端に有する直線状のPCR産物を生じる。続いて酵母細胞に、直線化されたプラスミドおよびPCR産物による同時形質転換を施す。直線化されたプラスミドのインビボでの修復により、高い頻度で、変異を生じた配列を含む安定な環状プラスミドが形成される。
【0098】
補償変異:補償変異とは、変異を生じた分子同士は相互作用するが、それぞれの対応する野生型の蛋白質またはRNA分子とは相互作用しないような、相互作用性分子(例えば、RNA分子または蛋白質)の対における変異である。補償変異の例には、互いに接触する荷電残基の逆転を引き起こす変異が含まれる。例えば、2つの野生型の蛋白質(XおよびY)において、相互作用性分子Xの正に荷電した残基と相互作用性分子Yの負に荷電した残基との接触が起こるとする。このXおよびYにおける補償変異の一つは、Xが負に荷電した残基を含むように変異し、Yの相互作用部位が正に荷電した残基を含むように変異するものである。補償変異は、分子の相互作用ドメインのサイズの変化を含んでもよい。例えば、相互作用のパートナーであるXの一部が相互作用性分子Yの内腔領域と適合する場合には、Xに生じた補償変異によって相互作用ドメインのサイズが大きくなり、Yに生じた補償変異によって、Xの拡大した相互作用ドメインに順応するように相互作用のための内腔が拡大する場合が考えられる。
【0099】
相互作用性分子における補償変異に関して知っておくことは、これらの変異が2つの分子の相互作用に不可欠な部分で起こることが多いため、科学者にとって有意義である。補償変異は、相互作用性分子の適切な折りたたみに関して重要な接触性残基、アミノ酸またはリボヌクレオチドなどの、分子間相互作用に関与する重要な残基を規定すると考えられている。今日までに蛋白質における補償変異が同定され、蛋白質のX線結晶構造が判明しているものでは、結晶構造によって同定された相互作用性残基と、補償変異に関して同定された相互作用残基との間に明らかな相関が示されている。分子の機能においてこのような極めて重要な役割を有する残基を同定することは、蛋白質および/またはRNA分子の間の好ましくない(すなわち、疾患に関連した)相互作用を遮断することによって機能する治療的化合物を合理的に設計するために非常に重要である。
【0100】
条件変異株:蛋白質およびRNA分子の構造および機能の研究は、対象となる分子に関する条件変異株を同定することによって容易となる。これらの条件対立遺伝子は、許容しうる条件下では野生型の機能を果たすことが可能であるが、細胞を制限的な条件下に移行させた場合には、分子が機能する能力に検出可能な変化を生じる。条件対立遺伝子の単離においては、その結果生じる構造的および/または機能的な変化が軽微であることが多いとの事実のために、その頻度がかなり低いことが妨げとなる。多くの古典的な方法では、広範囲の欠失または部位指定変異のいずれかの作成を指向する方法を用いて、相互作用性分子をコードする遺伝子にインビトロで改変を加える。このような方法には長い時間がかかると思われる。さらに、古典的な方法では、(i)許容的であると指定された条件下で機能を有する、および(ii)制限的であると指定された条件下で機能を持たない、対立遺伝子を選択することはできない。
【0101】
合成ライブラリ中にコードされる蛋白質を用いた蛋白質/蛋白質相互作用の同定
合成ライブラリを含む酵母菌株の構築:本発明者らは、酵母菌株MaV103の表現型の特徴付けを行い、この菌株を用いておよびMaV203と様々なハイブリッド蛋白質とを用いてリバース・ツーハイブリッド法を試みた(図8)。本発明のリバース・ツーハイブリッド法の機能性を示すために、本発明者らは、限られた数の未知のパラメーターを有する2つの合成ライブラリを用いて(i)双方向ライブラリにおける頻度が10-6である相互作用の同定に集団接合法(mass mating method)が利用できるか否か、および(ii)接合細胞(mated cells)の形成に先立って、自己活性化接合能を有するクローンを排除するために用いる逆選択法の効率、を判定するために設計した再構築(すなわち、再構成)実験を行った。この「双方向組み合わせライブラリ」(BCL)を作成するのに用いた方法の概略を図9に示す。
【0102】
合成ライブラリの構築:DNA結合部分と融合したポリペプチドを有するクローンのライブラリには、GAL4-DBを用いた(図10)。本発明者らは、pRb、p107、p130、p21、サイクリンD2、cFos、cJun、DCC1、またはdE2Fの様々な形態を含む15のハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドを作成するために、GAL4-DBベクターを用いた(図11)。15のハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドを希釈するために、様々なプラスミド各1ngおよびGAL4-DBのみを(すなわち、別のポリペプチドとのハイブリッド蛋白質としてではなく)発現するプラスミド1μgを含むDNA混合液を調製した。これらはそれぞれ内生のADを含むため、GAL4-ADと融合したポリペプチドが存在しなくても、DB-DCC1およびdE2Fをコードするハイブリッド蛋白質の両者とも、レポーター遺伝子の転写を活性化できる。これらのハイブリッドは両者とも、3AT耐性(ヒスチジン非存在下)および5-FOA感受性の表現型をMaV103細胞に付与することができる。この解析では、これらの偽陽性を検出し除外するために、これらのハイブリッド蛋白質を対照として用いた。
【0103】
GAL4-ADベクターを用いて、活性化ドメインと融合したポリペプチドを有するハイブリッド蛋白質の合成ライブラリのアッセンブルを行った(図10)。様々な形態のcdk2、cJUN、E2F-1、E2F-2、E2F-3、またはE2F-4を含む、ハイブリッド蛋白質のライブラリを作成するのに15のポリペプチドを用いた(図11)。ADハイブリッド蛋白質のライブラリには、自己活性化するクローン(すなわち、偽陽性)はひとつも含まれていなかった。様々なハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドを希釈するために、本発明者らは様々なプラスミド各1ngおよびGAL4-ADのみを発現するプラスミド(すなわち、別のポリペプチドとのハイブリッド蛋白質としてではない)1μgを含むDNA混合液を調製した。
【0104】
ADおよびDB分子をコードするプラスミドの混合物を用いて、レポーター遺伝子の同一のセットを含む酵母菌株を別々に形質転換した。プラスミドの合成ライブラリのひとつを用いて、MATα株のひとつであるMaV203を形質転換させた。プラスミドの他の合成ライブラリは、MATα株のひとつであるMaV103に導入した。2つの交換可能な接合型(mating type)の酵母がこれら2つのライブラリに用いられていれば、どのライブラリをどの接合型の細胞に形質転換させてもかまわない。形質転換された酵母細胞は、ロイシンまたはトリプトファンのいずれかを欠く寒天培地上に置き、それぞれLEU2またはTRP1マーカーを用いて形質転換体を選抜する。MATa Leu+の形質転換体はGAL4-DBに融合したポリペプチドのライブラリを用いて得られる半数体のクローンであり、またMatα Trp+の形質転換体はGAL4-ADに融合したポリペプチドのライブラリを用いて得られた半数体のクローンであった。
【0105】
逆選択:それぞれ独立して転写を活性化することのできる接合能を有するクローンを排除するために、逆選択法を用いた。第1の選択段階で得られたLeu+およびTrp+のコロニーは、別々に、0.2%の5-FOAを含む培地で直接レプリカ培養した(図12)。この培地上では、非活性化クローンに対応するコロニーのみがさらに増殖した。必要に応じて、逆選択の段階を繰り返すこともでき、この場合は、2回行った。図12に示すとおり、不適切に転写が活性化されたクローンは全て、5-FOAを用いた逆選択により完全に排除された(プレートの右側にある細胞の大きな区分は、この実験で用いた対照を表す;5-FOA非存在下における逆選択で回収したコロニーの数(下方左のパネル)と5-FOA逆選択で得られた数(下方右のパネル)とを比較されたい)。5-FOA逆選択を2回行った後には、ヒスチジンを欠き3ATを含む培地上で自己活性化能を有するクローンは検出されなかった。
【0106】
集団接合法(Mass-mating method):非活性化クローンを含むことを示す、逆選択段階で生き残った細胞を採集し、液体培地に再懸濁した。2つの細胞系の各々から約1010個の細胞を、109細胞/mLの濃度となるよう、別々に10mLの培地に再懸濁した。次に、2種の細胞懸濁液を混合し、接合細胞の形成(すなわち接合)に適した条件下で一晩培養した。この場合には、接合能を有する細胞の混合物を、YEPDを含む15cmのプレート上、栄養豊富な培地に塗布し、得られた接合細胞をロイシンおよびトリプトファンの両方を欠く培地で再び培養した。本発明者らのデータから、接合効率は約10%であることが示された。本発明者らは、これらのデータに基づき、懸濁液の量を数リットルにまで増加させた場合、1013個までの接合細胞がこの集団接合法(mass mating method)で選択できる、との結論を得た。これらのデータにより、反応液量を数リットルにスケールアップすることにより、1013組の相互作用蛋白質が生成され、スクリーニングされることが示唆される。
【0107】
選択:集団接合法で得られた接合細胞を、ADおよびDBをコードするプラスミドの存在について選択する固形培地上で培養した。本明細書では、ロイシンおよびトリプトファンの両方を欠く培地を用いた。これらのプレート上で増殖するコロニーを、ロイシン、トリプトファンおよびヒスチジンを欠き20mMの3ATを含む培地上でレプリカ培養した。
【0108】
陰性対照として、別のポリペプチドと融合させることなく、GAL4-DBまたはGAL4-ADをコードするプラスミドでのみ形質転換した半数体細胞からの2倍体細胞の形成を誘導した。陰性対照から得られた5x105個の2倍体細胞のうち、ロイシンおよびトリプトファンの両方を欠く培地上で生き残ったものはひとつもなく、擬陽性がひとつも得られないことが示された。
【0109】
陽性対照として、DB-FosまたはAD-cJunのいずれかのハイブリッド蛋白質を発現する細胞の合成ライブラリを2つ構築した。これらのライブラリを1:100に希釈し、2倍体細胞を形成させ、ロイシン、トリプトファン、およびヒスチジンを欠くプレート上で選択した。この条件下では、生き残る細胞は約10-4の期待頻度で得られた(約50,000の2倍体細胞から12個の3AT耐性コロニーが得られた)。
【0110】
対照的に、この手順を用いて、合成ライブラリを含む細胞からは、3AT含有培地上で積極的に増殖するコロニーが得られた。試験した5x106個の2倍体のうち、400個の3AT耐性コロニーが回収された。この実施例における2倍体細胞を、ロイシンおよびトリプトファンを欠乏する培地で培養し、つぎに、ロイシン、ヒスチジン、およびトリプトファンを欠き3ATを含む培地で培養した。必要に応じて、接合細胞を、3ATを含みロイシン、ヒスチジン、およびトリプトファンを欠く培地で直接培養することもできる。
【0111】
回収された400個のコロニーを、URA3遺伝子の発現の指標としての5-FOAに対する感受性について調べた。またX-gal含有培地上でβ-ガラクトシダーゼ活性についても調べた。試験したクローンの約95%がURA3およびlacZ遺伝子を発現していた。これらのコロニーのうち、120個についてさらに解析した。これらのコロニーからプラスミドを抽出し、大腸菌内で増幅した後抽出した。相互作用蛋白質の80対をコードするプラスミドの挿入断片を塩基配列解析により同定した。塩基配列解析で得られたデータ(図13)により、(i)期待される相互作用のほとんどがこの方法により検出されること;および(ii)cFos/cJun相互作用が、おそらくはこれらのポリペプチドをコードするDNAの大きさが比較的小さいために、高い頻度で再構成されること、が示された。従って、本発明により、蛋白質-蛋白質相互作用を同定するための、簡便で効果的な方法が提供される。
【0112】
分子間相互作用を破壊する化合物の同定
再構成した転写因子の解離:本発明者らは、2つの分子の相互作用を破壊する(すなわち、その相互作用を妨げる、または解離を引き起こす)化合物により阻害が起こるような、レポーター遺伝子の転写阻害を本発明により検出可能か否かを試験した。この方法は2つのハイブリッド分子が相互作用して転写を媒介する能力を破壊する化合物(すなわち、解離因子(dissociators))の同定に用いることができる。有効な化合物は、レポーター遺伝子(たとえば、SPALX:URA3)の発現の低下を引き起こす。たとえば、レポーター遺伝子がURA3である場合、解離因子はFoar表現型を宿主細胞に付与する。したがって、本発明は蛋白質/蛋白質相互作用を破壊する分子を同定するための簡便な方法を提供する。
【0113】
本発明者らは、2つの相互作用蛋白質のうち、DBまたはADを欠くいずれかひとつを細胞内で過剰発現させることにより、この系において転写がブロックされることを見いだした。過剰発現したDBまたはADを欠く相互作用蛋白質は、2つのハイブリッド分子と競合してレポーター遺伝子の転写活性化を妨げる。これらのデータは、解離化合物は細胞内で生産され、本発明で同定できることの証拠となる。
【0114】
本発明により、2つの相互作用分子の解離が検出できるもう一つの例として、本発明者らは第3の蛋白質、E1Aを、AD-E2FおよびDB-pRb、またはAD-E2FおよびDB-p107のハイブリッド分子のいずれかを発現する細胞内で過剰発現させた。本発明者らは、アデノウイルスE1A蛋白質の、pRbおよびp107に結合してpRb/E2Fおよびp107/E2F4を解離させる能力について測定した。これらの研究において、簡便なクローニング法を用いてE1Aのコード配列をプラスミドp2.5のポリリンカーに挿入することにより、AD-E2FおよびDB-pRbまたはDB-p107のいずれかを発現する酵母細胞内で、E1Aが発現された。本発明者らは、酵母菌株におけるE1Aの発現により、Foas表現型が保護されることを見いだし(図14)、これは本発明がDB-pRb/AD-E2FおよびDB-p107/AD-E2F相互作用の両者についてその解離を検出できることを示す。
【0115】
いくつかの観察結果から、E1Aに媒介される解離が特異的であることが示唆される:(i)E1Aの過剰発現は、様々なハイブリッド蛋白質の定常状態のレベルには影響しなかった;(ii)E1A蛋白質の発現は、DB-DP1/AD-E2F相互作用の結果であるFoas表現型に何ら影響を与えなかった;(iii)哺乳類細胞においてpRb/E2Fの解離に必須であることが知られている保存領域II(CR2)は、Foas表現型に必須であった;および(iv)DB配列のいずれも存在しないとき、pRbの過剰発現により、DB-pRb/AD-E2F1を発現する細胞においてE1Aと同程度にFoas表現型が保護されるが、DB-p107/AD-E2F4のFoas表現型は保護されなかった(図14)。
【0116】
解離化合物の力を強める:必要に応じて、薬物(たとえば、5-FOA)の致死を引き起こす濃度範囲にわたって、2つの相互作用ハイブリッド分子(たとえば、蛋白質)を解離する化合物の能力を調べることにより、解離因子の力を特徴づけることができる。たとえば、最初の解析は、比較的弱い解離化合物を同定するために、比較的低い5-FOA濃度(すなわち、増殖しきい値に近い濃度)、および少数のGBSsを用いて行うことができる。2回目の解析では、5-FOAの濃度および/またはGBSsの数を高め、より強力な解離因子を同定する。解析は繰り返して行うことができる。この方法は、解離化合物の設計にも有用である。弱い解離化合物がひとたび同定されれば、それを改変して(たとえば、標準的な技術により行うことのできる、アミノ酸、ヌクレオチド、または化学基の置換)、次の解析で試験することができる。改変によって強められた解離化合物は、もとの分子と比較してより厳密な条件下(たとえば、より高濃度の5-FOA)で、細胞の増殖を促進する(すなわち、相互作用を阻害する)能力により同定できる。
【0117】
解離化合物の同定のための2倍体酵母菌株の使用:必要に応じて、レポーター遺伝子の2コピーを有する酵母の2倍体菌株を用いて解離化合物を同定することができる。たとえば、SPALX:URA3の2コピーを有する2倍体株を用いることにより、Foas表現型が自然に復帰変異してFoarクローンが出現する可能性を減らすことができる。従って、2倍体株を用いることにより、この方法の感度が高まる。解離化合物は半数体または2倍体のいずれを用いても同定できるが、2倍体を使用するのが好ましい。
【0118】
本発明者らは、Foas表現型が復帰する原因となる変異が、SPAL:URA3レポーター遺伝子に結合したシスに作用する変異に相当することを見いだした。理論上、シスおよびトランスに作用する変異は両者ともにFoas表現型の復帰につながる。シスに作用する変異はSPALX:URA3アレルのプロモーターにある反復GBSsの欠失に関与している可能性が高く、一方トランスに作用する変異は、プラスミドの配列間の遺伝子変換現象、または相互作用分子のコード配列におけるノックアウト変異である可能性が高い。
【0119】
Foas表現型の復帰につながる自然変異の性質を特徴付けるために、本発明者らは2つのレポーター遺伝子(GAL1:HIS3およびGAL1:lacZ)の発現がFoarコロニーにおいて変化した(すなわち、自然変異体)か否かを調べた。本発明者らのデータから、HIS3およびlacZの発現はこれらの細胞内で変化がないことが示され、この復帰変異はSPALX:URA3プロモーターに結合したシスに作用する変異であることが示唆される。従って、2コピーのSPALX:URA3レポーター遺伝子を含む酵母の2倍体株は、自然復帰変異体が出現する頻度を減少させると考えられる。この頻度は10-6×10-6=10-12と計算される。自然復帰変異の頻度は、cFos/cJunハイブリッド蛋白質を発現する半数体細胞からFoarコロニーが得られる割合を、2倍体細胞から得られる割合と比較することにより、実験的に得ることもできる。
【0120】
分子間相互作用の特徴付けのための変異の使用
変異を起こした相互作用分子の同定:本発明者らはまた、本発明により、相互作用を無効にする生理学的に関連した変異が検出できるか否かについて試験した。本発明の重要な指針のひとつは、相互作用分子を解離させるような変異により、DNA結合蛋白質の認識部位に機能的に結合したレポーター遺伝子の発現を、検出可能な程度にまで減少させられることである。たとえば、pRb/E2F1相互作用対の網膜芽腫蛋白質で変異が起こると、その変異が2つの分子の相互作用に関わる残基に関係した変異であるならば、細胞はFoarの表現型を示すはずである。本発明によりレポーター遺伝子の転写の減少を検出できるか否かを試験するために、本発明者らはエクソン22を欠失しているためにE2F1と会合できないpRbアレルを用いた。この形のpRbをGAL4-DBとのハイブリッド蛋白質として発現させ、これをハイブリッド蛋白質DB-pRbΔ22と名付けた。E2F1はGAL4-ADとのハイブリッド蛋白質として発現された。本発明者らは、これらの蛋白質が酵母で発現することにより、DB-pRbΔ22の発現レベルが野生型のpRbの発現レベルに匹敵するものであっても、Foar表現型を生じることを見出した(図15)。本発明者らはまた、pRbと結合できないE2F1の変異アレル(AD-E2FY411C)を有するハイブリッド蛋白質による相互実験も行った。この変異アレルの発現によっても、Foar表現型となる(図15)。これらのデータから、本発明の逆ツーハイブリッドシステムが、2つの分子の会合を妨げる変異の検出に用いることができるということのさらなる証拠が提供される。
【0121】
構造的および機能的に重要な残基を決定する微妙な変異を同定するための二段階選抜法の使用:本発明者らは、DP1と相互作用する能力を媒介するE2F1内の残基を同定するために、二段階選抜法を用いた。この方法は、図16に概略を示した計略に基づいている。まず、DP1とE2F1とが互いに結合する能力に影響を及ぼす変異を同定し、第2段階で、これらの蛋白質間の相互作用を完全には止めないような変異を同定した。この方法は、DP1と相互作用するE2F1の能力を完全に破壊するような変異は、蛋白質の大きさを変えてしまう変異(たとえば、ナンセンス変異、欠失、または挿入)などの、無益な変異であるかもしれない、という前提に基づいている。この方法により、蛋白質/蛋白質相互作用を穏やかに変化させるようなアレル(たとえば、アレルのライブラリから選択されるアレル)の同定が容易になる。
【0122】
この二段階選抜法の実施例において、本発明者らは、GAL1:HIS3レポーター遺伝子(ダルフィー(Durfee)ら、1993,Genes & Dev. 7:555〜569)を用いた。このレポーター遺伝子は、His表現型の程度が判定できる、すなわち、His表現型を、HIS3酵素活性の特異的阻害物質である3ATの濃度を広範囲に変えて判定できることから、本法に特に適している(図17)。GAL1:HIS3を発現する細胞は、ヒスチジンを欠き高濃度の3ATを含む培地上で増殖する。この場合、DB-DP1/AD-E2F1の発現により、細胞は最高100mMの3ATを含む培地上で増殖できるようになった(図17)。この二段階選抜法では、最初の選択は0.1%の5-FOAで行い、第2の選択は10mMの3AT(ヒスチジン欠乏培地上)で行った。
【0123】
これらの実験において、DB-DP1ハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドで、SPAL10:URA3アレルを含む酵母菌株MaV103を形質転換した。形質転換体は、ロイシン欠乏培地で選択した。E2F1の配列は、AD-E2F1(E2F1のAA 159〜437)をコードするプラスミドを鋳型として用いPCRで増幅した。用いた5'側のプライマーは、ADのコード配列内に位置する配列に対応している。このプライマーの配列は、ADおよびE2F1の最初のアミノ酸(AA 159)のつなぎ目の約100塩基対上流に位置していた。用いた3'側のプライマーは、E2F1のORFの停止コドンに隣接した配列に対応している。これらのプライマーおよびこのE2F1の鋳型を用いて、増幅される配列に変異を誘発するために、様々な条件で何度かPCR増幅反応を行った。これらの何度かの反応において、PCRを用いて配列中に変異を誘発するため、マンガン濃度および/またはヌクレオチドの相対的濃度を従来の方法に従って変化させた。変異誘発の最適条件は増幅断片の長さと配列とに依存するが、適切な条件を選択することにより、単一のペトリ皿で事実上スクリーニングできる程多くの酵母コロニーから変異株を検出するのに十分高い頻度で、かつ増幅配列中に複数の変異が起こるのを回避するのに十分低い頻度で変異を誘発できる。
【0124】
ギャップ修復法:変異を起こした配列をプラスミドに組み込むため、ギャップ修復法を用いた(図18Aおよび18B)。この場合、AD-E2F1プラスミドを、E2F1配列の中ほどに位置する単一のBglII部位で制限酵素消化して線状化した。別の方法としては、E2F1の増幅のためのPCRプライマーが、プラスミドの配列およびPCR断片の配列に対応している場合には、ポリリンカー内で線状化した「空の」ADプラスミドを用いることができる。
【0125】
ギャップの修復のために、100ngの増幅したPCR断片および100ngの線状化したプラスミドで、DB-DP1を発現する酵母細胞を、酢酸リチウム法により共形質転換した。この実施例では、形質転換体はロイシンおよびトリプトファンを欠く増殖培地上で選択した。栄養豊富な増殖培地上で2日間増殖させた後、形質転換体をロイシンおよびトリプトファンを欠き0.1%の5-FOAを含む培地(Sc-L-T+5FOA培地)上でレプリカ培養することにより、第一段階の選択を行った(図19)。プレート上のコロニーの数およびマンガン濃度およびヌクレオチドの組成(すなわち変異誘発の程度)の間に相関が見いだされた。5-FOAを含みロイシンおよびトリプトファンを欠く培地上で増殖するコロニーを回収するために、ロイシンおよびトリプトファンを欠くプレート上でレプリカ培養した(図19)。
【0126】
選択の第二段階として、これらのプレート上のコロニーを、ロイシン、トリプトファン、およびヒスチジンを欠き、低濃度の3ATを含むプレート上でレプリカ培養した。これらのプレート上で増殖するコロニーは、DP-1と相互作用するE2F1の能力に弱い影響を与える変異がE2F1内に起こっていることが予測された(図19)。二段階選抜法で得られたデータを代表するデータを表1に示す。
【0127】
〔表1〕
形質転換体の数 5-FoaRの数 3ATRの数
DNAなし 0 nt nt
環状AD-E2F1 10,000 2〜3 0
空のAD(pPC86) 10,000 10,000 0
PCR断片のみ 0 nt nt
線状プラスミドのみ 500 0 0
PCR+プラスミド 10,000 500 20〜30
【0128】
選択法の第二段階で増殖したコロニーの表現型を確認するために、まずそれらのコロニーを、単一コロニーを得るためつついてSc-L-Tプレートにストリークすることにより精製した。次に、精製したコロニー4個をSc-L-Tプレートにパッチし、つづいてヒスチジンを欠き0.1%の5-FOA、10mMの3AT、およびX-galを含む培地でレプリカ培養した。この条件下でも増殖するコロニーのみをさらに解析した。最初に選択したコロニーの約90%が、この追加試験を通過した。これらの細胞から抽出したDNAを用いて大腸菌細胞を形質転換し、形質転換された細胞をアンピシリン含有培地で選択した。得られたコロニーは、DB-DP1またはAD-E2F1のいずれかのハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドを含んでいた。AD-E2F1をコードするプラスミドは、形質転換された大腸菌細胞から得たDNAを制限処理解析することにより同定した。
【0129】
AD-E2F1をコードするプラスミドは、GAL1:HIS3およびSPAL10:URA3アレルを含み、DB-DP1を発現する酵母細胞に再び導入した。形質転換された細胞はSc-L-T培地で選択した。4個の形質転換体をSc-L-T培地にパッチし、つぎにロイシン、トリプトファン、およびヒスチジンを欠き0.1%の5-FOA、10mMの3AT、およびX-galを含む培地でレプリカ培養した(図20)。陽性対照として、野生型のDB-E2F1アレルをGAL1:HIS3およびSPAL10:URA3アレル(図20、下列)を含む細胞に再導入し、および空のADプラスミドであるpPC86(すなわち、E2F1を欠くプラスミド)を陰性対照として用いた。
【0130】
AD-E2F1-34アレルは、変異アレルで期待される表現型を再試験していないプラスミドの例を示す。言い換えれば、AD-E2F1-34の増殖およびβ-gal表現型は、野生型のAD-E2F1と区別できなかった。AD-E2F1-34が野生型のアレルと同一であるとの仮説は、AD-E2F1-34の配列に何ら変異がないことが示された、AD-E2F1-34の塩基配列解析により、確認された。野生型のアレルのなかには大腸菌へのシャッフリングの過程で回収されたものもあるが、回収されたアレルの約90%は、期待通り、変異株であった。
【0131】
12個のAD-E2F1アレルの塩基配列決定を行い、12のアレルのうちの11において、E2F1をコードする1.2kbの配列中に単一のヌクレオチド置換が検出された。これらのアレルのうち6個で、変異はマークボックス2(Marked Box 2)(MB2)ドメインと呼ばれるドメインに位置していた(図21)。MB2ドメインは、18アミノ酸が伸長したものである。変異がこの18アミノ酸領域内に集中していることから、MB2ドメインはE2F1のDP1との結合に必要であることが示唆される。5個のヒトE2F蛋白質間で、蛋白質のこの領域内で高度な相同性があるという観察からも、MB2ドメインがこの役割を果たしているという推測がさらに支持される(図21、上)。
【0132】
さらに、(i)この方法で作製され同定されたさまざまな変異と、(ii)検出されたさまざまな表現型(図20)との間に相関があるという観察結果からも、二段階選抜法の有用性がさらに支持される。たとえば、E2F1とDp1との相互作用に強く影響する(すなわち、このアレルを発現する細胞は5-FOAに対して高度の耐性を示した(図20))E2F1-31アレルは、MB2ドメインの小さなインフレームの欠失に関与していた(図21)。対照的に、2つの変異を有するアレルであるE2F1-30は、相互作用に比較的穏やかな影響を与えた;このアレルを含む細胞は5-FOA上でほとんど増殖しない。このアレルでは2つの変異が見つかっているが、両方ともE2Fファミリーの異なるメンバーの間では完全には保存されていないMB2ドメインの中に位置しており(図21、上端および下端)、このことからこれらの残基は相互作用にはそれほど重要ではないことが示唆される。保存的変異を有するアレルが相互作用および増殖表現型に中程度の影響を及ぼしたという事実は、これらのデータに一致している。これらのアレル(E2F1-20、-32、および-65)においては、変異によって第284アミノ酸のイソロイシンがスレオニンまたはアスパラギンのいずれかに置換されていた。必要に応じて、変異遺伝子産物の機能をさらに調べるために、これらの変異アレルを酵母細胞に再導入することができる。
【0133】
二段階選抜法による比較的強度な変異の単離:本発明者らは、二段階選抜法の第1段階において、DP1との相互作用能を失ったE2F1の8個のアレルを単離し、塩基配列決定した(図19)。これらのアレルをそれぞれ塩基配列決定したところ、E2F1蛋白質が短くなる原因となりうるナンセンス変異、欠失、または挿入が明らかとなった。短くなった変異体の選択を避けるため、二段階選抜法の変法を用いて、DP1との結合能を失っているが、pRbとの相互作用能は保持しているようなE2F1変異アレルの同定を行った。このアプローチの基盤となる原理は、pRb結合部位がE2F1アレルのC末端ドメインに位置しているため(結合部位はE2F1の第159〜437アミノ酸の第409〜427アミノ酸を含む)、蛋白質を短くすることなくE2F1のDP1への結合が排除される変異(すなわち、pRbとの結合に影響する)は、容易に同定することができるというものである(図22)。本発明者らは、DB-pRbハイブリッド蛋白質を発現するプラスミドを構築した(pRbの第302〜928アミノ酸を用いた)。
【0134】
選択法の第一段階として、細胞をSc-L-T培地で2日間増殖させ、Sc-L-T+5-FOA(0.1%)培地でレプリカ培養した(図19の通り)。DB-DP1を発現するプラスミドは、非選択的培地上での細胞の増殖により排除され、DB-DP1プラスミドを失いAD-E2F1プラスミドを保持している細胞は、レプリカ培養した後、適当な選択培地におけるその増殖能を検定することにより同定される。DB-DP1プラスミドを失ったコロニーを同定するための別の方法は、DB-DP1プラスミド上の逆選択マーカーを発現させ、逆選択マーカーの発現が致死的となるような培地上で細胞を増殖させること(プラスミド・シャッフリング)である。たとえば、DB-DP1をコードするプラスミドを、CYH2遺伝子を発現するよう操作し、DB-DP1を発現する細胞を、シクロヘキシミド含有培地で排除することができる。選択の第2段階において、AD-E2F1含有細胞を、寒天プレート上でローン(lawn)を形成させ、DB-pRbプラスミドを含む細胞と接合させ、選択可能なレポーター遺伝子の発現を測定した。次に、得られた接合細胞について、ヒスチジン、ロイシン、およびトリプトファンを欠き10mMの3ATを含む培地上で試験した。この解析で陽性であったクローンは、変異が起こっているが、短くなってはいないE2F1アレルを有することを示す。試験した350のFoarのコロニーのうち、12個のコロニーがpRbを含む細胞との接合後に陽性であると評価された。
【0135】
この方法の別の態様において、定法を用いてE2F1以外の蛋白質をADに融合させることができる。必要に応じて、変異を起こしたい蛋白質をADではなくDBと融合することもできる。この方法で再構成される転写因子はGAL4以外のものでもよい(たとえば、LexAまたはAce1が使用できる)。加えて、レポーター遺伝子の組み合わせにより第1段階における逆選択および第2段階における正の選択(好ましくは、測定可能な表現型で)ができるのであれば、URA3およびHIS3以外のレポーター遺伝子を使用できる。
【0136】
機能的C末端タグ:この二段階選抜法で特徴づけられる変異蛋白質が、単に野生型蛋白質が短くなっただけではないようにするため、機能的C末端タグを、上記のクローンで発現される任意の蛋白質のC末端に共有結合させることができる。このような機能的C末端タグは、上記に開示した実施例のpRb結合ドメインと同様に機能すると考えられる。機能的C末端タグは蛋白質との結合ドメインを含む一連のアミノ酸である。pRb結合ドメインは、長さが18アミノ酸であり、特徴的な蛋白質の構造を劇的に変化させる可能性が低いため、特に有用である。変異蛋白質のカルボキシ末端の有無について解析するために、機能的C末端タグに特異的に結合する蛋白質を、DB(または変異蛋白質がDBと融合している場合にはAD)とのハイブリッド蛋白質として細胞に導入する。次に、このプラスミドから発現されるハイブリッド蛋白質およびハイブリッドとして存在する変異蛋白質が転写因子を再構成できるか否かを解析できる。全長蛋白質を保持する細胞を選択するために、適当な培地上での正の選択を用いることができる。
【0137】
二段階選抜法における強力な変異を同定するための、同様ではあるが別の方法としては、GAL4-AD-E2F1-GFP(緑色蛍光蛋白質)を含むトリブリッド蛋白質の構築が含まれる(チャルフィー(Chalfie)ら、1994、Science 263:802〜805)。この方法において、緑色蛍光蛋白質が機能的C末端タグとして作用し、得られる融合蛋白質のアレルであるAD-E2F1-GreenについてDB-DP1との相互作用能を解析することができる。緑色の蛍光蛋白質を発現し、ハイブリッド蛋白質がその内部で相互作用するような細胞は、それらの有する、3AT耐性、Foa耐性、β-gal陽性の表現型により同定できる。加えて、緑色蛍光蛋白質を発現する細胞は、UVライトの下で蛍光を発する。よって、この緑色蛍光蛋白質は、変異アレルの選択に使用することができる。強度のおよび軽度の変異の選択において、全長を有する相互作用蛋白質(たとえば、E2F1)の正常レベルでの発現は、細胞抽出物のウェスタンブロット解析により確認できる。
【0138】
新たに単離されたアレルが同様の表現型を示すか否かを決定するために、蛋白質結合解析を用いることができる。たとえば、各E2Fアレルについて、様々なE2Fアレルをコードする配列をPCRで増幅する、インビトロ結合解析で試験できる。適当な5'プライマーの例としては、ファージのT7ポリメラーゼプロモーター配列に対応する25塩基を有するもの、および活性化ドメインのなかでも活性化ドメインとE2F1の第159アミノ酸(すなわち、E2F1の最初のアミノ酸)との境の近傍に対応する20塩基を有するものがある。適当な3'プライマーとしては、E2F1配列の3'末端に対応するものがある。この配列を増幅したPCR産物は、インビトロ転写/翻訳系に用いて対応する蛋白質を生成させることができる。変異蛋白質は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼに結合した野生型DP1を有するハイブリッド蛋白質と結合できる。相互作用する蛋白質の組はグルタチオンアガロースビーズで精製され、ビーズから遊離され、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析される。
【0139】
補償変異(compensatory mutations)の同定:二段階選抜法で同定される変異についての情報はさらに、2つの蛋白質(本明細書ではE2F1およびDP-1)の相互作用を復活させる野生型のパートナー(例としてDP-1)の変異を作りだし、同定することにより得られる。たとえば、この方法では、E2F1結合ドメインをコードするDP-1の配列は、PCRにより増幅し変異を導入することができる。ギャップ修復法と同様に、PCR産物で次に特異的なAD-E2F1変異プラスミドを含む酵母細胞を、対応する領域内で線状化したDB-DP-1と共に共形質転換する。形質転換体を次に3ATを含みヒスチジンを欠く培地でレプリカ培養し、生き残ったコロニーをさらに解析した。各アレルを大腸菌内で増幅し、塩基配列決定し、酵母に再導入して、変異体の対が相互作用していることをその表現型で確かめる。この過程を様々な変異を有する多くのアレルについて行うことにより、蛋白質/蛋白質相互作用を示す遺伝地図を構築できる。
【0140】
「二価遺伝学(bivalent genetics)」による補償変異対の比較的大きなセットの単離:二段階選抜法および双方向組み合わせライブラリの構築までのスキームは、本明細書で「二価遺伝学(bivalent genetics)」と呼ぶ遺伝的方法が実行可能であることを示唆している。この方法を用いれば、相互作用分子をコードする遺伝子内で起こった補償変異の対を数多く選択することが可能である。接合型の異なる酵母菌株で行った2回の独立した実験では、相互作用を変化させる変異のライブラリはまず「二段階選抜法」のやり方に従って作成される。第2段階で、これら2つの変異アレルのライブラリを集団接合法により互いに反応させ、組み合わせライブラリ(combinatorial library)の構築で行うのと同様の一連の段階において補償変異(相互作用が復活される)を選択する。
特に、「二価遺伝学(bivalent genetics)」は、比較的大きな補償変異の対のセットを回収することができる方法を意味し、「二段階選抜法」は、決まった様式で起こる分子間相互作用を変化させる有益な変異を回収することができる方法を意味する。
【0141】
条件アレル(conditional alleles)の単離:また本発明により、相互作用分子の条件アレルの生産および同定が容易となる。本発明は多数の変異アレル(約1010)のスクリーニングに便利な方法を提供するため、本発明を用いれば比較的まれな条件アレルの検出が容易に行える。二段階選抜法における条件アレル(Conditional Alleles in a Two-Step Selection) (CATS)と名付けられたこの方法では、2つの相互作用分子のうちの1つに変異を起こすことにより、特定の条件(すなわち、許容的条件)下では相手、つまり野生型のアレルと相互作用するが、他の条件(すなわち、制限的条件)下では相互作用しない、条件変異アレルを単離する。多数の条件のうち、実験者が選択したいかなる条件も、許容的条件または制限的条件として使用できる。温度の違いで許容的条件と制限的条件との違いを特徴づけることが多いが、本発明では温度変化の利用のみに限定されない。たとえば、薬物の存在または非存在により許容的条件と制限的条件との違いを決定することもできる。
【0142】
CATS法は、選択可能/逆選択可能なレポーター遺伝子を用いた逆選択法の利用に依存し、この方法はより一般的な、上述の二段階選抜法に類似している。CATS法に用いた方法の概略を図23Bに示した。この方法では、目的とする相互作用分子を、転写因子のDBおよびADに別々に融合し、選択可能な/逆選択可能なレポーター遺伝子(たとえば、URA3遺伝子)を含む酵母菌株に融合する。PCR変異導入法(上述)を用いて相互作用する相手のひとつを変異させ、そのPCR産物をギャップ修復のための情報により細胞に導入した。ADおよびDBを発現するプラスミド上にある選択可能なマーカーを用いて、ギャップが修復され、野生型の相互作用分子をコードするプラスミドが維持されているものを選択することができる。
【0143】
得られた形質転換体は、次に、逆選択可能なレポーター遺伝子を発現する細胞の増殖を阻害する薬物(たとえば、5-FOA)を含む培地上でレプリカ培養し、形質転換体を制限的条件下で培養する。様々な形質転換体のうち、目的とする分子の相互作用に影響する変異アレルを含む細胞のみが、この最初の(負の)選択段階で選ばれる。
【0144】
第二の選択段階で、許容的条件下で機能する変異アレルが選択される。最初の段階で生き残った細胞は、選択可能な/逆選択可能な遺伝子を発現する細胞を正に選択するような培地に移す(たとえば、レプリカ培養により)。相互作用する分子の一方の条件アレルを含む細胞が増殖するはずである。
【0145】
次に変異アレルの回収および特徴付けを、プラスミドDNAの抽出および細菌内での増幅、続いて定法によるDNAおよびコードされている蛋白質の特徴付けにより行う。本発明で同定される条件アレルは、相互作用する2つの分子の能力を変化させることから、これらの条件アレルは相互作用に必須の残基または塩基を示している。すでに述べた通り、分子内の相互作用ドメインの同定は、医薬品の合理的な設計および生物学的プロセスの詳細な理解のために非常に重要である。
【0146】
本発明者らはCATSを用いて、cJunの、36℃ではcFosと相互作用するが30℃では相互作用しない条件アレルの単離を行った(図24)。これらのデータは、36℃では、cFosおよび変異cJunによりGAL4転写因子が再構成され、URA3を発現させて5-FOA上で増殖する細胞を死に至らしめることを示している。対照的に、条件アレルを発現する細胞は制限的な温度で増殖し、相互作用は妨げられて、細胞は5-FOA上で増殖できる。よって、これらのデータから、本発明が、普遍的な技術によりさらに特徴付けを行える分子の条件アレルを単離および同定するための簡便な方法を提供することが示された。
【0147】
その他の態様
RNA分子、DNA分子または蛋白質のいろいろな相互作用を、本発明により測定できる。たとえば、本発明で解析できる相互作用には、抗体と抗原との、レセプターとリガンドとの、制限酵素とその切断するDNA部位との、およびウイルス蛋白質と宿主の蛋白質との相互作用も含まれる。たとえば、本発明は、HIVプロウイルスで起こる蛋白質/蛋白質相互作用の同定に利用できる。この方法では、HIV蛋白質はADおよびDBハイブリッド蛋白質の形で別々に発現されるので、HIV蛋白質が完全な転写因子を再構成する能力について解析する。したがって、本発明により、全ゲノム上にコードされている全ての蛋白質/蛋白質相互作用の同定に便利な方法が提供される。HIVの蛋白質/蛋白質相互作用の同定ができれば、蛋白質/蛋白質相互作用の破壊により、治療面での有効性を付与する化合物の発見が容易になる。同様の方法で、本発明はHIV蛋白質およびヒトT細胞を活性化する蛋白質間の相互作用の同定を行うこともできる。
【0148】
本発明はまた、モノクローナル抗体の単離および特徴付けにも使用できる。この方法では、抗原/抗体結合反応を用いて転写因子の再構成を行う。この方法では、抗原およびDNA結合部分(たとえば、GAL4のDB)がハイブリッド蛋白質として発現される;イムノグロブリン重鎖および遺伝子活性化部分(たとえば、GAL4のAD)がハイブリッド蛋白質として発現される;そして、イムノグロブリン軽鎖が核局在化配列との融合蛋白質として発現される(図25)。抗原と結合する抗体の能力を、レポーター遺伝子の発現を検出することにより解析する。免疫系の性質が組み合わせによるものであることから考えて、組み合わせ的な性質をもち精製が可能な本発明は、抗体/抗原相互作用の同定に特に適している。
【0149】
必要に応じて、自己活性化能を有するハイブリッド蛋白質をコードするプラスミドを、「シャッフリング」逆選択マーカーを含むDBおよびADベクターを用いて、細胞から除去することができる。これらの遺伝子により、ハイブリッド蛋白質をコードする遺伝子が組み込まれてDBまたはADプラスミドのいずれかが失われた細胞を選択することが可能となる。シャッフリングの際には、逆選択可能なレポーター遺伝子の発現を、DBまたはADプラスミドを含まないものを選択する条件下で試験することができるので、この解析で陽性を示すクローンを以降の解析段階から除外することができる。本発明で使用した蛋白質およびRNA分子の発現に用いたプラスミドに、選択可能なマーカーを付与することにより、このプラスミドが細胞内で保持されていることを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】DNA結合蛋白認識配列を除いて異なる配列を有するプロモーターと機能的に結合した3種類のレポーター遺伝子を図示したものである。
【図2】プラスミドp2.5のマップである。
【図3】細胞にSPAL5:URA3対立遺伝子を導入して、細胞にFoas表現型を付与することができることを示す酵母細胞の写真である。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成の完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成の完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まず、5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかの中で増殖させた。
【図4】DB-cFos、AD-cJun、DB-pRb、およびAD-E2F1を発現させるために用いた遺伝子構築物を図示したものである。
【図5】GAL4転写因子と種々の相互作用性蛋白質とを細胞内で再構成した酵母細胞の写真である。再構成によってSPAL5:URA3対立遺伝子の発現が誘導され、細胞にFoasが付与される。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。これらの実験には、逆選択が可能なレポーター遺伝子SPAL9:URA3を含む酵母株MaV103を用いた。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まず、5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかで増殖させた。
【図6】転写因子を再構成する種々の相互作用性蛋白質に関する5-FOAの増殖閾値の限界を規定する酵母細胞の写真である。すなわち、cFos/cJun(0.05%)、pRb/E2F1(0.1%)、およびcJun/cJun(0.2%)であった。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まずに5-FOAを図示した濃度で含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかで増殖させた。
【図7】解離因子の非存在下において転写因子を再構成する分子を発現している細胞内において、解離化合物を発現させるために細胞プラスミドp2.5が使用可能であることを示す酵母細胞の写真である。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まずに5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかの中で増殖させた。Rb#1およびRb#2はRbをコードする2つの独立した単離物である。
【図8】いくつかの異なる増殖条件下において、種々のハイブリッド蛋白質のいずれかを発現している酵母MaV103株のさまざまな表現型を示す写真である。3ATとして示した図面は、Sc-L-T-H(ロイシン、トリプトファン、およびヒスチジンを含まない)でのものである。X-galとして示した図面は、Sc-L-T培地を含み、β-ガラクトシダーゼの基質として機能する5-ブロモ-3-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-gal)を20mg/ml含むものである。
【図9】相互作用性分子の収集物(すなわち、両方向組合せライブラリー(BCL))を作製するために用いた逆ツーハイブリッド法(reverse two-hybrid method)の一例を図示したものである。
【図10A】逆選択可能なCYH2マーカーを挿入したプラスミドを図示したものである。
【図10B】GAL4-ADまたはGAL4-DBとのハイブリッド蛋白質を作成するために用いたプラスミドを図示したものである。
【図11】MaV103を用いて実施した一方向性の(すなわち、古典的な)ツーハイブリッド・スクリーニングの結果をまとめた図である。通常のツーハイブリッド系と比較すると、陽性例の数は相対的に少ない。「再試験」とは、3つの表現型に対して陽性であったクローンを意味する。X→Yとは、Y蛋白質が同定されたXクローンの数である。
【図12】2つの自己活性化クローンを含む合成ライブラリーを含有する酵母細胞の写真である。左下の図面は、Sc-L-T-H培地を含み、3ATを含むプレートの写真である。右下の図面に示したプレートで増殖している細胞は、Sc-LからSC-l+5-FOA、SC-L-T-H+3ATにレプリカ平板培養したものである。陰性対照として、Sc-Lプレートのヒスチジンを含まない3ATプレートへの直接レプリカ培養も実施し、結果として得られた細胞を左下の図面に示した。各々のプレートの右側にある大きな斑状領域は対照細胞を示す。対照は、上から順にpPC97/pPC86、Db-pRb/AD-E2F1、Fos/Jun、および非処理Gal4である。
【図13】合成ライブラリーとの間に観察された相互作用をまとめた図である。
【図14】AD-E2F1およびDB-pRb、またはAD-E2F1およびDB-p107のハイブリッド分子のいずれかを発現している細胞において、E1Aが過剰発現している酵母細胞の写真である。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まず、5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかの中で増殖させた。E1a#2およびE1a#4は、それぞれ30〜132位のアミノ酸、ならびに30〜86位および120〜139位のアミノ酸を意味する。
【図15】変異株pRbΔ22がE2F1と相互作用する能力を持たないことを本発明の方法によって検出することができることを示す、酵母細胞の写真である。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まず、5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかの中で増殖させた。
【図16】DP1と相互作用する能力を媒介するE2F1中の残基を同定するために用いた二段階選抜法を図示したものである。
【図17】GAL1:HIS3およびSPAL9:URA3レポーター遺伝子によって「滴定可能な」表現型が付与されることを示す酵母細胞の写真である。
【図18A】PCR変異誘発およびインビボギャップ修復のために用いた方策を図示したものである。
【図18B】PCR変異誘発およびインビボギャップ修復のために用いた方策を図示したものである。
【図19】二段階選抜法の第1および第2の段階における酵母細胞の増殖を示す一連の写真である。それぞれの段階において、レプリカ平板培養(RP)によって生存コロニーを移し変えた。対照株は野生型URA3(各々の枠の右側に位置する2つの斑状領域)およびura3-53変異株(各々の枠の左側に位置する2つの斑状領域)である。細胞は図示した通り、ロイシンおよびトリプトファンを含まない合成完全培地(Sc-L-T)、ウラシルを含まない合成完全培地(Sc-ura)、またはロイシンおよびトリプトファンを含まず、5-FOAを含有する合成完全培地(Sc-L-T+FOA)のいずれかの中で増殖させた。
【図20】二段階選抜法の第2の段階において得られたE2F1対立遺伝子の表現型を示す一連の写真である。
【図21】二段階選抜法によって得られたマークボックス2(Marked Box 2)ドメインおよび種々の変異を図示したものである。
【図22】E2F1およびそれに関してすでに記載された機能的ドメインを図示したものである。
【図23A】二段階選抜法をまとめた図である。
【図23B】条件アレル(すなわち、CATS)を同定するための2段階法を図示したものである。
【図24】DB-FosおよびAD-Junの条件アレルを発現している酵母細胞の一連の写真である。この図は、Junの条件アレルが、30℃ではAD-JunおよびDR-Fosの相互作用を防止するが、36℃では防止しないことを示している。
【図25】抗原/抗体相互作用を同定するために有用な方策を図示したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用できるか否かを判定するための、以下を含む方法:
(a)第一の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が
(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第一の逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)該DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分に共有結合した該第一分析用蛋白質を含む第一ハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の該第一集団を提供すること、
(b)第二の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した第二分析用蛋白質を含む第二ハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の該第二集団を提供すること、
(c)該選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現が該細胞の増殖を阻害するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを別個に維持すること、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを混合すること、および
(e)該第一接合コンピテント細胞、該第二接合コンピテント細胞、または該接合細胞に含まれている該第一レポーター遺伝子もしくは該第二レポーター遺伝子、または別のレポーター遺伝子であり、該第一または該第二のDNA結合蛋白質認識部位のいずれかに機能的に結合されている該レポーター遺伝子の発現を、該第一分析用蛋白質が該第二分析用蛋白質と相互作用できることを示す指標として検出すること。
【請求項2】
第一分析用蛋白質が、無作為に作成されたペプチド配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第二分析用蛋白質が、無作為に作成されたペプチド配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第一分析用蛋白質が、意図的に設計された配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第二分析用蛋白質が、意図的に設計された配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
細胞集団が酵母細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
細胞集団の一つがMATa接合型であり、該細胞集団の他方がMATα接合型である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第一および第二の逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、およびGAL1からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
DNA結合部分が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質のDNA結合ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
遺伝子活性化部分が、GAL4、VP16、およびAce1からなる群より選択される蛋白質の転写活性化ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
第一および第二のDNA結合蛋白質認識部位が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対する結合部位を少なくとも1個含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第一および第二のDNA結合蛋白質認識部位のそれぞれの数が1個から20個の間である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
逆選択用遺伝子が、接合コンピテント細胞または接合細胞のゲノム中に組み込まれている、請求項1記載の方法。
【請求項15】
逆選択用レポーター遺伝子が、上流域に抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている、請求項1記載の方法。
【請求項16】
逆選択用レポーター遺伝子が、SPO13プロモーターに機能的に結合されている、請求項15記載の方法。
【請求項17】
逆選択用レポーター遺伝子の発現が、細胞増殖の阻害として検出される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
分析用化合物が、第一の分析用蛋白質と第二の分析用蛋白質との間の結合を阻害できるか否かを判定するための、以下を含む方法:
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)該DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分に共有結合した該第一分析用蛋白質を含む第一ハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iii)該分析用化合物の非存在下において該第一分析用蛋白質に結合する該第二分析用蛋白質で、遺伝子活性化部分に共有結合した該第二分析用蛋白質を含む第二ハイブリッド蛋白質を発現させる第二融合遺伝子とを含む細胞を提供すること、
(b)該逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、該細胞を該分析用化合物と接触させること、および
(c)該化合物が、該第一分析用蛋白質と該第二分析用蛋白質との間の該結合を阻害できることを示す指標として、該逆選択用レポーター遺伝子の発現の阻害を検出すること。
【請求項19】
細胞の増殖を検出することによってレポーター遺伝子の発現が検出される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
分析用化合物が蛋白質である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
核酸にコードされている該蛋白質が、核酸ライブラリーの中に含まれている、請求項20記載の方法。
【請求項22】
蛋白質が、無作為に作成されたペプチド配列を含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
第一分析用蛋白質がcJunであり、該第二分析用蛋白質がcFosおよびcJunからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項24】
第一分析用蛋白質がE2F1であり、該第二分析用蛋白質がpRBである、請求項18の方法。
【請求項25】
細胞が酵母細胞である、請求項18記載の方法。
【請求項26】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
細胞が、分析用化合物を取り込む能力を高めるよう処理されている、請求項18記載の方法。
【請求項28】
細胞が、分析用化合物を取り込む能力を高めるような変異を起こしている、請求項18記載の方法。
【請求項29】
細胞がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)のerg6変異株である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
細胞がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)のise1変異株である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
細胞がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)のISE2変異株である、請求項28記載の方法。
【請求項32】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)のsrb1変異株である、請求項28記載の方法。
【請求項33】
逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、GAL1、CYH2およびCAN1からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項34】
逆選択用レポーター遺伝子が、上流域に抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている、請求項18記載の方法。
【請求項35】
逆選択用レポーター遺伝子が、SPO13プロモーターに機能的に結合されている、請求項34記載の方法。
【請求項36】
DNA結合蛋白質認識部位が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対する結合部位を少なくとも1個含む、請求項18記載の方法。
【請求項37】
DNA結合蛋白質認識部位の数が1個から20個の間である、請求項18記載の方法。
【請求項38】
DNA結合部分が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質のDNA結合ドメインを含む、請求項18記載の方法。
【請求項39】
遺伝子活性化部分が、GAL4、VP16、およびAce1からなる群より選択される蛋白質の転写活性化ドメインを含む、請求項18記載の方法。
【請求項40】
第一の分析用蛋白質が、第二の分析用蛋白質と相互作用することができ、かつ第三の分析蛋白質とは相互作用できないことを判定するための、以下を含む方法:
(a)(i)遺伝子活性化部分に共有結合した該第一分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子と、
(ii)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合されたレポーター遺伝子と、
(iii)該第一DNA結合蛋白質認識部位には特異的に結合できるが、第二のDNA結合蛋白質認識部位には特異的に結合することができない第一のDNA結合部分に共有結合した該第二分析用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子と、
(iv)該第二DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子と、
(v)該第二DNA結合蛋白質認識部位には特異的に結合できるが、該第一DNA結合蛋白質認識部位には結合できない第二のDNA結合部分に共有結合した該第三分析用蛋白質を含む第三のハイブリッド蛋白質を発現させる第三の融合遺伝子とを含む細胞を提供すること、
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該細胞の増殖は阻害されないが、該逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、該細胞の増殖が阻害されるような条件下で、該細胞を維持すること、および
(c)該第一分析用蛋白質が、該第二分析用蛋白質と相互作用できかつ該第三分析用蛋白質とは相互作用できないことを示す指標として、該細胞の増殖と該選択用レポーター遺伝子の発現とを検出すること。
【請求項41】
第一分析用蛋白質が、該第二分析用蛋白質とは相互作用できかつ該第三分析用蛋白質とは相互作用できないことを、分析用化合物の存在下で測定する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
第一分析用蛋白質が、無作為に作成されたペプチド配列を含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
細胞が酵母細胞である、請求項40記載の方法。
【請求項44】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、GAL1、CYH2およびCAN1からなる群より選択される、請求項40記載の方法。
【請求項46】
レポーター遺伝子が、LEU2、TRP1、HIS3、およびLacZからなる群より選択される、請求項40記載の方法。
【請求項47】
逆選択用レポーター遺伝子が、上流域に抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている、請求項40記載の方法。
【請求項48】
逆選択用レポーター遺伝子が、SPO13プロモーターに機能的に結合されている、請求項40記載の方法。
【請求項49】
DNA結合蛋白質認識部位が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対する結合部位を少なくとも1個含む、請求項40記載の方法。
【請求項50】
第一および第二のDNA結合蛋白質認識部位の各々の数が1個から20個の間である、請求項40記載の方法。
【請求項51】
DNA結合部分が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質のDNA結合ドメインを含む、請求項40記載の方法。
【請求項52】
遺伝子活性化部分が、GAL4、VP16、およびAce1からなる群より選択される蛋白質の転写活性化ドメインを含む、請求項40記載の方法。
【請求項53】
第一の分析用RNA分子が分析用蛋白質と相互作用することができるか否かを判定するための、以下を含む方法:
(a)第一の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合された第一の選択用/逆選抜用レポーター遺伝子と、
(ii)第一の無作為でないRNA分子に共有結合した該分析用RNA分子を含む第一のハイブリッドRNA分子を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iii)該DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分で、無作為でない該RNA分子に特異的に結合できるRNA結合部分に共有結合したDNA結合部分を含む該第一ハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の第一の集団を提供すること、
(b)第二の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の選択用/逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した該分析用蛋白質を発現させる第三融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の第二の集団を提供すること、
(c)該選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現が、該集団の細胞の増殖を阻害するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを別個に維持すること、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを混合すること、および
(e)該分析用RNA分子が、該分析用蛋白質と相互作用できる能力を測定する指標として、該選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項54】
分析用RNA分子が、無作為に作製されたRNA配列を含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
分析用蛋白質が、無作為に作成されたペプチド配列を含む、請求項53記載の方法。
【請求項56】
能力が、分析用化合物の存在下で測定される、請求項53記載の方法。
【請求項57】
細胞集団の細胞が酵母細胞である、請求項53記載の方法。
【請求項58】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
細胞集団の一つがMATa接合型であり、細胞集団の他方がMATα接合型である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
第一および第二の逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、およびGAL1からなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項61】
DNA結合部分が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質のDNA結合ドメインを含む、請求項53記載の方法。
【請求項62】
遺伝子活性化部分が、GAL4およびAce1からなる群より選択される蛋白質の転写活性化ドメインを含む、請求項53記載の方法。
【請求項63】
第一および第二のDNA結合蛋白質認識部位が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対する結合部位を少なくとも1個含む、請求項53記載の方法。
【請求項64】
DNA結合蛋白質認識部位の各々の数が1個から20個の間である、請求項53記載の方法。
【請求項65】
逆選択用レポーター遺伝子が、上流域に抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている、請求項53記載の方法。
【請求項66】
逆選択用レポーター遺伝子が、SPO13プロモーターに機能的に結合されている、請求項65記載の方法。
【請求項67】
逆選択用レポーター遺伝子の発現が、細胞増殖の阻害として検出される、請求項53記載の方法。
【請求項68】
第一の分析用RNA分子が第二の分析用RNA分子と相互作用できるか否かを判定するための、以下を含む方法:
(a)第一の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合された第一の選択用/逆選抜用レポーター遺伝子と、
(ii)第一の無作為でないRNA分子に共有結合した該第一分析用RNA分子を含む、第一のハイブリッドRNA分子を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iii)該DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分で、該第一の無作為でないRNA分子に特異的に結合できる第一のRNA結合部分に共有結合したDNA結合部分を含む第一ハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の第一集団を提供すること、
(b)第二の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の選択用/逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)第二の無作為でないRNA分子に共有結合した該第二分析用RNA分子を含む第二のハイブリッドRNA分子を発現させる第三の融合遺伝子と、
(iii)該第二の無作為でないRNA分子に特異的に結合することができる第二のRNA結合部分に共有結合した遺伝子活性化部分を発現させる第四の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の第二集団を提供すること、
(c)該逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを別個に維持すること、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを混合すること、および
(e)該第一分析用RNA分子が、該第二分析用RNA分子と相互作用できることを測定する指標として、該逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項69】
第一分析用RNA分子が、無作為に作製されたRNA配列を含む、請求項68記載の方法。
【請求項70】
第二分析用RNA分子が、無作為に作製されたRNA配列を含む、請求項68記載の方法。
【請求項71】
第一および第二のRNA分子が相互作用できることが、分析用化合物の存在下で測定される、請求項68記載の方法。
【請求項72】
細胞集団の細胞が酵母細胞である、請求項68記載の方法。
【請求項73】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)である、請求項72記載の方法。
【請求項74】
細胞集団の一つがMATa接合型であり、細胞集団の他方がMATα接合型である、請求項73記載の方法。
【請求項75】
第一および第二の逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、およびGAL1からなる群より選択される、請求項68記載の方法。
【請求項76】
DNA結合部分が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質のDNA結合ドメインを含む、請求項68記載の方法。
【請求項77】
遺伝子活性化部分が、GAL4、VP16、およびAce1からなる群より選択される蛋白質の転写活性化ドメインを含む、請求項68記載の方法。
【請求項78】
第一および第二のDNA結合蛋白質認識部位が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対する結合部位を少なくとも1個含む、請求項68記載の方法。
【請求項79】
DNA結合蛋白質認識部位の数が1個から20個の間である、請求項68記載の方法。
【請求項80】
逆選択用レポーター遺伝子が、上流域に抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている、請求項68記載の方法。
【請求項81】
逆選択用レポーター遺伝子が、SPO13プロモーターに機能的に結合されている、請求項80記載の方法。
【請求項82】
逆選択用レポーター遺伝子の発現が、細胞増殖の阻害として検出される、請求項68記載の方法。
【請求項83】
分析用DNA分子が、分析用蛋白質と相互作用できるか否かを判定するための、以下を含む方法:
(a)(i)該分析用DNA分子に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した該分析用蛋白質を発現させる融合遺伝子とを含む細胞を提供すること、および
(b)該分析用DNA分子が該分析用蛋白質と相互作用できることを示す指標として、該逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項84】
(i)分析用DNAの配列が、無作為に作製されたものであり、(ii)蛋白質が、無作為に作製されたペプチド配列を含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
参照用蛋白質が分析用蛋白質と相互作用する能力に影響するような、参照用蛋白質における突然変異を同定するための、以下を含む方法:
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用レポーター遺伝子と、
(iii)該分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iv)該参照用蛋白質をコードする遺伝子の変異アレルの核酸ライブラリー中にコードされている候補変異参照蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現する第二の融合遺伝子とを含み、
該第一および該第二のハイブリッド蛋白質の一方が、DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分をさらに含み、該第一および該第二のハイブリッド蛋白質の他方が、遺伝子活性化部分をさらに含む細胞を提供すること、
(b)該参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じか、それよりも高いレベルで該逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、該細胞の増殖を阻害するが、該参照用蛋白質で得られる発現レベルよりも低いレベルで該逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、該細胞の増殖が阻害されないような条件下で、細胞を維持すること、ならびに
(c)別の段階において、該逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、該細胞の増殖が阻害されないような条件下で該細胞を維持し、かつ該第一分析用蛋白質が、候補となる変異参照用蛋白質と相互作用できる能力を示す指標として、該選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項86】
参照用蛋白質が第一分析用蛋白質と相互作用できる能力に影響を与えるような、参照用蛋白質における突然変異を示すものとして、該変異候補蛋白質の配列を、該参照用蛋白質の配列と比較することをさらに含む、請求項85記載の方法。
【請求項87】
第二融合遺伝子が機能的C末端タグをコードし、該選択用レポーター遺伝子の発現が該機能的C末端タグの存在を示すものとして測定される、請求項85記載の方法。
【請求項88】
機能的C末端タグが、pRBに対する結合部位を含む、請求項87記載の方法。
【請求項89】
第一の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用する能力が低下するが、第二の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用することができるような、参照用蛋白質の条件的突然変異を同定するための、以下を含む方法:
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用レポーター遺伝子と、
(iii)参照用蛋白質をコードする遺伝子の変異アレルの核酸ライブラリー中にコードされている、候補となる変異参照用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iv)該第二蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子とを含み、
該第一または該第二のハイブリッド蛋白質の一方が、該DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分を含み、かつ
該第一または該第二のハイブリッド蛋白質の他方が、遺伝子活性化部分を含む細胞を提供すること、
(b)該参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じかそれよりも高いレベルで該逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、該細胞の増殖を阻害するが、該参照用蛋白質で得られる発現レベルよりも低いレベルで該逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、 該細胞の増殖が阻害されないような条件下で、該細胞を維持すること、
(c)別の段階において、該逆選択用レポーター遺伝子の発現によって該細胞の増殖が阻害されないような条件下で該細胞を維持し、かつ該候補変異蛋白質が該第二蛋白質と相互作用できることを示す指標として、該選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること、ならびに
(d)段階(c)の条件下での該選択用レポーター遺伝子の発現と、段階(d)の条件下での該選択用レポーター遺伝子の非発現とにより、条件的変異体であることが示されるような、別の段階において、一つのパラメータ以外は段階(c)と同じ条件で該細胞を維持し、該候補変異蛋白質が該第二蛋白質と相互作用することができることを示す指標として、該選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項90】
第一の一連の条件下では該第二蛋白質と相互作用する能力が低下するが、第二の一連の条件下では該第二蛋白質と相互作用できるような該参照用蛋白質の変異体を同定するための手段として、該候補変異蛋白質の配列を該参照用蛋白質の配列と比較することをさらに含む、請求項89記載の方法。
【請求項91】
パラメータが、(i)温度、および(ii)薬物の存在からなる群より選択される、請求項89記載の方法。
【請求項92】
第一および第二の変異参照用蛋白質が、互いに相互作用できるが、それぞれ第二および第一の参照蛋白質とは相互作用できないような、第一および第二の参照用蛋白質における補償変異(compensatory mutation)を同定するための、以下を含む方法:
(a)第一の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第一の逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第一の選択用レポーター遺伝子と、
(iii)遺伝子活性化部分に共有結合し、該第一参照用蛋白質の変異アレルの核酸ライブラリー中にコードされている該第一変異候補蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iv)第一の逆選択用マーカー、およびDNA結合部分に共有結合した該第二参照用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子を含むプラスミドとを含む、接合コンピテント細胞の第一集団を提供すること、
(b)第二の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の選択用レポーター遺伝子と、
(iii)DNA結合部分に共有結合し、該第二参照用蛋白質の変異アレルの核酸ライブラリー中にコードされている該第二変異参照用候補蛋白質を含む第三のハイブリッド蛋白質を発現させる第三の融合遺伝子と、
(iv)第二の逆選択用マーカー、および遺伝子活性化部分に共有結合した該第一参照用蛋白質を含む第四のハイブリッド蛋白質を発現させる第四の融合遺伝子を含むプラスミドとを含む、接合コンピテント細胞の第二集団を提供すること、
(c)該第一および該第二の参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じかそれよりも高いレベルで該逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、該細胞の増殖が阻害されるような条件下で、別個に、該第一および該第二の接合コンピテント細胞集団を維持すること、
(d)該逆選択用マーカーの発現によって、該細胞の増殖が阻害されるような条件下で、該第一および該第二の接合コンピテント細胞集団を維持すること、
(e)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを維持すること、
(f)該第一および該第二の候補変異蛋白質は互いに相互作用できるが、該第一および該第二の参照用蛋白質とは相互作用できないことを示す指標として、該選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項93】
第一および該第二の参照用蛋白質における補償変異(compensatory mutation)を同定するための手段として、互いに相互作用する該第一および該第二の候補変異蛋白質の配列を、該第一および該第二の参照用蛋白質の配列と比較することをさらに含む、請求項92記載の方法。
【請求項94】
(i)上流域の抑制配列と(ii)DNA結合蛋白質認識部位とを含むプロモーターに機能的に結合している逆選択用レポーター遺伝子を、ゲノム中に組み込んだ酵母細胞において、
(i)該逆選択用レポーター遺伝子によってコードされている蛋白質と実質的に同一な、天然の蛋白質、および
(ii)それが発現するとその蛋白質を有する細胞に増殖上の利点が付与されるような、少なくとも1個の天然の蛋白質を、含まない酵母細胞。
【請求項95】
逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、GAL1、CYH2およびCAN1からなる群より選択される、請求項94記載の酵母細胞。
【請求項96】
プロモーターがSPO13プロモーターで、該プロモーターが、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対するDNA結合蛋白質認識部位を少なくとも1個含む、請求項94記載の酵母細胞。
【請求項97】
MaV103である、請求項96記載の酵母細胞。
【請求項98】
MaV203である、請求項96記載の酵母細胞。
【請求項99】
MaV99である、請求項96記載の酵母細胞。
【請求項100】
i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)酵母のプロモーター、(iv)核局在をコードするシグナル配列、および(v)細菌の複製開始点を含む遺伝子構築物。
【請求項101】
p2.5である、請求項100記載の遺伝子構築物。
【請求項102】
(i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)プロモーター、(iv)細菌の複製開始点、(v)逆選択マーカー、および(vi)DNA結合部分を発現させる配列を含む遺伝子構築物。
【請求項103】
p97.CYH2である、請求項102記載の遺伝子構築物。
【請求項104】
(i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)プロモーター、(iv)細菌の複製開始点、(v)逆選択マーカー、および(vi)遺伝子活性化部分を発現させる配列を含む遺伝子構築物。
【請求項105】
pMV257である、請求項104記載の遺伝子構築物。
【請求項106】
(i)上流域の抑制配列および(ii)DNA結合蛋白質認識部位を含むプロモーターに機能的に結合された逆選択用レポーター遺伝子を含む遺伝子構築物。
【請求項107】
SPAL:URA3である、請求項106記載の遺伝子構築物。
【請求項1】
第一の分析用蛋白質が第二の分析用蛋白質と相互作用できるか否かを判定するための、以下を含む方法:
(a)第一の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が
(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第一の逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)該DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分に共有結合した該第一分析用蛋白質を含む第一ハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の該第一集団を提供すること、
(b)第二の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した第二分析用蛋白質を含む第二ハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の該第二集団を提供すること、
(c)該選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現が該細胞の増殖を阻害するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを別個に維持すること、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを混合すること、および
(e)該第一接合コンピテント細胞、該第二接合コンピテント細胞、または該接合細胞に含まれている該第一レポーター遺伝子もしくは該第二レポーター遺伝子、または別のレポーター遺伝子であり、該第一または該第二のDNA結合蛋白質認識部位のいずれかに機能的に結合されている該レポーター遺伝子の発現を、該第一分析用蛋白質が該第二分析用蛋白質と相互作用できることを示す指標として検出すること。
【請求項2】
第一分析用蛋白質が、無作為に作成されたペプチド配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第二分析用蛋白質が、無作為に作成されたペプチド配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第一分析用蛋白質が、意図的に設計された配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第二分析用蛋白質が、意図的に設計された配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
細胞集団が酵母細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
細胞集団の一つがMATa接合型であり、該細胞集団の他方がMATα接合型である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第一および第二の逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、およびGAL1からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
DNA結合部分が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質のDNA結合ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
遺伝子活性化部分が、GAL4、VP16、およびAce1からなる群より選択される蛋白質の転写活性化ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
第一および第二のDNA結合蛋白質認識部位が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対する結合部位を少なくとも1個含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第一および第二のDNA結合蛋白質認識部位のそれぞれの数が1個から20個の間である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
逆選択用遺伝子が、接合コンピテント細胞または接合細胞のゲノム中に組み込まれている、請求項1記載の方法。
【請求項15】
逆選択用レポーター遺伝子が、上流域に抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている、請求項1記載の方法。
【請求項16】
逆選択用レポーター遺伝子が、SPO13プロモーターに機能的に結合されている、請求項15記載の方法。
【請求項17】
逆選択用レポーター遺伝子の発現が、細胞増殖の阻害として検出される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
分析用化合物が、第一の分析用蛋白質と第二の分析用蛋白質との間の結合を阻害できるか否かを判定するための、以下を含む方法:
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)該DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分に共有結合した該第一分析用蛋白質を含む第一ハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iii)該分析用化合物の非存在下において該第一分析用蛋白質に結合する該第二分析用蛋白質で、遺伝子活性化部分に共有結合した該第二分析用蛋白質を含む第二ハイブリッド蛋白質を発現させる第二融合遺伝子とを含む細胞を提供すること、
(b)該逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、該細胞を該分析用化合物と接触させること、および
(c)該化合物が、該第一分析用蛋白質と該第二分析用蛋白質との間の該結合を阻害できることを示す指標として、該逆選択用レポーター遺伝子の発現の阻害を検出すること。
【請求項19】
細胞の増殖を検出することによってレポーター遺伝子の発現が検出される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
分析用化合物が蛋白質である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
核酸にコードされている該蛋白質が、核酸ライブラリーの中に含まれている、請求項20記載の方法。
【請求項22】
蛋白質が、無作為に作成されたペプチド配列を含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
第一分析用蛋白質がcJunであり、該第二分析用蛋白質がcFosおよびcJunからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項24】
第一分析用蛋白質がE2F1であり、該第二分析用蛋白質がpRBである、請求項18の方法。
【請求項25】
細胞が酵母細胞である、請求項18記載の方法。
【請求項26】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
細胞が、分析用化合物を取り込む能力を高めるよう処理されている、請求項18記載の方法。
【請求項28】
細胞が、分析用化合物を取り込む能力を高めるような変異を起こしている、請求項18記載の方法。
【請求項29】
細胞がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)のerg6変異株である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
細胞がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)のise1変異株である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
細胞がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)のISE2変異株である、請求項28記載の方法。
【請求項32】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)のsrb1変異株である、請求項28記載の方法。
【請求項33】
逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、GAL1、CYH2およびCAN1からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項34】
逆選択用レポーター遺伝子が、上流域に抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている、請求項18記載の方法。
【請求項35】
逆選択用レポーター遺伝子が、SPO13プロモーターに機能的に結合されている、請求項34記載の方法。
【請求項36】
DNA結合蛋白質認識部位が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対する結合部位を少なくとも1個含む、請求項18記載の方法。
【請求項37】
DNA結合蛋白質認識部位の数が1個から20個の間である、請求項18記載の方法。
【請求項38】
DNA結合部分が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質のDNA結合ドメインを含む、請求項18記載の方法。
【請求項39】
遺伝子活性化部分が、GAL4、VP16、およびAce1からなる群より選択される蛋白質の転写活性化ドメインを含む、請求項18記載の方法。
【請求項40】
第一の分析用蛋白質が、第二の分析用蛋白質と相互作用することができ、かつ第三の分析蛋白質とは相互作用できないことを判定するための、以下を含む方法:
(a)(i)遺伝子活性化部分に共有結合した該第一分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子と、
(ii)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合されたレポーター遺伝子と、
(iii)該第一DNA結合蛋白質認識部位には特異的に結合できるが、第二のDNA結合蛋白質認識部位には特異的に結合することができない第一のDNA結合部分に共有結合した該第二分析用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子と、
(iv)該第二DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子と、
(v)該第二DNA結合蛋白質認識部位には特異的に結合できるが、該第一DNA結合蛋白質認識部位には結合できない第二のDNA結合部分に共有結合した該第三分析用蛋白質を含む第三のハイブリッド蛋白質を発現させる第三の融合遺伝子とを含む細胞を提供すること、
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該細胞の増殖は阻害されないが、該逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、該細胞の増殖が阻害されるような条件下で、該細胞を維持すること、および
(c)該第一分析用蛋白質が、該第二分析用蛋白質と相互作用できかつ該第三分析用蛋白質とは相互作用できないことを示す指標として、該細胞の増殖と該選択用レポーター遺伝子の発現とを検出すること。
【請求項41】
第一分析用蛋白質が、該第二分析用蛋白質とは相互作用できかつ該第三分析用蛋白質とは相互作用できないことを、分析用化合物の存在下で測定する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
第一分析用蛋白質が、無作為に作成されたペプチド配列を含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
細胞が酵母細胞である、請求項40記載の方法。
【請求項44】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、GAL1、CYH2およびCAN1からなる群より選択される、請求項40記載の方法。
【請求項46】
レポーター遺伝子が、LEU2、TRP1、HIS3、およびLacZからなる群より選択される、請求項40記載の方法。
【請求項47】
逆選択用レポーター遺伝子が、上流域に抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている、請求項40記載の方法。
【請求項48】
逆選択用レポーター遺伝子が、SPO13プロモーターに機能的に結合されている、請求項40記載の方法。
【請求項49】
DNA結合蛋白質認識部位が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対する結合部位を少なくとも1個含む、請求項40記載の方法。
【請求項50】
第一および第二のDNA結合蛋白質認識部位の各々の数が1個から20個の間である、請求項40記載の方法。
【請求項51】
DNA結合部分が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質のDNA結合ドメインを含む、請求項40記載の方法。
【請求項52】
遺伝子活性化部分が、GAL4、VP16、およびAce1からなる群より選択される蛋白質の転写活性化ドメインを含む、請求項40記載の方法。
【請求項53】
第一の分析用RNA分子が分析用蛋白質と相互作用することができるか否かを判定するための、以下を含む方法:
(a)第一の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合された第一の選択用/逆選抜用レポーター遺伝子と、
(ii)第一の無作為でないRNA分子に共有結合した該分析用RNA分子を含む第一のハイブリッドRNA分子を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iii)該DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分で、無作為でない該RNA分子に特異的に結合できるRNA結合部分に共有結合したDNA結合部分を含む該第一ハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の第一の集団を提供すること、
(b)第二の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の選択用/逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した該分析用蛋白質を発現させる第三融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の第二の集団を提供すること、
(c)該選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現が、該集団の細胞の増殖を阻害するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを別個に維持すること、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを混合すること、および
(e)該分析用RNA分子が、該分析用蛋白質と相互作用できる能力を測定する指標として、該選択用/逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項54】
分析用RNA分子が、無作為に作製されたRNA配列を含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
分析用蛋白質が、無作為に作成されたペプチド配列を含む、請求項53記載の方法。
【請求項56】
能力が、分析用化合物の存在下で測定される、請求項53記載の方法。
【請求項57】
細胞集団の細胞が酵母細胞である、請求項53記載の方法。
【請求項58】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
細胞集団の一つがMATa接合型であり、細胞集団の他方がMATα接合型である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
第一および第二の逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、およびGAL1からなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項61】
DNA結合部分が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質のDNA結合ドメインを含む、請求項53記載の方法。
【請求項62】
遺伝子活性化部分が、GAL4およびAce1からなる群より選択される蛋白質の転写活性化ドメインを含む、請求項53記載の方法。
【請求項63】
第一および第二のDNA結合蛋白質認識部位が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対する結合部位を少なくとも1個含む、請求項53記載の方法。
【請求項64】
DNA結合蛋白質認識部位の各々の数が1個から20個の間である、請求項53記載の方法。
【請求項65】
逆選択用レポーター遺伝子が、上流域に抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている、請求項53記載の方法。
【請求項66】
逆選択用レポーター遺伝子が、SPO13プロモーターに機能的に結合されている、請求項65記載の方法。
【請求項67】
逆選択用レポーター遺伝子の発現が、細胞増殖の阻害として検出される、請求項53記載の方法。
【請求項68】
第一の分析用RNA分子が第二の分析用RNA分子と相互作用できるか否かを判定するための、以下を含む方法:
(a)第一の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)第一のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合された第一の選択用/逆選抜用レポーター遺伝子と、
(ii)第一の無作為でないRNA分子に共有結合した該第一分析用RNA分子を含む、第一のハイブリッドRNA分子を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iii)該DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分で、該第一の無作為でないRNA分子に特異的に結合できる第一のRNA結合部分に共有結合したDNA結合部分を含む第一ハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の第一集団を提供すること、
(b)第二の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)第二のDNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の選択用/逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)第二の無作為でないRNA分子に共有結合した該第二分析用RNA分子を含む第二のハイブリッドRNA分子を発現させる第三の融合遺伝子と、
(iii)該第二の無作為でないRNA分子に特異的に結合することができる第二のRNA結合部分に共有結合した遺伝子活性化部分を発現させる第四の融合遺伝子とを含む、接合コンピテント細胞の第二集団を提供すること、
(c)該逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、細胞の増殖が阻害されるような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを別個に維持すること、
(d)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを混合すること、および
(e)該第一分析用RNA分子が、該第二分析用RNA分子と相互作用できることを測定する指標として、該逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項69】
第一分析用RNA分子が、無作為に作製されたRNA配列を含む、請求項68記載の方法。
【請求項70】
第二分析用RNA分子が、無作為に作製されたRNA配列を含む、請求項68記載の方法。
【請求項71】
第一および第二のRNA分子が相互作用できることが、分析用化合物の存在下で測定される、請求項68記載の方法。
【請求項72】
細胞集団の細胞が酵母細胞である、請求項68記載の方法。
【請求項73】
酵母がサッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)である、請求項72記載の方法。
【請求項74】
細胞集団の一つがMATa接合型であり、細胞集団の他方がMATα接合型である、請求項73記載の方法。
【請求項75】
第一および第二の逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、およびGAL1からなる群より選択される、請求項68記載の方法。
【請求項76】
DNA結合部分が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質のDNA結合ドメインを含む、請求項68記載の方法。
【請求項77】
遺伝子活性化部分が、GAL4、VP16、およびAce1からなる群より選択される蛋白質の転写活性化ドメインを含む、請求項68記載の方法。
【請求項78】
第一および第二のDNA結合蛋白質認識部位が、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対する結合部位を少なくとも1個含む、請求項68記載の方法。
【請求項79】
DNA結合蛋白質認識部位の数が1個から20個の間である、請求項68記載の方法。
【請求項80】
逆選択用レポーター遺伝子が、上流域に抑制配列を有するプロモーターに機能的に結合されている、請求項68記載の方法。
【請求項81】
逆選択用レポーター遺伝子が、SPO13プロモーターに機能的に結合されている、請求項80記載の方法。
【請求項82】
逆選択用レポーター遺伝子の発現が、細胞増殖の阻害として検出される、請求項68記載の方法。
【請求項83】
分析用DNA分子が、分析用蛋白質と相互作用できるか否かを判定するための、以下を含む方法:
(a)(i)該分析用DNA分子に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)遺伝子活性化部分に共有結合した該分析用蛋白質を発現させる融合遺伝子とを含む細胞を提供すること、および
(b)該分析用DNA分子が該分析用蛋白質と相互作用できることを示す指標として、該逆選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項84】
(i)分析用DNAの配列が、無作為に作製されたものであり、(ii)蛋白質が、無作為に作製されたペプチド配列を含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
参照用蛋白質が分析用蛋白質と相互作用する能力に影響するような、参照用蛋白質における突然変異を同定するための、以下を含む方法:
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用レポーター遺伝子と、
(iii)該分析用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iv)該参照用蛋白質をコードする遺伝子の変異アレルの核酸ライブラリー中にコードされている候補変異参照蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現する第二の融合遺伝子とを含み、
該第一および該第二のハイブリッド蛋白質の一方が、DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分をさらに含み、該第一および該第二のハイブリッド蛋白質の他方が、遺伝子活性化部分をさらに含む細胞を提供すること、
(b)該参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じか、それよりも高いレベルで該逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、該細胞の増殖を阻害するが、該参照用蛋白質で得られる発現レベルよりも低いレベルで該逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、該細胞の増殖が阻害されないような条件下で、細胞を維持すること、ならびに
(c)別の段階において、該逆選択用レポーター遺伝子の発現によって、該細胞の増殖が阻害されないような条件下で該細胞を維持し、かつ該第一分析用蛋白質が、候補となる変異参照用蛋白質と相互作用できる能力を示す指標として、該選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項86】
参照用蛋白質が第一分析用蛋白質と相互作用できる能力に影響を与えるような、参照用蛋白質における突然変異を示すものとして、該変異候補蛋白質の配列を、該参照用蛋白質の配列と比較することをさらに含む、請求項85記載の方法。
【請求項87】
第二融合遺伝子が機能的C末端タグをコードし、該選択用レポーター遺伝子の発現が該機能的C末端タグの存在を示すものとして測定される、請求項85記載の方法。
【請求項88】
機能的C末端タグが、pRBに対する結合部位を含む、請求項87記載の方法。
【請求項89】
第一の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用する能力が低下するが、第二の一連の条件下では、第二の蛋白質と相互作用することができるような、参照用蛋白質の条件的突然変異を同定するための、以下を含む方法:
(a)(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した選択用レポーター遺伝子と、
(iii)参照用蛋白質をコードする遺伝子の変異アレルの核酸ライブラリー中にコードされている、候補となる変異参照用蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iv)該第二蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子とを含み、
該第一または該第二のハイブリッド蛋白質の一方が、該DNA結合蛋白質認識部位に特異的に結合できるDNA結合部分を含み、かつ
該第一または該第二のハイブリッド蛋白質の他方が、遺伝子活性化部分を含む細胞を提供すること、
(b)該参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じかそれよりも高いレベルで該逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、該細胞の増殖を阻害するが、該参照用蛋白質で得られる発現レベルよりも低いレベルで該逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、 該細胞の増殖が阻害されないような条件下で、該細胞を維持すること、
(c)別の段階において、該逆選択用レポーター遺伝子の発現によって該細胞の増殖が阻害されないような条件下で該細胞を維持し、かつ該候補変異蛋白質が該第二蛋白質と相互作用できることを示す指標として、該選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること、ならびに
(d)段階(c)の条件下での該選択用レポーター遺伝子の発現と、段階(d)の条件下での該選択用レポーター遺伝子の非発現とにより、条件的変異体であることが示されるような、別の段階において、一つのパラメータ以外は段階(c)と同じ条件で該細胞を維持し、該候補変異蛋白質が該第二蛋白質と相互作用することができることを示す指標として、該選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項90】
第一の一連の条件下では該第二蛋白質と相互作用する能力が低下するが、第二の一連の条件下では該第二蛋白質と相互作用できるような該参照用蛋白質の変異体を同定するための手段として、該候補変異蛋白質の配列を該参照用蛋白質の配列と比較することをさらに含む、請求項89記載の方法。
【請求項91】
パラメータが、(i)温度、および(ii)薬物の存在からなる群より選択される、請求項89記載の方法。
【請求項92】
第一および第二の変異参照用蛋白質が、互いに相互作用できるが、それぞれ第二および第一の参照蛋白質とは相互作用できないような、第一および第二の参照用蛋白質における補償変異(compensatory mutation)を同定するための、以下を含む方法:
(a)第一の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第一の逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第一の選択用レポーター遺伝子と、
(iii)遺伝子活性化部分に共有結合し、該第一参照用蛋白質の変異アレルの核酸ライブラリー中にコードされている該第一変異候補蛋白質を含む第一のハイブリッド蛋白質を発現させる第一の融合遺伝子と、
(iv)第一の逆選択用マーカー、およびDNA結合部分に共有結合した該第二参照用蛋白質を含む第二のハイブリッド蛋白質を発現させる第二の融合遺伝子を含むプラスミドとを含む、接合コンピテント細胞の第一集団を提供すること、
(b)第二の接合コンピテント細胞集団の細胞の大多数が、
(i)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の逆選択用レポーター遺伝子と、
(ii)DNA結合蛋白質認識部位に機能的に結合した第二の選択用レポーター遺伝子と、
(iii)DNA結合部分に共有結合し、該第二参照用蛋白質の変異アレルの核酸ライブラリー中にコードされている該第二変異参照用候補蛋白質を含む第三のハイブリッド蛋白質を発現させる第三の融合遺伝子と、
(iv)第二の逆選択用マーカー、および遺伝子活性化部分に共有結合した該第一参照用蛋白質を含む第四のハイブリッド蛋白質を発現させる第四の融合遺伝子を含むプラスミドとを含む、接合コンピテント細胞の第二集団を提供すること、
(c)該第一および該第二の参照用蛋白質で得られる発現レベルと同じかそれよりも高いレベルで該逆選択用レポーター遺伝子を発現させると、該細胞の増殖が阻害されるような条件下で、別個に、該第一および該第二の接合コンピテント細胞集団を維持すること、
(d)該逆選択用マーカーの発現によって、該細胞の増殖が阻害されるような条件下で、該第一および該第二の接合コンピテント細胞集団を維持すること、
(e)接合細胞の形成を促進するような条件下で、接合コンピテント細胞の該第一集団と該第二集団とを維持すること、
(f)該第一および該第二の候補変異蛋白質は互いに相互作用できるが、該第一および該第二の参照用蛋白質とは相互作用できないことを示す指標として、該選択用レポーター遺伝子の発現を検出すること。
【請求項93】
第一および該第二の参照用蛋白質における補償変異(compensatory mutation)を同定するための手段として、互いに相互作用する該第一および該第二の候補変異蛋白質の配列を、該第一および該第二の参照用蛋白質の配列と比較することをさらに含む、請求項92記載の方法。
【請求項94】
(i)上流域の抑制配列と(ii)DNA結合蛋白質認識部位とを含むプロモーターに機能的に結合している逆選択用レポーター遺伝子を、ゲノム中に組み込んだ酵母細胞において、
(i)該逆選択用レポーター遺伝子によってコードされている蛋白質と実質的に同一な、天然の蛋白質、および
(ii)それが発現するとその蛋白質を有する細胞に増殖上の利点が付与されるような、少なくとも1個の天然の蛋白質を、含まない酵母細胞。
【請求項95】
逆選択用レポーター遺伝子が、URA3、LYS2、GAL1、CYH2およびCAN1からなる群より選択される、請求項94記載の酵母細胞。
【請求項96】
プロモーターがSPO13プロモーターで、該プロモーターが、GAL4、LexA、およびAce1からなる群より選択される蛋白質に対するDNA結合蛋白質認識部位を少なくとも1個含む、請求項94記載の酵母細胞。
【請求項97】
MaV103である、請求項96記載の酵母細胞。
【請求項98】
MaV203である、請求項96記載の酵母細胞。
【請求項99】
MaV99である、請求項96記載の酵母細胞。
【請求項100】
i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)酵母のプロモーター、(iv)核局在をコードするシグナル配列、および(v)細菌の複製開始点を含む遺伝子構築物。
【請求項101】
p2.5である、請求項100記載の遺伝子構築物。
【請求項102】
(i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)プロモーター、(iv)細菌の複製開始点、(v)逆選択マーカー、および(vi)DNA結合部分を発現させる配列を含む遺伝子構築物。
【請求項103】
p97.CYH2である、請求項102記載の遺伝子構築物。
【請求項104】
(i)酵母の複製開始点、(ii)選択マーカー、(iii)プロモーター、(iv)細菌の複製開始点、(v)逆選択マーカー、および(vi)遺伝子活性化部分を発現させる配列を含む遺伝子構築物。
【請求項105】
pMV257である、請求項104記載の遺伝子構築物。
【請求項106】
(i)上流域の抑制配列および(ii)DNA結合蛋白質認識部位を含むプロモーターに機能的に結合された逆選択用レポーター遺伝子を含む遺伝子構築物。
【請求項107】
SPAL:URA3である、請求項106記載の遺伝子構築物。
【図1】
【図2】
【図4】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図13】
【図16】
【図18A】
【図18B】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図25】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図14】
【図15】
【図17】
【図19】
【図20】
【図24】
【図2】
【図4】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図13】
【図16】
【図18A】
【図18B】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図25】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図14】
【図15】
【図17】
【図19】
【図20】
【図24】
【公開番号】特開2007−75107(P2007−75107A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242341(P2006−242341)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【分割の表示】特願平8−531174の分割
【原出願日】平成8年4月11日(1996.4.11)
【出願人】(505164025)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (20)
【出願人】(505211662)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【分割の表示】特願平8−531174の分割
【原出願日】平成8年4月11日(1996.4.11)
【出願人】(505164025)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (20)
【出願人】(505211662)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
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