説明

透光性成形体の製造装置

【課題】多数の光ファイバーを埋設して透過させる光量を多くしながら、簡単かつ容易に、しかも能率よく透光性成形体を製造する。
【解決手段】透光性成形体の製造装置は、複数のロール10を平行に配置してなる一対のロールユニット1と、一対のロールユニット1を互いに離れる方向と接近する方向に移動させる往復運動機構2とを備える。製造装置は、往復運動機構2が、一対のロールユニット1を互いに接近させて一方のロールユニット1のロール10を他方のロールユニット1のロール10の隙間12に通過させて、一対のロールユニット1の間に光ファイバー51を挿通する挿通領域5を設ける状態で、挿通領域5に複数の光ファイバー51を通過させて、互いにロールユニット1を離す位置に移動して、成形領域4に複数の光ファイバー51を配置して、成形領域4に成形材52を充填して、光ファイバー51を埋設してなる透光性成形体50を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート、モルタル、プラスチックなどの成形体の対向面に貫通するように光ファイバーを埋設し、光ファイバーで対向面に光を透過させるようにしてなる透光性成形体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透光性成形体とその製造装置は開発されている。(特許文献1参照)
この透光性成形体は、図1に示す装置で製造される。この製造装置は、多数の貫通孔93を設けたスペーサ92を平行に配置し、スペーサ92の貫通孔93に光ファイバー91を通過させて、対向するスペーサ92の間を成形領域94とする。成形領域94は、スペーサ92によって多数の光ファイバー91を平行に配置している。光ファイバー91を配置する成形領域94に、生コンクリート99が充填され、これを硬化させることで、光ファイバー91を埋設しているコンクリートからなる透光性成形体を製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−220981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に示す製造装置は、多数の光ファイバーを埋設するコンクリートなどの透光性成形体を製造できる。しかしながら、この製造装置は、スペーサの貫通孔に多数の光ファイバーを挿通するので、成形領域に多数の光ファイバーを配置するのに極めて手間がかかる。1本の光ファイバーは極めて細く、1本の光ファイバーが透過させる光量は微弱なことから、透光性成形体には多数の光ファイバーを埋設する必要がある。多数の光ファイバーを埋設するには、スペーサに多数の貫通孔を設けて、各々の貫通孔に光ファイバーを挿通する必要があり、製造に極めて手間がかかる欠点がある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、多数の光ファイバーを埋設して透過させる光量を多くしながら、簡単かつ容易に、しかも能率よく透光性成形体を製造できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の透光性成形体の製造装置は、成形体の対向する面に多数の光ファイバー51を貫通するように埋設して、埋設する光ファイバー51でもって、対向面に光を透過させるようにしてなる透光性成形体50を製造する。透光性成形体の製造装置は、複数のロール10を所定の間隔で平行に配置してなる一対のロールユニット1と、一対のロールユニット1を互いに離れる方向に移動して、一対のロールユニット1の間に成形領域4を設け、かつ一対のロールユニット1を互いに接近する方向に移動させるロールユニット1の往復運動機構2を備えている。ロールユニット1は、一方のロールユニット1のロール10を他方のロールユニット1のロール10の間に挿入できる間隔に配置している。往復運動機構2は、一対のロールユニット1を互いに接近させて一方のロールユニット1のロール10を他方のロールユニット1のロール10の隙間12に通過させて、一対のロールユニット1の間に光ファイバー51を挿通する挿通領域5を設ける位置と、互いにロールユニット1を離す位置に移動して成形領域4を設ける位置とに往復運動させるストロークを有する。透光性成形体の製造装置は、往復運動機構2が、ロールユニット1の間に挿通領域5を設ける位置にロールユニット1を配置する位置に移動する状態で、一対のロールユニット1のロール10間の挿通領域5に複数の光ファイバー51を通過させ、ロールユニット1を離して成形領域4に複数の光ファイバー51を配置して、成形領域4に成形材52を充填して、光ファイバー51を埋設してなる透光性成形体50を製造する。
【0007】
以上の製造装置は、多数の光ファイバーを埋設して透過させる光量を多くする透光性成形体を、簡単かつ容易に、しかも能率よく製造できる特徴がある。それは、以上の製造装置が、一対のロールユニットを往復運動させることで、光ファイバーを簡単に挿通できる挿通領域を設け、また互いに離すように移動して、成形領域に多数の光ファイバーを平行に配置し、ここに成形材を充填して透光性成形体を成形できるからである。
【0008】
本発明の透光性成形体の製造装置は、成形領域4の底部と周囲を閉塞し、かつ光ファイバー51を通過させる型枠材3を有することができる。
以上の製造装置は、流動性のある成形材であっても、底部と周囲を閉塞した型枠材に充填して、成形材を流出しないように成形できる。
【0009】
本発明の透光性成形体の製造装置は、ロール10が、ベアリングを介して回転軸10Bに回転できるように連結してなるプーリ10Aと、このプーリ10Aをベアリングを介して回転できるように連結してなる回転軸10Bとを有することができる。
以上の製造装置は、自由に回転できるロールを介して、光ファイバーを成形領域にスムーズに引き出しできる。
【0010】
本発明の透光性成形体の製造装置は、プーリ10Aが、複数の光ファイバー51を案内する複数列のガイド溝10aを円周方向に設けることができる。
以上の製造装置は、プーリに設けた複数列のガイド溝に複数の光ファイバーを案内するので、多数の光ファイバーを所定の間隔に保持しながら平行な姿勢で成形領域に配置できる。
【0011】
本発明の透光性成形体の製造装置は、少なくとも一方のロールユニット1のロール10を回転する回転機構6を備え、往復運動機構2が一対のロールユニット1を離す方向に移動する状態で、回転機構6がロール10を回転して光ファイバー51を成形領域4に配置することができる。
以上の製造装置は、回転機構でロールを強制的に回転させるので、多数の光ファイバーを成形領域にスムーズに引き出しできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の透光性成形体の製造装置の斜視図である。
【図2】本発明の製造装置で製造される透光性成形体の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる透光性成形体の製造装置の概略斜視図である。
【図4】図3に示す製造装置が光ファイバーを平行に配置する状態を示す概略斜視図である。
【図5】図3に示す製造装置の側面図である。
【図6】図5に示す製造装置の平面図である。
【図7】図4に示す製造装置の側面図である。
【図8】図7に示す製造装置の平面図である。
【図9】図7に示す製造装置の成形領域に型枠材を配置した状態を示す垂直断面図である。
【図10】図9に示す製造装置の平面図である。
【図11】図9に示す製造装置の成形領域に配置した型枠材の回転板を回転させた状態を示す垂直断面図である。
【図12】図11に示す製造装置の型枠材に成形材を充填した状態を示す断面図である。
【図13】成形材が充填された型枠材を製造装置から取り出した状態を示す平面図である。
【図14】本発明の他の実施例にかかる透光性成形体の製造装置の概略斜視図である。
【図15】図14に示す製造装置が光ファイバーを平行に配置する状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための透光性成形体の製造装置を例示するものであって、本発明は透光性成形体の製造装置を以下のものには特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0014】
図2は、本発明の製造装置で製造される透光性成形体50を示している。この透光性成形体50は、対向する面に多数の光ファイバー51を貫通するように埋設している。この透光性成形体50は、透光性のないコンクリートやモルタル等の成形材52に、多数の光ファイバー51を、その端面を対向面に露出するように埋設している。光ファイバー51の端面は、透光性成形体50の対向面と同一平面にあって、光を対向面に透過させる。透光性成形体50が光を透過させる光量は、光ファイバー51の太さと数で特定される。光ファイバー51は1mm以下の直径で非常に細いので、これを多数に埋設して、透光性成形体50の対向面に所定の光量で光を透過させる。多数の光ファイバー51は、ほぼ平行な姿勢で、ほぼ直線状に埋設されるが、必ずしも平行な姿勢で直線状に埋設する必要はない。それは、光ファイバー51が内面で光を全反射しながら光を透過させるので、これが曲がる状態で埋設されても、光を透過できるからである。さらに、透光性成形体50は、光ファイバー51を特定のデザインに配置して埋設することで、光を透過させる領域をデザインすることもできる。
【0015】
図3ないし図13は、透光性成形体を製造する製造装置、及びその製造工程を示す図である。この製造装置は、複数のロール10を所定の間隔で平行に配置してなる一対のロールユニット1と、一対のロールユニット1を互いに離れる方向に移動して、一対のロールユニット1の間に成形領域4を設け、かつ一対のロールユニット1を互いに接近する方向に移動させるロールユニット1の往復運動機構2とを備える。図の製造装置は、ロール10を水平姿勢に配置して、ロールユニット1を水平方向に移動する。ただ、本発明の製造装置は、ロールを垂直姿勢に配置することもできる。また、ロールを水平姿勢に配置しているロールユニットを垂直方向に離すように移動することもできる。
【0016】
図3ないし図8の製造装置は、一対のロールユニット1を、第1のロールユニット1Aと第2のロールユニット1Bとで構成する。各々のロールユニット1は、一方のロールユニット1のロール10を他方のロールユニット1のロール10の間に挿入できる間隔に配置している。すなわち、第1のロールユニット1Aのロール10の間に、第2のロールユニット1Bのロール10を通過できるようにしている。ロールユニット1は、隣接するロール10の隙間12をロール10の外径よりも広くして、第1のロールユニット1Aのロール10の間に第2のロールユニット1Bのロール10を通過できるようにしている。ロールユニット1は、複数のロール10の両端を支持部11に連結して所定の間隔で平行に配置している。支持部11はロール10の両端部に設けられて、ロール10の両端を連結している。
【0017】
図の製造装置は、第1のロールユニット1Aの支持部11Aを移動しないようにベースフレーム9に固定して、第2のロールユニット1Bの支持部11Bを、ベースフレーム9に沿って移動できるように連結している移動台20に固定している。ロールユニット1は、各々のロール10を回転できるようにベアリング(図示せず)を介して支持部11に連結している。第1のロールユニット1Aは、ロール10を回転機構6で強制的に回転させて、光ファイバー51を成形領域4にスムーズに引き出しできるようにしている。ただし、ロールは必ずしも強制的に回転する必要はなく、自由に回転できる構造として、光ファイバーを引き出すときに、光ファイバーで回転させることもできる。
【0018】
図の製造装置は、ロールユニット1の挿通領域5に上から下に挿入された光ファイバー51の下端を固定する状態で、一対のロールユニット1を離す方向に移動して成形領域4に光ファイバー51を配置する。この状態でロールユニット1が引き離されるとき、上側のロール10の回転速度は下側のロール10の回転速度よりも速くなる。したがって、第1のロールユニット1Aの回転機構6は、上側のロール10の回転速度を下側のロール10の回転速度よりも速くなるように回転させる。
【0019】
図に示す回転機構6は、ロール10の一端に連結されてロール10を回転させる中間プーリ13と、この中間プーリ13にベルト14を介して連結されて、中間プーリ13を所定の速度で回転させる駆動部15と、この駆動部15を回転させるモータ16とを備えている。図の回転機構6は、駆動部15を、半径の異なる複数の駆動プーリ15Aを同軸に連結してなる輪軸としている。この回転機構6は、半径の大きい駆動プーリ15Aを回転速度の速いロール10に固定された中間プーリ13にベルト14を介して連結し、半径の小さい駆動プーリ15Aを回転速度の遅いロール10に固定された中間プーリ13にベルト14を介して連結している。この回転機構6は、簡単な構造で、回転速度の異なる複数のロール10を理想的な速度に調整しながら回転できる。ただ、回転機構は、必ずしも駆動部に輪軸を使用する必要はなく、回転速度の異なるロールに対応して回転比を調整できる歯車機構を使用することもできる。
【0020】
移動台20は、第1のロールユニット1Aから離れるように、ベースフレーム9に沿って、第2のロールユニット1Bを移動させる。移動台20は、往復運動機構2で移動される。図の往復運動機構2は、水平姿勢で配設されたシリンダー21と、移動台20を水平方向に往復運動させるガイド機構22とを備える。シリンダー21は、ロッド21Aを第2のロールユニット1Bの往復運動方向に伸縮させる姿勢で配置して、ロッド21Aの先端を移動台20に連結している。ガイド機構22は、ベースフレーム9に沿って平行に配置している4本のガイドロッド23と、各々のガイドロッド23に挿通されたガイド部24を備えている。第2のロールユニット1Bは、移動台20の両側に一対の支持部11を固定しており、各々の支持部11の上下にガイド部24を固定している。すなわち、移動台20は、両側の上下に設けたガイド部24をガイドロッド23に沿って移動させて水平姿勢で往復運動する。さらに、ロール10の両端を固定している支持部11も移動台20と一緒に移動するので、支持部11を垂直姿勢に保持して水平方向に往復運動する。往復運動機構2は、シリンダー21のロッド21Aを伸縮させて、支持部11を水平方向に往復運動させる。
【0021】
図3ないし図8の製造装置は、第1のロールユニット1Aと第2のロールユニット1Bの支持部11A、11Bを互いに接近させる状態で、第2のロールユニット1Bのロール10を第1のロールユニット1Aのロール10間に通過させて、一対のロールユニット1のロール10で挿通領域5を設けることができるように、第2のロールユニット1Bの両側の支持部11Bにアーム部11xを設けている。アーム部11xは、支持部11Bから水平方向に突出して伸びており、図3、図5、及び図6に示すように、第1のロールユニット1Aの支持部11Aと第2のロールユニット1Bの支持部11Bを互いに接近させる状態で、第2のロールユニット1Bのロール10を第1のロールユニット1Aのロール10の間に通過させて光ファイバー51の挿通領域5を設ける。挿通領域5は、第2のロールユニット1Bのロール10が第1のロールユニット1Aのロール10の間を通過して、一対のロールユニット1のロール10間にできる領域である。ロール10をこの位置とする状態で、挿通領域5に多数の光ファイバー51を一定の間隔として、図5において上から下に挿入する。
【0022】
光ファイバー51を挿入した後、第2のロールユニット1Bを第1のロールユニット1Aから離す方向、図7と図8において左から右に移動させる。第2のロールユニット1Bのロール10が移動すると、挿通領域5に挿入された光ファイバー51は、図4と図7に示すように、一対のロールユニット1のロール10がジグザグ状に挿入される状態となって、成形領域4に多数の光ファイバー51が平行な姿勢で配置される。
【0023】
第2のロールユニット1Bのロール10は、光ファイバー51を引き延ばしながら離れる方向に移動される。この状態で、ロール10をスムーズに回転させるために、第2のロールユニット1Bのロール10は、ベアリングを介して回転軸10Bに回転できるように連結しているプーリ10Aと、プーリ10Aをベアリングを介して回転できるように連結している回転軸10Bとを有する。プーリ10Aは直線状の円筒で、回転軸10Bは中央を直線状として、その両側にアーム部11xの先端を連結して、アーム部11xの後端を支持部11Bに連結している。プーリ10Aは、光ファイバー51を案内する複数列のガイド溝10aを円周方向に設けている。ガイド溝10aは、第1のロールユニット1Aのロール10にも設けている。光ファイバー51は、第1のロールユニット1Aと第2のロールユニット1Bのロール10に設けたガイド溝10aに案内されて、所定の間隔に保持されながらロール10に引き延ばされて、成形領域4に平行な姿勢で配置される。
【0024】
第1のロールユニット1Aのロール10は回転機構6で強制的に回転され、あるいは回転機構で回転されることなく自由に回転される構造とする。自由に回転する第1のロールユニットのロールは、第2のロールユニットのロールと同じように、ベアリングを介して回転軸にプーリを回転できるように連結して、光ファイバーをスムーズに引き出しできるようにする。
【0025】
円筒状のプーリ10Aは、ガイド溝10aを設けてここに光ファイバー51を案内する。ロールは、所定の間隔で複数のプーリをベアリングを介して回転軸に回転できるように連結することもできる。このロールは、各々のプーリの外周溝に光ファイバーをかけて、光ファイバーをプーリで所定の位置にガイドする。
【0026】
以上の製造装置は、ロール10の両端を支持部11に連結しており、第2のロッドユニット1Bの支持部11Bにはアーム部11xを設けて、この第2のロールユニット1Bのロール10を、第1のロールユニット1Aのロール10の隙間12に通過させる構造としている。図14と図15の製造装置は、ロール10の一端のみを支持部11に固定して、いいかえるとロール10の一端を支持部11に固定してロール10を水平姿勢に保持する状態で、各々のロールユニット1のロール10を、対向する隙間12に通過させる構造としている。この製造装置は、第1のロッドユニット1Aと第2のロッドユニット1Bのロール10の反対側を支持部11に固定している。この製造装置は、第1のロッドユニット1Aの支持部11Aをベースフレーム9に固定して、第2のロッドユニット1Bの支持部11Bを移動台20に固定している。移動台20は、支持部11Bに固定されて、往復運動機構2で水平方向に往復運動される。この製造装置は、第2のロッドユニット1Bの支持部11Bにアーム部を設けることなくロッド10を固定して、第2のロッドユニット1Bの支持部11Bを第1のロッドユニット1Aの支持部11Aよりも図において左側に移動させて、ロール10の間に挿通領域5を設けることができる。この製造装置は、挿通領域5に光ファイバー51を挿入した後、移動台20を右に移動させて、光ファイバー51をジグザグ状に引き出して、成形領域4に多数の光ファイバー51を平行な姿勢で配置する。
【0027】
以上の製造装置で透光性成形体を成形する工程を図3ないし図13に示す。
(1)図3、図5、及び図6は、第1のロールユニット1Aと第2のロールユニット1Bとを互いに接近させて、ロール10間に挿通領域5を設ける状態を示している。この状態で、挿通領域5に光ファイバー51が挿入される。光ファイバー51は、一定の間隔で挿通領域5に挿入される。一定の間隔で互いに平行に配置している光ファイバー51は、その先端を挟着して挿通領域5に通過させ、全ての光ファイバー51を挿通領域5に挿入する。挟着具17は、手動で挿通領域5に通過させ、あるいは上下に往復運動させる機構(図示せず)で挿通領域5に通過させることもできる。光ファイバー51を挿通領域5に通過させた後、挿通領域5の下方において、別の挟着具18で光ファイバー51を挟着する。
【0028】
(2)複数の光ファイバー51を挿通領域5に通過させた後、往復運動機構2でもって、図4、図7、及び図8に示すように、第2のロールユニット1Bを第1のロールユニット1Aから離すように移動させて、第1のロールユニット1Aと第2のロールユニット1Bのロール10間に成形領域4を設ける。成形領域4は、多数の光ファイバー51を平行に配置している。成形領域4に配設される光ファイバー51は、先端を挟着具18で挟着する状態で、後端を挟着具17で挟着して引っ張って、所定のテンションで直線状に配置される。
【0029】
(3)多数の光ファイバー51を平行に配置した状態で、成形材52を流入して透光性成形体を成形する。このとき、流動性のない成形材52は、そのまま成形領域4に充填して成形できるが、流動性のある成形材52は、図8ないし図12に示すように、成形領域4の底部と周囲を型枠材3で閉塞した状態で充填する。型枠材3は、光ファイバー51を通過させながら、成形領域4の周囲と底部とを閉塞する。
【0030】
(4)図8ないし図12に示す型枠材3は、光ファイバー51の間に挿入させる回転板30と、この回転板30を回転できるように連結している側板31と、成形領域4の底面を閉塞する底板32とを備えている。図9に示すように、回転板30は水平姿勢で光ファイバー51の間に挿入される。その後、図11に示すように、水平姿勢から垂直姿勢に90度回転されて、光ファイバー51を挟着して成形領域4の対向面を成形材52が漏れないように閉塞する。回転板30は、図8と図10に示すように、一端に連結軸34を固定して、これを回転できるように側板31に貫通して連結している。回転板30は、連結軸34を介して側板31に連結しているので、側板31を移動して、各々の回転板30を光ファイバー51の間に挿入できる。連結軸34は側板31の外部でプーリ35を固定しており、このプーリ35を一緒に回転して、回転板30を水平姿勢から垂直姿勢に回転させる。図10に示すように、回転板30を連結している側板31と対向する位置にも側板33を配置して、側板31、33と回転板30とで成形領域4の周囲を成形材52が漏れないように閉塞する。さらに、図11に示すように、成形領域4の底面に底板32を配置して、成形領域4の底面を閉塞する。
【0031】
(5)その後、図12に示すように、成形領域4に成形材52を充填する。成形材52は、生コンクリートやモルタル、あるいは未硬化でペースト状のプラスチックなどで、透光性のないものが使用される。成形材52には、未硬化な状態でペースト状ないし液状であって、透光性のない状態に硬化する全てのものが使用できる。
【0032】
(6)型枠材3の内側に成形材52を充填した後、型枠材3の外側面で光ファイバー51を切断して、図13に示すように、成形領域4から型枠材3を取り出す。成形領域4から取り出された型枠材3は、内部で成形材52を硬化させた後、成形材52を脱型する。このように、成形材52が充填された型枠材3を成形領域4から取り出して硬化させる方法は、型枠材3に充填された成形材52が硬化するのを待つことなく、次の型枠材3を成形領域4に搬入して成形材52を充填し、これを繰り返すことで、能率よく透光性成形体を多量生産できる。また、成形領域4から取り出した型枠材3は、充填された未硬化の成形材52を、時間をかけてゆっくりと硬化させることができる。ただ、成形材52が充填された型枠材3は、必ずしも成形領域4から取り出すことなく未硬化の成形材52を硬化させることもできる。この型枠材3は、内部で成形材52を硬化させた後、成形領域4から取り出して成形材52を脱型する。
脱型された成形材52は、成形材52から突出している光ファイバー51の突出部を切断し、さらに、この面を平面状に研削する。他の面も平面状に研削することもできる。
【0033】
一方、型枠材3を取り出した後、図3、図5、及び図6に示すように、第2のロールユニット1Bのロール10を移動させた後、挟着具17を挿通領域5に通過させて光ファイバー51を挿通領域5に配置する。その後、以上の工程を繰り返して、透光性成形体を製造する。
【符号の説明】
【0034】
1…ロールユニット 1A…第1のロールユニット
1B…第2のロールユニット
2…往復運動機構
3…型枠材
4…成形領域
5…挿通領域
6…回転機構
9…ベースフレーム
10…ロール 10A…プーリ
10a…ガイド溝
10B…回転軸
11…支持部 11A…支持部
11B…支持部
11x…アーム部
12…隙間
13…中間プーリ
14…ベルト
15…駆動部 15A…駆動プーリ
16…モータ
17…挟着具
18…挟着具
20…移動台
21…シリンダー 21A…ロッド
22…ガイド機構
23…ガイドロッド
24…ガイド部
30…回転板
31…側板
32…底板
33…側板
34…連結軸
35…プーリ
50…透光性成形体
51…光ファイバー
52…成形材
91…光ファイバー
92…スペーサ
93…貫通孔
94…成形領域
99…生コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の対向する面に多数の光ファイバー(51)を貫通するように埋設して、埋設する光ファイバー(51)でもって、対向面に光を透過させるようにしてなる透光性成形体の製造装置であって、
複数のロール(10)を所定の間隔で平行に配置してなる一対のロールユニット(1)と、一対のロールユニット(1)を互いに離れる方向に移動して、一対のロールユニット(1)の間に成形領域(4)を設け、かつ一対のロールユニット(1)を互いに接近する方向に移動させるロールユニット(1)の往復運動機構(2)を備え、
前記ロールユニット(1)は、一方のロールユニット(1)のロール(10)を他方のロールユニット(1)のロール(10)の間に挿入できる間隔に配置しており、
前記往復運動機構(2)は、一対のロールユニット(1)を互いに接近させて一方のロールユニット(1)のロール(10)を他方のロールユニット(1)のロール(10)の隙間(12)に通過させて、一対のロールユニット(1)の間に光ファイバー(51)を挿通する挿通領域(5)を設ける位置と、互いにロールユニット(1)を離す位置に移動して成形領域(4)を設ける位置とに往復運動させるストロークを有し、
前記往復運動機構(2)が、ロールユニット(1)の間に挿通領域(5)を設ける位置にロールユニット(1)を配置する位置に移動する状態で、一対のロールユニット(1)のロール(10)間の挿通領域(5)に複数の光ファイバー(51)が通過され、ロールユニット(1)が離されて成形領域(4)に複数の光ファイバー(51)を配置して、成形領域(4)に成形材(52)が充填されて、光ファイバー(51)を埋設してなる透光性成形体が製造されるようにしてなる透光性成形体の製造装置。
【請求項2】
前記成形領域(4)の底部と周囲を閉塞し、かつ光ファイバー(51)を通過させる型枠材(3)を有する請求項1に記載される透光性成形体の製造装置。
【請求項3】
前記ロール(10)が、ベアリングを介して回転軸(10B)に回転できるように連結してなるプーリ(10A)と、このプーリ(10A)をベアリングを介して回転できるように連結してなる回転軸(10B)とを有する請求項1又は2に記載される透光性成形体の製造装置。
【請求項4】
前記プーリ(10A)が、複数の光ファイバー(51)を案内する複数列のガイド溝(10a)を円周方向に設けている請求項3に記載される透光性成形体の製造装置。
【請求項5】
少なくとも一方のロールユニット(1)のロール(10)を回転する回転機構(6)を備え、往復運動機構(2)が一対のロールユニット(1)を離す方向に移動する状態で、回転機構(6)がロール(10)を回転して光ファイバー(51)を成形領域(4)に配置する請求項1ないし4のいずれかに記載される透光性成形体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−78667(P2012−78667A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225170(P2010−225170)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(391016886)日本フネン株式会社 (30)
【Fターム(参考)】