説明

透明で、湿潤性のシリコーンヒドロゲル製品の形成方法

本発明は、少なくとも一つのシリコーン含有モノマー、少なくとも一つの親水性モノマー、および、約2と約7との間のハンセン溶解度パラメータδPを呈する少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤またはプロトン化可能な希釈剤を含む希釈剤とを含む反応性混合物を硬化させて、約80°未満の前進接触角を呈する眼用装置を形成するステップ;プロトン化済みまたはプロトン化可能な共希釈剤のハンセン溶解度パラメータδPを変更して水溶性を向上させることができる水溶液に当該眼用装置を接触させるステップ;および、当該水溶液で当該希釈剤(複数の希釈剤)を除去するステップ、を含む、方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、成形品、および、特にコンタクトレンズ等の医療装置を形成するための方法に関するものである。より具体的には、本発明は、親水性成分(複数の親水性成分)およびシリコーン含有成分(複数のシリコーン含有成分)を含む相溶性混合物(および、最終的には製品)の形成を可能にする新規分類の希釈剤に関するものである。
【0002】
〔発明の背景〕
シリコーンヒドロゲル類は、少なくとも一つのシリコーン含有モノマーおよび少なくとも一つの親水性モノマーを含有する混合物を重合化することによって、調製されてきた。当該シリコーン含有モノマーまたは当該親水性モノマーは、架橋剤として作用することがあり、さもなければ、別の架橋剤が使用されてもよい。n-ヘキサノール、エタノールおよびn-ノナノールを含む種々のアルコール類は、当該シリコーン含有モノマーおよび当該親水性モノマーを相溶化するための希釈剤として使用されてきた。しかし、当該成分および希釈剤から形成された製品は、透明な製品とならないか、あるいは、被膜なしで使用される場合に湿潤性が十分ではないかのいずれかであった。
【0003】
4個以上の炭素原子を有する第一級アルコール類および第二級アルコール類は、シリコーン含有ヒドロゲル用の希釈剤としても有用であると公表されてきた。しかし、これらの希釈剤の多くは、反応性混合物中に内在的な湿潤剤が含まれている場合において、透明で、湿潤性の製品を形成しない。これらの希釈剤は有用であるが、多くの場合に、被覆されずに、透明で湿潤性の成形品を製造するための付加的な相溶化剤を必要とする。
【0004】
特定のハンセン(Hansen)溶解度パラメータおよびカムレット(Kamlet)パラメータのプロトン供与性(α値)を呈する化合物は、シリコーンヒドロゲル用の希釈剤としても有用であると公表されてきた。しかし、多くの場合には、水と混和せず、溶媒と水との複雑な交換過程を用いる必要がある。したがって、この技術分野において、被覆されない湿潤性表面を備えた透明なコンタクトレンズ等の医療装置を製造できる経済的かつ効率的な方法で重合化されるシリコーンヒドロゲルを提供する必要がある。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明は、少なくとも一つのシリコーン含有モノマー、少なくとも一つの親水性モノマー、および、約2と約7との間のハンセン溶解度パラメータδPを呈する少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤またはプロトン化可能な希釈剤を含む反応性混合物を硬化させて、約80°未満の前進接触角を呈する眼用装置を形成するステップと、当該プロトン化済みまたはプロトン化可能な共希釈剤(co-diluent)の上記ハンセン溶解度パラメータδPを変更して水溶性を向上させることができる水溶液に当該眼用装置を接触させるステップと、当該水溶液で上記希釈剤(複数の希釈剤)を除去するステップと、を含む、プロセス、に関するものである。
【0006】
また、本発明は、少なくとも一つのシリコーン含有モノマー、少なくとも一つの親水性モノマー、および、少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤またはプロトン化可能な希釈剤を含む反応性混合物を反応させて、約80°未満の前進接触角を呈する眼用装置を形成するステップと、当該プロトン化済みの希釈剤またはプロトン化可能な希釈剤の上記ハンセン溶解度パラメータδPを変更して水溶性を高めることができる交換溶液に、当該眼用装置を接触させるステップと、を含むプロセスに関するものである。
【0007】
さらに、本発明は、具体的には医療装置、より具体的にはコンタクトレンズの装置を製造するための方法、および、当該方法により製造された製品に関するものである。
【0008】
〔特定の実施の形態の詳細な記述〕
本発明は、少なくとも一つの親水性成分、少なくとも一つのシリコーン含有成分、および、当該複数の成分を相溶化させることができ、かつ、水溶液のみを用いて処理され得る少なくとも一つの希釈剤を含む組成物に関するものである。
【0009】
この明細書で使用されているように、用語「希釈剤」とは、反応組成物用の希釈剤を云う。希釈剤は、反応して生物医学装置の部分を形成しない。
【0010】
この明細書で使用されているように、用語「相溶化剤」とは、選択された反応性成分を可溶化する化合物を意味する。一つの実施の形態において、相溶化剤は、約5000ダルトン未満の数平均分子量を有しており、他の実施の形態では、約3000ダルトン未満の数平均分子量を有している。本発明の相溶化剤は、水素結合、分散力、これらの組み合わせ、および、これらの同類の手段によって溶解できる。したがって、これらの手段のいずれかで、高分子量の親水性ポリマーと相互作用する任意の官能基は、相溶化剤として使用されてもよい。本発明における相溶化剤は、これらの相溶化剤が、結果的に得られる眼用装置の他の所望特性を低下させない程度の量で、使用されてもよい。相溶化剤の使用量は、高分子量の親水性ポリマーの使用量によって、ある程度、決まるはずである。相溶化剤の一つの種類は、少なくとも一つのシリコーン、および、少なくとも一つのヒドロキシル基を含む。このような成分は、「シリコーン含有相溶化成分」とも呼ばれ、かつ、国際公開WO03/022321号および同WO03/022322号に開示されている。
【0011】
この明細書で使用されているように、用語「生物医学装置」とは、哺乳類の体組織または流体内あるいは体組織または流体上のいずれかで使用されるように、また、一つの実施の形態ではヒトの体組織または流体内あるいは体組織または流体上で使用されるように、設計された、あらゆる製品を云う。当該生物医学装置の例は、カテーテル、インプラント、ステント、ならびに、眼内レンズ、涙点プラグおよびコンタクトレンズ等の眼用装置を含むが、これらに限定されるものではない。一つの実施の形態において、生物医学装置は、眼用装置、より詳細にはコンタクトレンズ、最も詳細にはシリコーンヒドロゲルから形成されたコンタクトレンズである。
【0012】
この明細書で使用されているように、用語「レンズ」および「眼用装置」とは、眼内または眼上に置かれる装置を云う。これらの眼用装置は、光学補正、創部治療、薬剤送出、診断機能性、化粧上の強調効果すなわち化粧効果、または、これらの各特性の組み合わせを提供できるものである。レンズ(またはコンタクトレンズ)という用語は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、眼内レンズ、被せレンズ(overlay lenses)、眼球用挿入体(ocular inserts)、および、光学挿入体(optical inserts)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0013】
この明細書における百分率は、すべて、特に指示がない限り、重量%である。
【0014】
この明細書で使用されているように、成句「表面処理せず」または「表面処理されない」とは、本発明の装置の外側表面に対して、当該装置の湿潤性を改善するための処理が単独で行われないことを意味する。本発明のために、事前に行われ得る処理方法は、プラズマ処理、接合処理、被覆処理およびこれらの同類の処理を含む。しかし、抗菌性被覆、および、色または他の化粧上の強調の付与等を含むが、これらに限定されないなど、改善された湿潤性以外の特性を付与する被覆処理は、本発明の装置に適用されてもよい。
【0015】
各成分がどのようにして共重合するかを想定する際に、希釈剤の性質がある役割を果たすと考えられるが、この作用に限定されるものではない。希釈剤は、一部のモノマー類の溶解性および凝集性に影響を与え、かつ、反応度の比率を左右することがある。
【0016】
少なくとも一つの除去可能な(abstractable)プロトン(プロトン化済みの希釈剤)を含む少なくとも一つの希釈剤を反応性混合物中に含有させることによって、結果的に得られる装置の前進接触角が低下し、かつ、低い接触角では良好な再現性が達成され得ることが見出された。プロトン化された形態において、プロトン化済みの希釈剤は、非極性であり、反応性混合物中に存在する親水性および疎水性の両反応性成分を容易に可溶化でき、当該形態は、約80°未満の前進接触角、一部の実施の形態では約75°未満の前進接触角を呈するポリマー類の形成に寄与する。プロトン化済みの希釈剤は、相対的に難水溶性を有しており、装置に対する水性処理加工を厄介にする。しかし、プロトン化済みの希釈剤には、脱プロトン化処理が施されてもよい。脱プロトン化済みの希釈剤は、非常に向上した水溶性を有しており、水性処理加工により除去され得る。したがって、プロトン化済みの希釈剤は、反応性混合物中で低いハンセン溶解度パラメータδPを呈するが、容易に脱プロトン化されることから、複数の水性処理加工条件で、水性処理加工の溶液に対する溶解性を獲得できる。
【0017】
プロトン化済みの希釈剤の例は、6個〜18個の炭素原子を有するカルボン酸類、および、6個〜10個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェノール類を含む。一つの実施の形態において、プロトン化済みの希釈剤は、デカン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ドデカン酸、これらの混合物、および、これらの同類の酸から選択される。また、6個〜14個の炭素原子を有するアミン類等のプロトン化可能な希釈剤(プロトンを受け入れることができる希釈剤)が使用されてもよい。プロトン化可能な希釈剤は、脱プロトン化された形態で、反応性混合物中に含有され、かつ、レンズ加工中にプロトン化される。プロトン化可能な希釈剤の適切な例は、デシルアミン、オクチルアミン、ヘキシルアミン、これらの混合物、および、これらの同類を含む。
【0018】
また、共希釈剤が使用されてもよい。本発明に有用な共希釈剤は、相対的に非極性のものとされる。選択された共希釈剤は、反応条件で、反応性混合物中に非極性成分を可溶化する上で十分に弱い極性を有しているが、水溶液を用いて希釈剤を交換できる上で十分な水溶性を有している。本発明の共希釈剤の極性を特徴づけるための一つの方法は、ハンセン溶解度パラメータδPを用いる方法である。特定の実施の形態において、本発明の共希釈剤のハンセン溶解度パラメータδPは、約2〜約7である。
【0019】
また、選択された希釈剤(共希釈剤およびプロトン化済みの希釈剤またはプロトン化可能な希釈剤)は、反応性混合物中に成分を可溶化させるはずである。選択された親水性成分および疎水性成分の特性が所望の相溶性を付与する希釈剤の特性に影響を与えることは、理解されるはずである。例えば、仮に、反応性混合物が中程度の極性成分のみを含有している場合に、中程度のハンセン溶解度パラメータδPを有する希釈剤が使用されてもよい。しかし、仮に、反応性混合物が強い極性成分を含有している場合に、希釈剤は、高いハンセン溶解度パラメータδPを有する必要がある。
【0020】
使用され得る特定の共希釈剤は、ジイソプロピルアミノエタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、1-オクタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、三級アミルアルコール、三級ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、エタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-三級ブトキシ-2-プロパノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、三級ブトキシエタノール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、1-エトキシ-2-プロパノール、これらの混合物、および、これらの同類を含むが、これらに限定されるものではない。
【0021】
適切な共希釈剤の種類は、2個〜20個の炭素を有し、かつ、炭素:ヒドロキシル基由来の酸素原子の含有比が最大で約8:約1であるアルコール類、10個〜20個の炭素原子を有し、かつ、第一級アミン類誘導体であるアミド類を含むが、これらに限定されるものではない。一部の実施の形態において、第一級および第三級のアルコール類が好適である。一つの実施の形態において、5個〜20個の炭素を有し、かつ、炭素:ヒドロキシル基由来の酸素原子の含有比が約3:約1〜約6:約1であるアルコール類は、共希釈剤として使用されてもよい。
【0022】
一つの実施の形態に適した共希釈剤の例は、トリプロピレングリコールメチルエーテル、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2-ペンタノール、三級アミルアルコール、三級ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、エタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、これらの混合物、および、これらの同類を含む。
【0023】
他の実施の形態において、適切な共希釈剤は、トリプロピレングリコールメチルエーテル、1-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、三級アミルアルコール、三級ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、これらの混合物、および、これらの同類を含む。
【0024】
希釈剤の混合物が使用されてもよい。
【0025】
一部の実施の形態において、反応性混合物は、少なくとも一つの共希釈剤および少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤またはプロトン化可能な希釈剤を含む。これらの実施の形態において、プロトン化済みの希釈剤またはプロトン化可能な希釈剤は、希釈剤混合物の約65重量%以下の量で、一部の実施の形態では希釈剤混合物の約25重量%〜約45重量%の間の量で含有してもよい。
【0026】
希釈剤(共希釈剤(複数の共希釈剤)およびプロトン化済みの希釈剤(複数の希釈剤)またはプロトン化可能な希釈剤(複数の希釈剤))は、反応性混合物の全成分の全重量に対して、約55重量%以下の量で使用されてもよい。一つの実施の形態において、希釈剤(複数の希釈剤)は、反応性混合物の全成分の全重量に対して、約50重量%以下の量で、また他の実施の形態では約30重量%〜約45重量%の間の量で使用される。意外なことに、本発明の希釈剤が使用される場合に、水処理条件が使用されるときであっても、湿潤性の生物医学装置、より詳細には湿潤性の眼用装置が形成され得ることが見出された。
【0027】
本発明のポリマーを形成するために使用される一つ以上のシリコーン含有成分および一つ以上の親水性成分は、シリコーンヒドロゲルを形成する先行技術において使用された公知の成分のいずれかでもよい。シリコーン含有成分および親水性成分という用語は、シリコーン含有成分が多少、親水性となり得ると共に、親水性成分が一部にシリコーンを含むことがあることから、シリコーン含有成分が親水性基を有し、かつ、親水性成分がシリコーン基を有し得る点で、互いに相容れないものではない。
【0028】
シリコーン含有成分は、モノマー、マクロマーまたはプレポリマー中に少なくとも一つの[-Si-O-Si-]基を含有するものである。一つの実施の形態において、ケイ素原子Si、および、このケイ素原子に結合した酸素原子Oは、シリコーン含有成分の全分子量に対して、20重量%を超える量で、また他の実施の形態では30重量%を超える量で、当該シリコーン含有成分中に存在している。有用なシリコーン含有成分は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミドおよびスチリル官能基等の重合性官能基を含む。本発明に有用なシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号明細書;米国特許第4,120,570号明細書;米国特許第4,136,250号明細書;米国特許第4,153,641号明細書;米国特許第4,740,533号明細書;米国特許第5,034,461号明細書;および米国特許第5,070,215号明細書;ならびに欧州特許第EP080539号中に見出される。この明細書に引用された全特許文献は、参照により、この明細書にそっくりそのまま組み込まれる。当該文献は、オレフィン系シリコーン含有成分について多くの例示を開示している。
【0029】
「シリコーン含有成分」は、モノマー、マクロマーまたはプレポリマー中に少なくとも一つの[-Si-O-]単位を含有するものである。一つの実施の形態において、全ケイ素原子(Si)、および、これらのケイ素原子に結合した酸素原子(O)は、シリコーン含有成分の全分子量に対して、20重量%を超える量で、また他の実施の形態では30重量%を超える量で、当該シリコーン含有成分中に存在している。有用なシリコーン含有成分は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニル、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミドおよびスチリルの各官能基等の重合性官能基を含む。本発明に有用なシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号明細書;米国特許第4,120,570号明細書;米国特許第4,136,250号明細書;米国特許第4,153,641号明細書;米国特許第4,740,533号明細書;米国特許第5,034,461号明細書;および米国特許第5,070,215号明細書;ならびに欧州特許第EP080539号中に見出される。これらの文献は、オレフィン系シリコーン含有成分について多くの例示を開示している。
【0030】
適切なシリコーン含有成分は、一般式I(化1)で示される化合物を含む。
【化1】

ここで、R1は、それぞれ独立して、一価の反応基である一価のアルキル基または一価のアリール基、ヒドロキシ、アミノ、オキザ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロゲンまたはこれらの組み合わせから選択された官能基をさらに含む一価のアルキル基または一価のアリール基;および、1個〜100個の[-Si-O-]単位を含有し、かつ、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、オキザ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、ハロゲンまたはこれらの組み合わせから選択された官能基をさらに含む一価のシロキサン鎖から選択されるものであり、
bは0〜500であり、ここで、bが0以外のときは、bは表示値に等しいモードを有する反復単位数であり、
少なくとも一つのR1は、一価の反応基を含み、一部の実施の形態では1個と3個との間の数のR1は、一価の反応基を含む。
【0031】
この明細書で使用されているように、用語「一価の反応基」は、ラジカル重合および/またはカチオン重合に耐えられる官能基である。限定されないフリーラジカル反応基の例は、アクリレート(メタクリレート)、スチリル、ビニル、ビニルエーテル、C1-6アルキルアクリレート(メタクリレート)、アクリルアミド(メタクリルアミド)、C1-6アルキルアクリルアミド(メタクリルアミド)、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、C2-12アルケニル、C2-12アルケニルフェニル、C2-12アルケニルナフチル、C2-6アルケニルフェニルC1-6アルキル、O-ビニルカルバメートおよびO-ビニルカーボネートを含む。限定されないカチオン反応基の例は、ビニルエーテルまたはエポキシド基、および、これらの混合物を含む。一つの実施の形態において、フリーラジカル反応基は、アクリレート(メタクリレート)、アクリロキシ、アクリルアミド(メタクリルアミド)、および、これらの混合物を含む。
【0032】
適切な一価のアルキル基およびアリール基は、置換型および非置換型のメチル、エチル、プロピル、ブチル、2-ヒドロキシプロピル、プロポキシプロピル、ポリエチレンオキシプロピル、これら各基の組み合わせ、および、これらの同類の基等、一価の非置換型C1アルキル基〜C16アルキル基、C6-C14アリール基を含む。
【0033】
一つの実施の形態において、上記化1中のbが0であり、1個のR1が一価の反応基であり、少なくとも3個のR1が1個〜16個の炭素原子を有する一価のアルキル基から選択されるものであり、また他の実施の形態では1個〜6個の炭素原子を有する一価のアルキル基から選択されるものである。この実施の形態において、限定されないシリコーン含有成分の例は、2-メチル-,2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(「SiGMA」)、2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシプロピルオキシプロピル-トリス(トリメチルシロキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(「TRIS」)、3-メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、および、3-メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサンを含む。
【0034】
他の実施の形態において、上記化1中のbが2〜20、3〜15、あるいは、一部の実施の形態では3〜10であり、少なくとも1個の末端R1が一価の反応基であり、残りのR1が1個〜16個の炭素原子を有する一価のアルキル基から、また他の実施の形態では1個〜6個の炭素原子を有する一価のアルキル基から選択されるものである。さらに他の実施の形態において、上記化1中のbが3〜15であり、1個の末端R1が一価の反応基であり、他の末端R1が1個〜6個の炭素原子を有する一価のアルキル基を含み、残りのR1が1個〜3個の炭素原子を有する一価のアルキル基を含む。この実施の形態において、限定されないシリコーン含有成分の例は、(モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:400〜1000)(「OH-mPDMS」)、モノメタクリロキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:800〜1000)(「mPDMS」)を含む。
【0035】
他の実施の形態において、上記化1中のbが5〜400または10〜300であり、両末端R1が一価の反応基であり、残りのR1が、それぞれ独立して、1個〜18個の炭素原子を有すると共に、炭素原子間のいずれかに連結部分を有し、かつ、ハロゲンをさらに含有する一価のアルキル基から選択されるものである。
【0036】
他の実施の形態において、上記化1中における1個〜4個のR1が一般式(化2)で示されるビニルカーボネートまたはビニルカルバメートを含む。
【化2】

ここで、Yは、O-、S-、または、NH-を示すものであり、
Rは、水素原子またはメチル基を示すものであり、dは、1、2、3または4であり、qは、0または1である。
【0037】
シリコーン含有ビニルカーボネートまたはビニルカルバメートのモノマー類は、具体的には、1,3-ビス[4-(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブチル-1-イル]テトラメチル-ジシロキサン;3-(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル-[トリス(トリメチルシロキシ)シラン];3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート; 3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート;トリメチルシリルエチルビニルカーボネート;トリメチルシリルメチルビニルカーボネート;および、化3で示される物質を含む。
【化3】

ここで、200未満の弾性率(modulus)を有する生物医学装置が求められている場合に、1個のみのR1が一価の反応基を含み、残りのR1のうち2個だけが、一価のシロキサン基を含有することになる。
【0038】
一つの実施の形態において、シリコーンヒドロゲルレンズが求められている場合に、本発明のレンズは、ポリマーが形成される反応性モノマー成分の全重量に基づいて、少なくとも約20重量%、一部の実施の形態では約20重量%〜約70重量%の間のシリコーン含有成分を含む反応性混合物から形成されることになる。
【0039】
シリコーン含有成分の他の種類は、以下の複数の一般式で示されるポリウレタンマクロマー類を含む。
一般式IV-VI
(*D*A*D*G)a*D*D*E1
E(*D*G*D*A) a *D*G*D*E1または;
E(*D*A*D*G) a *D*A*D*E1
ここで、Dは、6個〜30個の炭素原子を有する、アルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アリールジラジカルまたはアルキルアリールジラジカルを示すものであり、
Gは、1個〜40個の炭素原子を有し、かつ、主鎖中にチオ連結部分またはアミン連結部分のいずれかを含有し得るアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、アリールジラジカルまたはアルキルアリールジラジカルを示すものであり、
*は、ウレタン連結部分またはウレイド連結部分を示すものであり、
aは、少なくとも1であり、
Aは、以下の一般式VII(化4)で示される二価の高分子ラジカルを示すものである。
【化4】

ここで、R11は、それぞれ独立して、1個〜10個の炭素原子を有し、かつ、炭素原子間のいずれかに連結部分を含有するアルキル基またはフッ素置換型アルキル基を示すものであり、yは、少なくとも1であり、pは、400〜10,000の分子量を有する部分を与えるものであり、各EおよびE1は、それぞれ独立して、以下の一般式VIII(化5)によって示される重合性の不飽和有機ラジカルを示すものである。
【化5】

ここで、R12は、水素原子またはメチル基であり、R13は、水素原子、1個〜6個の炭素原子を有するアルキルラジカル、または、-CO-Y-R15-で示されるラジカルであって、ここでYが-O-、Y-S-、または、-NH-であるラジカルであり、R14は、1個〜12個の炭素原子を有する二価のラジカルであり、Xは、-CO-、または、-OCO-を示すものであり、Zは、-O-、または、-NH-を示すものであり、Arは、6個〜30個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを示すものであり、wは、0〜6であり、xは、0または1であり、yは、0または1であり、zは、0または1である。
【0040】
一つの実施の形態において、シリコーン含有成分は、以下の一般式IX(化6)で示されるポリウレタンマクロマーを含む。
【化6】

ここで、R16は、イソホロンジイソシアネートのジラジカル等、イソシアネート基の除去後のジイソシアネートのジラジカルである。他の適切なシリコーン含有マクロマーは、フッ素含有エーテル(fluoroether)、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、イソホロンジイソシアネートおよびイソシアナトエチルメタクリレートの反応により調製された一般式X(化7)(式中のx+yは10〜30の範囲内の数である)で示される化合物である。
【化7】

【0041】
本発明での使用に適した他のシリコーン含有成分は、国際公開WO96/31792号に記述された、ポリシロキサン、ポリアルキレンエーテル、ジイソシアナート、ポリフッ化炭化水素、ポリフッ化エーテル、および、多糖基を含有するマクロマー等を含む。シリコーン含有成分の他の種類は、米国特許第5,314,960号明細書、米国特許第5,331,067号明細書、
米国特許第5,244,981号明細書、米国特許第5,371,147号明細書および米国特許第6,367,929号明細書に開示されているような基移動重合(GTP)によって調製されたシリコーン含有マクロマーを含む。米国特許第5,321,108号明細書、米国特許第5,387,662号明細書および米国特許第5,539,016号明細書は、ポリシロキサン類を記述しており、当該ポリシロキサン類は、極性を有するフッ化グラフト基または側基を有し、これらの基は、フッ素置換された末端炭素原子に結合した水素原子を有している。米国公開特許US2002/0016383号明細書は、エーテル連結部分およびシロキサニル連結部分を含有する親水性シロキサニルメタクリレート類と、ポリエーテルおよびポリシロキサニル基を含有する架橋可能なモノマー類とを記述している。上述したポリシロキサン類のいずれもが、本発明におけるシリコーン含有成分として、使用され得る。
【0042】
親水性成分は、残りの反応性成分と混合された場合に、結果的に得られるレンズに対して、少なくとも20%、また一部の実施の形態では少なくとも25%の含水率を付与できる成分を含む。適切な親水性成分は、親水性のモノマー類、プレポリマー類およびポリマー類を含み、全反応性成分の重量に基づいて、約10重量%〜約60重量%の間の量で、また一部の実施の形態では約15重量%〜約50重量%の量で、さらに他の実施の形態では約20重量%〜約40重量%の間の量で、存在してもよい。本発明のポリマー類を形成するために使用され得る親水性モノマー類は、少なくとも一つの重合性の二重結合と、少なくとも一つの親水性の官能基とを有している。重合性の二重結合の例は、アクリル、メタクリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、フマール、マレイン、スチリル、イソプロペニルフェニル、O-ビニルカーボネート、O-ビニルカルバメート、アリル、O-ビニルアセチル、および、N-ビニルラクタムおよびN-ビニルアミドの各官能基中の二重結合を含む。このような親水性モノマー類は、それ自体が架橋剤として使用されてもよい。「アクリル系」または「アクリル基含有」のモノマー類は、アクリル基(CR’H=CRCOX)を含有するモノマー類であり、ここで、Rは水素原子またはCH3であり、R’は水素原子、アルキル基またはカルボニル基であり、Xは酸素原子または窒素原子であり、当該モノマー類は、容易に重合することでも知られており、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、および、これらの混合物などである。
【0043】
本発明のヒドロゲルに導入されえる親水性のビニル基含有モノマー類は、N-ビニルラクタム類(例えば、N-ビニルピロリドン(NVP))、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N-カルボキシ-β-アラニンN-ビニルエステル等のモノマー類を含み、一つの実施の形態ではN-ビニルピロリドン(NVP)が好適とされる。
【0044】
本発明に利用され得る他の親水性モノマー類は、重合性の二重結合を含有する官能基で置換された一以上のヒドロキシル末端基を有するポリオキシエチレンポリオール類を含む。この例は、重合性の二重結合を含有する官能基で置換された一以上のヒドロキシル末端基を有するポリエチレングリコールを含む。この例は、イソシアナトエチルメタクリレート(「IEM」)、メタクリル酸無水物、メタクリロイルクロリド、ビニルベンゾイルクロリドまたはこれらの同類等の一当量以上の末端保護基と反応して、カルバメートまたはエステル基等の連結部分を介してポリエチレンポリオールに結合した一つ以上の重合性のオレフィン系末端基を有するポリエチレンポリオールを生成する、ポリエチレングリコールを含む。
【0045】
さらに他の例は、米国特許第5,070,215号明細書に開示された親水性のビニルカルバメートまたはビニルカルバメートモノマー類、および、米国特許第4,190,277号明細書に開示された親水性のオキサゾロンモノマー類である。他の適切な親水性モノマー類は、この技術分野における当業者にとって明白なはずである。
【0046】
一つの実施の形態において、本発明のポリマーに導入され得る親水性モノマー類は、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルメタクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)およびポリエチレングリコールモノメタクリレート等の親水性モノマー類を含む。
【0047】
他の実施の形態において、親水性モノマー類は、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、および、これらの混合物を含む。
【0048】
本発明の反応性混合物は、親水性成分として、一つ以上の親水性ポリマー(複数の親水性ポリマー)をさらに含有してもよい。この明細書で使用されているように、親水性ポリマーとは、約5,000ダルトンほどの多くの重量平均分子量を有する物質を云い、この物質は、シリコーンヒドロゲル処方に組み込まれた際に、硬化したシリコーンヒドロゲルの湿潤性を向上させるものである。一つの実施の形態において、当該親水性ポリマーの重量平均分子量が約30,000ダルトンを超え、他の実施の形態では約150,000ダルトン〜約2,00,000ダルトンの間、さらに他の実施の形態では約300,000ダルトン〜約1,800,000ダルトンの間、またさらに他の実施の形態では約500,000ダルトン〜約1,500,000ダルトンである。
【0049】
また、本発明の親水性ポリマー類の分子量は、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インク(John Wiley & Sons, Inc.)から発行された百科辞典「高分子科学および工学」第17巻第2版の第198頁〜第257頁の「N-ビニルアミドポリマー類」に記述されているように、動的粘度測定法に基づくK値によっても表現され得る。この方法で表現される場合に、親水性モノマー類は約46を超えるK値を示し、また一つの実施の形態では約46と約150との間のK値を示す。親水性ポリマー類は、コンタクトレンズを与える上で十分な量で、また湿潤性を少なくとも10%改善する上で十分な量で、さらに一部の実施の形態では表面処理していない湿潤性レンズを与える上で十分な量で、製品の処方中に存在している。コンタクトレンズに関して、「湿潤性」とは、約80°未満、70°未満の動的前進接触角を呈するレンズ、また一部の実施の形態では約60°未満の動的前進接触角を呈するレンズを云う。
【0050】
親水性ポリマーの適切な含有量は、全反応性成分の全重量に基づいて、約1重量%〜約20重量%、一部の実施の形態では約5重量%〜約17重量%、また他の実施の形態では約6重量%〜約15重量%の範囲を含む。
【0051】
親水性ポリマー類の例は、ポリアミド類、ポリラクトン類、ポリイミド類、ポリラクタム類、ならびに、官能性ポリアミド類、官能性ポリラクトン類、官能性ポリイミド類、官能性ポリラクタム類を含むが、これらに限定されるものではなく、官能性ポリアミド類の例としては、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)を、これよりも低分子量の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)等のヒドロキシル官能性モノマーと共重合化させた後に、結果的に得られるコポリマーのヒドロキシル基を、イソシアナトエチルメタクリレートまたはメタクリロイルクロリド等のラジカル重合性基を含有する物質と反応させることによって官能化したN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)などがある。また、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)またはN-ビニルピロリドン(NVP)から調製された親水性プレポリマー類が使用されてもよい。グリシジルメタクリレート環は、混合系中で他の親水性プレポリマーとの混合に使用されて親水性ポリマー、モノマー含有ヒドロキシル官能性シリコーン、および、相溶性を付与する他のあらゆる基の相溶性を向上させ得るジオールを与えるために、開環され得る。一つの実施の形態において、親水性ポリマー類は、その骨格部内に、環状アミドまたは環状イミド等を含むが、これらに限定されない少なくとも一つの環状部分を含有している。親水性ポリマー類は、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリ-N-ビニル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、および、ポリ-N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ-N-N-ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリ-2-エチル-オキサゾリン、ヘパリン多糖類、多糖類、これらの混合物、および、これらのコポリマー類(ブロックまたはランダム、分枝型、多鎖型、櫛型または星状のコポリマーを含む)を含むが、これらに限定されるものではなく、ここで、一部の実施の形態ではポリ-N-ビニルピロリドン(PVP)が特に好適である。また、ポリ-N-ビニルピロリドン(PVP)のグラフトコポリマー等のコポリマー類が使用されもよい。
【0052】
親水性ポリマー類は、本発明の医療装置に対して、改善された湿潤性、および、特に生体内における改善された湿潤性を与える。いかなる理論にも拘束されることなく、親水性ポリマー類が、水性環境中で、水素結合を水へ移行させ、これにより、より有効な親水性となる水素結合受容体であると考えられる。水がない場合は、反応性混合物への親水性ポリマーの導入を促進する。特定名の親水性ポリマー類は別として、任意の親水性ポリマーがシリコーンヒドロゲル処方中に添加された場合に、当該親水性ポリマーが(a)反応性混合物から実質的に相分離せず、かつ、(b)結果的に得られる硬化ポリマーに対して湿潤性を付与することを条件として、当該親水性ポリマーが本発明に有用であるはずであると期待される。一部の実施の形態において、親水性ポリマーが反応温度で希釈剤中に溶解されることが好ましい。
【0053】
また、相溶化剤が使用されてもよい。一部の実施の形態において、相溶化成分は、モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含有し、最終製品中で重合化および/または形成された場合に、選択された親水性成分と相溶化するものであれば、いかなる官能性シリコーンであってもよい。国際公開WO03/022321号に開示された相溶化試験法は、適切な相溶化剤を選択するために使用されてもよい。一部の実施の形態において、ヒドロキシル基をも含有するシリコーンモノマー、プレポリマーまたはマクロマーは、反応性混合物中に含有される。これらの例は、(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、モノ-(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端モノ-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:1100)、基移動重合(GTP)マクロマーを含有するヒドロキシル官能性シリコーン、ポリジメチルシロキサン類を含むヒドロキシル官能性マクロマー、これらの組み合わせ、および、これらの同類を含む。
【0054】
特定の実施の形態において、ヒドロキシル基含有成分も含まれる。本発明のポリマー類を形成するために使用され得るヒドロキシル基含有成分は、少なくとも一つの重合性の二重結合と、少なくとも一つの親水性の官能基とを有している。重合性の二重結合の例は、アクリル、メタクリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、フマール、マレイン、スチリル、イソプロペニルフェニル、O-ビニルカーボネート、O-ビニルカルバメート、アリル、O-ビニルアセチル、および、N-ビニルラクタムおよびN-ビニルアミドの各官能基中の二重結合を含む。ヒドロキシル含有成分は、架橋剤として機能することもある。さらに、ヒドロキシル含有成分は、ヒドロキシル基を含む。このヒドロキシル基は、第一級、第二級または第三級のアルコール中の基であってもよく、また、アルキル基またはアリール基上に配されてもよい。使用され得るヒドロキシル含有成分の例は、米国特許第5,006,622号明細書;米国特許第5,070,215号明細書;米国特許第5,256,751号明細書;および米国特許第5,311,223号明細書に開示されているように、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート、2-ヒドロキシエチルビニルカーボネート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート、ヒドロキシオクチルメタクリレート、および、他のヒドロキシル官能性モノマーを含むが、これらに限定されるものではない。一部の実施の形態において、親水性成分は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含む。特定の実施の形態において、反応性混合物中に、好ましくは、少なくとも3重量%の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を有しており、より好ましくは、少なくとも5重量%の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を有しており、最も好ましくは、少なくとも6重量%の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を有している。
【0055】
一般に、反応性混合物に、架橋モノマー類とも呼ばれる一つ以上の架橋剤を添加することが必要であり、当該架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(「EGDMA」)、トリメチロールトリメタクリレート(「TMPTMA」)、グリセロールトリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(ここで、ポリエチレングリコールは約5000以下の分子量を有している)、ならびに、上述した二つ以上の末端メタクリレート部分を含有する末端保護型ポリオキシエチレンポリオール類等の他のポリアクリレートおよびポリメタクリレートなどである。架橋剤は、例えば、反応性混合物中の反応性成分100グラム当たり約0.000415モル〜約0.0156モルの通常量で使用される。(ポリマー構造の一部を構成しない希釈剤および任意の追加の処理剤を除き、反応性成分は、すべて、反応性混合物中に存在している。)また、仮に、親水性モノマー類および/またはシリコーン含有モノマー類が架橋剤として機能する場合に、反応性混合物への架橋剤の添加は任意となる。架橋剤として機能でき、かつ、反応性混合物への追加の架橋剤の添加の必要性がない場合における親水性モノマー類の例は、上述した二つ以上の末端メタクリレート部分を含有する末端保護型ポリオキシエチレンポリオール類を含む。
【0056】
架橋剤として機能でき、かつ、反応性混合物への追加の架橋剤の添加の必要性がない場合におけるシリコーン含有モノマーの例は、α,ω -ビスメタクリロキシプロピルポリジメチルシランを含む。
【0057】
反応性混合物は、紫外線吸収剤、薬剤、抗菌剤、反応性染料、顔料、共重合性および非重合性の着色剤、離型剤、および、これらの組み合わせ等を含むが、これらに限定されない追加成分を含有してもよい。好適には、重合性触媒が反応性混合物に含有される。重合開始剤は、中程度の高温でフリーラジカルを生成する過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、イソプロピル過炭酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、および、これらの同類等の化合物、ならびに、α-ヒドロキシ芳香族ケトン類、アルコキシベンゾイン類、アセトフェノン類、アシルホスフィンオキシド類、ビスアシルホスフィンオキシド類、および、第三級アミンを有するジケトン、これらの混合物、および、これらの同類等の光重合開始剤を含む。光重合開始剤の例は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-ジメトキシベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure)819)、2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィンオキシドおよび2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、および、カンファーキノンと4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートである。市販されている可視光重合系の開始剤は、イルガキュア(Irgacure)819、イルガキュア(Irgacure)1700、イルガキュア(Irgacure)1800、イルガキュア(Irgacure)1850(これらのイルガキュア(Irgacure)はいずれもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)社製)、および、ルシリン(Lucirin)TPO開始剤(バーディシェ・アニリン・ウント・ソーダ・ファブリク(BASF)社製)を含む。市販されている紫外線重合系の開始剤は、ダロキュア(Darocur)1173およびダロキュア(Darocur)2959(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)社製)を含む。上述の重合開始剤、および、使用され得る他の重合開始剤は、ジェイ・ブイ・クリベロ(J.V. Crivello)およびケイ・ダイエットリカー(K. Dietliker)により著され、ジー・ブラッドレー(G. Bradley)により編集され、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インク(John Wiley & Sons, Inc.)から1998年に発行された「ラジカル重合、カチオン重合およびアニオン重合用の光重合開始剤」第3巻第2版に開示されており、この文献は、参照により、この明細書に組み込まれる。光重合開始剤は、反応性混合物の光重合を開始する上で十分な量、例えば、反応性混合物100重量部当たり約0.1重量部〜約2重量部の量で反応性混合物に使用される。反応性混合物の重合は、使用される重合開始剤によって決まる、熱または可視光または紫外線または他の手段を含む適切な選択手段を用いて開始され得る。また、重合の開始は、光重合開始剤を用いずに、例えば、電子線を用いて行われ得る。しかし、光重合開始剤が使用される場合の一つの実施の形態において、好適な重合開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure:登録商標)819)または1-ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)との組み合わせ等のビスアシルホスフィンオキシド類を含み、重合開始の好適な方法は、可視光を用いる方法である。好適な重合開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure:登録商標)819)である。
【0058】
反応性混合物中に存在するシリコーン含有成分(複数のシリコーン含有成分)の含有範囲は、反応性混合物中の反応性成分の約5重量%〜約95重量%、一部の実施の形態では約30重量%〜約85重量%、他の実施の形態では約45重量%〜約75重量%である。反応性混合物中に存在する親水性成分(複数の親水性成分)の適切な含有範囲は、反応性混合物中の反応性成分の約5重量%〜約80重量%、一部の実施の形態では約10重量%〜約60重量%、他の実施の形態では約20重量%〜約50重量%である。
【0059】
反応性成分と希釈剤との組み合わせは、約25重量%〜約65重量%のシリコーン含有モノマーと、約15重量%〜約40重量%の親水性モノマーと、約5重量%〜約65重量%のヒドロキシル基含有成分と、約0.2重量%〜約0.3重量%の架橋性モノマーと、約0重量%〜約3重量%の紫外線吸収性モノマーと、約5重量%〜約20重量%の親水性ポリマー(これらの成分は、すべて全反応性成分に対する重量%に基づいている)と、約20重量%〜約60重量%(反応性および非反応性の全成分に対する重量%)の一つ以上の請求項記載の希釈剤と、を有する組み合わせを含む。
【0060】
本発明の反応性混合物は、震盪または撹拌等、この技術分野における当業者にとって公知であり、かつ、公知の方法によってポリマー製品または装置を形成するために使用される、いずれかの方法によって調製され得る。
【0061】
例えば、本発明の生物医学装置は、反応性成分および希釈剤(複数の希釈剤)を重合開始剤と混合し、かつ、旋盤加工、切断加工およびこれらの同類の加工によって適切な形状に形成されることになる生成物を形成する上で適した条件で硬化させることによって形成されてもよい。また、反応性混合物は、成形型内に配された後に、適切な製品となるように硬化されてもよい。
【0062】
コンタクトレンズの製造において、反応性混合物を処理するための種々の方法は、公知であり、回転成形法および静的成形(static casting)法を含む。回転成形法は、米国特許第3,408,429号明細書および米国特許第3,660,545号明細書に開示されており、静的成形法は、米国特許第4,113,224号明細書および米国特許第4,197,266号明細書に開示されている。一つの実施の形態において、本発明のポリマーを含むコンタクトレンズの製造方法は、経済的であり、水和レンズの最終形状全体を精確に制御することを可能にする、シリコーンヒドロゲルの直接成形によって行われる。この直接成形法では、反応性混合物がシリコーンヒドロゲル、すなわち、水膨潤化ポリマーの最終的な所望形状を有する成形型内に配されると共に、当該反応性混合物が、モノマー類が重合化する条件に置かれることで、最終的な製品の所望形状を有するポリマー/希釈剤混合物を得る。
【0063】
図1を参照すると、図1には、コンタクトレンズ等の眼用レンズ100と、この眼用レンズ100を成形するために使用される成形型部品101〜102とが示されている。一部の実施の形態において、当該成形型部品は、後面用成形型部品101と、前面用成形型部品102とを含む。この明細書で使用されているように、用語「前面用成形型部品」とは、成形型部品の凹面104が眼用レンズの前面を成形するために使用されるレンズ成形面である成形型部品を云う。同様に、用語「後面用成形型部品」とは、成形型部品101の凸面105が眼用レンズ100の後面を成形することになるレンズ成形面を構成する成形型部品を云う。一部の実施の形態において、成形型部品101および102は、凹凸形状を有しており、これらの成形型部品101および102は、成形型部品101〜102の凹凸領域の最上縁の外周を囲む環状の平面フランジを含むことが好ましい。
【0064】
通常、成形型部品101〜102は、「サンドイッチ構造」となるように配置されている。前面用成形型部品102は、成形型の凹面104を上方に向けた状態で、サンドイッチ構造の下部に配置されている。後面用成形型部品101は、この後面用成形型部品101の凸面105を前面用成形型部品102の凹部領域内に部分的に突出している状態で、前面用成形型部品102上に対称的位置関係で配され得る。一つの実施の形態において、後面用成形型部品101は、その凸面105が前面用成形型部品102の凹面104の外側縁部に係合することで、両成形型部品が共同して、眼用レンズ100が形成される型空間を密閉できるように寸法設定されている。
【0065】
一部の実施の形態において、成形型部品101〜102は、熱可塑性樹脂で形成され、かつ、重合開始用の化学線に対して、当該部品の少なくとも一部、また一部の実施の形態では当該部品の全部が透過するようになっており、型空間内で反応性混合物の重合を開始する上で有効な強度および波長の化学線は、当該成形型部品101〜102を貫通できる。
【0066】
例えば、成形型部品を形成するために適した熱可塑性樹脂には、ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン;スチレンとアクリロニトリルまたはブタジエンとのコポリマー類または混合物、ポリアクリロニトリル、ポリアミド類、ポリエステル類、チコナ(Ticona)社製のトパス(Topas)またはゼオン(Zeon)社製のゼオノール(Zeonor)等の環状オレフィンコポリマー類、これらの組み合わせ、あるいは、他の公知物質を含めることができる。
【0067】
レンズ100を形成するための反応性混合物の重合後において、レンズ表面103は、通常、前面用成形型部品の凹面104に付着するはずである。本発明の製造ステップは、前面用成形型部品の凹面104からのレンズ表面103の離間を容易にする。第1の成形型部品101は、離型工程中に、第2の成形型部品102から分離され得る。一部の実施の形態において、レンズ100は、硬化工程中に、第2の成形型部品102(すなわち、前面用成形型部品)に付着し、かつ、分離後、レンズ100が第2の成形型部品102からの離間が完了するまで、第2の成形型部品102に付着した状態で残ることになる。他の実施の形態において、レンズ100は、第1の成形型部品101に付着することもある。
【0068】
離型工程後に付着状態にあるレンズ100および成形型部品は、水溶液と接触させられる。当該水溶液は、この水溶液の沸点を下回る、いずれかの温度に加熱され得る。例えば、一つの実施の形態において、水溶液は、この水溶液の沸点に上げられてもよい。加熱処理は、爆発の可能性を最小限にするための熱交換ユニットで、あるいは、液体を加熱するための他の任意の実行可能な手段または装置によって行われ得る。
【0069】
この明細書で使用されているように、製造方法は、成形型からレンズを取り外し、かつ、希釈剤を除去する、または、当該希釈剤を水溶液と交換するステップを含む。これらのステップは、それぞれ独立して、あるいは、単独のステップまたはステージで実行されてもよい。製造温度は、約10℃と当該水溶液の沸点との間、一部の実施の形態では約20℃と約95℃との間、また他の実施の形態では約40℃と約80℃との間、あるいは、約30℃と約70℃との間の任意の温度であってもよい。
【0070】
当該水溶液は、主として水である。一部の実施の形態において、水溶液は、少なくとも約70%の水、他の実施の形態では少なくとも約90%の水、また他の実施の形態では少なくとも約95%の水を含む。また、水溶液は、ホウ酸緩衝生理食塩水、ホウ酸ナトリウム溶液、重炭酸ナトリウム溶液、および、これらの同類等のコンタクトレンズ包装用溶液であってもよい。また、水溶液は、ポリエチレンソルビタンモノオレエートであるツイーン(Tween)80、チロキサポール(Tyloxapol)、オクチルフェノキシ(オキシエチレン)エタノール、両性イオン界面活性剤(amphoteric)10等の添加剤、保存剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビン酸、DYMED(登録商標)、グルコン酸クロルヘキサジン、過酸化水素、チメロサール、ポリクアド(polyquad:登録商標、塩化ポリドロニウム)、ポリヘキサメチレンビグアニド、抗カビ剤)、滑剤、塩類および緩衝液を含むものであってもよい。一部の実施の形態において、添加剤は、約0.01重量%〜10重量%の間で変動するが、約10重量%未満の累積量で、水和溶液中に添加され得る。
【0071】
プロトン化済みの希釈剤が使用される実施の形態において、水溶液は、プロトン化済みの希釈剤を脱プロトン化し、かつ、水混和性である脱プロトン化済みの希釈剤を調製する上で十分なpHを有している。当該プロトン化済みの希釈剤が酸である実施の形態において、水溶液のpHは、約10未満であり、また一部の実施の形態ではpHが約7と約10との間である。当該プロトン化済みの希釈剤がアミンである実施の形態において、水溶液のpHは、約4を超えるものであり、また一部の実施の形態ではpHが約4と約7との間である。
【0072】
水溶液に対する眼用レンズ100の露出は、洗浄、噴霧、浸水(soaking)、浸漬、あるいは、これらの任意の組み合わせ等、いかなる方法によっても達成され得る。例えば、一部の実施の形態において、レンズ100は、水和塔(hydration tower)内で、脱イオン水を含む水溶液で洗浄され得る。
【0073】
水和塔を用いる実施の形態において、レンズ100を含む前面用成形型部品102は、パレットまたはトレイ内に配置され、かつ、垂直方向に積み重ねられ得る。水溶液は、この水溶液がレンズ100全体に流下するように、積み重ねたレンズ100の上部に導入され得る。また、水溶液は、水和塔に沿う種々の位置に導入され得る。一部の実施の形態において、トレイは、次第に新鮮な水溶液に露出されていくように、レンズ100を上方に移動させてもよい。
【0074】
他の実施の形態において、眼用レンズ100は、水溶液中で浸水(soaking)され、あるいは浸漬される。
【0075】
接触ステップは、約12時間以下、一部の実施の形態では約2時間以下、また他の実施の形態では約2分間〜約2時間、行われ得るが、接触ステップの長さは、あらゆる添加剤を含み、かつ、溶液または溶媒に使用されるレンズ材料および当該溶液の温度によって決まる。十分な処理時間は、通常、コンタクトレンズを収縮させ、かつ、成形型部品からレンズを離間させる。接触時間を長くすれば、浸出状態が進むことになる。
【0076】
使用される水溶液の量は、レンズ1枚当たり約1ミリリットルを超える量、また一部の実施の形態ではレンズ1枚当たり約5ミリリットルを超える量であってもよい。
【0077】
一部の方法において、分離または離型後に、支持フレームの一部となる前面用成形型部品上のコンタクトレンズは、これらのコンタクトレンズが前面用成形型部品から離間したときに、当該コンタクトレンズを受け入れるために、細長い穴が形成された個別の凹状カップに結合される。これらのカップは、トレイの一部とされ得る。例示は、それぞれ32枚のレンズを搭載するトレイを含み、20枚のトレイは、マガジン内に積み重ねられ得る。
【0078】
本発明の他の実施の形態によれば、レンズは、水溶液中に浸漬される。一つの実施の形態において、マガジンは積み重ねられた後に、水溶液を収容するタンク内に沈められ得る。水溶液は、上述したように、他の添加物をも含む。
【0079】
本発明の生物医学装置、具体的には眼用レンズは、その複数の特性が特に有用になるように当該複数の特性間の均衡を保っている。このような複数の特性は、透明性、含水率、酸素透過性および接触角を含む。したがって、一つの実施の形態において、生物医学装置は、約17%を超える含水率、約20%を超える含水率、また一部の実施の形態では約25%を超える含水率を有するコンタクトレンズである。
【0080】
この明細書で使用されているように、透明性とは、実質的に目視できる霞みを有していないことを意味する。透明レンズは、クーパー・サージカル・インク(CSI)レンズと比較して、約150%未満のヘイズ値、より好ましくは約100%未満のヘイズ値を有している。
【0081】
適切な酸素透過性は、約40バーラー(約4.0×10−9立方センチメートル(標準状態)センチメートル/(平方センチメートル秒水銀柱センチメートル)、ここで1水銀柱センチメートル=1.3×10パスカル)を超えるもの、また一部の実施の形態では約60バーラー(約6.0×10−9立方センチメートル(標準状態)センチメートル/(平方センチメートル秒水銀柱センチメートル)、ここで1水銀柱センチメートル=1.3×10パスカル)を超えるものを含む。
【0082】
また、生物医学装置、具体的には眼用装置およびコンタクトレンズは、約80°未満、約75°未満、また一部の実施の形態では約70°未満の平均接触角(前進)を有している。一部の実施の形態において、本発明の製品は、上述の酸素透過性、含水率および接触角の組み合わせを有している。上述の範囲の全組み合わせは、本発明内に入るものと考えられる。
【0083】
〔ハンセン溶解度パラメータ〕
ハンセン溶解度パラメータδPは、バートン(Barton)編集で1983年発行の「溶解度パラメータのシーアールシー(CRC)ハンドブック」第1版、第85頁〜第87頁に記述され、かつ、表13、14を用いる原子団寄与法を用いることによって算出されてもよい。
【0084】
〔ヘイズ値の測定〕
ヘイズ値は、室温で、平坦な黒色背景上に置かれた、20ミリメートル×40ミリメートル×10ミリメートルの透明なガラス製セル内のホウ酸緩衝生理食塩水中に検査用の水和レンズを配置し、当該レンズを収容したセル下から当該セルの法線に対して66°の角度で、光ファイバ灯(屈折力(power)4〜5.4に設定された口径0.5インチ(約1.27センチメートル)の光導波路を備えたチタン・ツール・サプライ(Titan Tool Supply Co.)社製の光ファイバ灯)からの光を照射し、当該レンズを収容したセル上の当該セルの法線上から、14ミリメートルのレンズプラットホーム上に配置されたビデオカメラ(ナビター(Navitar)社製ズームレンズTV Zoom 7000を備えたカメラDVC1300C:19130RGB)で当該レンズ画像を撮影することによって、測定される。背景の散乱光は、EPIX XCAP V1.0ソフトウエアを用いて対照セルの画像を減じることによって、当該レンズの散乱光から差し引かれる。差し引かれた散乱光の画像は、当該レンズの中央部分の10ミリメートル上を積分した後に、ヘイズ値100に適宜設定されるジオプター:−1.00のクーパー・サージカル・インク薄型レンズ(CSI Thin Lens(登録商標))を、ヘイズ値ゼロに設定された無レンズの状態と比較することによって定量分析される。五枚のレンズが分析されると共に、これらの結果は、標準品としてのクーパー・サージカル・インクレンズ(CSI Lens)の百分率として、ヘイズ値を得るように平均化される。これらのレンズは、(上述したクーパー・サージカル・インク(CSI)レンズのヘイズ値の)約150%未満のヘイズ値、また一部の実施の形態では約100%未満のヘイズ値を有している。
【0085】
〔含水率〕
コンタクトレンズの含水率は、以下のようにして測定された:三枚一組のレンズを三組、包装溶液中に24時間、置かれる。各レンズは、湿った布巾で引き取られ、かつ、秤量される。これらのレンズは、0.4水銀柱インチ(0.4水銀柱センチメートル:0.52×10パスカル)以下の圧力で、60℃で4時間、乾燥処理された。乾燥したレンズは、秤量された。含水率は、以下のようにして算出される:
【数1】

【0086】
含水率の平均および標準偏差は、複数のサンプルについて算出され、かつ、記録される。
【0087】
〔弾性率(modulus)〕
弾性率は、ゲージ初期高さまで下げられたロードセルを備えた移動式の引張試験機の一定速度のクロスヘッドを用いることによって測定される。適切な引張試験機は、インストロン(Instron)社製の型式1122を含む。長さ0.522インチ(約1.3259センチメートル)、「耳部分」の幅0.276インチ(約0.7010センチメートル)、および、「首部分」の幅0.213インチ(約0.5410センチメートル)を有する犬骨形状のサンプルには、把持力が印加され、かつ、当該サンプルが破壊されるまで、一定の歪み速度2インチ/分(約5.08センチメートル/分)で引き伸ばされる。サンプルのゲージ初期高さ(Lo)および破壊時のサンプルの長さ(Lf)が測定される。各組成物の12個の検査サンプルについて、伸び率が測定され、かつ、その平均値が記録される。伸び率の百分率は、[(Lf-Lo)/Lo]×100である。引張弾性率は、応力/歪み曲線の初期の直線部分で測定される。
【0088】
〔前進接触角〕
前進接触角は、以下のようにして測定された。上記各組から抽出した4個のサンプルは、レンズから約5ミリメートル幅の中央片を切除することによって調製され、かつ、包装溶液中で平衡化された。レンズ表面とホウ酸緩衝生理食塩水との間の湿潤力は、当該サンプルが当該食塩水中に浸漬されながら、あるいは、当該食塩水中から引き出されながら、ウィルヘルミー(Wilhelmy)微量天秤を用いて、23℃で測定される。以下の等式が使用される。
F=2γpcosθまたはθ=cos-1(F/2γp)
ここで、Fは湿潤力であり、γは液体プローブの表面張力であり、pはメニスカスにおけるサンプルの周囲長であり、θは接触角である。前進接触角は、サンプルが包装溶液中に浸漬されている場合における湿潤実験の一部から得られる。実験は、各サンプルについて4回反復され、その結果は、当該レンズに関する前進接触角を得るために、平均化された。
【0089】
〔Dk値〕
酸素透過性を示すDk値は、以下のようにして測定される。複数のレンズは、直径4ミリメートルの金製カソードと銀製アノードとから構成され、かつ、メッシュ状の支持体で上部が被膜されたポーラログラフ酸素センサ上に配置された。レンズは、酸素濃度2.1%の湿った雰囲気に曝される。レンズを通して拡散する酸素は、当該センサによって測定される。複数のレンズは、厚さを増すために、各レンズ上部に積み重ねられるか、あるいは、厚みのあるレンズが使用される。顕著に値の異なる厚さを有する四枚のサンプルについて、L/Dk値が測定され、かつ、その厚さの座標に対してグラフが描かれる。当該サンプルのDk値は、厚さに対して反比例を示す逆勾配グラフになる。参照値は、この方法を用いて、市販のコンタクトレンズに対して測定されたものである。ボシュ・アンド・ロム(Bausch & Lomb)社製のバラフィルコンA系レンズは、約79バーラー(約7.9×10−9立方センチメートル(標準状態)センチメートル/(平方センチメートル秒水銀柱センチメートル)、ここで1水銀柱センチメートル=1.3×10パスカル)の測定値を与える。エタフィルコン系レンズは、20〜25バーラー(約2.0〜2.5×10−9立方センチメートル(標準状態)センチメートル/(平方センチメートル秒水銀柱センチメートル)、ここで1水銀柱センチメートル=1.3×10パスカル)の測定値を与える。(1バーラー=10−10立方センチメートル(ガス)センチメートル/(平方センチメートル(ポリマー)秒水銀柱センチメートル)、ここで1水銀柱センチメートル=1.3×10パスカル))
【0090】
さらに、以下の実施例は、本発明を説明するが、本発明を限定しない。これらの実施例は、本発明を実施する方法を示唆することのみを意味する。コンタクトレンズ分野における当業者は勿論のこと、他の分野の専門家でさえ、本発明を実施する他の方法を見出せることがある。しかし、当該方法は、本発明の範囲内に包含されるものと考えられる。
【0091】
実施例に使用される他の材料の一部は、以下のように識別される。
DMA N,N-ジメチルアクリルアミド
HEMA 2-ヒドロキシエチルメタクリレート
Norbloc 2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロイルエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール
PVP ポリ(N-ビニルピロリドン)(K値90)
IPA イソプロピルアルコール
D3O 3,7-ジメチル-3-オクタノール
TPME トリプロピレングリコールメチルエーテル
TEGDMA テトラエチレングリコールジメタクリレート
CGI819 ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド
NVP N-ビニルピロリドン
OH-mPDMS 実施例28と同様に調製された、モノ-(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端モノ-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量:612)
【0092】
〔実施例1〜11〕
各モノマー成分が表1に挙げられた量で含有される80重量%の複数のモノマー成分と、表1に挙げられた20重量%の希釈剤とを含有する反応性混合物が調製された。反応性混合物は、約600水銀柱ミリメートル〜700水銀柱ミリメートル(約7.998パスカル〜約9.331パスカル)の圧力下、室温で約30分間、脱気された。その後、反応性混合物は、熱可塑性樹脂製のコンタクトレンズ成形型(ゼオノール(Zeonor)製の前面用成形型部品、および、ポリプロピレン製の後面用成形型部品)内に投入され、かつ、当該反応性混合物には、窒素ガス雰囲気中で、55℃±5℃で25分間、フィリップス(Philips)社製の蛍光灯TL20W/03Tを用いて1.2ミリワット/平方センチメートル〜1.8ミリワット/平方センチメートルの紫外線が照射された。結果的に得られたレンズは、手動で離型され、かつ、前面用成形型部品(FC)内の当該レンズを、90(±10)℃の脱イオン水中に、約2分間、浸漬させることによって、当該前面用成形型部品から分離された。仮に、レンズが前面用成形型部品(FC)から2分間で離れない場合に、レンズは90(±5)℃の脱イオン水中に保持され、かつ、当該レンズには、使い捨てピペットを用いて当該同一の脱イオン水が注がれた。仮に、レンズが、それでも未だ前面用成形型部品(FC)から離れない場合に、レンズは、前面用成形型部品(FC)から手で採取された。その後、レンズは、瓶内に移され、かつ、以下の二つの交換ステップ−ステップ1)最短30分間で90(±5)℃の脱イオン水を交換するステップ、および、ステップ2)最短30分間で25(±5)℃の脱イオン水を交換するステップが行われた。レンズは、その後、包装溶液中で平衡化され、かつ、包装溶液中で点検された。レンズは、5ミリリットル〜7ミリリットルのホウ酸緩衝生理食塩水を含むバイアル瓶内に収容され、栓が閉じられ、120℃で30分間、殺菌処理された。動的接触角(DCA)の結果は、表3に挙げられている。
【表1】

【表2】

【0093】
D3O(3,7-ジメチル-3-オクタノール)は、水処理に適していなかった。実施例8は、TPME(トリプロピレングリコールメチルエーテル)濃度を変更して反復された。濃度の変更により、顕著に変わる接触角を有するコンタクトレンズを製造した。
【0094】
〔実施例12〜21〕
各モノマー成分が表1に挙げられた量で含有される55重量%の複数のモノマー成分と、表1に挙げられた45重量%の希釈剤(55重量%のTPME(トリプロピレングリコールメチルエーテル)と表3に挙げられた45重量%の共希釈剤との混合物)とを含有する反応性混合物が調製された。反応性混合物は、約600水銀柱ミリメートル〜700水銀柱ミリメートル(約7.998パスカル〜約9.331パスカル)の圧力下、室温で約30分間、脱気された。その後、反応性混合物は、熱可塑性樹脂製のコンタクトレンズ成形型(ゼオノール(Zeonor)製の前面用成形型部品、および、ポリプロピレン製の後面用成形型部品)内に投入され、かつ、当該反応性混合物には、窒素ガス雰囲気中で、55℃±5℃で25分間、フィリップス(Philips)社製の蛍光灯TL20W/03Tを用いて1.2ミリワット/平方センチメートル〜1.8ミリワット/平方センチメートルの紫外線が照射された。結果的に得られたレンズは、手動で離型され、かつ、前面用成形型部品(FC)内の当該レンズを、90(±10)℃の脱イオン水中に、約5分間、浸漬させることによって、当該前面用成形型部品から分離された。仮に、レンズが前面用成形型部品(FC)から5分間で離れない場合に、レンズは90(±5)℃の脱イオン水中に保持され、かつ、当該レンズには、使い捨てピペットを用いて当該同一の脱イオン水が注がれた。仮に、レンズが、それでも未だ前面用成形型部品(FC)から離れない場合に、レンズは、前面用成形型部品(FC)から手で採取された。その後、レンズは、瓶内に移され、かつ、以下の二つの交換ステップ−ステップ1)最短30分間で90(±5)℃の脱イオン水を交換するステップ、および、ステップ2)最短30分間で25(±5)℃の脱イオン水を交換するステップが行われた。レンズは、その後、包装溶液中で平衡化され、かつ、包装溶液中で点検された。レンズは、5ミリリットル〜7ミリリットルのホウ酸緩衝生理食塩水を含むバイアル瓶内に収容され、栓が閉じられ、120℃で30分間、殺菌処理された。動的接触角(DCA)の結果は、表3に挙げられている。
【表3】

【0095】
実施例18は、種々の条件下で、反復された。条件を変更した場合、および、同一条件下で、当該実施例を反復した場合は、平均接触角に広いバラツキを有するコンタクトレンズを与えた。実施例13は、種々の条件下で、複数回、反復した場合であっても、低く安定した動的接触角(DCA)値を呈するレンズを製造した。
【0096】
〔実施例22〕
包装溶液内で分離処理が実施されたことを除き、実施例13と同様に、レンズが形成された。要するに、結果的に得られたレンズは、手動で離型され、かつ、前面用成形型部品(FC)内の当該レンズを、90(±10)℃の包装溶液中に、約5分間、浸漬させることによって、当該前面用成形型部品から分離された。仮に、レンズが前面用成形型部品(FC)から5分間で離れない場合に、レンズは90(±5)℃の包装溶液中に保持され、かつ、当該レンズには、使い捨てピペットを用いて当該同一の包装溶液が注がれた。仮に、レンズが、それでも未だ前面用成形型部品(FC)から離れない場合に、レンズは、前面用成形型部品(FC)から手で採取された。その後、レンズは、瓶内に移され、かつ、以下の二つの交換ステップ−ステップ1)最短30分間で25(±5)℃の包装溶液を交換するステップ、および、ステップ2)最短30分間で25(±5)℃の包装溶液を交換するステップが行われた。レンズは、その後、包装溶液中で点検された。レンズは、5ミリリットル〜7ミリリットルのホウ酸緩衝生理食塩水を含むバイアル瓶内に収容され、栓が閉じられ、120℃で30分間、殺菌処理された。動的接触角(DCA)の結果および分離状態の結果は、表4に挙げられている。
【0097】
〔実施例23〕
各モノマー成分が表1に挙げられた量で含有される55重量%の複数のモノマー成分と、希釈剤としての45重量%の1-デカン酸とを含有する反応性混合物が調製された。反応性混合物は、約600水銀柱ミリメートル〜700水銀柱ミリメートル(約7.998パスカル〜約9.331パスカル)の圧力下、室温で約30分間、脱気された。その後、反応性混合物は、熱可塑性樹脂製のコンタクトレンズ成形型内に投入され、かつ、当該反応性混合物には、窒素ガス雰囲気中で、55℃±5℃で25分間、フィリップス(Philips)社製の蛍光灯TL20W/03Tを用いて1.2ミリワット/平方センチメートル〜1.8ミリワット/平方センチメートルの紫外線が照射された。結果的に得られたレンズは、手動で離型され、かつ、前面用成形型部品(FC)内の当該レンズを、90(±10)℃の包装溶液中に、約5分間、浸漬させることによって、当該前面用成形型部品から分離された。その後、レンズは、瓶内に移され、かつ、以下の二つの交換ステップ−ステップ1)最短30分間で25(±5)℃の包装溶液を交換するステップ、および、ステップ2)最短30分間で25(±5)℃の包装溶液を交換するステップが行われた。レンズは、その後、包装溶液中で点検された。レンズは、5ミリリットル〜7ミリリットルのホウ酸緩衝生理食塩水を含むバイアル瓶内に収容され、栓が閉じられ、120℃で30分間、殺菌処理された。動的接触角(DCA)の結果および分離状態の結果は、表4に挙げられている。
【表4】

【0098】
プロトン化済みの希釈剤の含有は、包装溶液を用いる分離処理を容易にした。
【0099】
〔実施例24〜27〕
各モノマー成分が表2に挙げられた量で含有される55重量%の複数のモノマー成分と、表5に挙げられた55重量%のTPME(トリプロピレングリコールメチルエーテル)と45重量%の共希釈剤とから構成された45重量%の希釈剤とを含有する反応性混合物が調製された。反応性混合物は、約600水銀柱ミリメートル〜700水銀柱ミリメートル(約7.998パスカル〜約9.331パスカル)の圧力下、室温で約30分間、脱気された。その後、反応性混合物は、熱可塑性樹脂製のコンタクトレンズ成形型内に投入され、かつ、当該反応性混合物には、窒素ガス雰囲気中で、55℃±5℃で25分間、フィリップス(Philips)社製の蛍光灯TL20W/03Tを用いて1.2ミリワット/平方センチメートル〜1.8ミリワット/平方センチメートルの紫外線が照射された。結果的に得られたレンズは、手動で離型され、かつ、前面用成形型部品(FC)内の当該レンズを、90(±10)℃の包装溶液中に、約5分間、浸漬させることによって、当該前面用成形型部品から分離された。その後、レンズは、瓶内に移され、かつ、以下の二つの交換ステップ−ステップ1)最短30分間で25(±5)℃の包装溶液を交換するステップ、および、ステップ2)最短30分間で25(±5)℃の包装溶液を交換するステップが行われた。レンズは、その後、包装溶液中で点検された。レンズは、5ミリリットル〜7ミリリットルのホウ酸緩衝生理食塩水を含むバイアル瓶内に収容され、栓が閉じられ、120℃で30分間、殺菌処理された。動的接触角(DCA)の結果および分離状態の結果は、表4に挙げられている。
【表5】

【0100】
分離溶液としての包装溶液を用いる実施例は、同一の希釈剤および希釈剤を用いる実施例と比較して改善された分離特性を示した(実施例25および27は、それぞれ実施例24および26と比較された)。実施例26を実施例24および13と比較すると、プロトン化済みの希釈剤中の短い炭素鎖が、脱イオン水を用いる分離処理を可能にする。
【0101】
〔実施例28〕
45.5キログラムの3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンメタクリレート(AHM)および3.4グラムのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む撹拌溶液には、10ミリリットルのプラチナ(Pt(0))ジビニルテトラメチルジシロキサンのキシレン溶液(プラチナ濃度:2.25%)が添加された後に、44.9キログラムのn-ブチルポリジメチルシランが添加された。反応熱は、約20℃の反応温度を維持するために調節された。n-ブチルポリジメチルシランが完全に消費された後に、プラチナ(Pt)触媒は、6.9グラムのジエチルエチレンジアミンの添加により、失活処理された。未処理の反応性混合物は、ラフィネートの3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(AHM)の残留量が0.1%未満になるまで、181キログラムのエチレングリコールで数回にわたって抽出された。10グラムのブチル化ヒドリキシトルエン(BHT)は、得られたラフィネートに添加され、溶解するまで撹拌された後に、残留エチレングリコールが除去され、64.5キログラムのモノ-(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピロキシ)プロピル末端モノ-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(HO-mPDMS)を得た。得られた液体には、6.45グラムの4-メトキシフェノール(MeHQ)が添加され、撹拌され、濾過されて、最終的に、64.39キログラムのモノ-(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピロキシ)プロピル末端モノ-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(HO-mPDMS)を無色油として得た。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】眼用レンズと、当該眼用レンズを形成する上で使用される成形型の部品とを示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスにおいて、
少なくとも一つのシリコーン含有モノマー、少なくとも一つの親水性モノマー、および、約2と約7との間のハンセン溶解度パラメータδPを呈する少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤またはプロトン化可能な希釈剤を含む希釈剤を含む反応性混合物を硬化させて、約80°未満の前進接触角を呈する眼用装置を形成するステップと、
プロトン化済みまたはプロトン化可能な共希釈剤の前記ハンセン溶解度パラメータδPを変更して水溶性を向上させることができる水溶液に、前記眼用装置を接触させるステップと、
前記水溶液で前記希釈剤を除去するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記希釈剤は、約2と約7との間のハンセン溶解度パラメータδPを呈する少なくとも一つの共希釈剤をさらに含む、プロセス。
【請求項3】
請求項2に記載のプロセスにおいて、
前記共希釈剤は、2個〜20個の炭素を有し、かつ、炭素:ヒドロキシル基由来の酸素原子の含有比が最大で約8:約1であるアルコール類、10個〜20個の炭素原子を有し、かつ、第一級アミン類誘導体であるアミド類、および、6個〜20個の炭素原子を有するカルボン酸類、ならびに、これらの混合物、からなる群より選択される、プロセス。
【請求項4】
請求項2に記載のプロセスにおいて、
前記希釈剤は、5個〜20個の炭素を有し、かつ、炭素:ヒドロキシル基由来の酸素原子の含有比が約3:約1〜約6:約1であるアルコール類、および、これらの混合物、からなる群より選択される、プロセス。
【請求項5】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記除去ステップは、約20℃〜約95℃の温度で実行される、プロセス。
【請求項6】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記除去ステップは、約70℃〜約95℃の温度で実行される、プロセス。
【請求項7】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記反応性混合物は、前記反応性混合物中の全反応性成分に基づいて、約30重量%〜約85重量%のシリコーン含有成分を含む、プロセス。
【請求項8】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記反応性混合物は、前記反応性混合物中の全反応性成分に基づいて、約10重量%〜約60重量%のシリコーン含有成分を含む、プロセス。
【請求項9】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記シリコーン含有成分は、少なくとも一つの単官能性シリコーンモノマーを含む、プロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスにおいて、
前記少なくとも一つの単官能性シリコーンモノマーは、モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン、モノメタクリロキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン、2-メチル-,2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル、および、これらの混合物、からなる群より選択される、プロセス。
【請求項11】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記親水性成分は、少なくとも一つの親水性モノマーであって、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルメタクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリビニルピロリドン、および、これらの混合物、からなる群より選択される、少なくとも一つの親水性モノマー、を含む、プロセス。
【請求項12】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記親水性成分は、少なくとも一つの親水性モノマーであって、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、および、これらの混合物、からなる群より選択される、少なくとも一つの親水性モノマー、を含む、プロセス。
【請求項13】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記反応性混合物は、少なくとも一つの親水性ポリマーをさらに含む、プロセス。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスにおいて、
前記少なくとも一つの親水性ポリマーは、前記反応性混合物中の全反応性成分に対して、約1重量%〜約17重量%の間の量で、前記反応性混合物中に存在している、プロセス。
【請求項15】
請求項13に記載のプロセスにおいて、
前記親水性ポリマーは、ポリ-N-ビニルピロリドンを含む、プロセス。
【請求項16】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記プロトン化済みの希釈剤は、6個〜18個の炭素原子を有するカルボン酸類、6個〜10個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェノール類、および、これらの混合物、からなる群より選択され、
前記少なくとも一つのプロトン化可能な希釈剤は、6個〜14個の炭素原子を有するアミン類、および、これらの混合物、からなる群より選択される、プロセス。
【請求項17】
請求項16に記載のプロセスにおいて、
前記少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤は、デカン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ドデカン酸、および、これらの混合物、からなる群より選択され、
前記プロトン化可能な希釈剤は、デシルアミン、オクチルアミン、ヘキシルアミン、および、これらの混合物、からなる群より選択される、プロセス。
【請求項18】
請求項16に記載のプロセスにおいて、
前記少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤は、デカン酸を含む、プロセス。
【請求項19】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
前記シリコーン含有成分は、モノ-(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端モノ-ブチル末端ポリジメチルシロキサンを含み、
前記親水性成分は、N,N-ジメチルアクリルアミド、および、少なくとも一つの親水性ポリマーを含む、プロセス。
【請求項20】
請求項19に記載のプロセスにおいて、
前記親水性成分は、2-ヒドロキシエチルメタクリレートをさらに含む、プロセス。
【請求項21】
請求項19に記載のプロセスにおいて、
前記シリコーン含有成分は、約45重量%〜約75重量%の量で存在し、前記親水性成分は、約20重量%〜約50重量%の量で存在し、前記希釈剤は、トリプロピレングリコールメチルエーテルをさらに含む、プロセス。
【請求項22】
プロセスにおいて、
少なくとも一つのシリコーン含有モノマー、少なくとも一つの親水性モノマー、および、少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤またはプロトン化可能な希釈剤を含む反応性混合物を反応させて、約80°未満の前進接触角を呈する眼用装置を形成するステップと、
前記眼用装置を、前記プロトン化済みまたはプロトン化可能な希釈剤のハンセン溶解度パラメータδPを変更できる交換溶液に、接触させるステップと、
を含む、プロセス。
【請求項23】
請求項22に記載のプロセスにおいて、
前記反応性混合物は、少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤であって、6個〜18個の炭素原子を有するカルボン酸類、6個〜10個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェノール類、および、これらの混合物、からなる群より選択される、少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤、を含む、プロセス。
【請求項24】
請求項22に記載のプロセスにおいて、
前記少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤は、デカン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ドデカン酸、および、これらの混合物からなる群より選択され、
前記プロトン化可能な希釈剤は、デシルアミン、オクチルアミン、ヘキシルアミン、および、これらの混合物、からなる群より選択される、プロセス。
【請求項25】
請求項22に記載のプロセスにおいて、
前記少なくとも一つのプロトン化済みの希釈剤は、デカン酸を含む、プロセス。

【図1】
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【公表番号】特表2010−508389(P2010−508389A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534603(P2009−534603)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/022341
【国際公開番号】WO2008/054651
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(591175675)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (44)
【Fターム(参考)】