説明

透明タッチパネル

【課題】 外光反射による視認性低下が改善され、また、表面のハードコート性に優れ生産性のよい透明タッチパネルを提供する。
【解決手段】 透明タッチパネルを、透明タッチパネルの最表面の透明基材の表面にハードコート層が積層され、ハードコート層の表面に形成された微細凹凸の平均ピッチPaveが可視光波長λvisに対し、Pave≦λvis/√2の関係を満たすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDA乃至は携帯情報端末(機器)、カーナビゲーションシステム等の各種電子機器の表示部に使用される透明タッチパネルと、それを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、表示パネルに液晶表示ディスプレイ(LCD)等を用いた表示部を有する各種電子機器のうち、例えば、PDA(Personal DigitalAssistants)乃至は携帯情報端末、カーナビゲーションシステム、POS(販売時点情報管理)端末、ATM(現金自動預金支払兼用機)等では、表示パネルの前面に透明タッチパネルを配置して、入力機能付き表示部とした構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−48625号公報
【特許文献2】再公表WO00/63924号公報
【特許文献3】特開2003−50673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、透明タッチパネルとしては、従来から、抵抗膜方式、接触方式、静電容量方式、(磁)歪方式、電磁誘導方式、光学(赤外線)方式、超音波方式等と各種方式のものが知られているが、いずれの方式のものにしても、表示パネルの前面に配置する関係上、透明タッチパネル部分での或る程度の外光の反射は避けられず、これによって、表示の視認性が低下したり、或いは、表示パネルからの光の利用効率が低下したりする問題があった。なかでも、その構成上透明基材が空隙を挟んで2層以上あり、反射面がその分多くなる抵抗膜方式の透明タッチパネルは、反射光の視認性への影響が大きかった。
【0005】
そこで、例えば、反射面を梨地処理して外部からの光をパネル前方へ向かって全反射でなく散乱反射させることによって背景の映り込みを防止する構成が開発されている(特許文献1参照)。しかし上記梨地処理面の凹凸は、外部からの光をパネル前方へ向かって散乱反射するだけでなく、液晶表示ディスプレイからの光も散乱透過する。この散乱透過光の干渉と液晶画素ピッチとに起因して砂目状の明暗を生じ、観察者にとって表示画面がぎらついて見える。
【0006】
また、蒸着、スパッタリング、或いは塗工等の手法によって低屈折率層と高屈折率層との多層膜からなる反射防止層を設ける構成も開発されている(特許文献2参照)。しかし、この構成では視認性は良いが、コストが高く生産性が低い上、屈折率と膜厚に制限があるため最表層にハードコート層を形成することが難しい。ハードコート層は厚みがあるほどその効果が高く、一般に数μm〜数十μmの膜厚が必要であるが、この方法は原則として各層の厚みをλ/4で設計する必要がある。また各層の屈折率の変化をつける材料選定が必要となるためにハードコート層としての機能優先で材料を選ぶことができない。
【0007】
また、基材自体に微細凹凸を形成する構成も開発されている(特許文献3参照)。しかし、この構成には、以下の欠点がある。
(1)耐擦傷による低反射構造を防止することができないため、裏面のみに微細凹凸を形成する構成としていて、表面反射を防止できない。
(2)一般に使用時環境耐性を持たせるために基材はガラスもしくは樹脂としては耐熱性の高いポリカーボネートなどが用いられ、そのためインプリント工程において高い温度条件(ガラスで600℃以上、ポリカーボネートで140℃以上)が必要となり、生産性に劣る。
(3)裏面においても生産工程における傷付き防止などからハードコート性を要求されることが多いが、この方法では基材にガラスを選定するしか方法がなく、生産工程におけるキズ防止には保護シートの貼り合わせが必要となってしまう。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、透明タッチパネルでの光の反射を減らし、表示の視認性を向上させるとともに、表面のハードコート性に優れた透明タッチパネルを生産性よく提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するため、以下のような特徴を備える。
【0010】
本発明の透明タッチパネルは、透明タッチパネルの最表面の透明基材の表面にハードコート層が積層され、ハードコート層の表面に形成された微細凹凸の平均ピッチPaveが可視光波長λvisに対し、Pave≦λvis/√2の関係を満たすことを特徴とする。
【0011】
また上記の発明において、微細凹凸の高さHmothが微細凹凸の平均ピッチPaveに対し、アスペクト比1≦Hmoth/Pave≦10の関係を満たしてもよい。
【0012】
また上記の発明において、ハードコート層の厚みHresが微細凹凸の高さHmothに対し、2<Hres/Hmoth<10の関係を満たしてもよい。
【0013】
また上記の発明において、ハードコート層の厚みHresが2〜50μmでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の透明タッチパネルは、表面に形成された微細凹凸の平均ピッチPaveが可視光波長λvisに対し、Pave≦λvis/√2の関係を満たすものである。これにより、透明タッチパネル表面に於ける透明タッチパネルと空気間の屈折率変化は、不連続で急激な変化では無く、連続的に漸次変化する様にできる。そして、物質界面に於ける光の反射は、急激な屈折率変化で起きるものであるから、透明タッチパネル表面に於ける屈折率変化を連続的に漸次変化する様なものとすることによって、透明タッチパネル表面に於ける光反射を減らすことができる。すなわち、表示の視認に影響する波長成分として、透明タッチパネルの外側から来る外光(より厳密には外光のうち可視光線領域の波長光)の(観察者側への)透明タッチパネル表裏両面(及び方式によっては内部構成面)による反射のうち、透明タッチパネル表面における反射が除去され得る為、透明タッチパネルからの反射光の全量を、その分低減できる。したがって、外光反射による表示の視認性低下を改善できる。
【0015】
また、本発明の透明タッチパネルは、透明タッチパネルの最表面の透明基材に積層されたハードコート層の表面に微細凹凸を形成するものである。これにより、基材自体に微細凹凸を形成するよりも低い温度条件で微細凹凸を形成することができる。したがって、表面のハードコート性に優れた透明タッチパネルを生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の透明タッチパネルを概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0018】
本発明による透明タッチパネル10は、その一形態として、代表的方式でもある抵抗膜方式の透明タッチパネルの場合では、ペンや指を触れて入力する側となる、すなわち、最表面を成す表側の透明基材1と共に、最裏面を成す裏側の透明基材1aが組み合わせ使用され、各透明基材1及び1aの内面にはそれぞれ抵抗膜4及び4aが形成され、抵抗膜4と抵抗膜4a間は、点状に形成されたスペーサ5で空隙が保たれている(図1(a)参照)。そして、本発明の透明タッチパネル10は、反射防止を目的として、ペンや指を触れて入力する側となる透明タッチパネルの最表面の透明基材1の表面にハードコート層2が積層され、ハードコート層2の表面に形成された微細凹凸3の平均ピッチPaveが可視光波長λvisに対し、Pave≦λvis/√2の関係を満たすものである(図1(b)参照)。
【0019】
なお、本発明に於いて、表面とは、ペンや指を触れて入力する側であり、表示装置としてはその表示を観察する側の面、すなわち、表示装置の外側の面ことを言う。また、裏面とは、透明タッチパネルとしては表示パネル側の面、すなわち、表示装置の内部方向の面のことをいう。またこれらを、透明基材として言えば、表面とは、ペンや指を触れて入力する側を向いた面、裏面とは表示パネル側を向いた面のことをいう。
【0020】
本発明の透明タッチパネル10としては、抵抗膜方式、超音波方式、静電容量方式、電磁誘導方式等、いずれの方式であっても良い。抵抗膜方式では、透明基材は2枚を重ねた構成とする為に、本発明の微細凹凸3を設ける側を、最表面を成す方として特定するが、透明基材が1枚で良い方式の場合には、その1枚の透明基材自体が最表面を成す透明基材となる。透明基材1(1a)には、適用する方式に合わせた物を使用すればよい。
【0021】
剛体で透明性及び強度を有する透明基材1(1a)の素材としては、例えば、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス等のガラス、PLZT〔=La添加ジルコン・チタン酸鉛。超音波方式で使われる。〕等の無機材料、或いは、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂〔但し、(メタ)アクリルとはアクリル、或いはメタクリルを意味する。〕、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等があるが、例えば、日本ゼオン株式会社製の製品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の「アートン」等がある)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、セルロース系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂等の有機高分子材料等が挙げられる。
【0022】
上記の如き素材からなる透明基材1(1a)の厚さは、剛性を確保する為には、通常は0.5〜2mm程度とする。
【0023】
なお、表側に透明基材1を積層する構成となる抵抗膜方式の透明タッチパネルでは、表側の透明基材1には、可撓性のものを使用する。この様な透明基材1としては、上記した樹脂素材が使用できる。但し、厚さは、可撓性が得られる程度の厚さとする。従って、厚さは、可撓性を確保しつつ、表面強度も確保する為に、通常、0.05〜0.5mm程度である。
【0024】
透明基材1がペンや指などのたび重なる接触によって傷つくのを保護するために、透明基材1の表面にハードコート層2が積層される。ハードコート層2の材質は、アクリル系やウレタン系の樹脂ポリマーと多官能イソシアネート、またはアクリレート系の活性エネルギー線硬化型樹脂と光開始重合剤の混合物、グリシジル(メタ)アクリレート系重合体などが挙げられるが、透明基材1との界面での屈折を防ぐため、できるだけ透明基材1の屈折率と同じものを選定する。例えば、透明基材1の材質がアクリル系樹脂ならば、ハードコート層2の材質もアクリル系樹脂を選定するのが好ましい。ハードコート層2の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法がある。ハードコート層2の厚みHresは2〜50μmの厚みに形成するのが好ましい。ハードコート層2の厚みが2μm未満になるとハードコート性・耐薬品性が不足しがちになり、またハードコート層2の厚みが50μmを超えると生産性が低下するからである。
【0025】
次に、ハードコート層2にナノインプリント法を用いて、ハードコート層2の一部または全部に多数の微細凹凸3を形成する方法について説明する。ナノインプリント法は、スタンパーをハードコート層2に押し付け、ハードコート層2に微細凹凸3を形成する加工方法である。ナノインプリント法の代表的な方式としては、熱ナノインプリント法、光ナノインプリント法、室温ナノインプリント法があげられる。本発明では、室温ナノインプリント法または低温での熱ナノインプリント法でハードコート層2に微細凹凸3を形成する。これらの方法で微細凹凸3を形成すると、ハードコート層2は硬化時にわずかに収縮を起こすため、熱ナノインプリント法に比べてスタンパーからの離型が容易であり好適である。また、熱ナノインプリント法より一般に低温、低荷重にてインプリントできるため、スタンパーの材料の選択肢が広がる、これにより、例えばフッ化物そのものでスタンパーを作成することもできるため、離型コート処理したシリコン基板などをスタンパーとして用いることの多い熱インプリント法よりもスタンパーの耐久性が高まり、生産性を向上させることができる。またスタンプ後の冷却などの工程が不要になりスループットが改善され、また寸法精度も改善される。
【0026】
ナノインプリントの方法としては、まず電子線などで描いた母型の金型からニッケル電鋳からなるスタンパーを作製し、次にそれをハードコート層2に載置し、高圧下で押し付け、スタンパーをハードコート層2から外してハードコート層2に多数の微細凹凸3を形成する。また押し付ける際の温度は常温または60℃以下の温度下に設定し、圧力は一般的に数MPaに設定する。その条件下でスタンパーを押圧した後、ハードコート層2からスタンパーを外し、ハードコート層2に形成された多数の微細凹凸3に電離放射線を照射する。電離放射線の照射により硬化重合未反応の状態のハードコート層2の硬化重合反応が開始され、強靭なハードコート性・耐薬品性のあるハードコート層2が形成される。
【0027】
ここで、ハードコート層2へのスタンプのタイミングの違いとして、(1)液状で塗布後すぐにスタンプを行って電離放射線を照射して硬化させる方法と、(2)液状で塗布後、熱乾燥によってゲル状となった状態でスタンプを行って電離放射線を照射して硬化させることによって形成する方法とがある。(1)では透明基材1上にスピンコートなどでハードコート層2を塗布後、スタンプする。(2)では生産性向上のため、例えばウェットコーティングなどの別工程によって透明基材1上にロールtoロールでハードコート層2を形成することもできる。
【0028】
電離放射線の例としては、電波、可視光線、紫外線、赤外線、X線、ガンマ線、粒子線、電子線などがある。
【0029】
多数の微細凹凸3の表面形状としては、線、多角形、円、またはこれらを組み合わせた形状等が挙げられる。また断面形状としては、U字型、V字型、コの字型の凹凸形状が挙げられる。また、ピッチが100〜400nmで多数の角錐または円錐状のピラーが規則的に整然と並んだような所謂モスアイ構造と呼ばれる形状にすれば、反射防止機能を有することとなり好ましい。しかし、これら多数の微細凹凸3の表面形状は上記の例に限定されない。
【0030】
ここで本発明特有の微細凹凸3のピッチについて詳しく説明する。微細凹凸3は、従来公知の、光波長以上の大きさの凹凸によるマット面(艶消し)を利用して光を散乱(拡散反射)させる方式の反射防止処理(特開2000−241794号公報等参照)或いは防眩処理(例えば、特開2000−241794号公報等参照)とは異なり、可視光線の波長以下の大きさの特定の形状の凹凸であり、ハードコート層2の表面に形成された微細凹凸3の平均ピッチPaveが可視光波長λvisに対し、Pave≦λvis/√2の関係を満たすようにしたものである。具体的には、可視光波長λvisを可視光波長帯域の下限380nmとすれば、λvis/√2は269nm、つまり微細凹凸3の平均ピッチPaveは269nm以下とすれば良い。この場合は、空気部分、透明基材部分とも、微細凹凸3の平均ピッチPaveが、最短波長よりも小さいと言う条件が完全に満たされる為、屈折率平均化による反射防止効果は、より完全となる。ここで微細凹凸3が完全に揃ってしまうとモアレの懸念が生じるので、適度にばらついている方が好ましい。このような微細凹凸3によって、微細凹凸3形成面に於ける透明基材と外界(空気)との間の急激で不連続な屈折率変化を、連続的で漸次変化する屈折率変化に変えることが可能となる。そして、光の反射は、物質界面の不連続な急激な屈折率変化によって生じる現象であるから、空間的に連続的に変化する様にした屈折率変化によって、光反射防止効果が得られるのである。
【0031】
ここで、微細凹凸3の高さHmothは、無反射の観点からは高ければ高いほうが好ましいが、強度が弱くなるため、微細凹凸の平均ピッチPaveに対してのアスペクト比は1≦Hmoth/Pave≦10とするのが好適である。
【0032】
また、ハードコート層2の厚みHresは最低限、微細凹凸3の高さHmothがあればよいが、特にゲル状にしたハードコート層2のインプリントには微細凹凸3の高さHmothよりできるだけ厚いほうが転写性が増し、生産性が向上する。ハードコート層2の厚みHresは2<Hres/Hmoth<10の関係を満たすようにするのが好適である。
【0033】
本発明の透明タッチパネル10は、最表面を成す透明基材1の表面に本発明特有の微細凹凸3を有する構成であれば良く、その他の部分は、従来公知の各種方式の透明タッチパネルの各種構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1、1a 透明基材
2 ハードコート層
3 微細凹凸
4、4a 抵抗膜
5 スペーサ
10 透明タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明タッチパネルの最表面の透明基材の表面にハードコート層が積層され、ハードコート層の表面に形成された微細凹凸の平均ピッチPaveが可視光波長λvisに対し、Pave≦λvis/√2の関係を満たすことを特徴とする透明タッチパネル。
【請求項2】
微細凹凸の高さHmothが微細凹凸の平均ピッチPaveに対し、アスペクト比1≦Hmoth/Pave≦10の関係を満たす請求項1に記載の透明タッチパネル。
【請求項3】
ハードコート層の厚みHresが微細凹凸の高さHmothに対し、2<Hres/Hmoth<10の関係を満たす請求項1または2に記載の透明タッチパネル。
【請求項4】
ハードコート層の厚みHresが2〜50μmである請求項1〜3のいずれかに記載の透明タッチパネル。

【図1】
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