説明

透明不燃性シート及びその製造方法

【課題】透明、かつ、不燃性のシートを提供すること。
【解決手段】20〜70重量%のガラス繊維織物と、80〜30重量%の一対の硬化樹脂層とを含む透明不燃性シート。ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下であり、アッベ数の差が30以下である。上記透明不燃性シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明不燃性シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築基準法及び建築基準法施行令は、建築物の火災時に発生する煙や有毒ガスの流動を妨げ、避難や消火活動が円滑に行えるよう排煙設備を設けることを規定している。そして、排煙設備や遮煙設備の一環として、オフィスビル、ショッピングモール等の建築物には防煙垂壁や遮煙スクリーンが設置されることが多い。
【0003】
防煙垂壁は、建築物の天井に取り付けられるので、一般的には、視野を妨げないように、透明な板ガラスが用いられている。また、遮煙スクリーンはエレベータ前などの天井部に設けた格納箱にポリイミド製フィルムの巻体を格納し、災害時にポリイミド製フィルムを引き出すことができるようにしている。板ガラスやポリイミド製フィルムは、不燃性に優れていて、火災の時にも燃えない。
【0004】
しかし、防煙垂壁としての板ガラスは、落下防止のための措置を施しても、落下して割れることがあった。例えば、平成15年5月26日18時24分頃、岩手、宮城県境沖を震源として発生した、M7、震度6弱の「三陸南地震」では、防煙垂壁ガラスの破損が報告されている。そこで、防煙垂壁として、板ガラス以外の素材のニーズがある。また、遮煙スクリーンとしてのポリイミド製フィルムは透明であるが、黄色味を帯びているため、更なる透明性の向上が望まれている。
【0005】
特許文献1は、不燃シート材を開示している。この不燃シート材では、ガラス繊維織物と樹脂層との屈折率の差について規定しておらず、不燃シート材は必然的に不透明である。そして、不透明な不燃シート材を防煙垂壁に用いる場合には、視野を妨げ、オフィス、商業施設等の美観を損ねるので、建築材料としては問題があった。そこで、透明で、不燃性に優れ、かつ、割れない建築材料が所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−276113号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面では、少なくとも1枚のガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、を含む透明不燃性シートであって、前記ガラス繊維織物が20〜70重量%であり、前記一対の硬化樹脂層が80〜30重量%であり、前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下であり、前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物とのアッベ数の差が30以下である透明不燃性シートが提供される。
【0008】
本発明において、輻射電気ヒ−タ−から透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないことが好ましい。
【0009】
また、全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが30%以下であることが好ましい。
【0010】
更にまた、前記ガラス繊維織物中の隣接する経糸の間の隙間が0.5mm以下であり、又は、前記ガラス繊維織物中の隣接する緯糸の間の隙間が0.5mm以下であることが好ましい。
【0011】
更に、前記透明不燃性シート1m当たり、前記一対の硬化樹脂層の重量が15〜500gの範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の側面では、第1フィルムに未硬化の樹脂組成物を塗布する工程と、ガラス繊維織物を前記樹脂組成物に接触させる工程と、前記第1フィルム及び第2フィルムが前記ガラス繊維織物を挟む工程と、前記第1フィルム及び前記第2フィルムが前記ガラス繊維織物を挟んだ状態で、前記樹脂組成物を硬化する工程と、を含む、透明不燃性シートの製造方法であって、前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と硬化後の樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下であり、前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と硬化後の樹脂組成物とのアッベ数の差が30以下である、透明不燃性シートの製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第3の側面では、上記の何れかに記載の透明不燃性シートからなる防煙垂壁が提供される。
【0014】
本発明の第4の側面では、上記の何れかに記載の透明不燃性シートからなる遮煙スクリーンが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の透明不燃性シートは、不燃性のガラス繊維織物を用い、かつ、硬化樹脂層の重量が所定範囲内であるので、不燃性になる。ガラス繊維織物と硬化樹脂層との屈折率の差が0.02以下であるので、ガラス繊維織物を視認できなくなり、透明になる。また、ガラス繊維織物と硬化樹脂層とのアッベ数の差が30以下であるので、ガラス繊維織物と硬化樹脂層との界面で、可視光領域の散乱が少なくなり、着色も抑えることができる。
【0016】
本発明の透明不燃性シートの製造方法では、透明不燃性シートを効率的に製造することができる。
【0017】
本発明の防煙垂壁や遮煙スクリーンは、無色透明シートであり、また、落下して割れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施態様の透明不燃性シートの断面図である。
【図2】本発明の一実施態様の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施態様の製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施態様の製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施態様の製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施態様の製造方法を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施態様の製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施態様の製造方法を示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施態様の製造方法を示す断面図である。
【図10】本発明の他の実施態様の製造方法を示す断面図である。
【図11】本発明の他の実施態様の製造方法を示す断面図である。
【図12】本発明の他の実施態様の製造方法を示す説明図である。
【図13】本発明の一実施態様の防煙垂壁及び遮煙スクリーンを備えた建築物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施態様の透明不燃性シートを示す。透明不燃性シート10は、ガラス繊維織物20と、ガラス繊維織物20を挟む一対の硬化樹脂層32、34とを含む。一対の硬化樹脂層32及び硬化樹脂層34は、ガラス繊維織物20の隙間を充填し、互いに連続している。
【0020】
ガラス繊維織物20では、複数の経糸22と、複数の緯糸24とが組み合わさっている。ガラス繊維織物とは、ガラス繊維を経糸及び緯糸に用いて、織った布をいう。ガラス繊維織物は、ガラスクロスと呼ばれることもある。
【0021】
ガラス繊維織物の織組織としては、平織、朱子織、綾織、斜子織、畦織等が挙げられる。建築材料として用いられる場合は、平織、斜子織、畦織が好ましい。
【0022】
ガラス繊維織物20中の隣接する経糸22の間の隙間28が0.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることが更に好ましい。また、ガラス繊維織物20中の隣接する緯糸24の間の隙間が0.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることが更に好ましい。ガラス繊維織物の経糸22又は緯糸24の隙間が狭い場合には、炎がガラス繊維織物を通過し難くなるからである。
【0023】
ガラス繊維織物中のガラス繊維としては、汎用の無アルカリガラス繊維(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス繊維(Cガラス)、高強度・高弾性率ガラス繊維(Sガラス、Tガラス等)、耐アルカリ性ガラス繊維(ARガラス)等があげられるが、汎用性の高い無アルカリガラス繊維の使用が好ましい。
【0024】
ガラス繊維のフィラメント直径は、1〜20μmであることが好ましく、3〜12μmであることが更に好ましい。
【0025】
ガラス繊維の番手は、5tex〜70texが好ましく、10tex〜35texが更に好ましい。なお、ガラス繊維のtex番手は、1000m当たりのグラム数に相当している。
【0026】
ガラス繊維織物は、一種類のガラス繊維で織られていてもよいし、2種類以上のガラス繊維で織られていてもよい。例えば、経糸と緯糸は別個のガラス繊維であってもよい。2種類以上のガラス繊維で織られている場合には、ガラス繊維フィラメント直径、番手は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ガラス繊維の組成が同じであり、ガラス繊維の直径及び番手が異なっていてもよい。
【0027】
ガラス繊維織物には、透明不燃性シートの耐久性を向上させる目的で、ガラス繊維処理剤として通常使用されているシランカップリング剤で表面処理しておくことが好ましい。これによって、ガラス繊維織物と硬化樹脂層とを良好に接合させることができる。なお、シランカップリング剤は、各ガラス繊維の表面に付着するので、ガラス繊維織物の光透過特性や通気度等には実質上影響するものではない。
【0028】
図1では、硬化樹脂層32及び硬化樹脂層34が、ガラス繊維織物20を両側から挟んでいる。また、硬化樹脂層32及び硬化樹脂層34が、ガラス繊維織物20の隙間を充填し、互いに連続している。さらに、硬化樹脂層32及び硬化樹脂層34は、ガラス繊維織物20に接触している。
【0029】
硬化樹脂層は、熱で硬化した樹脂組成物で構成されてもよいし、紫外線等の光の照射で硬化した樹脂組成物で構成されてもよい。なお、未硬化の樹脂組成物は、熱でも紫外線照射でも硬化するものがある。このような硬化樹脂層は、未硬化の状態では粘度が低く、ガラス繊維織物に含浸しやすい。
【0030】
硬化樹脂層は、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などで構成されていることが好ましく、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、硬化特性に優れている点で、ビニルエステル樹脂で構成されていることが更に好ましい。
【0031】
硬化樹脂層には、難燃剤、紫外線吸収剤、充填剤、帯電防止剤などの添加物が含まれていてもよい。難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、トリクロロエチルホスフェート、トリアリルホスフェート、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステルなどが挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、タルクなどが挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。
【0032】
これらの添加物は粒子形状であってもよく、粒子の場合には粒径が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。粒径が小さいと、全光線透過率が向上し、ヘーズが低下するからである。
【0033】
本発明の一実施態様では、ガラス繊維織物20が20〜70重量%であり、一対の硬化樹脂層32、34が80〜30重量%である。ガラス繊維織物20が20重量%未満の場合には、硬化樹脂層32、34の量が多くなり、透明不燃性シートの不燃性が低下する。一方、ガラス繊維織物20が70重量%を越える場合には、硬化樹脂層32、34の厚さが薄くなり、ガラス繊維織物の模様が浮き出てしまう場合があり、また、透明不燃性シートの透明性が低下する。
なお、後述の建築基準法の評価法に基づく発熱性試験において、変形、熔融、亀裂などの損傷を抑え、不燃性をさらに向上させ、不燃性の認定に合格する水準にするために、本発明の透明不燃性シートは、ガラス繊維織物20が30〜70重量%であり、一対の硬化樹脂層32、34が70〜30重量%であることが好ましい。
【0034】
透明不燃性シート1m当たり、一対の硬化樹脂層の重量が15g未満の場合には、ガラス繊維織物の目つめが十分に行うことができず、ガラス繊維織物の模様が浮き出てしまう場合があり、また、透明不燃性シートの透明性が低下する。一方、透明不燃性シート1m当たり、一対の硬化樹脂層の重量が500gより多い場合には、透明不燃性シートの不燃性が低下する。
【0035】
透明不燃性シート1m当たり、1枚のガラス繊維織物の重量は20〜150g/mであることが好ましい。1枚のガラス繊維織物の重量が150g/mを越える場合には、硬化樹脂の含浸速度が遅くなり、作業性が低下したり、含浸不良を起こすことがある。1枚のガラス繊維織物の重量が透明不燃性シート1m当たり、ガラス繊維織物の重量を150g/mより多くする場合には、2枚以上のガラス繊維織物を用いることが好ましい。
【0036】
本発明では、ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下である。このように屈折率の差が小さいので、不燃性シートが透明になる。屈折率とは、光が二つの媒質の境界で屈折するとき、入射角の正弦と屈折角の正弦との比をいう。屈折率は、両媒質中の光の速さの比に等しい。
【0037】
本発明では、ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物の屈折率は、特に制限がないが、例えば、1.4〜1.7の範囲であることが好ましく、1.5〜1.6の範囲であることが更に好ましい。なお、ガラス繊維を構成するガラス組成物が無アルカリガラスの場合には、屈折率を1.55〜1.57の範囲にすることができる。
【0038】
硬化樹脂層の屈折率測定方法は、JIS K 7142の「プラスチックの屈折率測定方法」(Determination of the refractive index of plastics)に従う。具体的には、ガラス繊維織物が含まれていない硬化性樹脂のフィルムを、ガラス繊維織物を含む場合と同じ条件で作成し、アッベ屈折計を用いて測定する。
【0039】
本発明では、ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物とのアッベ数の差が30以下である。アッベ数は、透明体の色収差を評価する数値であり、可視光領域の散乱の評価に用いられる。材料のアッベ数 V は次のように定義される。
【0040】
【数1】

【0041】
nD, nF , nCは材料の波長がそれぞれ D-589.2 nm, F-486.1 nm , C-656.3 nm の光に対する屈折率である。
【0042】
ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物のアッベ数は、特に制限がないが、例えば、35〜75の範囲であることが好ましく、50〜70の範囲であることが更に好ましい。
【0043】
本発明の透明不燃性シートは、輻射電気ヒ−タ−から透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないことが好ましい。本発明の透明不燃性シートが、具体的にどの程度不燃性であるかを建築基準法における評価法に基づいて数値で示したものである。
【0044】
本発明の透明不燃性シートは、全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが30%以下であることが好ましく、全光線透過率が85%以上であり、かつ、20%以下であることが更に好ましい。本発明の透明不燃性シートが、具体的にどの程度透明であるかを数値で示したものである。
【0045】
透明不燃性シートの全光線透過率の測定方法は、JIS K 7105の「プラスチックの光学的特性試験方法」(Testing Methods for Optical Properties of plastics)、「5.5 光線透過率及び全光線反射率」に従う。具体的には、積分球式測定装置を用いて全光線透過量を測定し、全光線透過率を求める。
【0046】
透明不燃性シートのヘーズの測定方法は、JIS K 7105の「プラスチックの光学的特性試験方法」(Testing Methods for Optical Properties of Plastics)、「6.4ヘーズ」に従う。具体的には、積分球式測定装置を用いて拡散透過率及び全光線透過率を測定し、その比によって表す。
【0047】
【数2】

【0048】
H:ヘーズ(%)
:拡散透過率(%)
:全光線透過率(%)
【0049】
本発明の他の実施態様では、本発明では、透明不燃性シート1m当たり、一対の硬化樹脂層の重量が15〜500gの範囲であり、一対の硬化樹脂層の重量が50〜300gの範囲であることが好ましい。
【0050】
本発明の他の側面では、透明不燃性シートの製造方法を提供する。この製造方法では、まず、図2に示すように、第1フィルム42に未硬化の樹脂組成物44を塗布する工程を含む。塗布後は、未硬化の樹脂組成物44は層となって第1フィルム42を被覆することが好ましい。
【0051】
未硬化の樹脂組成物は、ペーストであることが好ましい。後の作業が容易になるからである。具体的には、未硬化の樹脂組成物の粘度は、0.01〜100Pa・sであることが好ましく、0.1〜10Pa・sであることが更に好ましい。
【0052】
次いで、図3に示すように、ガラス繊維織物20を樹脂組成物44に接触させる。好ましくは、ガラス繊維織物20が樹脂組成物44からなる層を被覆する。
【0053】
本発明の一実施形態では、次いで、図4に示すように、第1フィルム42の反対側にて、第2フィルム46をガラス繊維織物20に接触させ、第1フィルム42及び第2フィルム44がガラス繊維織物20を挟む。好ましくは、第1フィルム42の反対側にて、第2フィルム46がガラス繊維織物20を被覆し、第1フィルム42及び第2フィルム44がガラス繊維織物20を挟む。
【0054】
次いで、第1フィルム42及び第2フィルム46がガラス繊維織物を挟んだ状態で、第1フィルム42及び第2フィルム46に圧力を付与してもよい。例えば、第2フィルム44の上からローラーをかけて、第1フィルム42及び第2フィルム46に圧力を付与してもよい。あるいは、第1フィルム42及び第2フィルム46を一対のローラーの間を通過させ、第1フィルム42及び第2フィルム46に圧力を付与してもよい。
【0055】
ここで、ガラス繊維織物20には、経糸と経糸の間、緯糸と緯糸との間、及び、経糸と緯糸の間に若干の隙間がある。そして、第1フィルム42及び第2フィルム46に圧力を付与することにより、未硬化の樹脂組成物がこの隙間を通過する。この結果、未硬化の樹脂組成物44がガラス繊維織物20に含浸し、図5に示すように、未硬化の樹脂組成物44a、44bが、ガラス繊維織物20の両側に配置されることになる。
【0056】
次いで、第1フィルム42及び第2フィルム44がガラス繊維織物20を挟んだ状態で、未硬化の樹脂組成物44a、44bを硬化する。好ましくは、熱により、未硬化の樹脂組成物44a、44bを硬化する。
【0057】
本発明の他の実施形態では、図2及び図3の状態までは前述の通りである。一方、図6に示されているように、第2フィルム46に未硬化の樹脂組成物47を塗布する。塗布後は、未硬化の樹脂組成物47は層となって第2フィルム46を被覆することが好ましい。
【0058】
次いで、図3に示されている、第1フィルム42、未硬化の樹脂組成物44及びガラス繊維織物20の積層体に、図6に示されている、第2フィルム46と未硬化の樹脂組成物47の積層体を、未硬化の樹脂組成物44及び未硬化の樹脂組成物47が両側からガラス繊維織物20に接触するように、重ねる。即ち、図7に示すように、第1フィルム42、未硬化の樹脂組成物44、ガラス繊維織物20、未硬化の樹脂組成物47、第2フィルム46がこの順序で積層された積層体を得る。図7では、第1フィルム42及び第2フィルム46がガラス繊維織物20を挟んでいる。
【0059】
次いで、第1フィルム42及び第2フィルム46がガラス繊維織物20を挟んだ状態で、第1フィルム42及び第2フィルム46に圧力を付与する。これにより、図8に示すように、未硬化の樹脂組成物44、47がガラス繊維織物の隙間を充填する。
【0060】
次いで、第1フィルム42及び第2フィルム44がガラス繊維織物20を挟んだ状態で、未硬化の樹脂組成物44、47を硬化する。好ましくは、熱により、未硬化の樹脂組成物44、47を硬化する。
【0061】
本発明の他の実施形態では、図2及び図3の状態までは前述の通りである。次いで、ガラス繊維織物20の上に未硬化の樹脂組成物47を塗布し、更に、未硬化の樹脂組成物47の上に第2フィルム46を被覆する。これにより、図7に示すように、第1フィルム42、未硬化の樹脂組成物44、ガラス繊維織物20、未硬化の樹脂組成物47、第2フィルム46がこの順序で積層された積層体を得る。
【0062】
次いで、第1フィルム42及び第2フィルム46がガラス繊維織物20を挟んだ状態で、第1フィルム42及び第2フィルム46に圧力を付与する。これにより、図8に示すように、未硬化の樹脂組成物44、47がガラス繊維織物の隙間を充填する。
【0063】
次いで、第1フィルム42及び第2フィルム44がガラス繊維織物20を挟んだ状態で、未硬化の樹脂組成物44、47を硬化する。好ましくは、熱により、未硬化の樹脂組成物44、47を硬化する。
【0064】
上記の実施態様では、1層のガラス繊維織物20が用いられていた。しかし、複数のガラス繊維織物を重ねて用いても良い。また、1層のガラス繊維織物の上に未硬化の樹脂組成物を塗布し、次いで、1層のガラス繊維織物を置いても良い。
【0065】
次に、本発明の他の実施態様の透明不燃性シートの製造方法を示す。この実施態様では、2枚のガラス繊維織物を含む透明不燃性シートが得られる。
【0066】
図3に示されている、第1フィルム42、未硬化の樹脂組成物44及びガラス繊維織物20の積層体に、更に、ガラス繊維織物20を重ねる。即ち、図9に示すように、第1フィルム42、未硬化の樹脂組成物44、ガラス繊維織物20、ガラス繊維織物20がこの順序で積層された積層体を得る。
【0067】
次いで、図9に示されている積層体に、図6に示されている、第2フィルム46と未硬化の樹脂組成物47の積層体を、未硬化の樹脂組成物44及び未硬化の樹脂組成物47が両側からガラス繊維織物20に接触するように、重ねる。即ち、図10に示すように、第1フィルム42、未硬化の樹脂組成物44、ガラス繊維織物20、ガラス繊維織物20、未硬化の樹脂組成物47、第2フィルム46がこの順序で積層された積層体を得る。図9では、第1フィルム42及び第2フィルム46が2枚のガラス繊維織物20を挟んでいる。
【0068】
次いで、第1フィルム42及び第2フィルム46が2枚のガラス繊維織物20を挟んだ状態で、第1フィルム42及び第2フィルム46に圧力を付与する。これにより、図11に示すように、未硬化の樹脂組成物44、47が2枚のガラス繊維織物20の隙間を通過し、未硬化の樹脂組成物48が2枚のガラス繊維織物20の間を充填する。
【0069】
次いで、第1フィルム42及び第2フィルム44がガラス繊維織物20を挟んだ状態で、未硬化の樹脂組成物44、47、48を硬化する。好ましくは、熱により、未硬化の樹脂組成物44、47、48を硬化する。
【0070】
本発明の一実施態様では、第1フィルム、ガラス繊維織物及び第2フィルムは、連続したシートであってもよい。この実施態様では、連続してシート状の透明不燃性シートを製造することができる。第1フィルム及び第2フィルムは同一の素材であってもよく、同一の形状であってもよい。第1フィルム及び第2フィルムは、熱可塑性樹脂から構成されていてもよい。熱可塑性樹脂には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリアミド等が含まれる。
【0071】
図12は、本発明の一実施態様の説明図である。第1フィルムロール70から第1フィルム72が引き出され、第1フィルム72はローラー90で屈曲される。
【0072】
その後、第1フィルム72に未硬化の樹脂組成物74を塗布する。具体的には、未硬化の樹脂組成物74を第1フィルム72上に供給し、次いで、ドクターブレード88により、未硬化の樹脂組成物74を均一の厚さの層に成形し、未硬化の樹脂組成物からなる層を第1フィルム72に被覆する。ここで、未硬化の樹脂組成物74は、ドクターブレード88の前で樹脂溜り76になってもよい。
【0073】
次いで、ガラス繊維織物ロール60からガラス繊維織物62が引き出され、ガラス繊維織物62を、第1フィルム72上の未硬化の樹脂組成物層の上に接触させ、好ましくは、ガラス繊維織物62が未硬化の樹脂組成物からなる層を被覆する。そして、ローラー92で、ガラス繊維織物62及び第1フィルム72を屈曲させる。ガラス繊維織物62に加えられる張力により、ガラス繊維織物62は未硬化の樹脂組成物に押し付けられる。未硬化の樹脂組成物の粘度は上述のように低いので、未硬化の樹脂組成物がガラス繊維織物のガラス繊維の隙間に入り込む。
【0074】
また、第2フィルムロール80から、第2フィルム82が引き出される。そして、第1フィルム72の反対側にて、第2フィルム82をガラス繊維織物62に接触させ、第1フィルム72及び第2フィルム82がガラス繊維織物62を挟む。好ましくは、第1フィルム72の反対側にて、第2フィルム82がガラス繊維織物62を被覆し、第1フィルム72及び第2フィルム82がガラス繊維織物62を挟む。
【0075】
次いで、第1フィルム72及び第2フィルム82がガラス繊維織物62を挟んだ状態で、第1フィルム72及び第2フィルム82を一対のローラー94、96の間を通過させ、第1フィルム72及び第2フィルム82に圧力を付与する。
【0076】
ここで、ガラス繊維織物62には、経糸と経糸との間、緯糸と緯糸との間、及び、経糸と緯糸との間に若干の隙間がある。そして、第1フィルム72及び第2フィルム82に圧力を付与することにより、未硬化の樹脂組成物がこの隙間を通過し、また、ガラス繊維織物62と第2フィルム82との間に樹脂溜り78が発生する。そのため、気泡を発生させることなく、未硬化の樹脂組成物をガラス繊維織物に含浸させることができ、未硬化の樹脂組成物が、ガラス繊維織物62の両側に配置されることになる。
【0077】
次いで、第1フィルム72及び第2フィルム82がガラス繊維織物62を挟んだ状態で、未硬化の樹脂組成物を硬化する。好ましくは、第1フィルム72及び第2フィルム82がガラス繊維織物62を挟んだ状態で、加熱硬化ゾーン98を通過させ、第1フィルム72及び第2フィルムがガラス繊維織物62を挟んだ状態で、樹脂組成物を硬化する。加熱硬化ゾーン98は、未硬化の樹脂組成物を硬化させるのに十分な時間、十分な温度に加熱する。加熱硬化ゾーン98の温度は一定であってもよいし、位置により温度が変化してもよい。例えば、ある一定温度で所望の時間、硬化させ、次いで、その一定温度よりも高い温度で、更に所望の時間、硬化させてもよい。
【0078】
図13は、本発明の一側面の防煙垂壁58及び遮煙スクリーン59を備えた建築物を示す。図13で、建築物は、床50と、天井52と、床50及び天井52に接続する壁54を含む。天井52には防煙垂壁58が設けられている。また、天井52には、巻かれている遮煙スクリーン59と、遮煙スクリーン59を格納する格納箱59aが設けられている。そして、防煙垂壁58として、また、遮煙スクリーン59aとして、上述の透明不燃性シートを用いることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について、好適な実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されるものでない。
【0080】
実施例1〜3
実施例1〜3は、同一のガラス繊維織物及び同一の熱硬化性樹脂を用い、熱硬化性樹脂の量を変化させた。
【0081】
日東紡績(株)から販売されているガラス繊維織物(商品名 WEA116E)を200mmx200mmの正方形に裁断した。このガラス繊維織物は、American Society for Testing Material(ASTM)のガラス繊維織物の規格2116に対応する。
【0082】
このガラス繊維織物は、日東紡績(株)から販売されているガラス繊維、ECE225を経糸及び緯糸として織ったものである。60本の経糸が25mmに含まれ、58本の緯糸が25mmに含まれる。このガラス繊維織物の重量は、104g/mであり、厚さは0.095mmであり、通気度は42cm/cm/sである。なお、ガラス繊維織物の重量、厚さ及び通気度は、JIS規格R3420「ガラス繊維一般試験方法」に準じて測定した。また、隣接する経糸の間の隙間、及び、隣接する緯糸の間の隙間は、0.1mm以下である。これらの隙間は80倍ルーペで観察した。
【0083】
このガラス繊維織物は、経糸及び緯糸が織られた後に、有機物を除去するために熱処理がされ、そして、シランカップリング剤で表面処理がされている。シランカップリング剤としては、CH=C(CH)COOCSi(OCHが用いられている。CH=C(CH)COOCSi(OCHの25℃での比重は1.05であり、沸点は255℃であり、25℃での屈折率は1.43である。
【0084】
ガラス繊維、ECE225は、Eガラスからなり、フィラメント直径は約7μmである。Eガラスの屈折率は、1.558であり、アッベ数は58である。Eガラスの組成は、52〜56重量%のSiO、12〜16重量%のAl、15〜25重量%のCaO、0より多く6重量%以下のMgO、並びに、0より多く1重量%以下のNaO及びKOを含む。Eガラスの密度は、2.58g/cmであり、引張強度(23℃)は3.43GPaである。
【0085】
ビニルエステル樹脂を調整した。昭和高分子(株)から販売されているビニルエステル樹脂、SSP50−C06、100重量部と、化薬アクゾ(株)から販売されているパーカドックスP16、0.5重量部と、日本油脂(株)から販売されているパーキュアHO、0.5重量部とをスターラーを用いて約20分、攪拌した。そして、得られた混合物を約30分真空下に放置して、脱気し、未硬化の樹脂組成物を得た。
【0086】
SSP50−C06の屈折率は1.558であり、アッベ数は50.5である。SSP50−C06の粘度は、約0.9Pa・sである。
【0087】
「パーカドックスP16」は、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシ−ジカーボネート(bis−(4−t−butylcyclohexyl)peroxy−dicarbonate、(CHC−(c−C10)―O−C(=O)−OO−C(=O)−O−(c−C10)−C(CH)であり、分解温度は44℃である。パーカドックスP16は白色顆粒であり、純度90%以上である。
【0088】
「パーキュアーHO」は、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(t-hexyl peroxy-2-ethylhexanonate、CH(CHCH(C)−C(=O)−OO−C(CH(CHCH)である。不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤として好ましく用いられる。「パーキュアーHO」の純度は、約50%であり、透明液体である。20℃での比重は、0.935である。
【0089】
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを500mmx500mmに2枚、裁断した。そして、図2に示すように、1枚のポリエチレンテレフタレートフィルム42の中央部200mmx200mmに上記の未硬化の樹脂組成物44を塗布した。塗布量は、実施例1、2及び3において、それぞれ、92g/m、300g/m、及び60g/mに調整した。
【0090】
次いで、図3に示すように、塗布した樹脂組成物上に、200mmx200mmのガラス繊維織物を載せた。次いで、図4に示すように、ガラス繊維織物20の上に、もう1枚のポリエチレンテレフタレートフィルム46を載せた。2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム42、46のサイズは同一であり、その2枚が丁度、重なるようにした。
【0091】
ポリエチレンテレフタレートフィルム46の上から、ガラス繊維織物20の部分に手でローラーをかけて、圧力を付与した。ローラーの直径は16mmであり、長さは460mmであった。
【0092】
次いで、正方形形状のアルミ枠に、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムを挟んだ。アルミ枠の外側は、400mm×400mmであり、内側は320mm×320mmであり、厚さは3mmであった。そして、透明な接着用テープで、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムをアルミ枠に固定した。このとき、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム及びこのフィルムに挟まれているガラス繊維織物がシワにならないように気を付けた。
【0093】
そして、アルミ枠に固定されている2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムを80℃の熱風乾燥機中に入れて、30分間放置し、樹脂組成物を硬化させた。次いで、熱風乾燥機の温度を100℃に上げて、10分間放置し、樹脂組成物を更に硬化させた。
【0094】
熱風乾燥機からアルミ枠に固定されている2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムを取り出した。そして、アルミ枠から2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムを外し、次いで、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し、透明不燃性シートを得た。
【0095】
比較例1
実施例1〜3と、同一のガラス繊維織物を用い、エポキシ樹脂を含浸させ、次いで硬化させた。
【0096】
油化シェル(株)製エポキシ樹脂、エピコート1001を95重量部、エピコートA154を5重量部、和光純薬(株)製ジシアンジアミドを5重量部、広島化成製イミダゾールを0.2重量部、及び、メチルセルソルブを20重量部をスターラーにて30分間、攪拌し、未硬化のエポキシ樹脂ワニスを得た。そして、得られたエポキシ樹脂ワニスにガラス繊維織物を浸漬し、余分なエポキシ樹脂ワニスをステンレス鋼棒でかき落とし、エポキシ樹脂ワニス50重量%、ガラス繊維織物50重量%に調整した。その後、130℃の熱風乾燥機にて10分間加熱し、半硬化状態のシートを得た。
【0097】
この半硬化状態のシートを鏡面加工した2枚のステンレス鋼板の間に挟み、170℃に温度調節した平面熱圧プレスにセットし、面圧力490N/cmで加熱加圧成形を行い、エポキシ樹脂を完全に硬化させ、不燃性シートを得た。なお、この硬化条件にて、ガラス繊維織物を用いなかった場合には、硬化したエポキシ樹脂シートの屈折率は1.52であった。
【0098】
実施例4
実施例1〜3と同様の方法及び同様のビニルエステル樹脂により、透明不燃性シートを得た。ただし、実施例4は、ガラス繊維織物の種類及びビニルエステルの量が実施例1〜3と異なる。
【0099】
日東紡績(株)から販売されているガラス繊維織物(商品名 WLA240)を用いた。このガラス繊維織物は、日東紡績(株)から販売されているガラス繊維、ECG75を経糸として、ECG37を緯糸として織ったものである。44本の経糸が25mmに含まれ、25本の緯糸が25mmに含まれる。このガラス繊維織物の重量は、240g/mであり、厚さは0.23mmであり、通気度は23cm/cm/sである。ガラス繊維、ECG75及びECG37は、何れもEガラスからなり、フィラメント直径は何れも約9μmである。
【0100】
このガラス繊維織物も、経糸及び緯糸が織られた後に、有機物を除去するために熱処理がされ、そして、シランカップリング剤で表面処理がされている。シランカップリング剤は、実施例1〜3のガラス繊維織物と同様である。
実施例5
【0101】
実施例1〜3と同様の方法及び同様のビニルエステル樹脂により、透明不燃性シートを得た。ただし、実施例5は、ガラス繊維織物の種類及びビニルエステルの量が実施例1〜3と異なり、樹脂組成物上にガラス繊維織物を2枚載せた。
【0102】
実施例5では、日東紡績(株)から販売されているガラス繊維織物(商品名 WE09)を用いた。このガラス繊維織物に対応する、American Society for Testing Material(ASTM)の規格はない。
【0103】
このガラス繊維織物は、日東紡績(株)から販売されているガラス繊維、ECE225を経糸として、D450を緯糸として織ったものである。70本の経糸が25mmに含まれ、70本の緯糸が25mmに含まれる。このガラス繊維織物の重量は、94g/mであり、通気度は11cm/cm/sである。また、隣接する経糸の間の隙間、及び、隣接する緯糸の間の隙間は、0.1mm以下である。ガラス繊維、D450は、Eガラスからなり、フィラメント直径は約5μmである。
【0104】
このガラス繊維織物も、経糸及び緯糸が織られた後に、有機物を除去するために熱処理がされ、そして、シランカップリング剤で表面処理がされている。シランカップリング剤は、実施例1〜3のガラス繊維織物と同様である。
【0105】
実施例1〜5及び比較例1の結果を表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
発熱性試験
輻射電気ヒ−タ−から実施例1〜4の何れか又は比較例1で得られた透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射し、加熱開始後20分間の総発熱量を測定した。また、加熱開始後20分間の間に、200kW/m2を超えた発熱時間を測定した。
【0108】
表1では、発熱性試験の結果が8MJ/m以下である場合に、不燃性を○とし、発熱性試験の結果が8MJ/mより大きい場合に、不燃性を×とした。
【0109】
全光線透過率
全光線透過率は、JIS K 7105の「プラスチックの光学的特性試験方法」(Testing Methods forOptical Properties of plastics)、「5.5 光線透過率及び全光線反射率」に従った。具体的には、積分球式測定装置を用いて全光線透過量を測定し、全光線透過率を求めた。
【0110】
ヘーズ
透明不燃性シートのヘーズの測定方法は、JIS K 7105の「プラスチックの光学的特性試験方法」(Testing Methods for Optical Properties of Plastics)、「6.4ヘーズ」に従った。具体的には、積分球式測定装置を用いて拡散透過率及び全光線透過率を測定し、その比によって表した。
【0111】
ガーレ剛軟度
JIS規格L1096「一般織物試験方法」曲げ反発性A法(ガーレ法)に準じて測定した。
【0112】
視認性
目視でガラス繊維織物が認められるか否かで判定した。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の透明不燃性シートは、防煙垂壁又は遮煙スクリーンとして好適に用いることができる。
遮煙スクリーンは、例えば、エレベーターのドアの外側の上部に、丸めた状態で収納されている。そして、火災等の非常時に、遮煙スクリーンがエレベーターのドアの前に降下し、エレベーター中に煙が侵入するのを防止ないし低減する。
【符号の説明】
【0114】
10 透明不燃性シート
20 ガラス繊維織物
22 経糸
24 緯糸
28 間隔
32 硬化樹脂層
34 硬化樹脂層
42 第1フィルム
44、44a、44b、47 48 未硬化の樹脂組成物
46 第2フィルム
50 床
52 天井
54 壁
58 防煙垂壁
59 遮煙スクリーン
59a 格納箱
60 ガラス繊維織物ロール
62 ガラス繊維
70 第1フィルムロール
72 第1フィルム
74 未硬化樹脂組成物
76、78 樹脂溜り
80 第2フィルムロール
82 第2フィルム
88 ドクターブレード
90、92、94、96 ローラー
98 加熱硬化ゾーン
100 透明不燃性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚のガラス繊維織物と、
前記ガラス繊維織物を挟む一対の硬化樹脂層と、
を含む透明不燃性シートであって、
前記ガラス繊維織物が30〜70重量%であり、前記一対の硬化樹脂層が70〜30重量%であり、
前記透明不燃性シート1m当たり、前記一対の硬化樹脂層の重量が15〜500gの範囲であり、
前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物との屈折率の差が0.02以下であり、
前記ガラス繊維織物中のガラス繊維を構成するガラス組成物と前記一対の硬化樹脂層を構成する樹脂組成物とのアッベ数の差が30以下であり、
全光線透過率が80%以上であり、かつ、ヘーズが20%以下であり、
輻射電気ヒーターから透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない、
透明不燃性シート。
【請求項2】
前記ガラス繊維織物中の隣接する経糸の間の隙間が0.5mm以下であり、又は、前記ガラス繊維織物中の隣接する緯糸の間の隙間が0.5mm以下である請求項1に記載の透明不燃性シート。
【請求項3】
前記1枚のガラス繊維織物の重量が、20〜150g/mである請求項1または2に記載の透明不燃性シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の透明不燃性シート製造方法であって、
第1フィルムに未硬化の樹脂組成物を塗布する工程と、
ガラス繊維織物を前記樹脂組成物に接触させる工程と、
前記第1フィルム及び第2フィルムが前記ガラス繊維織物を挟む工程と、
前記第1フィルム及び前記第2フィルムが前記ガラス繊維織物を挟んだ状態で、前記樹脂組成物を硬化する工程と、
を含む、透明不燃性シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の透明不燃性シートからなる防煙垂壁。
【請求項6】
請求項1〜3の何れかに記載の透明不燃性シートからなる遮煙スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−84070(P2011−84070A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260764(P2010−260764)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【分割の表示】特願2004−141248(P2004−141248)の分割
【原出願日】平成16年5月11日(2004.5.11)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】