説明

透明容器内粉末の重量測定方法及び透明容器内粉末の重量測定装置

【課題】容易に全数管理を行なうことができ、風や振動などの環境の影響を受けることが少ない、瓶内に充填された粉末の重量を精度良く迅速に測定可能な、透明容器内粉末の重量測定方法、及び透明容器内粉末の重量測定装置を提供する。
【解決手段】粉末2が充填された透明容器1を予め定めた角度だけ上下方向に傾斜させて握持機構に握持させる第1の工程と、透明容器1に衝撃及び/又は振動を繰り返し与え、粉末が前記透明容器空間に露出している面を平坦化させる第2の工程と、透明容器1の外からセンサー3を用いて粉末の露出表面面積を求めるためのデータを取得し、取得したデータから粉末の露出表面面積を求める第3の工程と、第3の工程で求めた粉末の露出表面の面積測定値と、予め粉末の充填重量に対する露出表面の面積の関係を測定して得られた換算用データとを対比して透明容器1内の粉末の充填重量を算出する第4の工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明容器内粉末の重量測定方法及び透明容器内粉末の重量測定装置に関し、詳しくは透明容器内粉末の透明容器空間内に露出している表面面積を測定し、重量に換算する透明容器内粉末の重量測定方法及び透明容器内粉末の重量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、粉末状の薬品は、バイアル瓶に充填して保存され取引されるが、その充填重量の管理は容易ではない。該粉末の充填重量がmg単位の少量であるのに対し、バイアル瓶の重量のバラツキがg単位であることから、バイアル瓶の重量を一定として粉末の充填重量を管理することができないからである。
【0003】
前記の問題により、粉末状薬品の生産ラインの中で、粉末の充填量を厳密に管理しようとすると、粉末充填前のバイアル瓶風袋の重量と、粉末充填後のバイアル瓶の重量を測定しなければならないことになるので、新たな問題が発生してしまう。即ち、分解能の高い計量装置を用いてmg単位の測定を行うには、1回ごとの測定につき装置が安定するまで待たなければならないので、測定に時間がかかりすぎる。また、分解能の高い計量装置は、風や振動の影響を受けると測定誤差を生じるので、風や振動を排除するための環境整備を行なわなければならない。更に、粉末充填前後のバイアル瓶の重量を異なる測定器で行なわなければならないことから、計量装置間の測定バラツキが生ずるおそれがある。これらの問題を回避可能な全数管理用の装置は高価なものになってしまう。
【0004】
前記全数管理の問題を回避するために、抜き取り検査が行なわれている。しかし、抜き取り検査を行なうと、一の不良充填瓶が発見された場合、その前後の多量の充填瓶を不良品として扱わなければならない上に、不良品を発見できる可能性が小さくなるのを避けることはできない。また、厳密な重量測定を行わなければならないことから、風や振動を排除するための環境整備を行なわなければならない問題もある。なお、抜き取り検査方法の誤差範囲の検査実績は、15重量%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題点を解決し、容易に全数管理を行なうことができ、風や振動などの環境の影響を受けることが少ない、瓶内に充填された粉末の重量を精度良く迅速に測定可能な、透明容器内粉末の重量測定方法、及び透明容器内粉末の重量測定装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、注射用の粉末薬剤を透明なバイアル瓶に充填したものを例えば60゜の角度に傾斜させた場合、粉末薬剤の流動性により粉末薬剤のバイアル瓶内の空間に露出する表面の面積と充填重量とが一定の相関関係を有すること、バイアル瓶に衝撃あるいは振動を繰り返し与えると粉末薬剤が均されて、その表面の状態が平坦化し空洞等がなくなって充填状態が均一化し、その相関関係の再現性の精度がより向上すること、バイアル瓶を傾斜させて充填粉末の底面高さあるいは側面高さから充填重量を求めたりする場合に比べて変化の度合いが大きいためより正確な重量測定ができることを確認し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下に示す、透明容器内粉末の重量測定方法、透明容器内粉末の重量測定装置が提供される。
[1]
透明容器内に充填された粉末の重量を測定する方法において、
粉末が充填された前記透明容器を予め定めた角度だけ上下方向に傾斜させて握持機構に握持させる第1の工程と、
前記透明容器に衝撃及び/又は振動を繰り返し与え、粉末が前記透明容器空間に露出している面を平坦化させる第2の工程と、
前記透明容器の外からセンサーを用いて粉末の露出表面面積を求めるためのデータを取得し、取得したデータから粉末の露出表面面積を求める第3の工程と、
第3の工程で求めた粉末の露出表面の面積測定値と、予め粉末の充填重量に対する露出表面の面積の関係を測定して得られた換算用データとを対比して前記透明容器内の粉末の充填重量を算出する第4の工程を有することを特徴とする透明容器内粉末の重量測定方法。
[2]
前記センサーをその検知面の軸線方向が透明容器内に充填された粉末の露出表面に対して垂直となるように前記透明容器の上方に配置させることを特徴とする前記1に記載の透明容器内粉末の重量測定方法。
[3]
2台のセンサーを、それらの検知面の軸線方向が異なるように前記透明容器の上方と下方に配置し、
異なる角度から粉末の露出表面の面積を求めるためデータを測定し、それぞれのデータに基づいて粉末の露出表面面積を算出し、両者の露出表面面積の加算値もしくは平均値を粉末の充填重量の演算に用いる露出表面面積とすることを特徴とする前記1に記載の透明容器内粉末の重量測定方法。
[4]
1台のセンサーをその検知面の軸線方向が透明容器内に充填された粉末の露出表面に対して垂直となるように前記透明容器の上方に配置し、他の一台のセンサーをその検知面の軸線方向が透明容器底面に対して垂直となるように前記透明容器の下方に配置させすることを特徴とする前記3に記載の透明容器内粉末の重量測定方法。
[5]
前記センサーとしてカメラを用いて粉末の露出表面を撮像し、得られた画像を画像処理することにより粉末の露出表面の面積を算出することを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の透明容器内粉末の重量測定方法。
[6]
前記センサーとしてレーザーセンサーを用いて露出表面の測長を行い、得られた測長データに基づいて粉末の露出表面の面積を算出することを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の透明容器内粉末の重量測定方法。
[7]
透明容器内に充填された粉末の重量を測定する重量測定装置において、
粉末が充填された前記透明容器を予め定めた角度だけ上下方向に傾斜させて握持する握持機構と、
粉末が前記透明容器空間に露出している面を平坦化させるために前記透明容器に衝撃及び/又は振動を繰り返して与える衝撃及び/又は振動付与機構と、
前記透明容器の外から粉末の露出表面面積を求めるためのデータを取得するセンサー、及び前記センサーで取得したデータから粉末の露出表面面積を求める露出表面面積算出部からなる露出表面面積測定機構と、
予め粉末の充填重量に対する露出表面の面積の関係を測定して得られた換算用データを記憶している記憶部を備え、前記露出表面面積測定機構で求めた粉末の露出表面の面積測定値と前記換算用データを対比して、前記面積測定値を重量に換算する面積−重量換算機構とを有することを特徴とする透明容器内粉末の重量測定装置。
[8]
前記センサーを、その検知面が前記透明容器内に充填された粉末の露出表面に対して垂直となるように前記透明容器の上方に配置させたことを特徴とする前記7に記載の透明容器内粉末の重量測定装置。
[9]
2台のセンサーを、それらの検知面の軸線方向が異なるように前記透明容器の上方と下方に配置し、両センサーから取得したデータから求めた粉末の露出表面面積の加算値もしくは平均値を粉末の充填重量の演算に用いる露出表面面積の面積測定値とすることを特徴とする前記7に記載の透明容器内粉末の重量測定装置。
[10]
1台のセンサーをその検知面の軸線方向が透明容器内に充填された粉末の露出表面に対して垂直となるように前記透明容器の上方に配置し、他の一台のセンサーをその検知面の軸線方向が透明容器底面に対して垂直となるように前記透明容器の下方に配置させすることを特徴とする前記9に記載の透明容器内粉末の重量測定装置。
[11]
前記センサーがカメラであり、該カメラで撮像した粉末の露出表面の画像を画像処理して粉末の露出表面面積を算出することを特徴とする前記7〜10のいずれかに記載の透明容器内粉末の重量測定装置。
[12]
前記センサーがレーザーセンサーであり、該レーザーセンサーで測長した粉末の露出表面の測長データに基づいて粉末の露出表面面積を算出することを特徴とする前記7〜10のいずれかに記載の透明容器内粉末の重量測定装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の重量測定方法は、透明容器内に充填された粉末について、その透明容器内空間への露出表面面積を測定し、露出表面面積測定値を充填重量に換算する方法なので、風や振動などの環境からの影響を受け難い方法であり、透明容器に充填された粉末の重量の全数検査を精度良く迅速に行なうことができる。
本発明の重量測定装置は、特定の外力付与機構と、特定のセンサーと、特定の演算機構(露出表面面積算出部、記憶部、粉末重量算出部)とを有することから、前記方法を容易且つ確実に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】円筒状透明容器に充填された粉末の露出表面の説明図である。
【図2】透明容器とセンサーと照明装置の配置の一例を示す説明図である。
【図3】粉末の充填重量に対する露出表面の面積の関係を測定して得られた換算用データの一例を示すグラフである。
【図4】本発明の重量測定装置を構成する衝撃及び/又は振動付与機構の一例を示す正面図である。
【図5】図4に示す重量測定装置の平面図である。
【図6】クランピングユニットの一例を示す平面図である。
【図7】カメラ1台を用いた場合における、試料重量の変化に対する露出表面面積測定値(平均値、最大値、最小値)の変化を示すグラフである。
【図8】カメラ2台を用いた場合における、試料重量の変化に対する露出表面面積測定値(平均値、最大値、最小値)の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の透明容器内粉末の重量測定方法について述べる。
本発明方法の測定対象となるのは、透明容器内に充填された粉末である。
該透明容器としては、バイアル瓶、アンプル瓶、ガラス瓶、樹脂瓶、シリンジ等が挙げられる。透明容器中に充填される粉末は、流動性のある粉末であれば制限はないが、典型的には注射用等の粉末薬剤が好ましく適用できる。この粉末薬剤はバイアル瓶に少量充填され、例えばバイアル瓶を60゜傾斜させると、底面部の全面が粉末薬剤で覆われず、本発明方法が好ましく適用できるケースである。
【0010】
透明容器の形状としては種々の形状とすることができるが、取り扱い易さ、重量測定のし易さの点から、胴体の横断面積が一定の円筒状や、四角柱状のものが好ましい。但し、透明容器内の粉末の充填量が増大するに伴って、透明容器内空間に露出している粉末の露出表面面積が変化し、両者の間に一定の相関関係を有するという条件を満たす必要がある。
【0011】
透明容器の大きさに制限はなく、用途等に応じて適宜の大きさのものを用いることができるが、例えば前記の注射用等の粉末薬剤を充填させる場合には、通常内容積が20〜40cm程度であるものが使用される。
【0012】
粉末の充填量にも制限はなく、用途等に応じて適宜の量とすることができるが、例えば前記の注射用等の粉末薬剤の場合は、通常300〜1000mg程度である。
【0013】
本発明方法においては、図1に示すように、粉末2が充填された透明容器1を、上下方向に一定角度に傾けた状態で重量測定が行われる。そのため、測定時にはクランピングユニット等を用いて固定握持される(第1の工程)。
【0014】
透明容器1の傾斜角度は、容器の形状に応じて、粉末2の充填量の増大に伴って、前記露出表面2aの表面積が大きく変化するように、垂直方向に対して0〜180°の範囲で定められる。例えば透明容器1の形状が、横断面積が一定の円筒状の場合、透明容器の中心線と垂直方向のなす角度θが45〜60°程度傾斜すると、粉末2の充填量の増大に伴って、前記露出表面の表面積が大きく変化するので、露出表面面積変化をセンサーで容易に捉えることができ、精度良く重量測定を行なうことができる。
なお、測定の際に、粉末2が透明容器1の底を完全に覆ってしまってからは、粉末2の露出表面面積と充填重量の関係の相関性がくずれてしまうので、透明容器1の傾斜角度はその点を考慮して設定する必要がある。
【0015】
本発明方法においては、重量測定の際、粉末2を充填した透明容器1を傾斜させて固定握持させた状態で、透明容器1に衝撃及び/又は振動を繰返し与えて粉末2の露出表面の状態を安定させ、平坦化させるとともに、空洞等をなくし充填状態を均一化させる(第2の工程)。粉末2を単に充填させただけでは、其の表面の高さが場所により異なっていたり、粉末内部に空洞ができていたりするので、其の露出表面面積と粉末2の充填量との関係に誤差を生じ、精度良い測定が行なえない。そこで、透明容器1に衝撃及び/又は振動を繰返し与えることにより、粉末2の露出表面を安定させて平坦な状態とし、空洞をなくすことにより、測定の精度を向上させることができる。
【0016】
本発明方法においては、衝撃か振動のどちらかを選択することもできれば、併用することもできるが、装置の構造を簡単化することができ、安価に製作できることから衝撃が好ましい。衝撃を与える方法としては、例えば、前記透明容器1を、2〜5mm程度離れた位置からバネで引いてストッパーに叩きつけ、バネを引く力を解除し、これを30〜60回程度繰り返して衝撃を与える方法を用いることができる。
【0017】
次に、前記衝撃及び/又は振動を停止してから、透明容器1の外からセンサー3を用いて前記露出表面の面積を測定する(第3の工程)。センサー3は、図2に示すように、その検知面の軸線方向が透明容器内に充填された粉末の露出表面2aに対して垂直となるように、透明容器1の上方に適当な間隔の離れた位置に設けると、透明容器内空間に露出している粉末2の露出表面面積を捉え易い。また、適宜照明装置4を用いることにより、露出表面面積の測定がし易くなる。
【0018】
センサー3としては、CCDカメラ等のデジタルカメラ、TVカメラ等のアナログカメラを用いることができ、レーザーセンサーを用いることもできる。
【0019】
デジタルカメラを用いる場合には、得られたデータを画像処理することにより、露出表面面積を算出することができる。レーザーセンサーを用いる場合には、粉末露出表面の形状が粉末2の充填量により相似的に変化するので、予め定めた部位を測長することにより、得られた測定値から露出表面面積を算出することができる。
【0020】
次に、得られた面積測定値と、予め粉末の充填重量に対する露出表面の面積の関係を測定して得られた換算用データとを対比することにより、透明容器1内の粉末2の充填重量が算出される(第4の工程)。換算用データは、粉末の充填重量を変化させ、各充填重量の値に対して露出表面面積を測定して得られるデータの集合である。通常は、図3に示すように曲線関係となるが、容器の形状によっては直線関係となる。
【0021】
露出表面面積の測定値と、換算用データとの対比は、換算用データを予め記憶装置に記憶させた演算機能を有するコンピューターを用いて行なうことができる。
【0022】
本発明方法においては、2台のセンサーを用いて、それらの検知面の軸線方向が異なるように前記透明容器の上方と下方の適当な間隔の離れた位置に配置して、異なる角度から前記露出表面の面積を求めるためのデータを取得し、得られたデータからそれぞれ露出表面の面積を求め、これらの加算値もしくは平均値を粉末2の充填重量の演算に用いる面積測定値とすることができる。このようにすると、露出表面面積の充填重量への換算精度を上げることができる。
【0023】
2台のセンサーは、例えば、その検知面の軸線方向が粉末2の露出表面に対して垂直な上下の方向の適当な間隔の離れた位置に配置することができる。また、1台のセンサーをその検知面の軸線方向が粉末2の露出表面2aに対して垂直となるように、適当な間隔の離れた上方の位置に設け、他の1台のセンサーを、その検知面の軸線方向が傾けられた透明容器の底面に対して垂直となるように、適当な間隔の離れた下方の位置に設けてもよい。2台のセンサーを用いることにより、測定バラツキを小さくし、測定値の信頼性を向上させることができる。
【0024】
本発明方法によれば、15重量%の誤差範囲内で透明容器1内の粉末2の充填量を全数管理することができる。
【0025】
次に、透明容器内粉末の重量測定装置について説明する。
本発明の重量測定装置は、握持機構と、衝撃及び/又は振動付与機構と、露出表面面積測定機構と、面積−重量換算機構とを備えるものである。
【0026】
図4に本発明の透明容器内粉末の重量測定装置を構成する衝撃及び/又は振動付与機構の一例を正面図で、図5に平面図で示す。
図4、図5において、11は固定台、12は固定ブロック、12aはリニアスライダ、13a、13bは偏芯円板カムの回転軸の支持台、14は偏芯円板カム、14aはピン、15は偏芯円板カム14の回転軸、16はリンクアーム、17は垂直スライドベース、18(18a(1)、18a(2)、18b)は透明容器握持部、19は衝撃受部、20はバネ装置、21はストッパー、30はモーターをそれぞれ示す。
【0027】
衝撃及び/又は振動付与機構(以下、単に衝撃付与機構ともいう。)においては、図4、図5に示すように、固定台11の上に、固定ブロック12が固定台11に対して垂直方向に配置されて固定されており、固定ブロック12はリニアスライダ12aを介して垂直スライドベース17に連結されている。固定ブロック12上に取付けられているリニアスライダ12aは、上下方向に滑らかに運動可能であることから、垂直スライドベース17は、リニアスライダ12aと共に上下方向に滑らかに運動可能である。
【0028】
垂直スライドベース17には、図面視上右方向に伸びるリンクアーム16が締結されている。
一方、固定ブロック12の図面視上右方向には、リンクアーム16に対して直角方向且つ固定台11に対して水平方向に設けられた軸15を中心に、図4視上時計方向に回転する偏芯円板カム14が設けられており、図5に示すように、軸15はその両端が偏芯円板カムの回転軸の支持台13a、13bで支えられており、支持台13a、13bは固定台11に固定されている。
【0029】
前記リンクアーム16の右方向先端は、図4、図5に示すように、偏芯円板カム14の軸15の中心線近傍の位置まで伸びていると共に、ピン14aが、偏芯円板カム14の円周近傍に図4視上手前側を向いて取付けられており、ピン14aが図面視上で軸15の中心線より左側にあるときはリンクアーム16に接触し、支えることができる。従って、ピン14aが図4視上時計回りに回転すると、ピン14aがリンクアーム16に接触している間、リンクアーム16を持ち上げ続け、偏芯円板カム14が更に回転してピン14aがリンクアーム16から外れると、リンクアーム16は急激に落下する。更に、偏芯円板カム14が回転を続けると、リンクアーム16は上昇と落下を繰返す。
【0030】
前記の通り、リンクアーム16は、図面視上固定ブロック12を超えて左側に伸びて、垂直スライドベース17と連結されている。垂直スライドベース17には、図面視上左側に伸びる透明容器握持部18が取付けられている。透明容器握持部18は、連結部材17に対して固定されている固定部18aと、固定部18aに対して傾き角度変更可能なクランピングユニット18bとを有し、クランピングユニット18bは軸18cを中心として傾き角度θ゜を変更可能に構成されている。
【0031】
固定部18aの下面には衝撃受部19が設けられている。衝撃受部19の下方には、衝撃受部19が落下した場合に衝撃受部19と衝突可能に、ストッパー21が固定台11に設けられている。そして、バネ装置20が固定部18aと固定台11との間に設けられていて、固定部18aを常に下方に引張っている。従って、前記のように、リンクアーム16が上昇すると、透明容器握持部18が上昇し、リンクアーム16が落下すると、透明容器握持部18が共に落下し、衝撃受部19がストッパー21に衝突すると、透明容器握持部18の落下が止まり、容器握持部18に固定されている透明容器1を通して、透明容器1内の粉末に衝撃が伝わる。リンクアーム16が上昇、落下を繰返すと、透明容器1内の粉末が連続して衝撃を受ける。
【0032】
クランピングユニット18bは、その上面に対して透明容器1を法線方向に固定することができる。従って、クランピングユニット18bの水平方向に対する角度を所望されるθ°に設定して、クランピングユニット18bで透明容器1を固定すると、透明容器1はその中心線が垂直方向に対してθ°傾いた状態で固定されるので、容器握持部18(固定部18a及びクランピングユニット18b)が上昇、落下を繰返すと、透明容器1が設定された角度θ°で傾いた状態で透明容器内の粉末は連続して衝撃を受けることになる。
【0033】
なお、クランピングユニットは透明容器1を固定握持することができれば如何なる構造でもよいが、例えば、次のようにすることができる。
クランピングユニット18bは、図6に示すように、握持固定部22aと握持可動部22bとを有し、握持固定部22a及び握持可動部22bの内側中央には、透明容器1を握持可能にV型の切込みが形成されている。握持固定部22aのV型の切込みの左右には、貫通孔23a、23bが設けられ、握持可動部22bの対向する位置には、貫通孔23c、23dが設けられている。貫通孔23aには連結部材17側からボルト24の先端が挿入され、ボルト24の先端は更に握持可動部の貫通孔23cを貫通し、握持可動部22bから外側に出ているボルト24の先端にはエアーシリンダー26aが取付けられている。同様に、貫通孔23bには連結部材17側からボルト25の先端が挿入され、ボルト25の先端は更に握持可動部の貫通孔23dを貫通し、握持可動部22bから外側に出ているボルト25の先端にはエアーシリンダー26bが取付けられている。
【0034】
透明容器1を握持固定部22aのV型の切込と握持可動部22bのV型の切込との間に配置し、エアーシリンダー25a、25bの作動により、エアーシリンダー25a、25bと連結部材17側のボルトの頭24a、25aで握持固定部22aと握持可動部22bを締め付けることにより、透明容器1が固定される。
【0035】
なお、固定部18aは、連結部材17に対して垂直方向、且つ固定台11に対して垂直方向を向く2枚の固定板18a(1)、18a(2)からなり、固定板18a(1)、18a(2)は連結部材17に結合されている。前記握持固定部22aは全体がT字型であり、T字の垂直部22cは2枚の固定板18a(1)、18a(2)に挟まれており、固定板18a(1)、18a(2)とT字の垂直部22cを貫通する貫通孔27が形成され、貫通孔27を用いてボルトとナット28(軸18c)で回転可能に固定されている。
【0036】
本発明の重量測定装置は、透明容器1の空間内に露出している粉末2の露出表面の面積を測定するための、センサー3と必要に応じて使用される照明4とを有する露出表面面積測定機構を備えている。
なお、センサー3及び照明4は、固定台11が載置されている台(図示せず。)に設けられたスタンド(図示せず。)に固定されている。
【0037】
センサー3は、粉末の露出表面面積を測定できものであれば、CCDカメラ等のデジタル方式のカメラや、TVカメラ等のアナログ方式のカメラ、レーザーセンサーを用いることもできる。センサー3は、水平方向を向いている粉末の露出表面の面積を容易に捉えられることから、通常、その光軸を下方に向けて、透明容器1の上方に設けられる。なお、前記したように、2台以上のセンサーを取り付けることもできる。
【0038】
デジタル方式のカメラを用いて得られたデータからは、画像処理により露出表面面積が求められる。画像処理は、通常コンピューターを用いて行なわれる。また、レーザーセンサーを用いる場合には、露出表面の予め定めた部位を測長して得られた測長データから露出表面面積が算出される。この処理も、通常コンピューターを用いて行なわれる。
【0039】
本発明の重量測定装置は、面積−重量換算機構を有している。面積−重量換算機構は、前記のようにして得られた露出表面面積測定値と、予め粉末の充填重量に対する露出表面の面積の関係を測定して得られた換算用データとを対比して、前記面積測定値を重量に換算する処理が行なわれる。
【0040】
面積−重量換算機構の換算処理は、通常コンピューターが利用される。この場合、記憶装置に予め粉末の充填重量に対する露出表面の面積の関係を測定して得られた換算用データを記憶させておき、コンピューターの演算部で、取り込んだ露出表面面積測定値と、記憶装置から読み出した換算用データを対比させ、露出表面面積測定値に対応する充填重量を算出して、求める充填重量とする。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の実施例を述べる。
【0042】
<実施例1>
本実施形態の重量測定装置を用い、透明容器内に充填された粉末の重量測定を行った。
(1)容器:透明ガラスバイアル瓶(φ23mm円筒状、容量1246mm、 栓(材質:ゴム、アルミ蓋)
(2)粉末: 647mg、粉末高さ3mm
(4)透明容器の傾斜角度:垂直方向に対して60°
(5)透明容器の落下高さ: 4mm、落下回数300回/分で合計40回
(6)日立国際電気社製CCDカメラ「KP−F33」1台を透明容器内の粉末の露出表面の真上に設置
解像度 横640画素×縦480画像
視野角 横46.7mm×縦35mm
分解能 0.07mm/画素
(7)画像処理:デクシス社製画像処理装置「TA−3001−001」を用いた。
【0043】
上記条件で、予め粉末の充填重量に対する露出表面の面積の関係を、粉末の充填重量を472mgから876mgまで、33mg又は34mgおきに変化させて透明容器に充填した。各充填重量ごとに2個の試料を作り、各々の試料について10回の測定を行った。
得られたデータをまとめた結果を表1に示す。更に、表1をグラフ化した図面(横軸:試料重量、縦軸:露出表面積の測定値(平均値、最大値、最小値))を図7に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
図7から、充填重量の多い測定値の最小値と充填重量の少ない測定値の最大値とが重なることがなければ、充填重量の測定を誤ることがないという観点から、充填重量573〜775mgの範囲において誤差範囲−10〜5重量%で重量を判別できることが判る。
【0046】
<実施例2>
CCDカメラ「KP−F33」2台を用い、1台を60°傾けて透明容器内の粉末の露出表面の真上に設置し、他の1台をその検知面の軸線方向が透明底面に対して垂直となるように前記透明容器の下方に設置した以外は、実施例1と同様に粉末の充填重量の測定を行った。
結果を表2に示す。更に、表2をグラフ化した図面(横軸:試料重量、縦軸:露出表面積の測定値(平均値、最大値、最小値))を図8に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表1と表2の対比から、CCDカメラを2台用いると、測定バラツキが小さくなり、安定した測定が行なえることが判る。また、図8から、充填重量573〜775mgの範囲において誤差範囲−10〜5重量%で重量を判別できることが判る。
【符号の説明】
【0049】
1 透明容器
2 粉末
2a 露出表面
3 センサー
4 照明
11 固定台
12 固定ブロック
12a リニアスライダ
13a、13b 偏芯円板カムの回転軸の支持台
14 偏芯円板カム
14a ピン
15 偏芯円板カムの回転軸
16 リンクアーム
17 垂直スライドベース
18 透明容器握持部
18a 固定部
18a1、18a2 固定板
18b クランピングユニット
18c 軸
19 衝撃受部
20 バネ装置
21 ストッパー
22a 握持固定部
22b 握持可動部
23a、23b、23c、23d 貫通孔
24 ボルト
24a ボルトの頭
25a ボルトの頭
26a、26b エアーシリンダー
27 貫通孔
28 ボルトとナット
30 モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明容器内に充填された粉末の重量を測定する方法において、
粉末が充填された前記透明容器を予め定めた角度だけ上下方向に傾斜させて握持機構に握持させる第1の工程と、
前記透明容器に衝撃及び/又は振動を繰り返し与え、粉末が前記透明容器空間に露出している面を平坦化させる第2の工程と、
前記透明容器の外からセンサーを用いて粉末の露出表面面積を求めるためのデータを取得し、取得したデータから粉末の露出表面面積を求める第3の工程と、
第3の工程で求めた粉末の露出表面の面積測定値と、予め粉末の充填重量に対する露出表面の面積の関係を測定して得られた換算用データとを対比して前記透明容器内の粉末の充填重量を算出する第4の工程を有することを特徴とする透明容器内粉末の重量測定方法。
【請求項2】
前記センサーをその検知面の軸線方向が透明容器内に充填された粉末の露出表面に対して垂直となるように前記透明容器の上方に配置させることを特徴とする請求項1に記載の透明容器内粉末の重量測定方法。
【請求項3】
2台のセンサーを、それらの検知面の軸線方向が異なるように前記透明容器の上方と下方に配置し、異なる角度から粉末の露出表面の面積を求めるためデータを測定し、それぞれのデータに基づいて粉末の露出表面面積を算出し、両者の露出表面面積の加算値もしくは平均値を粉末の充填重量の演算に用いる露出表面面積とすることを特徴とする請求項1に記載の透明容器内粉末の重量測定方法。
【請求項4】
1台のセンサーをその検知面の軸線方向が透明容器内に充填された粉末の露出表面に対して垂直となるように前記透明容器の上方に配置し、他の一台のセンサーをその検知面の軸線方向が透明容器底面に対して垂直となるように前記透明容器の下方に配置させることを特徴とする請求項3に記載の透明容器内粉末の重量測定方法。
【請求項5】
前記センサーとしてカメラを用いて粉末の露出表面を撮像し、得られた画像を画像処理することにより粉末の露出表面の面積を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明容器内粉末の重量測定方法。
【請求項6】
前記センサーとしてレーザーセンサーを用いて露出表面の測長を行い、得られた測長データに基づいて粉末の露出表面の面積を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明容器内粉末の重量測定方法。
【請求項7】
透明容器内に充填された粉末の重量を測定する重量測定装置において、
粉末が充填された前記透明容器を予め定めた角度だけ上下方向に傾斜させて握持する握持機構と、
粉末が前記透明容器空間に露出している面を平坦化させるために前記透明容器に衝撃及び/又は振動を繰り返して与える衝撃及び/又は振動付与機構と、
前記透明容器の外から粉末の露出表面面積を求めるためのデータを取得するセンサー、及び前記センサーで取得したデータから粉末の露出表面面積を求める露出表面面積算出部からなる露出表面面積測定機構と、
予め粉末の充填重量に対する露出表面の面積の関係を測定して得られた換算用データを記憶している記憶部を備え、前記露出表面面積測定機構で求めた粉末の露出表面の面積測定値と前記換算用データを対比して、前記面積測定値を重量に換算する面積−重量換算機構とを有することを特徴とする透明容器内粉末の重量測定装置。
【請求項8】
前記センサーを、その検知面が前記透明容器内に充填された粉末の露出表面に対して垂直となるように前記透明容器の上方に配置させたことを特徴とする請求項7に記載の透明容器内粉末の重量測定装置。
【請求項9】
2台のセンサーを、それらの検知面の軸線方向が異なるように前記透明容器の上方と下方に配置し、両センサーから取得したデータから求めた粉末の露出表面面積の加算値もしくは平均値を粉末の充填重量の演算に用いる露出表面面積の面積測定値とすることを特徴とする請求項7に記載の透明容器内粉末の重量測定装置。
【請求項10】
1台のセンサーをその検知面の軸線方向が透明容器内に充填された粉末の露出表面に対して垂直となるように前記透明容器の上方に配置し、他の一台のセンサーをその検知面の軸線方向が透明底面に対して垂直となるように前記透明容器の下方に配置させることを特徴とする請求項9に記載の透明容器内粉末の重量測定装置。
【請求項11】
前記センサーがカメラであり、該カメラで撮像した粉末の露出表面の画像を画像処理して粉末の露出表面面積を算出することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の透明容器内粉末の重量測定装置。
【請求項12】
前記センサーがレーザーセンサーであり、該レーザーセンサーで測長した粉末の露出表面の測長データに基づいて粉末の露出表面面積を算出することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の透明容器内粉末の重量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−102704(P2011−102704A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256753(P2009−256753)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(599066148)株式会社 デクシス (3)