説明

透明導電体および透明導電体の製造方法

【課題】従来の透明導電体は、より高い導電性を得るために、ガラス中のカーボンナノチューブの含有量を増やす必要があるが、透明導電体の光の透過率が落ちてしまい、高導電性と透明性を両立できないという課題があった。
【解決手段】金属を添加したチタニアナノチューブを透明基材に分散させたことを特徴とする透明導電体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を添加したチタニアナノチューブを透明基材に分散させた透明導電体および透明導電体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の透明導電体としては、特許文献1に示されるように、カーボンナノチューブを含むものが知られている。カーボンナノチューブは、主に炭素6員環が連なったグラファイトの層を円筒状にした非常に細長い繊維状物質で、高い電気伝導性を有する。このカーボンナノチューブをガラス中に含有させることにより、高い導電性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−024540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の透明導電体は、より高い導電性を得るためには、ガラス中のカーボンナノチューブの含有量を増やす必要があるが、カーボンナノチューブ自体は透明材料ではないため含有量が増えるにつれて透明導電体の光の透過率が落ちてしまい、高導電性と透明性を両立できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の透明導電体は、金属を添加したチタニアナノチューブを透明基材に分散させたことを特徴とする。このことにより、金属を添加したチタニアナノチューブは、高い電気伝導性を持ち、かつ光の透過率が高いため、高導電性と透明性を両立した透明導電体を提供することができる。
【0006】
また、本発明の透明導電体は、前記透明基材がガラスであることを特徴とする。このことにより、高導電性と透明性を両立した高導電性ガラスを提供することができる。
【0007】
また、本発明の透明導電体は、前記透明基材が樹脂であることを特徴とする。このことにより、高導電性と透明性を両立した高導電性透明フィルムを提供することができ、フィルムの厚さによっては、可撓性を持たせることができる。
【0008】
さらに、本発明の透明導電体は、膜状であり、基板上に形成されていることを特徴とする。このことにより、高導電性と透明性を両立した透明導電膜を提供することができ、必要に応じパターニングを行うことで、配線材料にも使うことができる。
【0009】
また、本発明の透明導電体は、前記金属がタンタルまたはニオブであることを特徴とする。このことにより、より高導電性の透明導電体を提供することができる。
【0010】
また、本発明の透明導電体の製造方法は、金属を添加したチタンを陽極酸化することによりえられるチタニアナノチューブを、透明基材に分散させることを特徴とする。このことにより、金属を添加したチタニアナノチューブは、高い電気伝導性を持ち、かつ透明であるため、高導電性と透明性を両立した透明導電体を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の透明導電体および透明導電体の製造方法は、高導電性と透明性を両立した透明導電体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態の透明導電体を説明する図である。
【図2】第1の実施形態の透明導電体の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態の例について図を参照しながら詳細に説明をする。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の透明導電体を説明する図であり、図2は、第1の実施形態の透明導電体の変形例を説明する図である。
【0015】
図1は、第1の実施形態の透明導電体を説明する図である。図1に示すように、本実施形態に係る透明導電体5は、透明基材2にチタニアナノチューブ1を分散して形成されている。透明基材2は、0.3mm程度の厚さのガラスであり、ガラスの原材料は、珪酸、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、石灰、炭酸カリウム、酸化鉛、硼酸、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸バリウム、炭酸リチウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0016】
一方、チタニアナノチューブ1は、タンタルやニオブなどの金属を添加したチタン酸化物のナノチューブであり、高い電気伝導性を持ち、かつ透明である。チタニアナノチューブ1に添加する金属は、タンタルを添加した場合は1%から15%の範囲、ニオブを添加した場合は1%から10%の範囲の濃度であることが、好ましい。また、チタニアナノチューブ1の平均長は、0.3μmから5μmであることが好ましく、0.5μmから1.5μmであることがより好ましい。さらにチタニアナノチューブ1の平均径は、10nmから200nmであることが好ましく、30nmから100nmであることがより好ましい。尚、本実施形態では、添加する金属が、タンタルやニオブである場合を例示したが、チタニアナノチューブ1が高い電気伝導性を持ち、かつ透明性を維持できれば、添加する金属は、これに限られるものではなく、他の金属であってもかまわない。
【0017】
また、透明導電体5における分散されたチタニアナノチューブ1の充填率は、10体積%から70体積%の範囲であることが好ましい。充填率が10体積%未満であると、充填率が上記範囲である場合に比べて、透明導電体5の電気的抵抗値が高くなる傾向にあり、充填度が70体積%を超えると、充填率が上記範囲である場合に比べて、透明導電体5の機械的強度が低下する傾向にある。
【0018】
このように、高い電気伝導性を持ち、かつ透明であるチタニアナノチューブ1をガラスである透明基材2に分散することで、高導電性と透明性を両立した高導電性ガラスである透明導電体5を容易に提供することができる。尚、本実施形態では、透明基材2がガラスである場合を例示したが、透明基材2の材質は、これに限られるものではなく、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂であってもかまわない。透明基材2が樹脂である場合、高導電性と透明性を両立した高導電性透明フィルムを提供することができ、フィルムの厚さを薄くすれば、可撓性を持たせることができる。
【0019】
次に、本実施形態に係る透明導電体5の製造方法について説明する。
【0020】
はじめに、金属を添加したチタン膜を形成する。金属を添加したチタン膜は、ガラス基板上にスパッタ法により、約500nmの厚さで形成する。スパッタ法によりチタン膜を形成する際にスパッタリングされるチタンターゲットには、タンタルやニオブなどの金属が含有されており、このチタンターゲットをスパッタリングすることで、タンタルやニオブなどの金属を添加したチタンをガラス基板上に形成することができる。
【0021】
次に、金属を添加したチタン膜を陽極酸化する。ガラス基板上の金属を添加したチタンを電解質溶液に浸漬し、陽極酸化を行う。電解質溶液は、エチレングリコールで、フッ化アンモニウムを0.2wt%から0.8wt%の範囲で、水を1wt%から5wt%の範囲の濃度で添加したものを用いる。陽極酸化は、印加電圧が5Vから60Vの範囲で、電流密度が1mA/cmから100mA/cmの範囲で、1分間から60分間の範囲で行われる。また、陽極酸化時の電解質溶液の温度は、0℃から50℃の範囲であることが好ましい。この陽極酸化を行うことで、ガラス基板上には、平均長0.5μmから1.5μm、平均径30nmから100nmのチタニアナノチューブ1が形成される。
【0022】
次に、チタニアナノチューブ1の熱処理を行う。ガラス基板上のチタニアナノチューブ1を大気中において、500℃から600℃の温度範囲で、2時間から3時間熱処理を行い、チタニアナノチューブ1の結晶性を向上させる。また、この熱処理において陽極酸化のみでは酸化が進まなかった、チタニアナノチューブ1内外に残留したチタンが、酸化される。
【0023】
次に、チタニアナノチューブ1の剥離を行う。ガラス基板上のチタニアナノチューブ1を水に浸漬し、超音波を水に印加しながら、チタニアナノチューブ1をガラス基板から剥離する。水の中から、ガラス基板から剥離したチタニアナノチューブ1を回収する。
【0024】
次に、チタニアナノチューブ1の分散を行う。回収したチタニアナノチューブ1を透明基材2であるガラス原料に分散させる。チタニアナノチューブ1をガラス原料に分散させる際は、分散装置等を使用し、ガラス原料には、シランカップリング剤等の分散剤が混合されている。
【0025】
最後に、加熱によって、分散剤を揮発させ、チタニアナノチューブ1を分散したガラス原料を溶融し、冷却によって、固化させる。冷却は、自然冷却でも強制冷却でもよく、固化時に、所望の形状に成形することができる。
【0026】
これらの工程を経ることによって、高い電気伝導性を持ち、かつ透明であるチタニアナノチューブ1をガラスである透明基材2に分散することでき、高導電性と透明性を両立した高導電性ガラスである透明導電体5を容易に提供することができる。
【0027】
透明基材2として樹脂を用いる場合には、通常のフィラー含有の樹脂と同様に樹脂中にチタニアナノチューブを分散させ、成形加工や押し出し加工などにより板状、フィルム状などの所定の形状の透明導電体5を提供することができる。
【0028】
次に、図2に示される第1の実施形態の透明導電体の変形例を説明する。図2に示されるように、透明導電体5は、膜状であり、基板4上に形成されている。また透明導電体5は、透明基材2に金属を添加したチタニアナノチューブ1を分散して形成されている。透明基材2は、アクリルバインダ、エポキシバインダ、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーンバインダ、フッ素バインダ等の樹脂である。また基板4は、ガラスまたはポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂であるが、これに限られるものではない。チタニアナノチューブ1を分散した樹脂をスクリーン印刷によって、基板4上に、厚さ1μm程度で透明導電体5を形成する。このことにより、高導電性と透明性を両立した透明導電膜を提供することができ、必要に応じパターニングを行うことで、配線材料にも使うことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 チタニアナノチューブ
2 透明基材
4 基板
5 透明導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を添加したチタニアナノチューブを透明基材に分散させたことを特徴とする透明導電体。
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電体において、前記透明基材がガラスであることを特徴とする透明導電体。
【請求項3】
請求項1に記載の透明導電体において、前記透明基材が樹脂であることを特徴とする透明導電体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の透明導電体において、前記透明導電体は、膜状であり、基板上に形成されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の透明導電体において、前記金属がタンタルまたはニオブであることを特徴とする透明導電体。
【請求項6】
金属を添加したチタンを陽極酸化することによりえられるチタニアナノチューブを、透明基材に分散させることを特徴とする透明導電体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−142133(P2012−142133A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292830(P2010−292830)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】