説明

透明導電体

【課題】電気的抵抗値の変動を十分に抑制することができる透明導電体を提供すること。
【解決手段】本発明は、導電性粒子11、バインダー12及び紫外線吸収剤13を含む透明導電体である。また、この透明導電体は、導電性粒子11及びバインダー12を含む導電層15と、紫外線吸収剤13を含む紫外線吸収層26と、を備えることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
LCDや、PDP、有機EL、タッチパネル等には、透明電極が使用され、このような透明電極として、透明導電体が使用されている。透明導電体には、基体上にスパッタ膜(導電層)を成膜したものや、導電性粒子とバインダーとからなる導電層を形成したものがある。しかしながら、このような透明導電体は、長期間使用すると、透明導電体自体の電気的抵抗値が変動する傾向にある。
【0003】
そこで、電気的抵抗値の変動を抑制する透明導電体として、例えば、導電性粒子を固定する樹脂として、吸湿性の小さいとされているフェノキシ樹脂またはフェノキシ樹脂とエポキシ樹脂の混合樹脂、或いはポリフッ化ビニリデンを用いた光透過性導電材料が提案されている(例えば下記特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平08−78164号公報
【特許文献2】特開平11−273874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1又は2に記載の透明導電体であっても、長期間使用されると抵抗値が変動する場合がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電気的抵抗値の変動を十分に抑制することができる透明導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、透明導電体が紫外線を吸収すると、透明導電体自体の電気的抵抗値が変動することを見出した。このことから本発明者らは、透明導電体に紫外線が照射されると、導電性粒子が紫外線のエネルギーを吸収し、何らかの機構により活性化し、自らの導電性が変動することを確認した。そして、本発明者らは更に鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、導電性粒子、バインダー及び紫外線吸収剤を含む透明導電体を提供する。なお、本発明における透明導電体は、膜状及び板状のものを含み、膜状透明導電体は厚みが50nm〜1mmの範囲のものをいい、板状透明導電体は厚みが1mmを超えるものをいう。
【0008】
本発明の透明導電体は、透明導電体に紫外線が照射された場合であっても、透明導電体に含まれる紫外線吸収剤が紫外線を吸収するため、導電性粒子への紫外線の影響を抑えることができる。したがって、本発明の透明導電体によれば、透明導電体の電気的抵抗値の変動を十分に抑制することができる。
【0009】
上記透明導電体は、導電性粒子及びバインダーを含む導電層と、紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層と、を備えることが好ましい。
【0010】
導電性粒子及びバインダーと、紫外線吸収剤とを別々の層に含めると、紫外線吸収層に対し、導電層と反対側から入射された紫外線は、紫外線吸収層中の紫外線吸収剤により吸収され、導電層まで到達することを十分に抑制することができる。したがって、本発明の透明導電体によれば、導電性粒子、バインダー及び紫外線吸収剤が同一の層にある場合と比較して、透明導電体の電気的抵抗値の変動をより十分に抑制することができる。
【0011】
さらに、この場合、導電性粒子及びバインダーと、紫外線吸収剤とを別々の層に含めるため、導電層においては、バインダーによって導電性粒子をより強固に固定させることができ、導電層の機械的強度を向上させることもできる。
【0012】
上記紫外線吸収剤が分子内にトリアジン環、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾイルメタン及びヒドロキシベンゾエートからなる群より選ばれる少なくとも1つの誘導体、又は、アゾ基を有することが好ましい。
【0013】
上記紫外線吸収剤は、透明導電体用途に好適に用いることができる。すなわち、紫外線が照射されることにより、導電性粒子の影響を十分に抑制することができ、さらには透明導電体に上記のような紫外線吸収剤を含有させても、当該透明導電体の透明性を十分に確保することができる。
【0014】
また、上記紫外線吸収剤は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、マイカ、カオリン及びセリサイトからなる群より選ばれる少なくとも1つを有することが好ましい。
【0015】
紫外線吸収剤がこれらの無機物を有する場合、透明導電体を耐湿性に優れるものとすることができる。なお、紫外線吸収剤自体がこれらの無機物であってもよい。
【0016】
上記透明導電体において、導電性粒子と、紫外線吸収性バインダーと、を含むことが好ましい。
【0017】
上記透明導電体は、透明導電体に紫外線が照射された場合であっても、紫外線吸収性バインダーが紫外線を吸収することができる。したがって、紫外線吸収性バインダーは、紫外線照射による透明導電体の電気的抵抗値の変動を十分に抑制することができる。
【0018】
上記バインダーがアクリル樹脂であることが好ましい。この場合、他のバインダーを用いた場合と比較して、透明導電体の透過率をより向上させることができる。すなわち、アクリル樹脂を含む透明導電体は、透明性をより向上させることができる。また、アクリル樹脂は、酸・アルカリに対する耐薬品性に優れるとともに耐スクラッチ性(表面硬度)にも優れる。したがって、アクリル樹脂を含む透明導電体は、有機溶剤、界面活性剤等を含む拭き取り剤で拭くことや、対向する導電面同士の接触、擦れ等が想定されるタッチパネル等により好適に用いられる。
【0019】
上記透明導電体において、導電性粒子及びバインダーを含む導電層と、紫外線吸収性バインダーを含む紫外線吸収層と、を備えることが好ましい。
【0020】
バインダーと、紫外線吸収性バインダーとを別々の層に含めると、紫外線吸収層に対し、導電層と反対側から入射された紫外線は、紫外線吸収層中の紫外線吸収性バインダーにより吸収され、導電層中のバインダーにまで到達することを十分に抑制することができる。したがって、本発明の透明導電体によれば、バインダー及び紫外線吸収性バインダーが同一の層にある場合と比較して、透明導電体の電気的抵抗値の変動をより十分に抑制することができる。
【0021】
また、上記紫外線吸収性バインダーが分子内にトリアジン環、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾイルメタン及びヒドロキシベンゾエートからなる群より選ばれる少なくとも1つの誘導体、又は、アゾ基を有することが好ましい。
【0022】
これらの官能基を有する紫外線吸収性バインダーは、透明導電体用途に好適に用いることができる。すなわち、紫外線を吸収できると共に、透明導電体の透明性を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、紫外線照射による電気的抵抗値の変動を十分に抑制することができる透明導電体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
[第1実施形態]
まず、本発明の透明導電体の第1実施形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の透明導電体の第1実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように本実施形態の透明導電体10は、導電層15と基体100とが積層されてなり、当該導電層15は、導電性粒子11とバインダー12と紫外線吸収剤13とを備える。導電性粒子11は、導電体層15の内部に充填されており、導電性粒子11及び紫外線吸収剤13はバインダー12中に固定されている。このとき、紫外線吸収剤13はバインダー12と化学的な結合はなく、バインダー中に分散していると考えられる。
【0027】
透明導電体10において、導電性粒子11同士が、互いに接し、かつ透明導電体10の表面10aに一部の導電性粒子11が露出していることが好ましい。この場合、上記透明導電体10は十分な導電性を有することが可能となる。
【0028】
ここで、上記透明導電体10の導電層15及び基体100について説明する。
【0029】
<導電層>
上述したように、導電層15は、導電性粒子11とバインダー12と紫外線吸収剤13とを備える。以下、導電性粒子11、バインダー12、及び紫外線吸収剤13について詳細に説明する。
【0030】
(導電性粒子)
本実施形態の透明導電体に含まれる導電性粒子11は、透明導電性酸化物材料から構成される。透明導電性酸化物材料は、透明性及び導電性を有すれば特に限定されないが、かかる透明導電性酸化物材料としては、例えば、酸化インジウム、又は酸化インジウムに、錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム又はマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたものや、酸化錫、又は酸化錫に、アンチモン、亜鉛又はフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたものや、酸化亜鉛、又は酸化亜鉛に、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、又はマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたもの等が挙げられる。
【0031】
また、上記導電性粒子11の平均粒径は10nm〜80nmであることが好ましい。平均粒径が10nm未満であると、平均粒径が10nm以上である場合と比べて、透明導電体10の導電性が変動しやすくなる傾向がある。すなわち、本実施形態に係る透明導電体10は導電性粒子11において生じる酸素欠陥によって導電性が発現することとなるが、導電性粒子11の粒径が10nm未満では、粒径が上記範囲にある場合と比較して、例えば外部の酸素濃度が高い場合には酸素欠陥が減少し、導電性が変動する虞がある。一方、平均粒径が80nmを超えると、粒径が上記範囲にある場合と比較して、例えば可視光の波長領域では、平均粒径が80nm以下である場合に比べて光散乱が大きくなり、可視光の波長領域で透明導電体10の透過率が低下し、ヘイズ値が増加する傾向がある。
【0032】
さらに透明導電体10における導電性粒子11の充填率は、10体積%〜70体積%であることが好ましい。充填率が10体積%未満であると、充填率が上記範囲である場合と比較して、透明導電体10の電気的抵抗値が高くなる傾向にあり、充填度が70体積%を超えると、充填率が上記範囲である場合と比較して、導電層15を形成する膜の機械的強度が低下する傾向にある。
【0033】
このように、導電性粒子11の平均粒径及び充填率が上記範囲であると、上記透明導電体10は透明度がより向上し、かつ初期の電気的抵抗値を低減させることができる。
【0034】
また上記導電性粒子11の比表面積は10m/g〜50m/gであることが好ましい。比表面積が10m/g未満であると、比表面積が上記範囲である場合と比較して、可視光の光散乱が大きくなる傾向があり、比表面積が50m/gを超えると、比表面積が上記範囲である場合と比較して、透明導電体10の安定性が低くなる傾向がある。なお、ここで言う比表面積は、比表面積測定装置(型式:NOVA2000、カンタクローム社製)を用いて、試料を300℃で30分間真空乾燥した後に測定した値をいうものとする。
【0035】
(バインダー)
本実施形態の透明導電体に含まれるバインダー12としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0036】
この中でも、バインダーとして、アクリル樹脂を用いることが好ましい。この場合、他のバインダーを用いた場合と比較して、透明導電体の透過率をより向上させることができる。すなわち、アクリル樹脂を含む透明導電体は、透明性をより向上させることができる。また、アクリル樹脂は、酸・アルカリに対する耐薬品性に優れるとともに耐スクラッチ性(表面硬度)にも優れる。したがって、アクリル樹脂を含む透明導電体は、有機溶剤、界面活性剤等を含む拭き取り剤で拭くことや、対向する導電面同士の接触、擦れ等が想定されるタッチパネル等により好適に用いられる。
【0037】
また、これら以外にも光硬化性化合物、熱硬化性化合物等を硬化させたものも用いることができる。この光硬化性化合物としては、光によって硬化する有機化合物であればどのようなものでもよく、熱硬化性化合物としては、熱により硬化する有機化合物であればどのようなものでもよい。ここで、上記有機化合物には、上記バインダー12の原料となる物質を含み、具体的にはバインダー12を形成できるモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等を含む。
【0038】
また、上記バインダー12が光硬化性化合物を硬化させたものであると、硬化反応の制御ができ、かつ、短い所要時間で硬化させることができるため、工程管理が簡便になる利点がある。上記光硬化性化合物としては、ビニル基やエポキシ基、又はそれらの誘導体を含むモノマー等を好ましく用いることができる。これらは1種類単独であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0039】
(紫外線吸収剤)
本実施形態の透明導電体に含まれる紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、マイカ、カオリン、セリサイト等の無機物が挙げられる。この場合、透明導電体を耐湿性に優れるものとすることができる。
【0040】
また、上記紫外線吸収剤としては、分子内にアゾ基を有する化合物、トリアジン環、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾイルメタン、ヒドロキシベンゾエート又はそれぞれの誘導体等の有機物が挙げられる。これらの中でも、トリアジン環誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体であることがより好ましい。この場合、可視光透過率に優れるという利点がある。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、無機物と有機物、無機物同士、若しくは有機物同士の2種類以上を混合して用いてもよい。
【0041】
これらの官能基や誘導体を有する紫外線吸収剤13は、紫外線が照射されることにより、透明導電体10に含まれる導電性粒子11の電気的抵抗の変動を十分に抑制することができ、さらには透明導電体10に紫外線吸収剤13を含有させても、紫外線吸収剤の吸収波長は380nm以下であるものが多いため、当該透明導電体10の透明性を十分に確保することができる。
【0042】
これらの中でも、紫外線吸収剤が分子内にトリアジン環又はベンゾトリアゾールを有すると、紫外線のみ吸収し、可視光域の透過性に影響しないという利点がある。
【0043】
特に、紫外線吸収剤が分子内にベンゾトリアゾールを有すると、ベンゾトリアゾールは紫外線の吸収波長領域が広いため、透明導電体10に含まれる導電性粒子11が紫外線による影響を十分に抑制することができる。
【0044】
分子内にベンゾトリアゾールを有する紫外線吸収剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製チヌビンが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0045】
導電層15において、紫外線吸収剤13の含有率は、導電層15の全質量を100質量%とした場合、0.1質量%〜5.0質量%であることが好ましい。含有率が0.1質量%未満であると、含有率が上記範囲である場合と比較して、十分に紫外線を吸収することができず、導電性粒子が紫外線の影響を受け、含有率が5.0質量%を超えると、含有率が上記範囲である場合と比較して、バインダー12が導電性粒子11を固定させる強度が低下し、透明導電体の機械的強度が十分に得られない傾向にある。
【0046】
<基体>
本実施形態の透明導電体10において、基体100は、必須の層ではなく、透明導電体の使用用途等に応じて任意に設けることができる。なお、基体100が紫外線領域中の特定の波長領域の紫外線を吸収する場合、紫外線吸収剤13は、上記特定の波長領域の紫外線を吸収するものであることが好ましい。この場合、導電層15において、特定波長領域の紫外線が基体100によって吸収され、それ以外の波長の紫外線は、紫外線吸収剤13によって吸収されるため、電気的抵抗値の変動がより十分に抑制される。
【0047】
かかる基体としては、可視光に対して透明な材料で構成されるものであれば特に限定されない。すなわち基体は公知の透明フィルムでよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム(JSR(株)製、アートンなど)等が挙げられる。樹脂フィルムの他に、基体14として、ガラスを用いることもできる。また、上記基体は、樹脂のみからなることが好ましい。この場合、基体が樹脂と、樹脂以外のものとを含む場合と比較して、透明導電体10は透明性、屈曲性に優れるものとなる。したがって、この透明導電体10を例えばタッチパネルの用途に特に有効である。
【0048】
上述した導電性粒子11、バインダー12及び紫外線吸収剤13を備える本実施形態の透明導電体10は、透明導電体10に紫外線が照射された場合であっても、透明導電体10に含まれる紫外線吸収剤13が紫外線を吸収するため、透明導電体10に含まれる導電性粒子11が紫外線により電気的抵抗値が変動することを十分に抑制することができる。このことから上記透明導電体10は、導電性粒子11間の電気的な接続が不十分となることを抑制することができ、透明導電体10に水分が吸着することも抑制することができる。したがって、本実施形態の透明導電体10によれば、透明導電体10の電気的抵抗値の変動を十分に抑制することができる。
【0049】
<製造方法>
次に、上述した導電性粒子11として酸化インジウムに錫をドープしたもの(以下、「ITO」という。)を用いた場合について本実施形態に係る透明導電体10の製造方法について説明する。
【0050】
まず、塩化インジウム及び塩化錫を、アルカリを用いて中和処理することにより共沈させる(沈殿工程)。このとき副生する塩はデカンテーションや遠心分離法によって除去する。得られた共沈物に対して乾燥を行い、得られた乾燥体に対して雰囲気焼成及び粉砕の処理を行う。こうして導電性粒子が製造される。上記焼成の処理は、酸素欠陥の制御の観点から、窒素雰囲気中、若しくはヘリウム、アルゴン、キセノン等の希ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。
【0051】
こうして得られた導電性粒子11に、バインダー12及び紫外線吸収剤13を加えて、それぞれを液体中で分散させ分散液を得る。なお、バインダー12に代えてバインダー12のモノマー、ダイマー等が用いられてもよい。また、この分散液には、必要に応じて、光重合開始剤、架橋剤、表面処理剤等の添加剤を加えてもよい。また、この導電性粒子11、バインダー12及び紫外線吸収剤を分散させる液体としては、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。このとき上記バインダー若しくはモノマーを上記液体に溶かして用いてもよい。
【0052】
こうして得られた分散液を基体100上に塗布する。この基体100には、導電層15との接着させる面側にアンカー層を予め設けておくことも可能である。基体100上に予めアンカー層を設けておくと、基体100上のアンカー層を介して導電層15をより強固に固着させることができる。上記アンカー層としては、ポリウレタン等が好適に用いられる。
【0053】
また、上記分散液を塗布後、乾燥工程を施し、未硬化の導電層を得ることが好ましい。上記塗布方法としては、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、ノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スピンコート法、スクイズ法、スプレー法等が挙げられる。
【0054】
そして、上記基体100上に設けられた未硬化の導電層を硬化させる。このとき未硬化の導電層に含まれる成分が熱硬化性であれば、加熱することにより熱硬化性成分が硬化され、導電層15が形成される。また、未硬化の導電層に含まれる成分が光硬化性であれば、高エネルギー線を照射することにより光硬化性成分が硬化され、導電層15が形成される。また、上述した高エネルギー線は、例えば紫外線のほか、電子線、γ線、X線等であってもよい。
【0055】
こうして導電層15が基体100の一面上に形成され、図1に示す透明導電体10が得られる。この透明導電体10は、タッチパネル、光透過スイッチ等のパネルスイッチに用いることができ、さらにパネルスイッチ以外にも、ノイズ対策部品や、発熱体、EL用電極、バックライト用電極、LCD、PDP等の用途に好適に用いることができる。
【0056】
上記添加剤について説明する。
【0057】
<添加剤>
(光重合開始剤)
上述したように本実施形態に係る透明導電体10において、未硬化の導電層に含まれる成分が光硬化性化合物であれば、上記分散液に光重合開始剤を含有させることが好ましい。換言すれば、本実施形態のバインダーが光硬化性化合物を硬化させてなるものである場合、当該バインダーは、光硬化性化合物と光重合開始剤との混合物に光を照射させることにより硬化させて得られるものであることが好ましい。この場合、未効果の導電層が瞬時に硬化するため、導電層の膜厚再現性や寸法精度が得られやすいという利点がある。
【0058】
上記光重合開始剤としては、ラジカル光重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、可視光域でラジカルを発生させうるラジカル重合開始剤であることが好ましい。通常、光重合開始剤は紫外領域の一定波長を吸収することにより、光重合を開始するが、本発明の透明導電体は紫外線吸収剤を含むため、紫外線吸収剤の吸収する波長と、光重合開始剤が吸収する波長とが重複しない領域で光重合を開始させる必要があるところ、これらの光重合開始剤は、光重合を開始させることができる光の波長の幅が、近紫外線から可視光線の領域まで広がっているため、紫外領域に幅広い吸収を有する紫外線吸収剤を用いた場合であっても、確実に光重合を開始させることができる。
【0059】
(架橋剤)
本実施形態の透明導電体10には、架橋剤を更に含有させることが好ましい。透明導電体10に架橋剤を含有させると、バインダー同士を架橋させることができるため、透明導電体10を、より密な構造とすることができる。この場合、外部の水分が透明導電体10内に浸入することを抑制することができる。そうすると、水分の浸入に起因した透明導電体の電気的抵抗値の変動を抑制することができる。
【0060】
上記架橋剤としては、分子内にビニル基を複数有するものが好ましい。このような架橋剤は、架橋剤のビニル基がバインダーの結合部位に結合することとなるため、ビニル基の数に相当する数の架橋点を形成することが可能となる。このような観点からビニル基の数は多いほうが好ましく、具体的には、2〜100であることが好ましい。なお、上記ビニル基の数が100を超えると、ビニル基の数が上記範囲にある場合と比較して、自由運動の抑制により架橋密度が低下する傾向にある。
【0061】
(表面処理剤)
上記透明導電体10には、シランカップリング剤、シラザン化合物、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、又はホスフォネートカップリング剤等の表面処理剤を含有させてもよい。この中でも表面処理剤はシランカップリング剤、又はシラザン化合物であることが好ましい。
【0062】
表面処理剤は、導電性粒子の表面の水酸基と結合し、当該導電性粒子の表面を疎水性とすることができる。このため、水分が吸収されて透明導電体10が膨潤することを抑制することができる。したがって、この場合、高湿度環境下等において透明導電体10を長期間使用した場合であっても、透明導電体10の電気的抵抗値の変動を十分に抑制することができる。なお、上記表面処理剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0063】
(その他の添加剤)
なお、透明導電体10は、必要に応じてその他の添加剤を更に含有していてもよい。その他の添加剤としては、難燃剤、着色剤、可塑剤等が挙げられる。
【0064】
[第2実施形態]
次に、本発明の透明導電体の第2実施形態について説明する。
【0065】
図2は、本発明の透明導電体の第2実施形態を示す模式断面図である。図2に示すように本実施形態の透明導電体20は、透明導電体11及びバインダー12を含む導電層25と、紫外線吸収剤13を含む紫外線吸収層26と、基体100とを備えており、基体100、紫外線吸収層26及び導電層25がこの順序で積層されている。導電性粒子11は導電層25の内部に充填されており、導電性粒子11はバインダー12に固定されている。
【0066】
透明導電体20において、導電性粒子11同士が互いに接し、かつ透明導電体20の表面20aに一部の導電性粒子11が露出していることが好ましい。この場合、上記透明導電体20は十分な導電性を有することが可能となる。
【0067】
透明導電体20は、紫外線吸収層を導電層と基板との間に設けることで、紫外線吸収層で紫外線吸収剤がブリード現象を起こしたとしても紫外線吸収能が低下することを抑制できる。これに対して、紫外線吸収層が基板の外、或いは最表面にある場合、紫外線吸収剤のブリード現象が起き、紫外線吸収剤が、例えば指の摩擦等で減少する場合がある。
【0068】
ここで、上記透明導電体20の導電層25及び紫外線吸収層26について説明する。
【0069】
<導電層>
上述したように、導電層25は、導電性粒子11とバインダー12とを備える。導電性粒子11及びバインダー12は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0070】
透明導電体20において、導電層25における導電性粒子11の充填率は、10体積%〜70体積%であることが好ましい。充填率が10体積%未満であると、充填率が上記範囲である場合と比較して、透明導電体20の電気的抵抗値が高くなる傾向にあり、充填度が70体積%を超えると、充填率が上記範囲である場合と比較して、導電層25の機械的強度が低下する傾向にある。
【0071】
<紫外線吸収層>
紫外線吸収層26には、紫外線吸収剤13が含まれる。紫外線吸収剤13は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0072】
紫外線吸収層26における紫外線吸収剤13の含有率は、紫外線吸収層の全質量を100質量%とした場合、0.1質量%〜5.0質量%であることが好ましい。含有率が0.1質量%未満であると、含有率が上記範囲である場合と比較して、十分に紫外線を吸収することができず、バインダーが劣化する傾向にあり、含有率が5.0質量%を超えると、含有率が上記範囲である場合と比較して、紫外線吸収層26と、導電層25若しくは基体100との接着性強度が低下する傾向にある。
【0073】
紫外線吸収層は、バインダー22を更に含むことが好ましい。この場合、紫外線吸収剤13をバインダー22により固定されることができる。
【0074】
上記バインダー22としては、特に限定されないが、上述したバインダー12と同様の成分であってもよく、上述した基体と同様の成分であってもよい。
【0075】
導電性粒子11及びバインダー12と、紫外線吸収剤13とを別々の層に含めると、紫外線吸収層26に対し、導電層25と反対側から入射された紫外線は、紫外線吸収層26中の紫外線吸収剤13により吸収され、導電層25中の導電性粒子11にまで到達することを十分に抑制することができる。したがって、本発明の透明導電体20によれば、導電性粒子11、バインダー12及び紫外線吸収剤13が同一の層にある場合と比較して、透明導電体20の電気的抵抗値の変動をより十分に抑制することができる。
【0076】
さらに、この場合、導電性粒子11及びバインダー12と、紫外線吸収剤13とを別々の層に含めるため、導電層25においては、バインダー12によって導電性粒子11をより強固に固定させることができ、導電層25の機械的強度を向上させることもできる。
【0077】
なお、本実施形態において、上記導電層25には上述した架橋剤、表面処理剤、その他の添加剤を含有させてもよく、上記紫外線吸収層26には上述した架橋剤、その他の成分を含有させてもよい。
【0078】
<製造方法>
次に、上述した導電性粒子11として酸化インジウムに錫をドープしたもの(以下、「ITO」という。)を用いた場合について本実施形態に係る透明導電体20の製造方法について説明する。
【0079】
まず、紫外線吸収剤13を例えばバインダー12に加えて、液体中に分散させ第1の分散液を得る。なお、バインダー12に代えてバインダー12のモノマー、ダイマー等が用いられてもよい。また、この分散液には、必要に応じて、光重合開始剤、架橋剤等の添加剤を加えてもよい。また、この紫外線吸収剤13及びバインダー12を分散させる液体としては、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。このとき上記バインダー若しくはモノマーを上記液体に溶かして用いてもよい。
【0080】
こうして得られた第1の分散液を基体100上に塗布する。この基体100には、導電層15との接着させる面側にアンカー層を予め設けておくことも可能である。基体100上に予めアンカー層を設けておくと、基体100上にアンカー層を介して紫外線吸収層26をより強固に固定させることができる。上記アンカー層としては、ポリウレタン等が好適に用いられる。
【0081】
また、上記第1の分散液を塗布後、乾燥工程を施し、未硬化の紫外線吸収層を得ることが好ましい。上記塗布方法としては、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、ノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スピンコート法、スクイズ法、スプレー法等が挙げられる。
【0082】
そして、上記基体100上に設けられた未硬化の紫外線吸収層を硬化させる。このとき未硬化の紫外線吸収層に含まれる成分が熱硬化性であれば、加熱することにより熱硬化性成分が硬化され、紫外線吸収層26が形成される。また、未硬化の紫外線吸収層に含まれる成分が光硬化性であれば、高エネルギー線を照射することにより光硬化性成分が硬化され、紫外線吸収層26が形成される。また、上述した高エネルギー線は、例えば紫外線のほか、電子線、γ線、X線等であってもよい。
【0083】
こうして紫外線吸収層26が基体100の一面上に形成される。
【0084】
次に、塩化インジウム及び塩化錫を、アルカリを用いて中和処理することにより共沈させる(沈殿工程)。このとき副生する塩はデカンテーションや遠心分離法によって除去する。得られた共沈物に対して乾燥を行い、得られた乾燥体に対して雰囲気焼成及び粉砕の処理を行う。こうして導電性粒子が製造される。上記焼成の処理は、酸素欠陥の制御の観点から、窒素雰囲気中、若しくはヘリウム、アルゴン、キセノン等の希ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。
【0085】
こうして得られた導電性粒子11に、バインダー12を加えて、液体中で分散させ第2の分散液を得る。なお、バインダー12に代えてバインダー12のモノマー、ダイマー等が用いられてもよい。また、この分散液には、必要に応じて、光重合開始剤、架橋剤、表面処理剤等の添加剤を加えてもよい。また、この導電性粒子11及びバインダー12を分散させる液体としては、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。このとき上記バインダー若しくはモノマーを上記液体に溶かして用いてもよい。
【0086】
こうして得られた第2の分散液を基体100上に設けた紫外線吸収層26上に塗布する。また、上記第2の分散液を塗布後、乾燥工程を施し、未硬化の導電層を得ることが好ましい。上記塗布方法としては、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、ノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スピンコート法、スクイズ法、スプレー法等が挙げられる。
【0087】
そして、上記紫外線吸収層26上に設けられた未硬化の導電層を硬化させる。このとき未硬化の導電層に含まれる成分が熱硬化性であれば、加熱することにより熱硬化性成分が硬化され、導電層25が形成される。また、未硬化の導電層に含まれる成分が光硬化性であれば、高エネルギー線を照射することにより光硬化性成分が硬化され、導電層25が形成される。また、上述した高エネルギー線は、例えば紫外線のほか、電子線、γ線、X線等であってもよい。
【0088】
こうして導電層25が紫外線吸収層26の一面上に形成され、図2に示す透明導電体20が得られる。この透明導電体20は、タッチパネル、光透過スイッチ等のパネルスイッチに用いることができ、さらにパネルスイッチ以外にも、ノイズ対策部品や、発熱体、EL用電極、バックライト用電極、LCD、PDP等の用途に好適に用いることができる。
【0089】
[第3実施形態]
次に、本発明の透明導電体の第3実施形態について説明する。第3実施形態の透明導電体30は、バインダー12及び紫外線吸収剤13の代わりに、紫外線吸収性バインダー32を用いる点で第1実施形態と異なる。
【0090】
図3は、本発明の透明導電体の第3実施形態を示す模式断面図である。図3に示すように本実施形態の透明導電体30は、導電層35と基体100とが積層されてなり、当該導電層35は、導電性粒子11と紫外線吸収性バインダー32とを備える。導電性粒子11は導電層35の内部に充填されており、導電性粒子11は紫外線吸収性バインダー32に固定されている。
【0091】
透明導電体30において、導電性粒子11同士は互いに接し、かつ透明導電体30の表面30aに一部の導電性粒子11が露出していることが好ましい。この場合、上記透明導電体30は十分な導電性を有することが可能となる。
【0092】
ここで、紫外線吸収性バインダー32について説明する。
【0093】
(紫外線吸収性バインダー)
紫外線吸収性バインダー32は、分子内にアゾ基、トリアジン環、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾイルメタン、ヒドロキシベンゾエート等の紫外線を吸収する基や誘導体を有する樹脂であればよく、かかる樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。なお、紫外線吸収性バインダーは分子内にこれらを1種類単独で有してもよく、2種類以上の複数を有していてもよい。
【0094】
これらの中でも紫外線吸収性バインダー32は、紫外線吸収性バインダーの分子内にアゾ基、又は、トリアジン環、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾイルメタン及びヒドロキシベンゾエートからなる群より選ばれる少なくとも1つの誘導体を有する樹脂であることが好ましく、かかる樹脂はアクリル樹脂であることが更に好ましい。
【0095】
このような紫外線吸収性バインダーは、透明導電体の用途に好適に用いることができる。すなわち、紫外線を吸収できると共に、透明導電体30の透明性を十分に確保することができる。
【0096】
また、紫外線吸収性バインダー32がアクリル樹脂であると、他のポリマーを用いた場合と比較して、透明導電体の屈折率を低下させることができる。すなわち、アクリル樹脂を含む透明導電体は、透明性をより向上させることができる。また、アクリル樹脂は、酸・アルカリに対する耐薬品性に優れるとともに耐スクラッチ性(表面硬度)にも優れる。したがって、アクリル樹脂を含む透明導電体は、有機溶剤、界面活性剤等を含む拭き取り剤で拭くことや、対向する導電面同士の接触、擦れ等が想定されるタッチパネル等により好適に用いられる。
【0097】
上記紫外線吸収性バインダーの製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述した官能基を有するモノマーを少なくとも1つ有する複数のモノマーを重合させる方法が挙げられる。また、上記紫外線吸収性バインダーの製造方法は、例えば脱離基を有し、かつ上述した官能基を有しないポリマーに、上述した官能基を有する化合物を反応させ、脱離基と化合物とを置換させることによっても得ることができる。
【0098】
紫外線吸収性バインダーの製造方法が、上記官能基または上記誘導体を有するモノマーを少なくとも1つ有する複数のモノマーを重合させる方法である場合、これらのモノマーは1種類を単独で重合させてもよく、2種類以上を混合して共重合させてもよい。
【0099】
また、上記官能基または上記誘導体を有するモノマーと、上記官能基または上記誘導体を有しないモノマーとを共重合させてもよい。上記官能基または上記誘導体を有しないモノマーとしては、アクリルモノマー等が挙げられる。なお、上記官能基または上記誘導体を有しないモノマーは1種類を単独で上記官能基または上記誘導体を有するモノマーと共重合させてもよく、2種類以上を混合して、上記官能基または上記誘導体を有するモノマーと共重合させてもよい。
【0100】
紫外線吸収性バインダーの製造方法が上記官能基または上記誘導体を有しないポリマーに、上記官能基または上記誘導体を有する化合物と反応させる方法である場合、当該ポリマーとしては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、上記官能基または上記誘導体を有する化合物としては、上記官能基または上記誘導体を有するアルコール、カルボン酸等が挙げられる。
【0101】
また、上記紫外線吸収性バインダー32は光硬化性化合物を硬化させたものであることが好ましい。上記紫外線吸収性バインダー32が光硬化性化合物を硬化させたものであると、硬化反応の制御ができ、かつ、短い所要時間で硬化させることができるため、工程管理が簡便になる利点がある。
【0102】
本実施形態の透明導電体30における紫外線吸収性バインダー32において、上記官能基または上記誘導体の分子内に占める割合については特に限定されないが、バインダー分子に占める上記官能基または上記誘導体の比率はバインダー分子の全質量を100質量%とした場合、0.1質量%〜5.0質量%であることが好ましい。含有率が0.1質量%未満であると、含有率が上記範囲である場合と比較して、十分に紫外線を吸収することができず、導電性粒子11が紫外線の影響を受け、含有率が5質量%を超えると、含有率が上記範囲である場合と比較して、可視光域の透過性の低下や、透明導電体30の機械的強度が十分に得られない傾向にある。
【0103】
上記透明導電体30は、透明導電体30に紫外線が照射された場合であっても、紫外線吸収性バインダー32が紫外線を吸収することができる。したがって、紫外線吸収性バインダー32は、透明導電体30の電気的抵抗値の変動を十分に抑制することができる。
【0104】
また、紫外線吸収性バインダー32は、高分子であるため、ブリードし難い。したがって、上記透明導電体は、ブリードによるマイクロクラックの発生や紫外線吸収効果の低減を抑制することができる。
【0105】
なお、本実施形態において、上記導電層35には上述した架橋剤、表面処理剤、その他の添加剤を含有させてもよい。
【0106】
この透明導電体30は、タッチパネル、光透過スイッチ等のパネルスイッチに用いることができ、さらにパネルスイッチ以外にも、ノイズ対策部品や、発熱体、EL用電極、バックライト用電極、LCD、PDP等の用途に好適に用いることができる。
【0107】
[第4実施形態]
次に、本発明の透明導電体の第4実施形態について説明する。第4実施形態の透明導電体は、紫外線吸収層が、紫外線吸収剤13の代わりに、紫外線吸収性バインダー32を用いる点で第2実施形態と異なる。なお、上記紫外線吸収性バインダーは、上記第3実施形態で説明した紫外線吸収性バインダー32と同様である。
【0108】
図4は、本発明の透明導電体の第4実施形態を示す模式断面図である。図4に示すように本実施形態の透明導電体40は、透明導電体11及びバインダー12を含む導電層25と、紫外線吸収性バインダー32を含む紫外線吸収層46と、基体100とを備えており、基体100、紫外線吸収層46及び導電層25がこの順序で積層されている。導電性粒子11は導電層25の内部に充填されており、導電性粒子11はバインダー12に固定されている。
【0109】
透明導電体40において、導電性粒子11同士は互いに接し、かつ透明導電体40の表面40aに一部の導電性粒子11が露出していることが好ましい。この場合、上記透明導電体40は十分な導電性を有することが可能となる。
【0110】
バインダー12と、紫外線吸収性バインダー32とを別々の層に含めると、紫外線吸収層46に対し、導電層25と反対側から入射された紫外線は、紫外線吸収層46中の紫外線吸収性バインダー32により吸収され、導電層25中のバインダー12にまで到達することを十分に抑制することができる。したがって、本発明の透明導電体40によれば、バインダー12及び紫外線吸収性バインダー32が同一の層にある場合と比較して、透明導電体40の電気的抵抗値の変動をより十分に抑制することができる。
【0111】
なお、本実施形態において、上記導電層25には上述した架橋剤、表面処理剤、その他の添加剤を含有させてもよく、上記紫外線吸収層46には上述した架橋剤、その他の成分を含有させてもよい。
【0112】
この透明導電体40は、タッチパネル、光透過スイッチ等のパネルスイッチに用いることができ、さらにパネルスイッチ以外にも、ノイズ対策部品や、発熱体、EL用電極、バックライト用電極、LCD、PDP等の用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0114】
(導電性粒子の作製)
塩化インジウム四水和物(関東化学社製)19.9g及び塩化第二錫(関東化学社製)2.6gを水980gに溶解した水溶液と、アンモニア水(関東化学社製)を水で10倍に希釈したものとを調製しながら混合し、白色の沈殿物(共沈物)を生成させた。
【0115】
生成した沈殿物を含む液体を遠心分離機で固液分離し固形物を得た。これを更に水1000gに投入し、ホモジナイザーで分散して、遠心分離機で固液分離を行なった。分散及び固液分離を5回繰り返したのち、固形物を乾燥し、窒素雰囲気中、600℃で1時間加熱して、ITO粉(導電性粒子)を得た。
【0116】
(実施例1)
ガラス基板上に10cm×30cm角のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基体、帝人株式会社製、厚さ100μm)の一端を両面粘着テープを用いて貼り付け、ガラス基板上に基体を固定した。
【0117】
次にポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:A−600)36質量部と、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:702A)12質量部と、チヌビン900(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)1質量部と、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、IRGACURE819とIRGACURE184の等量混合物)2質量部とをメチルエチルケトン(関東化学株式会社製、MEK)50質量部中で混合させ、第1の混合液とした。
【0118】
この第1の混合液をバーコート法により基体上に硬化後の厚さが10μmとなるように塗布し、高圧水銀灯を光源として積算照度量1000mJ/cmとするUV照射を行うことにより硬化させ、紫外線吸収層を形成した。
【0119】
次にITO粉(平均粒径30nm)150質量部と、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:A−BPE−20)20質量部と、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:14G)35質量部と、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:702A)25質量部と、ウレタン変性アクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:UA−512)10質量部と、アクリルポリマー(平均分子量約5万、1分子当たりアクリロイル基を平均50基、トリエトキシシランを平均25基含有)10重量部と、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:IRGACURE907)1質量部とをメチルエチルケトン(関東化学株式会社製、MEK)50質量部中で混合させ、第2の混合液とした。
【0120】
この第2の混合液をバーコート法により上記紫外線吸収層上に硬化後の厚さが50μmとなるように塗布し、高圧水銀灯を光源として積算照度量3000mJ/cmとするUV照射を行うことにより硬化させ、導電層を形成した。
【0121】
そして、ガラス基板を基体から分離することにより、透明導電体を得た。
【0122】
(実施例2)
ガラス基板上に10cm×30cm角のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基体、帝人株式会社製、厚さ100μm)の一端を両面粘着テープを用いて貼り付け、ガラス基板上に基体を固定した。
【0123】
次にITO粉(平均粒径30nm)150質量部と、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:A−BPE−20)20質量部と、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:14G)35質量部と、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:702A)25質量部と、ウレタン変性アクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:UA−512)10質量部と、アクリルポリマー(平均分子量約5万、1分子当たりアクリロイル基を平均50基、トリエトキシシランを平均25基含有)10重量部と、チヌビン900(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)2質量部と、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、IRGACURE819とIRGACURE184の等量混合物)2質量部とをメチルエチルケトン(関東化学株式会社製、MEK)40質量部中で混合させ、第3の混合液とした。
【0124】
この第3の混合液をバーコート法により上記基体上に硬化後の厚さが50μmとなるように塗布し、高圧水銀灯を光源として積算照度量3000mJ/cmとするUV照射を行うことにより硬化させ、導電層を形成した。
【0125】
そして、ガラス基板を基体から分離することにより、透明導電体を得た。
【0126】
(実施例3)
実施例2で使用したアクリルポリマーの代わりに、平均分子量約10万、1分子当たりアクリロイル基を平均50基、トリエトキシシランを平均25基、2−(2−ベンゾトリアゾリル)−クレゾールを平均100基含有するアクリルポリマーを用い、 さらにチヌビン900を用いないこと以外は実施例2と同様にして、透明導電体を得た。
【0127】
(実施例4)
実施例3で使用したアクリルポリマーの2−(2−ベンゾトリアゾリル)−クレゾールを、4−ヒドロキシベンゾフェノンに変更したこと以外は実施例3と同様にして、透明導電体を得た。
【0128】
(実施例5)
実施例1で使用した第1の混合液に酸化亜鉛(一次粒径15nm)2質量部を追加したこと以外は実施例1と同様にして、透明導電体を得た。
【0129】
(比較例1)
チヌビン900を用いないこと以外は実施例2と同様にして、透明導電体を得た。
【0130】
[評価方法]
(透明導電体の抵抗評価)
実施例1〜5及び比較例1で得られた透明導電体について、以下のようにして電気抵抗の評価を行った。すなわち、上記のようにして得られた透明導電体を50mm角に切り取り、導電層の表面において、任意の対向する端面から5mmの幅に銀製導電ペーストにて電極を作製し、この電極間にデジタルマルチメーター(三和電気計器株式会社製PC5000)を接続した。これらを暗室中に設置し、導電層表面から垂直方向に20cmの位置にブラックライト(東芝ライテック株式会社製、型番FL6BLB)を設置してピーク波長352nmの近紫外線を照射した。近紫外線照射前の電気的抵抗値を初期抵抗値、1時間照射後の電気的抵抗値を負荷後抵抗値とし、下記式:
変動率=負荷後抵抗値/初期抵抗値
に基づいて変動率を算出した。得られた結果を表1に示す。
【表1】



【0131】
表1から明らかなように、実施例1〜3は、比較例1と比べて電気的抵抗値の変動が小さく、電気的抵抗値の変動が十分に抑制できていることが分かった。以上の結果より、本発明の透明導電材料によれば、高湿環境下であっても、電気的抵抗値の変動を十分に抑制できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の透明導電体の第1実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の透明導電体の第2実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の透明導電体の第3実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の透明導電体の第4実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0133】
10,20,30,40…透明導電体、10a,20a,30a,40a…面、11…導電性粒子、12…バインダー、13…紫外線吸収剤、15,25,35…導電層、26,46…紫外線吸収層、32…紫外線吸収性バインダー、100…基体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子、バインダー及び紫外線吸収剤を含む、透明導電体。
【請求項2】
前記導電性粒子及び前記バインダーを含む導電層と、
前記紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層と、を備える請求項1記載の透明導電体。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤が分子内にトリアジン環、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾイルメタン及びヒドロキシベンゾエートからなる群より選ばれる少なくとも1つの誘導体、又は、アゾ基を有する、請求項1又は2に記載の透明導電体。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、マイカ、カオリン及びセリサイトからなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、請求項1又は2に記載の透明導電体。
【請求項5】
前記バインダーがアクリル樹脂である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項6】
導電性粒子と、紫外線吸収性バインダーと、を含む、透明導電体。
【請求項7】
前記導電性粒子及びバインダーを含む導電層と、
前記紫外線吸収性バインダーを含む紫外線吸収層と、を備える請求項6記載の透明導電体。
【請求項8】
前記紫外線吸収性バインダーが分子内にトリアジン環、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾイルメタン、ヒドロキシベンゾエートからなる群より選ばれる少なくとも1つの誘導体、又は、アゾ基を有する、請求項6又は7に記載の透明導電体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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