説明

透明樹脂シートの連続的製造方法

【課題】製品板厚の変更を容易に行え、かつガスケットによるシールが必要となる低粘度の重合性組成物(B)を透明樹脂板へ重合・固化させるための可堯性を持つフィルムを使用した連続製造方法を提供する。
【解決手段】一方向に移送される型上の、移送方向の両側端部に重合性組成物(A)を供給し、該両側端部の間に重合性組成物(B)を供給した後、型上の重合性組成物(A)及び(B)の上に可堯性を持つフィルムを被せ、重合性組成物(A)及び(B)を重合硬化させる、透明樹脂シートの連続的製造方法であって、重合性組成物(A)の粘度が5000〜200000mPa・sであり、かつ重合性組成物(A)の重合ピーク時間T1が重合性組成物(B)の重合ピーク時間T2よりも長い、透明樹脂シートの連続的製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂シートを連続的に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯型ゲーム機、カーナビゲーションシステム、ポータブルAV機器等に代表される小型ディスプレイにおいて、画像の精細度が近年、劇的な進歩を見せており、これらディスプレイの表面を保護する透明樹脂シートも、これまで以上に高い透明性と光学歪の少なさが求められるようになってきている。
【0003】
特に、携帯電話に関しては、世界的な筐体薄型化の流れを背景とし、もはや筐体パーツの精度はμmオーダーで問われる時代になってきており、ディスプレイ部分の保護板も例外ではない。すなわち、光学特性が良好かつ高精度な板厚寸法の透明樹脂シートが近年の小型ディスプレイの保護板として最適なのである。
【0004】
上記の特性を有する樹脂シートの製造方法として、例えば、水平方向に走る上下に位置した2個のエンドレスベルトコンベアーの間に、重合性原料を注入してベルトの移動と共に重合せしめ、他端より板状の重合物を得る、連続セルキャスト法が知られている(特許文献1)。この連続セルキャスト方式は、他に知られている溶融押出方式と比較して、光学歪の少ない良好な樹脂板を製造する方法として利用されている。
【0005】
連続セルキャスト法では、注入された重合性原料がコンベアー側端部から漏洩しないように、ガスケットが、エンドレスベルトの自重および加圧により変形することで、シール性を発揮している。この場合、二個のエンドレスベルトの少なくとも一方に、可堯性を持つ活性エネルギー線透過性フィルムを用いると、同様の加圧により可堯性を持つフィルムに変形が生じ、その結果得られる透明樹脂板に著しい光学歪、すなわち板厚斑が発生しやすくなる。
【0006】
上記シール性を得るために、ゴム磁石を使用する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、これらの方法を用いた場合には、樹脂シートの厚みに応じたスペーサーが必要となる。また、樹脂原料を注入する片端において、該組成物がスペーサーおよびガスケットを乗り越えて該組成物が漏洩し、結果として大きな板厚斑が生じてしまうケースがあった。
【0007】
この漏洩を防止するために過剰な厚みのスペーサーを用いればよいが、厚み斑が増大し、品質の低下を招いた。
【0008】
また、密着テープを用いてシール性を得る方法が提案されている(特許文献3)。しかしながらこの方法においても、文献2と同様に、樹脂シートの厚みに応じた粘着テープ(スペーサー)を用いる必要がある。
【0009】
すなわち、得られる樹脂シートの板厚の変更を容易に行え、かつガスケットによるシールが必要となる低粘度の重合性原料(モノマー組成物)を透明樹脂板へ重合・固化させるための可堯性を持つフィルムを使用した連続製造方法は無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−179867号公報
【特許文献2】特公昭43−006312号公報
【特許文献3】特開平11−216730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、透明樹脂シートを高い板厚精度で連続的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一方向に移送される型上の、移送方向の両側端部に重合性組成物(A)を供給し、該両側端部の間に重合性組成物(B)を供給した後、型上の重合性組成物(A)及び(B)の上に可堯性を持つフィルムを被せ、重合性組成物(A)及び(B)を重合硬化させる、透明樹脂シートの連続的製造方法であって、重合性組成物(A)の粘度が5000〜200000mPa・sであり、かつ重合性組成物(A)の重合ピーク時間T1が重合性組成物(B)の重合ピーク時間T2よりも長い、透明樹脂シートの連続的製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、低粘度の重合性組成物を原料とし、可堯性を持つフィルムを使用することにより、透明樹脂シートを高い板厚精度で連続製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明で使用する重合性組成物(A)の供給方法を示す模式図である。
【図2】本発明で使用する重合性組成物(A)を用いた封止方法を示す模式図である。
【図3】本発明の方法を適用した製造装置の一例の模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の製造方法は、一方向に移送される型上の、移送方向の両側端部に重合性組成物(A)を供給し、該両側端部の間に重合性組成物(B)を供給した後、型上の重合性組成物(A)及び(B)の上に可堯性を持つフィルムを被せ、重合性組成物(A)及び(B)を重合硬化させる、透明樹脂シートの連続的製造方法であって、重合性組成物(A)の粘度が5000〜200000mPa・sであり、かつ重合性組成物(A)の重合ピーク時間T1が重合性組成物(B)の重合ピーク時間T2よりも長いことを特徴とする。
【0016】
本発明に使用される重合性組成物は、特に限定されないが、モノマー、ポリマー、重合開始剤および任意の他の成分とから構成することができる。
【0017】
本発明において使用されるモノマーとしては、加熱、または活性エネルギー線の照射によって硬化することにより樹脂を形成するモノマーであり、その各種モノマーを使用することができる。例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物、N−フェニルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等のマレイミド誘導体、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有単量体、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の窒素含有単量体、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、エチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート等の架橋剤などが挙げられ、これらのモノマーは、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明で得られる樹脂シートの種類としては特に限定されないが、以下にアクリル系樹脂シートを製造する場合について説明する。
【0019】
本発明において使用されるポリマーとしては、アクリル系樹脂シートを製造する場合、その組成としてメチルメタクリレート単位を50質量%以上含有することが好ましい。先に挙げたモノマーの単独重合物または共重合物を使用することができ、光学性能の観点から、ポリメチルメタクリレートを使用することが好ましい。
【0020】
本発明において使用される重合開始剤は、熱分解重合開始剤や活性エネルギー線分解重合開始剤であればよい。
【0021】
熱分解重合開始剤の具体例としては、tert−ヘキシルパーオキシピバレ−ト、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0022】
活性エネルギー線分解重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生し、硬化した樹脂の透明性を阻害しない限り、特に制限されず、各種の活性エネルギー線分解重合開始剤を使用することができる。代表的には、アセトフェノン系またはベンゾフェノン系の活性エネルギー線重合開始剤が挙げられ、特に1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名イルガキュア184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名ダロキュア1173)、ベンゾインエチルエーテル(例えば精工化学社製、商品名セイクオールBEE)等を用いることが好ましい。
【0023】
上記の重合開始剤は重合性組成物(B)100質量部に対し、通常0.01〜2質量部の割合で使用することが好ましい。上記重合開始剤が少なすぎると重合速度が上がらず、重合時間を多く要する結果となり、多すぎると製品板の光学性能、耐候性に影響を及ぼす。重合開始剤は0.05〜1質量部の割合で使用されることが好ましい。
【0024】
本発明において使用される重合性組成物(B)には、任意の他の成分として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、離型剤、重合禁止剤などを含有させることができる。
【0025】
本発明において使用される重合性組成物(B)は、エンドレスベルトあるいは可堯性を持つフィルムの上に供給された際に所望の厚みを保持し、かつ、重合性組成物(A)が効果を発揮するような粘度を有する。そのような粘度は、20℃において100〜2000mPa・sであることが好ましい。なお、ここでの粘度は、B型粘度計で測定する粘度である。
【0026】
本発明に使用される重合性組成物(B)は、特に限定されないが、上記のモノマー、ポリマー、重合開始剤および任意の他の成分とから構成することができる。
【0027】
重合性組成物(A)及び(B)中の重合開始剤が同一の種類であり、かつ、重合性組成物(A)及び(B)中のモノマーの内の少なくとも一つが同一の種類であることが好ましい。
【0028】
本発明による重合性組成物(A)において、重合開始剤は重合性組成物(A)100質量部に対し、通常0.001〜2質量部の割合で使用することが好ましい。上記組成物(A)中の重合開始剤が多すぎると、上記重合性組成物(B)の重合時間よりも上記組成物(A)の重合時間が早くなり、シール効果が発揮せず、また重合開始剤が少なすぎると、上記組成物(A)の重合時間が長くなり生産性が低下するため、好ましくは、0.03〜0.5質量部で使用される。
【0029】
本発明において使用される重合性組成物(A)には、任意の他の成分として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、離型剤、重合禁止剤などを含有させることができる。
【0030】
本発明において使用される重合性組成物(A)の粘度は、重合性組成物(B)のシール性(漏れ防止)の観点から、20℃において5000mPa・s以上であり、10000mPa・s以上であることが好ましい。一方、流動性、取り扱い性の観点から、重合性組成物(A)の粘度は20℃において200000mPa・s以下である。なお、ここでの粘度は、B型粘度計で測定する粘度である。
【0031】
本発明においては、重合性組成物(B)の重合ピーク時間よりも、重合性組成物(A)の重合ピーク時間の方が長い。重合性組成物(A)の重合ピーク時間T1より重合性組成物(B)の重合ピーク時間T2の方が短い場合、すなわち、重合性組成物(A)が重合性組成物(B)よりも先に重合した場合は、重合性組成物(A)の重合収縮により歪が発生し、可撓性を持つフィルムから重合性組成物(A)が剥離し、未重合であり流動性の高い状態にある重合性組成物(B)がその剥離箇所から漏洩し易くなる。あるいは可撓性を持つフィルムが変形し、重合性組成物(B)の形状を変形させ、製造される透明樹脂シートの品質に悪影響を与えることになる。
【0032】
ここで重合ピーク時間とは、以下の通りである。活性エネルギー線の照射により重合する場合には、重合性組成物(A)及び重合性組成物(B)へ活性エネルギー線の照射を開始してから、重合発熱による重合性組成物(A)及び重合性組成物(B)の温度変化を測定し、それぞれの温度ピークが発現するまでの時間である。加熱により重合する場合には、重合性組成物(A)及び重合性組成物(B)の加熱を開始してから、重合発熱による重合性組成物(A)及び重合性組成物(B)の温度変化を測定し、それぞれの温度ピークが発現するまでの時間である。なお、「温度ピーク」とは、重合時の温度の最大値のことであり、後述する熱処理をする場合における温度の最大値は含まない。
【0033】
重合ピーク時間は、一般的に重合性組成物(B)あるいは重合性組成物(A)中のモノマー成分の種類および添加量、重合開始剤の種類および添加量、重合させる際の温度および活性エネルギー線の強度等により変化し、これらを変更することで重合ピーク時間の調整が可能となる。
【0034】
本発明の重合性組成物(A)の重合ピーク時間を調整するには、重合開始剤の添加量を変更して調整することが好ましい。重合性組成物(A)に必要な粘度を保持するために、モノマー成分の種類および添加量を変更することは難しく、また重合開始剤の種類の変更では、重合性組成物(B)中の重合開始剤と混合するおそれがあり、さらに重合させる際の温度、活性エネルギー線の強度の変更では、重合性組成物(A)と同時に重合が生じる重合性組成物(B)の重合ピーク時間も変化するためである。
【0035】
重合ピーク時間を短くするには、重合開始剤の添加量を増加すればよく、長くするには重合開始剤の添加量を減量すればよい。開始剤の添加量と重合ピーク時間との間には概ね以下の関係がある。
τ2 = τ1×(C1/C2)(0.5)
重合開始剤濃度を、C1[質量%]、C2[質量%]とした時の重合ピーク
時間をそれぞれ、τ1[min]、τ2[min]とする
【0036】
同様に重合性組成物(B)の重合ピーク時間の調整も、前記重合性組成物(A)の場合と同様に行うことができる。しかしながら、重合開始剤の添加量を変更する場合、重合性開始剤の増量により、製品となる樹脂シートの黄変などの問題が生じるため、重合性組成物(B)の重合ピーク時間よりも重合性組成物(A)の重合ピーク時間を調整することが好ましい。
【0037】
重合性組成物(A)の重合ピーク時間T1と重合性組成物(B)の重合ピーク時間T2の比(T1/T2)は、1.1〜10が好ましい。上記重合ピーク時間の比が小さすぎると、上記重合性組成物(B)が漏洩するおそれがあり、また上記重合ピーク時間の比が大きすぎれば、重合性組成物(A)を充分重合硬化させるのに時間がかかりすぎ、生産性が低下することになる。重合性組成物(A)を充分重合硬化させないと上記フィルムの剥離が困難になる。
【0038】
本発明において重合性組成物(A)を型上の移送方向の両側端部に供給する方法としては、特に制限されるものではなく、通常の配管、ホースからの供給が使用できる。重合性組成物(A)および重合性組成物(B)を同時に、連続的に供給し、重合性組成物(B)をシート形状とし、かつシール性を保つためには、重合性組成物(B)から得られる樹脂シートの厚みよりも十分に厚く、重合性組成物(A)を供給することが好ましい。重合性組成物(A)は、厚くしすぎては経済的でないため、該樹脂シートの厚さの1.5〜10倍の厚さ(直径)で供給することが好ましい。
【0039】
本発明において重合性組成物(B)を型上の移送方向の前記両側端部の間に供給する方法としては、特に制限されるものではなく、通常の配管、ホースからの供給や、各種コーティング方法が使用できる。重合性組成物(B)を供給し、連続的にシート形状とするため、供給ダイにより上記組成物(B)をシート形状に供給する方法が好ましい。上記組成物(B)をシート形状にする方法としては、上述のダイからの供給や、エンドレスベルトあるいは上記フィルム上に供給した上記組成物(B)をロールと、エンドレスベルトあるいは上記フィルムを介したロールによって押し拡げる方法などもあり、これらを組み合わせた方法でも良い。
【0040】
本発明において使用される型としては、可撓性を持つフィルムを使用することができる。前記フィルム以外の型としては、例えばベルトが使用される。該ベルトの材質は特に規定されるものではなく、重合性組成物(B)をシート状に保持するものであれば金属製、樹脂製など自由に選定可能である。重合・硬化する際には重合収縮があるため、剛性の高い金属製ベルトであることがより好ましく、モノマーなどに対する腐食性の観点からステンレス製ベルトであることがさらに好ましい。ステンレス製ベルトを用い、樹脂シートを連続的に製造するためには、上記ベルトがエンドレスであることが好ましい。さらに樹脂シートの表面は、エンドレスベルトの表面を転写して得られるため、表面を鏡面仕上げされたステンレス製エンドレスベルトであることがより好ましい。
【0041】
前記可撓性を持つフィルムは、特に規定されるものではなく、重合性組成物(B)をシート状に保持し、また重合性組成物(B)に被せられるものであり、可堯性の合成樹脂シートで構成されることができる。前記フィルムは重合時の熱によって軟化しないよう100℃以上の軟化点を有するシートで構成されることが好ましい。重合性組成物(B)を、活性エネルギー線を照射することにより重合硬化させる場合は、前記フィルムは該活性エネルギー線を透過するものを用いる。前記フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートなどの合成樹脂フィルムが挙げられ、活性エネルギー線透過性、表面粗さの低さから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。前記フィルムの厚みは、剛性の観点から10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましいが、一方、コストの点から300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0042】
また、前記フィルムと重合性組成物(B)とが接する側の表面は、製品として得られる樹脂シートの表面に転写されるため、JIS B0601で規定する表面粗さ(Ra)としては100nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。
【0043】
重合性組成物(A)及び(B)の上に可撓性を持つフィルムを被せる。この可撓性を持つフィルムとしては、前記型に使用する可撓性を持つフィルムと同じものを用いることができる。
【0044】
前記フィルムの幅を、ベルト上に展開した重合性組成物の幅以上とする。ここで「幅」とは前記ベルトあるいは前記フィルムの移送方向と直交する方向の長さのことをいう。
以下に重合性組成物(A)及び(B)を、活性エネルギー線を照射して重合硬化させることにより、透明樹脂シートを連続的に製造する場合について説明する。
【0045】
本発明では、幅方向両端から内側10〜100mmの位置のそれぞれに上記供給方法によって重合性組成物(A)をベルトあるいは活性エネルギー線透過性フィルムの上に供給し、さらに重合性組成物(B)を上記供給方法で重合性組成物(A)が供給された幅方向内側へ供給する。そして、供給された重合性組成物(B)の上にもう一方の活性エネルギー線透過性フィルムを被せることで、該両端部を封止(シール)する。これにより、本発明へ適用が難しかったガスケットと同様の効果が得られる。すなわち、両端部を封止することにより、重合性組成物(B)が該両端部から漏洩することを防止できる。図1に重合性組成物(A)および重合性組成物(B)の供給方法が例示される。図2に封止方法が例示される。図1は、本発明による透明樹脂シートの製造工程における供給ダイd付近の上面図を示す。下側の活性エネルギー線透過性フィルムaを矢印の方向に移送させながら、その上に2本の供給ノズルcから重合性組成物(A)bを供給する。供給ノズルcの下流側に供給ダイdが設置されており、そこから、重合性組成物(A)間に、重合性組成物(B)eがシート状に供給される。その後、図2の側面図が示すように、上ロールgおよび下ロールhによって、重合性組成物(B)eの上に上側の活性エネルギー線透過性フィルムfを被せる。その結果、図2のA断面が示すように、重合性組成物(B)eは、下側の活性エネルギー線透過性フィルムaと、上側の活性エネルギー線透過性フィルムfと、重合性組成物(A)bとからなる鋳型によって封止され、その状態で活性エネルギー線照射区間(図示なし)へ移送される。
【0046】
重合性組成物(A)の供給位置については、上記のとおり、幅方向両端から内側10〜100mmの位置が好ましい。該供給位置が両端部に近すぎれば、重合性組成物(A)が漏れ、内側過ぎれば、活性エネルギー線透過性フィルムの幅よりも重合性組成物(B)から得られる樹脂シートの幅が小さくなり、経済性に欠ける。
【0047】
本発明において照射する活性エネルギー線としては、X線、紫外線、電子線等が挙げられる。特に、紫外線が好ましい。
【0048】
紫外線は、各種紫外線照射装置により照射され、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、殺菌灯、ブラックライト、紫外LEDなどが使用できる。
【0049】
活性エネルギー線の照射強度としては、重合性組成物(B)中の開始剤が活性エネルギー線分解重合開始剤の場合、該重合性組成物(B)に含有する活性エネルギー線分解重合開始剤濃度と照射時間との関係により決定されるが、上記重合性組成物(B)においては、モノマーの成長速度の観点から1mW/cm〜100mW/cmの範囲が好ましい。照射強度が弱すぎると重合開始剤の分解量が少ないことにより重合速度が遅くなり、逆に強すぎると、開始剤分解量を増やしても、本法での重合性組成物(B)ではモノマーの成長速度が追いつかず、停止反応に多くが消費されてしまうことで、製品シートの分子量低下と、活性エネルギー線が過剰に照射されることによる製品黄変が起きてしまう。
【0050】
本発明の重合性組成物(A)は、重合性組成物(B)の板厚に追従して変形し、重合性組成物(B)の硬化とともに、少し遅れて硬化することが好ましい。重合性組成物(A)が、重合性組成物(B)の重合ピーク時間よりも長い重合ピーク時間を有することにより、重合性組成物(A)の硬化を遅らせることができ、よって重合性組成物(B)の鋳型からの漏洩を防止することができる。
【0051】
本発明で使用される型は、重合性組成物(A)及び(B)の厚み保持の観点から、水平に移送することが好ましい。本発明において型の移送速度としては、0.1m/分以上であることが好ましく、1m/分以上であることがより好ましい。また20m/分以下であることが好ましく、10m/分以下であることがより好ましい。速度が遅すぎると、製品として得られる樹脂シートの生産量が少なくなってしまう問題があり、速度が速すぎると重合に必要な時間を得るための活性エネルギー線照射区間が長くなり、製造設備が大きくなる。
【0052】
本発明において重合性組成物(B)に活性エネルギー線を照射して硬化させる際の温度条件としては、重合速度や粘性条件などにより選定できるが、重合性組成物(B)に活性エネルギー線を照射する際には、モノマーの沸点以下であることが好ましく、例えばメチルメタクリレートモノマーの場合、100℃以下であることが好ましい。また、メチルメタクリレートモノマーの場合、重合時の温度が低いほど重合体中のモノマー単位の結合の配置においてシンジオタクチック成分が増加することが知られている。このシンジオタクチック成分が多いほど重合体のガラス転移温度Tgなどが高くなり、耐熱性が高くなる。製品の耐熱性向上の観点より、活性エネルギー線を照射するときの重合温度は50℃以下であることがより好ましい。
【0053】
活性エネルギー線硬化により得られる樹脂シートに対しては、残存モノマーを減少させる観点から、使用するモノマーとポリマーの組み合わせから得られるガラス転移温度Tg以上の温度に熱処理することも適宜可能であり、ポリメチルメタクリレートの場合には100℃以上に熱処理することが好ましい。
【0054】
本発明における樹脂シートの厚みは、型からの剥離性の観点から0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。また重合性組成物(B)硬化時の形状保持の観点から2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。樹脂シートが厚すぎると重合発熱の除去が間に合わなくなり、未重合モノマーが沸騰し、樹脂シート内に泡が発生しやすくなる。樹脂シートが薄すぎると本発明の効果が得難い。
【0055】
本発明を実施する装置の一例を図3に示し、これをもとに発明を説明するが、この図により本発明が限定されるものではない。可堯性を持つ活性エネルギー線透過性フィルム6、6’は、トルクモーター1とニップローラー9により張力がかけられた状態で、ニップローラー9の回転により、移送される。下側の活性エネルギー透過性フィルム6の上に、ノズル4により重合性組成物(A)8が供給され、供給ダイ3より重合性組成物(B)7が供給される。ロール5により、上側の活性エネルギー線透過フィルム6’が重合性組成物(A)および重合性組成物(B)7に被さる。その後、紫外線照射装置2から上記フィルム6’を介して、重合性組成物(A)8および重合性組成物(B)7に紫外線を照射し、重合固化させる。トルクモーター1’とローラー10により、硬化した重合性組成物(A)8よび重合性組成物(B)7から上下の上記フィルム6、6’を剥がす。剥がされた上記フィルム6、6’はトルクモーター1’により巻き取られる。上記フィルム6、6’を剥がされた重合性組成物(A)8および重合性組成物(B)7の硬化物は、ニップローラー13により搬送され、熱風炉11により重合性組成物(B)7からなる樹脂シートのガラス転移温度以上まで加熱され、冷却炉12により室温付近まで冷却される。冷却炉12を通過した重合性組成物(B)7の硬化物(樹脂シート)は、硬化した重合性組成物(A)と共に、切断機14により切断される。
【0056】
上側の活性エネルギー線透過フィルム6’と重合性組成物(B)7と下側の活性エネルギー線透過性フィルム6が積層されていればよく、重合性組成物(B)7を上側のフィルム6’に供給した後に、下側フィルム6を積層してもよいし、同時に積層してもよい。重合性組成物(A)8の供給は、重合性組成物(B)7が上記フィルム間6、6’に積層されるまでに漏洩しないように、重合性組成物(B)7が上記フィルム間6、6’に積層される前あるいは同時である必要がある。
【0057】
本発明において、紫外線照射は上下両面から行ってもよく、また紫外線照射前あるいは照射中に重合性組成物(B)を加熱してもよい。
【0058】
本発明において、紫外線を照射した後あるいは加熱炉後、冷却炉後に、硬化した重合性組成物(A)部分を切断する工程を含んでもよい。
【0059】
本発明において、冷却された樹脂シートは、切断せずにロール形状に巻いてもよい。
【0060】
また、本発明によって得られた樹脂シートは、活性エネルギー線透過性であることが好ましい。
【0061】
以上の通り、本発明によって得られた樹脂シートは各種用途に好適である。
【実施例】
【0062】
以下、アクリル系樹脂シートの製造に関する実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0063】
(開始剤量)
開始剤量は、重合性組成物(B)に含有する活性エネルギー線分解重合開始剤量をモノマーとポリマーを合わせたものを100質量部としたときの質量部表示とした。
【0064】
(粘度)
粘度に関しては、各重合性組成物(B)の20℃における粘度をB型粘度計にて測定した結果を示した。測定方法は、ブルックフィールド社製デジタル粘度計、LVDV−II+ProのスピンドルLV4を使用し、回転速度60rpmにて行った。
【0065】
(重合ピーク時間)
重合ピーク時間は、以下のような時間とした。100mm角(四方)、厚み1.5mmのステンレス板(SUS304)の一方の面の中央に熱電対をアルミテープで貼り付け、もう一方の面を上面として、重合ピーク時間を測定する重合性組成物(B)あるいは重合性組成物(A)(以下「シラップ」という)約10gを該ステンレス板の上、中央部に乗せ、そのシラップの上に100mm角に切断した厚み188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製コスモシャイン A4100 片面易接着処理)を重ね、以下で述べる紫外線照射装置を用いて、活性エネルギー線強度2.0mW/cmの雰囲気に置き、上記の熱電対から温度を測定し、照射開始から温度ピークを示すまでの時間(分)とした。
【0066】
(厚み斑)
透明樹脂板の厚みは、超音波厚み計(GE社製、CL400)を使用し、得られた樹脂板の幅方向に端部から10mm刻みで測定を実施した。さらに、サンプルの幅方向端部から両端50mmのデータを除外したうえで、下記の数式を用いて、厚み斑を定義した。
厚み斑[±%]=(厚み最大値[mm]−厚み最小値[mm])/2/厚み平均値[mm]
【0067】
(重合性組成物(B)の漏れ)
一対の厚み188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製コスモシャイン A4100 片面易接着処理)で構成された空間に重合性組成物(B)をダイ(リップクリアランス0.5mm、幅400mm)により幅400mm、厚み0.4mmとなる量を注入し、重合性組成物(B)が供給される幅にて、各種シールを実施した後、ケミカルランプゾーン(搬送距離2.0m)を0.1m/分の速度で搬送させた。なお、重合性組成物(B)と接する上記フィルムの表面は、未処理面を使用した。重合性組成物(B)の漏れは、この際に、重合性組成物(B)の挙動から、下記のように判断した。
○:重合性組成物(B)は、上記の構成された空間から漏れていない。
×:重合性組成物(B)は、上記の構成された空間から漏れている。
ただし、シールを行わない場合には、下記のように判断した。
○:透明樹脂板の幅が、450mm以下。
×:透明樹脂板の幅が、450mmより大きい。
なお、上記の紫外線照射装置とは、ケミカルランプ(東芝ライテック製、FL30S−BLランプ)16本によって構成される、活性エネルギー線照度2.0mW/cmで活性エネルギー線が照射される、重合性組成物(B)および重合性組成物(A)を重合・固化させる区間である。
【0068】
(活性エネルギー線照度)
活性エネルギー線照度は、UV照度計(アイグラフィック社製、UVPF−A1)を用い、重合性組成物(B)と同じ位置にて測定を実施し、測定されたピーク照度を活性エネルギー線照度とした。
【0069】
(実施例1)
メチルメタクリレートモノマー60質量部に対し、メチルメタクリレートポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−80、重量平均分子量10万)40質量部を60℃で30分間かけて加熱溶解させた混合物100質量部に対し、紫外線分解重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社、イルガキュア184)を0.03質量部、離型剤としてジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(三井サイアナミッド社製、エアロゾルOT−100)を0.05質量部添加し、重合性組成物(A)を調製し、調合時の泡を抜くために室温にて24時間静置させた。
【0070】
メチルメタクリレートモノマー25質量部、ジメタクリル酸ポリブチレングリコール(三菱レイヨン社製、アクリエステルPBOM)60質量部に対し、メチルメタクリレートノルマルブチルメタクリレート共重合ポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−107、メチルメタクリレート基40質量部、ノルマルブチルメタクリレート基60質量部、重量平均分子量6万)15質量部を60℃で30分間かけて加熱溶解させた混合物100質量部に対し、紫外線分解重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社、イルガキュア184)を0.3質量部、離型剤としてジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(三井サイアナミッド社製、エアロゾルOT−100)を0.05質量部添加し、重合性組成物(B)を調製し、調合時の泡を抜くために室温にて24時間静置させた。
このときの重合性組成物(B)の粘度は、200mPa・sであった。
【0071】
図3に示されるのと同様の装置を使用し、活性エネルギー線透過性フィルム6、6’として幅500mmで厚さ188μmの紫外線透過性ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製コスモシャイン A4100 片面易接着処理)を、紫外線照射装置2として東芝社製FL30S−BLランプ16本を、それぞれ使用した。
【0072】
下部紫外線透過性フィルム6の搬送速度を0.1m/分とし、下部紫外線透過性フィルム6の幅方向、両端端部から50mmの位置に重合性組成物(A)8をφ1mmのシリンジ4から送り方向に直径1mmの棒状に塗布したのちに、供給ダイ3から重合性組成物(B)7を幅400mm、厚さ0.4mmのシート状に供給し、さらに上部紫外線透過性フィルム6’を重合性組成物(A)8および重合性組成物(B)7の上に被せた。
その後、紫外線照射装置2により2.0mW/cmの照射強度で20分間紫外線を照射し、紫外線透過性フィルム6、6’から樹脂シートを剥離した。
【0073】
得られた樹脂シートの厚みを測定したところ、厚み斑は±5%と良好であり、また重合性組成物(B)7の漏れは生じなかった。
また、重合性組成物(B)の紫外線照射区間での重合ピーク時間は4分であり、一方重合性組成物(A)の重合ピーク時間は20分であった。
【0074】
(実施例2)
メチルメタクリレートモノマー22質量部、ジメタクリル酸ポリブチレングリコール(三菱レイヨン社製、アクリエステルPBOM)60質量部に対し、メチルメタクリレートノルマルブチルメタクリレート共重合ポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−107、メチルメタクリレート基40質量部、ノルマルブチルメタクリレート基60質量部、重量平均分子量6万)18質量部を60℃で30分間かけて加熱溶解させた混合物100質量部に対し、紫外線分解重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社、イルガキュア184)を0.3質量部、離型剤としてジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(三井サイアナミッド社製、エアロゾルOT−100)を0.05質量部添加し、重合性組成物(B)を調製した以外は、実施例1と同じとした。
このときの厚み斑は±5%であり、樹脂シートの幅は420mmであった。また、重合性組成物(B)の紫外線照射区間での重合ピーク時間は3.3分であった。
【0075】
(実施例3)
メチルメタクリレートモノマー70質量部に対し、メチルメタクリレートポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−80、重量平均分子量10万)30質量部を60℃で30分間かけて加熱溶解させた混合物100質量部に対し、紫外線分解重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社、イルガキュア184)を0.3質量部、離型剤としてジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(三井サイアナミッド社製、エアロゾルOT−100)を0.05質量部添加し、重合性組成物(A)を調製した以外は、実施例1と同じとした。
このときの厚み斑は±6%であり、重合性組成物(B)7の漏れは生じなかった。また、重合性組成物(A)の粘度は、6500mPa・s、重合ピーク時間は16分であった。
【0076】
(実施例4)
供給する重合性組成物(B)を幅400mm、厚み0.9mmとなるよう調整した以外は、実施例3と同じとした。
このときの厚み斑は±6%であり、重合性組成物(B)7の漏れは生じなかった。
【0077】
(比較例1)
重合性組成物(A)を供給しないこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。
このときの厚み斑は±12%であり、透明樹脂板の幅は460mmであった。
【0078】
(比較例2)
重合性組成物(A)に換えて、厚み160μmの両面テープ(日東電工社製、No.5000NS)を供給した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。
このときの厚み斑は±8%であり、上側の活性エネルギー線透過フィルムを被る箇所にて重合性組成物(B)の漏れが生じた。
【0079】
(比較例3)
重合性組成物(A)に換えて、厚み320μmの両面テープ(日東電工社製、No.5000NSを二重にして使用)を供給した以外は、実施例1と同様にして、透明樹脂板を得た。
このときの厚み斑は±5%であり、上側の活性エネルギー線透過フィルムを被る箇所にて重合性組成物(B)の漏れが生じた。
【0080】
(比較例4)
メチルメタクリレートモノマー60質量部に対し、メチルメタクリレートポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−80、重量平均分子量10万)40質量部を60℃で30分間かけて加熱溶解させた混合物100質量部に対し、紫外線分解重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社、イルガキュア184)を0.5質量部、離型剤としてジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(三井サイアナミッド社製、エアロゾルOT−100)を0.05質量部添加し、重合性組成物(A)を調製し、調合時の泡を抜くために室温にて24時間静置させた。
【0081】
メチルメタクリレートモノマー35質量部、ジメタクリル酸ポリブチレングリコール(三菱レイヨン社製、アクリエステルPBOM)40質量部に対し、メチルメタクリレートノルマルブチルメタクリレート共重合ポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−541、メチルメタクリレート基60質量部、ノルマルブチルメタクリレート基40質量部、重量平均分子量6万)25質量部を60℃で30分間かけて加熱溶解させた混合物100質量部に対し、紫外線分解重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社、イルガキュア184)を0.3質量部、離型剤としてジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(三井サイアナミッド社製、エアロゾルOT−100)を0.05質量部添加し、重合性組成物(B)を調製し、調合時の泡を抜くために室温にて24時間静置させた。
【0082】
このとき重合性組成物(B)の粘度は、200mPa・sであり、紫外線照射区間での重合ピーク時間は5分であった。
このときの重合性組成物(B)の漏れは、紫外線照射時に生じ、樹脂シートを得ることはできなかった。
また、重合性組成物(A)の重合ピーク時間は4.5分であった。
結果を表1に示す。
【0083】
(比較例5)
メチルメタクリレートモノマー70質量部に対し、メチルメタクリレートポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−80、重量平均分子量10万)20質量部を60℃で30分間かけて加熱溶解させた混合物100質量部に対し、紫外線分解重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社、イルガキュア184)を1.0質量部、離型剤としてジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(三井サイアナミッド社製、エアロゾルOT−100)を0.05質量部添加し、重合性組成物(A)を調製した以外は、実施例1と同じとした。
このときの厚み斑は、±10%であり、重合性組成物(B)7の漏れが生じた。また、重合性組成物(A)の粘度は、1400mPa・s、重合ピーク時間は12.5分であった。
【0084】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によって得られる樹脂シートは、各種用途に好適である。
【符号の説明】
【0086】
a 下側の活性エネルギー線透過性フィルム
b 重合性組成物(A)
c 供給ノズル
d 供給ダイ
e 重合性組成物(B)
f 上側の活性エネルギー線透過性フィルム
g 上ロール
h 下ロール
1、1’ トルクモーター
2 紫外線照射装置
3 供給ダイ
4 供給ノズル
5 ロール
6、6’ 活性エネルギー線透過性フィルム
7 重合性組成物(B)
8 重合性組成物(A)
9 ニップローラー
10 剥離用ロール
11 加熱炉
12 冷却炉
13 ニップローラー
14 切断機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に移送される型上の、移送方向の両側端部に重合性組成物(A)を供給し、該両側端部の間に重合性組成物(B)を供給した後、型上の重合性組成物(A)及び(B)の上に可堯性を持つフィルムを被せ、重合性組成物(A)及び(B)を重合硬化させる、透明樹脂シートの連続的製造方法であって、重合性組成物(A)の粘度が5000〜200000mPa・sであり、かつ重合性組成物(A)の重合ピーク時間T1が重合性組成物(B)の重合ピーク時間T2よりも長い、透明樹脂シートの連続的製造方法。
【請求項2】
前記可堯性を持つフィルムが活性エネルギー線透過性フィルムであり、活性エネルギー線を照射することにより重合性組成物(A)及び(B)を重合硬化させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記透明樹脂シートの厚みが0.1〜2mmである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記重合性組成物(A)の重合ピーク時間T1と前記重合性組成物(B)の重合ピーク時間T2の比T1/T2が1.1〜10の範囲である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記重合性組成物(B)の粘度が100〜2000mPa・sである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記重合性組成物(A)及び(B)が、それぞれモノマー、ポリマー、重合開始剤を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記重合性組成物(A)及び(B)中の重合開始剤が同一の種類であり、かつ前記重合性組成物(A)及び(B)中のモノマーの内の少なくとも一つが同一の種類である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記モノマーがメチルメタクリレートである、請求項7に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−225698(P2011−225698A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96028(P2010−96028)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】