透明樹脂板平面の積層接着方法
【課題】透明樹脂板の平面を接着する際、接着層への気泡の混入、および接着層の厚み斑を抑制可能な積層接着方法を提供する。
【解決手段】2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の間から漏洩させて、2枚の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法であり、また前記漏洩する箇所の2枚の樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させる積層接着方法。
【解決手段】2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の間から漏洩させて、2枚の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法であり、また前記漏洩する箇所の2枚の樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させる積層接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂板平面の積層接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の透明な樹脂硬質板平面を接着する方法として、一方の表面に接着剤の溜りを形成し、次に他方の表面をその溜りに接触させ、押圧して接着剤が2表面間の空間全体を満たすように充填させる方法や、2枚以上の硬質板の周囲に、中空もしくは中実の弾性材料からなるパッキンを配することで予め接着層を形成し、その接着層に一部設けられた開口部より接着剤を注入し、空気溜りを除去した後に、一部設けられた開口部を閉じることで、2表面間の空間全体に接着剤を充填・接着させる方法が取られてきた。
【0003】
特許文献1には、予め高粘度で流動し難いゲル状の接着剤を、接着すべきアクリル樹脂板の各板間に配し、その後にプレス等により圧着させることで、接着層の厚みを薄くし、均一にすることで、板厚精度の良い樹脂板の積層接着方法が開示されている。しかし、この方法においては、良好な接着層の厚み精度は得られるものの、接着層に気泡が混入し易く、特に大面積の板を接着する場合は、混入した気泡を除去することは困難であり不良率が高くなるという問題があった。
【0004】
特許文献2には、傾斜を設けた作業台に接着すべき硬質板を設置し、この2枚以上の硬質板の周囲にパッキンを配し中央部間隔保持材を挿入した状態で接着剤を注入し、その後、本中央部間隔保持材を抜き取り、空気を抜出しつつ、接着剤を硬質板全面に押し広げることで、気泡の混入を防止する積層接着方法が開示されている。この方法は、高粘度接着剤が気泡をかみ込まないようにゆっくり接着剤を投入し、投入後、しばらくは静置した状態で脱泡し、その後、空気を抜きつつ、接着層の厚みを均一にするため厚み調整用ゲージなどを使用しながら徐々に締め込み、接着剤を接着層全面に注入するため、時間を要する。またこの方法においては、少なくともmm単位での厚み斑が生じるという問題があり、この厚み斑は、長さが1mを超えるような大面積板においては、特に顕著であった。接着層の厚み斑が大きく、厚み精度が悪いと接着板の板厚精度にも影響を及ぼすため、場合によっては、接着後に接着板表面に切削等の機械加工を施すなど、良質の積層接着板を得るには多大な労力を費やす必要があった。
【0005】
また特許文献3には、2つの平面部材を接着する方法としてミクロン又はサブミクロンのホトリソグラフィ加工等に際し、ワークと呼ばれる加工物を、ベースと呼ばれる相手上にホットワックスで接着して、ワークを加工し、加工後にこれを分離し、加工物を得るというものである。この方法は精密加工を施した際に、ワークの厚み方向の加工精度が低下するため、接着層を薄く均一にすることでこれを解消するものである。その方法として、2平面間の隙間に液状のホットワックスを接着剤とし、このホットワックスをいわゆる毛管現象を利用し2平面間に充填し、加温・加圧後、冷却することが記載されている。その際接着する部材のベースに透明材料を用いることにより、ホットワックスの広がりを監視することができる。しかしながら、この方法では、比較的小面積の接着においては、気泡のかみ込みの有無を監視することにより、気泡のかみ込みのない部材を高収率で得る事が可能であるが、接着する面積が比較的大きい場合においては、気泡のかみ込みがない部材を高収率で得ることは非常に困難であり、また気泡がかみ込んだ際に、この気泡を除去する方法に関しては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭49−17863号公報
【特許文献2】特公昭56−166015号公報
【特許文献3】特開平9−205126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、樹脂などの硬質板の平面を接着する場合、気泡の混入が無く、接着層の厚み精度が良い、つまり接着板の板厚精度が良いことが求められているが、これらを両立することは非常に困難であり、未だこれらの課題を解決した硬質板の積層接着方法は開示されていなかった。
【0008】
本発明は、透明樹脂板の平面を接着する場合において、接着層への気泡の混入、および、接着層の厚み斑の抑制が可能な、透明樹脂板の積層接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させた後、接着剤の供給を停止し接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法である。
【0010】
また本発明は、2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させ、その漏洩する箇所の2枚の樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法である。
【0011】
また本発明は、3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させることで接着剤を充填し、重なった3枚以上の前記樹脂板の間全てに接着剤を充填させた後、接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法である。
【0012】
さらに本発明は、3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させ、その漏洩する箇所の3枚以上重なった樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、気泡の混入無く、接着層の厚み精度の良い、透明樹脂板の積層接着方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】接着剤供給ノズルの加工例である。
【図2】接着剤供給ノズルの他の加工例である。
【図3】本発明に用いる作業台の一例である。
【図4】接着剤堰き止めブレードの一例である。
【図5】接着強度測定構成の概略図である。
【図6】3枚以上の接着時の供給方法の一例である。
【図7】3枚以上の接着時の供給方法の一例である。
【図8】3枚以上の接着時の供給方法の一例である。
【図9】3枚以上の接着時のノズル構成の一例である。
【図10】3枚以上の接着時のノズル構成の一例である。
【図11】実施例で用いた構成の概略図である。
【図12】実施例で用いた構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は透明樹脂板の積層接着方法であって、2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を樹脂板端面の板間から漏洩させた後、接着剤の供給を停止し接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する。
【0016】
本発明にて2枚の透明樹脂板の平面を接着(積層接着)するにあたり、該樹脂板は、2枚の樹脂の間に供給される接着剤の流れが目視で確認できる透明樹脂板であれば特に制限を受けるものではない。透明樹脂板としては例えばアクリル樹脂板やポリカーボネート板などが挙げられる。
【0017】
また、この樹脂板の板厚についても、特に制限を受けることは無く適宜板厚を選択することができる。
【0018】
接着させる2枚の透明樹脂板の間に接着剤を供給する方法としては、特に制限は受けない。例えば、接着する樹脂板に接着剤を供給するためのノズルを設置する加工を施しても良い。
【0019】
例えば2枚の樹脂板のうち1枚に、重ねた後の板間に接着剤を供給するためのノズルを接続可能な加工を施す方法が挙げられ、接着板の厚みが大きい場合においては、図1のように樹脂板自体にノズルを接続可能なネジ穴加工等の機械加工を施しても良い。また、接着板自体の厚みが薄く、板自体に加工が困難な場合においては、図2のように予めノズル接続可能なネジ穴加工を施した板等を、接着板に貼り付ける等して接着剤の供給口を設けても良い。
【0020】
接着する透明樹脂板に接着剤供給口を設けるための加工を施す場合、供給口を設ける樹脂板は、貼り合せる2枚の樹脂板の何れに設けても差し支えないが、特に下側に配置する板に設けた方が好ましい。これは下側に配置する板に接着剤供給口を設けることで、接着剤を供給した際に、接着剤流路内の空気溜りを速やかに接着剤に置換できるため流路内に空気溜りが残留し難くなる。そのため接着剤供給時において、接着剤中への空気のかみ込みを抑制でき接着層内に気泡をかみ込む可能性が低下するためである。
【0021】
接着する透明樹脂板に接着剤供給口を設ける位置としては、何れの位置に設けても良く、制限を受けるものではないが、特に樹脂板の端部付近に設けると好ましい。例えば接着する樹脂板の中心部に接着剤供給口を設けた場合、樹脂板を作業台上に設置した際、作業性の悪化や、製品として見た場合に、外観上、板中心部に加工の跡が残る可能性があるためである。板端部に接着剤供給口を設けた場合、加工の跡が残ったとしても、最終製品の積層接着板は、板の幅を揃える目的で接着板端部を切り落とす機械加工を施工することは、その際に供給口加工箇所も除去することが可能となるため、接着板の外観を確保する観点から好ましい。
【0022】
接着剤供給口は、一箇所に限らず複数箇所設けても良い。複数箇所設ける場合は、供給手段が複数必要となるが、特に大面積板の接着を行う際には、接着剤の充填を速やかに行うことが可能となるため、この方法を用いると効果的である。
【0023】
接着剤供給口を複数箇所設ける場合は、例えば板端部4辺の内、1辺上に並列して配置し一方向に吐出する方法や、板4辺の内、2辺以上から板の中央部に向けて吐出する方法が挙げられるが、いずれの方法を用いても良い。中でも好ましいのは、一方向に吐出する方法である。前述の通り、一方向に設けた場合、同じ方向に向かって複数の供給口から接着剤が流れるため、隙間の空気の逃げ道が確保され、気泡をかみ込む可能性が低く、接着剤を充填し易いためである。2辺以上から板の中央部に向けて吐出する場合、充填される液同士が合流する際、合流する液に板間の空気が囲まれ、気泡が取り残される可能性がある。本発明によれば、そのような場合においても、気泡の除去は可能であるが、作業に時間を要してしまう。
【0024】
本発明において用いることの可能な接着剤としては、液状の接着剤であればよく、特に制限を受けるものではない。例えば、接着する樹脂板表面を二塩化メチレン、クロロホルム、アセトン等の溶剤を主成分とした接着剤により膨潤させた後に貼り合せる、いわゆる溶剤系の接着剤を用いることができる。
【0025】
また、その他の例としては、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と称す。)を含有する単量体単独、または単量体とその部分重合したものとの混合物、あるいは単量体にMMA重合体を溶解した混合物であって、これらに熱または光によって重合硬化させる重合開始剤を添加した、いわゆる重合硬化系の接着剤が挙げられる。また、この重合硬化系の接着剤には、必要に応じて可塑剤、架橋剤、紫外線吸収剤および染顔料などを添加することもできる。
【0026】
MMAの重合体を含有する接着剤を用いる場合のように接着剤の粘度が高いほど、二枚の樹脂板の間に接着剤を流す際の圧力損失が大きくなり、接着する板が大きくたわみ変形する。そのため接着剤の流速を遅くすること、すなわち接着剤の供給量を低減することになる。流速を遅くすると、接着剤充填の際に気泡がかみ込んだ場合の気泡の除去が困難になるうえ、接着剤の充填に時間を要すため生産性も悪化する。このように流動性の観点から、接着剤の粘度は、10000mPa・s以下であることが好ましい。
【0027】
接着剤の硬化方法は、その接着剤の種類により公知の方法で行うことができる。例えば、溶剤系接着剤は溶剤を揮発させることにより、また重合硬化系接着剤は熱や光により重合することにより硬化させることができる。
【0028】
2枚の透明樹脂板の平面を接着する場合、作業台の上に接着する樹脂板を設置し、作業台上にて接着剤を充填した後に接着することが好ましい。本発明において、接着する樹脂板を設置する作業台としては、接着させる板の自重等のたわみによる板の変形を抑制する目的で、平滑度の確保された定盤のような作業台であれば、特に制限は受けるものではない。
【0029】
また、本発明においては、上記作業台上に重ねて設置された2枚の透明樹脂板の間に接着剤を供給し、板間に展延する接着剤の一部を樹脂板端面の間から漏洩させて、前記2枚の樹脂板の間に接着剤を充填するため、作業台周囲には漏洩した接着剤を回収する手段を有することが好ましい。
【0030】
漏洩した接着剤を回収する手段としては、特に制限を受けるものではないが、例えば、図3のように、接着板を重ねて設置する定盤状の作業台の周囲に、いわゆる雨どいを模した形状の接着剤回収溝を有した手段を用いても良い。また、接着剤回収溝には、回収した接着剤を抜出すための回収接着剤抜液配管を設けても良い。
【0031】
板端面の重なった間から漏洩した接着剤を回収する際、下側の板の裏面を接着剤が伝い、作業台と下側の板の隙間に入り込み、この部分を接着する可能性がある。また、接着剤の伝い流れた跡が下側の平面上にできてしまうと板表面に外観状の不良が発生してしまう可能性がある。その為、下側の板裏面には、漏洩した接着剤が伝い流れることを防止するための堰を設けても良い。例えば、図4のように、漏洩した接着剤が伝い流れることを防止するための堰(ブレード)を設置することで、板端面から漏洩した接着剤は、ブレードで堰き止められ、スムーズに接着剤回収溝に回収される。ブレードの材質としては、接着剤に対して耐性のある材質であれば良く。また、板表面の傷つき防止のため、弾性のある材質が好ましい。例えば、テフロン(登録商標)などが挙げられる。また、板接着後、端面を揃えるため機械加工によりブレードから外側の範囲をカットすれば、接着剤の伝い流れた跡が残ったとしても外観状の不具合を生じることはない。
【0032】
作業台に接着する透明樹脂板を設置する際、接着剤投入の時間の短縮や空気の抜けを良くするという観点から、板を載せた作業台に傾斜を設け、前記樹脂板を傾けた状態で接着剤を供給してもよい。その際、樹脂板の傾斜角度については、作業台上から樹脂板が滑り落ちない限り、何れの角度において実施しても良く、特に制限されない。
【0033】
本発明においては、接着剤をポンプなどの外力を利用して重ねた板間に供給することにより、比較的速やかに板間全面に接着剤を充填することが可能である。この場合、前記傾斜角度により、接着剤の供給に要する時間や気泡の抜け具合はほとんど左右されない。
【0034】
接着剤の供給方法に関しては、接着する板間に接着剤を充填する際、連続的に接着剤を供給可能な方法であれば、どのような方法を用いても良く、特に制限されない。例えば、接着剤を溜めた槽型のタンク等から、配管により抜出し、ポンプを使用して連続的に接着剤を供給する方法が挙げられる。また、その他の方法として、容量的に十分に余裕を持たせた容積式のシリンジポンプなどを用いて供給しても良い。
【0035】
以上のような構成により、すなわち重ねた板間に接着剤を供給可能な構造とした樹脂板を、漏洩した接着剤を回収可能な機構を備えた、平滑な定盤状の作業台に設置し、接着剤供給手段により接着剤の充填を実施することができる。予め接着剤供給ライン中に接着剤を充填させ、ライン中の空気を接着剤に置換した後、接着剤供給ラインを接続可能な構造とした樹脂板のノズル部に接続し、重ねた2枚の板間に接着剤を供給する。供給を開始すると、2枚重ねた板平面の垂直方向から見ると、接着剤供給部を基点として、円状、もしくは扇状に接着剤が板間全面に徐々に展延し充填される。そして樹脂板の端部まで到達した箇所の端部の板間から一部の接着剤が漏洩し始める。
【0036】
このようにして樹脂板間に接着剤が満たされるまで、連続的に接着剤を供給し、樹脂板間の全面に接着剤が展延した後に接着剤の供給を停止し、接着剤の充填作業を完了する。
【0037】
本発明によれば、接着剤を充填する際、板端面から接着剤を漏洩させるため、空気をかみ込んだ場合においても、接着剤の流れに同伴して、かみ込んだ空気を排出することが可能であり、接着剤充填後は、接着剤の供給を停止するのみで、余剰な接着剤は板の自重により排出される。接着剤の供給を停止しても、狭い隙間に充填された接着剤の表面張力により、2枚の板同士は吸い付いた状態となり、板間から空気が入り込むような状態にはならない。従って、接着層の均一な厚みが得られるため、作業に労力を費やすこと無く、非常に効率的に良質な製品を製造することが可能となる。
【0038】
本発明による接着方法は、一辺が数十cmの比較的小型の樹脂板の接着から、一辺が1m以上の大型樹脂板の接着まで何れの大きさの樹脂板接着にも用いることが可能である。
【0039】
本発明においては、先にも述べた通り、ポンプなどの外力を利用して接着層に接着剤を流し充填すれば、一辺が1mを越えるような大面積の樹脂板においても、接着させる平面全面に接着剤を充填することは容易である。
【0040】
また、一辺が1mを越えるような大面積板の平面全面に接着剤を充填する際、大きな接着剤供給能力を有するポンプを設けることが困難な場合においては、以下のような手法を用いることにより、接着剤供給能力が比較的小さい場合においても、本発明の効果を発揮することが可能である。
【0041】
すなわち、2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させ、その漏洩する箇所の2枚の樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する。
【0042】
2枚重ねた樹脂板の隙間に接着剤を供給していくと、接着剤が充填された部分の板端面の間の一部箇所から接着剤が漏洩し始めるので、この漏洩し始めた2枚の樹脂板端部を挟持し、漏洩を封じるという方法である。漏洩する板端面を挟持することにより、接着剤が漏洩している板端面の隙間(2枚の樹脂板の間)が閉じられ接着剤が漏洩する流路が制限される。その分、未充填部分へ接着剤が流れ込む推進力が得られる。すなわち、接着剤が充填され、漏洩する板端部を順次挟持していき、接着剤が2枚重ねた樹脂板間を流れる推進力を継続的に維持することによって、接着剤供給能力が比較的小さい場合においても、大面積板の平面全面に接着剤を充填することが可能となる。
【0043】
一方、2枚の樹脂板の端部全周を予め挟持した場合、挟持された板端面が密着し、接着剤を充填する際の空気の逃げ道が無くなり、大きな気泡として多量にかみ込む。また、接着剤供給口付近の2辺の端面のみ予め挟持した場合、予め挟持された2辺以外の端面から、空気が逃げるため、前述のような大きな気泡を多量にかみ込みことは減少する。しかしながら、予め挟持された2辺の端面が密着した状態となり、この部分に接着剤が充填され難いため、小さな気泡を多量にかみ込むことになる。
【0044】
接着板の端面を挟持する方法としては、どのような方法を用いても良く特に制限はされない。例えば、一般的に締め付け作業などに用いられるシャコ万力などの板端部固定工具を、2枚の重ねた樹脂板の外周部に適度な間隔で配置し、これを用いて挟持しても良い。
【0045】
この方法により、板端部を順次挟持しつつ、接着剤を充填すると最終的には、接着板の端部の外周全域が挟持されることとなる。接着板の外周ほぼ全域が挟持された状態で、板間に接着剤を供給した場合、接着剤の供給圧力により、挟持されていない樹脂板の平面中心部がたわみ、膨らんだ状態となることがある。接着板の中心部が膨らんだ状態のまま接着すると、挟持された接着板端部と挟持されていない中心部において、接着層の厚みに斑ができてしまうことがある。そのようなことを回避するため、一度、接着板の平面全面に接着剤を充填した後に、接着層内に存在する余剰な接着剤を排出することが好ましい。これにより接着層の厚みの斑を抑制することができる。余剰な接着剤を排出する方法としては、例えば、挟持された接着板端部を一度緩め、開放することにより2枚の樹脂板の板端面に隙間が生じ、ここから余剰に供給された接着剤を排出する方法が挙げられる。また前記樹脂板の平面を加圧することにより接着剤を排出する方法が挙げられる。この場合、板端部を挟持したままであれば接着剤供給側を開放する等、接着剤の排出路を確保しておく必要がある。その他、余剰な接着剤を排出可能な方法であれば、特に制限はされない。大面積板の場合は、板平面を加圧(プレス)することが好ましい。
【0046】
以上のような方法により、2枚の樹脂板の平面を接着することで、樹脂板の板厚や大きさによらず、気泡のかみ込みが無く、接着層の厚み精度の良い樹脂接着板を得ることが可能となる。
【0047】
また、3枚以上の透明樹脂板を積層接着する場合、前述の方法により2枚の透明樹脂板を接着させて得られた積層透明樹脂板に、更に一枚の透明樹脂板を重ね、前述と同様の方法により接着することを繰り返すことで、気泡のかみ込みが無く、接着層の厚み精度が良い、3枚以上の透明樹脂板を積層接着する事が可能である。3枚以上の透明樹脂板を積層接着する場合、各樹脂板を水平に重ねることが好ましい。
【0048】
このような方法の場合、気泡のかみ込みが無く、接着層の厚み精度が良い積層接着板を得る事は可能であるが、一度の接着・硬化に要する時間が非常に長いため、3枚以上の透明樹脂板を積層接着する場合においては、生産効率が悪くなる可能性がある。
【0049】
また、接着剤を連続的に供給する事で気泡の混入を防止するため、接着剤充填の際には、実際に接着に使用する接着剤の量より、過剰の接着剤を使用することとなる。そのため、例えば保管安定性の悪い重合硬化系の接着剤を用いる場合においては、従前の接着で使用した際の残りの接着剤を転用する事が困難となるため、接着を実施する度に新たに接着剤を用意する必要があり、多量の接着剤をロスする可能性もある。
【0050】
しかし、以下のような方法によって本発明を実施することにより、生産効率良く、接着剤のロスも少なく3枚以上の透明樹脂板を積層接着する事が可能となる。
【0051】
すなわち、3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させることで接着剤を充填し、重なった3枚以上の前記樹脂板の間全てに接着剤を充填させた後、接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する。
【0052】
3枚以上の透明樹脂板を接着する場合、2箇所以上の樹脂板の間が存在する事となる。生産効率が良く、しかも、接着剤のロスを少なく接着しようとした場合、前記の2箇所以上の樹脂板の間に速やかに接着剤を充填し、全ての樹脂板の間に接着剤を充填した後に、接着・硬化することでこれが達成される。
【0053】
前記の2箇所以上の樹脂板の間に速やかに接着剤を充填する場合、図6のように予め水平に重ねた3枚以上の樹脂板に存在する2箇所以上の板の間全てに、各々の樹脂板の間に個別に接着剤を供給できるノズルを設け、1つの樹脂板の間に接着剤を充填した後、次に別の樹脂板の間に接着剤を充填する。このように1つの樹脂板の間毎に接着剤の充填を実施し、断続的に全ての樹脂板の間に接着剤を充填する方法が好ましい。
【0054】
その他、前記の2箇所以上の樹脂板の間に速やかに接着剤を充填する方法として、例えば図7のように予め水平に重ねた3枚以上の樹脂板に、全ての樹脂板の間を貫通するような流路を設け、この流路に接着剤を流す事で、2箇所以上の樹脂板の間に一度に接着剤を充填する方法、また、図8のように予め水平に重ねた3枚以上の樹脂板の全ての間を直列的な流れで経由するような流路を設け、この流路に接着剤を流す事で、2箇所以上の樹脂板の間に連続的に接着剤を充填する方法等が挙げられる。
【0055】
これらは、何れも一つの接着剤供給系列で、2箇所以上の樹脂板の間に接着剤を流し、充填しようとするものである。しかし、何れの方法においても、2箇所以上の樹脂板の間のうち、優先的に接着剤が流れる樹脂板の間のみ接着剤が充填され樹脂板端面の樹脂板の間から漏洩が開始し、残された樹脂板の間全面に接着剤を充填する事が出来ないことがある。従って、各々の樹脂板の間に個別に接着剤を供給することができるように、後述するバルブを設けたり、カップリング継手接続部を設けたりすることが好ましい。
【0056】
3枚以上の透明樹脂板を接着する場合、作業台の傾斜角度は、3枚以上重ねた透明樹脂板が滑り落ちない限りは、何れの角度において実施しても良いが、水平な作業台で実施することが特に好ましい。
【0057】
また、2箇所以上の樹脂板の間全てに、各々の樹脂板の間に個別に接着剤を供給できるノズルを設け、1つの樹脂板の間毎に、順次、接着剤を充填し、全ての樹脂板の間に接着剤を充填する場合、3枚以上を水平に重ねた樹脂板の間のうち、最も下部に位置する板の間、つまり最も下部に配置された樹脂板とその上に隣接する樹脂板の間から、最も上部に位置する板の間、つまり最も上部に配置された樹脂板とその下に隣接する樹脂板の間まで、順次接着剤を充填する事が好ましい。
【0058】
例えば最も上部に位置する樹脂板の間から順次別の箇所に位置する樹脂板の間に接着剤を充填した場合、接着剤を充填する樹脂板の間の下部に、接着剤未充填の樹脂板の間が存在することとなる。その場合、樹脂板端面の板間から漏洩した接着剤が、下部に存在する接着剤未充填の樹脂板端面の板間から浸入してしまい、後にその樹脂板の間に接着剤を充填する際に、大きな気泡がかみ込み、気泡の除去に時間を要すため、好ましくない。
【0059】
2箇所以上の樹脂板の間全てに、個別に接着剤を供給できるノズルを設ける場合、、その手段、方法は特に制限されない。
【0060】
例えば、図9のように、各樹脂板の間に設けた接着剤供給ラインに、各々バルブを設け、接着剤を流す板の間をバルブの開閉により、選択的に各樹脂板の間に接着剤を供給可能な方法や、図10のように、カプラ(登録商標)など、着脱の容易なカップリング継手を順次付け換える事で、接着剤を各樹脂板の間に供給可能な方法などが挙げられる。
【0061】
これらのバルブやカップリング継手の材質は、接着剤に対する耐性があれば良く、特に制限されない。但し、滞留部における接着剤の固化を防止するため、滞留部の少ない形状が好ましい。
【0062】
また、3枚以上の透明樹脂板の一辺が1mを越えるような大面積であり、大きな接着剤供給能力を有するポンプを設けることが困難な場合においては、以下のような手法を用いることにより、接着剤供給能力が比較的小さい場合においても、本発明の効果を発揮することが可能である。
【0063】
すなわち、3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板の間から漏洩させ、その漏洩する箇所の3枚以上重なった樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する。
【0064】
3枚以上の水平に重ねた樹脂板の間に接着剤を供給していくと、接着剤が充填された部分の板端面の板の間の一部箇所から接着剤が漏洩し始めるので、この漏洩し始めた3枚以上の樹脂板端部を挟持し、漏洩を封じるという方法である。漏洩する板端面をその他の3枚以上の水平に重ねた樹脂板ごと挟持することにより、接着剤が漏洩している板端面の隙間(3枚以上重ねた樹脂板のうち、接着剤が流れている2枚の樹脂板の間)が閉じられ接着剤が漏洩する流路が制限される。その分、未充填部分へ接着剤が流れ込む推進力が得られる。すなわち、接着剤が充填され、漏洩する板端部を順次挟持していき、接着剤が板の間を流れる推進力を継続的に維持することによって、接着剤供給能力が比較的小さい場合においても、大面積板の平面全面に接着剤を充填することが可能となる。
【0065】
3枚以上の接着板の端面を挟持する方法としては、2枚の樹脂板を接着する場合と同様にして行えば良い。
【0066】
3枚以上の樹脂板を接着する場合においても、2枚の樹脂板を接着する場合と同様に、一度、接着板の平面全面に接着剤を充填した後に、接着層内に存在する余剰な接着剤を排出することが好ましい。余剰な接着剤を排出する方法としては2枚の樹脂板を接着する場合と同様にして行えば良い。
【0067】
3枚以上の樹脂板を接着する際は、2箇所以上の板の間に接着剤を充填する必要がある。先ずは1つの板の間に接着剤を充填する際に、前記挟持、および、前記余剰接着剤の排出を実施し、次に別の板の間に接着剤を充填する際に、同様にして前記挟持、および、前記余剰接着剤の排出を実施する。
【0068】
以上のような方法により、各々の樹脂板の間に、順次、接着剤の充填を実施し、3枚以上の樹脂板に存在する全ての板の間に接着剤を充填した後に、硬化、接着することで、樹脂板の板厚や大きさによらず、気泡のかみ込みが無く、接着層の厚み精度の良い樹脂接着板を生産効率良く得ることが可能となる。また、断続的に接着剤充填作業を繰り返すため、接着剤のロスも最小限に留める事が可能となる。
【0069】
前述したような透明樹脂板平面を効率良く積層接着する方法を、以下に具体的に述べる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて説明するがこれらに限定されるものではない。
(1)接着層の厚み及び厚み精度
実施例における接着層厚みの測定に関しては、次のような方法で行った。
【0071】
2枚の樹脂板の平面を接着した樹脂接着板を縦・横各4列に分割し計16枚切り出した。マイクロゲージにて、切り出した樹脂接着板切片の板厚を測定し、予め測定しておいた接着前の各樹脂板の板厚を差し引き、接着層の厚みを算出した。また以下の式から得られる値を接着層厚み精度とした。
【0072】
接着層が2層ある場合は、以下に式から得られる2層分の接着層の厚み精度を、接着層の数で割り返し、接着層1層あたりの平均厚み精度とした。
(接着層厚み精度)=[(M+N)/2]±[(M−N)/2]
M;接着層の厚みの最大値
N;接着層の厚みの最小値
(2)気泡のかみ込み
気泡のかみ込みに関しては、次のような方法で行った。
【0073】
接着させる2枚の樹脂板の間に接着剤を充填した後に、目視により接着層内へ気泡がかみ込んでいなかった場合を○の評価とし、接着層内へ少量でも気泡がかみ込んでいた場合には×の評価とした。
(3)接着強度
接着強度の測定に関しては、次のような方法で行った。
【0074】
接着した樹脂板を切り出し、接着層が中心になるように切り出した試験片の平面方向へ、試験片を一般的な重合接着方法により接着し、図5のような試験片を作製する。
【0075】
JIS−K7171に準拠して、テンシロン万能試験機(商品名UCT-10T、オリエンテック製)を用いて、試験片の接着層部分に図5のように、5点の試験片に荷重をかけ、曲げ破壊時の応力の平均値を接着強度とした。
(実施例1)
メタクリル酸メチルモノマー100質量部に対し、重合開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度40.7℃)を1質量部添加して、撹拌機にて混合した後、真空容器内で脱泡作業を行い、接着剤を得た。
【0076】
メタクリル樹脂板である板厚10mm、大きさ300mm×300mmのアクリライトL(商品名:三菱レイヨン製)2枚の接着させる平面を重ね、図3のような台に載せた。
【0077】
2枚重ねた下側の板の角部1箇所に図2の形態で接着剤を供給するためのノズルを設置する加工を施した。
【0078】
上記接着剤を、接着剤供給ライン中に満たし、接着剤供給ライン中の残存空気を接着剤に置換した後に、先に加工を施した2枚重ねた板の下側の板に接着剤供給ラインを接続した。
【0079】
接着剤供給ラインを接続した後に、本接着剤をポンプにて300ml/minの流速で供給したところ、樹脂板の角部に設けた接着剤供給口から接着剤が2枚の該樹脂板の間に供給され、この供給口を基点として扇状に接着剤が供給され、およそ5秒でメタクリル板全面に接着剤が展延し、その一部が板端面の間から漏洩し始めたため、接着剤の供給を停止した。この際、板端部は挟持しなかった。
【0080】
接着剤充填後、常温の室内に24時間保持し、接着剤を硬化させ、2枚の樹脂板を接着させた。
【0081】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層の厚みは0.1〜0.2mmであり、接着層の厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。接着層の強度は80MPaという結果となった。
(実施例2)
接着剤に二塩化メチレンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着を実施した。
【0082】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層の厚みは0.1〜0.2mmであり、接着層の厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。接着層の強度は70MPaであった。
(比較例1)
メタクリル酸メチルモノマーのシラップであるアクリシラップSY−116(商品名:三菱レイヨン製:樹脂組成はポリメチルメタクリレート、粘度は450〜750mPa・s)100質量部に対し、重合開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度40.7℃)を0.1質量部添加して、撹拌機にて混合した後、真空容器内で脱泡作業を行い、接着剤を得た。
【0083】
前記接着剤を片方の樹脂板に垂らした後に、もう一方の板を前記樹脂板上の接着剤に接触させ徐々に接着剤を2平面間に押し広げるように2枚の板を重ね、接着剤を充填させた後に実施例1と同様の条件で硬化、接着した。
【0084】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みとして、1mm大の気泡が数個確認された。接着後の接着層の厚みは0.1〜0.2mmであり、接着層の厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。接着層の強度は75MPaという結果となった。
(比較例2)
実施例1と同サイズのメタクリル樹脂板の周囲に、ポリ塩化ビニル製の中空のパッキンを配し、前記樹脂板平面上に前記パッキンを介してもう1枚の樹脂板を重ね、接着剤投入口を一部開口させた後、シャコ万力で周囲を挟持したセルを組み立てた。このセルに一部開口させた接着剤投入口より、比較例1と同様の接着剤を投入し接着層の厚さが5mmとなるように、パッキンの外側の板間に5mm厚のゲージを挟み、シャコ万力を締め込み、前記樹脂板間の空気を抜きながら接着層全域に接着剤を押し広げた後、開口部を閉じた。
【0085】
接着剤封入後のセルを、常温の室内に24時間保持し、その後熱風循環炉にてセルを95℃で5時間熱処理を行った。
【0086】
接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。しかしながら接着後の接着層の厚みは4.7〜5.3mmであり、接着層の厚み精度は5mm±0.3mmとなり、実施例1に比べ接着層の厚みの振れが大きい結果となった。接着層の強度は80MPaという結果となった。
【0087】
実施例1〜2、比較例1〜2の結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
○:気泡のかみ込み無し
×:気泡のかみ込み有り(少量でも)
(実施例3)
メタクリル樹脂板を板厚15mm、大きさ1000mm×1000mmのアクリライトS(商品名:三菱レイヨン製)を2枚使用し実施例1と同様の接着剤供給ノズル接続の加工を施した。
接着剤の供給速度を900ml/minとし、接着剤を供給した際、2枚の板端面の隙間から接着剤が漏洩し始めた箇所を、図11のような形態でシャコ万力を使用し、100mm間隔で順次挟持しながら平面全面に接着剤を充填したところ、およそ20秒程度で平面全面に接着剤が充填された。接着剤充填後、板端面を挟持したシャコ万力を全て緩め、接着層に充填された余剰な接着剤を抜液し、接着剤の充填を完了した。
【0089】
接着剤充填後、実施例1と同様にして硬化・接着させた。
【0090】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層の厚みは0.1〜0.2mmであり、接着層の厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。
(実施例4)
接着剤の流速を300cc/minで供給した以外は、実施例3と同様にして実施した。
接着剤を供給して、板平面の半分程度まで接着剤が充填した時点で、板端部からの接着剤の漏洩が盛んになり、それ以上板平面中に接着剤が充填しなくなったため、接着層内の気泡の動きや位置に併せて、都度、シャコ万力による締め付け、緩めを繰り返し、接着剤が平面全体に充填された。全ての気泡が抜けるまでに2分程度の時間を要した。
【0091】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層の厚みは0.1〜0.3mmであり、接着層の厚み精度は0.2mm±0.1mmとなった。実施例3に比べ、接着層内の気泡の除去に時間を要し、その間接着板がたわんだ状態が継続したため、若干、接着層の厚み斑(厚みの振れ幅)が増加した。
(比較例3)
接着剤が板端面を挟持しないこと以外は、実施例3と同様に接着剤を供給したところ、接着剤供給開始から25秒程度経過し、平面面積のおよそ7割程度まで接着剤が充填された時点で、板端面から接着剤が漏洩するのみとなりそれ以上接着剤が隙間を流れなくなり、最後まで接着剤を充填することが出来なかった。
(比較例4)
接着板の全周を予め100mm間隔でシャコ万力により挟持し、接着剤充填中の接着剤の漏らし作業や、接着剤充填後シャコ万力を緩め接着層内の余剰な接着剤を抜液しないこと以外は、実施例3と同様にして接着剤を供給したところ、板端面の隙間から接着剤が漏洩することがなく、20秒程度で接着板の全面に接着剤は充填された。しかしながら、接着板が10mm程度たわみ、接着層には長さ100mm以上の大きな空気溜まりが残った。接着剤の供給前から、板端面を挟持していたため、隙間に存在する空気の逃げ道が無くなり、接着層間に空気が滞留する結果となった。
(比較例5)
接着剤充填後、シャコ万力を緩め接着層内の余剰な接着剤を抜液しないこと以外は実施例3と同様に実施した。
【0092】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であったが、接着後の接着層の厚みは0.1〜1.5mmであり、接着層の厚み精度は0.8mm±0.7mmとなった。接着剤充填後に余剰な接着剤を抜液しないまま接着したため、シャコ万力で挟持された板端面と、余剰な接着剤の充填によりたわんだ板中心部とでは、1mm以上の接着層の厚み振れが生じた。
【0093】
実施例3〜4、比較例3〜5の結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
○:気泡のかみ込み無し
×:気泡のかみ込み有り(少量でも)
(実施例5)
メタクリル樹脂板を板厚15mm、大きさ500mm×500mmのアクリライトS(商品名:三菱レイヨン(株)製)を3枚使用し、内2枚に角部1箇所に図1の形態で接着剤を供給するためのノズルを設置する加工を施した。
【0095】
図9の形態で3枚の樹脂板を重ね、接着剤供給ラインの各々の板の間に通じる供給ノズル部近傍にそれぞれボールバルブを配置し、各々の板の間に選択的に接着剤を供給可能な設備構成とした。
【0096】
実施例1と同様の接着剤を、接着剤供給ライン中に満たし、接着剤供給ライン中の残存空気を接着剤に置換した後に、先に加工を施した2枚の板に接着剤供給ラインを接続した。
【0097】
接着剤供給ラインを接続した後に、先ずは、最下部に配置された接着板4とその上に配置された接着板3の板の間に接着剤を供給するため、接着剤供給バルブaを開き、前記接着剤をポンプにて500ml/minの流速で供給したところ、樹脂板の角部に設けた接着剤供給口から接着層aに供給され、この供給口を基点として扇状に接着剤が供給され、およそ25秒でメタクリル板全面に接着剤が展延し、その一部が板端面の間から漏洩し始めたため、接着剤の供給を停止し、接着剤供給バルブaを閉じた。この際、板端部は挟持しなかった。
【0098】
続いて、中間に位置した接着板3と最上部に位置する接着板1の板の間に接着剤を供給するため、接着剤供給バルブbを開き、前記接着剤をポンプにて500ml/minの流速で供給したところ、樹脂板の角部に設けた接着剤供給口から接着層bに供給され、この供給口を基点として扇状に接着剤が供給され、およそ25秒でメタクリル板全面に接着剤が展延し、その一部が板端面の間から漏洩し始めたため、接着剤の供給を停止し、接着剤供給バルブbを閉じた。この際、板端部は挟持しなかった。
【0099】
接着剤充填後、常温の室内に24時間保持し、接着剤を硬化させ、3枚の樹脂板を接着させた。
【0100】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層1層あたりの平均厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。
(実施例6)
図12のような形態でシャコ万力を使用し、接着層aの板端面の隙間から接着剤が漏洩し始めた箇所を100mm間隔で徐々に挟持しながら平面全面に接着剤を充填し、全面に充填された後に、板端面を挟持した全てのシャコ万力の緩め、接着層に充填された余剰な接着剤を抜液した。次の接着層bも同様に接着剤を充填した以外は実施例5と同様に実施した。
【0101】
接着層a、および、接着層b共に、およそ12秒程度で板全面に接着剤が充填された。
【0102】
その後、実施例5と同様にして接着剤を硬化させ、3枚の樹脂板を接着させた。
【0103】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層1層あたりの平均厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。
(実施例7)
最初に上部に配置された接着層bに接着剤を充填した後に、下部に配置された接着層aに接着剤を充填した以外は実施例6と同様に実施した。
【0104】
実施例5と同様に接着層bに接着剤を供給したところ、およそ、12秒で接着層bの板全面に接着剤が充填され後に、実施例6と同様に余剰な接着剤を抜液した。
【0105】
接着層bから漏洩、抜液した接着剤が、接着層bの下部に配置された接着層aの板端面から接着層a内に浸入していた。
【0106】
続いて、同様に接着層aに接着剤を供給したところ、供給した接着剤と、接着層bから漏洩し、接着層aの板端面から浸入した接着剤との間に大きな気泡がかみ込んだ。接着層aに接着剤を供給し続けたところ、およそ、1分半経過後、全ての気泡が抜けたため、接着剤の供給を停止し、同様に余剰な接着剤を抜液し、接着剤の充填を完了した。
【0107】
その後、実施例5と同様にして接着剤を硬化させ、3枚の樹脂板を接着させた。
【0108】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層1層あたりの平均厚み精度は0.2mm±0.1mmとなった。実施例6に比べ、接着層内にかみ込んだ大きな気泡の除去に時間を要し、その間接着板がたわんだ状態が継続したため、若干、接着層1層あたりの平均厚み精度の振れ幅が増加した。
(比較例6)
図7の形態で、予め水平に重ねた3枚の樹脂板に、接着板3、4の板の間を貫通する接着剤流路を設け、この流路に接着剤を流す事で、接着層a、bに一度に接着剤を供給する以外は、実施例5と同様に実施した。
【0109】
接着剤を供給したところ、およそ、30秒で接着層bに接着剤が充填され板端面から漏洩し始めた。漏洩した接着剤は、接着層aの板端面から浸入した。
【0110】
また、貫通する接着剤流路から接着層aに流れる接着剤の流れは非常に緩やかであり、約3分間接着剤を供給したが接着層aの全面に完全に充填されなかった。これは、接着層bに接着剤が充填され板端面から盛んに漏洩するため、接着層aを満たすだけの流量が得られなかったためである。
(比較例7)
図8の形態で、予め水平に重ねた3枚の透明樹脂板の接着層aに流れ、その後流路を経由して接着層bに流れるという直列的な流れで全ての接着層を経由する流路を設け、この流路に接着剤を流した意外は、実施例5と同様に実施した。
【0111】
接着剤を供給したところ、およそ25秒で接着層aに接着剤が充填され板端面から漏洩し始めると共に、接着層bにも供給された。
【0112】
しかし、接着層bの入口となる流路の周辺まで流れた時点で、接着層bでの接着剤の展延は止まり、約3分間接着剤を供給したが、接着層bの全面に完全に充填されなかった。これは、接着層aに接着剤が充填され板端面から盛んに漏洩するため、接着層bを満たすだけの流量が得られなかったためである。
【0113】
実施例5〜7、比較例6〜7の結果を表3に示す。
【0114】
【表3】
○:気泡のかみ込み無し
×:気泡のかみ込み有り(少量でも)
【符号の説明】
【0115】
1 接着板1(上側)
2 接着板2(下側:加工あり)
3 接着層
4 接着剤供給ノズル接続部
5 接着剤流路
6 接着剤供給ノズル接続加工を施した板
7 定盤状の作業台
8 接着剤回収溝
9 回収接着剤抜液配管
10 接着剤伝い流れ防止ブレード
11 ブレード支持部
12 強度測定用試験片(重合接着層)
13 強度測定用試験片支持部
14 圧子
15 板端面固定工具
16 接着板3(中間部:加工あり)
17 接着板4(最下部:加工あり)
18 接着層a
19 接着層b
20 貫通する接着剤流路
21 接着層を経由する流路
22 接着剤供給バルブa
23 接着剤供給バルブb
24 カップリング継手
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂板平面の積層接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の透明な樹脂硬質板平面を接着する方法として、一方の表面に接着剤の溜りを形成し、次に他方の表面をその溜りに接触させ、押圧して接着剤が2表面間の空間全体を満たすように充填させる方法や、2枚以上の硬質板の周囲に、中空もしくは中実の弾性材料からなるパッキンを配することで予め接着層を形成し、その接着層に一部設けられた開口部より接着剤を注入し、空気溜りを除去した後に、一部設けられた開口部を閉じることで、2表面間の空間全体に接着剤を充填・接着させる方法が取られてきた。
【0003】
特許文献1には、予め高粘度で流動し難いゲル状の接着剤を、接着すべきアクリル樹脂板の各板間に配し、その後にプレス等により圧着させることで、接着層の厚みを薄くし、均一にすることで、板厚精度の良い樹脂板の積層接着方法が開示されている。しかし、この方法においては、良好な接着層の厚み精度は得られるものの、接着層に気泡が混入し易く、特に大面積の板を接着する場合は、混入した気泡を除去することは困難であり不良率が高くなるという問題があった。
【0004】
特許文献2には、傾斜を設けた作業台に接着すべき硬質板を設置し、この2枚以上の硬質板の周囲にパッキンを配し中央部間隔保持材を挿入した状態で接着剤を注入し、その後、本中央部間隔保持材を抜き取り、空気を抜出しつつ、接着剤を硬質板全面に押し広げることで、気泡の混入を防止する積層接着方法が開示されている。この方法は、高粘度接着剤が気泡をかみ込まないようにゆっくり接着剤を投入し、投入後、しばらくは静置した状態で脱泡し、その後、空気を抜きつつ、接着層の厚みを均一にするため厚み調整用ゲージなどを使用しながら徐々に締め込み、接着剤を接着層全面に注入するため、時間を要する。またこの方法においては、少なくともmm単位での厚み斑が生じるという問題があり、この厚み斑は、長さが1mを超えるような大面積板においては、特に顕著であった。接着層の厚み斑が大きく、厚み精度が悪いと接着板の板厚精度にも影響を及ぼすため、場合によっては、接着後に接着板表面に切削等の機械加工を施すなど、良質の積層接着板を得るには多大な労力を費やす必要があった。
【0005】
また特許文献3には、2つの平面部材を接着する方法としてミクロン又はサブミクロンのホトリソグラフィ加工等に際し、ワークと呼ばれる加工物を、ベースと呼ばれる相手上にホットワックスで接着して、ワークを加工し、加工後にこれを分離し、加工物を得るというものである。この方法は精密加工を施した際に、ワークの厚み方向の加工精度が低下するため、接着層を薄く均一にすることでこれを解消するものである。その方法として、2平面間の隙間に液状のホットワックスを接着剤とし、このホットワックスをいわゆる毛管現象を利用し2平面間に充填し、加温・加圧後、冷却することが記載されている。その際接着する部材のベースに透明材料を用いることにより、ホットワックスの広がりを監視することができる。しかしながら、この方法では、比較的小面積の接着においては、気泡のかみ込みの有無を監視することにより、気泡のかみ込みのない部材を高収率で得る事が可能であるが、接着する面積が比較的大きい場合においては、気泡のかみ込みがない部材を高収率で得ることは非常に困難であり、また気泡がかみ込んだ際に、この気泡を除去する方法に関しては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭49−17863号公報
【特許文献2】特公昭56−166015号公報
【特許文献3】特開平9−205126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、樹脂などの硬質板の平面を接着する場合、気泡の混入が無く、接着層の厚み精度が良い、つまり接着板の板厚精度が良いことが求められているが、これらを両立することは非常に困難であり、未だこれらの課題を解決した硬質板の積層接着方法は開示されていなかった。
【0008】
本発明は、透明樹脂板の平面を接着する場合において、接着層への気泡の混入、および、接着層の厚み斑の抑制が可能な、透明樹脂板の積層接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させた後、接着剤の供給を停止し接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法である。
【0010】
また本発明は、2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させ、その漏洩する箇所の2枚の樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法である。
【0011】
また本発明は、3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させることで接着剤を充填し、重なった3枚以上の前記樹脂板の間全てに接着剤を充填させた後、接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法である。
【0012】
さらに本発明は、3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させ、その漏洩する箇所の3枚以上重なった樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、気泡の混入無く、接着層の厚み精度の良い、透明樹脂板の積層接着方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】接着剤供給ノズルの加工例である。
【図2】接着剤供給ノズルの他の加工例である。
【図3】本発明に用いる作業台の一例である。
【図4】接着剤堰き止めブレードの一例である。
【図5】接着強度測定構成の概略図である。
【図6】3枚以上の接着時の供給方法の一例である。
【図7】3枚以上の接着時の供給方法の一例である。
【図8】3枚以上の接着時の供給方法の一例である。
【図9】3枚以上の接着時のノズル構成の一例である。
【図10】3枚以上の接着時のノズル構成の一例である。
【図11】実施例で用いた構成の概略図である。
【図12】実施例で用いた構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は透明樹脂板の積層接着方法であって、2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を樹脂板端面の板間から漏洩させた後、接着剤の供給を停止し接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する。
【0016】
本発明にて2枚の透明樹脂板の平面を接着(積層接着)するにあたり、該樹脂板は、2枚の樹脂の間に供給される接着剤の流れが目視で確認できる透明樹脂板であれば特に制限を受けるものではない。透明樹脂板としては例えばアクリル樹脂板やポリカーボネート板などが挙げられる。
【0017】
また、この樹脂板の板厚についても、特に制限を受けることは無く適宜板厚を選択することができる。
【0018】
接着させる2枚の透明樹脂板の間に接着剤を供給する方法としては、特に制限は受けない。例えば、接着する樹脂板に接着剤を供給するためのノズルを設置する加工を施しても良い。
【0019】
例えば2枚の樹脂板のうち1枚に、重ねた後の板間に接着剤を供給するためのノズルを接続可能な加工を施す方法が挙げられ、接着板の厚みが大きい場合においては、図1のように樹脂板自体にノズルを接続可能なネジ穴加工等の機械加工を施しても良い。また、接着板自体の厚みが薄く、板自体に加工が困難な場合においては、図2のように予めノズル接続可能なネジ穴加工を施した板等を、接着板に貼り付ける等して接着剤の供給口を設けても良い。
【0020】
接着する透明樹脂板に接着剤供給口を設けるための加工を施す場合、供給口を設ける樹脂板は、貼り合せる2枚の樹脂板の何れに設けても差し支えないが、特に下側に配置する板に設けた方が好ましい。これは下側に配置する板に接着剤供給口を設けることで、接着剤を供給した際に、接着剤流路内の空気溜りを速やかに接着剤に置換できるため流路内に空気溜りが残留し難くなる。そのため接着剤供給時において、接着剤中への空気のかみ込みを抑制でき接着層内に気泡をかみ込む可能性が低下するためである。
【0021】
接着する透明樹脂板に接着剤供給口を設ける位置としては、何れの位置に設けても良く、制限を受けるものではないが、特に樹脂板の端部付近に設けると好ましい。例えば接着する樹脂板の中心部に接着剤供給口を設けた場合、樹脂板を作業台上に設置した際、作業性の悪化や、製品として見た場合に、外観上、板中心部に加工の跡が残る可能性があるためである。板端部に接着剤供給口を設けた場合、加工の跡が残ったとしても、最終製品の積層接着板は、板の幅を揃える目的で接着板端部を切り落とす機械加工を施工することは、その際に供給口加工箇所も除去することが可能となるため、接着板の外観を確保する観点から好ましい。
【0022】
接着剤供給口は、一箇所に限らず複数箇所設けても良い。複数箇所設ける場合は、供給手段が複数必要となるが、特に大面積板の接着を行う際には、接着剤の充填を速やかに行うことが可能となるため、この方法を用いると効果的である。
【0023】
接着剤供給口を複数箇所設ける場合は、例えば板端部4辺の内、1辺上に並列して配置し一方向に吐出する方法や、板4辺の内、2辺以上から板の中央部に向けて吐出する方法が挙げられるが、いずれの方法を用いても良い。中でも好ましいのは、一方向に吐出する方法である。前述の通り、一方向に設けた場合、同じ方向に向かって複数の供給口から接着剤が流れるため、隙間の空気の逃げ道が確保され、気泡をかみ込む可能性が低く、接着剤を充填し易いためである。2辺以上から板の中央部に向けて吐出する場合、充填される液同士が合流する際、合流する液に板間の空気が囲まれ、気泡が取り残される可能性がある。本発明によれば、そのような場合においても、気泡の除去は可能であるが、作業に時間を要してしまう。
【0024】
本発明において用いることの可能な接着剤としては、液状の接着剤であればよく、特に制限を受けるものではない。例えば、接着する樹脂板表面を二塩化メチレン、クロロホルム、アセトン等の溶剤を主成分とした接着剤により膨潤させた後に貼り合せる、いわゆる溶剤系の接着剤を用いることができる。
【0025】
また、その他の例としては、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と称す。)を含有する単量体単独、または単量体とその部分重合したものとの混合物、あるいは単量体にMMA重合体を溶解した混合物であって、これらに熱または光によって重合硬化させる重合開始剤を添加した、いわゆる重合硬化系の接着剤が挙げられる。また、この重合硬化系の接着剤には、必要に応じて可塑剤、架橋剤、紫外線吸収剤および染顔料などを添加することもできる。
【0026】
MMAの重合体を含有する接着剤を用いる場合のように接着剤の粘度が高いほど、二枚の樹脂板の間に接着剤を流す際の圧力損失が大きくなり、接着する板が大きくたわみ変形する。そのため接着剤の流速を遅くすること、すなわち接着剤の供給量を低減することになる。流速を遅くすると、接着剤充填の際に気泡がかみ込んだ場合の気泡の除去が困難になるうえ、接着剤の充填に時間を要すため生産性も悪化する。このように流動性の観点から、接着剤の粘度は、10000mPa・s以下であることが好ましい。
【0027】
接着剤の硬化方法は、その接着剤の種類により公知の方法で行うことができる。例えば、溶剤系接着剤は溶剤を揮発させることにより、また重合硬化系接着剤は熱や光により重合することにより硬化させることができる。
【0028】
2枚の透明樹脂板の平面を接着する場合、作業台の上に接着する樹脂板を設置し、作業台上にて接着剤を充填した後に接着することが好ましい。本発明において、接着する樹脂板を設置する作業台としては、接着させる板の自重等のたわみによる板の変形を抑制する目的で、平滑度の確保された定盤のような作業台であれば、特に制限は受けるものではない。
【0029】
また、本発明においては、上記作業台上に重ねて設置された2枚の透明樹脂板の間に接着剤を供給し、板間に展延する接着剤の一部を樹脂板端面の間から漏洩させて、前記2枚の樹脂板の間に接着剤を充填するため、作業台周囲には漏洩した接着剤を回収する手段を有することが好ましい。
【0030】
漏洩した接着剤を回収する手段としては、特に制限を受けるものではないが、例えば、図3のように、接着板を重ねて設置する定盤状の作業台の周囲に、いわゆる雨どいを模した形状の接着剤回収溝を有した手段を用いても良い。また、接着剤回収溝には、回収した接着剤を抜出すための回収接着剤抜液配管を設けても良い。
【0031】
板端面の重なった間から漏洩した接着剤を回収する際、下側の板の裏面を接着剤が伝い、作業台と下側の板の隙間に入り込み、この部分を接着する可能性がある。また、接着剤の伝い流れた跡が下側の平面上にできてしまうと板表面に外観状の不良が発生してしまう可能性がある。その為、下側の板裏面には、漏洩した接着剤が伝い流れることを防止するための堰を設けても良い。例えば、図4のように、漏洩した接着剤が伝い流れることを防止するための堰(ブレード)を設置することで、板端面から漏洩した接着剤は、ブレードで堰き止められ、スムーズに接着剤回収溝に回収される。ブレードの材質としては、接着剤に対して耐性のある材質であれば良く。また、板表面の傷つき防止のため、弾性のある材質が好ましい。例えば、テフロン(登録商標)などが挙げられる。また、板接着後、端面を揃えるため機械加工によりブレードから外側の範囲をカットすれば、接着剤の伝い流れた跡が残ったとしても外観状の不具合を生じることはない。
【0032】
作業台に接着する透明樹脂板を設置する際、接着剤投入の時間の短縮や空気の抜けを良くするという観点から、板を載せた作業台に傾斜を設け、前記樹脂板を傾けた状態で接着剤を供給してもよい。その際、樹脂板の傾斜角度については、作業台上から樹脂板が滑り落ちない限り、何れの角度において実施しても良く、特に制限されない。
【0033】
本発明においては、接着剤をポンプなどの外力を利用して重ねた板間に供給することにより、比較的速やかに板間全面に接着剤を充填することが可能である。この場合、前記傾斜角度により、接着剤の供給に要する時間や気泡の抜け具合はほとんど左右されない。
【0034】
接着剤の供給方法に関しては、接着する板間に接着剤を充填する際、連続的に接着剤を供給可能な方法であれば、どのような方法を用いても良く、特に制限されない。例えば、接着剤を溜めた槽型のタンク等から、配管により抜出し、ポンプを使用して連続的に接着剤を供給する方法が挙げられる。また、その他の方法として、容量的に十分に余裕を持たせた容積式のシリンジポンプなどを用いて供給しても良い。
【0035】
以上のような構成により、すなわち重ねた板間に接着剤を供給可能な構造とした樹脂板を、漏洩した接着剤を回収可能な機構を備えた、平滑な定盤状の作業台に設置し、接着剤供給手段により接着剤の充填を実施することができる。予め接着剤供給ライン中に接着剤を充填させ、ライン中の空気を接着剤に置換した後、接着剤供給ラインを接続可能な構造とした樹脂板のノズル部に接続し、重ねた2枚の板間に接着剤を供給する。供給を開始すると、2枚重ねた板平面の垂直方向から見ると、接着剤供給部を基点として、円状、もしくは扇状に接着剤が板間全面に徐々に展延し充填される。そして樹脂板の端部まで到達した箇所の端部の板間から一部の接着剤が漏洩し始める。
【0036】
このようにして樹脂板間に接着剤が満たされるまで、連続的に接着剤を供給し、樹脂板間の全面に接着剤が展延した後に接着剤の供給を停止し、接着剤の充填作業を完了する。
【0037】
本発明によれば、接着剤を充填する際、板端面から接着剤を漏洩させるため、空気をかみ込んだ場合においても、接着剤の流れに同伴して、かみ込んだ空気を排出することが可能であり、接着剤充填後は、接着剤の供給を停止するのみで、余剰な接着剤は板の自重により排出される。接着剤の供給を停止しても、狭い隙間に充填された接着剤の表面張力により、2枚の板同士は吸い付いた状態となり、板間から空気が入り込むような状態にはならない。従って、接着層の均一な厚みが得られるため、作業に労力を費やすこと無く、非常に効率的に良質な製品を製造することが可能となる。
【0038】
本発明による接着方法は、一辺が数十cmの比較的小型の樹脂板の接着から、一辺が1m以上の大型樹脂板の接着まで何れの大きさの樹脂板接着にも用いることが可能である。
【0039】
本発明においては、先にも述べた通り、ポンプなどの外力を利用して接着層に接着剤を流し充填すれば、一辺が1mを越えるような大面積の樹脂板においても、接着させる平面全面に接着剤を充填することは容易である。
【0040】
また、一辺が1mを越えるような大面積板の平面全面に接着剤を充填する際、大きな接着剤供給能力を有するポンプを設けることが困難な場合においては、以下のような手法を用いることにより、接着剤供給能力が比較的小さい場合においても、本発明の効果を発揮することが可能である。
【0041】
すなわち、2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させ、その漏洩する箇所の2枚の樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する。
【0042】
2枚重ねた樹脂板の隙間に接着剤を供給していくと、接着剤が充填された部分の板端面の間の一部箇所から接着剤が漏洩し始めるので、この漏洩し始めた2枚の樹脂板端部を挟持し、漏洩を封じるという方法である。漏洩する板端面を挟持することにより、接着剤が漏洩している板端面の隙間(2枚の樹脂板の間)が閉じられ接着剤が漏洩する流路が制限される。その分、未充填部分へ接着剤が流れ込む推進力が得られる。すなわち、接着剤が充填され、漏洩する板端部を順次挟持していき、接着剤が2枚重ねた樹脂板間を流れる推進力を継続的に維持することによって、接着剤供給能力が比較的小さい場合においても、大面積板の平面全面に接着剤を充填することが可能となる。
【0043】
一方、2枚の樹脂板の端部全周を予め挟持した場合、挟持された板端面が密着し、接着剤を充填する際の空気の逃げ道が無くなり、大きな気泡として多量にかみ込む。また、接着剤供給口付近の2辺の端面のみ予め挟持した場合、予め挟持された2辺以外の端面から、空気が逃げるため、前述のような大きな気泡を多量にかみ込みことは減少する。しかしながら、予め挟持された2辺の端面が密着した状態となり、この部分に接着剤が充填され難いため、小さな気泡を多量にかみ込むことになる。
【0044】
接着板の端面を挟持する方法としては、どのような方法を用いても良く特に制限はされない。例えば、一般的に締め付け作業などに用いられるシャコ万力などの板端部固定工具を、2枚の重ねた樹脂板の外周部に適度な間隔で配置し、これを用いて挟持しても良い。
【0045】
この方法により、板端部を順次挟持しつつ、接着剤を充填すると最終的には、接着板の端部の外周全域が挟持されることとなる。接着板の外周ほぼ全域が挟持された状態で、板間に接着剤を供給した場合、接着剤の供給圧力により、挟持されていない樹脂板の平面中心部がたわみ、膨らんだ状態となることがある。接着板の中心部が膨らんだ状態のまま接着すると、挟持された接着板端部と挟持されていない中心部において、接着層の厚みに斑ができてしまうことがある。そのようなことを回避するため、一度、接着板の平面全面に接着剤を充填した後に、接着層内に存在する余剰な接着剤を排出することが好ましい。これにより接着層の厚みの斑を抑制することができる。余剰な接着剤を排出する方法としては、例えば、挟持された接着板端部を一度緩め、開放することにより2枚の樹脂板の板端面に隙間が生じ、ここから余剰に供給された接着剤を排出する方法が挙げられる。また前記樹脂板の平面を加圧することにより接着剤を排出する方法が挙げられる。この場合、板端部を挟持したままであれば接着剤供給側を開放する等、接着剤の排出路を確保しておく必要がある。その他、余剰な接着剤を排出可能な方法であれば、特に制限はされない。大面積板の場合は、板平面を加圧(プレス)することが好ましい。
【0046】
以上のような方法により、2枚の樹脂板の平面を接着することで、樹脂板の板厚や大きさによらず、気泡のかみ込みが無く、接着層の厚み精度の良い樹脂接着板を得ることが可能となる。
【0047】
また、3枚以上の透明樹脂板を積層接着する場合、前述の方法により2枚の透明樹脂板を接着させて得られた積層透明樹脂板に、更に一枚の透明樹脂板を重ね、前述と同様の方法により接着することを繰り返すことで、気泡のかみ込みが無く、接着層の厚み精度が良い、3枚以上の透明樹脂板を積層接着する事が可能である。3枚以上の透明樹脂板を積層接着する場合、各樹脂板を水平に重ねることが好ましい。
【0048】
このような方法の場合、気泡のかみ込みが無く、接着層の厚み精度が良い積層接着板を得る事は可能であるが、一度の接着・硬化に要する時間が非常に長いため、3枚以上の透明樹脂板を積層接着する場合においては、生産効率が悪くなる可能性がある。
【0049】
また、接着剤を連続的に供給する事で気泡の混入を防止するため、接着剤充填の際には、実際に接着に使用する接着剤の量より、過剰の接着剤を使用することとなる。そのため、例えば保管安定性の悪い重合硬化系の接着剤を用いる場合においては、従前の接着で使用した際の残りの接着剤を転用する事が困難となるため、接着を実施する度に新たに接着剤を用意する必要があり、多量の接着剤をロスする可能性もある。
【0050】
しかし、以下のような方法によって本発明を実施することにより、生産効率良く、接着剤のロスも少なく3枚以上の透明樹脂板を積層接着する事が可能となる。
【0051】
すなわち、3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させることで接着剤を充填し、重なった3枚以上の前記樹脂板の間全てに接着剤を充填させた後、接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する。
【0052】
3枚以上の透明樹脂板を接着する場合、2箇所以上の樹脂板の間が存在する事となる。生産効率が良く、しかも、接着剤のロスを少なく接着しようとした場合、前記の2箇所以上の樹脂板の間に速やかに接着剤を充填し、全ての樹脂板の間に接着剤を充填した後に、接着・硬化することでこれが達成される。
【0053】
前記の2箇所以上の樹脂板の間に速やかに接着剤を充填する場合、図6のように予め水平に重ねた3枚以上の樹脂板に存在する2箇所以上の板の間全てに、各々の樹脂板の間に個別に接着剤を供給できるノズルを設け、1つの樹脂板の間に接着剤を充填した後、次に別の樹脂板の間に接着剤を充填する。このように1つの樹脂板の間毎に接着剤の充填を実施し、断続的に全ての樹脂板の間に接着剤を充填する方法が好ましい。
【0054】
その他、前記の2箇所以上の樹脂板の間に速やかに接着剤を充填する方法として、例えば図7のように予め水平に重ねた3枚以上の樹脂板に、全ての樹脂板の間を貫通するような流路を設け、この流路に接着剤を流す事で、2箇所以上の樹脂板の間に一度に接着剤を充填する方法、また、図8のように予め水平に重ねた3枚以上の樹脂板の全ての間を直列的な流れで経由するような流路を設け、この流路に接着剤を流す事で、2箇所以上の樹脂板の間に連続的に接着剤を充填する方法等が挙げられる。
【0055】
これらは、何れも一つの接着剤供給系列で、2箇所以上の樹脂板の間に接着剤を流し、充填しようとするものである。しかし、何れの方法においても、2箇所以上の樹脂板の間のうち、優先的に接着剤が流れる樹脂板の間のみ接着剤が充填され樹脂板端面の樹脂板の間から漏洩が開始し、残された樹脂板の間全面に接着剤を充填する事が出来ないことがある。従って、各々の樹脂板の間に個別に接着剤を供給することができるように、後述するバルブを設けたり、カップリング継手接続部を設けたりすることが好ましい。
【0056】
3枚以上の透明樹脂板を接着する場合、作業台の傾斜角度は、3枚以上重ねた透明樹脂板が滑り落ちない限りは、何れの角度において実施しても良いが、水平な作業台で実施することが特に好ましい。
【0057】
また、2箇所以上の樹脂板の間全てに、各々の樹脂板の間に個別に接着剤を供給できるノズルを設け、1つの樹脂板の間毎に、順次、接着剤を充填し、全ての樹脂板の間に接着剤を充填する場合、3枚以上を水平に重ねた樹脂板の間のうち、最も下部に位置する板の間、つまり最も下部に配置された樹脂板とその上に隣接する樹脂板の間から、最も上部に位置する板の間、つまり最も上部に配置された樹脂板とその下に隣接する樹脂板の間まで、順次接着剤を充填する事が好ましい。
【0058】
例えば最も上部に位置する樹脂板の間から順次別の箇所に位置する樹脂板の間に接着剤を充填した場合、接着剤を充填する樹脂板の間の下部に、接着剤未充填の樹脂板の間が存在することとなる。その場合、樹脂板端面の板間から漏洩した接着剤が、下部に存在する接着剤未充填の樹脂板端面の板間から浸入してしまい、後にその樹脂板の間に接着剤を充填する際に、大きな気泡がかみ込み、気泡の除去に時間を要すため、好ましくない。
【0059】
2箇所以上の樹脂板の間全てに、個別に接着剤を供給できるノズルを設ける場合、、その手段、方法は特に制限されない。
【0060】
例えば、図9のように、各樹脂板の間に設けた接着剤供給ラインに、各々バルブを設け、接着剤を流す板の間をバルブの開閉により、選択的に各樹脂板の間に接着剤を供給可能な方法や、図10のように、カプラ(登録商標)など、着脱の容易なカップリング継手を順次付け換える事で、接着剤を各樹脂板の間に供給可能な方法などが挙げられる。
【0061】
これらのバルブやカップリング継手の材質は、接着剤に対する耐性があれば良く、特に制限されない。但し、滞留部における接着剤の固化を防止するため、滞留部の少ない形状が好ましい。
【0062】
また、3枚以上の透明樹脂板の一辺が1mを越えるような大面積であり、大きな接着剤供給能力を有するポンプを設けることが困難な場合においては、以下のような手法を用いることにより、接着剤供給能力が比較的小さい場合においても、本発明の効果を発揮することが可能である。
【0063】
すなわち、3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板の間から漏洩させ、その漏洩する箇所の3枚以上重なった樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する。
【0064】
3枚以上の水平に重ねた樹脂板の間に接着剤を供給していくと、接着剤が充填された部分の板端面の板の間の一部箇所から接着剤が漏洩し始めるので、この漏洩し始めた3枚以上の樹脂板端部を挟持し、漏洩を封じるという方法である。漏洩する板端面をその他の3枚以上の水平に重ねた樹脂板ごと挟持することにより、接着剤が漏洩している板端面の隙間(3枚以上重ねた樹脂板のうち、接着剤が流れている2枚の樹脂板の間)が閉じられ接着剤が漏洩する流路が制限される。その分、未充填部分へ接着剤が流れ込む推進力が得られる。すなわち、接着剤が充填され、漏洩する板端部を順次挟持していき、接着剤が板の間を流れる推進力を継続的に維持することによって、接着剤供給能力が比較的小さい場合においても、大面積板の平面全面に接着剤を充填することが可能となる。
【0065】
3枚以上の接着板の端面を挟持する方法としては、2枚の樹脂板を接着する場合と同様にして行えば良い。
【0066】
3枚以上の樹脂板を接着する場合においても、2枚の樹脂板を接着する場合と同様に、一度、接着板の平面全面に接着剤を充填した後に、接着層内に存在する余剰な接着剤を排出することが好ましい。余剰な接着剤を排出する方法としては2枚の樹脂板を接着する場合と同様にして行えば良い。
【0067】
3枚以上の樹脂板を接着する際は、2箇所以上の板の間に接着剤を充填する必要がある。先ずは1つの板の間に接着剤を充填する際に、前記挟持、および、前記余剰接着剤の排出を実施し、次に別の板の間に接着剤を充填する際に、同様にして前記挟持、および、前記余剰接着剤の排出を実施する。
【0068】
以上のような方法により、各々の樹脂板の間に、順次、接着剤の充填を実施し、3枚以上の樹脂板に存在する全ての板の間に接着剤を充填した後に、硬化、接着することで、樹脂板の板厚や大きさによらず、気泡のかみ込みが無く、接着層の厚み精度の良い樹脂接着板を生産効率良く得ることが可能となる。また、断続的に接着剤充填作業を繰り返すため、接着剤のロスも最小限に留める事が可能となる。
【0069】
前述したような透明樹脂板平面を効率良く積層接着する方法を、以下に具体的に述べる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて説明するがこれらに限定されるものではない。
(1)接着層の厚み及び厚み精度
実施例における接着層厚みの測定に関しては、次のような方法で行った。
【0071】
2枚の樹脂板の平面を接着した樹脂接着板を縦・横各4列に分割し計16枚切り出した。マイクロゲージにて、切り出した樹脂接着板切片の板厚を測定し、予め測定しておいた接着前の各樹脂板の板厚を差し引き、接着層の厚みを算出した。また以下の式から得られる値を接着層厚み精度とした。
【0072】
接着層が2層ある場合は、以下に式から得られる2層分の接着層の厚み精度を、接着層の数で割り返し、接着層1層あたりの平均厚み精度とした。
(接着層厚み精度)=[(M+N)/2]±[(M−N)/2]
M;接着層の厚みの最大値
N;接着層の厚みの最小値
(2)気泡のかみ込み
気泡のかみ込みに関しては、次のような方法で行った。
【0073】
接着させる2枚の樹脂板の間に接着剤を充填した後に、目視により接着層内へ気泡がかみ込んでいなかった場合を○の評価とし、接着層内へ少量でも気泡がかみ込んでいた場合には×の評価とした。
(3)接着強度
接着強度の測定に関しては、次のような方法で行った。
【0074】
接着した樹脂板を切り出し、接着層が中心になるように切り出した試験片の平面方向へ、試験片を一般的な重合接着方法により接着し、図5のような試験片を作製する。
【0075】
JIS−K7171に準拠して、テンシロン万能試験機(商品名UCT-10T、オリエンテック製)を用いて、試験片の接着層部分に図5のように、5点の試験片に荷重をかけ、曲げ破壊時の応力の平均値を接着強度とした。
(実施例1)
メタクリル酸メチルモノマー100質量部に対し、重合開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度40.7℃)を1質量部添加して、撹拌機にて混合した後、真空容器内で脱泡作業を行い、接着剤を得た。
【0076】
メタクリル樹脂板である板厚10mm、大きさ300mm×300mmのアクリライトL(商品名:三菱レイヨン製)2枚の接着させる平面を重ね、図3のような台に載せた。
【0077】
2枚重ねた下側の板の角部1箇所に図2の形態で接着剤を供給するためのノズルを設置する加工を施した。
【0078】
上記接着剤を、接着剤供給ライン中に満たし、接着剤供給ライン中の残存空気を接着剤に置換した後に、先に加工を施した2枚重ねた板の下側の板に接着剤供給ラインを接続した。
【0079】
接着剤供給ラインを接続した後に、本接着剤をポンプにて300ml/minの流速で供給したところ、樹脂板の角部に設けた接着剤供給口から接着剤が2枚の該樹脂板の間に供給され、この供給口を基点として扇状に接着剤が供給され、およそ5秒でメタクリル板全面に接着剤が展延し、その一部が板端面の間から漏洩し始めたため、接着剤の供給を停止した。この際、板端部は挟持しなかった。
【0080】
接着剤充填後、常温の室内に24時間保持し、接着剤を硬化させ、2枚の樹脂板を接着させた。
【0081】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層の厚みは0.1〜0.2mmであり、接着層の厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。接着層の強度は80MPaという結果となった。
(実施例2)
接着剤に二塩化メチレンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着を実施した。
【0082】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層の厚みは0.1〜0.2mmであり、接着層の厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。接着層の強度は70MPaであった。
(比較例1)
メタクリル酸メチルモノマーのシラップであるアクリシラップSY−116(商品名:三菱レイヨン製:樹脂組成はポリメチルメタクリレート、粘度は450〜750mPa・s)100質量部に対し、重合開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度40.7℃)を0.1質量部添加して、撹拌機にて混合した後、真空容器内で脱泡作業を行い、接着剤を得た。
【0083】
前記接着剤を片方の樹脂板に垂らした後に、もう一方の板を前記樹脂板上の接着剤に接触させ徐々に接着剤を2平面間に押し広げるように2枚の板を重ね、接着剤を充填させた後に実施例1と同様の条件で硬化、接着した。
【0084】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みとして、1mm大の気泡が数個確認された。接着後の接着層の厚みは0.1〜0.2mmであり、接着層の厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。接着層の強度は75MPaという結果となった。
(比較例2)
実施例1と同サイズのメタクリル樹脂板の周囲に、ポリ塩化ビニル製の中空のパッキンを配し、前記樹脂板平面上に前記パッキンを介してもう1枚の樹脂板を重ね、接着剤投入口を一部開口させた後、シャコ万力で周囲を挟持したセルを組み立てた。このセルに一部開口させた接着剤投入口より、比較例1と同様の接着剤を投入し接着層の厚さが5mmとなるように、パッキンの外側の板間に5mm厚のゲージを挟み、シャコ万力を締め込み、前記樹脂板間の空気を抜きながら接着層全域に接着剤を押し広げた後、開口部を閉じた。
【0085】
接着剤封入後のセルを、常温の室内に24時間保持し、その後熱風循環炉にてセルを95℃で5時間熱処理を行った。
【0086】
接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。しかしながら接着後の接着層の厚みは4.7〜5.3mmであり、接着層の厚み精度は5mm±0.3mmとなり、実施例1に比べ接着層の厚みの振れが大きい結果となった。接着層の強度は80MPaという結果となった。
【0087】
実施例1〜2、比較例1〜2の結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
○:気泡のかみ込み無し
×:気泡のかみ込み有り(少量でも)
(実施例3)
メタクリル樹脂板を板厚15mm、大きさ1000mm×1000mmのアクリライトS(商品名:三菱レイヨン製)を2枚使用し実施例1と同様の接着剤供給ノズル接続の加工を施した。
接着剤の供給速度を900ml/minとし、接着剤を供給した際、2枚の板端面の隙間から接着剤が漏洩し始めた箇所を、図11のような形態でシャコ万力を使用し、100mm間隔で順次挟持しながら平面全面に接着剤を充填したところ、およそ20秒程度で平面全面に接着剤が充填された。接着剤充填後、板端面を挟持したシャコ万力を全て緩め、接着層に充填された余剰な接着剤を抜液し、接着剤の充填を完了した。
【0089】
接着剤充填後、実施例1と同様にして硬化・接着させた。
【0090】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層の厚みは0.1〜0.2mmであり、接着層の厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。
(実施例4)
接着剤の流速を300cc/minで供給した以外は、実施例3と同様にして実施した。
接着剤を供給して、板平面の半分程度まで接着剤が充填した時点で、板端部からの接着剤の漏洩が盛んになり、それ以上板平面中に接着剤が充填しなくなったため、接着層内の気泡の動きや位置に併せて、都度、シャコ万力による締め付け、緩めを繰り返し、接着剤が平面全体に充填された。全ての気泡が抜けるまでに2分程度の時間を要した。
【0091】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層の厚みは0.1〜0.3mmであり、接着層の厚み精度は0.2mm±0.1mmとなった。実施例3に比べ、接着層内の気泡の除去に時間を要し、その間接着板がたわんだ状態が継続したため、若干、接着層の厚み斑(厚みの振れ幅)が増加した。
(比較例3)
接着剤が板端面を挟持しないこと以外は、実施例3と同様に接着剤を供給したところ、接着剤供給開始から25秒程度経過し、平面面積のおよそ7割程度まで接着剤が充填された時点で、板端面から接着剤が漏洩するのみとなりそれ以上接着剤が隙間を流れなくなり、最後まで接着剤を充填することが出来なかった。
(比較例4)
接着板の全周を予め100mm間隔でシャコ万力により挟持し、接着剤充填中の接着剤の漏らし作業や、接着剤充填後シャコ万力を緩め接着層内の余剰な接着剤を抜液しないこと以外は、実施例3と同様にして接着剤を供給したところ、板端面の隙間から接着剤が漏洩することがなく、20秒程度で接着板の全面に接着剤は充填された。しかしながら、接着板が10mm程度たわみ、接着層には長さ100mm以上の大きな空気溜まりが残った。接着剤の供給前から、板端面を挟持していたため、隙間に存在する空気の逃げ道が無くなり、接着層間に空気が滞留する結果となった。
(比較例5)
接着剤充填後、シャコ万力を緩め接着層内の余剰な接着剤を抜液しないこと以外は実施例3と同様に実施した。
【0092】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であったが、接着後の接着層の厚みは0.1〜1.5mmであり、接着層の厚み精度は0.8mm±0.7mmとなった。接着剤充填後に余剰な接着剤を抜液しないまま接着したため、シャコ万力で挟持された板端面と、余剰な接着剤の充填によりたわんだ板中心部とでは、1mm以上の接着層の厚み振れが生じた。
【0093】
実施例3〜4、比較例3〜5の結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
○:気泡のかみ込み無し
×:気泡のかみ込み有り(少量でも)
(実施例5)
メタクリル樹脂板を板厚15mm、大きさ500mm×500mmのアクリライトS(商品名:三菱レイヨン(株)製)を3枚使用し、内2枚に角部1箇所に図1の形態で接着剤を供給するためのノズルを設置する加工を施した。
【0095】
図9の形態で3枚の樹脂板を重ね、接着剤供給ラインの各々の板の間に通じる供給ノズル部近傍にそれぞれボールバルブを配置し、各々の板の間に選択的に接着剤を供給可能な設備構成とした。
【0096】
実施例1と同様の接着剤を、接着剤供給ライン中に満たし、接着剤供給ライン中の残存空気を接着剤に置換した後に、先に加工を施した2枚の板に接着剤供給ラインを接続した。
【0097】
接着剤供給ラインを接続した後に、先ずは、最下部に配置された接着板4とその上に配置された接着板3の板の間に接着剤を供給するため、接着剤供給バルブaを開き、前記接着剤をポンプにて500ml/minの流速で供給したところ、樹脂板の角部に設けた接着剤供給口から接着層aに供給され、この供給口を基点として扇状に接着剤が供給され、およそ25秒でメタクリル板全面に接着剤が展延し、その一部が板端面の間から漏洩し始めたため、接着剤の供給を停止し、接着剤供給バルブaを閉じた。この際、板端部は挟持しなかった。
【0098】
続いて、中間に位置した接着板3と最上部に位置する接着板1の板の間に接着剤を供給するため、接着剤供給バルブbを開き、前記接着剤をポンプにて500ml/minの流速で供給したところ、樹脂板の角部に設けた接着剤供給口から接着層bに供給され、この供給口を基点として扇状に接着剤が供給され、およそ25秒でメタクリル板全面に接着剤が展延し、その一部が板端面の間から漏洩し始めたため、接着剤の供給を停止し、接着剤供給バルブbを閉じた。この際、板端部は挟持しなかった。
【0099】
接着剤充填後、常温の室内に24時間保持し、接着剤を硬化させ、3枚の樹脂板を接着させた。
【0100】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層1層あたりの平均厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。
(実施例6)
図12のような形態でシャコ万力を使用し、接着層aの板端面の隙間から接着剤が漏洩し始めた箇所を100mm間隔で徐々に挟持しながら平面全面に接着剤を充填し、全面に充填された後に、板端面を挟持した全てのシャコ万力の緩め、接着層に充填された余剰な接着剤を抜液した。次の接着層bも同様に接着剤を充填した以外は実施例5と同様に実施した。
【0101】
接着層a、および、接着層b共に、およそ12秒程度で板全面に接着剤が充填された。
【0102】
その後、実施例5と同様にして接着剤を硬化させ、3枚の樹脂板を接着させた。
【0103】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層1層あたりの平均厚み精度は0.15mm±0.05mmとなった。
(実施例7)
最初に上部に配置された接着層bに接着剤を充填した後に、下部に配置された接着層aに接着剤を充填した以外は実施例6と同様に実施した。
【0104】
実施例5と同様に接着層bに接着剤を供給したところ、およそ、12秒で接着層bの板全面に接着剤が充填され後に、実施例6と同様に余剰な接着剤を抜液した。
【0105】
接着層bから漏洩、抜液した接着剤が、接着層bの下部に配置された接着層aの板端面から接着層a内に浸入していた。
【0106】
続いて、同様に接着層aに接着剤を供給したところ、供給した接着剤と、接着層bから漏洩し、接着層aの板端面から浸入した接着剤との間に大きな気泡がかみ込んだ。接着層aに接着剤を供給し続けたところ、およそ、1分半経過後、全ての気泡が抜けたため、接着剤の供給を停止し、同様に余剰な接着剤を抜液し、接着剤の充填を完了した。
【0107】
その後、実施例5と同様にして接着剤を硬化させ、3枚の樹脂板を接着させた。
【0108】
得られた樹脂接着板には接着剤充填後の気泡のかみ込みは無く良好な状態であった。接着後の接着層1層あたりの平均厚み精度は0.2mm±0.1mmとなった。実施例6に比べ、接着層内にかみ込んだ大きな気泡の除去に時間を要し、その間接着板がたわんだ状態が継続したため、若干、接着層1層あたりの平均厚み精度の振れ幅が増加した。
(比較例6)
図7の形態で、予め水平に重ねた3枚の樹脂板に、接着板3、4の板の間を貫通する接着剤流路を設け、この流路に接着剤を流す事で、接着層a、bに一度に接着剤を供給する以外は、実施例5と同様に実施した。
【0109】
接着剤を供給したところ、およそ、30秒で接着層bに接着剤が充填され板端面から漏洩し始めた。漏洩した接着剤は、接着層aの板端面から浸入した。
【0110】
また、貫通する接着剤流路から接着層aに流れる接着剤の流れは非常に緩やかであり、約3分間接着剤を供給したが接着層aの全面に完全に充填されなかった。これは、接着層bに接着剤が充填され板端面から盛んに漏洩するため、接着層aを満たすだけの流量が得られなかったためである。
(比較例7)
図8の形態で、予め水平に重ねた3枚の透明樹脂板の接着層aに流れ、その後流路を経由して接着層bに流れるという直列的な流れで全ての接着層を経由する流路を設け、この流路に接着剤を流した意外は、実施例5と同様に実施した。
【0111】
接着剤を供給したところ、およそ25秒で接着層aに接着剤が充填され板端面から漏洩し始めると共に、接着層bにも供給された。
【0112】
しかし、接着層bの入口となる流路の周辺まで流れた時点で、接着層bでの接着剤の展延は止まり、約3分間接着剤を供給したが、接着層bの全面に完全に充填されなかった。これは、接着層aに接着剤が充填され板端面から盛んに漏洩するため、接着層bを満たすだけの流量が得られなかったためである。
【0113】
実施例5〜7、比較例6〜7の結果を表3に示す。
【0114】
【表3】
○:気泡のかみ込み無し
×:気泡のかみ込み有り(少量でも)
【符号の説明】
【0115】
1 接着板1(上側)
2 接着板2(下側:加工あり)
3 接着層
4 接着剤供給ノズル接続部
5 接着剤流路
6 接着剤供給ノズル接続加工を施した板
7 定盤状の作業台
8 接着剤回収溝
9 回収接着剤抜液配管
10 接着剤伝い流れ防止ブレード
11 ブレード支持部
12 強度測定用試験片(重合接着層)
13 強度測定用試験片支持部
14 圧子
15 板端面固定工具
16 接着板3(中間部:加工あり)
17 接着板4(最下部:加工あり)
18 接着層a
19 接着層b
20 貫通する接着剤流路
21 接着層を経由する流路
22 接着剤供給バルブa
23 接着剤供給バルブb
24 カップリング継手
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させた後、接着剤の供給を停止し接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法。
【請求項2】
2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させ、その漏洩する箇所の2枚の樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法。
【請求項3】
3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させることで接着剤を充填し、重なった3枚以上の前記樹脂板の間全てに接着剤を充填させた後、接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法。
【請求項4】
3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させ、その漏洩する箇所の3枚以上重なった樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法。
【請求項1】
2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させた後、接着剤の供給を停止し接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法。
【請求項2】
2枚の透明樹脂板の平面を重ね、その重なった2枚の樹脂板の間に接着剤を供給し、前記樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させ、その漏洩する箇所の2枚の樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、2枚の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法。
【請求項3】
3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させることで接着剤を充填し、重なった3枚以上の前記樹脂板の間全てに接着剤を充填させた後、接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法。
【請求項4】
3枚以上の透明樹脂板の平面を重ね、それら重なった3枚以上の前記樹脂板の最も下部に位置する樹脂板の間から、最も上部に位置する樹脂板の間までの全ての間に、順次、接着剤を供給し、各樹脂板の間に展延する接着剤の一部を前記樹脂板端面の板間から漏洩させ、その漏洩する箇所の3枚以上重なった樹脂板端部を順次挟持して前記漏洩を封じながら接着剤を供給し、前記樹脂板の間に接着剤を充填させた後、接着剤の供給を停止し、前記挟持した箇所を緩めること、及び前記樹脂板の平面を加圧することの少なくとも一方を行うことにより前記樹脂板の間に充填した余剰の接着剤を排出し、残りの接着剤を硬化させて、3枚以上の樹脂板を接着する透明樹脂板の積層接着方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−140629(P2011−140629A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225841(P2010−225841)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
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