説明

透明熱可塑性樹脂組成物およびその成形品

【課題】
磨りガラス調の透明性を付与すると同時に、耐衝撃性を併せ持つ透明熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供すること。
【解決手段】
少なくともシアン化ビニル系単量体(a1)を10〜20重量%を含むビニル系単量体混合物(a)を共重合してなるビニル系共重合体(A)にゴム質含有グラフト共重合体(B)が分散してなるゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、重量平均粒子径が1〜10μmのアクリル系架橋重合体微粒子(C)を0.3〜3.0重量部を配合してなり、23℃で測定した厚み3mmにおける全光線透過率とヘイズ値が共に75%以上であることを特徴とする、透明熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磨りガラスに似た風合いを有する透明熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用電気機器、OA機器、一般雑貨等の外観部品となる成形品では、外観として磨りガラスに似た風合いが求められており、解決手段として、樹脂組成物の光透過性と光拡散性を高度に両立させる技術が知られている。また、外観部品では耐衝撃性を有することも欠かせない特性である。
【0003】
光透過性と光拡散性を高度に両立させた磨りガラス調の樹脂組成物を得る技術としては、透明熱可塑性樹脂組成物に光拡散剤を加える技術が知られており、例えば特許文献1では、透明熱可塑性樹脂組成物と光拡散剤の組合せにより、求める光透過性と光拡散性のバランスを満足させる技術が開示されている。しかしながら、特許文献1では耐衝撃性を向上する技術について記載されていない。また、特許文献2では透明熱可塑性樹脂組成物に光拡散剤であるアクリル系多層構造ゴム粒子を加える技術が開示されているが、該文献で開示されている技術は、耐衝撃性を向上させるために、光透過性と光拡散性を成形品の被覆層と基盤層に分けることで確立した技術であって、光透過性と光拡散性を併せ持ち、かつ耐衝撃性に優れた透明熱可塑性樹脂組成物およびその成形品についての開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−279668号公報
【特許文献2】特開2000−296580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の磨りガラス調の透明熱可塑性樹脂組成物においては、光透過性と光拡散性のバランスを損なわずに耐衝撃性を向上させる技術は確立されていなかった。すなわち本発明は、磨りガラス調の透明性を付与すると同時に、耐衝撃性を併せ持つ透明熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記のような実状に鑑み、課題達成について鋭意検討した結果、本発明に到達した。本発明は、以下の(1)〜(6)で構成される。
(1)少なくともシアン化ビニル系単量体(a1)を10〜20重量%を含むビニル系単量体混合物(a)を共重合してなるビニル系共重合体(A)にゴム質含有グラフト共重合体(B)が分散してなるゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、重量平均粒子径が1〜10μmのアクリル系架橋重合体微粒子(C)を0.3〜3.0重量部を配合してなり、23℃で測定した厚み3mmにおける全光線透過率とヘイズ値が共に75%以上であることを特徴とする、透明熱可塑性樹脂組成物。
(2)前記ビニル系単量体混合物(a)が、シアン化ビニル系単量体(a1)10〜20重量%、芳香族ビニル系単量体(a2)5〜40重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a3)30〜80重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜40重量%を含有する、(1)に記載の透明熱可塑性樹脂組成物。
(3)前記ゴム質含有グラフト共重合体(B)が、ゴム質重合体(b)の存在下で1種以上のビニル系単量体をグラフト重合してなる、(1)または(2)に記載の透明熱可塑性樹脂組成物。
(4)前記ゴム質重合体(b)と、前記ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分との屈折率との差が0.03以内であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の透明熱可塑性樹脂組成物。
(5)前記ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分中に存在するアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合が、アセトン可溶分に対し10重量%以下であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の透明熱可塑性樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の透明熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、全光線透過率を損なうことなくヘイズ値を向上させることが可能となるため光透過性と光拡散性の両特性を高度に満足し、かつ耐衝撃性に優れた透明熱可塑性樹脂組成物およびその成形品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、少なくともシアン化ビニル系単量体(a1)を10〜20重量%を含むビニル系単量体混合物(a)を共重合してなるビニル系共重合体(A)、ゴム質含有グラフト共重合体(B)およびアクリル系架橋重合体微粒子(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物である。
【0009】
本発明におけるビニル系共重合体(A)は、シアン化ビニル系単量体(a1)を必須成分とすることを特徴とする。シアン化ビニル系単量体(a1)の具体例としては、アクリロニトリルまたはメタアクリロニトリルが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができるが、アクリロニトリルが耐衝撃性の点で好ましい。また、ビニル系単量体混合物(a)におけるシアン化ビニル系単量体(a1)の配合比率は10〜20重量%であり、好ましくは11〜18重量%である。シアン化ビニル系単量体(a1)の配合比率が10重量%未満であると耐衝撃性が著しく低下し、また、20重量%を超えると色調が安定しないため、好ましくない。
【0010】
ビニル系単量体混合物(a)には、上記シアン化ビニル系単量体(a1)の他に、ビニル系単量体混合物(a)に含まれる単量体として、芳香族ビニル系単量体(a2)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a3)またはこれらと共重合可能なその他のビニル系単量体(a4)が挙げられる。
【0011】
芳香族ビニル系単量体(a2)の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレンなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができるが、スチレンまたはα−メチルスチレンが好ましい。また、ビニル系単量体混合物(a)における芳香族ビニル系単量体(a2)の配合比率は5〜40重量%が好ましく、17〜37重量%であることが好ましい。芳香族ビニル系単量体(a2)の配合比率が5重量%未満では色調が安定しない場合があり、また、40重量%を超えると全光線透過率が低下してしまう場合がある。
【0012】
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a3)の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸クロロメチルおよびメタクリル酸2−クロロエチルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができるが、メタクリル酸メチルが好ましい。また、ビニル系単量体混合物(a)における不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a2)の配合比率は30〜80重量%が好ましく、35〜75重量%がより好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a3)の配合比率が30重量%未満では全光線透過率が低下してしまう場合があり、また、80重量%を越えると耐衝撃性が低下してしまう場合がある。
【0013】
共重合可能な他の単量体(a4)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、イタコン酸、マレイン酸などの重合性不飽和カルボン酸、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド化合物、マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物およびアクリルアミドなどの不飽和アミドなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができるが、なかでもN−フェニルマレイミドまたは無水マレイン酸が好ましく使用される。また、ビニル系単量体混合物(a)における共重合可能な他の単量体(a4)の配合比率は0〜40重量%の範囲で使用され、特に全光線透過率や耐衝撃性の点からは0〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明に用いられるビニル系共重合体(A)は、前記ビニル系単量体混合物(a)を公知の手法に従って共重合することによって得られるが、シアン化ビニル単量体(a1)の50重量%以上を、重合転化率が30重量%に達する以前に重合系内に添加する方法を用いると、重合末期の残モノマー中のシアン化ビニル単量体(a1)の含有量を低く保つことができるため、ビニル系共重合体(A)のアセトン可溶分中のアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合を低下させることができ、得られる透明熱可塑性樹脂組成物の色調がさらに優れることになるために好ましい。また、シアン化ビニル単量体(a1)の70重量%以上を重合転化率が30重量%に達する以前に重合系内に添加することがより好ましい。
【0015】
また、芳香族ビニル系単量体(a2)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a3)およびこれらと共重合可能な他の単量体(a4)についても、それらの50重量%以上を、重合転化率が10重量%に達した後に添加するのが好ましく、60重量%以上を重合転化率が10重量%に達した後に添加するのがより好ましい。重合転化率が10重量%に達した後に50重量%以上の芳香族ビニル系単量体(a2)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a3)およびこれらと共重合可能な他の単量体(a4)を添加することによって、重合後期での系内のシアン化ビニル単量体濃度を低く抑えることができ、ビニル系共重合体(A)のアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合を低くすることができる。
【0016】
なお、ここでいう重合転化率とは、均一に混合した系内から未反応モノマーを測定し、仕込みモノマー量から未反応モノマー量を引いて転化しているポリマー量を算出し、全モノマー量に対して転化しているポリマー量の比率を計算したものである。
【0017】
本発明におけるゴム質含有グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体(b)の存在下に1種以上のビニル系単量体混合物(c)を含むものである。
【0018】
本発明におけるゴム質含有グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体(b)にビニル系単量体混合物(c)に含まれる単量体成分をグラフト重合させたものである。ゴム質重合体(b)の具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)、およびポリ(エチレン−アクリル酸メチル)などが挙げられ、これらは1種または2種以上の混合物で使用してもよいが、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、およびエチレン−プロピレンラバーの使用が耐衝撃性の点で好ましい。また、透明性の観点から、前記ビニル系共重合体(A)との屈折率差が0.03以内となるようなゴム質重合体(b)を選択することが好ましく、0.01以内となるように選択することがより好ましい。なお、ここでいう屈折率は、アッベ屈折計により測定された屈折率をいう。
【0019】
ゴム質重合体(b)の重量平均ゴム粒子径は、得られる透明熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、成形加工性、流動性および外観の点から、0.1〜1.5μmが好ましく、0.15〜1.2μmが好ましい。
【0020】
ゴム質含有グラフト共重合体(B)におけるゴム質重合体(b)の含有率には特に制限はないが、20〜80重量%が好ましく、35〜60重量%がより好ましい。ゴム質重合体(b)の含有率が20重量%未満では衝撃強度が低下することがあり、80重量%を越えると溶融粘度が上昇して成形性が悪くなることがある。
【0021】
ゴム質含有グラフト共重合体(B)のグラフト成分を構成するビニル系単量体混合物(c)は、本発明の透明熱可塑性樹脂組成物の透明性を阻害する単量体でない限りは特に制限はないが、優れた透明性を得るためには、上記ゴム質重合体(b)とグラフト成分の屈折率差が0.03以下になるようにするのが好ましく、0.01以下となるようにするのがより好ましい。
【0022】
ゴム質含有グラフト共重合体(B)のグラフト成分を構成するビニル系単量体混合物(c)に含まれる単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレンから1種または2種以上選択される芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタクリロニトリルから1種または2種以上選択されるシアン化ビニル系単量体およびメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸クロロメチルおよびメタクリル酸2−クロロエチルから1種または2種以上選択される不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体を挙げることができるが、特に芳香族ビニル系単量体としてスチレンまたはα−メチルスチレン、シアン化ビニル系単量体としてアクリロニトリル、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としてメタクリル酸メチルが好ましく含まれる。
【0023】
ゴム質含有グラフト共重合体(B)のグラフト率には制限はないが、耐衝撃性の点からは5〜150重量%、好ましくは10〜100重量%のものが使用される。
【0024】
ゴム質含有グラフト共重合体(B)の製造方法には制限ないが、好ましくは乳化重合法または塊状重合法が採用される。なかでも過度の熱履歴によるゴム成分の劣化、および着色を抑制するという点から、より好ましくは乳化重合法で製造される。
【0025】
本発明におけるゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物は、ビニル系共重合体(A)にゴム質含有グラフト共重合体(B)が分散してなる。ビニル系共重合体(A)とゴム質含有グラフト共重合体(B)との混合比には特に制限はないが、好ましくはビニル系共重合体(A)40〜90重量部、ゴム質含有グラフト共重合体(B)10〜60重量部、より好ましくはビニル系共重合体(A)50〜80重量部、ゴム質含有グラフト共重合体(B)20〜50重量部である(ここで、ビニル系共重合体(A)とゴム質含有グラフト共重合体(B)の合計量は100重量部。)。ゴム質含有グラフト共重合体(B)が10重量部未満であると、衝撃強度が低下する傾向となり、また、ゴム質含有グラフト共重合体(B)が60重量部を越えると、溶融粘度が上昇して成形加工性が悪化する傾向となる。なお、ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物は、ビニル系共重合体(A)とゴム質含有グラフト共重合体(B)を公知の方法に従って混合することで得られる。
【0026】
なお、本発明で用いられるゴム質含有グラフト共重合体(B)を構成するゴム質重合体(b)とゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分との屈折率の差は、本発明の透明熱可塑性樹脂組成物の透明性を阻害しない限りにおいては特に限定はないが、優れた透明性を得るためには0.03以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分とは、ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物をアセトンで抽出した後、遠心分離機などで固形分と分離した上澄み液に含まれる組成物である。なお、ゴム質重合体(b)とゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分との屈折率の差を0.03以下とする方法としては、ゴム質含有グラフト共重合体(B)のゴム質重合体(b)とグラフト成分の屈折率差を0.03以下とし、かつゴム質重合体(b)とビニル系共重合体(A)の屈折率差を0.03以下とする方法が挙げられる。
【0027】
本発明は、前記ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物にアクリル系架橋重合体微粒子(C)を配合することを特徴とする。本発明におけるアクリル系架橋重合体微粒子(C)とは、アクリル系単量体を主成分とし、多官能性単量体により架橋重合したものである。アクリル系単量体の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアルキル基が直鎖状、分岐鎖状または環状のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等のアルキル基が直鎖状または分岐鎖状のアクリル酸アルキルエステル、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸系単量体、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の共重合可能な二重結合を有する他の単量体が挙げられ、これらは単独または併用して用いられるが、メタクリル酸メチルを主成分とすることが好ましい。また、多官能性単量体の具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられ、これらは単独または併用して用いられる。なお、アクリル系架橋重合体微粒子(C)は、三菱レイヨン株式会社から“メタブレン”(商標)、積水化成品工業株式会社から“テクポリマー”(商標)として入手が可能である。
【0028】
アクリル系架橋重合体微粒子(C)を構成するアクリル系単量体の割合は、50〜99.5重量%が好ましく、多官能性単量体の割合は、0.5〜50重量%が好ましい。
【0029】
アクリル系架橋重合体微粒子(C)の粒子径は、重量平均粒子径で1〜10μmである。重量平均粒子径が上記の範囲未満では充分な光拡散性が得られない。また上記の範囲を超えると耐衝撃性の低下と全光線透過率が著しく低下する傾向となる。なお、アクリル系架橋重合体粒子の重量平均粒子径はベックマン・コールター社の粒度分布測定装置などのレーザー回析散乱法により測定することができる。
【0030】
アクリル系架橋重合体微粒子(C)の配合量は、ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、0.3〜3.0重量部である。配合割合が上記の範囲未満では充分な光り拡散性が得られない。また上記の範囲を超えると耐衝撃性の低下と全光線透過率が著しく低下する傾向となる。
【0031】
アクリル系架橋重合体微粒子(C)は公知の方法に従って製造することができ、例えば、特開2006−299037号公報の段落[0061]〜[0066]に記載の方法に準じて製造することができる。
【0032】
前記(A)〜(C)の成分を配合してなる本発明の透明熱可塑性樹脂組成物を成形して得られた成形品は、磨りガラスのような風合いとして高度な光透過性と光拡散性を併せ持つことが求められる。したがって本発明の透明熱可塑性樹脂組成物は、高度な光透過性としては23℃で測定した厚み3mmにおける全光線透過率が75%以上であることが必要であって、好ましくは80%以上であり、光拡散性については同じく23℃で測定した厚み3mmにおけるヘイズ値が75%以上であることが必要であって、好ましくは80%以上である。なお、全光線透過率はISO13468に準拠して測定される値であり、ヘイズ値はISO14782に準拠して測定される値である。
【0033】
また、本発明の透明熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分中に存在するアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合は、アセトン可溶分に対し10重量%以下であることが好ましい。アクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスとは、下記式(1)に表される、アセトン可溶分中に含有される共重合体中のセグメントであり、かかるセグメントを有する共重合体が高温にさらされる状態では下記式(2)に示す分子内環化反応が進むため、着色の原因となる。
【0034】
【化1】

【0035】
【化2】

【0036】
アクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合が、上記アセトン可溶分に対し10重量%を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融時の色調安定性が悪くなる。上記3連シーケンスの割合は、色調安定性の点から、好ましくは8重量%未満、さらに好ましくは5重量%以下である。このようなアセトン可溶分中のアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合が10重量%以下に制御された熱可塑性樹脂組成物は、例えば上記のようにアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合を10重量%以下に制御したビニル系共重合体(A)を用いることにより達成される。
【0037】
その他、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、目的とする光透過性、光拡散性、耐衝撃性を阻害しない限りにおいて、ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系、含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンソフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系などの光安定剤などの各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類などの可塑剤、臭素化化合物やリン酸エステル、赤燐等の各種難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの難燃助剤、アルキルカルボン酸やアルキルスルホン酸の金属塩、カーボンブラック、顔料又は染料などを添加することもでき、また、各種強化剤や充填材を配合することもできる。
【0038】
本発明の透明熱可塑性樹脂組成物は、構成成分を溶融混合して得ることができる。溶融混合方法に関しては、特に制限は無いが、加熱装置、ベントを有するシリンダーで単軸または二軸のスクリューを使用して溶融混合する方法などが採用可能である。溶融混合の際の加熱温度は、通常200〜300℃の範囲から選択されるが、本発明の目的を損なわない範囲で、溶融混合時の温度勾配等を自由に設定することも可能である。
【0039】
本発明の透明熱可塑性樹脂組成物の成形方法については特に限定されないが、射出成形により好適に成形される。射出成形は、好ましくは200〜280℃の通常成形する温度範囲で実施することができる。また、射出成形時の金型温度は、好ましくは30〜80℃の通常成形に使用される温度範囲である。本発明の成形品は、磨りガラスに似た特性、つまり、高度な光透過性と光拡散性を有することを特徴とする。また、本発明の成形品は高度な耐衝撃性を有することを特徴とし、ISO179に準拠したシャルピー衝撃強度において3.0kJ/m以上が好ましく、より好ましくは3.5kJ/m以上、更に好ましくは4.0kJ/mである。
【実施例】
【0040】
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例および比較例を挙げるが、これら実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、ここで特に断りのない限り「部」は重量部を示す。熱可塑性樹脂組成物の樹脂特性の分析方法を下記する。
【0041】
(1)重量平均ゴム粒子径
「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt,P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法(アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める)に準じて測定した。
【0042】
(2)グラフト率
ゴム質含有グラフト共重合体(B)の所定量(m;約1g)にアセトン200mlを加え、70℃の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、この不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、その重量(n)を測定した。グラフト率は下記式より算出した。ここでLはゴム質含有グラフト共重合体(B)のゴム含有率である。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100。
【0043】
(3)重合転化率
株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフ(GC−14A)を用いて未反応モノマー含有量を測定した。重合転化率は下記式により算出した
重合転化率(重量%)=(仕込みモノマー量−未反応モノマー量)/全モノマー量×100。
【0044】
(4)ビニル系共重合体(A)の屈折率
測定するサンプルに1−ブロモナフタレンを少量滴下し、アッベ屈折計を用いて次の条件で屈折率を測定した。
・測定光源:ナトリウムランプD線
・測定温度:20℃。
【0045】
(5)ゴム質含有グラフト共重合体(B)のグラフト成分のアセトン屈折率
80℃の温度で4時間真空乾燥を行ったゴム質含有グラフト共重合体(B)の1gにアセトン200mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物を80℃の温度で4時間真空乾燥したサンプルに、1−ブロモナフタレンを少量滴下し、アッベ屈折計を用いて次の条件で屈折率を測定した。
・測定光源:ナトリウムランプD線
・測定温度:20℃。
【0046】
(6)ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分の屈折率測定
ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物のサンプル1gにアセトン100mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物を80℃の温度で4時間真空乾燥したサンプルに、1−ブロモナフタレンを少量滴下し、アッベ屈折計を用いて次の条件で屈折率を測定した。
・測定光源:ナトリウムランプD線
・測定温度:20℃。
【0047】
(7)透明熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分中のアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンス割合
熱可塑性樹脂組成物のサンプル1gにアセトン100mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物を80℃の温度で4時間真空乾燥したもの(アセトン可溶分)を用いて、13C−NMRに現れるアクリロニトリル単量体単位のα−炭素のシグナルシフトが隣接モノマー種の違いで若干異なることを利用し、3連シーケンスの割合をそのシグナル積分値から定量し、全単量体単位中、3連シーケンス中央のアクリロニトリル単量体単位の重量分率として表示した。測定条件は、次のとおりである。
・装置:JEOL JNM−GSX400型
・観測周波数:100.5MHz
・溶媒:DMSO−d
・濃度:445mg/2.5mL
・化学シフト基準:MeSi
・温度:110℃
・観測幅:20000Hz
・データ点:32K
・flip angle:90°(21μs)
・pulsedelaytime:5.0s
・積算回数:7400または8400
・デカップリング:gated decoupling(without NOE)アクリロニトリルシーケンスの帰属(A:アクリロニトリル、S:スチレン):−A−A−A−118.6〜119.2ppm、−A−A−S−119.3〜120.2ppm、−S−A−S−120.2〜121.3ppm。
【0048】
(8)ビニル系共重合体(A)中のアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンス割合
ビニル系共重合体(A)を試料として用いたこと以外は、上記(7)と同じ操作により求めた。
【0049】
(9)タイプA試験片作成
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度230℃に設定した住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機内に充填し、ISO294に準拠し、射出成形によりタイプA試験片を得た。
【0050】
(10)シャルピー衝撃強度
上記タイプA試験片を用い、ISO2818に準拠してVノッチ加工を施した試験片を用い、ISO179に準拠したシャルピー衝撃強度(kJ/m)を測定した。この値が大きいほど、耐衝撃性が優れる。
【0051】
(11)透明熱可塑性樹脂組成物の全光線透過率、ヘイズ値
80℃の温度の熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度230℃に設定したす住友重機械工業(株)製SE−50DU成形機内に充填し、即時に成形した角板成形品(厚さ3mm)の全光線透過率をISO13468に準拠して測定し、同じ角板成形品のヘイズ値をISO14782に準拠して測定した。
【0052】
(12)樹脂組成物の色調(YI値):
上記(11)と同じ試験片を用い、JIS K7103に準拠して測定した。
【0053】
[参考例1 ビニル系共重合体(A)の製造]
[A−1]
20リットルのオートクレーブに0.05部のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)を165部の純水に溶解した溶液を入れて400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、アクリロニトリル8部、スチレン13部、メタクル酸メチル9部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部およびt−ドデシルメルカプタン0.5部の混合溶液を反応系を撹拌しながら添加し、60℃にて共重合反応を開始し、30分かけて70℃まで昇温した。重合開始から30分後、メタクリル酸メチルを供給ポンプを使用して20部添加した。なお、追添加開始時の重合転化率を測定した結果16重量%であった。重合開始から60分後、供給ポンプを使用して、スチレン5部、メタクリル酸メチル20部を反応系に添加した。さらに重合開始から90分後、供給ポンプを使用してスチレン5部、メタクリル酸メチル20部を反応系に添加した。全モノマーの添加終了後30分かけて100℃に昇温した。到達後30分間100℃でコントロールした後、冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行って、ビーズ状共重合体を得た。得られたビニル系共重合体(A−1)のアクリロニトリル共重合量は8重量%、屈折率は1.516、3連シーケンス割合は2重量%であった。
【0054】
[A−2]
上記A−1の条件のうち、混合溶液におけるアクリロニトリルの量を10部、スチレンの量を13部、メタクリル酸メチルを13部とした。重合開始から30分後にメタクリル酸メチルを供給ポンプを使用して18部添加した。なお、追添加開始時の重合転化率を測定した結果15重量%であった。重合開始から60分後、供給ポンプを使用して、スチレン5部、メタクリル酸メチル18部を反応系に添加した。さらに重合開始から90分後、供給ポンプを使用してスチレン5部、メタクリル酸メチル18部を反応系に添加した。全モノマーの添加終了後30分かけて100℃に昇温した。到達後30分間100℃でコントロールした後、冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行って、ビーズ状共重合体を得た。その後はA−1と同様の方法で重合を行い、ビーズ状共重合体を得た。得られたビニル系共重合体(A−2)のアクリロニトリル共重合量は10重量%、屈折率は1.517、3連シーケンス割合は2重量%であった。
【0055】
[A−3]
上記A−1の条件のうち、混合溶液におけるアクリロニトリルの量を15部、スチレンの量を13部、メタクリル酸メチルを13部とした。重合開始から30分後にメタクリル酸メチルを供給ポンプを使用して17部添加した。なお、追添加開始時の重合転化率を測定した結果14重量%であった。重合開始から60分後、供給ポンプを使用して、スチレン4部、メタクリル酸メチル17部を反応系に添加した。さらに重合開始から90分後、供給ポンプを使用してスチレン4部、メタクリル酸メチル17部を反応系に添加した。全モノマーの添加終了後30分かけて100℃に昇温した。到達後30分間100℃でコントロールした後、冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行って、ビーズ状共重合体を得た。その後はA−1と同様の方法で重合を行い、ビーズ状共重合体を得た。得られたビニル系共重合体(A−3)のアクリロニトリル共重合量は15重量%、屈折率は1.516、3連シーケンス割合は2重量%であった。
【0056】
[A−4]
上記A−1の条件のうち、混合溶液におけるアクリロニトリルの量を20部、スチレンの量を14部、メタクリル酸メチルを12部とした。重合開始から30分後にメタクリル酸メチルを供給ポンプを使用して16部添加した。なお、追添加開始時の重合転化率を測定した結果12重量%であった。重合開始から60分後、供給ポンプを使用して、スチレン3部、メタクリル酸メチル16部を反応系に添加した。さらに重合開始から90分後、供給ポンプを使用してスチレン3部、メタクリル酸メチル16部を反応系に添加した。全モノマーの添加終了後30分かけて100℃に昇温した。到達後30分間100℃でコントロールした後、冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行って、ビーズ状共重合体を得た。その後はA−1と同様の方法で重合を行い、ビーズ状共重合体を得た。得られたビニル系共重合体(A−4)のアクリロニトリル共重合量は20重量%、屈折率は1.516、3連シーケンス割合は3重量%であった。
【0057】
[A−5]
上記A−1の条件のうち、混合溶液におけるアクリロニトリルの量を23部、スチレンの量を14部、メタクリル酸メチルを12部とした。重合開始から30分後にメタクリル酸メチルを供給ポンプを使用して15部添加した。なお、追添加開始時の重合転化率を測定した結果11重量%であった。重合開始から60分後、供給ポンプを使用して、スチレン3部、メタクリル酸メチル15部を反応系に添加した。さらに重合開始から90分後、供給ポンプを使用してスチレン3部、メタクリル酸メチル15部を反応系に添加した。全モノマーの添加終了後30分かけて100℃に昇温した。到達後30分間100℃でコントロールした後、冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行って、ビーズ状共重合体を得た。その後はA−1と同様の方法で重合を行い、ビーズ状共重合体を得た。得られたビニル系共重合体(A−5)のアクリロニトリル共重合量は23重量%、屈折率は1.517、3連シーケンス割合は3重量%であった。
【0058】
[参考例2 ゴム質含有グラフト共重合体(B)の製造]
[B−1]
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.3μm)50部(固形分換算)、純水200部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第一鉄(0.01部)およびリン酸ナトリウム0.1部を反応容器に仕込み、窒素置換後65℃に温調し、撹拌下スチレン11.5部、アクリロニトリル4.0部、メタクリル酸メチル34.5部およびn−ドデシルメルカプタン0.3部の混合物を4時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25部、乳化剤であるラウリン酸ナトリウム2.5部および純水25部の混合物を5時間かけて連続滴下し、滴下終了後さらに1時間保持して重合を終了させた。重合を終了したラテックスを1.5%硫酸で凝固し、次いで水酸化ナトリウムで中和、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体を得た。得られたグラフト共重合体(B−1)のグラフト成分のグラフト率は47重量%、使用したポリブタジエンラテックスの屈折率は1.516、グラフト成分の屈折率は1.518であった。
【0059】
[B−2]
上記B−1の条件のうち、ゴム質重合体にポリブチルアクリレートラテックスを使用した他はB−1と同様の方法でパウダー状グラフト共重合体を得た。得られたグラフト共重合体(B−2)のグラフト成分のグラフト率は52重量%、使用したポリブチルアクリレートラテックスの屈折率は1.463、グラフト成分の屈折率は1.517であった。
【0060】
[参考例3 アクリル系架橋重合体微粒子(C)]
[C−1]三菱レイヨン(株)製“メタブレンF−444”重量平均粒子径5μm
[C−2]積水化成品工業(株)製“テクポリマーMBX−8”重量平均粒子径8μm
[C−3]積水化成品工業(株)製“テクポリマーMBX−50”重量平均粒子径50μm。
【0061】
[実施例1〜6]
上記参考例で製造したビニル系共重合体(A−2)、(A−3)または(A−4)、ゴム質含有グラフト共重合体(B−1)、アクリル系架橋重合体微粒子(C−1)または(C−2)を、表1に示す配合割合としてヘンシェルミキサーで混合した後、40mmφ押し出し機により、押し出し温度230℃でガット状に押し出しペレット化した。次いで、得られたペレットを用いて、成形温度230℃、金型温度40℃で射出成形し、評価用の試験片を作製した。これらの試験片について各物性を測定した結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例1〜7の結果から明らかなように、本発明の透明熱可塑性樹脂組成物は、全光線透過率およびヘイズ値が要求特性を満たすのに加えて、耐衝撃性および色調(YI)に優れるものであった。
【0064】
[比較例1〜7]
上記参考例で製造したビニル系共重合体(A−1)、(A−3)または(A−5)、ゴム質含有グラフト共重合体(B−1)または(B−2)、アクリル系架橋重合体微粒子(C−1)または(C−3)を、表2に示す配合割合としてヘンシェルミキサーで混合した後、40mmφ押し出し機により、押し出し温度230℃でガット状に押し出しペレット化した。次いで、得られたペレットを用いて、成形温度230℃、金型温度40℃で射出成形し、評価用の試験片を作製した。これらの試験片について各物性を測定した結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2の結果から判るように、比較例1は透明熱可塑性樹脂組成物中のアクリル系架橋重合体粒子(C)の配合量が本発明の範囲より少なく、本発明に求めるヘイズ値を満足できていなかった。
【0067】
また、比較例2は透明熱可塑性樹脂組成物中のアクリル系架橋重合体粒子(C)の配合量が本発明の範囲より多く、本発明に求める全光線透過率を満足できていなかった。
【0068】
また、比較例3は、ヘイズ値、耐衝撃性および色調は優れるが、本発明に求める全光線透過率を満足できていなかった。
【0069】
また、比較例4はゴム質含有グラフト共重合体(B)を含まないため、全光線透過率、HAZEおよび色調は満足しているが、耐衝撃性が劣っていた。
【0070】
また、比較例5はビニル系共重合体(A)を構成するシアン化ビニル系単量体(a1)の含有率が本発明の範囲より少ないため、耐衝撃性が劣っていた。
【0071】
また、比較例6はビニル系共重合体(A)を構成するシアン化ビニル系単量体(a1)の含有率が本発明の範囲より多いため、耐衝撃性は満足しているが、色調が劣っていた。
【0072】
また、比較例7は透明熱可塑性樹脂組成物中のアクリル系架橋重合体粒子(C)の重量平均粒子径が本発明から外れるため、全光線透過率ならびに耐衝撃性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は光透過性と光拡散性の両特性を高度に満足し、かつ耐衝撃性に優れるため、磨りガラスに似た風合いが求められる家庭用電気機器、OA機器、一般雑貨等の外観部品の材料として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシアン化ビニル系単量体(a1)を10〜20重量%を含むビニル系単量体混合物(a)を共重合してなるビニル系共重合体(A)にゴム質含有グラフト共重合体(B)が分散してなるゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、重量平均粒子径が1〜10μmのアクリル系架橋重合体微粒子(C)を0.3〜3.0重量部を配合してなり、23℃で測定した厚み3mmにおける全光線透過率とヘイズ値が共に75%以上であることを特徴とする、透明熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ビニル系単量体混合物(a)が、シアン化ビニル系単量体(a1)10〜20重量%、芳香族ビニル系単量体(a2)5〜40重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a3)30〜80重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体(a4)0〜40重量%を含有する、請求項1に記載の透明熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ゴム質含有グラフト共重合体(B)が、ゴム質重合体(b)の存在下で1種以上のビニル系単量体をグラフト重合してなる、請求項1または2に記載の透明熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ゴム質重合体(b)と、前記ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分との屈折率との差が0.03以内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透明熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ゴム強化透明熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分中に存在するアクリロニトリル単量体単位の3連シーケンスの割合が、アセトン可溶分に対し10重量%以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の透明熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の透明熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。

【公開番号】特開2013−87257(P2013−87257A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231621(P2011−231621)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】