説明

透明被膜形成用塗料および透明被膜付基材

【課題】耐薬品性、耐水性、撥水性、撥油性、耐指紋付着性に優れ、しかも前記ブリードアウトが低減でき、これらの特性がバランスよく優れた透明被膜を提供しうる塗料を提供する。
【解決手段】(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂と、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂と、(3)1官能シリコン樹脂とからなるマトリックス形成成分と
溶媒とからなり、得られる透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有
量が、固形分として10〜98質量%の範囲にあり、(2)2官能有機樹脂および/または
2官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.2〜10質量%の範囲にあり、(3)1官
能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.02〜5質量%の範囲となるように含有する透明被膜形成用塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度、密着性、透明性、ヘーズ等に優れるとともに撥水性、耐水性、耐指紋付着性、耐薬品性等にバランスよく優れた透明被膜を形成するための塗料および透明被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面、表示装置等の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート機能を有する透明被膜を形成することが知られている。具体的には透明性を有する有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック、表示装置基材等の表面に形成することが行われている。この時、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに基材との密着性、耐擦傷性等を向上させることが行われている。
【0003】
しかしながら、透明被膜には透明性、基材との密着性、膜強度、耐擦傷性等の他に、耐薬品性、耐水性、撥水性、耐指紋付着性等が求められている。例えば、水滴が付着した場合、水滴跡が残らないことや(耐水性)、水性ペン、油性ペン等で落書きがしにくく、落書きされても容易に拭き取ることができること(耐水性、撥水性、撥油性)、さらに、指が触れても指紋が付着しにくく、指紋が付着しても容易に拭き取ることができること(耐指紋付着性)が求められている。
【0004】
従来、撥水性、撥油性、耐水性、耐指紋付着性等を付与するために、透明被膜に、疎水性基を有する樹脂、フッ素含有樹脂等を用いることが行われている。(特許文献1:特開平10−40834号公報。)
【特許文献1】特開平10−40834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、撥油性、耐指紋付着性がある程度、改良できるものの、基材との密着性、膜強度が不充分であったり、撥水性が不充分となる場合があった。
また、疎水性基を有する樹脂、フッ素含有樹脂を一部混合して用いても、これらの樹脂が透明被膜から脱離(ブリードアウトといわれている)し、充分な耐薬品性、耐水性、撥水性、撥油性、耐指紋付着性等が得られない場合や、得られたとしても経時的に性能が低下する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、このような問題点に鑑み鋭意検討した結果、3官能以上の官能基を有する有機樹脂を主成分とし、これに2官能有機樹脂と1官能シリコン樹脂を特定の割合で混合して使用することによって耐薬品性、耐水性、撥水性、撥油性、耐指紋付着性に優れ、しかも前記ブリードアウトが低減でき、これらの特性がバランスよく優れた透明被膜を形成できることを見いだして本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の構成は以下の通りである。
[1](1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂と、
(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂と、
(3)1官能シリコン樹脂と
からなるマトリックス形成成分と溶媒とからなり、
得られる透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有量が、固形分
として10〜98質量%の範囲にあり、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.2〜10質量%の範囲にあり、(3)1官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.02〜5質量%の範囲となるように含有することを特徴とする透明被膜形成用塗料。
[2]前記(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂がモノマーであり、
前記(3)1官能シリコン樹脂がアクリル変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、グリシジル変性ポリシロキサン、ポリエステル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサンまたはこれらの混合物である[1]の透明被膜形成用塗料。
[3]前記(3)1官能シリコン樹脂の重量(W3)と、前記(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の重量(W2)との重量比(W3)/(W2)が0.05〜1の
範囲にある[1]または[2]の透明被膜形成用塗料。
[4]さらに平均粒子径が5〜300nmの範囲にある金属酸化物微粒子を、得られる透明
被膜中に固形分として10〜80質量%の範囲で含有する[1]〜[3]の透明被膜形成用塗料。
[5]全固形分濃度が5〜50質量%の範囲にある[1]〜[4]の透明被膜形成用塗料。
[6]基材と、基材上に形成された透明被膜とからなり、
該透明被膜が(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂と、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂と、(3)1官能シリコン樹脂とからなるマトリックス成分とからなり、透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有量が固形分として10〜98質量%の範囲にあり、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.2〜10質量%の範囲にあり、(3)1官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.02〜5質量%の範囲にある透明被膜付基材。
[7]透明被膜がさらに、平均粒子径が5〜300nmの範囲にある金属酸化物微粒子を固
形分として10〜80質量%の範囲で含有する[6]の透明被膜付基材。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、基材との密着性、耐擦傷性、膜強度、透明性等に優れるとともに長期にわたって優れた耐薬品性、耐水性、撥水性、耐指紋付着性を維持することのできる透明被膜を形成するための透明被膜形成用塗料および透明被膜付基材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、まず、本発明に係る透明被膜形成用塗料について説明する。
[透明被膜形成用塗料]
本発明に係る透明被膜形成用塗料は、(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂と、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂と、(3)1官能シリコン樹脂とからなるマトリックス形成成分と溶媒とからなり、得られる透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有量が固形分として10〜98質量%の範囲にあり、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.2〜10質量%の範囲にあり、(3)1官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.02〜5質量%の範囲となるように含有することを特徴としている。
【0010】
マトリックス形成成分
本発明に用いるマトリックス形成成分では、主成分として、(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂を用いる。
【0011】
(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂
官能基としては、(メタ)アクリル基やエポキシ基などが挙げられる。有機樹脂としては、アクリル系樹脂(アクリレート樹脂)が使用される。
【0012】
3官能以上の官能基を有する有機樹脂として、具体的には、ペンタエリスリトールトリ
アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の3官能アクリレート樹脂、ペンタエリストールテトラアクリレート等の4官能アクリレート樹脂、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート等の6官能アクリレート樹脂、ペンタエリスリトールヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等の3官能ウレタンアクリレート樹脂、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルアクリレート等のエポキシ基含有4官能アクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物等のエポキシ基含有多官能アクリレート樹脂等が挙げられ、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0013】
3官能以上の官能基を有する有機樹脂は、モノマーを用いることもできるが、2量体以上のオリゴマー、ポリマーを用いることもできる。
(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂と
2官能有機樹脂を構成する官能基としては、(メタ)アクリル基、エポキシ基などがあげられる。また、樹脂としてはアクリル系樹脂(アクリレート樹脂)が挙げられる。このように、2官能有機樹脂としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等のグリコール系アクリレートが挙げられる。さらに、1.4−ブタンジオールジメタクレート、1.6−ヘキサンジオールジメタクレート、1.9−ノナンジオールジメタクレート、1.10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、1.9−ノナンジオールジアクレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、2-ヒドロキシ−3-アクリロイロキシプロピルメタクレート等の非グリコール系アクリレート
が挙げられ、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0014】
2官能シリコン樹脂としては、下記式(1)で表されるものが用いられる。
【0015】
【化1】

(但し、R1〜R5は置換、非置換の炭素数1〜6のアルキル基、X1、X2はアクリル基、メタクリル基、グリシジル基、を表し、同じであってもよく、異なっていてもよい。nは1〜10の正数)
具体的には、ジアクリレート変性ポリシロキサン、ジメタクリル変性ポリシロキサン、ジグリシジル変性ポリシロキサン、ジポリエステル変性ポリシロキサン、ジポリエーテル変性ポリシロキサンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0016】
このとき、2官能有機樹脂、2官能シリコン樹脂はモノマーを用いることが好ましい。
モノマーを用いると、前記3官能以上の官能基を有する有機樹脂および後述する1官能シリコン樹脂との結合が促進されるためか、撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等に優れ、1官能シリコン樹脂の脱離(以下、ブリードアウトということがある)を抑制することができ、撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性を長期に維持することができる。
【0017】
(3)1官能シリコン樹脂
1官能シリコン樹脂としては、下記式(2)で表されるものが用いられる。
【0018】
【化2】

(但し、R1〜R5は置換、非置換の炭素数1〜3のアルキル基、Xはアクリル基、メタクリル基、グリシジル基、を表す。nは1〜20の整数))
具体的には、アクリル変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、グリシジル変性ポリシロキサン、ポリエステル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサンなどおよびこれらの混合物が挙げられる。たとえば、片末端(メタ)アクリルシリコンオイル、片末端グリシジルシリコンオイルなどがあげられる。またアクリル系シリコン樹脂モノマーまたはそのポリマー(シリコンオイル)、エポキシ系シリコン樹脂モノマーまたはそのポリマー(シリコンオイル)、ポリエステル系シリコン樹脂モノマーまたはそのポリマー(シリコンオイル)も好適である。
【0019】
塗料組成
透明被膜形成用塗料中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の濃度は、得られる透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有量が固形分として10〜98質量%、さらには30〜95質量%の範囲となるようにすることが好ましい。
【0020】
(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の量が少ないと、得られる透明被膜の基材との密着性、強度、耐擦傷性等が不充分となることがある。(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の量が多すぎると、(2)および/または(3)のマトリックス形成成分が少ないために充分な撥水性、撥油性、耐指紋付着性等が得られない場合がある。
【0021】
透明被膜形成用塗料中の(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の濃度は、得られる透明被膜中の2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.2〜10質量%、さらには0.5〜8質量%の範囲となるようにすることが好ましい。
【0022】
2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の量が少ないと、(3)1官能シリコン樹脂との結合が不充分となり、撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が不充分となる場合があり、また、1官能シリコン樹脂の脱離(ブリードアウトということがある)が起きて撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が経時的に低下する場合がある。2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の量が多すぎると、(3)1官能シリコン樹脂との結合が増すこともなく、このためさらに撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が向上することもなく、1官能シリコン樹脂の脱離(ブリードアウト)が抑制されることもないが、却って基材との密着性、膜強度等が不充分となる場合がある。
【0023】
透明被膜形成用塗料中の(3)1官能シリコン樹脂の濃度は、得られる透明被膜中の1官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.01〜5質量%、さらには0.1〜3質量%の範囲となるようにすることが好ましい。1官能シリコン樹脂の量が少ないと、透明被膜の膜厚によっても異なるが、撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が不充分となる場合がある。1官能シリコン樹脂の含有量が多すぎても、さらに撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が向上することもなく、却って、基材との密着性、膜強度等が不充
分となる場合がある。
【0024】
上記した(3)1官能シリコン樹脂の重量(W3)と前記(2)2官能有機樹脂および
/または2官能シリコン樹脂の重量(W2)との重量比(W3)/(W2)が0.05〜1
、さらには0.1〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0025】
前記重量比(W3)/(W2)が小さすぎると、撥水性、撥油性、耐薬品性、耐指紋付着性等が不充分となる場合がある。前記重量比(W3)/(W2)が大きすぎても、耐水性、撥油性、耐薬品性、耐指紋付着性等が向上することもなく、1官能シリコン樹脂の脱離が起きて撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が経時的に低下する場合がある。
【0026】
金属酸化物微粒子
本発明の透明被膜形成用塗料には、従来公知の金属酸化物微粒子を配合して用いることができる。金属酸化物微粒子は、透明被膜に、さらに密着性、強度を付与したり、さらに帯電防止性能等を付与するために添加される。
【0027】
金属酸化物微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア等の他、酸化錫、SbまたはPがドープされた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタン等の導電性金属酸化物微粒子も好適に用いることができる。
【0028】
また、金属酸化物微粒子は、従来公知の方法によりシランカップリング剤処理等の分散性を高める処理をして用いることもできる。
金属酸化物微粒子は平均粒子径が5〜300nm、さらには10〜200nmの範囲にあることが好ましい。金属酸化物微粒子が小さすぎると、透明被膜形成用塗料中で粒子が凝集しやすくなったり、得られる透明被膜の基材との密着性、膜強度等が不充分になったり、導電性微粒子の場合は粒界抵抗が大きくなるため、得られる透明被膜の帯電防止性能が不充分となる場合がある。金属酸化物微粒子が大きすぎると、得られる透明被膜の透明性が低下したり、ヘーズが高くなる場合がある。また、導電性金属酸化物微粒子の場合は透明被膜中で導電パスを形成しにくく、帯電防止性能が不充分となる場合がある。
【0029】
金属酸化物微粒子を含む場合には、透明被膜形成用塗料中の金属酸化物微粒子の濃度は、得られる透明被膜中の金属酸化物微粒子の含有量が固形分として10〜80質量%、さらには20〜60質量%の範囲となるようにすることが好ましい。
【0030】
得られる透明被膜中の金属酸化物微粒子の量を多くしすぎると、マトリックス成分が少ないために基材との密着性、膜強度、耐擦傷性が不充分となる場合がある。
透明被膜形成用塗料の全固形分濃度は5〜50質量%、さらには10〜45質量%の範囲にあることが好ましい。透明被膜形成用塗料の全固形分濃度が少ないと、1回の塗布で膜厚が所望の膜厚の透明被膜を得ることが困難な場合があり、繰り返し塗布、乾燥を繰り返すと、得られる透明被膜の硬度や耐擦傷性が不充分となったり、ヘーズあるいは外観が悪くなったり、生産性、製造信頼性等が低下する。透明被膜形成用塗料の全固形分濃度が多すぎると、塗料の粘度が高くなり、塗布性が低下したり、得られる透明被膜のヘーズが高くなったり、表面粗さが大きくなり耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0031】
重合開始剤
本発明では、マトリックス形成成分、必要に応じて用いる金属酸化物微粒子とともに重合開始剤が含まれていてもよい。重合開始剤としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフ
ィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2、4、4−トリメチル-ペンチルフ
ォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ-メチル-2-メチル-フェニル-プロパン-1-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニ
ル-ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、有機樹脂の重量に対して、2〜15モル、さらには4〜10モルの範囲で含まれていることが望ましい。
【0032】
溶媒
本発明に用いる溶媒としては前記マトリックス形成成分、重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに金属酸化物微粒子を均一に分散することができる従来公知の溶媒を用いることができる。
【0033】
具体的には、水;メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプルピル、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセテート等のエステル類、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールものエチルエーテルなどのエーテル類を含む親水性溶媒、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールものアセタートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;トルエン等極性溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0034】
このような透明被膜形成塗料を用いた透明被膜の形成方法は、ディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
得られた透明被膜付基材の透明被膜の膜厚は、30nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。
【0035】
[透明被膜付基材]
本発明に係る透明被膜付基材は、基材と、基材上に形成された透明被膜とからなる。該透明被膜が、(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂と、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂と、(3)1官能シリコン樹脂とからなるマトリックス成分とからなり、透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有量が固形分として10〜98質量%の範囲にあり、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.2〜10質量%の範囲にあり、(3)1官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.02〜5質量%の範囲にあることを特徴としている。
【0036】
基材
本発明に用いる基材としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等があげられる。中でも樹脂系基材は好適に用
いることができる。
【0037】
透明被膜
透明被膜は(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂と、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂と、(3)1官能シリコン樹脂とからなるマトリックス成分とからなっている。
【0038】
3官能以上の官能基を有する有機樹脂、2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂および1官能シリコン樹脂としては、前記したと同様の樹脂を用いるが、透明被膜中ではこれら樹脂が重合して硬化している。
【0039】
透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有量が固形分として10〜98質量%、さらには30〜95質量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有量が少ないと、得られる透明被膜の基材との密着性、強度、耐擦傷性等が不充分となることがある。また透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有量が多すぎても、後述する(2)および/または(3)のマトリックス成分が少なくなるために充分な撥水性、撥油性、耐指紋付着性等が得られない場合がある。
【0040】
透明被膜中の(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の含有量が固形分
として0.2〜10質量%、さらには0.5〜8質量%の範囲にあることが好ましい。透明被膜中の(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の含有量が少ないと、
後述する(3)1官能シリコン樹脂との結合が不充分となり、撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が不充分となる場合があり、また、1官能シリコン樹脂の脱離(ブリードアウトということがある)が起きて撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が経時的に低下する場合がある。透明被膜中の(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコ
ン樹脂の含有量が多すぎても、(3)1官能シリコン樹脂との結合が増すこともなく、このためさらに撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が向上することもなく、1官能シリコン樹脂の脱離(ブリードアウト)が抑制されることもない。さらに、基材との密着性、膜強度等が不充分となる場合がある。
【0041】
透明被膜中の(3)1官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.01〜5質量%、さ
らには0.1〜3質量%の範囲にあることが好ましい。透明被膜中の(3)1官能シリコン
樹脂の含有量が少ないと、透明被膜の膜厚によっても異なるが、撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が不充分となる場合がある。透明被膜中の(3)1官能シリコン樹脂の
含有量が多すぎても、さらに撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が向上することもなく、基材との密着性、膜強度等が不充分となる場合がある。
【0042】
上記した(3)1官能シリコン樹脂の重量(W3)と前記(2)2官能有機樹脂および
/または2官能シリコン樹脂の重量(W2)との重量比(W3)/(W2)が0.05〜1
、さらには0.1〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0043】
前記重量比(W3)/(W2)が小さいと撥水性、撥油性、耐薬品性、耐指紋付着性等が不充分となる場合がある。
前記重量比(W3)/(W2)が前記範囲を越えて大きくしても、さらに耐水性、撥油性、耐薬品性、耐指紋付着性等が向上することもなく、1官能シリコン樹脂の脱離が起きて撥水性、撥油性、耐指紋付着性、耐薬品性等が経時的に低下する場合がある。
【0044】
金属酸化物微粒子
透明被膜には、必要に応じて金属酸化物微粒子が含まれていてもよく、具体的には前記
した通りである。透明被膜中の金属酸化物微粒子の含有量は固形分として10〜80質量%、さらには20〜60質量%の範囲にあることが好ましい。
【0045】
透明被膜の膜厚は0.3〜20μm、さらには0.5〜10μmの範囲にあることが好
ましい。透明被膜の膜厚が薄いと、充分な耐擦傷性が得られない場合がある。透明被膜の膜厚が厚すぎても、膜の収縮によりカーリングを生じたり、基材との密着性が不充分となる場合がある。
【0046】
なお、このような透明被膜は、上記した透明被膜形成用塗料を用いて上記方法で形成される。
以上のように本発明では、マトリックス成分として官能基の数が異なるとともに、反応性、撥油性、撥水性等の特性の異なる官能基を有する樹脂3種類を特定量配合して用いることにより、基材との密着性、耐擦傷性、膜強度、透明性等に優れるとともに長期にわたって優れた耐薬品性、耐水性、撥水性、撥油性、耐指紋付着性を維持することのできる透明被膜を形成するための透明被膜形成用塗料および透明被膜付基材を提供することができる。
【0047】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
透明被膜形成用塗料(1)の調製
3官能以上の有機樹脂として4官能アクリレート樹脂ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-4A)25.5gと、2官能
シリコン樹脂としてシリコンジアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL350)0.3gと、2官能有機樹脂として1、6−ヘサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製:カヤラッドKS−HDDA)1.5gと、1官能シリコン樹脂として片端末メタクリルシリコンオイル(信越化学工業(株)製:X−22−174DX)0.4gと、イソプロピルアルコール39.6gとイソプロピルグリコール15g、ブチルセロソルブ10gと光重合開始剤2.4.6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ビ−エーエスジャパン(株)製:ルシリンTPO)2.2gとを混合して透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0049】
透明被膜付基材(F-1)の製造
透明被膜形成用塗布液(1)を易接着PETフィルム(東洋紡製:コスモシャインA−4
300、厚さ188μm、全光線透過率92.0%、ヘーズ0.7%)にバーコーター法(バー#12)で塗布し、80℃で1分間乾燥した後、高圧水銀灯(120W/cm)を搭載した紫外線照射装置(日本電池製:UV照射装置CS30L21−3)で600mJ/cm2照射して硬化させ、透明被膜付基材(F-1)を調製した。このときの透明被膜の厚さ
は4μmであった。
【0050】
得られた透明被膜の全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(日本電色(株)製:NDH−2000)により測定し、結果を表1に示す。
さらに、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性、マジック拭取性を以下の方法および評価基準で評価し、結果を表1に示す。
【0051】
鉛筆硬度の測定
JIS−K−5400に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
【0052】
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で50回摺動し、膜の表面を
目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示す。
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0053】
密着性
透明被膜付基材(F-1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け1
00個の升目を作り、これにセロハンテープ(登録商標)を接着し、ついで、セロハンテープ(登録商標)を剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することによって密着性を評価した。結果を表1に示す。
残存升目の数95個以上 :◎
残存升目の数90〜94個:○
残存升目の数85〜89個:△
残存升目の数84個以下 :×
【0054】
撥水性
透明被膜の上に水滴を落とし、全自動接触角計(協和界面科学(株)製:DM700)を使用し透明被膜と水滴の接触角を測定した。
【0055】
耐指紋付着性
透明被膜表面に指紋を付け、指紋の付着状態を目視で観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示す。
指紋が認められない : ○
指紋が僅かに認められる : △
指紋が鮮明に認められる : ×
【0056】
指紋拭取性(指紋拭取試験)
透明被膜表面に指紋を付け、クリーンルーム用拭取り布(旭化成(株):ベンコツトン)で指紋付着透明被膜上を3往復し拭取った後、残存する指紋の有無を目視で観察した。結果を表1に示す。
指紋跡が認められない : ○
指紋跡が認められる : ×
【0057】
マジックハジキ性
マジック(三菱鉛筆(株)製:三菱油性マーカー細字ピースA-5E)で、透明被膜表面に線を引き、ハジキの状態を目視で観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示す。
インクが点状となり顕著にはじきが認められる : ○
線が殆どそのまま残存している : ×
【0058】
マジック拭取り性
マジック(三菱鉛筆(株)製:三菱油性マーカー細字ピースA-5E)で透明被膜表面に線を引き、キムワイプで拭取った後、以下の基準で評価し、結果を表1に示す。
マジック跡が消えた : ○
マジック跡が残った : ×
【0059】
[実施例2]
透明被膜形成用塗料(2)の調製
実施例1において、4官能アクリレート樹脂としてペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-4A)を12g、3官能アクリ
レート樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-3A)11.9g、2官能シリコン樹脂としてシリコンジアクリレー
ト(ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL350)0.7g、2官能有機樹脂として1、6−ヘサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製:カヤラッドKS−HDDA)2g、1官能シリコン樹脂として片端末メタクリルシリコンオイル(信越化学工業(株)製:X−22−174DX)1.1gとを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0060】
透明被膜付基材(F-2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-2)を調製した。
【0061】
透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0062】
[実施例3]
透明被膜形成用塗料(3)の調製
実施例1において、4官能アクリレート樹脂としてペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-4A)15.27g、3官能ア
クリレート樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-3A)11.9g、2官能シリコン樹脂としてシリコンジアクリ
レート(ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL350)0.1g、2官能有機樹脂として1、6−ヘサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製:カヤラッドKS−HDDA)0.4g、1官能シリコン樹脂として片端末メタクリルシリコンオイル(信越化学工業(株)製:X−22−174DX)0.03gとを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0063】
透明被膜付基材(F-3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-3)を調製した。透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密
着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0064】
[実施例4]
透明被膜形成用塗料(4)の調製
実施例1において、3官能アクリレート樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-3A)25.5gを用いた以外は
同様にして透明被膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0065】
透明被膜付基材(F-4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-4)を調製した。透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密
着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0066】
[実施例5]
透明被膜形成用塗料(4)の調製
実施例1において、6官能アクリレート樹脂としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-6A)15.5gを用いた以
外は同様にして透明被膜形成用塗布液(5)を調製した。
【0067】
透明被膜付基材(F-5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-5)を調製した。透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密
着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0068】
[実施例6]
透明被膜形成用塗料(6)の調製
3官能以上の有機樹脂のウレタンアクリレート樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:ウレタンアクリレートUA−306H)25.5gと、2官能有機樹脂としてトリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレート3EG−A)2gと、1官能シリコン樹脂として片端末グリシジルシリコンオイル(信越化学工業(株)製:X−22−173DX)0.2gと、イソプロピルアルコール39.6gとイソプロピルグリコール15g、ブチルセロソルブ10gと光重合開始剤2.4.6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ビ−エーエスジャパン(株)製:ルシリンTPO)2.2gとを混合して透明被膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0069】
透明被膜付基材(F-6)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-6)を調製した。透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密
着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0070】
[実施例7]
透明被膜形成用塗料(7)の調製
実施例1において、2官能有機樹脂としてシリコンジアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL350)0.5gと、2官能有機樹脂として1、6−ヘサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製:カヤラッドKS−HDDA)2gと、1官能シリコン樹脂として片端末メタクリルシリコンオイル(信越化学工業(株)製:X−22−174DX)1.3gとを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(7)を調製し
た。
【0071】
透明被膜付基材(F-7)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-7)を調製した。
透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0072】
[実施例8]
透明被膜形成用塗料(8)の調製
実施例1において、2官能有機樹脂としてシリコンジアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL350)0.39gと、2官能有機樹脂として1、6−ヘサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製:カヤラッドKS−HDDA)1.7gと、
1官能シリコン樹脂として片端末メタクリルシリコンオイル(信越化学工業(株)製:X−22−174DX)0.11gとを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(8)
を調製した。
【0073】
透明被膜付基材(F-8)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-8)を調製した。
透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0074】
[実施例9]
透明被膜形成用塗料(9)の調製
実施例1と同様にして透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
別途、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSN、SiO2濃度20質量%、平均粒子径12nm、分散媒:水)を、限外濾過膜を使用しメタノール溶媒に置換した。このメタノール置換シリカゾル(SiO2濃度20質量%)2000gに、カップリング剤としてγ-アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM−51
03、SiO2成分81.2質量%)40gとメタノール2000g、28%アンモニア水を0.14g入れ50℃で18時間攪拌して表面処理を行った。このあと、イソプロピルアルコールに溶媒置換して固形分濃度30質量%のシランカップリング剤で表面処理したシリカ粒子分散液を調製した。
【0075】
ついで、実施例5と同様にして調製した透明被膜形成用塗布液(5)30.0gと固形分
濃度30質量%のシランカップリング剤で表面処理したシリカ粒子分散液30.0gとを混合して透明被膜形成用塗布液(9)を調製した。
【0076】
透明被膜付基材(F-9)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(9)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-9)を調製した。
透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0077】
[実施例10]
透明被膜形成用塗料(10)の調製
Pドープ酸化錫微粒子の調製
純水8060gに硝酸アンモニウム13gと15%アンモニア水20gを入れ攪拌し、50℃に昇温した。この中に純水4290gに錫酸カリウム1519gを溶解した液を10時間かけてローラーポンプで添加した。このときpHコントローラーでpHを8.8に保つよう濃度10質量%の硝酸を添加して調整した。添加終了後1時間50℃をキープした後、濃度10質量%の硝酸を添加しpHを3.0まで下げた。次に限外濾過膜で濾水電導度が10μS/cmになるまで純水で洗浄した後、限外濾過膜で濃縮し取り出した。このとき取り出した液量は6000gで固形分(SnO2)濃度は12質量%であった。こ
のスラリーの中に濃度16質量%のリン酸水溶液264gを添加し、0.5時間攪拌した。これを乾燥し、700℃で2時間焼成して、Pドープ酸化錫微粒子を調製した。得られたPドープ酸化錫微粒子の平均粒子径は15nm、体積抵抗値は5000Ω・cmであった。
【0078】
表面処理Pドープ酸化錫微粒子分散液の調製
Pドープ酸化錫微粒子217g、イオン交換水335gを2Lガラスビーカーに入れ、濃度20質量%のKOH水溶液50gを加えた後、石英ビーズ(0.15mm)1000gを入れ、ビーズミルで充分に撹拌して粉砕分散させた後、325メッシュ(目開き44ミクロン)のステンレス製金網で石英ビーズと分散液を分離し、さらに、金網上に残った石英ビーズをイオン交換水1560gで洗浄した液を充分に混合し、この液を90℃1時間熱処理した後、室温まで冷却し、陰イオン交換樹脂96gを入れ1時間攪拌した後、陰
イオン交換樹脂を分離、次に陽イオン交換樹脂96gを入れ1時間攪拌した後、陽イオン
樹脂を分離してPドープ酸化錫微粒子水分散液(濃度10質量%)を得た。
【0079】
ついで、濃度10質量%のPドープ酸化錫微粒子の水散液2000gにカップリング剤として正珪酸エチル(多摩化学製 エチルシリケート28 SiO2成分28.8%)20.
8g(Pドープ酸化錫微粒子との重量比=100/3)とメタノール2000gを入れ50℃で18時間攪拌し表面処理を行った。このあと、エタノールに溶媒置換して濃度30質量%のシランカップリング材で表面処理したPドープ酸化錫微粒子のエタノール分散液を調製した。
【0080】
別途、実施例1と同様にして透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
ついで、透明被膜形成用塗布液(1)30gと固形分濃度30質量%の表面処理したPドー
プ酸化錫微粒子のエタノール分散液70gとを混合して透明被膜形成用塗布液(10)を調製した。
【0081】
透明被膜付基材(F-10)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(10)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-10)を調製した。透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0082】
[比較例1]
透明被膜形成用塗料(R1)の調製
3官能以上の有機樹脂として6官能アクリレート樹脂ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-6A)27.7gとイソプ
ロピルアルコール39.6gとイソプロピルグリコール15g、ブチルセロソルブ10gと光重合開始剤2.4.6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ビ−エーエスジャパン(株)製:ルシリンTPO)2.2gとを混合して透明被膜形成用塗布液(R1)を調製した。
【0083】
透明被膜付基材(RF-1)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-1)を調製した。
透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0084】
[比較例2]
透明被膜形成用塗料(R2)の調製
3官能以上の有機樹脂として6官能アクリレート樹脂ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-6A)27.42gと1官
能シリコン樹脂として片端末メタクリルシリコンオイル(信越化学工業(株)製:X−22−174DX)0.28gと、イソプロピルアルコール39.6gとイソプロピルグリコール15g、ブチルセロソルブ10gと光重合開始剤2.4.6−トリメチルベンゾイ
ルジフェニルフォスフィンオキサイド(ビ−エーエスジャパン(株)製:ルシリンTPO)2.2gとを混合して透明被膜形成用塗布液(R2)を調製した。
【0085】
透明被膜付基材(RF-2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-2)を調製した。透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0086】
[比較例3]
透明被膜形成用塗料(R3)の調製
3官能以上の有機樹脂として4官能アクリレート樹脂ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-4A)25.9gと、2官能有
機樹脂としてシリコンジアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL350)0.3gと、2官能有機樹脂として1、6−ヘサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製:カヤラッドKS−HDDA)1.5gと、イソプロピルアルコール39.6gとイソプロピルグリコール15g、ブチルセロソルブ10gと光重合開始剤2.4.6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ビ−エーエスジャパン(株)製:ルシリンTPO)2.2gとを混合して透明被膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0087】
透明被膜付基材(RF-3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-3)を調製した。透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0088】
[比較例4]
透明被膜形成用塗料(R4)の調製
実施例1において、3官能以上の有機樹脂として4官能アクリレート樹脂ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-4A)27
.665gと、2官能有機樹脂としてシリコンヘキサアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL1360)0.01gと、2官能有機樹脂として1、6−ヘサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製:カヤラッドKS−HDDA)0.02gと、1官能シリコン樹脂として片端末メタクリルシリコンオイル(信越化学工業(株)製:X−22−174DX)0.005gとを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R4)を調製した。
【0089】
透明被膜付基材(RF-4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-4)を調製した。透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0090】
[比較例5]
透明被膜形成用塗料(R5)の調製
実施例1において、3官能以上の有機樹脂として4官能アクリレート樹脂ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-4A)20
.2gと、2官能有機樹脂としてシリコンヘキサアクリレート(ダイセル・サイテック(
株)製:EBECRYL1360)1.4gと、2官能有機樹脂として1、6−ヘサンジ
オールジアクリレート(日本化薬(株)製:カヤラッドKS−HDDA)4.2gと、1官
能シリコン樹脂として片端末メタクリルシリコンオイル(信越化学工業(株)製:X−22−174DX)1.9gとを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R5)を調製した。
【0091】
透明被膜付基材(RF-5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-5)を調製した。透明被膜の厚さ、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性、撥水性、耐指紋付着性、指紋拭取性、マジックハジキ性およびマジック拭取性を評価し、結果を表1に示す。
【0092】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂と、
(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂と、
(3)1官能シリコン樹脂と
からなるマトリックス形成成分と溶媒とからなり、
得られる透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有量が、固形分として10〜98質量%の範囲にあり、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.2〜10質量%の範囲にあり、(3)1官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.02〜5質量%の範囲となるように含有することを特徴とする透明被膜形成用塗料。
【請求項2】
前記(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂がモノマーであり、
前記(3)1官能シリコン樹脂がアクリル変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、グリシジル変性ポリシロキサン、ポリエステル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサンまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項3】
前記(3)1官能シリコン樹脂の重量(W3)と、前記(2)2官能有機樹脂および/
または2官能シリコン樹脂の重量(W2)との重量比(W3)/(W2)が0.05〜1の
範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項4】
さらに平均粒子径が5〜300nmの範囲にある金属酸化物微粒子を、得られる透明被膜中に固形分として10〜80質量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項5】
全固形分濃度が5〜50質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項6】
基材と、基材上に形成された透明被膜とからなり、
該透明被膜が(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂と、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂と、(3)1官能シリコン樹脂とからなるマトリックス成分とからなり、透明被膜中の(1)3官能以上の官能基を有する有機樹脂の含有量が固形分として10〜98質量%の範囲にあり、(2)2官能有機樹脂および/または2官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.2〜10質量%の範囲にあり、(3)1官能シリコン樹脂の含有量が固形分として0.02〜5質量%の範囲にあることを特徴とする透明被膜付基材。
【請求項7】
透明被膜がさらに、平均粒子径が5〜300nmの範囲にある金属酸化物微粒子を固形分として10〜80質量%の範囲で含有することを特徴とする請求項6に記載の透明被膜付基材。

【公開番号】特開2010−126675(P2010−126675A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304500(P2008−304500)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】