説明

透析治療用セントラルシステム及びその消毒方法

【課題】清浄水や透析液の流路を十分に消毒しつつ消毒液の使用量を抑制することができる透析治療用セントラルシステム及びその消毒方法を提供する。
【解決手段】清浄水を用いて所定濃度の透析液を調製し得る透析液供給装置2と、透析液供給装置2で調製された透析液を各血液浄化器Kに供給するための透析用監視装置4と、透析液供給装置2で調整された透析液を各透析用監視装置4に送液する送液手段3と、透析液供給装置2内の透析液の流路にクエン酸を供給しクエン酸熱水の作製を可能とし得る消毒液供給手段(L2、P1)とを具備した透析治療用セントラルシステムにおいて、透析液供給装置2における清浄水及び透析液が流通する流路を含みつつ消毒液が循環可能とされた第1循環流路と、送液手段3の透析液の流路を含みつつ透析液供給装置2から導かれた消毒液が循環可能とされた第2循環路とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析液供給装置と血液浄化器を具備した透析用監視装置とを含んで成るとともに、当該透析液供給装置で調製された透析液を透析用監視装置に送液するための送液手段を備えた透析治療用セントラルシステム及びその消毒方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療用セントラルシステムは、病院等医療現場における機械室に透析液供給装置を設置しておき、これとは別の場所である透析室(治療室)に透析用監視装置を設置するとともに、これら透析液供給装置と透析用監視装置とを配管で連結させて構成されている。透析液供給装置は、清浄水が供給されて所定濃度の透析液を調製するものである一方、透析用監視装置は、患者に透析治療を施すための血液浄化器(ダイアライザ)の数に対応して複数設置され、透析液供給装置で調製された透析液を配管を介して導入し、血液浄化器に供給する。
【0003】
即ち、機械室に設置された一つの透析液供給装置から透析室に設置された複数の透析用監視装置に分配して透析液を送液し、それぞれにおいてダイアライザに透析液を供給するよう構成されているのである。このように中央で調製された透析液を各透析用監視装置に分配するシステムは、通常、「透析治療用セントラルシステム」と称される。因みに、血液浄化器毎(即ち透析治療患者の各々)に透析液の調製及び供給を行い得るものを個人用透析装置という。
【0004】
ところで、透析液供給装置及び透析用監視装置における清浄水及び透析液が流通する流路に対しては、衛生維持の観点から、洗浄及び消毒を行う必要があり、消毒液として例えば次亜塩素酸ナトリウムなど塩素系消毒洗浄剤が用いられている。そして、洗浄水による洗浄が行われた後、消毒を行うには、従来、透析液供給装置に消毒液を供給し、当該透析液供給装置から配管を経て透析用監視装置まで流動させていた(例えば特許文献1参照)。
【0005】
即ち、透析液供給装置、透析用監視装置及びそれらを連結する配管における清浄水や透析液の流通経路に沿って消毒液を流通させることにより、その流通過程で透析液等の流通経路(具体的には流路を構成する内壁)を消毒し、これにより、清浄水や透析液の流路経路全般に亘って消毒していたのである。
【特許文献1】特開2003−260131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の透析治療用セントラルシステムにおいては、透析液供給装置、透析用監視装置及びそれらを連結する配管における清浄水や透析液の流路(流通経路)に沿って消毒液を単に通過させて消毒(消毒液を流路の入口から出口まで単に通過させる所謂シングルパスによる消毒)していたので、消毒効果が不十分となる虞があった。また、消毒を十分に行わせようとすると、消毒液をより多く流通させる必要があり、消毒液の使用量が過大となってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、清浄水や透析液の流路を十分に消毒しつつ消毒液の使用量を抑制することができる透析治療用セントラルシステム及びその消毒方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を調製し得る透析液供給装置と、患者に透析治療を施すための血液浄化器に応じて複数設置され、前記透析液供給手段で調製された透析液を各血液浄化器に供給するための透析用監視装置と、前記透析液供給装置で調製された透析液を各透析用監視装置に送液する送液手段と、前記透析液供給装置内の清浄水及び透析液が流通する流路に消毒液を供給し得る消毒液供給手段とを具備した透析治療用セントラルシステムにおいて、前記透析液供給装置における清浄水及び透析液が流通する流路を含み、前記消毒液供給手段で供給された消毒液が循環可能とされた第1循環流路と、前記送液手段の透析液の流路を含み、前記透析液供給装置から導かれた消毒液が循環可能とされた第2循環路とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の透析治療用セントラルシステムにおいて、前記透析用監視装置は、透析液の流路を含み前記送液手段から送液された消毒液が循環可能とされた第3循環路を具備することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の透析治療用セントラルシステムにおいて、前記消毒液は、前記透析液供給装置に清浄水を供給するための清浄水生成装置から供給されるとともに、当該清浄水供給手段から前記透析液供給装置、前記送液手段及び透析用監視装置に順次送られることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の透析治療用セントラルシステムにおいて、前記透析液供給装置、送液手段、透析用監視装置及び前記清浄水生成装置のそれぞれの運転状態を検出するとともに、前記消毒液による消毒時、当該透析液供給装置、送液手段又は透析用監視装置の運転と清浄水生成装置の運転とを連携させるための情報を送受信可能な制御手段を具備したことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の透析治療用セントラルシステムにおいて、前記消毒液供給手段で供給される消毒液はクエン酸から成り、前記第1循環流路には、該第1循環流路を循環する当該クエン酸を加温してクエン酸熱水を作製し、所定温度に保持する加熱保温手段が配設されているとともに、前記第2循環流路には、該第2循環流路を循環するクエン酸熱水を加温して所定温度に保持する保温手段が配設されたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の透析治療用セントラルシステムにおいて、前記第3循環流路には、循環するクエン酸熱水を加温して所定温度に保持する保温手段が配設されたことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を調製し得る透析液供給装置と、患者に透析治療を施すための血液浄化器に応じて複数設置され、前記透析液供給手段で調製された透析液を各血液浄化器に供給するための透析用監視装置と、前記透析液供給装置で調製された透析液を各透析用監視装置に送液する送液手段と、前記透析液供給装置内の清浄水及び透析液が流通する流路に消毒液を供給し得る消毒液供給手段とを具備した透析治療用セントラルシステムの消毒方法において、前記透析液供給装置における清浄水及び透析液が流通する流路を含んで前記消毒液を循環させた後、その消毒液を前記送液手段の透析液の流路を含んで循環させることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の透析治療用セントラルシステムの消毒方法において、前記送液手段で送液された消毒液を、前記透析用監視装置における透析液の流路を含んで循環させることを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項7又は請求項8記載の透析治療用セントラルシステムの消毒方法において、前記消毒液は、前記透析液供給装置に清浄水を供給するための清浄水生成装置から供給されるとともに、当該清浄水供給手段から前記透析液供給装置、前記送液手段及び透析用監視装置に順次送られることを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の透析治療用セントラルシステムの消毒方法において、前記透析液供給装置、送液手段、透析用監視装置及び前記清浄水生成装置のそれぞれの運転状態を検出するとともに、前記消毒液による消毒時、当該透析液供給装置、送液手段又は透析用監視装置の運転と清浄水生成装置の運転とを連携させるための情報を送受信することを特徴とする。
【0018】
請求項11記載の発明は、請求項7〜請求項10の何れか1つに記載の透析治療用セントラルシステムの消毒方法において、前記消毒液供給手段で供給される消毒液はクエン酸から成り、前記透析液供給装置を循環する当該クエン酸を加温してクエン酸熱水を作製し、所定温度に保持するとともに、前記送液手段を循環するクエン酸熱水を加温して所定温度に保持することを特徴とする。
【0019】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の透析治療用セントラルシステムの消毒方法において、前記透析用監視装置を循環するクエン酸熱水を加温して所定温度に保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1及び請求項7の発明によれば、透析液供給装置における清浄水及び透析液が流通する流路を含んで消毒液を循環させた後、その消毒液を送液手段の透析液の流路を含んで循環させることができるので、清浄水や透析液の流路(流通経路)に沿って消毒液を単に流通させて消毒させるものに比べ、清浄水や透析液の流路を十分に消毒しつつ消毒液の使用量を抑制することができる。
【0021】
請求項2及び請求項8の発明によれば、送液手段で送液された消毒液を透析用監視装置における透析液の流路を含んで循環させるので、透析液供給装置及び送液手段に加え、透析用監視装置における清浄水や透析液の流路を十分に消毒しつつ消毒液の使用量を更に抑制することができる。
【0022】
請求項3及び請求項9の発明によれば、消毒液は、透析液供給装置に清浄水を供給するための清浄水生成装置から供給されるとともに、当該清浄水供給手段から透析液供給装置、送液手段及び透析用監視装置に順次送られるので、清浄水生成装置の消毒も行うことができ、更にその消毒液を透析液供給装置、送液手段及び透析用監視装置の消毒時に使用することができる。
【0023】
請求項4及び請求項10の発明によれば、透析液供給装置、送液手段、透析用監視装置及び清浄水生成装置のそれぞれの運転状態を検出するとともに、消毒液による消毒時、当該透析液供給装置、送液手段又は透析用監視装置の運転と清浄水生成装置の運転とを連携させるための情報を送受信するので、効率のよい消毒動作を行わせることができる。
【0024】
請求項5及び請求項11の発明によれば、消毒液はクエン酸熱水から成るので、単一種類の消毒液にて流路の消毒に加え炭酸カルシウム除去を行うことができるとともに、次亜塩素酸ナトリウム等人体に影響のある物質の残留の虞がなく、透析治療時の安全性をより向上させることができる。同時に、透析液供給装置及び送液手段を循環するクエン酸熱水の温度がヒータ等の保温手段で所定温度に保持されるので、時間経過に伴って消毒液としてのクエン酸熱水が低温となり、消毒作用が劣化してしまうのを回避することができる。
【0025】
請求項6及び請求項12の発明によれば、透析液供給装置及び送液手段に加え、前記透析用監視装置を循環するクエン酸熱水を加温して所定温度に保持するので、当該透析用監視装置から透析液を排出する廃液管の消毒をも効率よく且つ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る透析治療用セントラルシステムは、透析用原液(A原液及びB原液)を混合して所定濃度の透析液を調製するとともに、その透析液を複数の透析用監視装置に供給するためのものであり、図1に示すように、清浄水生成装置1と、透析液供給装置2と、送液手段3と、透析液監視装置4とから主に構成される。
【0027】
清浄水生成装置1は、内部に濾過膜等を内在したモジュール(浄化濾過器)を具備し、原水を浄化して清浄水(RO水)を得るためのものである。かかる清浄水生成装置1で得られた清浄水は、透析液供給装置2にて透析液を調製する際に用いられたり或いは当該透析液供給装置2や透析用監視装置4等を洗浄する洗浄水としても用いられる。尚、清浄水生成装置1を図示しない個人用透析装置や粉末状透析用薬剤を溶解する溶解装置等と連結し、これらに清浄水を供給するよう構成してもよい。
【0028】
透析液供給装置2は、清浄水生成装置1から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を調製し得るものであり、図2に示すように、水供給路L13から供給される清浄水をその流量を計測しつつ導入する水計量シリンダ5と、加熱保温手段としての第1ヒータ6と、ミキシングチャンバ7,8と、比較的大きな容量の貯槽9とを有して構成されている。水計量シリンダ5は、流路L1にて貯槽9と連通されており、供給された水が第1ヒータ6、ミキシングチャンバ7、8を介して貯槽9に流動し得るようになっている。
【0029】
第1ヒータ6は、液体(清浄水或いは消毒液)を通過させつつ加温して所定温度に保持し得るものである。ミキシングチャンバ7、8は、それぞれ透析用原液(B原液及びA原液)が導入されて清浄水と混合して所定濃度の透析液を得るためのものであり、その得られた透析液が貯槽9に収容されるよう構成されている。貯槽9は、収容する透析液の液面(上限及び下限)を検知するフロートセンサ(不図示)が形成されたもので、その上部からはオーバーフローラインL14が延設されている。
【0030】
また、貯槽9の下部からは、流路L3、L4が延設されて合流点D3にて合流しているとともに、このうち流路L3の途中にはポンプP2が接続されている。合流点D3からは、送液手段3に向かって流路L6が延設されており、その途中に電磁バルブV1が接続されている。更に、合流点D3からは、流路L5が延設されており、その流路L5は水計量シリンダ5と第1ヒータ6との間の合流点D1にて合流しているとともに、電磁バルブV2が接続されている。
【0031】
そして、電磁バルブV1を閉じた状態としつつポンプP2を駆動させると、貯槽9内の透析液等(消毒時の消毒液含む)が流路L3、L4を介して再び貯槽9に至り、循環するようになっている。その状態で電磁バルブV1を開けると、流路L3、L4を循環する透析液等の一部が流路L6に至り、送液手段3に供給されることとなる。従って、透析治療中においては、貯槽9から送液手段3を介して透析用監視装置4に透析液を供給し得るよう構成されている。
【0032】
一方、流路L1における第1ヒータ6より下流側の合流点D2からは、消毒液供給路L2が延設され、その途中にはポンプP1が接続されるとともにており、消毒液としてのクエン酸が供給されるよう構成されている。即ち、ポンプP1を駆動させて消毒液供給路L2の先端からクエン酸を導入すれば、そのクエン酸が流路L1を流動する過程で第1ヒータ6によって昇温された清浄水と混合されてクエン酸熱水となり、貯層9に至るよう構成されているのである。
【0033】
尚、消毒液供給路L2及びポンプP1は、本発明の消毒液供給手段を構成している。かかる消毒液供給手段にて供給されたクエン酸は、清浄水と混合されつつ第1ヒータ6にて約80℃以上に昇温されるまで加熱されクエン酸熱水とされ、その温度が保持されるとともに、透析液供給装置2、送液手段3及び透析用監視装置4内の各流路を流通する過程で除菌し、当該流路を消毒し得るものである。このクエン酸熱水によれば、除菌の如き消毒の他、透析液が流通することにより流路に付着してしまう炭酸カルシウム(CaCO3)をも除去することができる。
【0034】
ところで、流路L1における水計量シリンダ5と第1ヒータ6との間の合流点D1から合流点D3まで流路L5が接続されている。かかる流路L5の途中には、電磁バルブV2が接続されており、透析治療時には閉じた状態とされて流路L5を遮断しているとともに、消毒時に開ければ、流路L5が開放されるよう構成されている。
【0035】
即ち、合流点D1とD3の間における流路L1(透析治療時に清浄水及び透析液が流通する流路)、流路L3及び流路L5は、本発明の第1循環流路を構成しており、消毒液供給路L2及びポンプP1によって供給されたクエン酸が第1ヒータ6によって昇温された清浄水と混合し、クエン酸熱水となって循環し得るようになっている。しかして、第1循環路流路が、透析治療時に清浄水及び透析液が流通する流路等(具体的には、流路L1、L3及びL4、第1ヒータ6内、ミキシングチャンバ7、8内、貯槽9内)を含んでいるため、クエン酸熱水の循環過程でその流路を消毒することができる。
【0036】
また、透析液供給装置2の消毒時において、クエン酸熱水は、第1循環流路を循環して除菌しつつ、第1ヒータ6にて加温されており、所定温度(約80℃以上)に保持されるよう構成されている。これにより、時間経過に伴って消毒液としてのクエン酸熱水が低温となり、消毒作用(除菌効果や炭酸カルシウム除去効果)が劣化してしまうのを回避することができ、透析液供給装置2内の確実な消毒を行わせることができる。
【0037】
送液手段3は、透析液供給装置2で調製された透析液を各透析用監視装置4に送液するためのもので、各透析用監視装置4と連通した流路L10それぞれに接続された流路L7と、該流路L7の終端から合流点D4まで延設された流路L8と、該流路L8の途中に接続されたポンプP3及び第2ヒータ10(保温手段)とから主に構成されている。尚、第2ヒータ10と合流点D4との間からは、廃液路L9が延設されており、その途中に電磁バルブV3が接続されている。
【0038】
流路L7と流路L8とは、本発明の第2循環流路を構成しており、ポンプP3を駆動させることにより、流路L6を介して透析液供給装置2から導入されたクエン酸熱水が循環し得るようになっている。また、流路L8における合流点D4の近傍には、逆止弁Gが接続されており、第2循環流路を図中右方向(時計回り)にクエン酸熱水が循環し得るよう構成されている。
【0039】
しかして、第2循環路流路が、透析治療時に透析液が流通する流路(具体的には、流路L7)を含んでいるため、クエン酸熱水の循環過程でその流路を消毒することができる。また、送液手段3の消毒時において、クエン酸熱水は、第2循環流路を循環して除菌しつつ、第2ヒータ10にて加温されており、所定温度(約80℃以上)に保持されるよう構成されている。これにより、第1循環流路と同様、時間経過に伴って消毒液としてのクエン酸熱水が低温となり、消毒作用(除菌効果)や配管洗浄作用(炭酸カルシウム除去効果)が劣化してしまうのを回避することができ、送液手段3内の確実な消毒を行わせることができる。
【0040】
透析用監視装置4は、患者に透析治療を施すためのダイアライザK(血液浄化器)に応じて複数(本実施形態においては3つ)設置され、透析液供給手段2で調製された透析液を各ダイアライザKに供給するためのものであり、流路L10を介して送液された透析液をダイアライザKに供給するとともに、当該ダイアライザKの浄化作用により老廃物等を含んだ透析液が流路L11を介して外部に排出されるよう構成されている。各透析用監視装置4から延設された流路L11は、流路L12と合流し、一括して透析液を外部に排出するようになっており、これら流路L11及びL12が廃液管を構成している。
【0041】
かかる透析用監視装置4においても、透析液供給装置2及び送液手段3と同様、透析液の流路を含み送液手段3から送液されたクエン酸熱水が循環可能とされた第3循環流路4aが形成されるとともに、当該第3循環流路4aの途中に第1ヒータ6及び第2ヒータ10と同様のヒータ4b(保温手段)が接続されている。これにより、透析液供給装置2及び送液手段3に加え、透析用監視装置4を循環するクエン酸熱水の温度を保持するので、当該透析用監視装置4から透析液を排出する廃液管(L11、L12)の消毒をも効率よく且つ確実に行うことができる。
【0042】
次に、上記透析治療用セントラルシステムの消毒方法について説明する。
透析治療及び洗浄水による洗浄後、水計量シリンダ5を駆動させつつ電磁バルブV1及び電磁バルブV2を閉じた状態とするとともに、ポンプP1を駆動させつつ第1ヒータ6を作動させることにより、消毒液供給路L2を介してクエン酸を流路L1に供給する。供給されたクエン酸は、第1ヒータ6によって昇温された清浄水と混合した後、ミキシングチャンバ7、8を介して貯槽9に至り、当該貯槽9内に収容される。尚、このときポンプP2は駆動しており、貯槽9内に収容されたクエン酸熱水は、流路L3及びL4を介して循環することにより撹拌されている。
【0043】
そして、クエン酸熱水(清浄水と混合した状態)が貯槽9内に所定量(液面が上限のフロートセンサにて検知される量)収容された後、水計量シリンダ5を停止させるとともに、電磁バルブV2を開け、第1循環流路を形成する。これにより、当該第1循環流路にてクエン酸熱水が循環し、透析治療中に清浄水及び透析液が流通した流路(流路L1、L3及びL4、第1ヒータ6内、ミキシングチャンバ7、8内、貯槽9内)を消毒する。
【0044】
上記第1循環流路による消毒が所定時間行われた後、電磁バルブV2を閉じるとともに、水計量シリンダ5を再び駆動して所定量(例えば1L)の清浄水を流路L1に供給する。このとき第1ヒータ6の作動は維持しつつポンプP1を駆動させている。これにより、貯槽9内に収容されたクエン酸熱水がオーバーフローラインL14を介してオーバーフローするので、当該オーバーフローラインL14をも消毒することができる。以上で透析液供給装置の消毒が終了するので、水計量シリンダ5及びポンプP1の駆動を停止した後、電磁バルブV1を開けて送液手段3の消毒に移行する。
【0045】
送液手段3の消毒においては、透析用監視装置4を停止させて流路L10からの流入を遮断しておくとともに、電磁バルブV3を開ける。これにより、貯槽9内のクエン酸熱水が流路L6を介して送液手段3に至り、流路L7及びL8を流れた後、廃液路L9から外部に排出される。送液手段3内の流路が洗浄水からクエン酸熱水に置き換わった時点で電磁バルブV3を閉じ、第2循環流路を形成する。
【0046】
そして、ポンプP3を駆動させつつ第2ヒータ10を作動させて、第2循環流路にてクエン酸熱水を循環させる。かかるクエン酸熱水の循環過程で、透析治療時に透析液が流通する流路(流路L7)を消毒するとともに、第2ヒータ10にてクエン酸熱水が加温され、所定温度(約80℃以上)に保持される。以上の如き送液手段3の消毒が終了すると、透析用監視装置4を駆動させ、流路L10から当該透析用監視装置4内にクエン酸熱水を流入させる。
【0047】
このとき、透析用監視装置4において第3循環流路4aが形成されており、クエン酸熱水は当該第3循環流路4aにて循環しつつヒータ4bにて加温され所定温度に維持される。しかして、透析用監視装置4において透析治療中に透析液が流通する流路をクエン酸熱水にて消毒し、所定時間後、廃液管(L11、L12)から排出される。この排出されるクエン酸熱水は、ヒータ4bにて所定温度に維持されているため、廃液管(L11、L12)から排出される際にも消毒作用が維持され、当該廃液管を確実に消毒することができる。
【0048】
上記実施形態によれば、透析液供給装置2における清浄水及び透析液が流通する流路を含んで消毒液(クエン酸熱水)を循環させた後、その消毒液を送液手段3の透析液の流路を含んで循環させることができるので、清浄水や透析液の流路(流通経路)に沿って消毒液を単に流通させて消毒させるものに比べ、清浄水や透析液の流路を十分に消毒しつつ消毒液の使用量を抑制することができる。
【0049】
また、送液手段3で送液された消毒液(クエン酸熱水)を透析用監視装置4における透析液の流路を含んで循環させるので、透析液供給装置2及び送液手段3に加え、透析用監視装置4における清浄水や透析液の流路を十分に消毒しつつ消毒液の使用量を更に抑制することができる。然るに、消毒液(クエン酸熱水)は、透析液供給装置2から供給されるとともに、当該透析液供給装置2から送液手段3及び透析用監視装置4に順次送られるので、透析液供給装置2で使用した消毒液を送液手段3及び透析用監視装置4の消毒時に使用することができる。
【0050】
更に、消毒液はクエン酸熱水から成るので、一種の消毒液にて流路の消毒に加え炭酸カルシウム除去を行うことができるとともに、次亜塩素酸ナトリウム等人体に影響のある物質の残留の虞がなく、透析治療時の安全性をより向上させることができる。また、クエン酸熱水の熱による消毒のため、流路内を流れる液体の温度管理を行うことで消毒液が流れているか否かの検出を行うことができる。
【0051】
同時に、透析液供給装置2、送液手段3及び透析用監視装置4を循環するクエン酸熱水の温度が第1ヒータ6、第2ヒータ10及び第3ヒータ4bによって所定温度に保持されるので、時間経過に伴って消毒液としてのクエン酸熱水が低温となり、消毒作用が劣化してしまうのを回避することができる。尚、クエン酸熱水を所定温度に保持する保温手段は、少なくとも透析液供給装置2(第1循環流路)及び送液手段3(第2循環流路)、透析用監視装置4(第3循環流路)に配設されていれば足りる。
【0052】
次に、本発明の第2の実施形態に係る透析治療用セントラルシステムについて説明する。
本透析治療用セントラルシステムは、第1の実施形態と同様、透析用原液(A原液及びB原液)を混合して所定濃度の透析液を調製するとともに、その透析液を複数の透析用監視装置に供給するためのものであり、図3に示すように、清浄水生成装置1’と、第1循環流路が形成可能な透析液供給装置2’と、第2循環流路が形成可能な送液手段3と、第3循環流路が形成可能な透析液監視装置4と、制御手段11とから主に構成される。尚、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
清浄水生成装置1’は、内部に濾過膜等を内在したモジュール(浄化濾過器)を具備し、水を浄化して清浄水(RO水)を得た後、その清浄水を透析液供給装置2’に供給するためのものであり、クエン酸を導入するための消毒液供給路L15(消毒液供給手段)が接続されている。また、清浄水生成装置1’には、導入されたクエン酸を清浄水と混合しつつ循環させ、当該循環の過程で加熱して約80℃以上のクエン酸熱水を生成し得るよう構成されている。尚、予め所定温度(約80℃以上)に昇温されたクエン酸熱水を消毒液供給路L15から供給してもよい。
【0054】
透析液供給装置2’は、第1の実施形態における透析液供給装置2と同様、清浄水生成装置1’から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を調製し得るものであり、図2における消毒液供給路L2及びポンプP1を具備していないものである。即ち、消毒時、清浄水生成装置1’で作製されたクエン酸熱水は、水供給路L13を介して透析液供給装置2’に至り、第1循環流路を循環する過程で消毒するようになっている。
【0055】
更に、第1循環流路を循環したクエン酸熱水は、流路L6を介して送液手段3に至り、第2循環流路を循環して当該送液手段3を消毒し得るよう構成されている。また、送液手段3を循環及び消毒したクエン酸熱水は、透析用監視装置4に至り、第3循環流路を循環して当該透析用監視装置4を消毒した後、廃液され、その過程で廃液管(L11、L12)をも消毒し得るよう構成されている。
【0056】
これにより、クエン酸熱水(消毒液)は、透析治療用セントラルシステムを構成する最上流の構成要素としての清浄水生成装置1’から供給されるとともに、当該清浄水供給手段1’から透析液供給装置2’、送液手段3及び透析用監視装置4に順次送られるので、清浄水生成装置1’(モジュール等)の消毒も行うことができ、更にそのクエン酸熱水(消毒液)を透析液供給装置2’、送液手段3及び透析用監視装置4の消毒時に使用することができる。
【0057】
制御手段11は、清浄水生成装置1’、透析液供給装置2’、送液手段3及び各透析用監視装置4と電気的に接続されて、これら装置の運転状態を検出するとともに、クエン酸熱水(消毒液)による消毒時、当該透析液供給装置2’、送液手段3又は透析用監視装置4の運転と清浄水生成装置1’の運転とを連携させるための情報(制御信号等)を送受信可能とされたものである。これにより、透析治療から清浄水による洗浄工程、及びクエン酸熱水による消毒工程に移行するタイミングを制御することができ、システムの自動化を図ることができる。
【0058】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、消毒時、少なくとも第1循環流路及び第2循環流路にて循環し得る消毒液であれば、クエン酸熱水に代えて他の消毒液(従来の次亜塩素酸ナトリウム等)としてもよい。熱で消毒するものではない他の消毒液を使用した場合、本実施形態の如きヒータ(第1ヒータ6及び第2ヒータ10)を不要とすることができ、装置構成をより簡素化することができる。
【0059】
また、透析液供給装置、送液手段及び透析用監視装置に形成された循環流路(第1循環流路〜第3循環流路)は、清浄水又は透析液が流通する流路を含み、クエン酸熱水等の消毒液が循環可能とされたものであれば、如何なる形態であってもよく、それら循環流路を用いた消毒方法についても他の手順にて行うものとしてもよい。尚、透析用監視装置4における第3循環流路を廃し、透析液供給装置の第1循環流路、及び送液手段の第2循環流路のみとしたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
清浄水及び透析液が流通する流路を含みつつ消毒液供給手段で供給された消毒液が循環可能とされるとともに、送液手段の透析液の流路を含みつつ第1循環路から導かれた消毒液が循環可能とされた透析治療用セントラルシステム及びその消毒方法であれば、透析液を調製し得るものであって消毒が必要な他の形態のものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る透析治療用セントラルシステム全体を示す概要図
【図2】同透析治療用セントラルシステムにおける透析液供給装置、送液手段及び透析用監視装置の内部構成を示す模式図
【図3】本発明の第2の実施形態に係る透析治療用セントラルシステム全体を示す概要図
【符号の説明】
【0062】
1、1’ 清浄水生成装置
2、2’ 透析液供給装置
3 送液手段
4 透析用監視装置
4a 第3循環流路
4b 第3ヒータ(保温手段)
5 水計量シリンダ
6 第1ヒータ(加熱保温手段)
7、8 ミキシングチャンバ
9 貯槽
10 第2ヒータ(保温手段)
11 制御手段
L1、L5 第1循環流路
L7、L8 第2循環流路
K ダイアライザ(血液浄化器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を調製し得る透析液供給装置と、
患者に透析治療を施すための血液浄化器に応じて複数設置され、前記透析液供給手段で調製された透析液を各血液浄化器に供給するための透析用監視装置と、
前記透析液供給装置で調製された透析液を各透析用監視装置に送液する送液手段と、
前記透析液供給装置内の清浄水及び透析液が流通する流路に消毒液を供給し得る消毒液供給手段と、
を具備した透析治療用セントラルシステムにおいて、
前記透析液供給装置における清浄水及び透析液が流通する流路を含み、前記消毒液供給手段で供給された消毒液が循環可能とされた第1循環流路と、
前記送液手段の透析液の流路を含み、前記透析液供給装置から導かれた消毒液が循環可能とされた第2循環路と、
を備えたことを特徴とする透析治療用セントラルシステム。
【請求項2】
前記透析用監視装置は、透析液の流路を含み前記送液手段から送液された消毒液が循環可能とされた第3循環路を具備することを特徴とする請求項1記載の透析治療用セントラルシステム。
【請求項3】
前記消毒液は、前記透析液供給装置に清浄水を供給するための清浄水生成装置から供給されるとともに、当該清浄水供給手段から前記透析液供給装置、前記送液手段及び透析用監視装置に順次送られることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の透析治療用セントラルシステム。
【請求項4】
前記透析液供給装置、送液手段、透析用監視装置及び前記清浄水生成装置のそれぞれの運転状態を検出するとともに、前記消毒液による消毒時、当該透析液供給装置、送液手段又は透析用監視装置の運転と清浄水生成装置の運転とを連携させるための情報を送受信可能な制御手段を具備したことを特徴とする請求項3記載の透析治療用セントラルシステム。
【請求項5】
前記消毒液供給手段で供給される消毒液はクエン酸から成り、前記第1循環流路には、該第1循環流路を循環する当該クエン酸を加温してクエン酸熱水を作製し、所定温度に保持する加熱保温手段が配設されているとともに、前記第2循環流路には、該第2循環流路を循環するクエン酸熱水を加温して所定温度に保持する保温手段が配設されたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の透析治療用セントラルシステム。
【請求項6】
前記第3循環流路には、循環するクエン酸熱水を加温して所定温度に保持する保温手段が配設されたことを特徴とする請求項5記載の透析治療用セントラルシステム。
【請求項7】
供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を調製し得る透析液供給装置と、
患者に透析治療を施すための血液浄化器に応じて複数設置され、前記透析液供給手段で調製された透析液を各血液浄化器に供給するための透析用監視装置と、
前記透析液供給装置で調製された透析液を各透析用監視装置に送液する送液手段と、
前記透析液供給装置内の清浄水及び透析液が流通する流路に消毒液を供給し得る消毒液供給手段と、
を具備した透析治療用セントラルシステムの消毒方法において、
前記透析液供給装置における清浄水及び透析液が流通する流路を含んで前記消毒液を循環させた後、その消毒液を前記送液手段の透析液の流路を含んで循環させることを特徴とする透析治療用セントラルシステムの消毒方法。
【請求項8】
前記送液手段で送液された消毒液を、前記透析用監視装置における透析液の流路を含んで循環させることを特徴とする請求項7記載の透析治療用セントラルシステムの消毒方法。
【請求項9】
前記消毒液は、前記透析液供給装置に清浄水を供給するための清浄水生成装置から供給されるとともに、当該清浄水供給手段から前記透析液供給装置、前記送液手段及び透析用監視装置に順次送られることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の透析治療用セントラルシステムの消毒方法。
【請求項10】
前記透析液供給装置、送液手段、透析用監視装置及び前記清浄水生成装置のそれぞれの運転状態を検出するとともに、前記消毒液による消毒時、当該透析液供給装置、送液手段又は透析用監視装置の運転と清浄水生成装置の運転とを連携させるための情報を送受信することを特徴とする請求項9記載の透析治療用セントラルシステムの消毒方法。
【請求項11】
前記消毒液供給手段で供給される消毒液はクエン酸から成り、前記透析液供給装置を循環する当該クエン酸を加温してクエン酸熱水を作製し、所定温度に保持するとともに、前記送液手段を循環するクエン酸熱水を加温して所定温度に保持することを特徴とする請求項7〜請求項10の何れか1つに記載の透析治療用セントラルシステムの消毒方法。
【請求項12】
前記透析用監視装置を循環するクエン酸熱水を加温して所定温度に保持することを特徴とする請求項11記載の透析治療用セントラルシステムの消毒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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