説明

透析装置

【課題】透析患者の血液中の活性酸素を消去し得る透析液を供給することができ、かつ、排水の無駄を抑制することができる透析装置を提供する。
【解決手段】水に水素を混合し、加圧して水素を水に溶解させるための気液混合手段と、気液混合手段で得られた水素が溶解された水中で微細気泡を発生させる微細気泡発生手段と、微細気泡発生手段で得られた微細気泡を含む水を透析液として供給する透析液供給手段とを備える透析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析装置に関するものであり、より特定的には、体内で発生する活性酸素を消去する力のある、医療用の水を透析液として利用する、透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腎機能が低下し、水分量の調節と尿素などの老廃物を含む体内有害物質の除去を行うための尿の排泄ができない腎不全患者のための有効な治療法の一つに、透析が知られている。透析は、血液透析(Hemodialysis:HD)と、腹膜透析(Peritoneal Dialysis)とに大きく分けられる。血液透析は、血液ポンプを用いて血液を体外に引き出し、これを透析器(ダイアライザー)を介して透析液と血液とを接触させることにより、濃度勾配による拡散現象を利用して体内有害物質および水分を除去した後、再び体内に戻す(返血)操作を連続して行う治療法である。また腹膜透析は、腹内に透析液を導入し、腹膜を介して体内有害物質および水分を除去する治療法である。
【0003】
透析液は、正常な血液に近い濃度の各種電解質を含んでおり、たとえば血液透析用の重炭酸型透析液では、基本的にはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、酢酸、重炭酸のイオンおよびブドウ糖を含む組成である。このような透析液は、たとえば、高濃度の原液を希釈することにより調製される。重炭酸型透析液に含まれる重炭酸塩とカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンとは、反応して不溶性物質を析出するおそれがあることから、この重炭酸型透析液の透析原液は、一般的に、電解質の塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、酢酸などの塩)を含むA液と、重炭酸ナトリウムを含むB液との二液タイプで実現され、A液およびB液を透析装置内に別個に収容し、用時、混合・希釈されて調製され、使用される。また一液タイプの透析原液として、重炭酸塩を含まない酢酸型透析液用の透析原液も知られている。
【0004】
また近年では、高濃度原液の代わりに粉末状または顆粒状の塩である透析原末を溶解して透析液を調製する方法も知られている。透析原末は、たとえば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、無水酢酸ナトリウムおよびブドウ糖を含む(pH調節剤として氷酢酸を任意に含む)A末と、重炭酸ナトリウム粉末であるB末との二剤から構成され、用時、水に混合・希釈して、透析液として調製される。また、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび無水酢酸ナトリウムを含むA−1末と、ブドウ糖粉末であるA−2末と、重炭酸ナトリウム粉末であるB末との三剤から構成されたタイプも知られている。さらに、一方を液状とし、他方を粉末状または顆粒状としたタイプのものも知られている(たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、酢酸のイオンおよびブドウ糖を含むA液と、重炭酸ナトリウム粉末であるB末との組み合わせなど)。
【0005】
透析原液または透析原末の希釈には、通常、水道水などの原水より不純物や異物を除去して精製された水が用いられる。この希釈用水を調製するための精製は、プレフィルターによる原水中に含まれるゴミや微粒子などの除去、軟水化装置による硬度成分の除去(たとえばイオン交換による原水の軟水化)、活性炭装置による残留塩素の除去、逆浸透膜を用いた各種金属イオンを含む微量金属類の除去などの処理工程によって行われる。
【0006】
また、特開平9−77672号公報(特許文献1)には、水を電気分解する電解水生成手段と、電解水生成手段から送られてくる陰極水を濾過する濾過手段と、濾過手段より導かれた陰極水を透析液として供給する透析液供給手段が開示されている。このような特許文献1に開示された透析装置によれば、水の電気分解により生成する陰極水に含まれるエレクトロンとプロトンにより、透析患者の血液中の活性酸素(Superoxide Anion Radical:O2-)を消去することができる透析液を供給することができる。
【0007】
一方、近年、浴槽内の水または湯中に、マイクロバブルあるいは当該マイクロバブルとナノバブルとが混在した状態の気泡(これらを「微細気泡」と総称する)を供給する電気気泡浴装置が開発されている。電気気泡浴装置では、たとえば、次のようにして、浴槽内の水または湯中に微細気泡を供給し得るように構成されている。まず、浴槽内に予め溜められた水または湯をポンプにより吸い込み、その中途で空気と混合させる。空気と混合させた水または湯をタンクに導入し、加圧して水または湯中に空気を溶解させる。そして、空気を溶解させた水または湯中に微細気泡を発生させ、こうして得られた微細気泡を含む水または湯を浴槽内に吐出する。こうした一連の動作をたとえば入浴の一定の時間繰り返し行うことで、浴槽内の水または湯中に微細気泡を提供する。このような電気気泡浴装置は、たとえば国際公開2001−09758号パンフレット(特許文献2)に開示されたような微細気泡発生装置を用いて好適に実現することができる。
【特許文献1】特開平9−77672号公報
【特許文献2】国際公開第2001/097958号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された透析装置の場合、水の電気分解により陰極水と共に生成される陽極水(生成水)は通常そのまま排水される。陽極水は、電解水生成手段に通水される総通水量の1/3程度を占め、これらがそのまま排水されているのが現状である。この陽極水の生成量を減少させる試みもあるが、その場合には、安定した電気分解ができなくなるなどの症状が発生し、水の有効利用ができなくなってしまう。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、透析患者の血液中の活性酸素を消去し得る透析液を供給することができ、かつ、排水の無駄を抑制することができる透析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の透析装置は、水に水素を混合し、加圧して水素を水に溶解させるための気液混合手段と、気液混合手段で得られた水素が溶解された水中で微細気泡を発生させる微細気泡発生手段と、微細気泡発生手段で得られた微細気泡を含む水を透析液として供給する透析液供給手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の透析装置により供給される透析液は、50〜1000ppbの範囲内の溶存水素濃度を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の透析装置によれば、透析患者の血液中の活性酸素を消去し得る透析液を供給することができるとともに、電気分解を行わないた従来そのまま排水していた陽極水を生成させることもないため、排水の無駄を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の好ましい一例の透析装置1を概念的に示す図である。本発明の透析装置1は、水に水素を混合し、加圧して水素を水に溶解させるための気液混合手段2と、気液混合手段2で得られた水素が溶解された水中で微細気泡を発生させる微細気泡発生手段3と、微細気泡発生手段3で得られた微細気泡を含む水を透析液として供給する透析液供給手段4とを基本的に備える。本発明の透析装置1において、気液混合手段2と微細気泡発生手段3との間、ならびに、微細気泡発生手段3と透析液供給手段4との間の連結には、たとえば耐圧性を有するゴムホースなどの管状部材が用いられる。また、本発明の透析装置1は、電源(図示せず)に電気的に接続され、また制御手段S(図1に示す例では、気液混合手段2のハウジング5内に格納されている)を備え、当該制御手段Sによって、気液混合手段2における後述するポンプ7による吸引や加圧タンク8による加圧を制御するように構成される。制御手段Sは、たとえば従来公知の適宜の制御手段を用いて実現され、特に制限されるものではない。
【0014】
図1に示す例では、気液混合手段2は、吸気部6と、ポンプ7と、加圧タンク8とを備える。本発明における気液混合手段2は、内部にポンプ7を有し、ポンプ7による吸引によって、水を吸い込むように構成されている。ポンプ7による吸引によって吸い込まれた水は、吸気部6を介して、加圧タンク8へと送られる。
【0015】
図2は、本発明の透析装置1における吸気部6の一例を模式的に示す図である。吸気部6は、加圧タンク8との間にポンプ7を介して設けられ、たとえば図2に示すように管状部材12の一部に、水素ガスを格納したガスボンベなどの水素供給手段(図示せず)と練けるし得るように吸気口13が形成されて実現される。ポンプ7による吸引によって、水が吸い込まれるとともに、吸気部6において水素14が吸い込まれて、水11と水素14とが混合される。なお、ポンプ7としては、当分野において通常用いられているものを特に制限されることなく用いることができる。
【0016】
吸気部6において水素14が混合された水11は、加圧タンク8に送られる。図3は、本発明の透析装置1における加圧タンク8の一例を模式的に示す図である。加圧タンク8は、水素14が混合された水11を収容し得る内部空間を有するタンク本体15と、タンク本体15の内部空間を加圧するための加圧ポンプ(図示せず)とを有する。またタンク本体15には、その底面の略中央部分から突出するようにして、上方が開口した筒状部材16が設けられ、吸気部6において水素14が混合された水11は、注入口17より当該筒状部材16内に注がれるように構成される。水素14が混合された水11は、一旦筒状部材16内に注がれた後、筒状部材の上方の開口より溢れ、タンク本体15内に溜められる。このようにすることで、水素14が混合された水11は攪拌されることになる。その後、加圧ポンプによりタンク本体15の内部空間を加圧する。加える圧力としては特に制限されるものではないが、たとえば2kgの圧力が例示される。なお、加圧ポンプとしても、当分野において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。
【0017】
本発明の透析装置1では、上述したようにして、加圧タンク8内において、水素14が混合された水11を加圧し、圧縮することで、水11内に水素14を溶解させる。加圧タンク8のタンク本体15の底部付近には、排水口18が設けられており、水素14を溶解させた水11を微細気泡発生手段3に送るように構成される。
【0018】
図4は、本発明の透析装置1における微細気泡発生手段3を模式的に示す図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は断面図である。本発明の透析装置1では、上述したように加圧タンク8内において水素14を溶解させた水11を微細気泡発生手段3へと送り、微細気泡発生手段3において当該水11中で微細気泡を発生させ、微細気泡を含む水を透析液供給手段4に送り込む。ここで、本発明における「微細気泡」とは、直径10〜130μmの大きさのマイクロバブル、あるいは、当該マイクロバブルと直径50nm〜10μmの大きさのナノバブルとが混在した状態の気泡(これらを「微細気泡」と総称する)を指す。微細気泡の粒径は、たとえば、レーザ回折式粒度分布測定器(SALDA−1100、島津製作所製)を用いて測定することができる。微細気泡を発生させる機構は、特に制限されるものではないが、たとえば図4に示す例のように国際公開第2001−097958号パンフレットに開示された技術を好適に採用することができる。
【0019】
本発明の透析装置1における微細気泡発生手段3は、その形状については特に制限されるものではないが、図4に示す例のように、回転対称体であって、回転軸方向外方に向かうにつれて縮径するような内部空間を有する中空体を有することが好ましい。図4に示す例では、上述した形状の微細気泡発生手段3の回転軸方向両端に、それぞれ吐出口19が設けられる。微細気泡発生手段3の回転軸方向に関する略中央には注入口20が設けられ、この注入口20は上述した管状部材(たとえば耐圧性のゴムホース)を介して、加圧タンク8に連結され、加圧タンク8の排水口18から吐出された水素14を溶解させた水11が吐出口19に送られるように構成される。
【0020】
微細気泡発生手段3に送られた水素14が溶解された水11は、図4(a),(b)に示すように、微細気泡発生手段3の回転軸方向外方に向かうにつれて縮径するような内部空間において、微細気泡発生手段3の回転軸回りに回転し、渦巻状の流れ21を形成することになる。この渦巻状の流れ21は、微細気泡発生手段3の回転軸方向両端にそれぞれ設けられた吐出口19を介して、吐出される。この際、この渦巻状の流れ21の回転方向Aに対し、微細気泡発生手段3の外部より吐出口19を介して水が流入しようとする、渦の中心に向かう方向Bの流れが発生する。このため回転方向Aの渦巻状の流れ21に沿って、水素14が溶解された水が微細気泡発生手段3外に吐出される際に、方向Bの流れと衝突することになり、これによって、この衝突が起こる境界で水または湯に溶解された水素14(気泡)が剪断され、微細気泡が発生する。こうして、微細気泡を含む水が吐出口19から吐出され、透析液供給手段4に供給されることになる。
【0021】
透析液供給手段4では、上述するようにして微細気泡発生手段3から供給された微細気泡を含む水を、透析原剤と混合し希釈することで、透析液を製造する。ここで、透析原剤は上述したように、全て液状タイプのもの(透析原液)、全て粉末状または顆粒状のタイプのもの(透析原末)以外に、一方を液状タイプとし他方を粉末状または顆粒状タイプとしたものも包含する。
【0022】
微細気泡を含む水による透析原剤の混合・希釈する方式については、特に制限されるものではなく、用いる透析原剤に応じて好適な方式を採用することができる。たとえば、電解質塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、酢酸などの塩を含む)を含むA液と、重炭酸ナトリウムを含むB液との二液タイプで実現される重炭酸型透析液の透析原液を例に挙げて説明すると、このA液、B液および微細気泡を含む水の混合方式(3液混合方式)には、(1)まず微細気泡を含む水にA液を混合し、その後B液を混合する方式、(2)まず微細気泡を含む水にB液を混合し、その後A液を混合する方式、(3)A液、B液および微細気泡を含む水を同時に混合する方式とがある。なお、上記例に挙げた重炭酸塩型透析液の透析原液の場合、A液とB液とを直接混合すると、A液に含まれる塩化カルシウム、塩化マグネシウムとB液の炭酸水素ナトリウムが反応して沈殿を生成するため、通常は、上述した(1)〜(3)のいずれかの混合方式を採用することになる。本発明の透析装置における透析液供給手段では、これらのいずれの方式により透析原剤の混合・希釈を行ってもよいが、中でも、濃度制御が最も容易であることから、まず微細気泡を含む水にB液を混合し、その後A液を混合する方式(上記(2)の方式)が多用されている。
【0023】
透析液供給手段4における微細気泡を含む水を用いた透析原剤の希釈の比率(希釈濃度)は、用いる透析原剤に応じて設定された希釈濃度となるように調節して行う。一般に、得られた透析液において希釈濃度が高すぎる場合には、頭痛、心悸亢進、血圧上昇、意識障害などの副作用が生じる虞があり、また、希釈濃度が低すぎる場合には、四肢のしびれ感、全身倦怠、胸内苦悶、急激な血圧低下、意識障害などの副作用が生じる虞がある。
【0024】
本発明の透析装置1は、上述した気液混合手段2、微細気泡発生手段3および透析液供給手段4以外の構成としては、従来公知の適宜の透析装置と同様の構成を備えることができる。すなわち、本発明の透析装置は、たとえば、原水に濾過処理を施す濾過手段、原水に軟水化処理を施す軟水化手段、原水に活性炭処理を施す活性炭手段、ならびに、原水に逆浸透処理を施す逆浸透手段から選ばれる少なくともいずれかを備え、これらの少なくともいずれかの手段による処理を施された水が、上述した管状部材12を介して気液混合手段2に送り込まれるように構成されることが好ましい。なお、この場合、上述した各手段による原水の処理の順序は特に制限されないが、原水を濾過手段、軟水化手段、活性炭手段、逆浸透手段の順で処理して、処理後の水を気液混合手段2に供給するように実現されることが好ましい。以下、この場合について詳細に説明する。
【0025】
まず、濾過手段にて、水道水や井戸水、地下水などの原水に濾過処理を施す。濾過手段としては、透析液の製造に用いられる従来公知の適宜のフィルタを特に制限なく用いることができ、たとえば25μmフィルタ(Japan Water System社製)、10μmフィルタ(Japan Water System社製)などが好適である。この濾過処理により、原水中に含まれる鉄錆(供給配管からの析出)、砂などの粗いゴミを除去することができる。
【0026】
次に、軟水化手段にて、濾過処理後の原水に軟水化処理を施す。軟水化処理は、硬度成分である溶解固形物(カルシウムイオン、マグネシウムイオンなど)を含む硬水である原水から、イオン交換によって硬度成分を置換反応により除去して軟水とする処理である。軟水化手段には、従来公知の適宜の軟水化装置を特に制限されることなく用いることができ、具体的には、MARK−915U(Japan Water System社製)などが好適である。
【0027】
次に、活性炭手段にて、軟水化処理後の原水に活性炭処理を施す。活性炭処理は、多孔質の吸着物質である活性炭を用いて、原水中に含まれる残留塩素、クロラミン、有機物などを物理的な吸着作用により除去する処理である。活性炭手段には、従来公知の適宜の活性炭処理装置を特に制限されることなく用いることができ、具体的には、繊維状活性炭MOF250C2(フタムラ化学工業社製)などが好適である。
【0028】
活性炭処理後の原水に、逆浸透膜処理を施す。ここで、逆浸透膜処理とは、半透膜を境にして濃度の異なる溶液がある場合、低濃度の溶液から高濃度の溶液へ水が移動する現象である浸透に対し、高濃度の溶液側に圧力を加えることにより低濃度側に浸透した水を得る処理を指す。この逆浸透膜処理によって、上述した一連の処理で得られた原水から微量金属類などの不純物をさらに除去することができ、後述するISO13959に規定される水質基準を満たすようにすることができる。当該逆浸透膜手段には、従来公知の適宜の逆浸透(RO)装置を特に制限なく用いることができ、具体的にはHM500CX(Japan Water System社製)などが好適である。
【0029】
なお、上述した濾過手段、軟水化手段、活性炭手段および逆浸透手段に、さらに、従来公知の適宜の手段(たとえば、逆浸透膜処理の前に行う二次フィルタを用いた濾過処理、エアフィルタを用いた濾過処理、紫外線殺菌処理など)を適宜組み合わせて、一部の手順を置き換える、または追加するなどしても勿論よい。
【0030】
このような本発明の透析装置において供給される透析液は、好ましくは50〜1000ppbの範囲内、より好ましくは100〜900ppbの範囲内の溶存水素濃度を有する。透析液の溶存水素濃度が50ppb未満である場合には、血液中の活性酸素を十分に消去できない傾向にあり、また、透析液の溶存水素濃度が1000ppbを超える場合には、気泡が透析液濃度の安定を悪くするとともに、透析器内に気泡として貯留し、透析器の有効膜面積を減少させる傾向にあるためである。ここで、溶存水素は、H+、H・、H2を指す。なお、前記溶存水素濃度は、溶存水素計DH−35A(東亜ディーケーケー社製)を用いて測定された値を指す。
【0031】
また本発明の透析装置により供給される透析液は、pHが好ましくは7〜10、より好ましくは7.5〜9.5の範囲内にあるものである。pHが7未満である場合には、溶存水素による抗酸化作用が低下する傾向にあり、また、pHが10を超えると逆浸透膜の寿命を短くする傾向にあるためである。なお、透析液のpHは、pHメータ(φ260、ベックマン社製)を用い、pH電極を透析液調製用水に浸漬して表示を読み取ることで測定された値を指す。
【0032】
本発明の透析装置により供給される透析液は、ISO13959に規定される水質基準を満たすものであことが好ましい。ここで、「ISO13959に規定される水質基準を満たす」とは、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、ヒ素、バリウム、カドミウム、クロム、鉛、水銀、セレン、銀、アルミニウム、クロラミン、残留塩素、銅、フッ素、硝酸性窒素、硫酸、亜鉛およびスズの濃度が、それぞれ以下の表1に示す基準濃度以下であることを指す。
【0033】
【表1】

【0034】
なお、本発明の透析装置により供給される透析液がISO13959に規定される水質基準を満たすものであることは、原子吸光光度法、ICP発光分析法、ICP質量分析法、還元気化原子吸光光度法、イオンクロマトグラフ法などを用いてカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、ヒ素、バリウム、カドミウム、クロム、鉛、水銀、セレン、銀、アルミニウム、クロラミン、残留塩素、銅、フッ素、硝酸性窒素、硫酸、亜鉛およびスズの各濃度を測定することで確認することができる。
【0035】
上述したように、本発明の透析装置によれば、透析患者の血液中の活性酸素を消去し得る透析液を供給することができるとともに、電気分解を行わないた従来そのまま排水していた陽極水を生成させることもないため、排水の無駄を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の好ましい一例の透析装置1を概念的に示す図である。
【図2】本発明の透析装置1における吸気部6の一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の透析装置1における加圧タンク8の一例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の透析装置1における微細気泡発生手段3を模式的に示す図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 透析装置、2 気液混合手段、3 微細気泡発生手段、4 透析液供給手段、5 ハウジング、6 吸気部、7 ポンプ、8 加圧タンク、11 水、12 管状部材、13 吸気口、14 水素、15 タンク本体、16 筒状部材、17 注入口、18 排水口、19 吐出口、20 注入口、21 渦巻状の流れ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に水素を混合し、加圧して水素を水に溶解させるための気液混合手段と、
気液混合手段で得られた水素が溶解された水中で微細気泡を発生させる微細気泡発生手段と、
微細気泡発生手段で得られた微細気泡を含む水を透析液として供給する透析液供給手段とを備える、透析装置。
【請求項2】
透析液が50〜1000ppbの範囲内の溶存水素濃度を有する、請求項1に記載の透析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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