説明

透湿度の低いシートまたはフィルム

【構成】 ジシクロペンタジエン系単量体(例えば、ジシクロペンタジエン)由来開環繰り返し構造単位80〜90重量%およびテトラシクロドデセン系単量体(例えば、6−メチルテトラシクロドデセン)由来開環繰り返し構造単位20〜10重量%からなり、実質的にゲルを含まない共重合体を、主鎖の不飽和結合を水素添加率98%以上になるように水素添加して水素添加物を得、これを用いて、延伸倍率1.05〜5.00に延伸したシートまたはフィルムを製造する。
【効果】 本発明のシートまたはフィルムは、透湿度が低い。従来、熱可塑製ノルボルネン系樹脂製シートで得られていたものは、厚さ500μmで透湿度がせいぜい0.15g/m2・24hr程度であったのに対し、0.13g/m2・24hr以下のものが得られ、0.10g/m2・24hrのものも得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ジシクロペンタジエン系開環重合体水素添加物製のシートまたはフィルムに関し、さらに詳しくは、特に透湿度が低いジシクロペンタジエン系開環重合体水素添加物製のシートまたはフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、具体的には、熱可塑性ノルボルネン系単量体の開環重合体、その水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、ノルボルネン系単量体とオレフィンの付加型共重合体、それらの変性物などが挙げられる。これらは、いずれでも防湿性に優れた透明樹脂として様々な分野に用いられ始めており、500μmの厚さのシートまたはフィルムで透湿度が0.15g/m2・24hr程度のものまでが得られるようになっている。
【0003】しかし、技術の急速な進歩に従い、従来の熱可塑性ノルボルネン系樹脂製のシートまたはフィルムでは、防湿性が不十分な場合が生じることがあり、防湿性のより高い樹脂製シートまたはフィルム、特に水蒸気透過性のより低い樹脂製のシートまたはフィルムが求められるようになった。
【0004】一方、ノルボルネン系単量体であるジシクロペンタジエン系単量体と同じくノルボルネン系単量体であるテトラシクロドデセン系単量体の開環共重合体や、その水素添加物が知られている(特開平1−138257号公報、特開平1−168725号公報など)。例えば、特開平1−138257号公報では、ジシクロペンタジエンとメチルテトラシクロドデセンの開環共重合体を得ており、具体的には、ジシクロペンタジエン由来開環繰り返し構造単位85重量%とメチルテトラシクロドデセン由来開環繰り返し構造15重量%からなる共重合体、その水素添加物を開示している。しかし、この重合体はゲル化しており、水素添加物も水素添加率が93%程度のものであり、フィルムやシートなどの劣化しやすい用途での使用には問題のあるものである。また、特開平1−168625号公報では、ジシクロペンタジエン由来開環繰り返し構造単位10〜90重量%とメチルテトラシクロドデセン由来開環繰り返し構造単位90〜10重量%からなる共重合体水素添加物が開示されており、具体例として、ジシクロペンタジエン由来開環繰り返し構造単位が75重量%以下のものが開示されている。この共重合体水素添加物は低複屈折性などの光学特性に優れていることは開示されているが、透湿度に関する記載はない。実際にジシクロペンタジエン由来開環繰り返し構造単位75重量%とメチルテトラシクロドデセン由来開環繰り返し構造単位25重量%からなる共重合体水素添加物で厚さ500μmのシートを成形しても、透湿度が0.16g/m2・24hr程度のものしか得られなかった。このように、ジシクロペンタジエン系単量体由来開環繰り返し構造単位80〜90重量%およびテトラシクロドデセン系単量体由来開環繰り返し構造単位20〜10重量%からなり、ゲル化していない共重合体の水素添加物のシートやフィルムは、具体的には知られていなかった。また、このようなシートやフィルムが特に透湿度に優れており、延伸することにより、500μmの厚さで0.13g/m2・24hr以下と従来になく透湿度の低い透明なシートまたはフィルムが得られることは予測できなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、水蒸気透過性が特に低い熱可塑性ノルボルネン系樹脂製シートまたはフィルムの開発を目指して鋭意研究の結果、ジシクロペンタジエン系単量体とテトラシクロドデセン系単量体が特定の割合で共重合した開環共重合体の水素添加物が特に透湿度が低く、さらに延伸することにより、500μmの厚さのシートまたはフィルムで透湿度が0.13g/m2・24hr以下のものを得ることができることを見い出し、本発明を完成させるにいたった。
【0006】
【課題を解決する手段】かくして本発明によれば、ジシクロペンタジエン系単量体由来開環繰り返し構造単位80〜90重量%およびテトラシクロドデセン系単量体由来開環繰り返し構造単位20〜10重量%からなり、実質的にゲルを含まない共重合体の主鎖の不飽和結合を水素添加率98%以上に水素添加した水素添加物製シートまたはフィルムを、延伸倍率1.05〜5.00に延伸したシートまたはフィルムが提供される。
【0007】本発明に用いるジシクロペンタジエン系単量体(以下、DCP系単量体という)は、ジシクロペンタジエン、そのアルキル、芳香族置換誘導体、あるいはこれらの置換体または非置換のジシクロペンタジエンのハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリウ基などの極性基置換体であって、具体的には、ジシクロペンタジエン、2−メチルジシクロペンタジエン、5−メチルジシクロペンタジエン、7−メチルジシクロペンタジエン、2−エチルジシクロペンタジエン、5−メチルジシクロペンタジエン、5,5−ジメチルジシクロペンタジエンなどが例示される。これらは単独で、または複数の単量体を混合して用いる。DCP系単量体は、これに由来する繰り返し構造単位が、開環共重合体中、80〜90重量%、好ましくは81〜88重量%、より好ましくは82〜87重量%になるように用いる。少なすぎても多すぎても本発明のシートまたはフィルムの透湿度が高くなる。また、極性基が多くなるほど、水素添加物の吸湿性が高くなるので、極性基置換体の使用量は少ないほど好ましい。
【0008】本発明に用いるテトラシクロドデセン系単量体(以下、TCD系単量体という)は、テトラシクロドデセン、そのアルキル、アルキリデン、芳香族置換誘導体、あるいはこれらの置換体または非置換のジシクロペンタジエンのハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリウ基などの極性基置換体であって、具体的には、テトラシクロドデセン、6−メチルテトラシクロドデセン、6−エチルテトラシクロドデセン、6−エチリデンテトラシクロドデセン、6−イソプロピルテトラシクロドデセン、6−フェニルテトラシクロドデセン、6,7−ジメチル−テトラシクロドデセンなどが例示される。TCD系単量体は、これに由来する繰り返し構造単位が、開環共重合体中、10〜20重量%、好ましくは12〜19重量%、より好ましくは13〜18重量%になるように用いる。少なすぎても多すぎても本発明のシートまたはフィルムの透湿度が高くなる。また、極性基が多くなるほど、水素添加物の吸湿性が高くなるので、極性基置換体の使用量は少ないほど好ましい。
【0009】なお、本発明においては、本発明の効果を実質的に防がない範囲において重合可能な他のシクロオレフィン類などを併用してもよい。そのようなシクロオレフィン類としては、シクロペンテン、シクロオクテン、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどのように反応性の二重結合を一分子中に一つ以上有するものが例示される。このようなシクロオレフィン類は、これらに由来する繰り返し構造単位が開環共重合体中10重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下になるように用いる。これらの使用量が多すぎると透湿度が高くなる。
【0010】これらの単量体の開環重合は、公知の方法でよく、一般には、重合触媒としてTiCl4、WCl5、MoCl5、VCl5、NiCl2、PdCl2などの遷移金属化合物と、Al、Li、Na、Mgなどの典型金属のアルキル化合物などを組み合わせて重合する。なお、重合反応は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエンなどの不活性溶媒中、−20〜100℃で行われる。ただし、単量体の種類と触媒の種類によっては、反応性が高すぎるためにゲル化することがあり、その場合は、触媒を変更するか、温度を下げて反応を抑制する必要がある。
【0011】本発明においては、開環共重合体を水素添加する。水素添加反応は開環共重合体の主鎖の不飽和結合の水素添加率が98%以上、好ましくは99%以上、より好ましくは99.5%以上になるように行う。主鎖の水素添加率が低すぎると、耐光劣化性、耐熱劣化性、耐候劣化性などが不十分となる。本発明においては、水素添加物をシートまたはフィルムに成形するが、シートまたはフィルムは劣化による透明性、透湿度などの影響を受けやすいために、他の用途に藻散る場合に比べて、水素添加率を高くする必要がある。水素添加する方法は特に限定されず、Ni、Pdなどを触媒金属を担体に担持させた不均一触媒や、ニッケルアセチルセトナート、コバルトアセチルアセトナートなどの遷移金属化合物とアルキルアルミニウム、アルキルリチウムなどの還元性金属化合物とを組み合わせた均一触媒などを用いる公知の方法が例示される。水素添加は、通常、0〜250℃、均一系触媒を用いる場合は、好ましくは20〜100℃、不均一系触媒を用いる場合は、好ましくは200〜240℃、特に特に好ましくは210〜230℃で実施される。温度が低すぎると反応速度が遅く、高すぎると重合体や水素添加物の分解やゲル化が起こり易く、エネルギーコストも高くなる。
【0012】なお、従来公知の重合方法では、重合体中に重合体中に重合触媒由来の遷移金属が残存する。本発明のシートまたはフィルムをプレス・スルー・パッケージ用や食品包装用など、食品や薬品などと接触する用途に用いる場合など、水素添加物中に残留する遷移金属が溶出しないことが好ましく、そのために水素添加物中に実質的に遷移金属が残留しないことが好ましい。そのためには、細孔容積0.5cm3/g以上、好ましくは0.6cm3/g以上、好ましくは比表面積250m2/g以上のアルミナなどの吸着剤に、ニッケルなどの水素添加触媒金属を担持させた不均一水素添加触媒を用いて重合体を水素添加したり、このような吸着剤で水素添加物溶液や水素添加反応溶液を処理したり、水素添加物溶液や水素添加反応溶液を酸性水と純粋で繰り返し洗浄したりするなどの方法により、水素添加物中の遷移金属原子を1ppm以下にすることができる。特に吸着剤を用いる方法が効率よく、好ましい。
【0013】また、重合触媒や水素添加触媒として、ハロゲン化物を用いる場合があり、ハロゲン原子も残留しやすい。遷移金属と同様にハロゲン原子も食品や薬品などと接触する用途に用いる場合など、水素添加物中にハロゲン原子が残留しないことが好ましい。上記のような吸着材を用いる方法などにより、水素添加物中のハロゲン原子を1ppm以下にすることができる。
【0014】水素添加反応液などからの水素添加物の回収は、これらの溶液を多量の貧溶媒中に注ぎ込んで樹脂を析出させ、溶媒を十分に揮発させる方法、触媒残渣、未反応モノマーなどの不純物を吸着材で十分に吸着させた後、吸着材やゲルなどを濾過により除去し、溶剤を揮発させる方法などによる。特に吸着材で処理した後、制御されて清浄な環境下で、メンブレンフィルターやカートリッジフィルターのような孔径1μm以下、好ましくは0.5μm以下のフィルターを用いて溶液を濾過した後、遠心薄膜連続蒸発器型乾燥器、高粘度リアクター型乾燥器などを用いて、100torr以下、好ましくは50torr以下、200〜300℃、好ましくは250〜270℃の環境下で溶媒を揮発させる方法は、微細な異物の混入を防ぎやすい点で好ましく、特に食品や医薬品などの包装に本発明のシートまたはフィルムを用いる場合は、この方法い。なお、溶媒を揮発させて除去する際に、この水素添加物中に揮発成分が0.2重量%以下になるようにすることが好ましい。
【0015】本発明に用いる水素添加物の数平均分子量は、トルエンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法で測定したポリスチレン換算値で、10,000〜200,000、好ましくは15,000〜100,000、より好ましくは20,000〜50,000である。透湿度などの観点から、ガラス転移温度(以下、Tgという)は50〜160℃、好ましくは60〜140℃、より好ましくは70〜110℃である。Tgが低すぎると透湿度が高くなり、Tgが高すぎると成形が困難になり、真空成形が困難になったり、押し出し成形において、シートまたはフィルムがカールしたり、波打ったりしやすい。
【0016】本発明に用いる水素添加物には、所望により、フェノール系やリン系などの酸化防止剤; フェノール系などの熱劣化防止剤; ベンゾフェノン系などの紫外線吸収剤; アミン系などの帯電防止剤; 脂肪族アルコールのエステル、高アルコールの部分エステルおよび部分エーテルなどの滑剤; などの各種添加剤を添加してもよい。ただし、これらの添加物としては、20℃における蒸気圧が10-6Pa以下のものを選んで用いることが好ましく、使用量も水素添加物中の揮発成分が0.2%以下になるようにすることが好ましい。揮発成分が多いと押し出し成形など溶融成形において発泡、ボイド、フィッシュアイなどの原因となるなどの問題が生じやすい。
【0017】また、本発明に用いる水素添加物は、包装に用いる場合、一般に被包装物が外部から見えるように透明性が高いものが好ましく、厚さ500μmのシートまたはフィルムで波長430〜800nmでの光線透過率が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。しかし、被包装物が可視光などにより劣化するものである場合は、被包装物を保護するため、遮光剤として色素、染料、顔料などを添加して遮光することが好ましい。
【0018】(成形)本発明の水素添加物は、透湿度の低い成形材料として用いられ、熱可塑性樹脂の一般的な成形方法、例えば、射出成形、押し出し成形、熱プレス成形、溶剤キャスト成形、インフレーションなどによってシートまたはフィルムに成形することができる。単に成形するだけで、500μmの厚さのシートまたはフィルムで透湿度が0.15g/m2・24hr程度までのものを得ることができるが、延伸することにより、より透湿度の低いシートまたはフィルムを得ることができる。一軸延伸と二軸延伸では、透湿度に大きな差がないのに対し、二軸延伸は作業工程が複雑であり、一軸延伸が好ましい。延伸は一般にTg〜Tg+100℃、好ましくはTg+10℃〜Tg+80℃で行い、延伸倍率は1.05〜5.00、好ましくは1.10〜3.00、より好ましくは1.15〜2.00にする。なお、延伸加工時の温度が低すぎると延伸中にシートまたはフィルムが破断しやすく、加工性に劣り、また、破断しない場合も延伸後のシートまたはフィルムの強度が低下することがある。延伸加工温度が高すぎると、作業性が低下する。延伸倍率が低すぎると、透湿度の低下が小さく、大きすぎると延伸後のシートまたはフィルムの強度が低下し、またピンホールが生じやすいという問題がある。押し出し成形など、溶融した水素添加物を連続的にシートまたはフィルム状にし、冷却して固化させてシートまたはフィルムを得る場合は、その製造工程において、溶融樹脂の送り出し速度に対して固化したシートまたはフィルムの巻き取り速度を大きくすることで容易に連続的に延伸することができ、複雑な工程を必要としない。なお、この場合の延伸倍率は、溶融樹脂が押し出された時点での厚さ、例えばTダイを用いた場合はダイスキャップの大きさを、巻き取ったシートまたはフィルムの厚さで割った数値で示される。
【0019】(シートまたはフィルム)本発明のシートまたはフィルムは、厚さが10μm〜10mm、好ましくは50μm〜5mm、より好ましくは100μm〜1mmであり、透明性、ガス・バリア性、耐衝撃性、低透湿性などに優れたものである。例えば、透明性は厚さ500μmのシートまたはフィルムで85%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは90%以上、内部ヘイズは1.0%以下、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに、透湿度は、厚さ500μmのシートまたはフィルムで0.13g/m2・24hr以下、好ましくは0.12g/m2・24hr以下、さらに好ましくは0.11g/m2・24hr以下のものを得ることができる。なお、透湿度や透明性は厚さによって異なり、透明性は薄くなるほど良くなり、透湿度は厚くなるほど悪くなる。また、耐衝撃性は、厚さ500μmのシートまたはフィルムでの50%破壊エネルギーが、23℃では3.0J以上、好ましくは3.3J以上、−20℃では1.3J以上、好ましくは1.5J以上である。
【0020】(用途)本発明のシートまたはフィルムは、偏光フィルム、位相差フィルム、液晶基板、光拡散シート、プリズムシートなどの液晶ディスプレイ用など低透湿性と高度な光学特性が求められるシートや、自動車の窓材やルーフ材、航空機用窓材、自動販売機用窓材、ショーウィンドウ材、ショーケース材などの強度が求められるガラス板代替透明シートなどの光学シート; レジスト溶液用バッグや医療用薬液バッグ、輸液バッグなどの原料として、また食品用、電子部品用などとして用いられる包装用シート; 電気絶縁シート、フィルムコンデンサーなどの電気用シート; 外装材、屋根材などの建築用シート; などとして用いられる。
【0021】(態様)本発明のシートまたはフィルムの態様としては、(1) ジシクロペンタジエン系単量体由来開環繰り返し構造単位80〜90重量%およびテトラシクロドデセン系単量体由来開環繰り返し構造単位20〜10重量%からなり、実質的にゲルを含まない共重合体の主鎖の不飽和結合を水素添加率98%以上に水素添加した水素添加物からなり、延伸倍率1.05〜5.00に延伸したシートまたはフィルム、(2) 水素添加物が主鎖の不飽和結合の水素添加率が99%以上である(1)記載のシートまたはフィルム、(3) 水素添加物が主鎖の不飽和結合の水素添加率が99.5%以上である(2)記載のシートまたはフィルム、(4) 水素添加物がジシクロペンタジエン系単量体開環重合体由来開環繰り返し構造単位81〜88重量%およびテトラシクロドデセン系単量体開環重合体由来繰り返し構造単位19〜12重量%からなる(1)〜(3)記載のシートまたはフィルム、(5) 水素添加物がジシクロペンタジエン系単量体由来開環繰り返し構造単位83〜87重量%およびテトラシクロドデセン系単量体由来開環繰り返し構造単位17〜13重量%からなる(4)記載のシートまたはフィルム、(6) 水素添加物がジシクロペンタジエン系単量体由来開環繰り返し構造単位およびテトラシクロドデセン系単量体由来開環繰り返し構造単位以外の繰り返し構造単位を10重量%以下有する(1)〜(5)記載のシートまたはフィルム、(7) 水素添加物がジシクロペンタジエン系単量体由来開環繰り返し構造単位およびテトラシクロドデセン系単量体由来開環繰り返し構造単位以外の繰り返し構造単位を3重量%以下有する(6)記載のシートまたはフィルム、(8) 水素添加物がジシクロペンタジエン系単量体由来開環繰り返し構造単位およびテトラシクロドデセン系単量体由来開環繰り返し構造単位以外の繰り返し構造単位を1重量%以下有する(7)記載のシートまたはフィルム、(9) 水素添加物がゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法で測定したポリスチレン換算値で数平均分子量が10,000〜200,000である(1)〜(8)記載のシートまたはフィルム、(10) 水素添加物がゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法で測定したポリスチレン換算値で数平均分子量が15,000〜100,000である(9)記載のシートまたはフィルム、(11) 水素添加物がゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法で測定したポリスチレン換算値で数平均分子量が20,000〜50,000である(10)記載のシートまたはフィルム、(12) 水素添加物がガラス転移温度が50〜160℃のものである(1)〜(11)記載のシートまたはフィルム、(13) 水素添加物がガラス転移温度が60〜140℃のものである(12)記載のシートまたはフィルム、(14) 水素添加物がガラス転移温度が70〜110℃のものである(13)記載のシートまたはフィルム、(15) 揮発成分が0.2重量%以下である(1)〜(14)記載のシートまたはフィルム、(16) 延伸倍率が1.10〜3.00である(1)〜(15)記載のシートまたはフィルム、(17) 延伸倍率が1.15〜2.00である(16)記載のシートまたはフィルム、(18) 厚さが10μm〜10mmである(1)〜(17)記載のシートまたはフィルム、(19) 厚さが50μm〜5mmである(18)記載のシートまたはフィルム、(20) 厚さが100μm〜1mmである(1)記載のシートまたはフィルム、などが例示される。
【0022】
【実施例】以下に参考例、実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、分子量はトルエンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィにて測定したポリスチレン換算値で、揮発成分は熱重量分析で、透湿度はJIS Z 0208の方法Bで、ガス透過度はJIS K 7126の方法で、光線透過率は波長700nmで、内部ヘイズ値はJIS K 7105の方法で、50%破壊エネルギーはJIS K 7211の方法で測定した。
【0023】参考例1窒素雰囲気下、200lのガラス製反応器中に、ジシクロペンタジエン85重量部、6−メチルテトラシクロドデセン15重量部、シクロヘキサン250重量部、1−ヘキセン0.01重量部、イソブチルエーテル0.01重量部、イソブチルアルコール0.01重量部、およびトリイソブチルアルコール0.01重量部を入れ、60℃に保ちながら、六塩化タングステンのシクロヘキサン1%溶液を1時間に渡って連続的に総量0.005重量部加えて重合反応を行った。重合反応液の一部を回収し、1H−NMRと13C−NMRを用いて重合反応液中の重合体を分析したところ、ジシクロペンタジエン由来開環繰り返し構造単位約85重量%、6−メチルテトラシクロドデセン約15重量%からなるものであった。
【0024】この重合反応液を500lのオートクレーブに移し、担体であるカーボンにパラジウムを担持させた不均一触媒(担持量5重量%)0.6重量部を加えて、水素圧50kgf/cm2、温度220℃で5時間反応させた。
【0025】この水素添加反応液を、ケイソウ土(ラヂオライト#800)と活性アルミナ(細孔容積0.72cm3/g、比表面積255m2/g)の同重量混合物を濾過助剤として、触媒を除去し、さらに孔径0.4μmのメンブレンフィルターで濾過された溶液をクリーンな環境下(クラス10000)で遠心薄膜連続蒸発器型乾燥器を用いて280℃、30torrで5時間乾燥して樹脂を得、これを二軸押し出し機で処理して、ペレット化し、水素添加物25.3重量部を得た。
【0026】この水素添加物の数平均分子量は27,000、重量平均分子量66,000、分子量分布は2.44、ガラス転移温度98℃、水素添加率99.7%以上、遷移金属原子はそれぞれ検出限界以下、塩素原子も検出限界(100ppb)以下、揮発成分は0.1%以下であった。
【0027】実施例1参考例1で得た水素添加物をスクリュー径65mmの押し出し成形機を用い、樹脂温度210℃で400mm幅でダイス・ギャップが600μmのTダイから押し出し速度35kg/時間で押し出し、延伸倍率1.20倍、厚さが500μmになるように、90℃のロールで引き取るように調整し、巻き取り速度は2.8m/分とした。
【0028】このシートは、ボイドやフィッシュアイなどの欠陥、カール、ねじれ、波うちなどの外形不良は認められなかった。このシートの光線透過率は90.5%、内部ヘイズは0.4%、透湿度は0.10g/m2・24hr、ガス透過度はO2が10cm3/m2・24hr、CO2が35cm3/m2・24hr、50%破壊エネルギーが23℃で3.5J、−20℃で1.6Jであった。
【0029】比較例1参考例1で得た水素添加物の代わりにジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物(数平均分子量は26,000、重量平均分子量58,000、分子量分布2.23、ガラス転移温度93℃、水素添加率99.5%以上、遷移金属原子はそれぞれ検出限界以下、塩素原子も検出限界以下、揮発成分は0.23%)を用いる以外は実施例1と同様に厚さが500μmのシートを作成した。
【0030】このシートは、カール、ねじれ、波うちなどは認められなかったが、約1mに一つ程度の割合で0.5mm以下の大きさのボイドかフィッシュアイが認められた。このシートの光線透過率は88.4%、内部ヘイズは1.7%、透湿度は0.16g/m2・24hr、ガス透過度はO2が15cm3/m2・24hr、CO2が46cm3/m2・24hr、50%破壊エネルギーが23℃で2.8J、−20℃で10.6Jであった。
【0031】比較例2延伸倍率が1.00になるように押し出し速度を調整し、Tダイをダイス・ギャップを500μmのものにする以外は実施例1と同様に厚さが500μmのシートを作成した。
【0032】このシートは、ボイドやフィッシュアイなどの欠陥、カール、ねじれ、波うちなどの外形不良は認められなかった。このシートの光線透過率は89.1%、内部ヘイズが0.4%、透湿度は0.14g/m2・24hr、ガス透過度はO2が14cm3/m2・24hr、CO2が45cm3/m2・24hr、50%破壊エネルギーが23℃で3.4J、−20℃で1.4Jであった。
【0033】
【発明の効果】本発明のシートは、透湿度に優れる。また、ガス・バリア性、透明性、耐衝撃性などにも優れることから、食品や薬品の包装用のシートなどとして、好ましい性質を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ジシクロペンタジエン系単量体由来開環繰り返し構造単位80〜90重量%およびテトラシクロドデセン系単量体由来開環繰り返し構造単位20〜10重量%からなり、実質的にゲルを含まない共重合体の主鎖の不飽和結合を水素添加率98%以上に水素添加した水素添加物製シートまたはフィルムを、延伸倍率1.05〜5.00に延伸したシートまたはフィルム。

【公開番号】特開平8−41178
【公開日】平成8年(1996)2月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−198004
【出願日】平成6年(1994)7月29日
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)