透過像表示装置及び放射線透視検査装置
【課題】視認性を向上させたカラーの透過像を表示する透過像表示装置及び放射線透視検査装置を提供する。
【解決手段】X線管1から被検体5を透過したX線ビーム2を検出して得られる感度の異なる複数の色成分ごとの透過像データに対し、色成分ごとの透過像データそれぞれに、互いに異なる変換関数で階調変換を加える階調変換部7dと、透過像データをカラー表示する表示部7aとから成る透過像表示装置、及び、これを有する放射線透視検査装置。
【解決手段】X線管1から被検体5を透過したX線ビーム2を検出して得られる感度の異なる複数の色成分ごとの透過像データに対し、色成分ごとの透過像データそれぞれに、互いに異なる変換関数で階調変換を加える階調変換部7dと、透過像データをカラー表示する表示部7aとから成る透過像表示装置、及び、これを有する放射線透視検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過性の放射線を用いて、被検体の透過像を撮影し、被検体内部の検査を行う産業用あるいは医療用の放射線透視検査装置及び透過像を表示する透過像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線透視検査装置は、放射線源より放射され被検体を透過した放射線ビームを放射線検出器で検出して、出力される透過像(透過像データ)を画像表示して被検体内部を観察し検査する装置である。
【0003】
放射線(X線)検出器としては、例えば、X線ビームの強度分布像を可視光像に変換するX線イメージインテンシファイア(以下X線IIと記載する)とこの可視光像を撮影して透過像(透過像データ)として出力するカメラより成る放射線検出器が用いられる。
【0004】
上述した放射線透視検査装置では、近年、複数の色成分の透過像を出力する放射線検出器を用いて透過像のカラー表示が行われている。この種の放射線検出器の第一の例として、カラーX線イメージインテンシファイア(略してカラーI.I.(登録商標)以下カラーX線IIと記載する)とカラーカメラを用いた放射線検出器が、特許文献1等で知られている。
【0005】
カラーX線IIは入力面のシンチレータ層で、入射した放射線(X線)の分布を電子の分布に変換し、この電子を加速して出力面に結像させ出力面のカラーシンチレータ層を発光させて可視光像に変換するものである。出力面のカラーシンチレータはカラー(多色)で発光するが、色成分(R,G,B:赤、緑、青)ごとに発光特性曲線が異なる。すなわち電子の入射量に対しR,G,Bの順に感度が高い特性がある。
【0006】
カラーカメラは変換されたカラーの可視光像を撮影し色成分(R,G,B)ごとの透過像を出力する。
【0007】
第二の例として、カラーシンチレータとカラーカメラを用いた放射線検出器が、特許文献2等で知られている。
【0008】
これは、放射線(X線)を入力面のカラーシンチレータ層に入射させて発光させることで、放射線の分布を可視光像に変換して、この可視光像をカラーカメラで撮影するものである。カラーシンチレータはカラーで発光するが、色成分(R,G,B:赤、緑、青)ごとに発光特性曲線が異なる。すなわち放射線の入射量に対しR,G,Bの順に感度が高い特性がある。カラーカメラは変換されたカラーの可視光像を撮影し色成分(R,G,B)ごとの透過像を出力する。
【0009】
上述した複数の色成分の透過像をカラー表示で観察すると、低透過率部(低放射線部)は感度の高い赤色で細部がよく観察でき、高透過率部(高放射線部)は、赤色は飽和するが感度の低い青色で細部がよく観察できる。すなわち、この構成でダイナミックレンジの広い放射線検出器が可能となる。
【0010】
図11は複数の色成分の透過像を出力する放射線検出器の検出特性曲線の例を示すグラフである。横軸は1画素への入射X線量、縦軸は1画素の出力(明るさ)である。各色成分R,G,Bそれぞれ、出力がノイズレベルから飽和レベルに達するまでの入力範囲がダイナミックレンジとなる。カラーの透過像のダイナミックレンジは各色成分のダイナミックレンジの論理和の領域となり、単色の場合と比べ増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−179424号公報
【特許文献2】特開2003−202382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の放射線透視検査装置で、ダイナミックレンジの広い複数の色成分の透過像を出力する放射線検出器を用いて透過像のカラー表示をする場合、視認性が最もよいカラー表示とは言えなかった。
【0013】
その理由は、高透過率部は感度の低い青色で細部が観察できはするが、飽和気味の赤色や緑色が重なり、それが青色の細かな濃淡のコントラストを低下させ、最良の識別度にはならないことにある。また、同様に、中間透過率部は感度の中間の緑色で細部が観察できはするが、飽和気味の赤色が重なり、それが緑色の細かな濃淡のコントラストを低下させ、最良の識別度にはならないことにある。
【0014】
本発明の目的は、視認性を向上させたカラーの透過像を表示する放射線透視検査装置及び透過像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するため、本発明に係る請求項1記載の透過像表示装置は、放射線源から被検体に向けて放射され前記被検体を透過した放射線を検出して得られる感度の異なる複数の色成分ごとの透過像データに対し、前記色成分ごとの透過像データそれぞれに、互いに異なる変換関数で階調変換を加える階調変換手段と、前記階調変換を加えた色成分ごとの透過像データをカラー表示する表示手段より成り、前記階調変換手段は、感度が一番高い第一の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調減少する第一の階調変換を行い、感度が一番低い第二の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調増加する第二の階調変換を行い、色成分が3以上の場合は少なくとも1つの感度が中間の第三の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調増加した後単調減少する第三の階調変換を行うことを要旨とする。
【0016】
この構成により、感度が一番高い第一の色成分に対しては入力の増加に対し出力が単調減少する変換関数を用い、感度が一番低い第二の色成分に対しては入力の増加に対し出力が単調増加する変換関数を用い、感度が中間の第三の色成分に対しては入力の増加に対し出力が単調増加した後単調減少する変換関数を用いて色成分ごとに階調変換することで、低透過率部は第一の色成分で高透過率部は第二の色成分で中間透過率部は第三の色成分でコントラストよく視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0017】
本発明に係る請求項2記載の透過像表示装置は、請求項1に記載の透過像表示装置において、前記色成分ごとの透過像データの値の範囲を表す入力範囲をそれぞれの色成分ごとに求める入力範囲求出手段を有し、前記階調変換手段は、前記色成分ごとの入力範囲を、該入力範囲が変化してもそれぞれ常に一定の出力範囲に変換する変換関数で階調変換を加えることを要旨とする。
【0018】
この構成により、色成分ごとに入力範囲を求め、この入力範囲を常に一定の出力範囲に変換する変換関数を用いて階調変換するので、入射する放射線量の範囲が変化しても、入力範囲を出力の画像信号幅いっぱいに無駄なく変換することが可能になり、階調変換されるカラー透過像は自動的にコントラストを最大限に上げたカラー透過像となり、常に視認性を最大限に向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0019】
本発明に係る請求項3記載の透過像表示装置は、請求項2に記載の透過像表示装置において、前記入力範囲求出手段は、前記色成分ごとの透過像データのそれぞれの透過像上の所定範囲内で求めた最小値から最大値まで、あるいは、最小値より所定番目に大きい値から最大値より所定番目に小さな値までを前記入力範囲とすることを要旨とする。
【0020】
この構成により、透過像データの値の範囲である入力範囲を透過像上の周辺の明るさ低下などの画質低下の影響を受けずに求めることができる。また、最小値より大きめの値から最大値より小さめの値までを入力範囲とすることで、異常画素があった場合、この画素に影響されずに入力範囲を求めることができる。
【0021】
本発明に係る請求項4記載の透過像表示装置は、請求項2または請求項3に記載の透過像表示装置において、前記第一の階調変換は、前記第一の色成分の透過像データに対し、前記第一の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第一値から第二値まで単調減少させ、高い範囲は出力を前記第二値とする階調変換であり、前記第二の階調変換は、前記第二の色成分の透過像データに対し、前記第二の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は出力を第三値とし、高い範囲は入力の増加に対し出力を前記第三値から第四値まで単調増加させる階調変換であることを要旨とする。
【0022】
この構成により、具体的に第一の階調変換及び第二の階調変換を実施できる。
【0023】
本発明に係る請求項5記載の透過像表示装置は、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の透過像表示装置において、色成分が3以上の場合は前記第三の階調変換は、前記第三の色成分の透過像データに対し、前記第三の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第五値から第六値まで単調増加させ、高い範囲は入力の増加に対し出力を前記第六値から第七値まで単調減少させる階調変換であることを要旨とする。
【0024】
この構成により、具体的に第三の階調変換を実施できる。
【0025】
本発明に係る請求項6記載の透過像表示装置は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の透過像表示装置において、前記階調変換手段は、前記単調減少を単調増加で、前記単調増加を単調減少で置き換えた階調変換を加えることを要旨とする。
【0026】
この構成により、階調変換された色成分ごとの透過像はそれぞれ明暗が反転し、カラー表示はカラーが反転し、低透過率部は第一の色成分の補色で、高透過率部は第二の色成分の補色で中間透過率部は第三の色成分の補色でコントラストよく視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができ、請求項1乃至請求項5と同様の効果をあげることができる。
【0027】
本発明に係る請求項7記載の放射線透視検査装置は、被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して放射線に対し感度の異なる複数の色成分ごとの透過像データを出力する放射線検出手段と、前記色成分ごとの透過像データに、階調変換を加えてカラー表示する請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の透過像表示装置を有することを要旨とする。
【0028】
この構成により、視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0029】
本発明に係る請求項8記載の放射線透視検査装置は、請求項7に記載の放射線透視検査装置において、前記放射線検出手段は放射線を検出してカラーの可視光像に変換する放射線可視光変換手段と前記カラーの可視光像を撮影して複数の色成分ごとの透過像データを出力する撮像手段より成ることを要旨とする。
【0030】
この構成により、視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、複数の色成分の透過像を出力する放射線検出器を用いて、視認性を向上させたカラーの透過像を表示する放射線透視検査装置及び透過像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一実施形態に係る放射線透視検査装置の構成を示した模式図(正面図)。
【図2】第一の実施形態に係るX線検出器の検出特性関数の例を示すグラフ。
【図3】第一の実施形態に係る透過像表示のフロー図。
【図4】第一実施形態に係る透過像上の入力範囲計算領域の一例。
【図5】第一実施形態に係る透過像の入力範囲の一例を示すグラフ。
【図6】第一実施形態に係る階調変換の変換関数の一例。
【図7】第一実施形態における透過像のカラー表示の一例(カラー表示をグレースケール変換したもの)((a)階調変換前、(b)階調変換後)。
【図8】第一実施形態の変形例2に係る階調変換の変換関数の一例。
【図9】第一実施形態の変形例3に係る階調変換の変換関数の一例。
【図10】第一実施形態の変形例4に係る階調変換の変換関数の一例((a)2色の場合、(b)5色の場合)。
【図11】複数の色成分の透過像を出力する放射線検出器の検出特性曲線の例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下図面を参照して、本発明実施形態を説明する。
【0034】
(本発明の第一の実施の形態の構成)
以下、本発明の第一の実施形態の構成について図1、図2を参照して説明する。
【0035】
図1は本発明の第一実施形態に係る放射線透視検査装置の構成を示した模式図(正面図)である。
【0036】
X線管(放射線源)1と、X線管1のX線焦点Fより放射されたX線の一部である角錐状のX線ビーム(放射線)2を2次元の分解能で検出するX線検出器(放射線検出手段)3とが対向して配置され、このX線ビーム2に入るようにテーブル4上に載置された被検体5を透過したX線ビーム2がX線検出器3により検出され、透過像(透過像データ)として出力される。
【0037】
テーブル4はテーブル駆動機構6により3次元的な平行移動、テーブル面に沿った回転、およびテーブル面の傾斜等がなされ、被検体5の透視位置、透視角度、拡大率などが変更される。
【0038】
X線検出器3はカラーX線イメージインテンシファイア(略してカラーI.I.(登録商標)、以下カラーX線IIと記載する)(放射線可視光変換手段)3aとカラーカメラ(撮像手段)3bより成る。
【0039】
カラーX線II3aは、入力面3aaのシンチレータ層と光電層とにより、入射した放射線(X線)の分布を光電子の分布に変換し、この光電子を加速して出力面3abに結像させ出力面3abのカラーシンチレータ層を発光させてカラー(多色)の可視光像に変換するものである。出力面3abのカラーシンチレータ層は、色成分(R,G,B:赤、緑、青)ごとに発光特性曲線が異なる。すなわち電子の入射量に対しR,G,Bの順に感度が高い特性がある。
【0040】
図2は第一の実施形態に係るX線検出器の検出特性関数の例を示すグラフである。横軸は1画素への入射X線量I、縦軸は1画素の明るさ(検出器の出力の大きさで大きいほど明るい)である。R,G,Bの検出特性関数をそれぞれ、RI(I),GI(I),BI(I)で表す。放射線(X線)の入射量に対しR,G,Bの順に感度が高く、また、R,G,Bの順で低いX線量で飽和する特性である。
【0041】
カラーカメラ3bは変換されたカラーの可視光像を撮影し色成分(R,G,B)ごとの透過像(透過像データ)をデジタルデータとして出力する。
【0042】
構成要素として、他に、テーブル駆動機構6を制御し、また、X線検出器3からの透過像を処理する制御処理部(透過像表示装置)7、処理結果等を表示する表示部7a、X線管1を制御するX線制御部(図示省略)等がある。
【0043】
表示部7aはカラー表示を行う液晶パネル等で構成されるものである。
【0044】
制御処理部7は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク(不揮発メモリ)、表示部7a、入力部(キーボードやマウス等)7b、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0045】
制御処理部7は、機構制御ボードにより、テーブル駆動機構6が出力する動作位置の信号を受けてテーブル駆動機構6を制御して被検体の位置合わせを行わせる。
【0046】
また、制御処理部7は、X線検出器3から動画像として順次送られる透過像を収集し、画像処理し、動画像としてリアルタイムで表示部7aに表示するほか、メモリに記憶した透過像を、動画像または静止画像として表示部7aに表示する。
【0047】
また、制御処理部7は、X線制御部(図示省略)に指令を出し、管電圧、管電流を指定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体に合わせて変えることができる。
【0048】
図1に示すように、制御処理部7はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、X線検出器3から入力した透過像の値の入力範囲を求める入力範囲求出部7c、この入力範囲を反映して透過像の階調を変換する階調変換部7d、等を備えている。
【0049】
(第一の実施の形態の作用)
図3ないし図6を参照して作用を説明する。
【0050】
図3は第一の実施形態に係る透過像表示のフロー図である。
【0051】
ステップS1で表示すべき色成分ごとの透過像R,G,BがX線検出器3から、あるいは制御処理部7のメモリから入力範囲求出部7cに入力される。
【0052】
ステップS2で、入力範囲求出部7cはR,G,Bごとに、値の範囲である入力範囲を以下のように求める。
【0053】
図4は第一実施形態に係る透過像上の入力範囲計算領域の一例である。透過像10上の周辺を除いた領域が入力範囲計算領域11である。
【0054】
入力範囲求出部7cは透過像R,G,Bごとに入力範囲計算領域11内の最小値Rmin,Gmin,Bminと最大値Rmax,Gmax,Bmaxをそれぞれ求め、この最小値Rmin,Gmin,Bminと最大値Rmax,Gmax,Bmaxまでを入力範囲とする。
【0055】
図5は第一実施形態に係る透過像の入力範囲の一例を示すグラフである。横軸はX線量I、縦軸は明るさR,G,Bで、入力範囲計算領域11に対して入射するX線量の範囲12に対応して、Rの入力範囲13が明るい位置に、Gの入力範囲14が中間に、Bの入力範囲15が暗い位置に、それぞれ求められる。
【0056】
図3に戻り、ステップS3で階調変換部7dは透過像R,G,Bごとに階調変換を以下のように行う。
【0057】
図6は第一実施形態に係る階調変換の変換関数の一例である。横軸は階調変換の入力、縦軸は階調変換の出力である。
【0058】
図6に示すように、変換関数は基本的に透過像データに対し、値の所定の範囲内で、感度が一番高いR成分の変換関数RV(r)は入力の増加に対し出力が単調減少する関数を用い、感度が一番低いB成分の変換関数BV(b)は入力の増加に対し出力が単調増加する関数を用いる。さらに、感度が中間のG成分の変換関数GV(g)は入力の増加に対し出力が単調増加した後単調減少する関数を用いる。ここで、単調減少とはどの値も直前の値以下であることであり、単調増加とはどの値も直前の値以上であることである。また、図6の変換関数の場合、上述した「透過像データに対し、値の所定の範囲」は図3のステップ2で求めた入力範囲に相当する。
【0059】
なお、R成分とG成分は入力範囲内で単調減少後に微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)があっても影響が少ないのでこれで良い。また、B成分とG成分は入力範囲内で単調増加前に微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)があっても影響が少ないのでこれで良い。この場合は、「透過像データに対し、値の所定の範囲」は入力範囲から微少な増減部分を除いた部分である。
【0060】
なお、「透過像データに対し、値の所定の範囲」は入力範囲内で階調変換の出力がほぼ出力範囲全体に及ぶ主要な値の範囲である。
【0061】
また、図6に示すように、変換関数RV(r),GV(g),BV(b)は、色成分ごとの入力範囲が一定の出力範囲に出力されるように変換する。すなわち、入力範囲が変化しても、常に出力範囲は一定で、画像信号幅のほぼ全体が出力範囲として使われる。
【0062】
具体的に、変換関数RV(r),GV(g),BV(b)は、色成分ごとの入力範囲に対しそれぞれ規格化された入力r,g,bに対して定められた変換関数である。すなわち、変換関数は入力範囲の変化に追従して変化し、入力の入力範囲に対する位置(何%位置か)で出力が決定する関数である。
【0063】
色成分ごとの入力値をR,G,B、入力範囲に対しそれぞれ規格化された入力値をr,g,bとすると、r,g,bは式、
r=(R−Rmin)/(Rmax−min) ………(1)
g=(G−Gmin)/(Gmax−Gmin) ………(2)
b=(B−Bmin)/(Bmax−Bmin) ………(3)
で計算される。ここで、r,g,bはR,G,Bがminのとき0、maxのとき1となる。
【0064】
図6に示す階調変換の変換関数は、具体的には、R成分の変換関数RV(r)は、Rの入力範囲を所定の比(1:1)で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第一値R1から第二値R0まで単調減少させ、高い範囲は出力を第二値R0とする関数であり、B成分の変換関数BV(b)は、Bの入力範囲を所定の比(1:1)で2分し、低い範囲は出力を第三値B0とし、高い範囲は入力の増加に対し出力を第三値B0から第四値B1まで単調増加させる関数である。さらに、G成分の変換関数GV(g)は、Gの入力範囲を所定の比(1:1)で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第五値G0から第六値G1まで単調増加させ、高い範囲は入力の増加に対し出力を第六値G1から第七値G0’まで単調減少させる関数である。
【0065】
図6に示す階調変換の変換関数RV(r),GV(g),BV(b)は、式、
で表される。ここで、定数R0,G0,G0’,B0,R1,G1,B1は任意に選べ るが、画像信号幅を広く使うように選ぶ。例えば、8ビット画像信号の場合、R0,G 0,G0’,B0を0、R1,G1,B1を255とする。
【0066】
階調変換部7dは透過像R,G,Bごとに、透過像10内の各画素で式(1)、式(2)、式(3)及び、式(4)、式(5)、式(6)を計算することで階調変換後の透過像RV,GV,BVを得る(図3のステップS3)。
【0067】
図3のステップS4で、表示部7aに色成分R,G,Bごとの透過像RV,GV,BVを送りカラー表示させる。
【0068】
以上のフローで述べたように、色成分ごとの透過像R,G,Bが入力範囲求出部7cに入力されると階調変換された透過像RV,GV,BVが表示部7aに表示される。ここで、透過像R,G,BがX線検出器3から動画像として順次送られて来る場合、これを順次階調変換して表示することで、階調変換した透過像RV,GV,BVを動画像としてリアルタイムで表示部7aに表示できる。また、メモリに記憶した透過像R,G,Bを、階調変換して動画像または静止画像として表示部7aに表示することもできる。
【0069】
(第一の実施の形態の効果)
図7は第一実施形態における透過像のカラー表示の一例(カラー表示をグレースケール変換したもの)で、コンデンサを撮影した透過像である。図7(a)は階調変換前、図7(b)は階調変換後の表示である。
【0070】
図7(a)の階調変換前の表示においては、青色で細かな濃淡が表せる高透過率部が飽和気味の赤色と緑色が加算され淡赤っぽくなって不明瞭となっている。また緑色で細かな濃淡が表せる中間透過率部も飽和気味の赤色が加算され赤っぽくて不明瞭となり、また、低透過率部は暗い赤となり、全体に赤っぽくなって不明瞭である。
【0071】
これに対し、図7(b)の階調変換後の表示においては、低透過率部は赤色で細部がコントラストよく観察でき、中間透過率部は飽和気味の赤色が加算されることがなくなるので緑色で細部がコントラストよく観察でき、高透過率部は飽和気味の赤色と緑色が加算されることがなくなるので青色で細部がコントラストよく表示できる。
【0072】
すなわち、第一の実施形態によれば、感度が一番高いR成分に対しては入力の増加に対し出力が単調減少する変換関数RV(r)を用い、感度が中間のG成分に対しては入力の増加に対し出力が単調増加した後単調減少する変換関数GV(g)を用い、感度が一番低いB成分に対しては入力の増加に対し出力が単調増加する変換関数BV(b)を用いて色成分ごとに階調変換することで、低透過率部は赤色で中間透過率部は緑色で高透過率部は青色でコントラストよく視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0073】
また、第一の実施形態によれば、色成分ごとに入力範囲を求め、この入力範囲をそれぞれ常に一定の出力範囲に変換する(入力範囲に対しそれぞれ規格化された入力r,g,bに対して定められた)変換関数を用いて階調変換するので、入射するX線量の範囲12(図5参照)が変化しても、自動的に入力範囲13,14,15(図5参照)の変化に変換関数が追従して変化し、入力範囲を出力の画像信号幅いっぱいに無駄なく変換している(図6参照)ので、階調変換されるカラー透過像は自動的にコントラストを最大限に上げたカラー透過像となり、常に視認性を最大限に向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0074】
さらに、第一の実施形態によれば、透過像上で周辺を除いた入力範囲計算領域で入力範囲を求めるので周辺の明るさ低下などの画質低下の影響を受けずに入力範囲を求めることができる。
【0075】
(第一の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。また、以下の変形例は組み合わせて適用することもできる。
【0076】
(変形例1)
第一実施形態で、階調変換はまず、式(1)、式(2)、式(3)でr,g,bを求めて、次に、式(4)、式(5)、式(6)で変換して階調変換後の透過像RV,GV,BVを得ているが、これは説明を判りやすくするための記載であり、実際は、式(1)、式(2)、式(3)を式(4)、式(5)、式(6)に代入してr,g,bを消去して整理した変換関数を用いて、r,g,bを求めることなくR,G,Bから直接階調変換後の透過像RV,GV,BVを求めている。このようにしても、計算上等価で入力範囲の変化に変換関数が追従して変化し、「色成分ごとの入力範囲に対しそれぞれ規格化された入力r,g,bに対して定められた変換関数」あるいは「色成分ごとの入力範囲を、該入力範囲が変化してもそれぞれ常に一定の出力範囲に変換する変換関数」を用いて階調変換していることに変わりはない。
【0077】
(変形例2)
第一の実施形態で、階調変換の変換関数は明暗を反転させる変換関数を用いてもよい。この場合、第一の実施形態における変換関数に対して、単調減少を単調増加で、単調増加を単調減少で置き換えた変換関数を用いる。
【0078】
図8は第一実施形態の変形例2に係る階調変換の変換関数の一例である。横軸は階調変換の入力、縦軸は階調変換の出力である。図8の変換関数は図6の変換関数の縦軸方向を反転させた関数で、R0,G0,G0’,B0を255、R1,G1,B1を0として式(4)、式(5)、式(6)そのままで表される関数ある。
【0079】
図8の変換関数を用いた場合、変換されたカラーの透過像RV,GV,BVはカラーが反転し、赤、緑、青に見える部分はそれぞれ補色の青緑、赤紫、黄色に見える画像となる。すなわち、低透過率部は青緑で中間透過率部は赤紫で高透過率部は黄色で表される。しかし、赤が青緑に、緑が赤紫に、青が黄色に変わるだけで、第一実施形態と同様にコントラストよく視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0080】
なお、図8の変換関数で変換することは、図6の変換関数で変換した後、明暗を反転させる反転変換を施すことと同じである。また、図8の変換関数で変換することは、明暗を反転させる反転変換で変換した後、図6の変換関数で変換を施すこととも同じである。
【0081】
(変形例3)
第一の実施形態で、階調変換の変換関数(図6)はこれには限られずさまざまな変形が可能である。例えば、R0,G0,G0’,B0は0でなく画像信号幅の端部に近い値であればよく、互いに異なる値でもよい。R1,G1,B1も255でなく画像信号幅の他方の端部に近い値であればよく、互いに異なる値でもよい。
【0082】
また、入力範囲を所定の比(1:1)で2分して低い範囲と高い範囲で関数の傾斜を切換えているが、この比率は1対1でなくてもよくR,G,Bで異なっていてもよい。
【0083】
また、Rの入力範囲の高い範囲と、Bの入力範囲の低い範囲は一定値であるが厳密に一定値でなくてもゆるい傾斜なら、上り傾斜でも下り傾斜でも画像はあまり変わらず許容できる。
【0084】
また、変換関数は折れ線グラフのように多数の直線の組み合わせでもよく、曲線とすることもできる。
【0085】
図9は第一実施形態の変形例3に係る階調変換の変換関数の一例である。これは、曲線の変換関数の一例である。
【0086】
その他、第一実施形態からの変形として、Rの変換関数は入力範囲内で、単調減少した後、フラット部の代わりに微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)が有っても、この増減は明るいB(青)あるいはG(緑)にかくれて目立たなくなって問題ない。
【0087】
同様に、Bの変換関数は入力範囲内で、単調増加する前に、フラット部の代わりに微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)が有っても、この増減は明るいR(赤)あるいはG(緑)にかくれて目立たなくなって問題ない。
【0088】
さらに、同様に、Gの変換関数は入力範囲内で、単調増加する前に微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)が有っても、この増減は明るいR(赤)にかくれて目立たなくなって問題なく、また、入力範囲内で、単調増加してから単調減少した後に微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)が有っても、この増減は明るいB(青)にかくれて目立たなくなって問題ない。
【0089】
(変形例4)
第一の実施形態で、色成分は3色としたが、何色でも良い。図10は第一実施形態の変形例4に係る階調変換の変換関数の一例である。図10(a)はR,Bの2色の場合、図10(b)はR,Y(黄),G,B,P(紫)の5色の場合である。
【0090】
(変形例5)
第一の実施形態で、入力範囲を求めるとき、透過像10上の入力範囲計算領域11で求めたが、入力範囲計算領域11は透過像10の全体としてもよければ、操作者が選択できるようにしてもよい。
【0091】
(変形例6)
第一の実施形態で、入力範囲を求めるとき、透過像10上の入力範囲計算領域11の最小値と最大値を求めこの範囲を入力範囲としたが、最小値から最大値までを昇順にならべて、最小値より所定番目に大きい値から最大値より所定番目に小さな値までを前記入力範囲とすることもできる。また、同じことであるが画像値のヒストグラム(画像値に対する画素数頻度)を作り、下より積分画素数が所定数になる位置から上より積分画素数が所定数になる位置までを入力範囲とすることもできる。
【0092】
これにより、異常値(例えば常に0)を生じる異常画素があった場合、この画素に影響されずに入力範囲を求めることができる。
【0093】
(変形例7)
第一の実施形態では、X線検出器3の出力する色成分ごとの透過像をそのまま階調変換しているが、画像処理を行ってから、第一の実施形態で用いた変換関数で階調変換を行っても良い。画像処理としては例えばLOG変換、感度補正、オフセット補正、平均処理、フィルター処理等がある。
【0094】
(変形例8)
第一の実施形態ではカラーカメラ3bは透過像をデジタルデータとして出力するものを用いたが、アナログ出力として制御処理部7でデジタルデータに変換してもよい。
【0095】
(変形例9)
第一の実施形態では、カラーX線II(放射線可視光変換手段)3aとカラーカメラ(撮像手段)3bで構成した放射線検出器3を使用しているが、これには限られない。例えば、放射線可視光変換手段としてカラーシンチレータ層を持ったプレートを用いてもよく、また、電子を増幅するマイクロチャンネルプレートの入力面にシンチレータ層と光電層を設け、出力面にカラーシンチレータ層を設けたものを用いてもよい。
【0096】
(変形例10)
第一の実施形態で、階調変換したカラーの透過像RV,GV,BVはメモリに記憶し、メモリから読み出してそのまま表示することもできる。
【0097】
また、第一の実施形態の制御処理部7は、収集されたカラーの透過像R,G,B、あるいは階調変換したカラーの透過像RV,GV,BVをLANなどで通信して、あるいはDVDなどのメディアを用いて他所のコンピュータに送り表示させることができる。
【0098】
また、第一の実施形態の制御処理部7は、他の第一の実施形態と同様の透視検査装置からLANなどで通信して、あるいはDVDなどのメディアを用いて送られてきたカラーの透過像R,G,B、に対し階調変換してカラー表示することもできる。
【0099】
(変形例11)
本発明は機構部の方式には関係せず、色成分ごとの透過像データを出力する放射線検出手段を持ちさえすれば、どのような方式の放射線透視検査装置にも適用できる。
【0100】
(変形例12)
本発明は、放射線としては、X線だけでなく、被検体に応じ、γ線、マイクロ波等の被検体に対して透過性のある放射線を用いることができる。
【符号の説明】
【0101】
1…X線管、2…X線ビーム、3…X線検出器、3a…カラーX線II、3aa…入力面、3ab…出力面、3b…カラーカメラ、4…テーブル、5…被検体、6…テーブル駆動機構、7…制御処理部、7a…表示部、7b…入力部、7c…入力範囲求出部、7d…階調変換部、10…透過像、11…入力範囲計算領域、12…X線量の範囲、13…Rの入力範囲、14…Gの入力範囲、15…Bの入力範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過性の放射線を用いて、被検体の透過像を撮影し、被検体内部の検査を行う産業用あるいは医療用の放射線透視検査装置及び透過像を表示する透過像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線透視検査装置は、放射線源より放射され被検体を透過した放射線ビームを放射線検出器で検出して、出力される透過像(透過像データ)を画像表示して被検体内部を観察し検査する装置である。
【0003】
放射線(X線)検出器としては、例えば、X線ビームの強度分布像を可視光像に変換するX線イメージインテンシファイア(以下X線IIと記載する)とこの可視光像を撮影して透過像(透過像データ)として出力するカメラより成る放射線検出器が用いられる。
【0004】
上述した放射線透視検査装置では、近年、複数の色成分の透過像を出力する放射線検出器を用いて透過像のカラー表示が行われている。この種の放射線検出器の第一の例として、カラーX線イメージインテンシファイア(略してカラーI.I.(登録商標)以下カラーX線IIと記載する)とカラーカメラを用いた放射線検出器が、特許文献1等で知られている。
【0005】
カラーX線IIは入力面のシンチレータ層で、入射した放射線(X線)の分布を電子の分布に変換し、この電子を加速して出力面に結像させ出力面のカラーシンチレータ層を発光させて可視光像に変換するものである。出力面のカラーシンチレータはカラー(多色)で発光するが、色成分(R,G,B:赤、緑、青)ごとに発光特性曲線が異なる。すなわち電子の入射量に対しR,G,Bの順に感度が高い特性がある。
【0006】
カラーカメラは変換されたカラーの可視光像を撮影し色成分(R,G,B)ごとの透過像を出力する。
【0007】
第二の例として、カラーシンチレータとカラーカメラを用いた放射線検出器が、特許文献2等で知られている。
【0008】
これは、放射線(X線)を入力面のカラーシンチレータ層に入射させて発光させることで、放射線の分布を可視光像に変換して、この可視光像をカラーカメラで撮影するものである。カラーシンチレータはカラーで発光するが、色成分(R,G,B:赤、緑、青)ごとに発光特性曲線が異なる。すなわち放射線の入射量に対しR,G,Bの順に感度が高い特性がある。カラーカメラは変換されたカラーの可視光像を撮影し色成分(R,G,B)ごとの透過像を出力する。
【0009】
上述した複数の色成分の透過像をカラー表示で観察すると、低透過率部(低放射線部)は感度の高い赤色で細部がよく観察でき、高透過率部(高放射線部)は、赤色は飽和するが感度の低い青色で細部がよく観察できる。すなわち、この構成でダイナミックレンジの広い放射線検出器が可能となる。
【0010】
図11は複数の色成分の透過像を出力する放射線検出器の検出特性曲線の例を示すグラフである。横軸は1画素への入射X線量、縦軸は1画素の出力(明るさ)である。各色成分R,G,Bそれぞれ、出力がノイズレベルから飽和レベルに達するまでの入力範囲がダイナミックレンジとなる。カラーの透過像のダイナミックレンジは各色成分のダイナミックレンジの論理和の領域となり、単色の場合と比べ増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−179424号公報
【特許文献2】特開2003−202382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の放射線透視検査装置で、ダイナミックレンジの広い複数の色成分の透過像を出力する放射線検出器を用いて透過像のカラー表示をする場合、視認性が最もよいカラー表示とは言えなかった。
【0013】
その理由は、高透過率部は感度の低い青色で細部が観察できはするが、飽和気味の赤色や緑色が重なり、それが青色の細かな濃淡のコントラストを低下させ、最良の識別度にはならないことにある。また、同様に、中間透過率部は感度の中間の緑色で細部が観察できはするが、飽和気味の赤色が重なり、それが緑色の細かな濃淡のコントラストを低下させ、最良の識別度にはならないことにある。
【0014】
本発明の目的は、視認性を向上させたカラーの透過像を表示する放射線透視検査装置及び透過像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するため、本発明に係る請求項1記載の透過像表示装置は、放射線源から被検体に向けて放射され前記被検体を透過した放射線を検出して得られる感度の異なる複数の色成分ごとの透過像データに対し、前記色成分ごとの透過像データそれぞれに、互いに異なる変換関数で階調変換を加える階調変換手段と、前記階調変換を加えた色成分ごとの透過像データをカラー表示する表示手段より成り、前記階調変換手段は、感度が一番高い第一の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調減少する第一の階調変換を行い、感度が一番低い第二の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調増加する第二の階調変換を行い、色成分が3以上の場合は少なくとも1つの感度が中間の第三の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調増加した後単調減少する第三の階調変換を行うことを要旨とする。
【0016】
この構成により、感度が一番高い第一の色成分に対しては入力の増加に対し出力が単調減少する変換関数を用い、感度が一番低い第二の色成分に対しては入力の増加に対し出力が単調増加する変換関数を用い、感度が中間の第三の色成分に対しては入力の増加に対し出力が単調増加した後単調減少する変換関数を用いて色成分ごとに階調変換することで、低透過率部は第一の色成分で高透過率部は第二の色成分で中間透過率部は第三の色成分でコントラストよく視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0017】
本発明に係る請求項2記載の透過像表示装置は、請求項1に記載の透過像表示装置において、前記色成分ごとの透過像データの値の範囲を表す入力範囲をそれぞれの色成分ごとに求める入力範囲求出手段を有し、前記階調変換手段は、前記色成分ごとの入力範囲を、該入力範囲が変化してもそれぞれ常に一定の出力範囲に変換する変換関数で階調変換を加えることを要旨とする。
【0018】
この構成により、色成分ごとに入力範囲を求め、この入力範囲を常に一定の出力範囲に変換する変換関数を用いて階調変換するので、入射する放射線量の範囲が変化しても、入力範囲を出力の画像信号幅いっぱいに無駄なく変換することが可能になり、階調変換されるカラー透過像は自動的にコントラストを最大限に上げたカラー透過像となり、常に視認性を最大限に向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0019】
本発明に係る請求項3記載の透過像表示装置は、請求項2に記載の透過像表示装置において、前記入力範囲求出手段は、前記色成分ごとの透過像データのそれぞれの透過像上の所定範囲内で求めた最小値から最大値まで、あるいは、最小値より所定番目に大きい値から最大値より所定番目に小さな値までを前記入力範囲とすることを要旨とする。
【0020】
この構成により、透過像データの値の範囲である入力範囲を透過像上の周辺の明るさ低下などの画質低下の影響を受けずに求めることができる。また、最小値より大きめの値から最大値より小さめの値までを入力範囲とすることで、異常画素があった場合、この画素に影響されずに入力範囲を求めることができる。
【0021】
本発明に係る請求項4記載の透過像表示装置は、請求項2または請求項3に記載の透過像表示装置において、前記第一の階調変換は、前記第一の色成分の透過像データに対し、前記第一の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第一値から第二値まで単調減少させ、高い範囲は出力を前記第二値とする階調変換であり、前記第二の階調変換は、前記第二の色成分の透過像データに対し、前記第二の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は出力を第三値とし、高い範囲は入力の増加に対し出力を前記第三値から第四値まで単調増加させる階調変換であることを要旨とする。
【0022】
この構成により、具体的に第一の階調変換及び第二の階調変換を実施できる。
【0023】
本発明に係る請求項5記載の透過像表示装置は、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の透過像表示装置において、色成分が3以上の場合は前記第三の階調変換は、前記第三の色成分の透過像データに対し、前記第三の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第五値から第六値まで単調増加させ、高い範囲は入力の増加に対し出力を前記第六値から第七値まで単調減少させる階調変換であることを要旨とする。
【0024】
この構成により、具体的に第三の階調変換を実施できる。
【0025】
本発明に係る請求項6記載の透過像表示装置は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の透過像表示装置において、前記階調変換手段は、前記単調減少を単調増加で、前記単調増加を単調減少で置き換えた階調変換を加えることを要旨とする。
【0026】
この構成により、階調変換された色成分ごとの透過像はそれぞれ明暗が反転し、カラー表示はカラーが反転し、低透過率部は第一の色成分の補色で、高透過率部は第二の色成分の補色で中間透過率部は第三の色成分の補色でコントラストよく視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができ、請求項1乃至請求項5と同様の効果をあげることができる。
【0027】
本発明に係る請求項7記載の放射線透視検査装置は、被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して放射線に対し感度の異なる複数の色成分ごとの透過像データを出力する放射線検出手段と、前記色成分ごとの透過像データに、階調変換を加えてカラー表示する請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の透過像表示装置を有することを要旨とする。
【0028】
この構成により、視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0029】
本発明に係る請求項8記載の放射線透視検査装置は、請求項7に記載の放射線透視検査装置において、前記放射線検出手段は放射線を検出してカラーの可視光像に変換する放射線可視光変換手段と前記カラーの可視光像を撮影して複数の色成分ごとの透過像データを出力する撮像手段より成ることを要旨とする。
【0030】
この構成により、視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、複数の色成分の透過像を出力する放射線検出器を用いて、視認性を向上させたカラーの透過像を表示する放射線透視検査装置及び透過像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一実施形態に係る放射線透視検査装置の構成を示した模式図(正面図)。
【図2】第一の実施形態に係るX線検出器の検出特性関数の例を示すグラフ。
【図3】第一の実施形態に係る透過像表示のフロー図。
【図4】第一実施形態に係る透過像上の入力範囲計算領域の一例。
【図5】第一実施形態に係る透過像の入力範囲の一例を示すグラフ。
【図6】第一実施形態に係る階調変換の変換関数の一例。
【図7】第一実施形態における透過像のカラー表示の一例(カラー表示をグレースケール変換したもの)((a)階調変換前、(b)階調変換後)。
【図8】第一実施形態の変形例2に係る階調変換の変換関数の一例。
【図9】第一実施形態の変形例3に係る階調変換の変換関数の一例。
【図10】第一実施形態の変形例4に係る階調変換の変換関数の一例((a)2色の場合、(b)5色の場合)。
【図11】複数の色成分の透過像を出力する放射線検出器の検出特性曲線の例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下図面を参照して、本発明実施形態を説明する。
【0034】
(本発明の第一の実施の形態の構成)
以下、本発明の第一の実施形態の構成について図1、図2を参照して説明する。
【0035】
図1は本発明の第一実施形態に係る放射線透視検査装置の構成を示した模式図(正面図)である。
【0036】
X線管(放射線源)1と、X線管1のX線焦点Fより放射されたX線の一部である角錐状のX線ビーム(放射線)2を2次元の分解能で検出するX線検出器(放射線検出手段)3とが対向して配置され、このX線ビーム2に入るようにテーブル4上に載置された被検体5を透過したX線ビーム2がX線検出器3により検出され、透過像(透過像データ)として出力される。
【0037】
テーブル4はテーブル駆動機構6により3次元的な平行移動、テーブル面に沿った回転、およびテーブル面の傾斜等がなされ、被検体5の透視位置、透視角度、拡大率などが変更される。
【0038】
X線検出器3はカラーX線イメージインテンシファイア(略してカラーI.I.(登録商標)、以下カラーX線IIと記載する)(放射線可視光変換手段)3aとカラーカメラ(撮像手段)3bより成る。
【0039】
カラーX線II3aは、入力面3aaのシンチレータ層と光電層とにより、入射した放射線(X線)の分布を光電子の分布に変換し、この光電子を加速して出力面3abに結像させ出力面3abのカラーシンチレータ層を発光させてカラー(多色)の可視光像に変換するものである。出力面3abのカラーシンチレータ層は、色成分(R,G,B:赤、緑、青)ごとに発光特性曲線が異なる。すなわち電子の入射量に対しR,G,Bの順に感度が高い特性がある。
【0040】
図2は第一の実施形態に係るX線検出器の検出特性関数の例を示すグラフである。横軸は1画素への入射X線量I、縦軸は1画素の明るさ(検出器の出力の大きさで大きいほど明るい)である。R,G,Bの検出特性関数をそれぞれ、RI(I),GI(I),BI(I)で表す。放射線(X線)の入射量に対しR,G,Bの順に感度が高く、また、R,G,Bの順で低いX線量で飽和する特性である。
【0041】
カラーカメラ3bは変換されたカラーの可視光像を撮影し色成分(R,G,B)ごとの透過像(透過像データ)をデジタルデータとして出力する。
【0042】
構成要素として、他に、テーブル駆動機構6を制御し、また、X線検出器3からの透過像を処理する制御処理部(透過像表示装置)7、処理結果等を表示する表示部7a、X線管1を制御するX線制御部(図示省略)等がある。
【0043】
表示部7aはカラー表示を行う液晶パネル等で構成されるものである。
【0044】
制御処理部7は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク(不揮発メモリ)、表示部7a、入力部(キーボードやマウス等)7b、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0045】
制御処理部7は、機構制御ボードにより、テーブル駆動機構6が出力する動作位置の信号を受けてテーブル駆動機構6を制御して被検体の位置合わせを行わせる。
【0046】
また、制御処理部7は、X線検出器3から動画像として順次送られる透過像を収集し、画像処理し、動画像としてリアルタイムで表示部7aに表示するほか、メモリに記憶した透過像を、動画像または静止画像として表示部7aに表示する。
【0047】
また、制御処理部7は、X線制御部(図示省略)に指令を出し、管電圧、管電流を指定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体に合わせて変えることができる。
【0048】
図1に示すように、制御処理部7はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、X線検出器3から入力した透過像の値の入力範囲を求める入力範囲求出部7c、この入力範囲を反映して透過像の階調を変換する階調変換部7d、等を備えている。
【0049】
(第一の実施の形態の作用)
図3ないし図6を参照して作用を説明する。
【0050】
図3は第一の実施形態に係る透過像表示のフロー図である。
【0051】
ステップS1で表示すべき色成分ごとの透過像R,G,BがX線検出器3から、あるいは制御処理部7のメモリから入力範囲求出部7cに入力される。
【0052】
ステップS2で、入力範囲求出部7cはR,G,Bごとに、値の範囲である入力範囲を以下のように求める。
【0053】
図4は第一実施形態に係る透過像上の入力範囲計算領域の一例である。透過像10上の周辺を除いた領域が入力範囲計算領域11である。
【0054】
入力範囲求出部7cは透過像R,G,Bごとに入力範囲計算領域11内の最小値Rmin,Gmin,Bminと最大値Rmax,Gmax,Bmaxをそれぞれ求め、この最小値Rmin,Gmin,Bminと最大値Rmax,Gmax,Bmaxまでを入力範囲とする。
【0055】
図5は第一実施形態に係る透過像の入力範囲の一例を示すグラフである。横軸はX線量I、縦軸は明るさR,G,Bで、入力範囲計算領域11に対して入射するX線量の範囲12に対応して、Rの入力範囲13が明るい位置に、Gの入力範囲14が中間に、Bの入力範囲15が暗い位置に、それぞれ求められる。
【0056】
図3に戻り、ステップS3で階調変換部7dは透過像R,G,Bごとに階調変換を以下のように行う。
【0057】
図6は第一実施形態に係る階調変換の変換関数の一例である。横軸は階調変換の入力、縦軸は階調変換の出力である。
【0058】
図6に示すように、変換関数は基本的に透過像データに対し、値の所定の範囲内で、感度が一番高いR成分の変換関数RV(r)は入力の増加に対し出力が単調減少する関数を用い、感度が一番低いB成分の変換関数BV(b)は入力の増加に対し出力が単調増加する関数を用いる。さらに、感度が中間のG成分の変換関数GV(g)は入力の増加に対し出力が単調増加した後単調減少する関数を用いる。ここで、単調減少とはどの値も直前の値以下であることであり、単調増加とはどの値も直前の値以上であることである。また、図6の変換関数の場合、上述した「透過像データに対し、値の所定の範囲」は図3のステップ2で求めた入力範囲に相当する。
【0059】
なお、R成分とG成分は入力範囲内で単調減少後に微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)があっても影響が少ないのでこれで良い。また、B成分とG成分は入力範囲内で単調増加前に微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)があっても影響が少ないのでこれで良い。この場合は、「透過像データに対し、値の所定の範囲」は入力範囲から微少な増減部分を除いた部分である。
【0060】
なお、「透過像データに対し、値の所定の範囲」は入力範囲内で階調変換の出力がほぼ出力範囲全体に及ぶ主要な値の範囲である。
【0061】
また、図6に示すように、変換関数RV(r),GV(g),BV(b)は、色成分ごとの入力範囲が一定の出力範囲に出力されるように変換する。すなわち、入力範囲が変化しても、常に出力範囲は一定で、画像信号幅のほぼ全体が出力範囲として使われる。
【0062】
具体的に、変換関数RV(r),GV(g),BV(b)は、色成分ごとの入力範囲に対しそれぞれ規格化された入力r,g,bに対して定められた変換関数である。すなわち、変換関数は入力範囲の変化に追従して変化し、入力の入力範囲に対する位置(何%位置か)で出力が決定する関数である。
【0063】
色成分ごとの入力値をR,G,B、入力範囲に対しそれぞれ規格化された入力値をr,g,bとすると、r,g,bは式、
r=(R−Rmin)/(Rmax−min) ………(1)
g=(G−Gmin)/(Gmax−Gmin) ………(2)
b=(B−Bmin)/(Bmax−Bmin) ………(3)
で計算される。ここで、r,g,bはR,G,Bがminのとき0、maxのとき1となる。
【0064】
図6に示す階調変換の変換関数は、具体的には、R成分の変換関数RV(r)は、Rの入力範囲を所定の比(1:1)で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第一値R1から第二値R0まで単調減少させ、高い範囲は出力を第二値R0とする関数であり、B成分の変換関数BV(b)は、Bの入力範囲を所定の比(1:1)で2分し、低い範囲は出力を第三値B0とし、高い範囲は入力の増加に対し出力を第三値B0から第四値B1まで単調増加させる関数である。さらに、G成分の変換関数GV(g)は、Gの入力範囲を所定の比(1:1)で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第五値G0から第六値G1まで単調増加させ、高い範囲は入力の増加に対し出力を第六値G1から第七値G0’まで単調減少させる関数である。
【0065】
図6に示す階調変換の変換関数RV(r),GV(g),BV(b)は、式、
で表される。ここで、定数R0,G0,G0’,B0,R1,G1,B1は任意に選べ るが、画像信号幅を広く使うように選ぶ。例えば、8ビット画像信号の場合、R0,G 0,G0’,B0を0、R1,G1,B1を255とする。
【0066】
階調変換部7dは透過像R,G,Bごとに、透過像10内の各画素で式(1)、式(2)、式(3)及び、式(4)、式(5)、式(6)を計算することで階調変換後の透過像RV,GV,BVを得る(図3のステップS3)。
【0067】
図3のステップS4で、表示部7aに色成分R,G,Bごとの透過像RV,GV,BVを送りカラー表示させる。
【0068】
以上のフローで述べたように、色成分ごとの透過像R,G,Bが入力範囲求出部7cに入力されると階調変換された透過像RV,GV,BVが表示部7aに表示される。ここで、透過像R,G,BがX線検出器3から動画像として順次送られて来る場合、これを順次階調変換して表示することで、階調変換した透過像RV,GV,BVを動画像としてリアルタイムで表示部7aに表示できる。また、メモリに記憶した透過像R,G,Bを、階調変換して動画像または静止画像として表示部7aに表示することもできる。
【0069】
(第一の実施の形態の効果)
図7は第一実施形態における透過像のカラー表示の一例(カラー表示をグレースケール変換したもの)で、コンデンサを撮影した透過像である。図7(a)は階調変換前、図7(b)は階調変換後の表示である。
【0070】
図7(a)の階調変換前の表示においては、青色で細かな濃淡が表せる高透過率部が飽和気味の赤色と緑色が加算され淡赤っぽくなって不明瞭となっている。また緑色で細かな濃淡が表せる中間透過率部も飽和気味の赤色が加算され赤っぽくて不明瞭となり、また、低透過率部は暗い赤となり、全体に赤っぽくなって不明瞭である。
【0071】
これに対し、図7(b)の階調変換後の表示においては、低透過率部は赤色で細部がコントラストよく観察でき、中間透過率部は飽和気味の赤色が加算されることがなくなるので緑色で細部がコントラストよく観察でき、高透過率部は飽和気味の赤色と緑色が加算されることがなくなるので青色で細部がコントラストよく表示できる。
【0072】
すなわち、第一の実施形態によれば、感度が一番高いR成分に対しては入力の増加に対し出力が単調減少する変換関数RV(r)を用い、感度が中間のG成分に対しては入力の増加に対し出力が単調増加した後単調減少する変換関数GV(g)を用い、感度が一番低いB成分に対しては入力の増加に対し出力が単調増加する変換関数BV(b)を用いて色成分ごとに階調変換することで、低透過率部は赤色で中間透過率部は緑色で高透過率部は青色でコントラストよく視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0073】
また、第一の実施形態によれば、色成分ごとに入力範囲を求め、この入力範囲をそれぞれ常に一定の出力範囲に変換する(入力範囲に対しそれぞれ規格化された入力r,g,bに対して定められた)変換関数を用いて階調変換するので、入射するX線量の範囲12(図5参照)が変化しても、自動的に入力範囲13,14,15(図5参照)の変化に変換関数が追従して変化し、入力範囲を出力の画像信号幅いっぱいに無駄なく変換している(図6参照)ので、階調変換されるカラー透過像は自動的にコントラストを最大限に上げたカラー透過像となり、常に視認性を最大限に向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0074】
さらに、第一の実施形態によれば、透過像上で周辺を除いた入力範囲計算領域で入力範囲を求めるので周辺の明るさ低下などの画質低下の影響を受けずに入力範囲を求めることができる。
【0075】
(第一の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。また、以下の変形例は組み合わせて適用することもできる。
【0076】
(変形例1)
第一実施形態で、階調変換はまず、式(1)、式(2)、式(3)でr,g,bを求めて、次に、式(4)、式(5)、式(6)で変換して階調変換後の透過像RV,GV,BVを得ているが、これは説明を判りやすくするための記載であり、実際は、式(1)、式(2)、式(3)を式(4)、式(5)、式(6)に代入してr,g,bを消去して整理した変換関数を用いて、r,g,bを求めることなくR,G,Bから直接階調変換後の透過像RV,GV,BVを求めている。このようにしても、計算上等価で入力範囲の変化に変換関数が追従して変化し、「色成分ごとの入力範囲に対しそれぞれ規格化された入力r,g,bに対して定められた変換関数」あるいは「色成分ごとの入力範囲を、該入力範囲が変化してもそれぞれ常に一定の出力範囲に変換する変換関数」を用いて階調変換していることに変わりはない。
【0077】
(変形例2)
第一の実施形態で、階調変換の変換関数は明暗を反転させる変換関数を用いてもよい。この場合、第一の実施形態における変換関数に対して、単調減少を単調増加で、単調増加を単調減少で置き換えた変換関数を用いる。
【0078】
図8は第一実施形態の変形例2に係る階調変換の変換関数の一例である。横軸は階調変換の入力、縦軸は階調変換の出力である。図8の変換関数は図6の変換関数の縦軸方向を反転させた関数で、R0,G0,G0’,B0を255、R1,G1,B1を0として式(4)、式(5)、式(6)そのままで表される関数ある。
【0079】
図8の変換関数を用いた場合、変換されたカラーの透過像RV,GV,BVはカラーが反転し、赤、緑、青に見える部分はそれぞれ補色の青緑、赤紫、黄色に見える画像となる。すなわち、低透過率部は青緑で中間透過率部は赤紫で高透過率部は黄色で表される。しかし、赤が青緑に、緑が赤紫に、青が黄色に変わるだけで、第一実施形態と同様にコントラストよく視認性を向上させたカラーの透過像を表示することができる。
【0080】
なお、図8の変換関数で変換することは、図6の変換関数で変換した後、明暗を反転させる反転変換を施すことと同じである。また、図8の変換関数で変換することは、明暗を反転させる反転変換で変換した後、図6の変換関数で変換を施すこととも同じである。
【0081】
(変形例3)
第一の実施形態で、階調変換の変換関数(図6)はこれには限られずさまざまな変形が可能である。例えば、R0,G0,G0’,B0は0でなく画像信号幅の端部に近い値であればよく、互いに異なる値でもよい。R1,G1,B1も255でなく画像信号幅の他方の端部に近い値であればよく、互いに異なる値でもよい。
【0082】
また、入力範囲を所定の比(1:1)で2分して低い範囲と高い範囲で関数の傾斜を切換えているが、この比率は1対1でなくてもよくR,G,Bで異なっていてもよい。
【0083】
また、Rの入力範囲の高い範囲と、Bの入力範囲の低い範囲は一定値であるが厳密に一定値でなくてもゆるい傾斜なら、上り傾斜でも下り傾斜でも画像はあまり変わらず許容できる。
【0084】
また、変換関数は折れ線グラフのように多数の直線の組み合わせでもよく、曲線とすることもできる。
【0085】
図9は第一実施形態の変形例3に係る階調変換の変換関数の一例である。これは、曲線の変換関数の一例である。
【0086】
その他、第一実施形態からの変形として、Rの変換関数は入力範囲内で、単調減少した後、フラット部の代わりに微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)が有っても、この増減は明るいB(青)あるいはG(緑)にかくれて目立たなくなって問題ない。
【0087】
同様に、Bの変換関数は入力範囲内で、単調増加する前に、フラット部の代わりに微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)が有っても、この増減は明るいR(赤)あるいはG(緑)にかくれて目立たなくなって問題ない。
【0088】
さらに、同様に、Gの変換関数は入力範囲内で、単調増加する前に微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)が有っても、この増減は明るいR(赤)にかくれて目立たなくなって問題なく、また、入力範囲内で、単調増加してから単調減少した後に微少な増減(例えば出力全幅の1/10以下)が有っても、この増減は明るいB(青)にかくれて目立たなくなって問題ない。
【0089】
(変形例4)
第一の実施形態で、色成分は3色としたが、何色でも良い。図10は第一実施形態の変形例4に係る階調変換の変換関数の一例である。図10(a)はR,Bの2色の場合、図10(b)はR,Y(黄),G,B,P(紫)の5色の場合である。
【0090】
(変形例5)
第一の実施形態で、入力範囲を求めるとき、透過像10上の入力範囲計算領域11で求めたが、入力範囲計算領域11は透過像10の全体としてもよければ、操作者が選択できるようにしてもよい。
【0091】
(変形例6)
第一の実施形態で、入力範囲を求めるとき、透過像10上の入力範囲計算領域11の最小値と最大値を求めこの範囲を入力範囲としたが、最小値から最大値までを昇順にならべて、最小値より所定番目に大きい値から最大値より所定番目に小さな値までを前記入力範囲とすることもできる。また、同じことであるが画像値のヒストグラム(画像値に対する画素数頻度)を作り、下より積分画素数が所定数になる位置から上より積分画素数が所定数になる位置までを入力範囲とすることもできる。
【0092】
これにより、異常値(例えば常に0)を生じる異常画素があった場合、この画素に影響されずに入力範囲を求めることができる。
【0093】
(変形例7)
第一の実施形態では、X線検出器3の出力する色成分ごとの透過像をそのまま階調変換しているが、画像処理を行ってから、第一の実施形態で用いた変換関数で階調変換を行っても良い。画像処理としては例えばLOG変換、感度補正、オフセット補正、平均処理、フィルター処理等がある。
【0094】
(変形例8)
第一の実施形態ではカラーカメラ3bは透過像をデジタルデータとして出力するものを用いたが、アナログ出力として制御処理部7でデジタルデータに変換してもよい。
【0095】
(変形例9)
第一の実施形態では、カラーX線II(放射線可視光変換手段)3aとカラーカメラ(撮像手段)3bで構成した放射線検出器3を使用しているが、これには限られない。例えば、放射線可視光変換手段としてカラーシンチレータ層を持ったプレートを用いてもよく、また、電子を増幅するマイクロチャンネルプレートの入力面にシンチレータ層と光電層を設け、出力面にカラーシンチレータ層を設けたものを用いてもよい。
【0096】
(変形例10)
第一の実施形態で、階調変換したカラーの透過像RV,GV,BVはメモリに記憶し、メモリから読み出してそのまま表示することもできる。
【0097】
また、第一の実施形態の制御処理部7は、収集されたカラーの透過像R,G,B、あるいは階調変換したカラーの透過像RV,GV,BVをLANなどで通信して、あるいはDVDなどのメディアを用いて他所のコンピュータに送り表示させることができる。
【0098】
また、第一の実施形態の制御処理部7は、他の第一の実施形態と同様の透視検査装置からLANなどで通信して、あるいはDVDなどのメディアを用いて送られてきたカラーの透過像R,G,B、に対し階調変換してカラー表示することもできる。
【0099】
(変形例11)
本発明は機構部の方式には関係せず、色成分ごとの透過像データを出力する放射線検出手段を持ちさえすれば、どのような方式の放射線透視検査装置にも適用できる。
【0100】
(変形例12)
本発明は、放射線としては、X線だけでなく、被検体に応じ、γ線、マイクロ波等の被検体に対して透過性のある放射線を用いることができる。
【符号の説明】
【0101】
1…X線管、2…X線ビーム、3…X線検出器、3a…カラーX線II、3aa…入力面、3ab…出力面、3b…カラーカメラ、4…テーブル、5…被検体、6…テーブル駆動機構、7…制御処理部、7a…表示部、7b…入力部、7c…入力範囲求出部、7d…階調変換部、10…透過像、11…入力範囲計算領域、12…X線量の範囲、13…Rの入力範囲、14…Gの入力範囲、15…Bの入力範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から被検体に向けて放射され前記被検体を透過した放射線を検出して得られる感度の異なる複数の色成分ごとの透過像データに対し、前記色成分ごとの透過像データそれぞれに、互いに異なる変換関数で階調変換を加える階調変換手段と、前記階調変換を加えた色成分ごとの透過像データをカラー表示する表示手段より成り、
前記階調変換手段は、感度が一番高い第一の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調減少する第一の階調変換を行い、感度が一番低い第二の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調増加する第二の階調変換を行い、色成分が3以上の場合は少なくとも1つの感度が中間の第三の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調増加した後単調減少する第三の階調変換を行うことを特徴とする透過像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の透過像表示装置において、
前記色成分ごとの透過像データの値の範囲を表す入力範囲をそれぞれの色成分ごとに求める入力範囲求出手段を有し、
前記階調変換手段は、前記色成分ごとの入力範囲を、該入力範囲が変化してもそれぞれ常に一定の出力範囲に変換する変換関数で階調変換を加えることを特徴とする透過像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の透過像表示装置において、
前記入力範囲求出手段は、前記色成分ごとの透過像データのそれぞれの透過像上の所定範囲内で求めた最小値から最大値まで、あるいは、最小値より所定番目に大きい値から最大値より所定番目に小さな値までを前記入力範囲とする透過像表示装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の透過像表示装置において、
前記第一の階調変換は、前記第一の色成分の透過像データに対し、前記第一の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第一値から第二値まで単調減少させ、高い範囲は出力を前記第二値とする階調変換であり、前記第二の階調変換は、前記第二の色成分の透過像データに対し、前記第二の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は出力を第三値とし、高い範囲は入力の増加に対し出力を前記第三値から第四値まで単調増加させる階調変換である透過像表示装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の透過像表示装置において、
色成分が3以上の場合は前記第三の階調変換は、前記第三の色成分の透過像データに対し、前記第三の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第五値から第六値まで単調増加させ、高い範囲は入力の増加に対し出力を前記第六値から第七値まで単調減少させる階調変換である透過像表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の透過像表示装置において、
前記階調変換手段は、前記単調減少を単調増加で、前記単調増加を単調減少で置き換えた階調変換を加える透過像表示装置。
【請求項7】
被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して放射線に対し感度の異なる複数の色成分ごとの透過像データを出力する放射線検出手段と、
前記色成分ごとの透過像データに、階調変換を加えてカラー表示する請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の透過像表示装置を有する放射線透視検査装置。
【請求項8】
請求項7に記載の放射線透視検査装置において、
前記放射線検出手段は放射線を検出してカラーの可視光像に変換する放射線可視光変換手段と前記カラーの可視光像を撮影して複数の色成分ごとの透過像データを出力する撮像手段より成る放射線透視検査装置。
【請求項1】
放射線源から被検体に向けて放射され前記被検体を透過した放射線を検出して得られる感度の異なる複数の色成分ごとの透過像データに対し、前記色成分ごとの透過像データそれぞれに、互いに異なる変換関数で階調変換を加える階調変換手段と、前記階調変換を加えた色成分ごとの透過像データをカラー表示する表示手段より成り、
前記階調変換手段は、感度が一番高い第一の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調減少する第一の階調変換を行い、感度が一番低い第二の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調増加する第二の階調変換を行い、色成分が3以上の場合は少なくとも1つの感度が中間の第三の色成分の透過像データに対し、値の所定の範囲で入力の増加に対し出力が単調増加した後単調減少する第三の階調変換を行うことを特徴とする透過像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の透過像表示装置において、
前記色成分ごとの透過像データの値の範囲を表す入力範囲をそれぞれの色成分ごとに求める入力範囲求出手段を有し、
前記階調変換手段は、前記色成分ごとの入力範囲を、該入力範囲が変化してもそれぞれ常に一定の出力範囲に変換する変換関数で階調変換を加えることを特徴とする透過像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の透過像表示装置において、
前記入力範囲求出手段は、前記色成分ごとの透過像データのそれぞれの透過像上の所定範囲内で求めた最小値から最大値まで、あるいは、最小値より所定番目に大きい値から最大値より所定番目に小さな値までを前記入力範囲とする透過像表示装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の透過像表示装置において、
前記第一の階調変換は、前記第一の色成分の透過像データに対し、前記第一の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第一値から第二値まで単調減少させ、高い範囲は出力を前記第二値とする階調変換であり、前記第二の階調変換は、前記第二の色成分の透過像データに対し、前記第二の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は出力を第三値とし、高い範囲は入力の増加に対し出力を前記第三値から第四値まで単調増加させる階調変換である透過像表示装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の透過像表示装置において、
色成分が3以上の場合は前記第三の階調変換は、前記第三の色成分の透過像データに対し、前記第三の色成分の入力範囲を所定の比で2分し、低い範囲は入力の増加に対し出力を第五値から第六値まで単調増加させ、高い範囲は入力の増加に対し出力を前記第六値から第七値まで単調減少させる階調変換である透過像表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の透過像表示装置において、
前記階調変換手段は、前記単調減少を単調増加で、前記単調増加を単調減少で置き換えた階調変換を加える透過像表示装置。
【請求項7】
被検体に向けて放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出して放射線に対し感度の異なる複数の色成分ごとの透過像データを出力する放射線検出手段と、
前記色成分ごとの透過像データに、階調変換を加えてカラー表示する請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の透過像表示装置を有する放射線透視検査装置。
【請求項8】
請求項7に記載の放射線透視検査装置において、
前記放射線検出手段は放射線を検出してカラーの可視光像に変換する放射線可視光変換手段と前記カラーの可視光像を撮影して複数の色成分ごとの透過像データを出力する撮像手段より成る放射線透視検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−261917(P2010−261917A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124671(P2009−124671)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
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