説明

透過型スクリーン、これを備えた背面投射型表示装置、および透過型スクリーンの製造方法

【課題】意匠性を向上させることができ、光制御シートと光拡散層との間の密着性、特に高温環境下における密着性を向上させることができ、かつ接着層の黄変を抑制することができる透過型スクリーン、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】映像光出射面45aの一部を構成する複数の単位光透過部47と、これと交互に配置された複数の単位光吸収部48を有する光制御シート45と、映像光出射側に配置された光拡散層55と、これらを接着する接着層50とを有する曲面状の積層体を備え、接着層50が(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下、及び(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む光硬化型接着剤組成物51の硬化物である透過型スクリーン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型スクリーン、これを備えた背面投射型表示装置、および透過型スクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像光をスクリーンの背面型から投射して表示する背面投射型表示装置においては、投射された映像光を透過して映像を表示させる透過型スクリーンが用いられている。このような透過型スクリーンとしては、様々な構造のものが提案されており、例えば、複数の単位光透過部と、単位光透過部と交互に配置された複数の帯状の単位光吸収部とを有する光制御シートと、光拡散層とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、例えば自動車等の分野においては、意匠性が非常に重要視される。現在、このような分野に適用される背面投射型表示装置には、単に映像を表示する機能が期待されているだけでなく、意匠面におけるシステム全体との調和も要求されている。
【0004】
そして、このような意匠性の観点から、曲面形状を有する透過型スクリーンの開発が望まれている。しかしながら、曲面形状を有する透過型スクリーンにおいては、経時により光制御シートと光拡散層とにおいて層間剥離(デラミネーション)が生じやすい。特に、高温環境下で使用される場合には、デラミネーションが発生しやすい。また、経時により接着層が黄変してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−217645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、意匠性を向上させることができ、光制御シートと光拡散層との間の密着性、特に高温環境下における密着性を向上させることができ、かつ接着層の黄変を抑制することができる透過型スクリーン、背面投射型表示装置、および透過型スクリーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、映像光源から投射された映像光を透過して観察者側に出射する透過型スクリーンであって、光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置された光拡散層と、前記光制御シートと前記光拡散層との間に配置され、前記光制御シートと前記光拡散層とを接着する第1の接着層とを有する積層体を備え、前記積層体が曲面をなすように曲っており、かつ前記第1の接着層が、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第1の光硬化型接着剤組成物の硬化物である、透過型スクリーンが提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、上記の透過型スクリーンと、前記透過型スクリーンの背面側に配置され、前記透過型スクリーンに映像光を投射する映像光源とを備えることを特徴とする、背面投射型表示装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、映像光源から投射された映像光を透過して観察者側に出射する透過型スクリーンの製造方法であって、光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置された光拡散層と、前記光制御シートと前記光拡散層との間に配置され、前記光制御シートと前記光拡散層とを接着する第1の接着層とを有する積層体を形成する工程と、前記積層体を加熱することにより軟化させ、軟化した前記積層体を曲面成形する工程とを備え、前記積層体を形成する工程が、前記光制御シートと前記光拡散層との間に、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第1の光硬化型接着剤組成物を挟んだ状態で、前記第1の光硬化型接着剤組成物を光照射により硬化させて、前記第1の接着層を形成する工程を含む、透過型スクリーンの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一の態様の光制御シートおよび他の態様の背面投射型表示装置によれば、第1の接着層が、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第1の光硬化型接着剤組成物の硬化物であるので、光制御シートと光拡散層との間の密着性、特に高温環境下における密着性を向上させることができるとともに黄変を抑制することができる。また、積層体が曲面をなすように曲がっているので、意匠性を向上させることができる。
【0011】
本発明の他の態様の透過型スクリーンの製造方法によれば、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第1の光硬化型接着剤組成物を光照射により硬化させて、第1の接着層を形成するので、光制御シートと光拡散層との間の密着性、特に高温環境下における密着性を向上させることができるとともに黄変を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの模式的な斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの概略構成図である。
【図3】図2のI−I線に沿って透過型スクリーンを切断したときの断面図である。
【図4】図2に示されるフレネルレンズシートの概略斜視図である。
【図5】図2に示されるフレネルレンズシートを映像光出射側から見たときのフレネルレンズシートの平面図である。
【図6】第1の実施形態に係る他の態様のフレネルレンズシートを示す図である。
【図7】図2に示される光制御シートの概略斜視図である。
【図8】図7のII−II線に沿って光制御シートを切断したときの断面図である。
【図9】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図10】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図11】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図12】第1の実施形態に係る背面投射型表示装置の模式的な断面図である。
【図13】第2の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図14】第3の実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置の模式的な断面図である。
【図15】第3の実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
<光制御シートおよび透過型スクリーン>
先ず、本発明の第1の実施形態に係る光制御シートおよび透過型スクリーンについて、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る透過型スクリーンの模式的な斜視図であり、図2は本実施形態に係る透過型スクリーンの概略構成図であり、図3は図2のI−I線に沿って透過型スクリーンを切断したときの断面図である。図4は図2に示されるフレネルレンズシートの概略斜視図であり、図5は図2に示されるフレネルレンズシートを映像光出射側から見たときのフレネルレンズシートの平面図である。図6は本実施形態に係る他の態様のフレネルレンズシートを示す図であり、図7は図2に示される光制御シートの概略斜視図であり、図8は図7のII−II線に沿って光制御シートを切断したときの断面図である。
【0014】
図1および図2に示される透過型スクリーン10は、フレネルレンズシート20と、フレネルレンズシート20の映像光出射側に配置された積層体30とを備えている。
【0015】
フレネルレンズシート20および積層体30は、曲面をなすように曲がったものである。フレネルレンズシート20および積層体30の全体は、少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するように曲っていることが好ましい。曲率半径は用途によって適宜選択されるが、フレネルレンズシート20および積層体30の全体は、少なくとも一部が250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように曲っていることもある。
【0016】
また、フレネルレンズシート20および積層体30は、二次元曲面または三次元曲面をなすように曲がっている。好ましくは、フレネルレンズシート20および積層体30は、図1および図2に示されるように三次元曲面をなすように曲がっている。ここで、本明細書において、「二次元曲面」とは単一の軸を中心として二次元的に曲がったもの、或いは、互いに平行な複数の軸を中心として異なる曲率で二次元的に曲がったものを意味し、また「三次元曲面」とは互い対して傾斜した複数の軸をそれぞれ中心として、部分的または全体的に曲がっていることを意味するものとする。
【0017】
本実施形態においては、図1に示すように、フレネルレンズシート20および積層体30は、概ね、一方の対角線と平行で透過型スクリーン10の背面側(映像光入射側)に位置する第1の軸A1を中心とした方向d1に曲がるとともに、他方の対角線と平行で透過型スクリーン10の背面側(映像光入射側)に位置する第2の軸A2を中心とした方向d2にも曲がっている。この結果、透過型スクリーン10は観察者側へ凸となるように曲がっており、透過型スクリーン10の平面形状をなす矩形状の一対の対角線が交わる中央位置Pにおいて、透過型スクリーン10の映像光出射面10a(表示面)は観察者側に最も突出している。なお、図1に示される透過型スクリーン10は、観察者側へ凸となるように曲がったものであるが、これに限らず、透過型スクリーンは、観察者側へ凹、すなわち背面側へ凸となるように曲がっていてもよく、また観察者側へ凸となるように曲がった部分と、背面側へ凸となるように曲がった部分とを組み合わせた形状となっていてもよい。
【0018】
フレネルレンズシート
図2および図3に示されるフレネルレンズシート20は、基部21と、基部21の表面に形成されたフレネルレンズ部22を備えている。
【0019】
フレネルレンズ部22は、映像光源(図示せず)から発散光束として透過型スクリーン10に投射される映像光の進行方向を偏向させる機能を有している。具体的には、フレネルレンズ部22は、発散光束として入射した映像光を、映像光入射側から映像光出射側へ向けて進む平行光束、例えば正面方向Nへ進む平行光束に変換する。このようにフレネルレンズ部22を用いて映像光をいったん平行光化させておくことにより、観察者に観察される映像、とりわけ、観察者によって斜め方向から観察される映像の明るさの面内ばらつきを効果的に緩和させることができる。
【0020】
本実施形態では、図4および図5に示すように、フレネルレンズ部22は、いわゆるサーキュラーフレネルレンズとして構成されている。ただし、これに限られず、いわゆるリニアフレネルレンズとして構成されていてもよい。リニアフレネルレンズでは、複数の単位レンズの各々が直線状に延び、かつ、複数の単位レンズがその長手方向と交差する配列方向に配列されるようになる。
【0021】
フレネルレンズ部22は、図5に示されるようにフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部形成面20aの中心Oに対して偏心した位置に光学中心Oを有することが好ましい。具体的には、フレネルレンズ部22は、光学中心Oを中心とする同心円弧状または同心円状の複数の単位プリズム23から構成されている。
【0022】
上記「フレネルレンズ部形成面」とは、フレネルレンズシートにおけるフレネルレンズ部が形成されている面であり、フレネルレンズシートが屈折型のフレネルレンズシートの場合には、フレネルレンズ部形成面は映像光出射側に位置し、フレネルレンズシートが後述する全反射型のフレネルレンズシートの場合には、フレネルレンズ部形成面は映像光入射側に位置している。
【0023】
図5に示されるフレネルレンズ部22の光学中心Oは、フレネルレンズシート20から外れた位置に存在する。例えば、映像光源(図示せず)が透過型スクリーン10よりも下方に配置される場合には、光学中心Oは、フレネルレンズシート20外であってフレネルレンズ部形成面20aの中心Oに対して透過型スクリーン10の縦方向下側の位置に存在する。なお、上記では、光学中心Oは、フレネルレンズシート20から外れた位置に存在しているが、フレネルレンズシート20内に存在していてもよい。
【0024】
ここで、本明細書においては、透過型スクリーン10の「縦方向」とは、観察者が透過型スクリーン10を正面から見たとき、観察者の上下方向を意味するものとし、また透過型スクリーン10の「横方向」とは、観察者が透過型スクリーン10を正面から見たとき、観察者の左右方向を意味するものとする。
【0025】
このように光学中心Oが偏心したフレネルレンズ部22を形成することにより、フレネルレンズシート20と映像光源との距離を短くした場合であっても、映像光を、映像光入射側から映像光出射側へ向けて進む平行光束、例えば図1に示される正面方向Nへ進む平行光束に変換することができる。本実施形態では、光学中心Oがフレネルレンズ部形成面20aの中心Oに対して偏心したフレネルレンズ部22を用いているが、光学中心がフレネルレンズ部形成面の中心に対して偏心していないフレネルレンズ部を用いることも可能である。
【0026】
また、本実施形態におけるフレネルレンズシート20は、いわゆる屈折型のフレネルレンズであるが、これに限られず、全反射型のフレネルレンズシートを用いることも可能である。
【0027】
図6に示されるように、全反射型のフレネルレンズシート24は、入射する映像光を屈折させる屈折面25aと、屈折面25aで屈折された映像光の少なくとも一部を全反射させて、映像光出射側に向ける全反射面25bとを有する複数の単位プリズム25を備えたものである。全反射型のフレネルレンズシート24を用いた場合には、さらに映像光源とフレネルレンズシート24との距離を縮めることができるので、より薄型の背面投射型表示装置を提供することができる。
【0028】
また、図2〜図4に示されるようにフレネルレンズシート20は、基部21よりも映像光入射側にフレネルレンズシート20を補強するための入射側透明基材26を有していてもよい。入射側透明基材26と基部21は、粘着剤や紫外線硬化型接着剤のような接着剤等からなる接合層(図示せず)を介して互いに接合されている。
【0029】
入射側透明基材26は、フレネルレンズシート20と同様に、曲面をなすように曲がったものである。入射側透明基材26としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基材が挙げられる。
【0030】
入射側透明基材26の厚みは、1.0〜4.0mmであることが好ましく、1.5〜2.0mmであることがより好ましい。入射側透明基材26の厚みが1.0mm未満であると、補強部材としての機能を十分に果たすことができないおそれがあるからであり、また4.0mmを超えると、次に説明する理由から二重像が観察者に認識されやすくなるからである。すなわち、フレネルレンズシートの厚みが厚い場合には、フレネルレンズシートの厚みが薄い場合に比べてフレネルレンズシートから出射される映像光と迷光との距離が大きくなり、この距離が大きくなると、観察者に二重像として認識されやすくなる。したがって、フレネルレンズシート20が同じ厚さであったとしても、入射側透明基材26の厚さが厚い場合には、観察者に二重像が認識されやすくなる。
【0031】
積層体
積層体30は、図2および図3に示されるように映像光入射側から映像光出射側に向けて、順に、主に、透明基材35、第2の接着層40、光制御シート45、第1の接着層50、光拡散層55、および表面層60を有している。なお、本発明においては、積層体30は光制御シート45、第1の接着層50、および光拡散層55を有していればよく、透明基材35、第2の接着層40および表面層60を有していなくともよい。
【0032】
透明基材
積層体30の透明基材35は、透過型スクリーン10の剛性を高めるものである。ここで、入射側透明基材26の厚みを厚くして、透過型スクリーン10の剛性を高めることも可能であるが、入射側透明基材26の厚みを厚くした場合には観察者に二重像が認識されやすくなる。したがって、入射側透明基材26の厚みを厚くして透過型スクリーン10の剛性を高めるよりも透明基材35を配置して透過型スクリーン10の剛性を高めた方が、観察者に二重像が認識されにくくなるので、効果的である。また、透明基材35を配置することにより透過型スクリーン10の剛性を高めることができるので、入射側透明基材26の厚みをより薄くすることができ、二重像がさらに認識されにくくなる。
【0033】
透明基材35の厚みは、1.5mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。透明基材35の厚みが1.5mm未満であると、透過型スクリーン10の剛性を高めるという機能を十分に果たすことができないおそれがあるからである。
【0034】
透明基材35としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基材が挙げられる。
【0035】
光制御シート
光制御シート45は、透明基材35の映像光出射側(観察者側)に配置されている。光制御シート45に入射した映像光を透過するものであるとともに二重像の原因となる迷光を吸収するためのものである。光制御シート45は、用途によって異なるが、意匠性を向上させる観点から、図7および図8に示される映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上2000mm以下の曲率半径を有するものが好ましい。また、光制御シート45は、用途に応じて、映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように曲っていることもある。
【0036】
図3、図7および図8に示されるように光制御シート45は、基部46と、基材部46上に形成された入射した映像光を透過する複数の単位光透過部47と、基材部46上に形成され、単位光透過部47間に形成された迷光を吸収する複数の単位光吸収部48とを備えている。
【0037】
基部46は、図8に示されるように光制御シート45の映像光入射面45bを構成するものである。単位光透過部47および単位光吸収部48は、図8に示されるようにそれぞれ光制御シート45の映像光出射面45aを構成するものであり、映像光出射面45aに沿って配置されている。また、単位光透過部47および単位光吸収部48は、図7に示されるように透過型スクリーン10の横方向に延在しており、透過型スクリーン10の縦方向に交互に配置されている。
【0038】
また、光制御シート45とフレネルレンズシート20との配置関係においては、単位光透過部47および単位光吸収部48は、フレネルレンズ部形成面20aの中心Oとフレネルレンズ部22の光学中心Oとを結ぶ方向と略平行でありかつ映像光出射面45aに沿った第1の方向に交互に並べて配置されている。この場合、単位光透過部47および単位光吸収部48は、第1の方向と略直交しかつ映像光出射面45aに沿った第2の方向に延在している。ここで、図1等においては、「第1の方向」と「縦方向」および「第2の方向」と「横方向」が一致しているが、「第1の方向」と「第2の方向」は光制御シート45とフレネルレンズシート20との配置関係を表すためのものであり、必ずしも「第1の方向」と「縦方向」および「第2の方向」と「横方向」は一致していなくともよい。
【0039】
基部46は、単位光透過部47や単位光吸収部48を形成するためのベースとなる層である。
【0040】
基部46としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0041】
単位光透過部47は、光制御シート45の厚さ方向の断面形状が略台形となっているものが好ましい。この台形は、映像光出射面45aが上底、映像光入射側が上底より長さが長い下底とするものである。
【0042】
単位光透過部は、特に限定されることはないが、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化する特徴を有する電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物から構成することが可能である。
【0043】
電離放射線硬化型樹脂組成物に含まれるベース樹脂としては、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等が挙げられる。これらの中でもウレタン樹脂のアクリレート(ウレタンアクリレート)やエポキシ樹脂のアクリレート(エポキシアクリレート)が好ましい。また、電離放射線硬化型樹脂組成物には、(メタ)アクリレートモノマー等の反応性希釈剤を含んでいてもよい。また、電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、組成物中に重合開始剤や光増感剤等を混合する。
【0044】
単位光吸収部48は、図8に示されるように80μm以上150μm以下の高さHを有するものが好ましい。また、単位光吸収部48は、単位光吸収部48が隣り合う単位光透過部47により形成される、断面形状がV字状の溝または断面形状が台形状の溝に形成されていることが好ましい。すなわち、断面形状がV字状の溝の場合には、単位光吸収部48は光制御シート45の厚さ方向の断面形状が映像光出射面45aを底辺とする略三角形となっており、断面形状が台形状の溝の場合には、光制御シート45の映像光入射側を上底としかつ光制御シート45の映像光出射面45aを下底とするものである。ここで、「下底」の長さは「上底」の長さより長いものとする。
【0045】
単位光吸収部48は、光吸収材等を含有する樹脂から構成することが可能である。この樹脂としては、電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物が挙げられる。この電離放射線硬化型樹脂組成物としては、上記単位光透過部47を形成するための電離放射線硬化型樹脂組成物と同様のものが使用できる。
【0046】
樹脂は、単位光透過部47を構成する透明樹脂の屈折率より小さい屈折率を有する材料により構成されていることが好ましい。
【0047】
光吸収材は、可視光である外光や迷光を吸収する機能を有すればよく、光吸収材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩等、顔料または染料、顔料または染料で着色された樹脂粒子等が挙げられる。
【0048】
光吸収材が顔料または染料で着色された樹脂粒子である場合、樹脂粒子としては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ等のプラスチックビーズが挙げられる、これらの中でもアクリルビーズが好ましい。
【0049】
光拡散層
光拡散層55は、光制御シート45の映像光出射側(観察者側)に配置されている。光制御シート45から出射した映像光を等方的に拡散させるためのものである。
【0050】
光拡散層55の厚みは、0.05〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.5mmであることがより好ましい。光拡散層55の厚みが0.05mm未満であると、光拡散効果が十分に得られないおそれがあるからであり、また2.0mmを超えると透過型スクリーン10に映し出される映像がぼやけてしまい、解像性に劣る映像となってしまうおそれがあるからである。
【0051】
光拡散層55は、光透過性樹脂に光拡散粒子を含有させたものから構成することが可能である。光拡散層55は、例えば、光透過性樹脂と光拡散粒子との間の屈折率差に起因して、または、光拡散粒子自体が有する反射性に起因して、映像光を等方的に拡散する機能を発現する。光拡散層55の光拡散能によって、光制御シートを透過した映像光が拡散され、観察者は、光拡散層55の光拡散能に応じた視野角の範囲内で映像を観察することができる。
【0052】
光透過性樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0053】
光拡散粒子としては、プラスチックビーズ等の有機フィラーが好適であり、特に透明度が高いものが好ましい。プラスチックビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩化ビニルビーズ等が挙げられ、これらの中でもアクリルビーズが好ましい。また、プラスチックビーズのみならず、シリコンビーズ等も使用することも可能である。さらに、プラスチックビーズとシリコンビーズ等を併用することも可能である。
【0054】
表面層
表面層60は、光拡散層55より観察面側に設けられる層であり、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、紫外線吸収機能および防汚機能の少なくともいずれかの機能を有する層である。本実施形態では、表面層60は、ハードコート機能を有する層(ハードコート層)となっている。ハードコート層は、透明性を有し、JISK5600−5−4(1994)で規定される鉛筆硬度試験で「HB」以上の硬度を示すものである。
【0055】
第1の接着層
第1の接着層50は、光制御シート45と光拡散層55との間に配置され、光制御シート45と光拡散層55とを接着するものである。第1の接着層50は、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第1の光硬化型接着剤組成物の硬化物からなるものである。
【0056】
本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタアクリレート」の少なくともいずれかを意味するものである。また、「重量平均分子量」は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0057】
2官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)および(B)としては、以下のポリオールとジイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの反応による化合物を用いることができるが、その組合せには限定されない。
【0058】
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。ポリエステルポリオールの製造方法は特に限定されず、公知の製造方法により製造することができる。例えば、ジオールとジカルボン酸またはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させたりすることにより得られる。
【0059】
ジオールとしてはエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられる。
【0060】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドランダム共重合等が挙げられる。
【0061】
ポリカーボネートジオールとしては、1、4−ブタンジオール、1、6−へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチル−1、3−ヘキサンジオール、1、5−ペンタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1、4−シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコールなどが挙げられる。
【0062】
ジイソシアネートとしては、直鎖式あるいは環式の脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートが用いられる。直鎖式あるいは環式の脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしてはトリレンジイソシアネート、キリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0063】
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートが挙げられる。
【0064】
単官能(メタ)アクリレートモノマー(C)としては、例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ブチルエトキシアクリレート、ブチルエチルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ウラリルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、フェノキシヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート等が挙げられる。
【0065】
ラジカル重合開始剤(D)としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類、ヒドロキシケトン類、アシルホスフィンオキサイドやビスアシルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類、アミノケトン類等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシケトン類、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、アシルホスフィンオキサイド、またはビスアシルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類、アミノケトン類が好ましい。
【0066】
第1の光硬化型接着剤組成物におけるラジカル重合開始剤(D)の割合は、0.2〜6.0質量%であることが好ましく、1.0〜6.0質量%であることがより好ましい。この範囲が好ましいとしたのは、0.2質量%未満であると、硬化不良により第1の接着層の接着性が低下するおそれがあるからであり、また6.0質量%を超えると、第1の接着層が黄変するおそれがあるからである。
【0067】
酸化防止剤(E)としては、フェノール系、アミン系、硫黄系、リン系の酸化防止剤が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル等が挙げられる。
【0068】
アミン系酸化防止剤としては、オクチルジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミノメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0069】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)等が挙げられる。リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト(TTP)、トリイソデシルホスファイト(TDP)等が挙げられる。
【0070】
第2の接着層
第2の接着層40は、透明基材35と光制御シート45との間に配置され、透明基材35と光制御シート45とを接着するものである。第2の接着層40は、透明基材35と光制御シート45とを接着できるものであれば、特に限定されないが、第2の接着層40は、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第2の光硬化型接着剤組成物の硬化物からなるものが好ましい。
【0071】
第2の光硬化型接着剤組成物に含まれる各成分(A)〜(E)はそれぞれ第1の光硬化型接着剤組成物に含まれる各成分(A)〜(E)と同様のものが使用できるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0072】
<透過型スクリーンの製造方法>
このような透過型スクリーン10は、例えば、以下のような製造方法により作製することが可能である。図9(a)〜図11(b)は本実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を示した図である。
【0073】
まず、フレネルレンズシート20を用意する。フレネルレンズシート20は、例えば以下のようにして得ることができる。すなわち、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基部21と金型との間に紫外線硬化型樹脂組成物等の電離放射線硬化型樹脂組成物を充填し、電離放射線を照射して電離放射線硬化型樹脂組成物を硬化させることによってフレネルレンズ部22を形成する。これにより、フレネルレンズシート20が作製される。そして、基部21の映像光入射面に入射側透明基材26を粘着剤または紫外線硬化型接着剤のような接着剤からなる接合層(図示せず)を用いて接合し、入射側透明基材26を背面側に有するフレネルレンズシート20を形成する(図9(a))。
【0074】
フレネルレンズシート20を作製した後、フレネルレンズシート20を加熱して、軟化させ、例えばフレネルレンズ部22側が凸となるように曲面成形する(図9(b))。この曲面成形は、フレネルレンズシート20の少なくとも一部が250mm以上2000mm以下、場合によっては250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように行われることが好ましい。具体的には、フレネルレンズシート20を構成する樹脂のガラス転移温度以上の温度にフレネルレンズシート20を加熱して、軟化させる。より具体的には、60〜250℃、好ましくは70〜200℃に加熱して、軟化させる。そして、この軟化したフレネルレンズシート20を、所定の曲率半径を有する型面(図示せず)に、例えば気体圧力を用いた加圧により、非接触で、フレネルレンズシート20を押し付け、あるいは、押圧部材を用いて、フレネルレンズシート20を押し付ける。この曲面成形中、好ましくは、フレネルレンズシート20と型面との間の雰囲気が減圧した状態に保たれ、より好ましくは概ね真空状態に保たれる。これにより、曲面成形されたフレネルレンズシート20を得ることができる。なお、上記では、フレネルレンズ部22側が凸となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形しているが、これに限らず、フレネルレンズ部22側が凹となるように、すなわち入射側透明基材26側が凸となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形してもよく、またフレネルレンズ部22側が凸となる部分とフレネルレンズ部22側が凹となる部分とを組み合わせた形状となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形してもよい。
【0075】
一方で、透明基材35、光制御シート45、光拡散層55、第1の光硬化型接着剤組成物および第2の光硬化型接着剤組成物を用意する。光制御シート45は、例えば、以下の方法によって作製することができる。すなわち、単位光透過部47の形に対応した形の複数の溝を有する金型(図示せず)にシート状の基部46を送り込み、金型と基部46との間に、電離放射線硬化型樹脂組成物等の光透過部用組成物を供給し、基部46と金型との間に光透過部用組成物を充填する。その後、電離放射線を照射し、光透過部用組成物を硬化させて、基部46上に単位光透過部47を形成する。
【0076】
単位光透過部47を形成した後、単位光透過部47を金型から引き抜き、そして、複数の単位光透過部47間の溝に、光吸収材を含有する電離放射線硬化型樹脂組成物等の光吸収部用組成物を塗布し、ドクターブレード等によって充填する。その後、電離放射線により光吸収部用組成物を硬化させて、単位光透過部47間に単位光吸収部48を形成する。これにより、光制御シート45が作製される。
【0077】
光拡散層55は、例えば、押出し成形装置を用いて、光拡散粒子を含有する透明樹脂を板状に押出しすることにより作製することができる。また、光拡散層55に使用される透明樹脂および光拡散粒子は、上記で説明したので、説明を省略するものとする。
【0078】
そして、透明基材35、第2の光硬化型接着剤組成物41、光制御シート45、第1の光硬化型接着剤組成物51、光拡散層55をこの順で積層する(図10(a))。この状態では、第2の光硬化型接着剤組成物41は透明基材35と光制御シート45との間に挟まれており、第1の光硬化型接着剤組成物51は光制御シート45と光拡散層55との間に挟まれている。
【0079】
そして、この状態で、第1の光硬化型接着剤組成物51および第2の光硬化型接着剤組成物41に紫外線等の光を照射して、硬化させることにより、第1の接着層50および第2の接着層40を形成して、積層体80を形成する(図10(b))。なお、上記では、第1の光硬化型接着剤組成物51および第2の光硬化型接着剤組成物52を一度に硬化させているが、別々に硬化させてもよい。
【0080】
積層体80を作製した後、積層体80を加熱して、軟化させ、光拡散層55側が凸となるように曲面成形する(図10(c))。曲面成形は、光制御シート45の映像光出射面45aの少なくとも一部が250mm以上2000mm以下、場合によっては250mm以上1500mm以下の曲率半径を有するように行われることが好ましい。具体的には、積層体80を透明基材35のガラス転移温度以上に加熱して、軟化させる。より、具体的には60〜250℃、好ましくは80〜200℃に加熱して、軟化させる。そして、この軟化した積層体80を、型面に、例えば気体圧力を用いた加圧により、非接触で積層体80を押し付け、あるいは、押圧部材を用いて積層体80を押し付ける。この曲面成形中、好ましくは、積層体と型面との間の雰囲気が減圧した状態に保たれ、より好ましくは概ね真空状態に保たれる。これにより、積層体80を曲面成形できる。
【0081】
積層体80を曲面成形した後、光拡散層55上に表面層60を形成して、積層体30を形成する(図11(a))。表面層60として、ハードコート層を形成する場合においては、電離放射線硬化型樹脂組成物を含むハードコート層用組成物を塗布し、乾燥させ、紫外線等の電離放射線により硬化させる。これにより、光拡散層55上に表面層60としてのハードコート層が形成される。なお、ハードコート層は、予め半硬化させたハードコート層を形成しておき、このハードコート層を光拡散層上に載せ、その後硬化させて形成することも可能である。また、熱硬化性塗料を塗布し、加熱乾燥し、硬化させてハードコート層を形成することも可能である。
【0082】
そして、最後に、曲面成形された積層体30を、曲面成形されたフレネルレンズシート20の映像光出射側に配置する(図11(b))。なお、この状態においては、透明基材35がフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部22側となっており、表面層60が観察者側となっている。これにより、図1に示される透過型スクリーン10が完成する。
【0083】
<背面投射型表示装置>
透過型スクリーン10は、背面投射型表示装置に組み込んで使用することができる。このような背面投射型表示装置としては、例えば、車載用や船舶用の背面投射型表示装置等が挙げられる。
【0084】
以下、透過型スクリーン10を組み込んだ背面投射型表示装置について説明する。図12は本実施形態に係る背面投射型表示装置の模式的な断面図である。図12に示されるように背面投射型表示装置70は、例えば、透過型スクリーン10、透過型スクリーン10を支持する例えば筐体のようなスクリーン支持体71、および透過型スクリーン10に映像光を投射する映像光源72を備えている。
【0085】
本実施形態では、透過型スクリーン10は、透過型スクリーン10が縦方向となるようにスクリーン支持体71に支持されている。とりわけ、透過型スクリーン10の映像光出射面10aのうちの最も観察者側に突出した位置(本実施形態では、透過型スクリーン10の中央位置Pに相当)における法線方向に直交する面(すなわち、最も観察者側に突出した位置での接面)が、略鉛直方向と平行となっている。
【0086】
映像光源72は、透過型スクリーン10の背面側に配置されている。図12に示される映像光源72は、透過型スクリーン10よりも下方に配置されており、ミラー等を使用せずに透過型スクリーン10に対し映像光を投射するように構成されている。なお、ミラー等を介して透過型スクリーン10に映像光を投射してもよい。
【0087】
この場合、透過型スクリーン10は、単位光透過部47および単位光吸収部48の延在方向が横方向となり、かつフレネルレンズ部22の光学中心Oがフレネルレンズ部形成面20aの中心Oより縦方向下側となるように配置されている。
【0088】
なお、図12においては、映像光源72が透過型スクリーン10より下方に配置されているが、映像光源72は透過型スクリーン10よりも上方に配置されていてもよい。この場合、透過型スクリーン10は、単位光透過部47および単位光吸収部48の延在方向が横方向となり、かつフレネルレンズ部22の光学中心Oがフレネルレンズ部形成面20aの中心Oより縦方向上側となるように配置される。
【0089】
映像光源72は、照射領域がしだいに広がっていく発散光束(拡大投影された光束)として透過型スクリーン10の映像光入射面10bの全域に映像光を照射する。このような映像光源72としては、公知の光源、例えばLEDやレーザを利用したピコプロジェクタ等の小型の光源が挙げられる。
【0090】
このような背面投射型表示装置70においては、映像光源72から映像光が発せられると、図12に示されるように映像光は、発散光束として、透過型スクリーン10の映像光入射面10bの全域に投射される。そして、図3に示されるように透過型スクリーン10の映像光入射面10bに投射された映像光Lは、入射側透明基材26を透過して、フレネルレンズシート20に入射する。そして、フレネルレンズ部22によって、映像光Lは正面方向Nに向く光に変換される。正面方向Nに向く光となった映像光Lは、透明基材35を介して光制御シート45に入射し、単位光透過部47を介して光制御シート45から出射する。光制御シート45から出射した映像光Lは、光拡散層55で拡散されて、表面層60を介して、透過型スクリーン10の映像光出射面10aから出射する。このような背面投射型表示装置70においては、映像光は、フレネルレンズシート20によっていったん正面方向Nに向く光に変換された後に光拡散層55で拡散されるので、各方向から表示された映像を観察した場合、明るさの面内ばらつきが緩和された高品質の映像を提供できる。
【0091】
また、映像光のみならず、図3に示されるように迷光Lもフレネルレンズシート20から出射し、光制御シート45に入射するが、迷光Lは正面方向Nに向く略平行な光とはなっていないので、迷光Lは単位光吸収部48で吸収される。また、外光Lも、光制御シート45の単位光吸収部48によって、吸収される。
【0092】
本実施形態によれば、第1の接着層50が、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第1の光硬化型接着剤組成物51の硬化物であるので、光制御シート45と光拡散層55との間の密着性、特に高温環境下における密着性を向上させることができる。また、第1の接着層50には、酸化防止剤が含まれているので、経時による第1の接着層50の黄変を抑制することができる。
【0093】
本実施形態によれば、積層体30が曲面をなすように曲がっているので、意匠性を向上させることができる。
【0094】
積層体80を曲面成形する前に光拡散層55上に表面層60を形成した場合には、積層体80を曲面成形する際に表面層60が割れてしまうおそれがある。これに対し、本実施形態においては積層体80を曲面成形した後に光拡散層55上に表面層60を形成しているので、表面層60の割れを防止することができる。
【0095】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、透過型スクリーンを、第1の実施形態とは異なる方法によって製造した例について説明する。図13(a)〜図13(c)は、第2の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【0096】
まず、第1の実施形態と同様に、入射側透明基材26を背面側に有するフレネルレンズシート20を用意する。また、第1の実施形態と同様に、透明基材35、光制御シート45、および光拡散層55を用意し、これらをこの順で積層して、積層体80を形成する。
【0097】
その後、積層体80がフレネルレンズシート20の映像光出射側に配置されるようにフレネルレンズシート20と積層体80とを積層する(図13(a))。積層された状態では、透明基材35がフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部22側となっており、積層体80の光拡散層55が観察者側となっている。
【0098】
フレネルレンズシート20と積層体80とを積層した後、これらを加熱して、軟化させ、光拡散層55側が凸となるようにフレネルレンズシート20および積層体80を曲面成形する(図13(b))。
【0099】
フレネルレンズシート20と積層体80を曲面成形した後、光拡散層55上に表面層60を形成して、積層体30を形成する(図13(c))。これにより、図1に示される透過型スクリーン10が完成する。
【0100】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態においては、透過型スクリーンを、タッチパネル機能を有する背面投射型表示装置に組み込んだ例について説明する。図14は本実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置の模式的な断面図であり、図15は本実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置を上方から見た図である。なお、図14および図15中において、第1の実施形態と同様の符号を付している部材等は、第1の実施形態で説明した部材等と同様のものであるので、説明を省略する。
【0101】
図14に示されるように背面投射型表示装置90は、例えば、透過型スクリーン10、筐体のような透過型スクリーン10を支持するスクリーン支持体71、透過型スクリーン10に映像光を投射する映像光源72を備えている。さらに、この背面投射型表示装置90は、図14および図15に示されるように、透過型スクリーン10に赤外光を投射する赤外光源91と、赤外光を検出可能なCCDカメラ等の赤外光検出器92等を備えている。赤外光源91および赤外光検出器92は透過型スクリーン10の背面側に配置されている。
【0102】
赤外光源91から発せられた赤外光は、透過型スクリーン10を透過する。これにより、透過型スクリーン10に例えば指や専用のペン等が触れた場合には、赤外光は指等により反射されるので、赤外光検出器92で指の位置情報を検出することができる。これにより、タッチパネル機能を実現することができる。
【0103】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、構造や材質、各部材の配置等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【実施例】
【0104】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明する。
【0105】
まず、下記に示される光硬化型接着剤組成物を得た。
(光硬化型接着剤組成物1)
2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量15000):31質量%
2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量5000):30質量%
イソボニルアクリレート(単官能モノマー):35質量%
ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(ラジカル重合開始剤):3質量%
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(酸化防止剤、BHT):1質量%
【0106】
(光硬化型接着剤組成物2)
ウレタンアクリレート(CAS番号82339-25-1):46質量%
イソボルニルアクリレート(単官能モノマー):35質量%
フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(単官能モノマー):18質量%
ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(ラジカル重合開始剤):1質量%
トリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス(III)(添加剤):0.01質量%以下
2−エチルヘキサン酸(添加剤):0.01質量%以下
【0107】
実施例1
厚さ1mmのポリカーボネート板の一方の表面に、光硬化型接着剤組成物1を塗布し、さらにその上にポリカーボネートシートを載せた。その状態で、紫外線照射装置(ヒュージョンDバルブ)を用いて、積算光量1310mJ/cmかつ照度1170W/cmで紫外線照射を行い、光硬化型接着剤組成物1を硬化させて、ポリカーボネート板とポリカーボネートシートとを光硬化型接着剤組成物1の硬化物を介して接着した。これにより、ポリカーボネート板と、光硬化型接着剤組成物1の硬化物からなる接着層と、ポリカーボネートシートとがこの順で積層された積層体を作製した。
【0108】
比較例1
比較例1においては、光硬化型接着剤組成物1の代わりに、光硬化型接着剤組成物2を用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を作製した。
【0109】
(常温環境下での密着性評価)
実施例1および比較例1において作製された積層体を、幅25mmおよび長さ150mmに切り出した後、オートグラフ試験機(AGS-1kNG、島津製作所製)を用いて、常温環境下で、ポリカーボネート板からポリカーボネートシートを180度剥離させるピール試験を行った。なお、ピール試験は、試験レンジ力を1000Nとし、変位を100mm/分とし、測定距離を100mmとし、20〜80mmの剥離力平均値(N)を測定した。
【0110】
評価結果を表1に示す。
【表1】

表1に示されるように、実施例1に係る積層体のポリカーボネートシートは、比較例1に係る積層体のポリカーボネートシートによりも剥がれ難かった。これにより、光硬化型接着剤組成物1は、常温環境下で優れた密着性を示すことが確認された。
【0111】
実施例2
透明基材、光制御シート、光拡散層、第1の光硬化型接着剤組成物および第2の光硬化型接着剤組成物を用意した。透明基材としては、厚みが1mmのポリカーボネート板を使用した。
【0112】
光制御シートとしては、ポリカーボネートフィルム上に形成された単位光透過部および単位光吸収部を備え、かつ厚みが0.3mmのものを使用した。単位光透過部は光透過性樹脂から構成されており、単位光吸収部は光吸収材としての着色粒子を含有する樹脂から構成されていた。
【0113】
単位光透過部の屈折率は1.550であり、単位光吸収部の屈折率は1.490であった。単位光吸収部の高さは150μmであった。単位光吸収部の幅は映像光出射面において30μmであり、単位光吸収部における映像光入射側の先端部の幅は6μmであり、単位光吸収部における映像光出射側の底部のピッチは60μmであった。さらに、ポリカーボネートフィルムの法線と単位光吸収部とによって形成される角度は4.5°であった。
【0114】
光制御シートは、具体的には、以下のようにして作製された。まず、単位光透過部の形に対応した形の複数の溝を有する金型にシート状のポリカーボネートフィルムを送り込み、金型とポリカーボネートフィルムとの間に、ウレタンアクリレート等を含む紫外線硬化型樹脂組成物を供給し、ポリカーボネートと金型との間に紫外線硬化型樹脂組成物を充填した。その後、紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させて、ポリカーボネート上に光透過性透明樹脂からなる単位光透過部を形成した。単位光透過部を形成した後、単位光透過部を金型から引き抜き、そして、複数の単位光透過部間の溝に、着色粒子を含有するウレタンアクリレート等を含む紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、ドクターブレード等によって充填した。その後、紫外線により紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させて、単位光透過部間に着色粒子を含有する樹脂からなる単位光吸収部を形成した。
【0115】
光拡散層としては、屈折率1.550のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)樹脂中に、光拡散粒子として、屈折率1.550および平均粒径8μmのアクリル系ビーズと、屈折率1.420および平均粒径2μmのシリコン系ビーズとを含有させたものから構成され、かつ厚みが0.14mmのものを使用した。なお、光拡散層の各成分の割合は、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂50重量%、アクリル系ビーズ40重量%、シリコン系ビーズ10重量%であった。
【0116】
透明基材等を用意した後、透明基材の一方の表面に光硬化型接着剤組成物1を塗布し、その上に光制御シートを載せた。その後、光制御シートの表面に光硬化型接着剤組成物1を塗布し、さらにその上に光拡散層を載せた。その状態で、紫外線照射装置(ヒュージョンDバルブ)を用いて、積算光量1310mJ/cmかつ照度1170W/cmで紫外線照射を行い、透明基材と光制御シートとの間の光硬化型接着剤組成物1および光制御シートと光拡散層との間の光硬化型接着剤組成物1を硬化させて、透明基材と光制御シートとを光硬化型接着剤組成物1の硬化物を介して接着するとともに、光制御シートと光拡散層とを光硬化型接着剤組成物1の硬化物を介して接着した。これにより、透明基材、光硬化型接着剤組成物1の硬化物からなる接着層、光制御シート、光硬化型接着剤組成物1の硬化物からなる接着層、光拡散層がこの順で積層された積層体を得た。
【0117】
そして、この積層体を140℃に加熱し、軟化させるとともに型を用いた真空成形により曲面成形した。なお、曲面成形は、光制御シートの映像光出射面の曲率半径が1000mmとなるように行われた。
【0118】
積層体を曲面成形した後、積層体の表面に、アクリルウレタン系熱硬化塗料を塗布し、加熱により乾燥させた後、ハードコート層を形成した。これにより、実施例2に係る透過型スクリーンを作製した。
【0119】
比較例2
比較例2においては、光硬化型接着剤組成物1の代わりに、光硬化型接着剤組成物2を用いた以外は、実施例1と同様の方法により透過型スクリーンを作製した。
【0120】
(高温環境下での密着性評価)
上記において作製した実施例2および比較例2の透過型スクリーンについて、95℃の環境下で1000時間放置したところ、比較例2の透過型スクリーンにおいては、光制御シートと光拡散層においてデラミネーションが発生していた。なお、比較例2の透過型スクリーンにおいては、500時間経過時に光制御シートと光拡散層においてデラミネーションが発生した。これに対し、実施例2の透過型スクリーンにおいては、1000時間経過後においても光制御シートと光拡散層においてデラミネーションが発生していなかった。この結果から、実施例2に係る透過型スクリーンは、高温環境下において優れた密着性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0121】
10…透過型スクリーン、10a…映像光出射面、10b…映像光入射面、20…フレネルレンズシート、20a…フレネルレンズ部形成面、22…フレネルレンズ部、23…単位プリズム、26…入射側透明基材、35…透明基材、40…第2の接着層、41…第2の光硬化型接着剤組成物、45…光制御シート、45a…映像光出射面、45a…映像光入射面、46…基部、47…単位光透過部、48…単位光吸収部、50…第1の接着層、51…第1の光硬化型接着剤組成物、55…光拡散層、60…表面層、70、90…背面投射型表示装置、72…映像光源、80…積層体、91…赤外光源、92…赤外光検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光源から投射された映像光を透過して観察者側に出射する透過型スクリーンであって、
光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置された光拡散層と、前記光制御シートと前記光拡散層との間に配置され、前記光制御シートと前記光拡散層とを接着する第1の接着層とを有する積層体を備え、
前記積層体が曲面をなすように曲っており、かつ
前記第1の接着層が、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第1の光硬化型接着剤組成物の硬化物である、透過型スクリーン。
【請求項2】
前記積層体が、前記光制御シートよりも映像光源側に配置された透明基材と、前記透明基材と前記光制御シートとの間に配置され、前記透明基材と前記光制御シートとを接着する第2の接着層とをさらに備え、
前記第2の接着層が、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第2の光硬化型接着剤組成物の硬化物である、請求項1に記載の透過型スクリーン。
【請求項3】
前記積層体の全体が三次元曲面をなすように曲がっている、請求項1または2に記載の透過型スクリーン。
【請求項4】
前記積層体よりも前記映像光源側に配置された、フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートをさらに備え、前記フレネルレンズシートが曲面をなすように曲っている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項5】
前記単位光透過部および前記単位光吸収部が、前記透過型スクリーンの横方向に延在している、請求項4に記載の透過型スクリーン。
【請求項6】
前記フレネルレンズ部が、前記フレネルレンズシートのフレネルレンズ部形成面の中心に対して前記透過型スクリーンの縦方向下側に偏心した位置に光学中心を有する、請求項5に記載の透過型スクリーン。
【請求項7】
前記単位光透過部および前記単位光吸収部が、前記フレネルレンズ部形成面の中心と前記フレネルレンズ部の光学中心とを結ぶ方向と略平行でありかつ前記映像光出射面に沿った第1の方向に交互に並べて配置されるとともに、前記第1の方向と略直交しかつ前記映像光出射面に沿った第2の方向に延在している、請求項4に記載の透過型スクリーン。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の透過型スクリーンと、
前記透過型スクリーンの背面側に配置され、前記透過型スクリーンに映像光を投射する映像光源と
を備えることを特徴とする、背面投射型表示装置。
【請求項9】
前記透過型スクリーンに赤外光を投射する赤外光源と、
前記赤外光を検出可能な赤外光検出器と
をさらに備える、請求項8に記載の背面投射型表示装置。
【請求項10】
映像光源から投射された映像光を透過して観察者側に出射する透過型スクリーンの製造方法であって、
光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置された光拡散層と、前記光制御シートと前記光拡散層との間に配置され、前記光制御シートと前記光拡散層とを接着する第1の接着層とを有する積層体を形成する工程と、
前記積層体を加熱することにより軟化させ、軟化した前記積層体を曲面成形する工程とを備え、
前記積層体を形成する工程が、前記光制御シートと前記光拡散層との間に、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第1の光硬化型接着剤組成物を挟んだ状態で、前記第1の光硬化型接着剤組成物を光照射により硬化させて、前記第1の接着層を形成する工程を含む、透過型スクリーンの製造方法。
【請求項11】
前記積層体が、前記光制御シートよりも映像光源側に配置された透明基材と、前記透明基材と前記光制御シートとの間に配置され、前記透明基材と前記光制御シートとを接着する第2の接着層とをさらに備え、
前記積層体を形成する工程が、前記透明基材と前記光制御シートとの間に、(A)重量平均分子量が15,000以上25,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)重量平均分子量が5,000以上8,000以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、(C)単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(D)ラジカル重合開始剤と、(E)酸化防止剤とを含む第2の光硬化型接着剤組成物を挟んだ状態で、前記第2の光硬化型接着剤組成物を光照射により硬化させて、前記第2の接着層を形成する工程を含む、請求項10に記載の透過型スクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−76831(P2013−76831A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216452(P2011−216452)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】