説明

透過性及びウィルス除去能力が改善されたフィルター

約3.0×10−9cmを超える透過性、及び約99%を超えるF−VLRを有するフィルターブロックが提供される。フィルターブロックは、約50ミクロン未満の中央粒径と約1.4以下の粒子スパンとを有するフィルター粒子から作製されてもよい。本発明のフィルターブロックは、液体を濾過するための、より具体的には飲料水を提供するためのフィルターを作製するために使用し得る。フィルター粒子は、メソ細孔性であってもよい。同様に、フィルターと、バクテリア、ウィルス、及び細菌の死滅又は除去に関する情報とを含むキットも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター材料、これらの材料から作製されたフィルターの分野に関連し、より具体的には水フィルターの分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
水は、例えば、微粒子、化学薬品、及びバクテリア、ウィルス、及び原生動物等の微生物学的有機体を包含する多くの様々な種類の汚染物質を含有する可能性がある。様々な環境において、これらの汚染物質は、水が使用され得る前に、濃度低減又は完全に除去されなくてはならない。例えば、多くの医療用途及び特定の電子部品の製造では、極めて純粋な水が必要である。より一般的な例としては、水が飲用に適する、即ち、摂取に適するようになるまで、いかなる有害な汚染物質も水から除去しなければならない。
【0003】
水の質は、世界各国で広く変化する。米国及び他の先進国では、飲用水は一般的に地方自治体によって処理されている。この処理の間、汚染物質(例えば、けん濁した汚れ、有機物質、重金属、塩素、バクテリア、ウィルス、及び原生動物等)は、消費者の家庭へ放出される前に水から除去される。しかし、水処理公共施設に関する機材の機能不良及び/又は基幹施設の機能停止、並びに他の問題は、汚染物質の不完全な除去を引き起こし得る。
【0004】
多くの開発途上国には、水処理施設がない。そのため多くの開発途上国では、人口密度が増大し、水資源がますます不足し、水処理施設のない国もあるため、汚染した水に曝されることに伴う致命的な結果が生じている。飲料水の水源はヒトや動物の排泄物の付近に存在することが一般的であるため、微生物学的汚染が主な健康上の懸念事項となる。
【0005】
水系の微生物学的汚染の結果、毎年推定六百万人が死亡し、その半分は5歳未満の子供である。1987年、米国環境保護局(本明細書ではEPA)は、「微生物学的浄水器の試験に関する指針基準及びプロトコル(Guide Standard and Protocol for Testing Microbiological Water Purifiers)」を導入した。この指針基準及びプロトコルは、公共又は個別の水供給において、特定の健康関連汚染物質を低減するために設計された飲用水処理システムのための指標及び性能要件を提供する。要件は、課題に対して、水処理システムからの放流が、ウィルス除去99.99%(又は同等には4対数)、バクテリア除去99.9999%(又は同等には6対数)、及び原生動物(嚢胞)除去99.9%(又は同等には3対数)を示すことである。
【0006】
EPA指針基準及びプロトコルでは、ウィルスの場合は、流入濃度は1L当たり約1×10ウィルス(PFU/L)であるべきであり、バクテリアの場合は、流入濃度は1L当たり約1×10バクテリア(CFU/L)であるべきである。水供給におけるエシェリキア・コライ(病原性大腸菌)の普及、及びその消費に関連する危険のため、この微生物が、研究の大部分においてバクテリアとして使用される。同様に、MS−2バクテリオファージ(又は、単にMS−2ファージ)は、その大きさ及び形状(即ち、約26nm及び20面体)が多くのウィルスと類似しているため、一般にウィルス除去のための代表的な微生物として使用される。そのため、MS−2バクテリオファージを除去するフィルターの能力は、他のウイルスを除去する能力を立証する。
【0007】
例えば、バクテリア及びウィルスのような小さなけん濁した粒子は、フィルター粒子間に小さな格子間空隙部を有するフィルターにより、最も良く濾過されると当業者には考えられていた。フィルター粒子間の小さなスペースは、フィルター粒子の最密充填により、最も良く達成される。最密充填を達成するための1つの方法は、トランブレー(Tremblay)らのPCT国際公開特許WO00/71467A1に記載されており、より大きな粒子の間のスペースを充填するために、小さな粒子を使用することを教示している。これは、二峰性サイズ分布を有するフィルター粒子を使用して、最密充填を提供する。さらに、コスロー(Koslow)ら、及びクエネン(Kuennen)らに対してそれぞれ発行された米国特許第5,922,803号、及び同第6,368,504号B1は、確実に粒子間の格子間空隙部を比較的均一にするために、粒径分布が狭いフィルター粒子、すなわち一般に全て同一サイズである粒子、を使用する一般原則を教示している。これらの2つの狭い粒径分布の平均粒径は、80μm〜45μmの範囲で特許を受けている。これらの特許は、フィルターを通過する圧力損失が高く比較的ウィルス除去のレベルが高いフィルター、あるいはサイズ分布は狭いが平均フィルター粒径が比較的大きいのでウィルス除去が低いフィルターを記載している。
【0008】
フィルターを通過する圧力損失が高いと、流量の低減、及びフィルターの使用者にマイナスに考えられる他の問題を引き起こし得る。より小さい粒径(例えば45μm未満)にしようとすると、フィルターを通過する圧力損失をさらに深刻にすると考えられていた。さらに当業者は、圧力損失は、フィルターブロックを通過する流速に直接的影響を有することを認識するであろう。消費者は、一般的に固定圧で彼らの家庭に供給される水を有する(例えば、地方自治体から、又は彼らの井戸のポンプから)。従って、高い圧力損失を有するフィルターブロックは、より小さい圧力損失を有するものよりも、より遅い流速を有するであろう。認識し得るように、消費者は水のために長時間待つことを好まないので、高い流速が好ましい。このように消費者には、低い圧力損失を有するフィルターブロックが必然的に好まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、フィルター、フィルター材料の製造方法、並びに先行技術のフィルターにて示された圧力損失が不都合に増大することなくバクテリア及び/又はウィルスを流体から除去できるフィルター材料の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様において、約3.0×10−9cmを超える透過性と、約99%を超えるF−VLRとを有するフィルターブロックが提供される。好ましくは、透過性は、約3.5×10−9cmを超える、より好ましくは約4.0×10−9cmを超える、さらにより好ましくは約4.5×10−9cmを超える、及び最も好ましくは約5.0×10−9cmを超える。好ましくは、F−VLRは、約99.9%を超える、より好ましくは約99.99%を超える、及びさらにより好ましくは約99.999%を超える、及び最も好ましくは約99.9999%を超える。さらに本発明のフィルターブロックは、約99.99%を超える、好ましくは約99.999%を超える、及びより好ましくは約99.9999%を超えるF−BLRを有することが好ましい。
【0011】
本発明のもう一つの態様において、約50μm未満、好ましくは約40μm未満、より好ましくは約37.5μm未満、及びさらにより好ましくは約35μm未満の中央粒径を有するフィルター粒子からフィルターブロックを作製することにより、好ましいフィルター透過性が得られる。本発明のさらにもう一つの態様において、フィルター粒子は、約1.8以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下、及びさらにより好ましくは1.3以下の粒子スパンを有する。
【0012】
フィルター透過性は、フィルターを通過する圧力損失を調節するための重要なパラメータであり、同時にバクテリア及びウィルスのような小さなけん濁した粒子の除去を改善することが予期せず究明されてきた。上述のように、小さなけん濁した粒子の除去は、フィルターの流量特性を犠牲にしてのみ改善されると一般に考えられている。本発明は、これが事実と異なり、それ自体が先行技術の教示を超えて実質的な効果を提供することを証明する。より具体的には、本発明は、フィルターの製造業者及び設計者に、フィルター流量特性の低減がほんの少し又は無いように、小さなけん濁した粒子の除去を最大限にするフィルターパラメータを提供する。同様に、フィルターの製造方法、及びこれに使用されるフィルター材料も教示される。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0013】
本明細書は、本発明を特に指摘し明確に請求する請求項をもって結論とするが、本発明は、添付図面と関連させた以下の説明からよりよく理解されると考える。
【0014】
全ての引用文献は、関連部分において参考として本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本発明に関する先行技術であることを承認するものとして解釈されるべきでない。
【0015】
I.定義
本明細書で使用する時、用語「フィルター」及び「濾過」は、それぞれ、主に吸着及び/又はサイズ排除により、より少ない程度に微生物を除去すること(及び/又は他の汚染物質を除去すること)に関する構造体及び機構を指す。
【0016】
本明細書で使用する時、語句「フィルター材料」は、フィルター粒子の凝集体を指すものとする。フィルター材料を形成するフィルター粒子の凝集体は、均質又は不均質なもののいずれかであり得る。フィルター粒子は、フィルター材料内に均一又は不均一(例えば、異なるフィルター粒子の層)に分布し得る。またフィルター材料を形成するフィルター粒子は、形状又は大きさが同一である必要はなく、緩い又は相互連結した形態のいずれかで提供されてもよい。例えば、フィルター材料は、メソ細孔性及び塩基性活性炭粒子を活性炭繊維と組合せて含んでもよく、これらのフィルター粒子は、緩く会合した状態で提供されるか、あるいは、ポリマー結合剤若しくは他の手段で一部又は全部結合され、一体構造を形成してもよい。
【0017】
本明細書で使用する時、語句「フィルター粒子」は、フィルター材料の少なくとも一部を形成するのに使用される個々の部材又は断片を指すものとする。例えば、繊維、粒剤、ビーズなどは、それぞれ、本明細書ではフィルター粒子と考えられる。更に、フィルター粒子は、触知できないフィルター粒子(例えば、非常に微細な粉末)から触知できるフィルター粒子まで、様々な大きさであり得る。
【0018】
本明細書で使用する時、語句「フィルターブロック」とは、例えば水のような液体、空気、炭化水素、及び同種のものを濾過することが可能な構造体を形成するために、結合されているフィルター粒子の混合物を指すものとする。このようなフィルターブロックとしては、フィルター粒子、結合剤粒子、及び特定の汚染物質(例えば、鉛、水銀、ヒ素等)を除去するための他の粒子又は繊維を含んでもよい。フィルターブロックは、形状及びフローパターンを変化できる。半径流及び軸流フィルターブロックの実施例が本明細書に記載されているが(例えば、図1及び2を参照)、例えば、プレート及び円錐形のような他のフィルター形状が当業者により既知であろう。本明細書にて与えられた実施例は、実例となるだけであり、本発明を限定することを目的としない。フィルターブロックは、頻繁ではあるが常ではなく、望ましい製品として、フィルターブロックをダメージから保護し、濾過される「汚れた」液体と、フィルターを出る「きれいな」液体との間の封を提供する「フィルター筐体」に入れられる。これらの密封面は、恒久的にフィルターブロックに取り付けられる、又はフィルターブロックと一体であってもよく、汚れた液体からきれいな液体を分離するために必要であるが、本明細書での計算の用途上、フィルターブロックの部分とは見なされない。
【0019】
本明細書で使用する時、語句「中央粒径」とは、下又は上に粒子の総体積の50%が存在する粒子の直径を指す。この中央粒径は、以下のように指定する:Dv、050粒子を慎重な(discreet)サイズに分画するための多くの方法及び機械が当業者に既知であるが、ふるいは、粒径及び粒径分布を測定するための最も早く最も安い一般的な方法の1つである。粒子のサイズ分布を確定するための別の好ましい方法は、光散乱によるものである。さらに語句「粒子スパン」は、所与の粒子試料の統計的表示であり、以下のように計算することができる。第一に、中央粒径Dv、050を上述のように計算する。それから同様の方法で、粒子試料を体積分率10%で分離した粒径Dv、010を確定し、その後、粒子試料を体積分率90%で分離した粒径Dv、090
を確定する。ひいては粒子スパンは、以下に相当する:
【数1】

【0020】
本明細書で使用する時、語句「フィルターブロック細孔体積」は、0.1μmを超える大きさのフィルターブロック内の粒子間細孔(格子間空隙部とも呼ばれる)の総体積を指す。
【0021】
本明細書で使用する時、用語「フィルターブロック体積」は、フィルターブロック細孔体積、及びフィルター粒子に占領された体積の合計を指す。すなわちフィルターブロック体積は、フィルターブロックの外部寸法に基づき計算されたフィルターブロックの総体積である。例えば図1では、フィルターブロック体積は以下のように計算され:
【数2】

【0022】
図2では、フィルターブロック体積は以下のように計算される。:
【数3】

【0023】
本明細書にて使用される単位は、一般にcmであるが、当業者はあらゆる適切な長さ単位をL及びrに使用できることを理解するであろう。
【0024】
本明細書で使用する時、用語「微生物」、「微生物学的有機体」、「細菌」、及び「病原体」は、同義的に使用される。これらの用語は、バクテリア、ウィルス、寄生生物、原生生物、及び病菌として特徴付けることができる様々な種類の微生物を指す。
【0025】
本明細書で使用する時、語句「フィルターバクテリア対数除去(F−BLR)」は、液体の体積流量が少なくともフィルターブロック体積の10倍に等しく、フィルターブロックを通過する液体流速が少なくとも600mL/分に等しくなってからのフィルターのバクテリア除去能力を指す。F−BLRは、次のように定義及び計算される:
F−BLR=−log[(大腸菌の流出濃度)/(大腸菌の流入濃度)]
ここで「大腸菌の流入濃度」は、試験を通して連続的に約1×10CFU/Lに設定され、「大腸菌の流出濃度」は、フィルターブロックを通過する液体の体積流量が、少なくともフィルターブロック体積の10倍に等しくなってから測定される。F−BLRは、「log」(ここで、「log」は対数である)の単位を有する。流出濃度が分析に使用される技術の検出限界未満であるならば、F−BLRを計算するための流出濃度は、検出限界であると見なされることに留意されたい。また、F−BLRは、殺菌効果を提供する化学剤の適用なしに測定されることにも留意されたい。
【0026】
本明細書で使用する時、用語「フィルターウィルス対数除去(F−VLR)」とは、液体の体積流量が少なくともフィルターブロック体積の10倍に等しく、フィルターブロックを通過する液体流速が少なくとも600mL/分に等しくなってからのフィルターのウィルス除去能力を指す。F−VLRは、次のように定義及び計算される:
F−VLR=−log[(MS−2の流出濃度)/(MS−2の流入濃度)]
ここで「MS−2の流入濃度」は、試験を通して連続的に約1×10PFU/Lに設定され、「MS−2の流出濃度」は、フィルターブロックを通過する液体の体積流量が、少なくともフィルターブロック体積の10倍に等しくなってから測定される。F−VLRは、「log」(ここで、「log」は対数である)の単位を有する。流出濃度が分析に使用される技術の検出限界未満であるならば、F−VLRを計算するための流出濃度は、検出限界であると見なされることに留意されたい。また、F−VLRは、殺ウィルス効果を備える化学剤の適用なしに測定されることにも留意されたい。
【0027】
本明細書で使用する時、用語「ミクロ細孔」は、幅又は直径が2nm(又は、同等には20Å)未満の粒子内細孔を指すものとする。
【0028】
本明細書で使用する時、用語「メソ細孔」は、幅又は直径が2nm〜50nm(又は、同等には20Å〜500Å)の粒子内細孔を指すものとする。
【0029】
本明細書で使用する時、用語「マクロ細孔」は、幅又は直径が50nm(又は、同等には500Å)を超える粒子内細孔を指すものとする。
【0030】
本明細書で使用する時、語句「総細孔体積」及びその派生語は、粒子内細孔全て、即ち、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔の体積を指すものとする。総細孔体積は、当該技術分野において周知の方法であるBET方法(ASTM D 4820−99標準)を使用して、相対応力0.9814にて吸収される窒素の体積として計算される。
【0031】
本明細書で使用する時、語句「ミクロ細孔体積」及びその派生語は、全ミクロ細孔の体積を指すものとする。ミクロ細孔体積は、当該技術分野において周知の方法であるBET方法(ASTM D 4820−99標準)を使用して、相対応力0.15にて吸収される窒素の体積として計算される。
【0032】
本明細書で使用する時、語句「メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計」及びその派生語は、全部のメソ細孔及びマクロ細孔の体積を指すものとする。メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計は、細孔体積の合計とミクロ細孔体積との差に等しく、あるいは同等に、当該技術分野で周知の方法であるBET法(ASTM D 4820−99標準)を用いて、相対応力0.9814及び0.15で吸着される窒素の体積の差から計算される。
【0033】
本明細書で使用する時、語句「メソ細孔範囲の細孔径分布」は、当該技術分野で周知の方法である、バーレット、ジョイナー及びハレンダ(Barrett, Joyner, and Halenda)(BJH)法で計算される、細孔径の分布を指すものとする。
【0034】
本明細書で使用する時、用語「炭化」及びその派生語は、炭素質物質中の非炭素原子を低減させる方法を指すものとする。
【0035】
本明細書で使用する時、用語「活性化」及びその派生語は、炭化された物質が更に多孔質にされる方法を指すものとする。
【0036】
本明細書で使用する時、用語「活性炭粒子」又は「活性炭フィルター粒子」及びその派生語は、活性化プロセスを経た炭素粒子を指すものとする。
【0037】
本明細書で使用する時、語句「メソ細孔性活性炭フィルター粒子」は、メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が0.12mL/gを超えてもよい、活性炭フィルター粒子を指す。
【0038】
本明細書で使用する時、語句「ミクロ細孔性活性炭フィルター粒子」は、メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が0.12mL/g未満であることも可能な、活性炭フィルター粒子を指す。
【0039】
本明細書で使用する時、語句「メソ細孔性及び塩基性活性炭フィルター粒子」は、メソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が0.12mL/gを超えてもよく、及びゼロ電荷点が7を超える活性炭フィルター粒子を指すものとする。
【0040】
本明細書で使用する時、語句「軸流」は、平面を貫流し、その表面に垂直である流れを指す。
【0041】
本明細書で使用する時、語句「半径流」は、一般には、実質的に円筒状又は実質的に円錐状の表面を貫流し、それらの表面に垂直である流れを指す。
【0042】
本明細書で使用する時、語句「表面積」は、流入水に最初に暴露されるフィルター材料の面積を指す。例えば、軸流フィルターの場合、表面積は、流体の入口におけるフィルター材料の断面積であり、半径流フィルターの場合、表面積はフィルター材料の外側面積である。
【0043】
II.透過性
フィルターブロック設計のキーとなるパラメータは、フィルターの透過性であることが、予想外に究明されてきた。上述のように、小さな、すなわちサブミクロンけん濁粒子を除去するフィルターブロックを作製する従前の試みは、流量特性が悪い、より具体的には、フィルターブロックを通過する圧力損失が高いフィルターブロックをもたらした。例えば、本明細書の実施例の節の表1を参照されたいが、これら従来のフィルターブロックは透過性が低いことが判明する。
【0044】
透過性は、所与の流速、フィルターブロックを通過する圧力損失、濾過された流体の粘度、及びフィルターブロックの一般的な幾何学的測定から計算できるフィルターブロックの固有の特性である。次の2つの式は、半径流及び軸流フィルターブロックのための透過性を計算するのに使用でき、これらは共通して最も一般的に使用される本明細書にて開示されたフィルターブロック、及びフィルターブロックの好ましい形状である。当業者は、これらの式を他のフィルターブロック形状に容易に適応させられるであろう。
【0045】
半径流フィルターブロックの透過性は、以下のように計算され:
【数4】

【0046】
軸流フィルターブロックの透過性は、以下のように計算される:
【数5】

【0047】
ここで:Qは半径流速度、Qは軸流速度(mL/s、又はcm/s)、μは粘度(ポアズ又はダイン−s/cm)、lnは自然対数、rは軸流フィルターの半径、rは半径流フィルターの外側半径、rは半径流フィルターの内側半径(全てcm)、ΔPは半径流フィルターの圧力損失、ΔPは軸流フィルターの圧力損失(ダイン/cm)、Lは半径流フィルターの長さ、及びLは軸流フィルターの長さ(cm)である。
【0048】
次に図1を見ると、これは本発明に従う半径流フィルターブロック10の略図であり、Qと指定される入口又は「汚れた」フロー12が外部表面積14に入ることが示され、これはrと指定される外部半径又は外側半径15を有する。フィルターブロック10を通って内部中空コア16へ移動するフロー12は、rと指定される内部半径17を有する。その後、濾過された、又は「きれいな」フロー18は、中空コア16を通って下方に流れ、回収容器(図示せず)に入る。フィルターブロック10は、Lと指定される長さ11を有する。
【0049】
次に図2を見ると、これは本発明に従う軸流フィルターブロック20の略図であり、Qと指定される入口又は「汚れた」フロー22が上面又は表面積24に入ることが示され、これはrと指定される半径25を有する。フロー22は、フィルターブロック20を通って底面26に移動する。その後、濾過された、又は「きれいな」フロー28は、回収容器(図示せず)に流れ入る。フィルターブロック20は、Lと指定される長さ21を有する。濾過される液体は、フィルターブロック20の軸の長さ全体を移動しなくてはならないので、軸フィルターブロック20の外部表面積13は、一般的に密閉される。
【0050】
本発明の好ましい態様では、フィルターブロックの外側半径、すなわち、r又はrのいずれかは、約10cm未満、好ましくは約7.5cm未満、及びより好ましくは約5cm未満である。さらに、フィルターブロック体積は、約2000mL未満、好ましくは約1000mL未満、より好ましくは約200mL未満、より好ましくは約100mL未満、及びさらにより好ましくは約50mL未満であることが好ましい。当業者は、半径フィルターブロックの体積は中空コアの体積を除くことを認識するであろう。
【0051】
III.フィルター粒子
本発明で使用するのに好ましいフィルター粒子は、炭素粒子、より好ましくは活性炭粒子、及びさらにより好ましくはメソ細孔性活性炭粒子である。メソ細孔性活性炭フィルター粒子の詳細な説明及びさらなる定義は、以下の出版物及び同時係属特許出願を参照:PCT出願US02/27000、US02/27002、US03/05416、US03/05409、米国特許出願10/464,210、10/464,209、10/705572、及び10/705174(全てミッチェル(Mitchell)らの名で発行され、全てプロクター・アンド・ギャンブル社(Procter & Gamble Co.)に譲渡された)。全ての前述の出願は、全体として本明細書に参考として組み込まれる。
【0052】
メソ細孔性活性炭フィルター粒子は、ミクロ細孔性活性炭フィルター粒子と比較して、より多くの微生物を吸着することが、予期せずして分かった。また、メソ細孔性及び塩基性活性炭フィルター粒子は、メソ細孔性及び酸性活性炭フィルター粒子により吸着されるものと比較して、より多くの微生物を吸着することが、予期せずして分かった。更に、メソ細孔性、塩基性及び低酸素活性炭フィルター粒子は、バルク酸素重量パーセンテージの低下していないメソ細孔性及び塩基性活性炭フィルター粒子により吸着されるものと比較して、より多くの微生物を吸着することが、予期せずして見出された。
【0053】
本発明で使用するのに適したフィルター粒子としては、直前に列記した好ましい粒子並びに活性炭粉末、活性炭顆粒、活性炭繊維、ゼオライト、活性アルミナ、活性マグネシア、珪藻土、銀粒子、活性シリカ、ハイドロタルサイト、ガラス、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、エチレン無水マレイン酸コポリマー繊維、砂、粘土及びこれらの混合物から成る群から選択される他の材料が包含されることを当業者は認識するであろう。
【0054】
一つの好ましい方法であるが、決して本発明のフィルターブロックのための望ましい透過性を得る唯一の方法ではない方法は、中央粒径の操作及びフィルター粒子の粒子スパンの低下による。具体的には、約50μm未満、好ましくは約40μm未満、より好ましくは約37.5μm未満、及びさらにより好ましくは約35μm未満の中央粒径を有するフィルター粒子からフィルターブロックを作製することにより、好ましい透過性が得られる。さらに、フィルター粒子は、約1.8以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下、及びさらにより好ましくは1.3以下の粒子スパンを有することも好ましい。
【0055】
本明細書に記載されたように、本発明のフィルターブロックは、一般にフィルター粒子及び結合剤を含む。本発明の一つの好ましい態様では、フィルター粒子の少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、より好ましくは少なくとも約70重量%、及びさらにより好ましくは少なくとも約80重量%が活性炭粒子である。当業者は、共にフィルター粒子のより広い範疇の部分集合であるが、活性炭粒子は活性炭繊維を含有しないことを認識するであろう。繊維と粒子の間の区別は、アスペクト比により最も良くなされ、すなわち約4:1を超えるアスペクト比を有するフィルター粒子は一般に繊維として分類され、一方約4:1以下のアスペクト比を有するフィルター粒子は一般に粒子と考えられる。
【0056】
IV.コーティングされたフィルター粒子
本発明のフィルターブロック及びフィルターを作製するために使用されるフィルター粒子は、ある効果を提供する様々な材料にてコーティングされ得る。例えば、米国特許出願10/705572、及び同10/705174(ミッチェル(Mitchell)ら)は、本発明で使用するのに適した様々な金属及びカチオン性コーティングを教示している。これらのコーティングは、ウィルス及びバクテリア除去効果を備える。
【0057】
コーティングされたフィルター粒子が使用されるとき、好ましくは少なくとも一部分のフィルター粒子が、銀、銀含有材料、カチオン性ポリマー、及びこれらの混合物から成る群から選択される材料でコーティングされる。本発明にて使用するのに好ましいカチオン性ポリマーは、:ポリ(N−メチルビニルアミン)、ポリアリルアミン、ポリアリルジメチルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルピリジニウムクロライド、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリビニルイミダゾール、ポリ(4−アミノメチルスチレン)、ポリ(4−アミノスチレン)、ポリビニル(アクリルアミド−コ−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリビニル(アクリルアミド−コ−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリエチレンイミン、ポリリシン、DAB−Am及びPAMAMデンドリマー、ポリアミノアミド、ポリヘキサメチレンビグアンジド(polyhexamethylenebiguandide)、ポリジメチルアミン−エピクロロヒドリン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、キトサン、グラフト化デンプン、塩化メチルによるポリエチレンイミンのアルキル化生成物、エピクロロヒドリンによるポリアミノアミドのアルキル化生成物、カチオン性モノマーでのカチオン性ポリアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド(AETAC)、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド(METAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(APTAC)、メタクリルアミドプロピル(amodopropyl)トリメチルアンモニウムクロライド(MAPTAC)、ジアリルジメチル塩化アンモニウム(DADMAC)、イオネン、シラン及びこれらの混合物から成る群から選択される。好ましくはカチオン性ポリマーは、ポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミン−エピクロロヒドリン、ポリヘキサメチレンビグアンジド(polyhexamethylenebiguandide)、ポリ−[2−(2−エトキシ)−エトキシエチル(ethoxyethlyl)−グアニジニウム]クロライドから成る群から選択される。
【0058】
ウィルス及びバクテリアの除去又は死滅を補助し得る上述のコーティングに加えて、コーティングは、フィルターブロックの流量特性を改善するために添加されてもよく、フィルターブロックの透過性に影響を及ぼす。例えば、フィルターブロックを通過する圧力損失を低下するために、抵抗低減ポリマーをフィルターブロックに適用できる。抵抗低減ポリマーの非限定例としては、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、部分加水分解ポリアクリルアミド、及びポリエチレンオキシドのような直鎖状ポリマーが挙げられる。他の例が当業者に既知であろう。
【0059】
V.本発明のフィルター
本発明で使用するのに適したフィルター構成、飲料水装置、消費者器具、及び他の水濾過装置の例は、米国特許第5,527,451号;同第5,536,394号;同第5,709,794号;同第5,882,507号;同第6,103,114号;同第4,969,996号;同第5,431,813号;同第6,214,224号;同第5,957,034号;同第6,145,670号;同第6,120,685号;及び同第6,241,899号に開示されており、これらの内容は本明細書に参考として組み込まれる。さらに、上記で参照された、及び本明細書に参考として組み込まれた特許及び出願は、本発明での使用に容認可能であり得るフィルターを教示する。本発明のフィルターブロックの好ましい作製方法の一つは、以下の実施例の節に記載されている。
【0060】
本明細書にて開示されたフィルターブロックに加えて、本発明のフィルターは、逆浸透システム、紫外線システム、オゾンシステム、イオン交換システム、電解水システム、及び当業者に既知の他の水処理システムを包含する他のフィルターシステムをもまた含んでよい。同様に、けん濁した粒子によるフィルターブロックの目詰まりを防止するために、本発明のフィルターは、フィルターブロック周囲に巻き付いたプレフィルターを含んでもよい。さらに本発明のフィルターは、消費者にフィルターの残存期間/残存容量を表示し、フィルターの残存期間/残存容量がゼロであるときフィルターを遮断するために、インジケータシステム及び/又は遮断システムを含んでもよい。
【0061】
前述のように、フィルター材料は、緩い形態又は相互連結された(例えば、ポリマー結合剤又は他の手段で一部又は全部結合され、一体化構造を形成している)形態のいずれかで提供することができる。
【0062】
前述のように、フィルター粒子の大きさ、形状、複合構成、電荷、多孔率、表面構造、官能基などを変えることにより、フィルター材料を異なる用途(例えば、プレフィルター又はポストフィルターとしての用途)に使用してもよい。また、直前に記載したように、フィルター材料を他の材料と混合して特定の用途に適合させてもよい。フィルター材料は、他の材料と混合されるか否かに関わらず、緩いろ床、ブロック(本明細書に参考として組み込まれる米国特許第5,679,248号に記載の共押出しブロックを包含する)及びこれらの混合物として使用されてもよい。フィルター材料と共に使用してもよい好ましい方法としては、セラミック−炭素混合物(結合はセラミックの焼成により生じる)によって製造されるブロックフィルターの形成、本明細書に参考として組み込まれる米国特許第6,077,588号に記載のような不織布間での粉末の使用、本明細書に参考として組み込まれる米国特許第5,928,588号に記載のような生強度法の使用、本明細書に参考として組み込まれるブロックを形成する樹脂結合剤の活性化、又はPCT国際公開特許WO98/43796に記載の抵抗加熱法の使用が挙げられる。本発明のフィルターブロックは、当業者に既知の標準押出成形方法により、作製され得る。このような方法は、米国特許第5,331,037号(コスロー(Koslow)ら)に記載されており、これは本明細書に参考として組み込まれる。
【0063】
透過性が高いフィルターシステムの流速は、流量又は圧力制御装置により制御され得る。圧力/流量制御装置は、入力圧力又はフィルターを通過する圧力損失を制御する圧力調節装置を備える。直接流量制御装置は、流速に依存した可変圧力損失を生み出す。最も一般的な流量制御装置は、フローウォッシャー(例えば、図3に示される30)である。フローウォッシャー30は、一般に中心に開口部32を有する高粘度のエラストマー系ウォッシャー31である。フローウォッシャー30は、その外辺部33により支持され、入力流量34に対応して凹部形状に湾曲している。流速が大きくなればなるほど、湾曲が大きくなる。フローウォッシャー30が湾曲すると、開口部35のアップストリーム表面を引き起こし、サイズが減少(圧力損失が増大)し、その結果、出力流速36を制御する。
【0064】
VI.フィルターブロックの実施例
フィルターブロックは、本発明に従って作製され、以下に例示される。これらの実施例は、何らかの方法で本発明を限定することを意味しない。実施例1−4における透過性及び他の計算されたパラメータは、以下の表1に与えられる。さらに表1は、先行技術出版物からの3つの比較実施例を包含する。3つの比較実施例は、現況技術の包括的な表現であることを意図しない。
【0065】
以下の実施例1−4のフィルターブロックは、次の圧縮成形方法及び装置により作製される。垂直に取り付けられた両末端シリンダープレス、下側ピストン及び上側ピストンから成るフィルター空気圧プレスが使用される。シリンダープレス内径は5.1cm(2インチ)であり、長さは7.6cm(3インチ)である。下側ピストンは、直径3.8cm(1.5インチ)、長さ7.6cm(3インチ)を有する空気圧シリンダー(オハイオ・モシヤー流体動力(Mosier Fluid Power of Ohio)(オハイオ州、マイアミズバーグ)、モデル♯EJO155A1)で駆動し、上側ピストンは、直径3.8cm(1.5インチ)、長さ10.2cm(4インチ)を有する空気圧シリンダー(オハイオ・モシヤー流体動力(Mosier Fluid Power of Ohio)(オハイオ州、マイアミズバーグ)、モデル♯EJO377A3)で駆動する。上側ピストン及び下側ピストンは、熱制御装置(オムロン(Omron)社より)(イリノイ州、ショウンバーグ;モデル♯E5CS)で加熱し、シリンダープレスは、バンド・ヒーター(ファスト・ヒート(Fast Heat)社より)(イリノイ州、エルムハースト;モデル♯BW020000)で加熱する。バンド・ヒーター制御装置は、スタッコ・エナジー・プロダクト(Statco Energy Products)社(オハイオ州、デイトン)からのバリアック(Variac)である(モデル♯3PN1010)。
【0066】
約42gの炭素を、約13.2gの結合剤:マイクロセン(Microthene)(登録商標)低密度ポリエチレン(LDPE)FN510−00(イクイスター・ケミカル(Equistar Chemicals)社(オハイオ州シンシナティー))、及び約4.8gのアルミノケイ酸塩粉末:アルジル(Alusil)(登録商標)70(セレクト(Selecto)社(ジョージア州、ノルクロス))と混合する。従って、総炭素ミックスは約60gである。上側ピストンを十分に引込め、下側ピストンを十分に下げ、シリンダープレスに炭素ミックスを充填し、シリンダープレス壁を静かにたたき、ミックスを落ち着かせる。シリンダープレスを戻して最大限に充填し、ミックスを平らにするよう擦り取る。上側ピストンをゆっくり下ろし、圧力0.41MPa(60psi)で完全に嵌合し、数秒間保持する。その後、圧力をゼロ近くまで下げ、上側ピストンをゆっくり引込める。再び、シリンダープレスにさらなる炭素ミックスを充填し、シリンダー壁を静かにたたき、ミックスを平らにするよう擦り取り、上側ピストンをゆっくり下げて完全に嵌合し、圧力を0.41MPa(60psi)に上げる。この手順をもう一回繰り返し、シリンダープレスを炭素ミックスで完全に充填する。3回目の充填後、上側ピストン上の圧力0.41MPa(60psi)を維持する。その後、シリンダー熱制御装置をオンにし、温度を204℃(400゜F)に設定する。バンド・ヒーターも同様にオンにし、制御されたバリアック(Variac)を70%又は約288℃(550゜F)に設定する。熱サイクルは10分間持続する。熱サイクルが終了したら、3つのヒーターをオフにし、プレスを上側ピストン及び下側ピストンの両方を通る空気で約10分間、空気圧により冷却し、フィルターをシリンダープレスから引き抜く。引き抜いたフィルターの寸法は、外径5.1cm(2インチ)、長さ約6.4cm(2.5インチ)である。最後に、中央穴を開けることによりフィルターを半径流フィルターにし、フィルターの外径を旋盤(lathe)の最終直径まで低減させる。
【0067】
以下の全ての実施例では、使用される液体は、0.01ポアズ(0.001Pa・s)、又は0.01ダイン−s/cmの粘度を有する水である。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
試料:ヌチャー(Nuchar)(登録商標)RGCメソ細孔性で、ベーシックウッド系活性炭粒子を、ミードウェストバコ(MeadWestvaco)社(バージニア州、コビントン)から入手する。炭素粒子の粒径分布は、当該技術分野で既知の一般的な光散乱方法で測定され、結果は以下のとおりである:
【数6】

及び粒子スパン=1.44。
【0069】
フィルター粒子は、コーティングされていない。それらは結合剤と混合され、圧縮成形され、以下の寸法を有する半径流フィルターブロックに成形される:外側半径(r)=1.9cm(0.75インチ)、内側半径(r)=0.48cm(0.188インチ)、及び長さ=5.8cm(2.3インチ)。フィルターブロック体積は62cm(62mL)であり、その表面積は70cmである。フィルターブロック透過性を測定するために、以下の条件が使用される:
流速Q=625mL/分(10.4cm/s)、
及び
圧力損失ΔP=0.12MPa(18psi、又は1.24×10ダイン/cm)。
【0070】
フィルターブロックの透過性は、3.30×10−9cmと計算される。フィルターブロックのF−VLRは、本明細書に記載された方法に従って測定され、測定結果は、4.3logウィルス減少、すなわち、ウィルス除去99.99%を超える。
【0071】
(実施例2)
試料:ヌチャー(Nuchar)(登録商標)RGCメソ細孔性で、ベーシックウッド系活性炭粒子を、ミードウェストバコ(MeadWestvaco)社から入手する。炭素粒子の粒径分布は、当技術で既知の一般的な光散乱方法で測定され、結果は以下のとおりである:
【数7】

及び粒子スパン=1.44。
【0072】
炭素粒子は、ポリビニルアミン(PVAm)でコーティングされる。それらは結合剤と混合され、圧縮成形され、以下の寸法を有する半径流フィルターブロックに成形される:外側半径(r)=1.9cm(0.75インチ)、内側半径(r1)=0.48cm(0.188インチ)、及び長さ=5.8cm(2.3インチ)。フィルターブロック体積は62cm(62mL)であり、その表面積は70cmである。フィルターブロック透過性を測定するために、以下の条件が使用される:
流速Q=940mL/分(15.7cm/s)、及び
圧力損失ΔP=0.10MPa(15psi、又は1.03×10ダイン/cm)。
【0073】
フィルターブロックの透過性は、5.72×10−9cmと計算される。フィルターブロックのF−VLRは、本明細書に記載された方法に従って測定され、測定結果は、4.0logウィルス減少、すなわち、ウィルス除去99.99%を超える。
【0074】
(実施例3)
試料:ヌチャー(Nuchar)(登録商標)RGCメソ細孔性で、ベーシックウッド系活性炭粒子を、ミードウェストバコ(MeadWestvaco)社から入手する。炭素粒子は、以下の粒径分布を得るために、当該技術分野で既知の一般的なふるい方法により分画され、光散乱により確認される:
【数8】

及び粒子スパン=1.23。
【0075】
炭素粒子は、コーティングされていない。それらは結合剤と混合され、圧縮成形され、実施例1及び2と同一の寸法、フィルターブロック体積及び表面積を有する半径流フィルターブロックに成形される。透過性を測定するために、以下の条件が使用される:
流速Q=625mL/分(10.4cm/s)、
及び
圧力損失ΔP=0.08MPa(12psi、又は0.83×10ダイン/cm)。
【0076】
フィルターブロックの透過性は、4.75×10−9cmと計算される。フィルターブロックのF−VLRは、本明細書に記載された方法に従って測定され、測定結果は、4.2logウィルス減少、すなわち、ウィルス除去99.99%を超える。
【0077】
(実施例4)
異なる粒径分布を有する2つの試料:ヌチャー(Nuchar)(登録商標)RGCメソ細孔性で、ベーシックウッド系活性炭粒子を、ミードウェストバコ(MeadWestvaco)社から入手する。2つの試料を共に混合し、得られる粒径分布は、光散乱により以下のように測定される:
【数9】

及び粒子スパン=2.02。
【0078】
炭素粒子は、ポリビニルアミン(PVAm)でコーティングされる。それらは結合剤と混合され、圧縮成形され、実施例1、2及び3と同一の寸法、フィルターブロック体積及び表面積を有する半径流フィルターブロックに成形される。透過性を測定するために、以下の条件が使用される:
流速Q=625mL/分(10.4cm/s)、
及び
圧力損失ΔP=0.055MPa(8psi、又は0.55×10ダイン/cm)。
【0079】
フィルターブロックの透過性は、7.13×10−9cmと計算される。得られたブロックのF−VLRは、本明細書に記載された方法に従って測定され、測定結果は、4.2logウィルス減少、すなわち、ウィルス除去99.99%を超える。
【0080】
以下の表1は、上記に例示された4つのフィルターブロック、及び先行技術出版物からの3つのフィルターブロックの透過性を示している。フィルターブロックについての追加情報も同様に示されている。
【表1】

【0081】
*公開特許及び公開出願からの実施例
実施例5=米国特許公報2003/0217963A1(ミッチェル(Mitchell)ら)からの実施例No.3
実施例6=米国特許第6,395,190号(コスロー(Koslow)ら)の実施例より
実施例7=米国特許公報2003/0034290A1(トチクボ(Tochikubo)ら)からの第一実施形態
実施例5、6及び7では、粒径分布は、体積ではなく重量分画として開示されている。しかし当業者は、一種の粒子の試料に関して、これらの3つの各実施例の場合と同様に、粒子の密度は同じであり、それ故、体積測定の粒径分布は重量基準の粒径分布と同じになることを認識するであろう。
【0082】
不明=これらのパラメータは、発行された参考文献の情報から確定できなかった。
【0083】
表1の全ブロックは、押出成形方法で作製された実施例6を除いて、圧縮成形された。
【0084】
金属性殺生物剤は、いずれの実施例でも使用されなかった。
【0085】
VII.試験及び計算手順
F−VLR及びF−BLRを計算するために、以下の試験手順が使用される。
【0086】
F−BLR試験手順
試験すべきフィルターブロックを、フィルターブロック及びその流量特性(軸、半径等)に適した筐体内側に取り付け、約1×10CFU/Lの大腸菌で汚染された水を少なくとも約600mL/分の流速で貫流させる。流出物の測定は、フィルターブロックを通過する液体の体積流量が少なくともフィルターブロック体積の10倍に等しくなった後になされる。使用する大腸菌バクテリアは、ATCC#25922(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、メリーランド州ロックビル)である。大腸菌分析は、ワシントンDCのアメリカ公衆保健協会(American Public Health Association)(APHA)により出版された「水及び廃水の試験の標準的方法(Standard Processes for the Examination of Water and Wastewater)」第20版の方法#9222による膜フィルター技術を使用して実施でき、その内容は参考として本明細書に組み込まれる。当該技術分野で既知の他の分析(例えば、コリラート(COLILERT)(登録商標))を代用できる。検出限界(LOD)は、膜フィルター技術によって測定した場合、約1×10CFU/L、コリラート(COLILERT)(登録商標)技術によって測定した場合、約10CFU/Lである。最初の約2,000フィルター材料細孔体積を通流した後、流出水を捕集し、存在する大腸菌バクテリアを分析して計数し、定義を使用して F−BLRを計算する。
【0087】
F−VLR試験手順
筐体は、上述のF−BLR手順に記載されたものと同じである。約1×10PFU/LのMS−2で汚染された水を少なくとも約600mL/分の流速で筐体/フィルターシステムに貫流させる。流出物の測定は、フィルターブロックを通過する液体の体積流量が少なくともフィルターブロック体積の10倍に等しくなった後になされる。使用するMS−2バクテリオファージは、ATCC#15597B(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、メリーランド州ロックビル)である。MS−2分析は、応用及び環境微生物学(Appl. Environ. Microbiol)、60(9)、3462(1994)、C.J.ハースト(Hurst)による手順に従って実施でき、その内容は参考として本明細書に組み込まれる。当該技術分野で既知の他の分析を代用できる。検出限界(LOD)は、1×10PFU/Lである。最初の約2,000フィルター材料細孔体積を通流した後、流出水を捕集し、存在するMS−2バクテリオファージを分析して計数し、定義を使用してF−VLRを計算する。
【0088】
本発明は、本発明の炭素フィルター粒子及び/又はフィルター材料の使用により、微生物の除去利益をもたらすという情報を言葉及び/又は絵により消費者に伝えること、及びこの情報が他のフィルター製品より優れているという主張を含むことも可能である。非常に望ましい変形では、本発明の使用によりナノサイズの微生物のレベルが低減することを、その情報が包含することも可能である。従って、本発明の使用により、本明細書で検討されるように、飲用に適した又はより飲用に適した水などの利益が得られるという、消費者への言葉及び/又は絵による情報を付随した包装を使用することが重要である。この情報は、消費者に知らせるために、例えば、通常のメディア全てにおける広告、並びに包装又はフィルター自体の上の説明及び図象を含み得る。
【0089】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文書は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文書の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。
【0090】
本明細書に記載の実施形態は、本発明の原理及びその実際的な用途の最良の説明を提供し、それによって当業者が本発明を様々な実施形態で、また企図される特定の用途に適するように様々な修正を行って利用できるように、選択され説明された。このような全ての修正及び変形は、適正に、合法的に、公正に権利を与えられる範囲に従って解釈される時、添付の請求項によって決定されるような本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】半径フィルターブロックを貫流する略図。
【図2】軸方向フィルターブロックを貫流する略図。
【図3】本発明のフィルターと共に用いるのに適した圧力/流量制御装置の略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約3.0×10−9cmを超える、好ましくは約3.5×10−9cmを超える、より好ましくは約4.0×10−9cmを超える、さらにより好ましくは約4.5×10−9cmを超える、及びさらにより好ましくは約5.0×10−9cmを超える透過性、並びに約99%を超える、好ましくは約99.9%を超える、好ましくは約99.99%を超える、より好ましくは約99.999%を超える、及びさらにより好ましくは約99.9999%を超えるF−VLRを有する、フィルターブロック。
【請求項2】
前記ブロックが、約50μm未満の中央粒径と約1.4以下の粒子スパンとを有するフィルター粒子を含む、請求項1に記載のフィルターブロック。
【請求項3】
フィルター粒子及び結合剤を含んでなり、前記フィルター粒子が、約40μm未満、好ましくは約37.5μm未満、及びより好ましくは約35μm未満の中央粒径、並びに約1.8以下、好ましくは1.5以下、及びより好ましくは1.3以下の粒子スパンを有する粒子から実質的に成る、フィルターブロック。
【請求項4】
フィルター粒子及び結合剤を含んでなり、前記フィルター粒子が、約40μm未満、好ましくは約37.5μm未満、及びより好ましくは約35μm未満の中央粒径を有する粒子から実質的に成る、請求項1に記載のフィルターブロック。
【請求項5】
フィルター粒子及び結合剤を含んでなり、前記フィルター粒子が、約1.8以下、好ましくは1.5以下、及びより好ましくは1.3以下の粒子スパンを有する粒子から実質的に成る、請求項1又は4に記載のフィルターブロック。
【請求項6】
前記ブロックがフィルター粒子を含み、少なくとも一部分のフィルター粒子が、活性炭粒子、メソ細孔性活性炭粒子、活性炭粉末、活性炭顆粒、活性炭繊維、ゼオライト、活性アルミナ、活性マグネシア、珪藻土、活性シリカ、ハイドロタルサイト、ガラス、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、エチレン無水マレイン酸コポリマー繊維、砂、粘土、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載のフィルターブロック。
【請求項7】
前記フィルター粒子の少なくとも一部が、銀、銀含有物質、カチオン性ポリマー、及びこれらの混合物から成る群から選択される材料でコーティングされる請求項9に記載のフィルターブロック。
【請求項8】
メソ細孔性活性炭粒子であるフィルター粒子を含んでなり、前記メソ細孔性活性炭粒子のメソ細孔及びマクロ細孔の体積の合計が、約0.2mL/g〜約2mL/gである、請求項1に記載のフィルターブロック。
【請求項9】
前記フィルターブロックがフィルター粒子及び結合剤を含んでなり、フィルター粒子の少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、より好ましくは少なくとも約70重量%、及びさらにより好ましくは少なくとも約80重量%が活性炭粒子である、請求項1に記載のフィルターブロック。
【請求項10】
前記フィルターブロックが、少なくとも部分的に抵抗低減ポリマーでコーティングされたフィルター粒子を含む、請求項1に記載のフィルターブロック。
【請求項11】
(a)入口と出口とを有する筺体と、
(b)請求項1に記載のフィルターブロックと、
(c)圧力/流量制御装置、
とを備えた、飲料水を提供するフィルター。
【請求項12】
i)請求項1に記載のフィルターブロックを備えるフィルターと、
ii)フィルターを含有するためのパッケージと、
を備え、前記パッケージ又は前記フィルター筐体のいずれかが、前記フィルター又はフィルター材料が提供する、バクテリア除去、ウィルス除去、細菌除去、微生物除去、バクテリア死滅、ウィルス死滅、細菌死滅、微生物死滅、又はこれらのあらゆる組み合わせから成る情報を含む、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−534487(P2007−534487A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511102(P2007−511102)
【出願日】平成17年5月5日(2005.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/015745
【国際公開番号】WO2005/108300
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506361889)ピュール、ウォーター、ピューリフィケーション、プロダクツ、インコーポレーテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】PUR WATER PURIFICATION PRODUCTS, INC.
【Fターム(参考)】