説明

通信ケーブルとその製造方法

【課題】 曲げなどによる伝送特性悪化を最小限に抑えることができる通信ケーブルを提供すること。
【解決手段】 一対の絶縁心線1を撚り合わせてなる対撚り線2の複数本の相互間に介在物4を介在させて、各対撚り線2間を離間させるようにした通信ケーブルであって、前記介在物4が、押し出し成形により前記対撚り線2間に充填配置される発泡材料からなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、LANなどに使用される通信ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来よりLANのカテゴリー6等で用いられる通信ケーブルとして、図3に示す構造のものが知られている。この通信ケーブルでは、一対の絶縁心線21を撚り合わせてなる対撚り線22の複数本を外被23で被覆するとともに、外被23内の中心にプラスチック等からなる断面十字状の介在物24を配設し、この介在物24により各対撚り線22の相互間を離間させている。
【0003】この通信ケーブルでは、介在物24により各対撚り線22の相互間の間隔寸法(以下、対間距離という)を一定以上とすることにより、電気特性(漏話特性)を向上させている。
【0004】なお、この通信ケーブルでは、介在物24の寸法を変更することにより、対間距離が変更される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような構造の通信ケーブルでは、例えば配線ラック内等で曲げられたり、側方より押潰されたりしたときは、各対撚り線22が比較的硬質の介在物24に強く押し当てられる等の原因で、対撚り線22の撚りが開き、伝送特性(リターンロス)が悪化してしまうという問題がある。
【0006】そこで、本発明は、曲げや押潰等による伝送特性悪化を最小限に抑えることができる通信ケーブルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、この発明の請求項1記載の通信ケーブルは、一対の絶縁心線を撚り合わせてなる対撚り線の複数本の相互間に介在物を介在させて、各対撚り線間を離間させるようにした通信ケーブルにおいて、前記介在物は、前記各対撚り線間に充填状に配置される発泡材料により形成されたものである。
【0008】なお、請求項2記載のように、前記発泡材料は発泡ポリエチレンであってもよい。
【0009】また、この発明の請求項3記載の通信ケーブルの製造方法は、一対の絶縁心線を撚り合わせてなる対撚り線の複数本を、それら各対撚り線を互いに離間させた状態でそれぞれ挿通ガイド可能な複数のガイド孔を有する対撚り線挿通ガイド治具の各ガイド孔に挿通させた後、それら各対撚り線を発泡材料押出ヘッド部内に通して、当該各対撚り線間に発泡材料を充填状に配置するようにしたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、この実施形態の通信ケーブルの断面図を示す。
【0011】この通信ケーブルは、LANなどに使用される高速伝送用のものであって、一対の絶縁心線1を撚り合わせてなる複数本(ここでは4本)の対撚り線2の相互間に介在物4を介在させて、各対撚り線2間を離間させた構成とされる。また、介在物4の外周には、絶縁性樹脂などからなる外皮3が被覆されている。
【0012】上記介在物4は、押出し成形により前記対撚り線2間に充填状に配置される発泡材料からなる。発泡材料としては、各対撚り線2間の漏話を防止するため誘電率の低い材料、例えば発泡ポリエチレンが用いられる。
【0013】図2は、上記通信ケーブルの製造方法の概略の工程を示す。
【0014】この製造方法では、図2(A)に示すように、前記各対撚り線2を互いに離間させた状態でそれぞれ挿通ガイド可能な4つのガイド孔5を有する対撚り線挿通ガイド治具6と、各対撚り線2間に発泡材料を充填状に配置可能な発泡材料押出ヘッド部7とを備えた製造装置が用いられる。
【0015】そして、それぞれ個別のリール(図示せず)から繰出した4本の対撚り線2を前記各ガイド孔5にそれぞれ挿通させてその前方に引出すと、当該各対撚り線2が互いに離間された状態で送給ガイドされることになる。
【0016】また、このように挿通ガイドされた4本の対撚り線2は、互いに離間された状態のまま発泡材料押出ヘッド部7に送込まれ、その内部を通って先端側のガイド成形孔8から外方へ引出される。発泡材料押出ヘッド部7では、各対撚り線2の送給に伴って供給される発泡材料が順次各対撚り線2周りに押出される。この際、各対撚り線2は互いに離間された状態となっているので、当該押出された発泡材料が各対撚り線2間に充填状に配置されることになる。
【0017】次に、発泡材料は、図2(B)に示すように、ガイド成形孔8により断面略円形状の介在物4に成形されてその前方に引出されることになる。
【0018】この後、当該断面略円形状の介在物4の外周に、外皮3が押出被覆されると、通信ケーブルの製造が終了する。
【0019】このように構成された通信ケーブルでは、各対撚り線2の相互間に発泡材料からなる介在物4が押出し成形により介在されているので、対間距離を一定以上に保って、漏話特性を良好に保つことができる。
【0020】また、配線ラック内などで曲げられたり、その側方より押潰されても、従来のように対撚り線22が比較的硬質の介在物24に押し当てられるようなことはなく、各対撚り線2は比較的柔軟な発泡材料により形成される介在物4に押し当てられる程度で済むため、その撚りの開きが少なくなり、伝送特性(リターンロス)の悪化を最小限に抑えることができる。
【0021】しかも、通信ケーブルが配線ラック内などで曲げられたり、その側方より押潰され、一時的に対間距離が小さくなるようなことがあっても、発泡材料により形成される介在物4は復元力が強く原形に復帰しやすいため、対間距離が元の大きさに復帰し易く、漏話特性を良好なまま維持し易い。
【0022】また、発泡材料により形成される介在物4は柔軟であるため、通信ケーブル自体も曲げ易いという利点がある。
【0023】また、上記図3に示す従来例では、各対撚り線22の対間距離を変更するためには、介在物24の寸法変更が必要であったが、本通信ケーブルの製造方法では、対撚り線挿通ガイド治具6における各ガイド孔5の相互間隔を任意に変更することにより、容易に各対撚り線2の対間距離を変更することができる。
【0024】
【発明の効果】以上のように、本発明の請求項1記載の通信ケーブルによれば、一対の絶縁心線を撚り合わせてなる対撚り線の複数本の相互間に介在物を介在させて、各対撚り線間を離間させるようにした通信ケーブルにおいて、前記介在物は、前記各対撚り線間に充填状に配置される発泡材料により形成されているため、通信ケーブルが曲げられたり、その側方より押潰されても、各対撚り線は比較的柔軟な発泡材料により形成される介在物に押し当てられる程度で済むため、その撚りの開きが少なくなり、伝送特性の悪化を最小限に抑えることができる。
【0025】また、本発明の請求項3記載の通信ケーブルの製造方法によれば、一対の絶縁心線を撚り合わせてなる対撚り線の複数本を、それら各対撚り線を互いに離間させた状態でそれぞれ挿通ガイド可能な複数のガイド孔を有する対撚り線挿通ガイド治具の各ガイド孔に挿通させた後、それら各対撚り線を発泡材料押出ヘッド部内に通して、当該各対撚り線間に発泡材料を充填状に配置するようにしているため、これにより製造された通信ケーブルが曲げられたり、その側方より押潰されても、各対撚り線は比較的柔軟な発泡材料により形成される介在物に押し当てられる程度で済むため、その撚りの開きが少なくなり、伝送特性の悪化を最小限に抑えることができる。しかも、この製造方法では、対撚り線挿通ガイド治具における各ガイド孔の相互間隔を変更するだけで、各対撚り線の相互間隔を容易に管理することができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信ケーブルの断面図である。
【図2】同通信ケーブルの製造方法の概略の工程を示す説明図である。
【図3】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁心線
2 対撚り線
4 介在物
5 ガイド孔
6 対撚り線挿通ガイド治具
7 押出ヘッド部
8 対撚り線ガイド孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の絶縁心線を撚り合わせてなる対撚り線の複数本の相互間に介在物を介在させて、各対撚り線間を離間させるようにした通信ケーブルにおいて、前記介在物は、前記各対撚り線間に充填状に配置される発泡材料により形成されたものである通信ケーブル。
【請求項2】 前記発泡材料が発泡ポリエチレンである請求項1記載の通信ケーブル。
【請求項3】 一対の絶縁心線を撚り合わせてなる対撚り線の複数本を、それら各対撚り線を互いに離間させた状態でそれぞれ挿通ガイド可能な複数のガイド孔を有する対撚り線挿通ガイド治具の各ガイド孔に挿通させた後、それら各対撚り線を発泡材料押出ヘッド部内に通して、当該各対撚り線間に発泡材料を充填状に配置する通信ケーブルの製造方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−231071(P2002−231071A)
【公開日】平成14年8月16日(2002.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−19726(P2001−19726)
【出願日】平成13年1月29日(2001.1.29)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】