説明

通信システム、並びにメモリカード

【課題】接続確立手順において、リーダライタからのビーコン・フレームなどの待ち受け動作に伴うトランスポンダ側の電力の浪費を回避する。
【解決手段】リーダライタは、ビーコン信号の送信に先立ち、無変調キャリア又はダミー信号を送信する。メモリカードは、受信した無変調キャリア又はダミー信号を整流して得られる直流電圧を割り込み信号に用いてスリープ状態から復帰して、トランスポンダの待ち受け動作を開始する。リーダライタは、無変調キャリア又はダミー信号を送信してから速やかにビーコン信号を送信することにより、メモリカードはこれに応じて接続要求を返信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自ら電波の発生源を持たない通信端末(トランスポンダ)が無線で通信相手となる装置(リーダライタ)との間でデータ伝送を行なう非接触の通信システム、並びに非接触通信システムにおいてトランスポンダとして動作する無線部を備えたメモリカードに係り、例えば、反射波読取器側からの無変調キャリアの送信と、反射器側におけるアンテナの終端操作に基づく受信電波の吸収と反射を利用した反射波伝送方式によりデータ通信を行なう通信システム、並びにメモリカードに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、リーダライタが所定周期でビーコン・フレームを送信して自局のサービス・エリアを報知し、トランスポンダがビーコン・フレームに対する応答フレームを返信するといったサービス・エントリ・シーケンスを経て接続を確立する通信システム、並びにメモリカードに係り、特に、サービス・エントリ・シーケンスなどの接続確立手順に伴うトランスポンダ側の消費電力を低減する通信システム、並びにメモリカードに関する。
【背景技術】
【0003】
自ら電波の発生源を持たず無線でデータを送信する通信システムとしてRFID(Radio Frequency IDentification)と呼ばれる非接触通信システムが知られている。RFIDの他の呼び方として、「IDシステム」や「データ・キャリア・システム」などがあるが、世界的に共通なのがRFIDシステム、略してRFIDである。日本語に訳すると「高周波(無線)を使用した認識システム」となる。RFIDシステムは、タグとも呼ばれるトランスポンダと、トランスポンダにアクセスするリーダライタとから構成され、トランスポンダはリーダライタ側から電波をエネルギ源として受動的に動作し、リーダライタはトランスポンダ内に格納された情報の読み取りや情報の書き込みを行なう。
【0004】
RFIDシステムにおける非接触の通信方法には、静電結合方式、電磁誘導方式、電波通信方式などが挙げられる。このうち電磁誘導方式のRFIDシステムは、リーダライタ側の1次コイルとトランスポンダ側の2次コイルで構成され、リーダライタ側では1次コイルから所定のキャリア周波数の交流信号を送信することにより電力を供給し、トランスポンダ側では2次コイルにてこの交流信号を受信して整流することにより電力を取り出して動作する。そして、トランスポンダは2次コイルの負荷切り替えにより振幅変調などの変調処理を行なうことで、リーダライタへデータを送信することができる。
【0005】
また、電波通信方式のRFIDシステムでは、トランスポンダは無変調キャリアに対し変調処理を施した反射波によりデータを送信する反射器を備え、リーダライタは反射器からの変調反射波信号からデータを読み取る反射波読取器を備え、「バックスキャッタ」とも呼ばれる反射波伝送を行なう。反射器は、反射波読取器から無変調キャリアが送られてくると、アンテナ負荷インピーダンスの切り替え操作などに基づいてその反射波に変調を施してデータを重畳する。すなわち、反射器側ではキャリア発生源が不要であることから、低消費でデータ伝送動作を駆動する。そして、反射波読取器側では、このような変調反射波を受信し、復調並びに復号処理して伝送データを取得することができる。
【0006】
反射器は、基本的には、入射する連続波の電波を反射させるアンテナと、送信データの発生回路と、送信データに対応させてアンテナの負荷インピーダンスを変化させるインピーダンス変化回路で構成される(例えば、特許文献1を参照のこと)。インピーダンス変化回路は、例えばアンテナの終端をオープン/グランドに切り替えるアンテナ・スイッチである。このアンテナ・スイッチを、回路モジュールに組み込んでCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタで構成することもできるが、回路モジュールとは切り離して、ガリウム砒素(GaAs)のIC(Integrated Circuit)で構成することで、低消費電力で高速な切り替え動作が可能となる。後者の場合、反射波変調によるデータ伝送レートが向上するとともに、その消費電力は数10μW以下に抑制される。したがって、無線LAN(Local Area Network)では通信時に数百mW〜数W程度の電力を消費することを考慮すると、反射波通信は一般的な無線LANの平均消費電力と比較すると圧倒的な性能差を持つと言える(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0007】
反射器を搭載したトランスポンダは受信電波を反射する動作を行なうだけであるから、無線局とはみなされず、電波通信に課される法規制の対象外として扱われるという利点もある。また、旧来の非接触通信システムでは数MHz〜数百MHz(例えば13.56MHz)の周波数を用いるのに対し、反射波伝送方式では例えばISM(Industrory Science and Medical Band)と呼ばれる2.4GHz帯(マイクロ波)の高帯域を用いた高速なデータ伝送を実現することができる。
【0008】
非接触システムの1つの典型的な利用形態として、図11に示すように、反射器などのトランスポンダを内蔵したホスト機器を、反射波読取装置などのリーダライタが備える読み取り面上に載置して、トランスポンダに対して情報の読み取りや書き込みを行なうことが挙げられる。
【0009】
トランスポンダは、リーダライタが送出するキャリアを整流して電力を得ることができるが、高帯域で大容量データ伝送を行なうには不十分である。すなわち、トランスポンダは、送信時においてキャリアを発生する電力は不要であるが、反射波に変調処理を施す送信動作や、リーダライタからの変調信号を復調・復号する受信動作のための受信動作のための電力はホスト機器から供給される。
【0010】
例えば、デジタルカメラや、カメラ付き携帯電話などの携帯情報端末、携帯型音楽再生装置といった、消費電力を極力抑えたいモバイル系の端末機器にトランスポンダを組み込み、テレビ、モニタ、プリンタ、パーソナル・コンピュータ(PC)、VTR(Video Tape Recorder)、DVD(Digital Versatile Disc)プレイヤなど、据え置き型の家電製品などからなる情報機器にリーダライタを組み込む。そして、トランスポンダとリーダライタ間を近接させることで、カメラ付き携帯電話やデジタルカメラで撮った画像データを、非接触通信によりPCにアップロードし、画像データの蓄積や表示出力、プリントアウトなどを行なうことができる。
【0011】
また、反射器などのトランスポンダ機能を備えたメモリカードについて提案がなされている(例えば、特許文献3を参照のこと)。デジタルカメラや携帯電話機など、このようなメモリカードが差し込まれたホスト機器は、有線インターフェースを介してメモリカードへのアクセス動作を行なうことができる。他方、PCやプリンタといった外部機器は、メモリカードを装着しているホスト機器とは独立して、メモリカードからのデータ読み出し動作を反射波伝送路経由で行なうことができる。すなわち、非接触通信動作を、メモリカードを装着したホスト機器による制御外で制御することができるので、ホスト機器側で非接触通信制御用のドライバ・ソフトウェアを導入する必要がない。
【0012】
また、トランスポンダとリーダライタ間でデータ伝送を行なう際には、両者間で接続を確立する必要がある。通信確立手順の1つとして、リーダライタがある一定の間隔でビーコン・フレームを送信することにより、自局のサービス・エリアを報知するという、というサービス・エントリ・シーケンスが提案されている(例えば、本出願人に既に譲渡されている特願2006−270365号明細書を参照のこと)。
【0013】
図12には、上述したサービス・エントリ・シーケンスを利用して、トランスポンダとリーダライタ間において反射波伝送を行なうための通信制御シーケンスを示している。
【0014】
リーダライタは、ビーコン・フレームを定期的に送信することにより、自局のサービス・エリアを報知する。また、リーダライタは、ビーコン・フレームの送信後に設けられるエントリ期間において、トランスポンダを動作させるための無変調キャリアを送出し続ける。
【0015】
一方、トランスポンダは、ビーコン・フレームを受信することによりリーダライタの存在を知り、エントリ期間内に受信した無変調キャリアを利用して、ビーコン・フレームに応答するエントリ・フレームを返信する。
【0016】
また、図13には、リーダライタとトランスポンダ間において、図12に示したサービス・エントリ・シーケンスを利用して通信動作を開始する際のシーケンスを示している。
【0017】
リーダライタは、一定の時間間隔でビーコン・フレームの送信を間欠的に行なう。トランスポンダは、電波到達範囲外ではビーコン・フレームを受信することはできないが、電波到達範囲内に入り、ビーコン・フレームが到来するとその受信処理を実行する。
【0018】
トランスポンダは、受信したビーコン・フレームのペイロードに記載されている情報に基づいて、使用する通信周波数チャネルの情報やリーダライタの固有IDなどの情報を取得する。そして、リーダライタとの接続したい場合には、エントリ期間を利用して、無変調キャリアを利用してエントリ・フレームを返す。
【0019】
リーダライタは、エントリ・フレームの記載内容に基づいて、トランスポンダの固有IDや、設定可能な通信パラメータの情報などを取得する。そして、トランスポンダと通信したいときには、通信パラメータなどの指定情報をペイロードに記載した接続要求フレームを送信する。これに対し、トランスポンダは、接続要求に応じるときには、接続結果などをペイロードに記載した接続応答フレームを返し、これによって接続が確立する。接続が確立している期間は、リーダライタからのコマンド・フレームの送信と、これに応じたトランスポンダによるレスポンス・フレームの返信の繰り返しにより、トランスポンダに対する情報の読み取りや書き込みが実行される。
【0020】
リーダライタは、常に一定の時間間隔でビーコン・フレームを送信し続ける必要はない。例えば、リーダライタは、トランスポンダから情報を読み取りたいタイミングにおいてのみ、ビーコン・フレーム(あるいは不定期の送信要求信号)を送信した後に、上述と同じ接続要求/応答シーケンスを経て接続を確立するようにしてもよい。すなわち、リーダライタは、不要なビーコン・フレームや、エントリ期間中の無変調キャリアの送信を抑制することができる。
【0021】
これに対し、トランスポンダ側では、リーダライタからビーコン・フレームが送信されるタイミングが不明であるから、常に待ち受け動作を行なう必要がある。例えば、反射器などのトランスポンダがメモリカードに内蔵され、さらにこのメモリカードがデジタルカメラや携帯電話機などのバッテリ駆動式のホスト機器に装着して用いられるようなシステム構成(前述)を考慮した場合、どのようなタイミングでホスト機器をリーダライタに接近させ、データ伝送を開始するのか、メモリカードにとっては不明である。よって、メモリカード内のトランスポンダはビーコン・フレームの到来を常時待ち受ける必要がある。
【0022】
トランスポンダは、送信時においてキャリアを発生する電力は不要であるものの、反射波に変調を施す送信動作やリーダライタからの情報信号の受信動作には、ホスト機器の電力を消費する(前述)。このため、ホスト機器にとってはトランスポンダの待ち受けによる電力消費は深刻な問題である。
【0023】
とりわけ、2.4GHz帯の高帯域を用いて20Mbps程度の高速なデータ伝送を行なうアプリケーションを想定した場合には、メモリカードにおいて常時待ち受け動作を行なうことは現実的でない。
【0024】
【特許文献1】特開平1−182782号公報
【特許文献2】特開2005−64822号公報
【特許文献3】特開2006−216011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、自ら電波の発生源を持たないトランスポンダがリーダライタとの間でデータ伝送を好適に行なうことができる、優れた通信システム、並びにメモリカードを提供することにある。
【0026】
本発明のさらなる目的は、ホスト機器に内蔵されたトランスポンダが、ホスト機器からの供給電力により動作して、リーダライタとの間で高帯域・大容量のデータ伝送を好適に行なうことができる、優れた通信システム、並びにメモリカードを提供することにある。
【0027】
本発明のさらなる目的は、リーダライタが所定周期でビーコン・フレームを送信して自局のサービス・エリアを報知し、トランスポンダがビーコン・フレームに対する応答フレームを返信するといったサービス・エントリ・シーケンスを経て接続を確立することができる、優れた通信システム、並びにメモリカードを提供することにある。
【0028】
本発明のさらなる目的は、サービス・エントリ・シーケンスなどの接続確率手順に伴うトランスポンダ側の消費電力を低減することができる、優れた通信システム、並びにメモリカードを提供することにある。
【0029】
本発明のさらなる目的は、リーダライタからのビーコン・フレームあるいは送信要求信号などの待ち受け動作に伴うトランスポンダ側の電力の浪費を回避することができる、優れた通信システム、並びにメモリカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、自ら電波の発生源を持たないトランスポンダがリーダライタとの間でデータ伝送を行なう通信システムであって、
前記トランスポンダは前記リーダライタが情報の読み取り又は書き込みを行なう対象とするメモリを備えたメモリカードに内蔵され、該メモリカードはホスト機器の専用スロットに差し込んで用いられ、
前記リーダライタは、自分のサービス・エリアを報知するためのビーコン信号を所定のタイミングで送信し、
前記メモリカードは、前記メモリカードが差し込まれたホスト機器の電源がオンされてからあらかじめ設定された時間内で前記リーダライタからのビーコン信号を待ち受け、該時間内にビーコン信号を受信したことに応じて前記リーダライタとの接続確立手続きを行なうが、該時間内にビーコン信号を受信しなかったときには少なくとも前記トランスポンダによる待ち受け状態を停止したスリープ状態に移行する、
を特徴とする通信システムである。
【0031】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない(以下、同様)。
【0032】
本発明は、自ら電波の発生源を持たないトランスポンダがリーダライタ側からの電波をエネルギ源として受動的に動作する非接触通信システムに関するものであり、例えばトランスポンダは無変調キャリアを受信してデータを重畳させた変調反射波を送出する反射器を搭載し、リーダライタは変調反射波からデータを読み取る反射波読取器で構成される。反射波伝送を利用した通信システムによれば、反射器側ではキャリア発生源が不要であることから、無線LANなどの既存の無線通信技術と比較して、消費電力を格段に削減しながらデータ伝送を行なうことができる。
【0033】
非接触システムの1つの典型的な利用形態として、トランスポンダを内蔵したホスト機器を、リーダライタが備える読み取り面上に載置して、リーダライタから無変調キャリアを送出して、トランスポンダに対して情報の読み取りや書き込みを行なうことが挙げられる。また、トランスポンダとリーダライタ間で接続を確立する際に、リーダライタが所定周期でビーコン・フレームを送信して自局のサービス・エリアを報知し、一方のビーコン・フレームを受信したトランスポンダはリーダライタに対してエントリ・フレームを返信するといった、サービス・エントリ・シーケンスを適用することができる。
【0034】
ところが、トランスポンダがメモリカードに内蔵され、さらにこのメモリカードがデジタルカメラや携帯電話機などのバッテリ駆動式のホスト機器に装着して用いられるようなシステム構成を考慮した場合、どのようなタイミングでホスト機器をリーダライタに接近させ、データ伝送を開始するのか、メモリカードにとっては不明である。このため、メモリカード内のトランスポンダは、ビーコン信号の到来を常時待ち受ける必要があり、メモリカードに給電するホスト機器にとっては待ち受け時の消費電力の負担が大きくなる。
【0035】
これに対し、本発明の第1の側面に係る通信システムでは、メモリカードにおけるビーコン信号の待ち受け動作は、ホスト機器の電源が投入された後、あるいはメモリカードがホスト機器に差し込まれることで電源投入が開始した後、あらかじめ設定された時間だけ作用するようになっている。言い換えれば、接続信号待ちするためのタイマが満了すると、メモリカードはスリープ状態に移行する。
【0036】
したがって、トランスポンダを搭載したメモリカードなどの端末装置は、ビーコン・フレームを受信できないときにはスリープ状態に移行するので、いつデータ伝送が開始されるのか判らないにも拘らず、徒に待ち受け動作して電力を消耗することを防ぐことができる。
【0037】
なお、本発明で言うスリープ状態とは、メモリカード内の回路モジュールのうち少なくともトランスポンダによる待ち受け状態を停止した状態のことを意味し、このスリープ状態において、他の回路モジュールの動作が停止しているかあるいは動作中であるかは特に限定されない。
【0038】
また、本発明の第2の側面は、自ら電波の発生源を持たないトランスポンダがリーダライタとの間でデータ伝送を行なう通信システムであって、
前記トランスポンダは前記リーダライタが情報の読み取り又は書き込みを行なう対象とするメモリを備えたメモリカードに内蔵され、該メモリカードはホスト機器の専用スロットに差し込んで用いられ、
前記リーダライタは、自分のサービス・エリアを報知するためのビーコン信号を所定のタイミングで送信し、
前記メモリカードは、前記リーダライタから到来した信号を整流して直流電圧を得る整流手段を備え、定常的には少なくとも前記トランスポンダによる待ち受け状態を停止したスリープ状態にあるが、前記整流手段から得られる直流電圧を起動割り込み信号に用いて前記スリープ状態から復帰して、前記トランスポンダによるビーコン信号の待ち受けを行なう、
ことを特徴とする通信システムである。
【0039】
本発明の第2の側面に係る通信システムでは、ホスト機器に装着されている期間において、メモリカードは定常的にスリープ状態を維持している。一方、リーダライタは、ビーコン信号の送信(若しくはサービス・エントリ・シーケンスの開始)に先立って、例えば無変調キャリア又はダミー信号を送信するようになっている。そして、メモリカードは、整流手段を備えており、無変調キャリア又はダミー信号を整流して直流電圧を発生すると、これを起動割り込み信号に用いてスリープ状態から復帰して、トランスポンダによる待ち受け動作を開始するようになっている。リーダライタは、無変調キャリア又はダミー信号を送信してから速やかにビーコン信号を送信することにより、メモリカードはこれに応じて接続要求を返信することができる。あるいは、メモリカード側では、ビーコン信号から得られる直流電圧を起動割り込み信号に用いるようにしてもよい。
【0040】
メモリカード側では、整流手段には外部から電源を加える必要がないので、常時電流を流す必要はない。また、割り込み信号を発生するのみなので、駆動電力を得るための十分な電流は取れなくても、割り込み電圧さえ得られれば良い。
【0041】
したがって、メモリカードなどの端末装置は、スリープ状態でリーダライタからのビーコン・フレームあるいは送信要求信号を待ち受け、受信できたときには接続要求信号あるいは送信要求に対する応答信号を返信して通信状態に移行するが、受信できないときにはスリープ状態を維持することで待ち受け時の低消費電力化を実現することができる。
【0042】
また、端末装置は、リーダライタからの無変調キャリア又はダミー信号を整流して待ち受け、得られる電力が所定値を超えたことにより通信状態に移行するという状態遷移制御を行なうことで、待ち受け時における低消費電力化を実現することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、リーダライタが所定周期でビーコン・フレームを送信して自局のサービス・エリアを報知し、トランスポンダがビーコン・フレームに対する応答フレームを返信するといったサービス・エントリ・シーケンスを経て接続を好適に確立することができる、優れた通信システム、並びにメモリカードを提供することができる。
【0044】
また、本発明によれば、サービス・エントリ・シーケンスなどの接続確率手順に伴うトランスポンダ側の消費電力を低減することができる、優れた通信システム、並びにメモリカードを提供することができる。
【0045】
また、本発明によれば、リーダライタからのビーコン・フレームあるいは送信要求信号などの待ち受け動作に伴うトランスポンダ側の電力の浪費を回避することができる、優れた通信システム、並びにメモリカードを提供することができる。
【0046】
本発明に係る通信システムでは、トランスポンダを搭載したメモリカードなどの端末装置は、スリープ状態でリーダライタからのビーコン・フレームあるいは送信要求信号を待ち受け、受信できたときには接続要求信号あるいは送信要求に対する応答信号を返信して通信状態に移行するが、受信できないときにはスリープ状態を維持することで待ち受け時の低消費電力化を実現することができる。また、メモリカードなどの端末装置は、リーダライタからの無変調キャリア又はダミー信号(あるいはビーコン信号やトランスポンダに対する接続要求信号)を整流して待ち受け、得られる電力が所定値を超えたことにより通信状態に移行するという状態遷移制御を行なうので、待ち受け時における低消費電力化を実現することができる。
【0047】
例えば、反射器などのトランスポンダ機能を備えたメモリカードがデジタルカメラや携帯電話機などのホスト機器に差し込んで用いられるといった利用形態に対して本発明を適用することで、待ち受け時におけるメモリカードの消費電力を微小なものにすることができ、バッテリ駆動のホスト機器の低消費電力化に貢献することができる。
【0048】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0050】
図1には、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成を模式的に示している。図示の通信システムは、トランスポンダ(図示しない)を内蔵したメモリカード100と、このメモリカード100が専用スロットに差し込まれたホスト機器120と、トランスポンダとは非接触のデータ伝送を行なうリーダライタ700で構成される。トランスポンダはリーダライタ700側からの電波をエネルギ源として受動的に動作し、リーダライタ700はトランスポンダ内に格納された情報の読み取りや情報の書き込みを行なう。
【0051】
非接触の通信方法には、静電結合方式、電磁誘導方式、電波通信方式などが挙げられるが、以下では電波通信方式を適用することを想定し、「バックスキャッタ」とも呼ばれる反射波伝送を行なうものとする。反射波伝送方式は、例えば反射器側からの送信比率が通信のほとんどを占めるような通信形態において、低消費電力化を実現することができるという特徴がある。
【0052】
トランスポンダは無変調キャリアに対し変調処理を施した反射波によりデータを送信する反射器を備え、リーダライタ700は反射器からの変調反射波信号からデータを読み取る反射波読取器を備える。反射器は、反射波読取器から無変調キャリアが送られてくると、アンテナ負荷インピーダンスの切り替え操作などに基づいてその反射波に変調を施してデータを重畳する。反射波読取器側では、このような変調反射波を受信し、復調並びに復号処理して伝送データを取得する。
【0053】
アンテナ負荷インピーダンスの切り替えスイッチをガリウム砒素のICで構成することで、低消費電力で高速な切り替え動作が可能となり、その消費電力は数10μW以下に抑制される。また、2.4GHz帯(マイクロ波)の高帯域を用いた高速なデータ伝送を実現することができる。
【0054】
トランスポンダは、リーダライタ700が送出するキャリアを整流して電力を得ることができるが、高帯域で大容量データ伝送を行なうには不十分である。すなわち、トランスポンダは、送信時においてキャリアを発生する電力は不要であるが、反射波に変調処理を施す送信動作や、リーダライタ700からの変調信号を復調・復号する受信動作のための受信動作のための電力はホスト機器120から供給される。
【0055】
本実施形態では、トランスポンダとリーダライタ700の通信制御には、図12〜図13に示したサービス・エントリ・シーケンスが適用されるものとする。
【0056】
図2には、トランスポンダを内蔵したメモリカード100の内部構成例を示している。図示のメモリカード100は、記憶手段を構成するフラッシュ・メモリ103と、端子部101と、メモリ/通信制御部102と、無線部104と、アンテナ105で構成される。
【0057】
端子部101の接点部分はケースの外面に露出しており、通常のメモリカードと同様にホスト機器120側と接続可能である。フラッシュ・メモリ103は、データを電気的に書き換え可能に格納することができる。メモリ/通信制御部102は、ホスト機器120とフラッシュ・メモリ103の間で端子部101を介してデータを転送するとともに、フラッシュ・メモリ102のデータを無線部104、アンテナ105を介してリーダライタ700に反射波で送信する。無線部104は非接触通信システムにおけるトランスポンダに相当する。
【0058】
メモリ/通信制御部102には、リーダライタ700側からの接続信号待ちのタイマ部106が装備されている。このタイマ部106からは無線部104の受信制御を行なうことができ、RX_ON信号107をアクティブにすることで無線部104の受信をオン制御(付勢)するようになっている。また、タイマ部106は、リーダライタ700側からの接続信号待ちのタイマTsが満了するとRX_ONをオフ制御(減勢)して、これによって無線部104の受信動作は停止する。
【0059】
メモリ/通信制御部102は、端子部101から電力信号線Vddとグランド信号線GNDを入力している。メモリカード100がホスト機器120から抜き取られた状態では、電力信号線Vddは電位ゼロであるとともに、グランド信号線GNDはオープン状態である。一方、メモリカード100がホスト機器120の専用スロットに差し込まれると、電力信号線Vddに電位が印加されるとともに、グランド信号線GNDはグランド状態になる。したがって、メモリ/通信制御部102は、電力信号線Vddとグランド信号線GNDをモニタすることで、メモリカード120の挿抜状態やホスト機器の電源オン/オフ状態を検知することができる。
【0060】
本実施形態では、メモリ/通信制御部102は、メモリカード100がホスト機器120に差し込まれるなどして、ホスト機器120からメモリカード100へ電源投入が開始されたタイミングで、タイマ部106を起動させる。タイマ部106は、リーダライタ700側からの接続信号待ちのタイマTsが満了するまでの期間だけRX_ON信号107をアクティブにして、無線部104の受信をオン制御する。また、タイマ部106は、タイマTsが満了するとRX_ON信号107をオフ制御して、無線部104の受信動作を停止させてスリープ状態に移行する。
【0061】
このように、無線部104におけるビーコン・フレームの待ち受け動作は、メモリカード100がホスト機器120に装着されることで電源投入が開始してからあらかじめ設定された時間だけ作用する。その後、タイマTsが満了すると、メモリカード100は、少なくとも無線部104による待ち受け動作が停止した停止したスリープ状態に移行する。このように、メモリカード100は、ビーコン・フレームを受信できないときにはスリープ状態に移行するので、いつデータ伝送が開始されるのか判らないにも拘らず、徒に待ち受け動作してホスト機器120の電力を消耗することを防ぐことができる。
【0062】
図3には、図2に示したメモリカード100内の無線部104の内部構成例を示している。図示の無線部104は、非接触システムにおけるトランスポンダに相当するが、ここでは反射波伝送における反射器として動作することができる。
【0063】
参照番号200はSPDT(Single−Pole/Double−Throw Switch:単極/双投スイッチ)のアンテナ・スイッチであり、反射波の生成と送受信の切り替えを兼用する。図中、端子cはメモリカード100内のアンテナ105に接続される。アンテナ・スイッチ200は、他のCMOS回路モジュールとは分離して、例えばガリウム砒素のICで構成される。
【0064】
無線部104から送信するときには、端子bはベースバンド制御部(図示しない)からの制御信号(TX/RX)によりオフに制御される。そして、ベースバンド制御部より送信データ(TX_DATA)が端子aに加えられる。図中、左端のスイッチは端子dを接地しているため、送信データが1のときはアンテナ105の終端がグランドにショートとなるが、送信データが0のときはアンテナ105の終端がオープンとなる。このように、送信データのビット・イメージに基づいてアンテナ・スイッチ200の切り替え動作(すなわち、アンテナ105終端のスイッチング動作)によって、アンテナ105より受信された無変調キャリアに対して位相変調が施され、内蔵アンテナ105より変調反射波信号として放射される。
【0065】
一方、無線部104で受信するときには、端子bは、図示しないベースバンド制御部よりオン状態に保たれる。したがって、アンテナ105で受信されたASK(Amplitude Shift Keynigt)変調信号は、端子eを経由してASK受信部201に送られ、ここで復調され受信データ(RX_DATA)に変換される。このようにして、受信データは図示しないベースバンド制御部に渡される。
【0066】
また、図4には、図3に示した無線部104の通信相手となる反射波読取装置としてのリーダライタ700の内部構成を模式的に示している。図示のリーダライタ700は、アンテナ701と、サーキュレータ702と、受信部703と、送信部704と、ベースバンド制御部705で構成される。
【0067】
送信部704は、ベースバンド部705の指示により、無変調キャリアを生成する。この無変調キャリアは、サーキュレータ702を経由してアンテナ701より無線部104に向けて放射される。ここで、サーキュレータ702は送受信を同時に行なう際に、送信波と受信波を分離するために用いられる。
【0068】
上述したように、無線部104では、リーダライタ700からの無変調キャリアに対して反射波が生成され、この反射波には読み取りデータに応じた位相変調が施されるから、リーダライタ700には変調反射波として戻ってくる。この変調反射波は、アンテナ701とサーキュレータ702を経由して受信部703で受信されると、in位相(I)とその直角位相(Quadrature:Q)からなるベースバンドIQ信号に変換され、ベースバンド制御部705で復調される。
【0069】
また、リーダライタ700から無線部104にデータや制御コマンドを送信する場合には、ベースバンド制御部705からの送信データに従って送信部704でASK変調波を生成して、同様にアンテナ701より放射される。
【0070】
ベースバンド制御部705は他の機器とのインターフェースを備えており、例えば読み取った画像データをデコードしてテレビ(図示しない)にビデオ信号として接続し画像表示をしたり、USB(Universal Serail Bus)接続されたPC(図示しない)に画像転送したりすることが可能である。
【0071】
図5には、図3に示したメモリカード100がリーダライタ700を相手にして行なう通信制御シーケンスを示している。
【0072】
メモリカード100がホスト機器120に差し込まれ、ホスト機器120からメモリカード100へ電源投入が開始されたタイミングで、タイマ部106が起動され、リーダライタ700側からの接続信号待ちのタイマTsが満了するまでの期間だけ、トランスポンダとしての無線部104の受信動作がオンに制御される。
【0073】
一方、リーダライタ700は、自局のサービス・エリアを報知するために、ビーコン・フレームを定期的に送信するとともに、ビーコン・フレームの送信後に設けられるエントリ期間において、トランスポンダを動作させるための無変調キャリアを送出し続ける。
【0074】
無線部104は、タイマTsが満了するまでの間、すなわちスリープ状態に移行する前までにビーコン・フレームを受信することができたなら、これによってリーダライタ700のサービス・エリア内にいることを検知することができる。
【0075】
そして、無線部104は、受信したビーコン・フレームのペイロードに記載されている情報に基づいて、使用する通信周波数チャネルの情報やリーダライタ700の固有IDなどの情報を取得する。そして、リーダライタ700との接続したい場合には、エントリ期間にわたってリーダライタ700から送出される無変調キャリアを利用してエントリ・フレームを返す。
【0076】
リーダライタ700は、エントリ・フレームの記載内容に基づいて、トランスポンダとしての無線部104(若しくはメモリカード100)の固有IDや、設定可能な通信パラメータの情報などを取得する。そして、メモリカード100と通信したいときには、通信パラメータなどの指定情報をペイロードに記載した接続要求フレームを送信する。これに対し、メモリカード100は、接続要求に応じるときには、接続結果などをペイロードに記載した接続応答フレームを無線部104を通じて返し、これによって接続が確立する。
【0077】
接続が確立している期間は、リーダライタ700からのコマンド・フレームの送信と、これに応じた無線部104によるレスポンス・フレームの返信の繰り返しにより(図示しない)、メモリカード100内のフラッシュ・メモリ103に対する情報の読み取りや書き込みが実行される。
【0078】
このように図5に示した通信制御手順では、メモリカード100は、ホスト機器120に装着されたりして、ホスト機器120からの給電が開始するタイミングに従って電源制御を行なうようになっている。図6には、図2に示したメモリカード100における電源制御手順をフローチャートの形式で示している。
【0079】
まず、ホスト機器120の電源をオンにすることによって、メモリカード100に対してスリープ状態から通常の待ち受け状態に復帰するためのトリガを与える。また、ホスト機器120が既にオン状態であれば、一度オフしてからオンにする。
【0080】
ホスト機器120の電源投入に伴って、ホスト機器120からメモリカード100への給電が開始されると、メモリカード100内では内部クロックが発振を開始する(ステップS1)。
【0081】
そして、メモリ/通信制御部102では、リーダライタからのビーコン・フレームの待ち受け時間を刻むタイマ部106を起動する(ステップS2)。タイマ部106は、タイマTsが満了するまでの間は、RX_ON信号107をアクティブにすることで無線部104の受信をオン制御する。
【0082】
無線部104は、受信オン状態の間は、リーダライタ700からのビーコン・フレームが到来したか否かをチェックする(ステップS3)。
【0083】
ここで、無線部104がビーコン・フレームを受信しなければ(ステップS3のNo)、後続のステップS4〜S5をスキップして、ステップS6へ進む。
【0084】
一方、無線部104がビーコン・フレームを受信できたときには(ステップS3のYes)、エントリ期間にわたってリーダライタ700から送出される無変調キャリアを利用してエントリ・フレームを返す(ステップS4)。
【0085】
次いで、リーダライタ700から接続要求フレームを待ち受ける(ステップS5)。そして、接続要求フレームを受信できたときには(ステップS5のYes)、リーダライタ700に対して接続応答フレームを返すことにより、接続が確立し、リーダライタ700との通信状態に入る。
【0086】
また、リーダライタ700からのビーコン・フレームを受信しないとき(ステップS3のNo)、あるいは、ビーコン・フレームを受信してエントリ・フレームを返したものの、リーダライタ700から接続要求フレームが届かなかったときには(ステップS5のNo)、タイマ部106においてタイマTsが満了したかどうかをチェックする(ステップS6)。
【0087】
ここで、タイマTsが満了していなければ(ステップS6のNo)、ステップS3に戻り、引き続きビーコン・フレームを待ち受ける。
【0088】
また、ビーコン・フレームを受信できなかったときや、ビーコン・フレームを受信してエントリ・フレームを返したものの、リーダライタ700から接続要求フレームが届かず、タイマ部106においてタイマTsが満了するまでの間にリーダライタ700との接続が確立しなかった場合には(ステップS6のYes)、メモリカード100は内部クロックを停止して(ステップS7)、内部の動作をすべて停止して、スリープ状態に移行する。
【0089】
このように、メモリカード100は、一定時間のみビーコン信号を待ち受けるが、リーダライタ700との通信が開始されなかったときにはスリープ状態に意向することで、低消費電力化を実現することができる。スリープ時にはメモリカード100のクロックを止めてしまうので、トータルで数10μAの消費電流に低減することが可能である。
【0090】
図7には、トランスポンダを内蔵したメモリカード100についての他の内部構成例を示している。メモリカード100は、記憶手段を構成するフラッシュ・メモリ103と、端子部101と、メモリ/通信制御部102と、無線部104と、アンテナ105で構成される。
【0091】
図示のメモリカード100は、図2に示した構成例と同様に、メモリ/通信制御部102には、リーダライタ700側からの接続信号待ちのタイマ部106が装備されている。メモリ/通信制御部102がタイマ部106を起動させると、タイマ部106はRX_ON信号107をアクティブにすることで無線部104の受信をオン制御する。また、タイマ部106は、リーダライタ700側からの接続信号待ちのタイマTsが満了すると、RX_ON信号107をオフ制御して、メモリカード100がスリープ状態に移行する。
【0092】
図7に示したメモリカード100は、トランスポンダとしての無線部104内に整流部400を備えていることが、図2に示した構成との主な相違点である。整流部400は、リーダライタ700から受信した無変調キャリア又はダミー信号を整流して直流電圧を発生すると、これをメモリ/通信制御部102に対する割り込み信号(INT)401に用いて、メモリカード100をスリープ状態から復帰させて、待ち受け動作を開始することができる。
【0093】
図2に示したメモリカード100の場合、ホスト機器120の電源が投入されてからある一定の時間内にビーコン・フレームの受信を行なうようにしなければならず、一旦メモリカード100がスリープ状態に入ると、ホスト機器120を一度オフにしてから改めてオンにするなどユーザの操作が必要になる。また、リーダライタ700との通信のためではなくホスト機器120の本来の使用のために電源をオンにしたときにも同様にトランスポンダの受信動作が働くという無駄がある。これに対し、図7に示した構成例では、リーダライタ700から受信した無変調キャリア又はダミー信号を整流して得られる直流電圧をスリープ状態からの起動割り込み信号(INT)401に用いるので、このような無駄がない。また、リーダライタ700は、ビーコン信号の送信(若しくはサービス・エントリ・シーケンスの開始)に先立って、無変調キャリア又はダミー信号を送信することで、サービス・エリア内のメモリカード100をスリープ状態から復帰させ、待ち受け動作を行なわせることができる。
【0094】
図8には、図7に示したメモリカード100内の無線部104の内部構成例を示している。
【0095】
SPDTのアンテナ・スイッチ200は、反射波の生成と送受信の切り替えを兼用し、図中の端子cはメモリカード100内のアンテナ105に接続される。アンテナ・スイッチ200は、他のCMOS回路モジュールとは分離して、例えばガリウム砒素のICで構成される。
【0096】
無線部104から送信するときには、端子bはベースバンド制御部(図示しない)からの制御信号(TX/RX)によりオフに制御され、ベースバンド制御部より送信データ(TX_DATA)が端子aに加えられる。図中、左端のスイッチは端子dを接地しており、送信データが1のときはアンテナ105の終端をグランドにショートし、送信データが0のときはアンテナ105の終端をオープンするという具合に、送信データのビット・イメージに基づいてアンテナ・スイッチ200を用いたインピーダンス変化動作によって、アンテナ105より受信された無変調キャリアに対して位相変調が施され、変調反射波信号として放射される。
【0097】
一方、無線部104で受信するときには、端子bは、図示しないベースバンド制御部よりオン状態に保たれ、アンテナ105で受信されたASK変調信号が端子eを経由してASK受信部201に送られ、ここで復調され受信データ(RX_DATA)に変換される。
【0098】
図8に示した無線部104は、整流部400を備えていることが、図3に示した構成例との主な相違点である。整流部400で整流され直流電圧に平滑された信号は割り込み信号(INT)401となって、スリープ状態のメモリ/通信制御部102の起動のための割り込み信号に使われる。整流部400には外部から電源を加える必要がないので、常時電流を流す必要はない。また、割り込み信号を発生するのみなので、電流は取れなくても、割り込み電圧さえ得られれば構わない。
【0099】
図9には、図7に示したメモリカード100がリーダライタ700を相手にして行なう通信制御シーケンスを示している。ここでは、メモリカード100は常時スリープ状態で待機していることが想定される。
【0100】
リーダライタ700は、ビーコン信号の送信(若しくはサービス・エントリ・シーケンスの開始)に先立って、無変調キャリア又はダミー信号を送信する。これに対し、整流部400は、リーダライタ700から受信した無変調キャリア又はダミー信号を整流して直流電圧を発生すると、これをメモリ/通信制御部102に対する起動割り込み信号(INT)401に用いて、メモリカード100をスリープ状態から復帰させて、待ち受け動作を開始する。また、このとき、タイマ部106が起動され、リーダライタ700側からの接続信号待ちのタイマTsが満了するまでの期間だけ、トランスポンダとしての無線部104の受信動作がオンに制御される。
【0101】
そして、リーダライタ700は、自局のサービス・エリアを報知するために、ビーコン・フレームを送信するとともに、ビーコン・フレームの送信後に設けられるエントリ期間において、トランスポンダを動作させるための無変調キャリアを送出し続ける。
【0102】
無線部104は、ビーコン・フレームを受信することによって、リーダライタ700のサービス・エリア内にいることを検知すると、受信したビーコン・フレームのペイロードに記載されている情報に基づいて、使用する通信周波数チャネルの情報やリーダライタ700の固有IDなどの情報を取得する。そして、リーダライタ700との接続したい場合には、エントリ期間にわたってリーダライタ700から送出される無変調キャリアを利用してエントリ・フレームを返す。
【0103】
リーダライタ700は、エントリ・フレームの記載内容に基づいて、トランスポンダとしての無線部104(若しくはメモリカード100)の固有IDや、設定可能な通信パラメータの情報などを取得する。そして、メモリカード100と通信したいときには、通信パラメータなどの指定情報をペイロードに記載した接続要求フレームを送信する。これに対し、メモリカード100は、接続要求に応じるときには、接続結果などをペイロードに記載した接続応答フレームを、トランスポンダとしての無線部104を通じて返し、これによって接続が確立する。
【0104】
接続が確立している期間は、リーダライタ700からのコマンド・フレームの送信と、これに応じた無線部104によるレスポンス・フレームの返信の繰り返しにより(図示しない)、メモリカード100内のフラッシュ・メモリ103に対する情報の読み取りや書き込みが実行される。
【0105】
このように図9に示した通信制御手順では、メモリカード100は、リーダライタ700側からリーダライタ700から受信したビーコン信号(あるいはビーコン信号に先立って送信される無変調キャリア又はダミー信号)を整流して起動割り込み信号を得るタイミングに従って電源制御を行なうようになっている。図10には、図7に示したメモリカード100における電源制御手順をフローチャートの形式で示している。
【0106】
ホスト機器120の電源をオンにすると、メモリカード100は待ち受け状態になるが、タイマTsが満了するまでの間にリーダライタ700との通信状態に入ることがなければ、すぐにスリープ状態に入る。既に述べたように、メモリカード100にはリーダライタ700からの無変調キャリアやダミー信号などによって起動割り込みがかけられ、ユーザ操作の介在なしにスリーブ状態から通信状態に復帰することができるので、タイマTsを短い時間に設定してもよい。
【0107】
そして、スリープ状態のメモリカード100に対して、メモリカード100にはリーダライタ700からの無変調キャリアやダミー信号が到来すると、整流部400はこれを整流して、メモリ/通信制御部102に対する起動割り込み信号(INT)401を発生させる。
【0108】
メモリカード100内では、この起動割り込み信号(INT)401に応じて、内部クロックが発振を開始する(ステップS11)。
【0109】
メモリ/通信制御部102では、リーダライタからのビーコン・フレームの待ち受け時間を刻むタイマ部106を起動する(ステップS12)。タイマ部106は、タイマTsが満了するまでの間は、RX_ON信号107をアクティブにすることで、無線部104の受信をオン制御する。
【0110】
無線部104は、受信オン状態の間は、所望のリーダライタ700からのビーコン・フレームが到来したか否かをチェックする(ステップS13)。
【0111】
ここで、無線部104が所望のビーコン・フレームを受信しなければ(ステップS13のNo)、後続のステップS14〜S15をスキップして、ステップS16へ進む。
【0112】
一方、無線部104が所望のビーコン・フレームを受信できたときには(ステップS13のYes)、エントリ期間にわたってリーダライタ700から送出される無変調キャリアを利用してエントリ・フレームを返す(ステップS14)。
【0113】
次いで、リーダライタ700から接続要求フレームを待ち受ける(ステップS15)。そして、接続要求フレームを受信できたときには(ステップS15のYes)、リーダライタ700に対して接続応答フレームを返すことにより、接続が確立し、リーダライタ700との通信状態に入る。
【0114】
また、所望のリーダライタ700からのビーコン・フレームを受信しないとき(ステップS13のNo)、あるいは、所望のビーコン・フレームを受信してエントリ・フレームを返したものの、リーダライタ700から接続要求フレームが届かなかったときには(ステップS15のNo)、タイマ部106においてタイマTsが満了したかどうかをチェックする(ステップS16)。
【0115】
ここで、タイマTsが満了していなければ(ステップS16のNo)、ステップS13に戻り、引き続きビーコン・フレームを待ち受ける。
【0116】
また、所望のビーコン・フレームを受信できなかったときや、所望のビーコン・フレームを受信してエントリ・フレームを返したものの、所望のリーダライタ700から接続要求フレームが届かず、タイマ部106においてタイマTsが満了するまでの間にリーダライタ700との接続が確立しなかった場合には(ステップS16のYes)、メモリカード100は内部クロックを停止し(ステップS17)、内部の動作をすべて停止して、スリープ状態に移行する。
【0117】
メモリカード100は、ホスト機器120の電源をオンにした後は速やかにスリープ状態に入るが、リーダライタ700からのビーコン信号をトリガにして一定時間だけ待ち受け動作に移行するので、低消費電力化を実現することができる。また、整流電圧を割り込み信号として用いるので、所望のリーダライタ700からのビーコン信号以外にも反応してしまうという問題があるが、所望のビーコン・フレームがずっと受信することができなければ、タイムアウトとなりスリープ状態に戻ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0119】
本明細書では、反射波伝送を行なう通信システムに適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。例えば、静電結合方式や電磁誘導方式など、自ら電波の発生源を持たないトランスポンダがリーダライタと非接触によりデータ伝送動作を行なうさまざまな通信システムにも同様に適用することができる。
【0120】
例えば、反射器などのトランスポンダ機能を備えたメモリカードがデジタルカメラや携帯電話機などのホスト機器に差し込んで用いられるといった利用形態に対して本発明を適用することで、待ち受け時におけるメモリカードの消費電力を微小なものにすることができ、バッテリ駆動のホスト機器の低消費電力化に貢献することができる。ここで言うメモリカードとしては、SD(Secure Digital)メモリカード、メモリスティック(登録商標)、SIM(Subscriber Identity Module)カードなど、ホスト機器側の専用スロットに差し込んで用いられるさまざまなカートリッジ式のメモリ装置が含まれる。
【0121】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成を模式的に示した図である。
【図2】図2は、トランスポンダを内蔵したメモリカード100の内部構成例を示した図である。
【図3】図3は、図2に示したメモリカード100内の無線部104の内部構成例を示した図である。
【図4】図4は、図3に示した無線部104の通信相手となる反射波読取装置としてのリーダライタ700の内部構成を模式的に示した図である。
【図5】図5は、図3に示したメモリカード100がリーダライタ700を相手にして行なう通信制御シーケンスを示した図である。
【図6】図6は、図2に示したメモリカード100における電源制御手順を示したフローチャートである。
【図7】図7は、トランスポンダを内蔵したメモリカード100についての他の内部構成例を示した図である。
【図8】図8は、図7に示したメモリカード100内の無線部104の内部構成例を示した図である。
【図9】図9は、図7に示したメモリカード100がリーダライタ700を相手にして行なう通信制御シーケンスを示した図である。
【図10】図10は、図7に示したメモリカード100における電源制御手順を示したフローチャートである。
【図11】図11は、非接触システムの1つの利用形態を示した図である。
【図12】図12は、サービス・エントリ・シーケンスを利用して、トランスポンダとリーダライタ間において反射波伝送を行なうための通信制御シーケンスを示した図である。
【図13】図13は、リーダライタとトランスポンダ間において、図12に示したサービス・エントリ・シーケンスを利用して通信動作を開始する際のシーケンスを示した図である。
【符号の説明】
【0123】
100…メモリカード
101…端子部
102…メモリ/通信制御部
103…フラッシュ・メモリ
104…無線部
105…アンテナ
106…タイマ部
107…RX_ON信号
120…ホスト機器
200…アンテナ・スイッチ
201…ASK受信部
400…整流部
700…リーダライタ
701…アンテナ
702…サーキュレータ
703…受信部
704…送信部
705…ベースバンド制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自ら電波の発生源を持たないトランスポンダがリーダライタとの間でデータ伝送を行なう通信システムであって、
前記トランスポンダは前記リーダライタが情報の読み取り又は書き込みを行なう対象とするメモリを備えたメモリカードに内蔵され、該メモリカードはホスト機器の専用スロットに差し込んで用いられ、
前記リーダライタは、自分のサービス・エリアを報知するためのビーコン信号を所定のタイミングで送信し、
前記メモリカードは、前記メモリカードが差し込まれたホスト機器の電源がオンされてからあらかじめ設定された時間内で前記リーダライタからのビーコン信号を待ち受け、該時間内にビーコン信号を受信したことに応じて前記リーダライタとの接続確立手続きを行なうが、該時間内にビーコン信号を受信しなかったときには少なくとも前記トランスポンダによる待ち受け状態を停止したスリープ状態に移行する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記メモリカードは、
前記リーダライタから到来した信号を整流して直流電圧を得る整流手段を備え、
前記整流手段から得られる直流電圧を起動割り込み信号に用いて前記スリープ状態から復帰して、前記トランスポンダによるビーコン信号の待ち受けを行なう、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
自ら電波の発生源を持たないトランスポンダがリーダライタとの間でデータ伝送を行なう通信システムであって、
前記トランスポンダは前記リーダライタが情報の読み取り又は書き込みを行なう対象とするメモリを備えたメモリカードに内蔵され、該メモリカードはホスト機器の専用スロットに差し込んで用いられ、
前記リーダライタは、自分のサービス・エリアを報知するためのビーコン信号を所定のタイミングで送信し、
前記メモリカードは、前記リーダライタから到来した信号を整流して直流電圧を得る整流手段を備え、定常的には少なくとも前記トランスポンダによる待ち受け状態を停止したスリープ状態にあるが、前記整流手段から得られる直流電圧を起動割り込み信号に用いて前記スリープ状態から復帰して、前記トランスポンダによるビーコン信号の待ち受けを行なう、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項4】
前記メモリカードは、あらかじめ設定された時間だけ接続信号待ちするためのタイマを備え、前記整流手段から得られる直流電圧を起動割り込み信号に用いて前記スリープ状態から復帰したときに該タイマを起動して、該タイマが満了するまでの間にビーコン信号を受信したことに応じて前記リーダライタとの接続確立手続きを行なうが、ビーコン信号を受信しないまま該タイマが満了したときには前記スリープ状態に移行する、
ことを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
ホスト機器の専用スロットに差し込んで用いられるメモリカードであって、
データを格納する記憶手段と、
前記専用スロットにおいて前記ホスト機器と接続する端子部と、
自ら電波の発生源を持たないトランスポンダがリーダライタとの間でデータ伝送を行なう通信システムにおいて、トランスポンダとして動作する無線部と、
前記端子部並びに前記無線部から前記記憶手段へのアクセスを制御する制御部と、
あらかじめ設定された時間だけ前記リーダライタからの信号を待ち受けするためのタイマを備え、
前記端子部を介して前記ホスト機器の電源オンを検知したことに応答して前記タイマを起動し、前記タイマが満了するまでの間に前記リーダライタからのビーコン信号を受信したことに応じて前記リーダライタとの接続確立手続きを行なうが、ビーコン信号を受信しないまま該タイマが満了したときには少なくとも前記無線部の待ち受け状態を停止したスリープ状態に移行する、
ことを特徴とするメモリカード。
【請求項6】
前記リーダライタから到来した信号を整流して直流電圧を得る整流手段をさらに備え、
前記整流手段から得られる直流電圧を起動割り込み信号に用いて前記スリープ状態から復帰して、前記リーダライタからの信号の待ち受けを行なう、
ことを特徴とする請求項5に記載のメモリカード。
【請求項7】
ホスト機器の専用スロットに差し込んで用いられるメモリカードであって、
データを格納する記憶手段と、
前記専用スロットにおいて前記ホスト機器と接続する端子部と、
自ら電波の発生源を持たないトランスポンダがリーダライタとの間でデータ伝送を行なう通信システムにおいて、トランスポンダとして動作する無線部と、
前記端子部並びに前記無線部から前記記憶手段へのアクセスを制御する制御部と、
前記リーダライタから到来した信号を整流して直流電圧を得る整流手段を備え、
定常的には少なくとも前記無線部の待ち受け状態を停止したスリープ状態にあるが、前記整流手段から得られる直流電圧を起動割り込み信号に用いて前記スリープ状態から復帰して、前記リーダライタからのビーコン信号の待ち受けを行なう、
ことを特徴とするメモリカード。
【請求項8】
あらかじめ設定された時間だけ前記リーダライタからの信号を待ち受けするためのタイマをさらに備え、
前記整流手段から得られる直流電圧を起動割り込み信号に用いて前記スリープ状態から復帰したときに前記タイマを起動して、前記タイマが満了するまでの間に前記リーダライタからのビーコン信号を受信したことに応じて前記リーダライタとの接続確立手続きを行なうが、ビーコン信号を受信しないまま前記タイマが満了したときには前記スリープ状態に移行する、
ことを特徴とする請求項7に記載のメモリカード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−278393(P2008−278393A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122121(P2007−122121)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】