説明

通信システム、端末装置および接続装置

【課題】発側の装置が着端末の情報を考慮した最適な回線選択を可能にすること。
【解決手段】本実施形態に係る通信システムにおいて、着端末161は、少なくとも回線毎の電話番号及び事業者を含む端末回線情報を記憶し、発端末101からの着信があったときに端末回線情報を基地局制御装置121へ通知する。基地局制御装置121は、発端末101からの発呼時に指定される電話番号に基づいて通信経路を制御し、上記回線に関する情報を取得し、この発呼に対し着端末161から通知される端末回線情報を受信し、発呼時に送信される発端末に関する情報、回線に関する情報、及び端末回線情報に基づいて、複数の回線のうちから通信経路を再選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、端末が複数の回線を利用可能な場合に最適な通信経路を選択するための通信システム、端末装置および接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発端末は発信を行う際、通信料を抑えるために最低料金自動選択機能(LCR:Least Cost Routing)を備えた機器によって最も通話料金が低い経路を選択して発信を行う。これにより利用者は通信に使用される回線を意識することなく、LCR機器が判断した最適な通信事業者の回線を使って通信を行うことができる。
【0003】
LCR機器は、最低料金の通信経路を選択するために必要なLCR情報を持つ。LCR情報は、例えば、発端末の回線契約情報、発信先電話番号および時間帯毎の料金情報などから構成される。実際に発信を行う場合には、発信先電話番号の市外局番を利用して通信を行う距離や場所を特定し、LCR情報と合わせて最適な経路を選択している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−10347号公報
【特許文献2】特開2006−217443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来は最低料金回線自動選択を行う際には発端末や発側の基地局制御装置で取得する情報を使っており、着端末側の情報は発信先となる電話番号の市外局番の情報であった。しかし、着端末が複数の電話番号を持っている場合や複数の回線を使用可能であるような場合で、発端末は着端末の利用可能な回線の情報や電話番号を知らない場合、発側の基地局や基地局制御装置が最も安く通信を行うことができる経路を選択することは難しい。
【0006】
本実施形態の目的は、発側の装置が着端末の情報を考慮した最適な回線選択を可能とする通信システム、端末装置および接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る通信システムは、複数の回線に接続可能な着端末と、前記複数の回線のいずれかを選択して発端末を前記着端末に接続する接続装置とを具備する通信システムであって、前記着端末は、少なくとも前記回線毎の電話番号及び事業者を含む端末回線情報を記憶する記憶手段と、前記発端末からの着信があったときに前記端末回線情報を前記接続装置へ通知する通知手段とを備え、前記接続装置は、前記発端末からの発呼時に指定される電話番号に基づいて通信経路を制御する制御手段と、前記制御手段により前記回線に関する情報を取得する取得手段と、前記着端末から通知される前記端末回線情報を受信する受信手段と、前記受信手段により前記端末回線情報が受信された場合に、前記発呼時に送信される前記発端末に関する情報、前記回線に関する情報、及び前記端末回線情報に基づいて、前記複数の回線のうちから前記通信経路を再選択する選択手段とを備えるものである。
【0008】
また、本実施形態に係る端末装置は、複数の回線に接続可能な着端末と、前記複数の回線のいずれかを選択して発端末を前記着端末に接続する接続装置とを具備する通信システムに用いられる前記着端末であって、少なくとも前記回線毎の電話番号及び事業者を含む端末回線情報を記憶する記憶手段と、前記発端末からの着信があったときに前記端末回線情報を前記接続装置へ通知する通知手段とを備えるものである。
【0009】
また、本実施形態に係る接続装置は、複数の回線に接続可能な着端末と、前記複数の回線のいずれかを選択して発端末を前記着端末に接続する接続装置とを具備する通信システムに用いられる前記接続装置であって、
前記発端末からの発呼時に指定される電話番号に基づいて通信経路を制御する制御手段と、前記制御手段により前記回線に関する情報を取得する取得手段と、前記発呼に対して前記着端末から通知される、少なくとも前記回線毎の電話番号及び事業者を含む端末回線情報を受信する受信手段と、前記受信手段により前記端末回線情報が受信された場合に、前記発呼時に送信される前記発端末に関する情報、前記回線に関する情報、及び前記端末回線情報に基づいて、前記複数の回線のうちから前記通信経路を再選択する選択手段とを備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る通信システムの構成を示す図。
【図2】基地局制御装置の機能構成を示すブロック図。
【図3】LCRデータの一例を示す図。
【図4】着端末の機能構成を示すブロック図。
【図5】着端末情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る通信システム、端末装置および接続装置を説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。着端末161は、2つの回線(回線A131および回線B133)を利用可能で、電話番号を2つの回線でそれぞれ1つの電話番号を有している。発端末101は、例えば、発信側の無線端末で、基地局111−1と接続する。基地局111−1〜111−nのそれぞれは、基地局制御装置121と接続している。基地局制御装置121は、回線A131を経由して基地局制御装置141と接続するとともに、ゲートウェイ(GW)132を経由して回線B133と接続する。
【0013】
基地局制御装置141は、基地局151と接続しており、着端末161に電話番号1(090−A)で発信があった場合に使用される。基地局制御装置142は、回線B133および基地局152と接続しており、着端末161に電話番号2(070−B)で発信があった場合に使用される。基地局151,152は、着端末161へ接続する。
【0014】
着端末161は、電話番号1(090−A)および電話番号2(070−B)の2つの電話番号を有し、基地局151は、着端末161が電話番号1(090−A)で着信を受けたときに使用する基地局で、基地局152は、着端末161が電話番号2(070−B)で着信を受けたときに使用する基地局である。
【0015】
図1において、ユーザが発端末101から端末161の電話番号2(070−B)に対して発信操作を行うと、発端末101は基地局111−1を介して基地局制御装置121へ発信要求を行う。
【0016】
基地局制御装置121はLCR(Least Cost Routing)機能を備えており、発呼時に指定される電話番号に基づいて、着信先の電話番号2(070−B)に対して最適と判断した経路を選択する。基地局制御装置121は、回線A131からGW132を通り、回線B133に属する基地局制御装置142へ接続する経路を最適経路と判断して呼制御を行う。基地局制御装置142は基地局152を介して着端末161へ発呼要求を中継する。
【0017】
ここで、着端末161は発呼を受けると、発側の基地局制御装置121に対して着端末161で利用可能な回線毎の電話番号及び事業者を少なくとも含む端末回線情報を通知する。発側の基地局制御装置121は、着端末161から通知された情報を考慮して、現在の通信経路よりも適した経路を再評価する。基地局制御装置121は、上記着端末161から通知された情報を考慮した結果、発信先の電話番号2(090−A)の経路を利用した方がより安い通信料金で通信を行えると判定し、回線A131を経由して基地局制御装置141へ接続する経路を選択して発信する。基地局制御装置141は、基地局151を介して着端末161と接続し、着端末161が発信要求に対して応答することによって発端末101と着端末161との間の通信が開始される。
【0018】
図2は、基地局制御装置の機能構成を示すブロック図である。基地局制御装置121は、n個の基地局201−1〜201−nに対してn個の基地局データ送受信部211−1〜211−nを備え、この基地局データ送受信部211−1〜211−nは、発端末情報取得部222と接続する。発端末情報取得部222は、発端末から発呼時に送信される情報を経路選択に利用するために発端末情報として取得する。発端末情報には、発端末の識別子(電話番号)や着信先電話番号、通話時間等が含まれ、発端末情報登録部223により発端末情報の履歴がLCRデータテーブル226に記憶される。
【0019】
また、回線制御部231は、事業者回線241と接続しており、回線情報取得部232は、回線制御部231を通じて回線241に関する情報(回線情報)を取得する。回線情報は、事業者が提供している回線の速度等の情報と、回線を使用する上での利用可能なサービスに関する情報とを含み、例えば、回線速度、料金プラン、割引サービスなどを含むものとする。回線情報取得部232は、上記取得した回線情報(以下、LCRデータと称する。)を回線情報登録部233によってLCRデータテーブル226に登録する。
【0020】
図3にLCRデータの一例を示す。LCRデータテーブル226は、図3(a)の料金データテーブル、図3(b)の割引データテーブル、図3(c)の発信者データテーブルを有する。料金データテーブルには、契約可能なプラン、着信先の情報(着信先の事業者及び電話機(携帯/固定)種別)、およびプラン毎の料金体系(例えば、時間帯、曜日別など)が格納される。割引データテーブルには、割引サービス毎に、割引が適用される条件、割引内容、および当該割引サービスが適用される着信先の情報が格納される。
【0021】
発信者データテーブルには、各発信者の情報として、発信者が利用可能な電話番号毎に、加入している料金プラン、割引サービス適用状況や割引サービスに関係する情報を記憶する。割引サービスに関係する情報は、例えば、一定回数の通話で割引が適用される場合に、割引が適用される残りの通話回数又は残りの通話時間等であり、発端末情報の履歴をもとに更新される。
【0022】
着端末情報受信部225は、回線制御部231にて着端末の情報(端末回線情報)を受信すると、経路選択部221に対して端末回線情報を通知する。経路選択部221は、発信を行う際には、LCRデータ取得部224により、LCRデータテーブル226から発信元の電話番号をもとに発信者データテーブルからLCRデータ(該当する料金プランおよび割引サービスの情報など)を取得する。経路選択部221は、取得したLCRデータと、端末回線情報とを用いて使用する回線の再評価を行い、着端末の回線の情報を考慮した最適な回線を選択し、回線制御部231へ最適経路を通知する。
【0023】
なお、着端末情報受信部225において端末回線情報が受信できない場合には、経路選択部221は、発信元の電話番号をもとにLCRデータテーブル226から取得したLCRデータを用いて経路を選択する。
【0024】
図4は、着端末161の機能構成を示すブロック図である。着信側の基地局151−1及び基地局152−2は、端末161と通信制御部311により接続している。端末161が利用可能な回線情報は、通信制御部311から端末回線情報登録部321を用いて端末回線情報記憶部331へ登録される。
【0025】
図5に、端末回線情報記憶部331に記憶される着端末情報の一例を示す。着端末データテーブルには、着端末161の利用可能な電話番号毎に、事業者名(キャリア)、現在利用可能な基地局の有無、および通信速度を含む着端末情報が格納される。電話番号および事業者名は、予め登録されている。端末回線情報登録部321は、定期的に、着端末データテーブルに登録された事業者の基地局装置と通信を行い、それぞれの電話番号毎に現在利用可能な基地局があるかどうかを把握するため通信速度を計測し、着端末データテーブルの内容を更新する。
【0026】
着端末161が着信を受けると、端末回線情報通知部322は、端末回線情報記憶部331の着端末データテーブルを参照して、現在利用可能な基地局がある電話番号に対応する着端末情報を、通信制御部311を経由して発信側へ通知する。発端末101との通話が開始されると通話処理部312は、通信制御部311を通して基地局301−1及び302−1と通信を行う。
【0027】
このように構成することで、図1に示すように、着端末161は1端末で複数の回線(回線A131,回線B133)を利用可能であり複数の電話番号(電話番号1,2)を持つ場合において、発端末101が電話番号2を指定して発呼した場合でも、着端末161の電話番号1が端末101からの発呼に対して割引が適用される番号である場合には、電話番号1によって発信される。さらに、着端末161から現在利用可能な基地局が存在する電話番号のみを通知するようにしているため、発端末101側で1つの電話番号しか認識していない場合でも、確実に通話可能な通信経路が自動的に選択されるという利点がある。
【0028】
したがって、本実施形態によれば、発側の装置が着端末の情報を考慮した最適な回線選択が可能となり、端末の利用者は、自動的に最低料金の通信経路により通信することができる。
【0029】
なお、発端末101,161は、無線端末に限らず、ISDN(Integrated Services Digital Network)等の有線に接続される端末であってもよい。この場合、発端末101を回線A131へ接続するための接続装置は、基地局データ送受信部211−1〜211−n以外の各部を備える交換機等により構成される。
【0030】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
101…発端末、111−1〜111−n…基地局、121…基地局制御装置、131…回線A、132…ゲートウェイ(GW)、133…回線B、141,142…基地局制御装置、151,152…基地局、161…着端末、201−1〜201−n…基地局、202…基地局制御装置、211−1〜211−n…基地局データ送受信部、221…経路選択部、222…発端末情報取得部、223…発端末情報登録部、224…LCRデータ取得部、225…着端末情報通知部、226…LCRデータテーブル、231…回線制御部、232…回線情報取得部、233…回線情報登録部、241…事業者回線、301−1,301−2…基地局、302…端末、311…通信制御部、312…通話処理部、321…端末回線情報登録部、322…端末回線情報通知部、331…端末回線情報記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回線に接続可能な着端末と、前記複数の回線のいずれかを選択して発端末を前記着端末に接続する接続装置とを具備する通信システムであって、
前記着端末は、
少なくとも前記回線毎の電話番号及び事業者を含む端末回線情報を記憶する記憶手段と、
前記発端末からの着信があったときに前記端末回線情報を前記接続装置へ通知する通知手段と
を備え、
前記接続装置は、
前記発端末からの発呼時に指定される電話番号に基づいて通信経路を制御する制御手段と、
前記制御手段により前記回線に関する情報を取得する取得手段と、
前記着端末から通知される前記端末回線情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により前記端末回線情報が受信された場合に、前記発呼時に送信される前記発端末に関する情報、前記回線に関する情報、及び前記端末回線情報に基づいて、前記複数の回線のうちから前記通信経路を再選択する選択手段と
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記端末回線情報は、前記回線毎の通信状態を示す情報をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
複数の回線に接続可能な着端末と、前記複数の回線のいずれかを選択して発端末を前記着端末に接続する接続装置とを具備する通信システムに用いられる前記着端末であって、
少なくとも前記回線毎の電話番号及び事業者を含む端末回線情報を記憶する記憶手段と、
前記発端末からの着信があったときに前記端末回線情報を前記接続装置へ通知する通知手段と
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項4】
前記端末回線情報は、前記回線毎の通信状態を示す情報をさらに含むことを特徴とする請求項3記載の端末装置。
【請求項5】
複数の回線に接続可能な着端末と、前記複数の回線のいずれかを選択して発端末を前記着端末に接続する接続装置とを具備する通信システムに用いられる前記接続装置であって、
前記発端末からの発呼時に指定される電話番号に基づいて通信経路を制御する制御手段と、
前記制御手段により前記回線に関する情報を取得する取得手段と、
前記発呼に対して前記着端末から通知される、少なくとも前記回線毎の電話番号及び事業者を含む端末回線情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により前記端末回線情報が受信された場合に、前記発呼時に送信される前記発端末に関する情報、前記回線に関する情報、及び前記端末回線情報に基づいて、前記複数の回線のうちから前記通信経路を再選択する選択手段と
を備えることを特徴とする接続装置。
【請求項6】
前記端末回線情報は、前記回線毎の通信状態を示す情報をさらに含むことを特徴とする請求項5記載の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−65990(P2013−65990A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202514(P2011−202514)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】