説明

通信システム、通信装置及び通信方法

【課題】異なる通信速度の通信装置群が共通の通信線を介してそれぞれ通信を行うことができる通信システム、通信装置及び通信方法を提供する。
【解決手段】通信システム中の各ECUが、ドミナントの情報送信に対して、1ビットの情報送信時間Tbより短いパルス幅Tpのパルス信号を出力した後に信号を出力しない。速度が異なる第1グループ及び第2グループのECUを共通の通信線に接続し、一方のグループのECUがパルス信号を出力していない期間に他方のグループのECUがパルス信号を出力するように、タイミングをずらして情報送信を行う。第1グループの送信周期Tb1に対して第2グループの送信周期Tb2を自然数倍に設定する。また第1グループのECU及び第2グループのECUは、異なるパルス幅のパルス信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる通信速度で情報の送受信を行う複数の通信装置群が、一の通信線を共有して通信を行うことができる通信システム、通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輌に搭載された複数の電子機器(通信装置)間の通信にはCAN(Controller Area Network)の通信プロトコルが広く採用されている(非特許文献1、2参照)。CANの通信プロトコルでは、共通のCANバスに複数の通信装置が接続されるため、複数の通信装置が同時的に情報送信を行って衝突が発生した場合には、各通信装置にて調停処理(アービトレーション)が行われ、優先度の高い情報送信が実行される。アービトレーションを行うために、各通信装置は、CANバスに送信信号の出力を行うと同時に、CANバスの信号レベルの検出を行い、自らが出力した送信信号に対して、検出した信号の信号レベルがレセシブ(劣性値)からドミナント(優性値)に変化した場合、通信の衝突が発生したと判断し、送信処理を停止する。CANバス上の信号はレセシブよりドミナントが優位であるため、通信の衝突が発生してもドミナントを出力した電子機器は送信処理を継続して行うことができる。
【0003】
車輌に搭載される複数の通信装置は、必ずしも全てが同じ通信速度で通信を行うわけではない。例えば通信速度が500kbpsの通信を行う通信装置、及び、通信速度が250kbpsの通信を行う通信装置が、車輌には混在して搭載される。通信速度が異なる通信装置は直接的に通信を行うことができないため、同じ通信速度の通信装置を1つのCANバスに接続し、これら通信装置群をゲートウェイに複数接続することで、車輌の通信システムが構成される。異なる通信装置群の間で情報の送受信を行う必要がある場合、ゲートウェイが一の通信装置群からの情報を受信し、通信速度を変換したうえでこの情報を他の通信装置群へ送信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ISO 11898−1:2003 Road vehicles--Controller area network(CAN)--Part1:Data link layer and physical signaling
【非特許文献2】ISO 11519−1:1994 Road vehicles--Low-speed serial data communication--Part1:General and definitions
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信速度が異なる複数の通信装置が混在する場合、通信速度毎(通信装置群毎)にCANバスが必要となるため、通信速度の種類数が増すほど車輌にCANバスとして配される通信線の数が増大するという問題がある。これにより、限られた車輌内のスペースに通信システムを搭載することが困難化されると共に、通信システムが高コスト化される。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、異なる通信速度の通信装置群が共通の通信線を介してそれぞれ通信を行うことができる通信システム、通信装置及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通信システムは、共通の通信線を介して、各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信装置を複数備える通信システムにおいて、各通信装置は、送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定時間に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、且つ、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないようにしてあり、前記複数の通信装置には、第1周期で各ビットの情報を送受信する第1通信装置群と、前記第1周期の自然数倍の第2周期で情報を送受信する第2通信装置群とを含み、前記第1通信装置群の通信装置と前記第2通信装置群の通信装置とは、一方が前記通信線への信号出力を行っていない間に、他方が前記通信線へ信号出力を行うよう、送信タイミングに差を設けて各ビットの情報を周期的に送信するようにしてあることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る通信システムは、前記第1通信装置群の通信装置と、前記第2通信装置群の通信装置とは、異なるパルス幅の前記パルスを前記通信線へ出力するようにしてあり、各通信装置は、前記通信線に出力されたパルスのパルス幅を検知する検知手段と、該検知手段が検知したパルス幅に応じて、前記通信線に出力された前記パルスが、自らが属する通信装置群の通信装置が出力したパルスであるか否かを判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る通信システムは、前記第1通信装置群の通信装置と、前記第2通信装置群の通信装置とは、異なる信号レベルの前記パルスを前記通信線へ出力するようにしてあり、各通信装置は、前記通信線に出力されたパルスの信号レベルを検知する検知手段と、該検知手段が検知した信号レベルに応じて、前記通信線に出力された前記パルスが、自らが属する通信装置群の通信装置が出力したパルスであるか否かを判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る通信システムは、前記通信線が、2つの線を1組としたツイストペア線であり、各通信装置は前記ツイストペア線へ差動信号を出力し、前記信号レベルは2つの線にそれぞれ出力された信号の振幅差であり、前記第1通信装置群の通信装置及び前記第2通信装置群の通信装置の一方は、前記ツイストペア線の各線に出力する信号振幅の絶対値が異なる差動信号を、前記ツイストペア線へ出力するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る通信装置は、共通の通信線を介して他の装置に接続され、前記通信線を介して各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信装置において、送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定時間に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、且つ、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないようにしてあり、前記通信線に出力されたパルスのパルス幅を検知する検知手段と、該検知手段が検知したパルス幅が所定条件を満たすか否か判定する判定手段とを備え、該判定手段が所定条件を満たすと判定したパルスを、前記優性値の情報として受信するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る通信装置は、共通の通信線を介して他の装置に接続され、前記通信線を介して各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信装置において、送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定時間に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、且つ、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないようにしてあり、前記通信線に出力されたパルスの信号レベルを検知する検知手段と、該検知手段が検知した信号レベルが所定条件を満たすか否か判定する判定手段とを備え、該判定手段が所定条件を満たす判定したパルスを、前記優性値の情報として受信するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る通信方法は、第1周期で各ビットの情報を送受信する第1通信装置群と、第2周期で各ビットの情報を送受信する第2通信装置群とが、共通の通信線を介して、各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信方法であって、前記第1通信装置群及び前記第2通信装置群に含まれる各通信装置は、送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定時間に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、且つ、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わず、前記第2周期を前記第1周期の自然数倍とし、前記第1通信装置群の通信装置と前記第2通信装置群の通信装置とが、一方が前記通信線への信号出力を行っていない間に、他方が前記通信線へ信号出力を行うよう、送信タイミングに差を設けて各ビットの情報を周期的に送信することを特徴とする。
【0014】
本発明においては、通信システム中の各通信装置が、送信する情報がドミナント(優性値)の場合、1ビット分の情報送信時間に対して、この時間よりも短い所定時間に亘るハイレベル(所定信号レベル)のパルスを通信線へ出力し、その後は通信線への信号出力を停止する。また送信する情報がレセシブ(劣性値)の場合、各通信装置は、通信線への信号出力を行わない。これにより、ドミナントの送信とレセシブの送信とが衝突した場合、通信線上には所定時間に亘ってドミナントに対応する信号が伝送されるため、レセシブを送信した通信装置は通信線上の信号を検出することによって、他の通信装置が送信した優性値の信号を検知することができる。
【0015】
このように一の通信装置群に属する通信装置が1ビット分の情報送信時間に対して短いパルスを出力することにより、1ビット分の情報送信時間中には信号線上に信号が出力されていない期間を設けることができる。そこで本発明においては、この期間中に他の通信装置群に属する通信装置がパルスを出力することによって、共通の通信線を利用して複数の通信装置群の通信を多重化して行う。これにより例えば通信速度が異なる第1通信装置群及び第2通信装置群の複数の通信装置を1つの通信線に接続し、この通信線を介した通信群内での通信を各通信装置群が同時的に行うことが可能となる。
このために、第1通信装置群に属する通信装置が第1周期で各ビットの情報を周期的に送信し、この第1周期の自然数倍(1倍、2倍、3倍…)の第2周期で第2通信装置群に属する通信装置が各ビットの情報を周期的に送信する。また第1通信装置群の通信装置と第2通信装置群の通信装置とは、一方が通信線への信号出力を行っていない期間に、他方が通信線への信号出力を行うよう、各ビットの送信タイミングに差を設けて(送信タイミングをずらして)、各ビットの情報を周期的に送信する。
これにより、連続した複数ビットの情報を送信する場合に、最初の1ビットの情報を他の通信装置群の送信タイミングに対してずらして送信することに成功すれば、以降の周期的な情報送信は他の通信装置群の情報送信に衝突することなく確実に行うことができる。
【0016】
また、本発明においては、第1通信装置群の通信装置と第2通信装置群の通信装置とが、それぞれ異なるパルス幅のパルスを通信線へ出力することによりドミナントの送信を行う構成とする。これにより各通信装置は、パルス幅を検知することによって、通信線上のパルスがいずれの通信装置群のものであるかを容易に判定することが可能となる。
【0017】
また、本発明においては、第1通信装置群の通信装置と第2通信装置群の通信装置とが、それぞれ異なる信号レベルのパルスを通信線へ出力することによりドミナントの送信を行う構成とする。これにより各通信装置は、信号レベルを検知することによって、通信線上のパルスがいずれの通信装置群のものであるかを容易に判定することが可能となる。
【0018】
また、本発明においては、複数の通信装置を接続する通信線として、CANプロトコルで用いられるツイストペア線を採用する。この場合、各通信装置はツイストペア線へ差動信号を出力すると共に、ツイストペア線を構成する2つの線の電位差(振幅差)を検知することで信号レベルを判断する。一般的にCANプロトコルでは、送信側の通信措置がツイストペア線の一方の線に振幅が+V[V]の信号を出力した場合、他方の線には振幅が−V[V]の差動信号を出力する(即ち、振幅の絶対値が等しく符号が反対の差動信号を出力する)。この場合、受信側の通信装置は、+2Vの振幅差を検知できる。
上述のように本発明は、第1通信装置群と第2通信装置群とで通信装置がそれぞれ異なる信号レベルのパルスを出力する。このときに一方の通信装置群の通信装置は、一方の線に出力する信号の振幅の絶対値と、他方の線に出力する信号の振幅の絶対値とが異なる差動信号を出力してもよい。これにより各通信装置は、通信線上のパルスがいずれの通信装置群のものであるかをより確実に判断することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による場合は、第1通信装置群に属する通信装置が第1周期で各ビットの情報を周期的に送信し、この第1周期の自然数倍の第2周期で第2通信装置群に属する通信装置が各ビットの情報を周期的に送信すると共に、第1通信装置群の通信装置と第2通信装置群の通信装置とが、一方が通信線への信号出力を行っていない期間に、他方が通信線への信号出力を行うよう、各ビットの送信タイミングに差を設けて(送信タイミングをずらして)、各ビットの情報を周期的に送信する。これにより、異なる通信速度の通信装置群が共通の通信線を多重化して利用し、それぞれ通信を行うことができる。
よって、通信速度が異なる複数の通信装置群を共通の通信線に接続することができるため、通信システム中の通信線を削減することができ、通信システムの小型化(省スペース化)及び低コスト化等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】通信システムの一構成例を示す模式図である。
【図2】通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る通信システムにおいて各ECUが送受信する信号を説明するための模式図である。
【図4】実施の形態1に係る通信システムにて送受信される信号の一例を示す模式図である。
【図5】ECUが送信データの1ビット目を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】ECUが情報の2ビット目以降を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】ECUが情報の2ビット目以降を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2に係る通信システムにて送受信される信号の一例を示す模式図である。
【図9】実施の形態2の変形例1に係る通信システムにて送受信される信号の一例を示す模式図である。
【図10】実施の形態2の変形例2に係る通信システムにて送受信される信号の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、通信システムの一構成例を示す模式図である。本実施の形態に係る通信システムは、例えば図示しない車輌に搭載された複数のECU(Electronic Control Unit)1を通信装置として備え、複数のECU1が共通の通信線5を介して接続された構成である。また本通信システムでは、通信速度が異なるECU1を共通の通信線5に接続することが可能であり、図1においては通信速度が500kbpsのECU1を第1グループのECU1aとして実線で示し、通信速度が250kbpsのECU1を第2グループのECU1bとして破線で示してある。
【0022】
第1グループの各ECU1aは、第1グループに属する他のECU1aとの間で、通信速度500kbpsにて情報の送受信を相互に行うことができる。同様に、第2グループの各ECU1bは、第2グループに属する他のECU1bとの間で、通信速度250kbpsにて情報の送受信を相互に行うことができる。なお、第1グループのECU1aと、第2グループのECU1bとは、通信速度が異なるため、直接的に情報の送受信を行うことはできない。ただし、例えばECU1が通信速度を切替可能な構成とすることによって、第1グループのECU1a及び第2グループのECU1bの両方と情報の送受信を行う構成としてもよい。
【0023】
図2は、通信装置(ECU1)の構成を示すブロック図である。ECU1は、制御部11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、入力部14、出力部15及びCAN通信制御部16等を備えて構成されている。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されるものであり、ROM12に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより種々の制御処理を行うことができる。
【0024】
ROM12は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子で構成されるものであり、制御部11にて実行される制御プログラム及び制御部11が行う処理に必要な情報等が予め記憶されている。RAM13は、例えばSRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)等のメモリ素子で構成されるものであり、制御部11の処理に伴って生成された情報及び他のECU1との間で送受信する情報等の種々の情報が記憶される。
【0025】
入力部14は、例えば車輌の車速センサ若しくは温度センサ等のセンサ、又は、車輌の内外に配置された操作用の種々のスイッチ等の入力装置からの信号が入力され、入力信号のサンプリング又はA/D変換等の処理を行って得られた情報を制御部11へ与える。出力部15は、例えばモータ又はランプ等の負荷が接続され、制御部11からの指示に応じてこれらの負荷を駆動する駆動信号を出力する。なお、ECU1は必ずしも入力部14及び出力部15の両方を備える必要はなく、いずれか一方のみを備える構成であってよい。
【0026】
CAN通信制御部16は、通信線5に接続される端子を有しており、この端子に接続された通信線5を介して他のECU1との間でCANプロトコルに従った情報の送受信を行うものである。CAN通信制御部16は、制御部11から与えられた送信情報をCANプロトコルに応じた送信用のデータ(フレーム)に変換して送信部17へ与える。CAN通信制御部16の送信部17は、与えられた送信データの各ビットの値(0(ドミナント)又は1(レセシブ))に応じて、通信線5へ信号を出力する。なおCANプロトコルにおいては、通信線5としてツイストペア線が用いられ、送信部17は通信線5へ差動信号を出力する。送信部17は、複数ビットで構成された送信データの各ビットについて順に処理を行い、処理対象ビットの値がドミナントの場合には、所定の時間Tpに亘って所定信号レベルの信号を出力した後、通信線への差動信号出力を停止する。また送信部17は、処理対象ビットの値がレセシブの場合、通信線への差動信号出力を停止する。
【0027】
またCAN通信制御部16は、通信線5の信号レベル(ツイストペア線を構成する2本の信号線の電位差)を検知することによって、通信線5上に送信された信号がドミナント/レセシブのいずれに対応する信号であるかを判定し、各ビットがドミナント/レセシブで表されるデータの受信を行う受信部18を有している。CAN通信制御部16は、受信部18にて受信したデータを制御部11へ与える。またCAN通信制御部16は、送信部17にて自らが送信したデータを受信部18にて受信し、送信データと受信データとが一致しない場合(送信データのレセシブが受信データにてドミナントに変化していた場合)、通信線5に接続された他のECU1の送信が発生していることを検知し、アービトレーションの処理を行う。なおECU1が行うアービトレーションの処理は、従来のCANプロトコルによるものと同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0028】
図3は、本発明に係る通信システムにおいて各ECU1が送受信する信号を説明するための模式図であり、縦軸を通信線5のツイストペア線間の電位差Vとし、横軸を時間tとしたグラフである。図示の例は、送信データがドミナントからレセシブへ変化した場合の信号である。ECU1の送信部17は、ドミナントのデータ送信を行う場合、1ビットの送信時間Tbのうち開始時点から時間Tpまでの期間に、信号レベルV0のパルス信号を出力した後、1ビットの送信時間Tbに達するまで信号を出力しない。また送信部17は、レセシブの場合、1ビットの送信時間Tbの全てについて信号を出力しない。
【0029】
ECU1の受信部18は、通信線5の信号レベルを所定周期(例えば各ビットの送信時間Tbの1/25に相当する時間)でサンプリングしている。受信部18は、各ビットの送信時間Tbに亘るサンプリング結果から、ドミナントとして送信されるパルス信号のパルス幅を検出する。受信部18は、検出したパルス幅が予め定められた所定パルス幅Tpである場合(検出したパルス幅が予め定められた範囲(Tp±α)内である場合)、この信号を自らが所属するグループのECU1が送信した情報であるとして、情報の受信処理を行う。これに対して、検出したパルス幅が所定パルス幅Tpでない場合、受信部18は、この信号を他のグループの情報であるとして、情報の受信処理を行わない。
【0030】
また送信部17がドミナントの情報送信を行った際に、受信部18が検出した信号のパルス幅が所定パルス幅でない場合、他のグループのECU1が同時的にドミナントの信号送信を行った可能性があるため、CAN通信制御部16は、送信部17にてタイミングをずらして情報の再送信を行う。このとき送信部17は、情報の各ビットの送信周期(送信時間Tb)に対して、例えば送信時間Tbの1/3倍の時間若しくはサンプリング周期の7倍の時間等のように予め定められた時間だけ送信タイミングをずらしてもよく、又は、ランダムな時間だけ送信タイミングをずらしてもよい。
【0031】
図4は、実施の形態1に係る通信システムにて送受信される信号の一例を示す模式図である。なお図4においては、第1グループに属するECU1aが通信線5へ出力する信号を上段に示し、第2グループに属するECU1bが通信線5へ出力する信号を中段に示してある。また図4の下段には、第1グループ及び第2グループが混在する通信システムにて通信線5へ出力される信号を示してある。またいずれの信号もドミナントが連続する情報送信を行った場合のものである。
【0032】
例えば第1グループに属するECU1aは、各ビットの情報を周期Tb1にて送信する。このときECU1aは、各ビットの情報送信時間Tb1のうち、開始時点から時間Tp1までの期間に所定の信号レベルのパルス信号を出力し、時間Tp1の経過後は信号を出力しない。
【0033】
これに対して例えば第2グループに属するECU1bは、各ビットの情報を周期Tb2にて送信する。ただし、第2グループの周期Tb2は、第1グループの周期Tb1の自然数(1、2、3…)倍である(図4に示す例ではTb2=2×Tb1)。またECU1bは、各ビットの情報送信時間Tb2のうち、開始時点から時間Tp2までの期間に所定の信号レベルのパルス信号を出力し、時間Tp2の経過後は信号を出力しない。ただし、第1グループのパルス幅Tp1及び第2グループのパルス幅Tp2は、Tp1+Tp2<Tb1の条件を満たすよう設定される。
【0034】
本通信システムでは、第1グループのパルス信号の出力と、第2グループのパルス信号の出力とが同時的に行われないように、第1グループのECU1a及び第2グループのECU1bは、タイミングをずらしてドミナントのパルス信号の出力を共通の通信線5に対して行う。即ち、第1グループのECU1aが時間Tp1に亘るパルス信号を出力した後から1ビットの送信時間Tb1が経過するまでの期間(ECU1aが信号を出力しない期間)に、第2グループのECU1bが時間Tp2に亘るパルス信号の出力を行う。
【0035】
各グループのECU1のCAN通信制御部16は、受信部18にて検出したパルス信号のパルス幅が自らのグループに設定されたパルス幅Tpでない場合に、第1グループ及び第2グループのパルス信号の出力が同時的に行われたと考えられるため、送信部17にてタイミングをずらして再送信を行う。送信部17が再送信を行うことによって最初のビットの情報送信に成功した後は、第1グループの送信周期Tb1及び第2グループの送信周期Tb2が自然数倍であるため、両グループのパルス信号の出力が再び同時的に行われることはなく、第1グループのECU1a及び第2グループのECU1bは自らの送信周期にて2ビット目以降の情報送信を行うことができる。
【0036】
次に、第1グループのパルス信号のパルス幅Tp1及び第2グループのパルス信号のパルス幅Tp2が満たすべき条件について検討する。なおパルス幅Tp1及びTp2は、Tp1<Tp2、Tp1+Tp2<Tb1、及び、Tb1<Tb2の条件を満たすことを前提とする。また通信システムにおけるECU1間の最大距離に対する信号伝達の最大遅延時間をDとする。
【0037】
まず、第1グループのECU1aが出力するパルス信号のパルス幅Tp1は、通信システムにおける最大遅延時間Dの2倍(即ち往復の最大遅延時間)よりも長い必要がある。即ち、Tp1≧2Dの条件を満たす必要がある。これは、最大距離の2つのECU1aが共に情報を送信する場合に、一方のECU1aのパルス信号出力から最大遅延時間Dの経過までの期間は他方のECU1aがパルス信号を出力する可能性があり、この他方のECU1aが出力したパルス信号が一方のECU1aに到達する最大遅延時間Dの経過前に一方のECU1aがパルス信号の出力を停止すると、一方のECU1aにてアービトレーションを正しく行うことができないためである。
【0038】
また同様に第2グループのECU1aが出力するパルス信号のパルス幅Tp2についても同様に、Tp2≧2Dの条件を満たす必要がある。ただし、前提条件としてTp1<Tp2であるため、この条件はTp1≧2Dが満たされれば、当然に満たされる。
【0039】
また、第1グループのパルス信号及び第2グループのパルス信号について共に遅延時間2Dを考慮すると、Tp1+Tp2<Tb1の条件は、Tp1+Tp2+4D<Tb1となる。同様に、Tp1<Tp2の条件は、Tp1+2D<Tp2となる。
【0040】
これらの条件をまとめると、以下の通りである。第1グループのパルス幅Tp1及び第2グループのパルス幅Tp2は、以下の3つの条件を満たすように予め設定される。
Tp1≧2D
Tp1+Tp2+4D<Tb1
Tp1+2D<Tp2
【0041】
次に、通信システムの各ECU1が行う通信処理の手順を、フローチャートを用いて説明する。図5は、ECU1が送信データの1ビット目を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。なお、ECU1は、1ビット目の情報としてドミナントの信号を通信線5へ出力する。通信システムの各ECU1のCAN通信制御部16は、情報送信を行う場合に、まず通信線5が空いているか(他のECU1が情報を送信していないか)否かを判定し(ステップS1)、通信線5が空いていない場合(S1:NO)、通信線5が空くまで待機する(他のECU1が送信した情報の受信を行う)。
【0042】
通信線5が空いている場合(S1:YES)、CAN通信制御部16は、送信部17にて通信線5へ所定信号レベルの出力を行うと共に(ステップS2)、受信部18にて通信線5の信号レベルのサンプリングを行う(ステップS3)。その後、CAN通信制御部16は、信号出力の開始から所定の時間Tpが経過したか否かを判定し(ステップS4)、時間Tpが経過していない場合(S4:NO)、ステップS2へ処理を戻し、信号出力及びサンプリングを繰り返し行う。
【0043】
時間Tpが経過した場合(S4:YES)、CAN通信制御部16は、送信部17による信号出力を停止すると共に(ステップS5)、受信部18による通信線5の信号レベルのサンプリングを継続して行う(ステップS6)。その後、CAN通信制御部16は、信号出力の開始から1ビットの情報送信時間Tbが経過したか否かを判定し(ステップS7)、情報送信時間Tbが経過していない場合(S7:NO)、ステップS5へ処理を戻し、信号出力停止状態を維持すると共に信号レベルのサンプリングを繰り返し行う。
【0044】
情報送信時間Tbが経過した場合(S7:YES)、CAN通信制御部16は、受信部18のサンプリング結果から、通信線5へ出力されたパルス信号のパルス幅を算出し(ステップS8)、算出したパルス幅が所定のパルス幅Tpであるか否かを判定する(ステップS9)。算出したパルス幅が所定パルス幅Tpでない場合(S9:NO)、CAN通信制御部16は、所定時間待機し(ステップS10)、ステップS2へ処理を戻して、情報の再送信を行う。また算出したパルス幅が所定パルス幅Tpの場合(S9:YES)、CAN通信制御部16は、送信する情報の2ビット目以降の情報送信処理を開始し(ステップS11)、1ビット目の情報送信処理を終了する。
【0045】
なお、通信処理にて判定に用いる時間Tp及びTbは、第1グループに属するECU1aでは時間Tp1及びTb1が用いられ、第2グループに属するECU1bでは時間Tp2及びTb2が用いられる。これらの時間Tp及びTbに関する情報は、各ECU1のROM12に予め記憶されており、制御部11はROM12から時間Tp及びTbを読み出して上記の処理を行う。
【0046】
図6及び図7は、ECU1が情報の2ビット目以降を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。通信システムの各ECU1のCAN通信制御部16は、送信データの未送信の1ビットの情報を取得し(ステップS21)、取得した情報がドミナントであるか否かを判定する(ステップS22)。CAN通信制御部16は、送信する情報がドミナントの場合(S22:YES)、送信部17にて通信線5へ所定信号レベルの出力を行い(ステップS23)、送信する情報がドミナントではなくレセシブの場合(S22:NO)、送信部17にて通信線5への信号出力を停止する(ステップS24)。またCAN通信制御部16は、受信部18にて通信線5の信号レベルのサンプリングを行い(ステップS25)、このビットの送信処理の開始から所定の時間Tpが経過したか否かを判定する(ステップS26)。時間Tpが経過していない場合(S26:NO)、ステップS25へ処理を戻し、信号レベルのサンプリングを繰り返し行う。
【0047】
時間Tpが経過した場合(S26:YES)、CAN通信制御部16は、送信部17による信号出力を停止し(ステップS27)、受信部18によるサンプリング結果から、通信線5上へ出力された信号がドミナントであるか否かを判定する(ステップS28)。信号がドミナントの場合(S28:YES)、CAN通信制御部16は、送信部17にてレセシブの情報送信を行っていたか否かを更に判定する(ステップS29)。送信部17にてレセシブの情報を送信していた場合(S29:YES)、CAN通信制御部16は、他のECU1の情報送信が行われたと判断し、アービトレーションの処理を開始し(ステップS30)、送信処理を終了する。なお、アービトレーション処理の手順は従来のCANプロトコルによるものと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0048】
通信線5上の信号がドミナントでなくレセシブの場合(S28:NO)、又は、送信部17がレセシブの情報送信を行っていなかった場合(S29:NO)、CAN通信制御部16は、このビットの送信処理の開始から1ビットの情報送信時間Tbが経過したか否かを判定する(ステップS31)。情報送信時間Tbが経過していない場合(S31:NO)、CAN通信制御部16は、情報送信時間Tbが経過するまで待機する。情報送信時間Tbが経過した場合(S31:YES)、CAN通信制御部16は、送信する情報の全ビットについて送信を終了したか否かを判定する(ステップS32)。全ビットの送信を終了していない場合(S32:NO)、CAN通信制御部16は、ステップ21へ処理を戻し、次のビットの情報送信を行う。全ビットの送信を終了した場合(S32:YES)、CAN通信制御部16は、送信処理を終了する。
【0049】
以上の構成の通信システムは、通信システム中の各ECU1が、ドミナントの情報送信に対して、1ビットの情報送信時間Tbより短いパルス幅Tpのパルス信号を出力した後に信号出力を停止する構成であり、速度が異なる第1グループ及び第2グループのECU1a、1bを共通の通信線5に接続し、一方のグループのECU1がパルス信号を出力していない期間に他方のグループのECU1がパルス信号を出力するように、タイミングをずらして情報送信を行う構成である。この構成により、通信速度が異なるECU1を共通の通信線5に接続し、通信線5を介して通信速度が異なる情報の送受信を同時的に行うことができるため、通信システム中の通信線5の数を削減することができ、通信システムの小型化及び低コスト化等を実現することができる。また第1グループの送信周期Tb1に対して第2グループの送信周期Tb2を自然数倍に設定することによって、各ECU1は最初の1ビットの送信に成功した後は、以降の情報送信を他グループの情報送信に衝突することなく確実に行うことができる。また、第1グループのECU1a及び第2グループのECU1bが異なるパルス幅のパルス信号を出力する構成とすることによって、各ECU1a、1bは通信線5上に出力された信号が自らの属するグループに関するものであるか否かを容易に判断することができる。
【0050】
なお、本実施の形態においては、通信システムが車輌に搭載されるものとしたが、これに限るものではない。また通信装置はECU1に限らない。また、図1に示した通信システムの構成(ECU1の数、ECU1の接続形態等)は、一例であってこれに限るものではない。また、通信線5としてツイストペア線を用いる構成としたが、これに限るものではなく、1つの線を通信線5として用いるなど、その他の構成であってよい。
【0051】
また、第1グループのECUの通信速度を500Kbpsとし、第2グループの通信速度を250Kbpsとしたが、これらの通信速度は一例であって、これに限るものではない。また図4に示したパルス幅Tp1、Tp2及び1ビットの情報送信時間Tb1、Tb2は一例であって、これに限るものではない。また第1グループ及び第2グループの通信速度が同じであってもよい。
【0052】
(変形例)
また、上述の実施の形態では、通信システムには通信速度が異なる2つのグループを含む構成としたが、これに限るものではなく、3つ以上のグループを含む構成であってよい。この場合、最も短い1ビットの情報送信時間Tbの間に、3つ以上のパルス信号が収まるように、各グループのパルス幅Tpを設定する必要がある。
【0053】
例えば、通信速度が異なるN個のグループ(第1グループ〜第Nグループ)が通信システムに含まれ、各グループの情報送信時間がTbi (i=1、2、…、N)である場合、各グループのECU1がドミナントの情報送信に対して出力するパルス信号のパルス幅Tpi (i=1、2、…、N)は、以下の3つの条件を満たすように予め設定される。ただし、Tb1 <Tb2 <…<TbN 且つTp1 <Tp2 <…<TpN を前提条件とする。
Tp1 ≧2D
Tp1 +Tp2 +…+TpN +2D×N<Tb1
Tpi +2D<Tpi+1 (ただし、1≦i≦N−1)
【0054】
(実施の形態2)
上述の実施の形態1に係る通信システムは、グループ毎に異なるパルス幅のパルス信号を出力する構成であるが、これに限るものではない。実施の形態2に係る通信システムは、グループ毎に異なる信号レベル(振幅)のパルス信号を出力する構成である。図8は、実施の形態2に係る通信システムにて送受信される信号の一例を示す模式図である。なお図8においては、ECU1が通信線5へ出力する信号を、ツイストペア線を構成する2つの線それぞれに出力される2つの信号として図示してある。また、第1グループに属するECU1aが通信線5へ出力するパルス信号を実線で示し、第2グループに属するECU1bが通信線5へ出力するパルス信号を破線で示してある。
【0055】
例えば第1グループに属するECU1aは、各ビットの情報を周期Tb1にて送信する。このときECU1aは、各ビットの情報送信時間Tb1のうち、開始時点から時間Tpまでの期間に、通信線5の各線に+Va、−Vaの振幅(信号レベル)のパルス信号を出力し、時間Tpの経過後は信号を出力しない。
【0056】
これに対して例えば第2グループに属するECU1bは、各ビットの情報を周期Tb2にて送信する。ただし、第2グループの周期Tb2は、第1グループの周期Tb1の自然数倍である。またECU1bは、各ビットの情報送信時間Tb2のうち、開始時点から時間Tpまでの期間に、通信線5の各線に+Va/2、−Va*2の振幅のパルス信号を出力し、時間Tpの経過後は信号を出力しない。
【0057】
各グループのECU1は、CAN通信制御部16の受信部18にて、通信線5の2つの線の電位差を検出している。このため図示の例では、第1グループのECU1aが出力したパルス信号は、2*Vaの信号レベルのパルス信号として検出される。また第2グループのECU1bが出力したパルス信号は、2.5*Vaの信号レベルのパルス信号として検出される。よって、各ECU1は、受信部18にて検出されたパルス信号の信号レベルが予め定められた信号レベルであるか否か(又は予め定められた範囲の信号レベルであるか否か)を閾値との比較などにより判定することによって、このパルス信号が自らの属するグループの情報送信に係るものであるか否かを判断することができる。
【0058】
以上の構成の実施の形態2に係る通信システムは、第1グループのECU1a及び第2グループのECU1bが異なる信号レベルのパルス信号を出力する構成とすることによって、各ECU1a、1bは通信線5上に出力された信号が自らの属するグループに関するものであるか否かを容易に判断することができる。また、第1グループのECU1aが振幅の絶対値が等しいパルス信号を通信線5の2つの線にそれぞれ出力するのに対して、第2グループのECU1bが振幅の絶対値が異なるパルス信号を通信線5の2つの線にそれぞれ出力する構成とすることにより、例えば線毎のパルス信号の振幅比較などを更に行うことによって、このパルス信号が自らの属するグループに関するものであるか否かをより確実に判断することができる。
【0059】
(変形例1)
上述の実施の形態2においては、第2グループのECU1bは、振幅の絶対値が異なるパルス信号を通信線5の2つの線にそれぞれ出力する構成としたが、これに限るものではない。図9は、実施の形態2の変形例1に係る通信システムにて送受信される信号の一例を示す模式図である。第1グループに属するECU1aが出力するパルス信号は、図8に示したものと同じである。
【0060】
これに対して第2グループに属するECU1bは、各ビットの情報送信時間Tb2のうち、開始時点から時間Tpまでの期間に、通信線5の各線に+Va/2、−Va/2の振幅のパルス信号を出力し、時間Tpの経過後は信号を出力しない。このパルス信号は、CAN通信制御部16の受信部18にて、Vaの信号レベルのパルス信号として検出される。
【0061】
以上の変形例1に係る通信システムのように、第1グループのECU1aと同様、第2グループのECU1bが振幅の絶対値が等しいパルス信号を通信線5の2つの線にそれぞれ出力する構成であってもよい。
【0062】
(変形例2)
上述の実施の形態2においては、第1グループのECU1a及び第2グループのECU1bが、共にパルス幅Tpのパルス信号を出力する構成としたが、これに限るものではい。図10は、実施の形態2の変形例2に係る通信システムにて送受信される信号の一例を示す模式図である。例えば第1グループに属するECU1aは、各ビットの情報を周期Tb1にて送信する。このときECU1aは、各ビットの情報送信時間Tb1のうち、開始時点から時間Tp1までの期間に、通信線5の各線に+Va、−Vaの振幅のパルス信号を出力し、時間Tp1の経過後は信号を出力しない。
【0063】
これに対して例えば第2グループに属するECU1bは、各ビットの情報を周期Tb2にて送信する。またECU1bは、各ビットの情報送信時間Tb2のうち、開始時点から時間Tp2までの期間に、通信線5の各線に+Va/2、−Va*2の振幅のパルス信号を出力し、時間Tp2の経過後は信号を出力しない。
【0064】
各グループのECU1は、CAN通信制御部16の受信部18にて、通信線5上のパルス信号を検出した場合に、このパルス信号の信号レベル(振幅)のみでなく、パルス幅を調べ、信号レベル及びパルス幅が共に所定の条件を満たすものであるか否かに応じて、このパルス信号が自らの属するグループに関するものであるか否かを判断する。
【0065】
以上の変形例2に係る通信システムのように、第1グループのECU1a及び第2グループのECU1bがそれぞれ出力するパルス信号を、信号レベルが異なるものとするのみでなく、実施の形態1の通信システムと同様にパルス幅が異なるものとしてもよい。これにより、このパルス信号が自らの属するグループに関するものであるか否かをより確実に判断することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ECU(通信装置)
1a ECU(第1通信装置群の通信装置)
1b ECU(第2通信装置群の通信装置)
5 通信線
11 制御部
12 ROM
13 RAM
14 入力部
15 出力部
16 CAN通信制御部(検知手段、判定手段)
17 送信部
18 受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の通信線を介して、各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信装置を複数備える通信システムにおいて、
各通信装置は、送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定時間に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、且つ、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないようにしてあり、
前記複数の通信装置には、第1周期で各ビットの情報を送受信する第1通信装置群と、前記第1周期の自然数倍の第2周期で情報を送受信する第2通信装置群とを含み、
前記第1通信装置群の通信装置と前記第2通信装置群の通信装置とは、一方が前記通信線への信号出力を行っていない間に、他方が前記通信線へ信号出力を行うよう、送信タイミングに差を設けて各ビットの情報を周期的に送信するようにしてあること
を特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記第1通信装置群の通信装置と、前記第2通信装置群の通信装置とは、異なるパルス幅の前記パルスを前記通信線へ出力するようにしてあり、
各通信装置は、
前記通信線に出力されたパルスのパルス幅を検知する検知手段と、
該検知手段が検知したパルス幅に応じて、前記通信線に出力された前記パルスが、自らが属する通信装置群の通信装置が出力したパルスであるか否かを判定する判定手段と
を有すること
を特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第1通信装置群の通信装置と、前記第2通信装置群の通信装置とは、異なる信号レベルの前記パルスを前記通信線へ出力するようにしてあり、
各通信装置は、
前記通信線に出力されたパルスの信号レベルを検知する検知手段と、
該検知手段が検知した信号レベルに応じて、前記通信線に出力された前記パルスが、自らが属する通信装置群の通信装置が出力したパルスであるか否かを判定する判定手段と
を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記通信線は、2つの線を1組としたツイストペア線であり、
各通信装置は前記ツイストペア線へ差動信号を出力し、前記信号レベルは2つの線にそれぞれ出力された信号の振幅差であり、
前記第1通信装置群の通信装置及び前記第2通信装置群の通信装置の一方は、前記ツイストペア線の各線に出力する信号振幅の絶対値が異なる差動信号を、前記ツイストペア線へ出力するようにしてあること
を特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
共通の通信線を介して他の装置に接続され、前記通信線を介して各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信装置において、
送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定時間に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、且つ、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないようにしてあり、
前記通信線に出力されたパルスのパルス幅を検知する検知手段と、
該検知手段が検知したパルス幅が所定条件を満たすか否か判定する判定手段と
を備え、
該判定手段が所定条件を満たす判定したパルスを、前記優性値の情報として受信するようにしてあること
を特徴とする通信装置。
【請求項6】
共通の通信線を介して他の装置に接続され、前記通信線を介して各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信装置において、
送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定時間に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、且つ、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わないようにしてあり、
前記通信線に出力されたパルスの信号レベルを検知する検知手段と、
該検知手段が検知した信号レベルが所定条件を満たすか否か判定する判定手段と
を備え、
該判定手段が所定条件を満たすと判定したパルスを、前記優性値の情報として受信するようにしてあること
を特徴とする通信装置。
【請求項7】
第1周期で各ビットの情報を送受信する第1通信装置群と、第2周期で各ビットの情報を送受信する第2通信装置群とが、共通の通信線を介して、各ビットが優性値又は劣性値の2値で表される連続した複数ビットの情報を送受信する通信方法であって、
前記第1通信装置群及び前記第2通信装置群に含まれる各通信装置は、送信する情報の優性値に対して、1ビット分の情報送信時間より短い所定時間に亘って所定信号レベルのパルスを前記通信線へ出力した後、前記通信線への信号出力を行わず、且つ、送信する情報の劣性値に対して、前記通信線への信号出力を行わず、
前記第2周期を前記第1周期の自然数倍とし、
前記第1通信装置群の通信装置と前記第2通信装置群の通信装置とが、一方が前記通信線への信号出力を行っていない間に、他方が前記通信線へ信号出力を行うよう、送信タイミングに差を設けて各ビットの情報を周期的に送信すること
を特徴とする通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−85098(P2013−85098A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223260(P2011−223260)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】