説明

通信システム及び通信方法

【課題】主局−従局間に赤外線通信区間や中継局があろうとも、主局−従局間でRS232C制御信号を直接監視、制御でき、主局−従局間でEND−to−ENDの通信制御手順を導入でき、信頼性の高い通信システムを構築できる通信システムを提供する。
【解決手段】通信システムは、主局及び従局間の光通信区間を含むRS232C通信経路に沿って通信を行うものであって、光通信区間でRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加することによって、主局及び従局間でRS232C通信の制御信号を伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム及び通信方法に係り、特に光通信によるRS232C信号ポート制御に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信(赤外線通信)区間を含むRS232C通信経路では、調歩同期のRS232C通信は、最低でも6本の信号線(SD(送信データ)、RD(受信データ)、ER(データ端末レディ)、DR(データセットレディ)、RS(送信リクエスト)、CS(送信可))が必要であるが、IrDA(Infrared Data Association)規格などの赤外線通信では、SD、RDしかないため、RS232C制御信号ER、DR、RS、CSの制御は直接にはできない。
【0003】
このため、光通信(赤外線通信)区間を含むRS232C通信経路では、END−to−END通信をあきらめ、RS232C機器間と、光通信(赤外線)区間の通信を別々にしたり(下記の図1参照)、通信プロトコルによるリカバリなどの手段で通信を行ったりする手法がとられてきた。
【0004】
図1(a)及び(b)は、関連技術のIrDA区間を含むRS232C通信経路での通信システムを示す。
【0005】
図1(b)に示すように、IrDA区間を含むRS232C通信経路では、調歩同期のRS232C通信は、最低でも6本の信号線(SD、RD、ER、DR、RS、CS)が必要であるが、IrDAなどの赤外線通信では、SD、RDしかないため、RS232C制御信号ER、DR、RS、CSは、IrDA区間の通信線にマッピングできない。すなわち、RS232C制御信号ER、DR、RS、CSの制御は、直接にはできない。
【0006】
このため、図1(a)の通信レイヤ構成(物理層、データリンク層などの上位層、アプリケーション層)に示すように、IrDA区間を含むRS232C通信経路では、END−to−END通信をあきらめ、RS232C機器間(主局101と従局111の主局側112との間)と、IrDA区間(従局111の端末機器側115と端末機器121との間)との通信を別々にすることにより、通信システムを実現している。
【0007】
また、END−to−END通信を実現する方式としては、RS232Cの制御信号線1つ1つを光受発光素子に割当て信号を端末に送る方式も取られている。
【0008】
一方、特許文献1には、赤外線通信用ポートとRS232C用ポートとを併用する赤外線通信装置において、第1のポートを赤外線発光素子への駆動出力とRS232Cのデータ入力とに兼用し、第2のポートを赤外線発光素子からの入力とRS232Cのデータ出力とに兼用するものも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−312086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
関連技術のIrDA通信区間をもつ通信システムでは、図1(a)のようにEND−to−END通信をあきらめ、RS232C機器間と、光通信(赤外線)区間の通信を別々の通信区間として分離して運用させていた。この場合は、中継局が両局との通信の中継を行う必要があり、受信した電文をいったん蓄積し、独立した通信手順で再送信する形となり、リアルタイムな通信の実現が困難であった。また、異常時の電文の消失などが、両局で共有されず、通信事故に対しての対応が難しい面があった。
【0011】
また、END−to−END通信を実現する方式としては、RS232Cの制御信号線1つ1つを光受発光素子に割当て信号を端末に送る方式が取られているが、この方式は受発光素子数が信号線分必要となり、部品の実装面積が必要になることと、素子間の光の干渉を遮蔽するために密結合にしたり、壁で遮蔽したり、受発光素子を離して分離配置するなどの実装上の制約があった。いずれも部品実装上の制限となり、携帯端末では実現は容易ではなかった。
【0012】
特許文献1に記載の赤外線通信装置は、上記のような課題を考慮したものではない。
【0013】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、主局−従局間に赤外線通信区間や中継局があろうとも、主局−従局間でRS232C制御信号を直接監視、制御でき、主局−従局間でEND−to−ENDの通信制御手順を導入でき、信頼性の高い通信システムを構築できる通信システム及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る通信システムは、主局及び従局間の光通信区間を含むRS232C通信経路に沿って通信を行う通信システムであって、前記光通信区間でRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加することによって、前記主局及び前記従局間でRS232C通信の制御信号を伝えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る通信方法は、主局及び従局間の光通信区間を含むRS232C通信経路に沿って通信を行う通信方法であって、前記光通信区間でRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加することによって、前記主局及び前記従局間でRS232C通信の制御信号を伝えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、主局−従局間に赤外線通信区間や中継局があろうとも、主局−従局間でRS232C制御信号を直接監視、制御でき、これにより、主局−従局間でEND−to−ENDの通信制御手順を導入でき、信頼性の高い通信システムを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)及び(b)は、光通信(赤外線通信)区間をもつ通信システムを説明する図である。
【図2】(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る通信システムを説明する図である。
【図3】(a)及び(b)は、図2(a)及び(b)に示す通信システムで用いる信号線のマッピングルールを説明する図である。
【図4】(a)及び(b)は、図2(a)及び(b)に示す通信システムで用いる赤外線通信区間のデータビット列構造を説明する図である。
【図5】図2(a)及び(b)に示す通信システムにおいて、中継局と従局間でデータ通信が行われていない場合の電文の通信シーケンスを説明する図である。
【図6】図2(a)及び(b)に示す通信システムにおいて、中継局と従局間でデータ通信が行われている場合の電文の通信シーケンスを説明する図である。
【図7】図2(a)及び(b)に示す通信システムにおいて、中継局と従局間でデータ通信が行われていない場合とデータ通信が行われている場合とが混在しているときの電文の通信シーケンスを説明する図である。
【図8】図2(a)及び(b)に示す通信システムにおいて、電文データがある場合に送信局(中継局又は従局)から受信局(従局又は中継局)に制御信号が伝わる仕組みを説明する図である。
【図9】図2(a)及び(b)に示す通信システムにおいて、電文データがない場合に送信局(中継局又は従局)から受信局(従局又は中継局)に制御信号が伝わる仕組みを説明する図である。
【図10】図2(a)及び(b)に示す通信システムにおいて、中継局から従局への下り電文における制御信号の伝達方法を説明する図である。
【図11】図2(a)及び(b)に示す通信システムにおいて、従局から中継局への下り電文における制御信号の伝達方法を説明する図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る通信システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る通信システムの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
本実施の形態に係る通信システムは、多重化通信技術を応用し、主局−従局間の光通信(赤外線通信)区間を含むRS232C通信経路で、光通信区間で通信データビット列に制御信号ビット列を付加して相手局へRS232C制御信号を伝えるものである。
【0020】
図2に、本実施の形態に係る通信システムの概念図を示す。図2(a)は、通信レイヤの構成図であり、図2(b)は、信号線のマッピングの概念図である。
【0021】
図2(a)及び(b)において、主局101と従局(端末機器)141間の通信経路上にIrDA規格による赤外線通信区間(以下、IrDA区間とも呼ぶ。)204がある。主局101と従局141間の中間の中継局131でRS232C通信区間203の信号と赤外線通信区間204の信号とを相互に変換する。この場合、従来の方式では、主局101と中継局131の主局側132間の制御信号4本は、中継局131の従局側135と従局141間の赤外線通信区間204の信号に直接マッピングできない。
【0022】
これに対し、本実施の形態の方式では、OSI参照モデルの物理層、データリンク層などの上位層、アプリケーション層を有する通信レイヤのうち、物理層でRS232C通信の制御信号(ER、DR、RS、CS)205を光通信(赤外線)の信号(送信データSD、受信データRD)206に載せて多重化し、主局101と従局141間のEND−to−END通信を確保する。すなわち、図2(a)及び(b)に示すように、光通信区間でRS232C通信の制御線ER、DR、RS、CSの4線をSDおよびRD信号に時分割多重化して中継局131−従局141間を伝える。
【0023】
図3に、図2(b)に示すRS232C通信の制御信号ER、DR、RS、CSの各局(主局101、中継局131、従局141)でのマッピングルール(以下、単に「ルール」と呼ぶ。)を示す。図3に示すルールによる信号線の伝達を説明する。
【0024】
図3(a)に示すように、主局101が発する制御信号ER、RSは、中継局131の主局側132で観測される信号DR、CSの状態を、中継局131の従局側135、IrDA通信区間を介して従局141に伝え、従局141は、主局101と直接対向して信号を監視している状態と等価な状態を実現する。また、図3(b)に示すように、従局141の発する制御信号ER、RSは、その状態を、IrDA通信区間、中継局131の従局側135を介して中継局131の主局側132に反映させ、主局101が従局141の制御信号を直接監視している状態と等価な状態を実現する。
【0025】
図4(a)は、時分割多重化を実現するための赤外線通信区間のデータビット列構造を示す。電文ビット392の8ビット(D0〜D7)に、制御信号ビット393の4ビット(C1〜C4)を加えた12ビットを1つのビット列として赤外線(IrDA)通信区間で送受する。図4(a)に示すように、送信側で4つの制御信号ビットC1〜C4をセットし、受信側でその制御信号情報を、通信制御レジスタ群(図10の通信レジスタ群711、721)へ反映することで、相手局の信号が他方局へ伝えられる。
【0026】
図4(b)は、図4(a)のビット列構造に拡張ビットを1ビット付加したデータビット構造を示す。これは、通信電文のビット列D0〜D7の有効/無効を識別するために、先頭に拡張ビットであるFビットを付加した形態である。図4以降の図面では、この図4(b)のビット列構造を用いている。以下、説明の都合上、Fビットの使い方は、F=1のときは、通信電文のビット列D0〜D7が有効を示し、F=0のときは、通信電文のビット列D0〜D7は無効(制御信号ビットC1〜C4だけ有効)を示すこととする。よって、通信電文のビット列D0〜D7がセットされておらず、制御信号ビットC1〜C4だけの送受の場合は、F=0としてビット列を送信する。一方、通信電文のビット列D0〜D7がセットされている場合は、F=1としてビット列を送信する。
【0027】
1.電文の通信シーケンス
まず、中継局135と従局141間の電文の通信シーケンスを説明する。
【0028】
図5は、中継局135と従局141間でデータ通信が行われておらず、通信電文(電文データ)がない場合(電文データが空の場合)の制御信号情報付ビット列の通信例を示す。この場合は、先頭のFビットをF=0とし、通信電文のビット列D0〜D7は無効(電文データは空)で、制御信号情報C1〜C4の交換をしている状態を想定した例である。両局135、141間の取り決めによるが、ここでは、送信は、両局135、141で交互に規定時間の間隔t0でおのおのの制御信号情報C1〜C4付きのビット列401〜405を交互に交換する形態を図示した。
【0029】
図6は、中継局135と従局141間でデータ通信が行われ、通信電文(電文データ)がある場合の通信シーケンス例である。通信電文がある場合は、先頭のFビットをF=1にして通信電文のビット列D0〜D7が有効であることを示して、送信を行う。この場合の送信は、中継局135は、1つの電文をビット列451、452、・・・、45nとして続けて送った後に、従局141からの応答461を待つ。通信電文がある場合の通信手順は、両局135、141間で使われる伝送制御手順に依存する。
【0030】
実際の通信では、通信電文がない場合(図5)と通信電文がある場合(図6)の状態が混在した、図7のような通信シーケンスになる。
【0031】
図7において、500は、通信電文がない状態で一定間隔t0で両局135、141の制御信号ビットC1〜C4を交換している通信シーケンスを示す。通信電文がない場合は、図5と同様に規定時間t0で両局135、141間で制御信号ビットC1〜C4を交換している(電文501、502、・・・、506)(F=0)。
【0032】
510は、従局141向けの下り電文591として中継局135から従局141に送られる電文の通信シーケンスを示している。中継局135側で通信電文591が発生すると、中継局135が次に制御信号ビットC1〜C4を送るタイミングでビット列D0〜D7に電文データを乗せて電文(第1電文(第1〜n1ビット列))510を送信する(F=1)。
【0033】
520は、電文591と電文592の間の通信電文がない時間に両局135、141の制御信号ビットC1〜C4を交換している通信シーケンスを示す。通信電文がない場合は、規定時間t0で両局135、141間で制御信号ビットC1〜C4を交換している(電文521、522)(F=0)。
【0034】
530は、電文591への応答電文592として従局141から中継局135に送られる電文の通信シーケンスを示している。従局141側でも同じく、通信電文592が発生すると、次に従局141が制御信号ビットC1〜C4を送るタイミングでビット列D0〜D7に電文データを乗せて電文(第2電文(第1〜m1ビット列))530を送信する(F=1)。
【0035】
540は、電文592と電文593の間の通信電文がない時間に両局135、141の制御信号ビットC1〜C4の交換時の通信シーケンスを示している。通信電文がない場合は、規定時間t0で両局135、141間で制御信号ビットC1〜C4を交換している(電文541〜544)(F=0)。
【0036】
550は、従局141向けの下り電文593として中継局135から従局141に送られる電文の通信シーケンスを示している。中継局135側で通信電文593が発生すると、中継局135が次に制御信号ビットC1〜C4を送るタイミングでビット列D0〜D7に電文データを乗せて電文(第2電文(第1〜n2ビット列))550を送信する(F=1)。
【0037】
2.制御信号ビットの送受方式
次に、制御信号ビットC1〜C4が、送信局から受信局に伝わる仕組みを説明する。
【0038】
図8、図9は、送信局(送信局機器)601の通信電文603と制御信号608が結合し、IrDA通信区間の信号620となって、受信局(受信局機器)611に伝わっていく様子を示したものである。送信局601は、図2の中継局135か従局141のいずれででもなりえる。図2の中継局135か従局141のいずれか一方が送信局601になり、他方が受信局611になる。
【0039】
図8で、送信局601内の通信制御プログラム602が生成した送信電文603は、通信制御回路605で、電文データ(ビット列D0〜D7)607と、制御信号(ビット列C1〜C4)608と、先頭のフラグ(Fビット)606とをつないだ1つのビット列620となり、IrDA区間に送出される。
【0040】
受信局611では、送信局601からのビット列620を受信し、通信制御回路615で、送信局601が行ったのと逆に、ビット列620を、制御信号(ビット列C1〜C4)608と、電文データ(ビット列D0〜D7)607と、フラグ(Fビット)606とに分解し、電文データ607の部分だけを通信制御プログラム612へ渡す。
【0041】
これにより、送信局601の制御信号608は、受信局611に渡り、送信局601の電文603は、受信局611の通信制御プログラム612に電文613として伝わった。
【0042】
図9は、電文データがない場合、送信局601の制御信号(C1〜C4)658が受信局611に伝わる様子を図示したものである。送信局601は、通信制御回路605により、通信制御プログラム602から受け取る電文データ(D0〜D7)がカラの状態でIrDA通信区間に送出する。受信局611でも、電文データ657はカラなので、通信制御回路615から通信制御プログラム612への引渡しデータはなく、制御信号(C1〜C4)658だけが有効な情報である。
【0043】
電文データ(D0〜D7)657が有効か無効かは、送信局601の通信制御回路605で付加される先頭のフラグ(Fビット)656で制御されており(ここではF=1有効、F=0無効とする)、受信局611側では、F=0の場合は通信制御プログラム612へ渡すデータはないと判断する。
【0044】
3.制御信号ビット情報の反映
図8、図9で制御信号608、658が送信局601から受信局611へ、通信データに結合して、もしくは通信データがない場合は、制御信号だけで伝わっていく方式を説明した。
【0045】
次に、図10、図11で送信局機器からの制御信号ER、DR、RS、CSの読出しと受信局機器への反映を説明する。これにより、図2の主局101の制御信号ER、RSが中継局131を経由して、従局141の制御信号DR、CSへ伝わり、逆に従局141の制御信号ER、RSが中継局131を経由して主局101の制御信号DR、CSへ伝わることを解説する。
【0046】
4.制御信号の読替えと通信レジスタ群711の動作
図10、図11の通信レジスタ群711の動作について説明する。
【0047】
通信レジスタ群711は、主局側信号線通信レジスタ群713と、従局側信号線通信レジスタ群712とがセットである。主局側信号線通信レジスタ群713側から書き込んだ制御信号は、従局側信号線通信レジスタ群712側から読み、逆に従局側信号線通信レジスタ群712側から書き込んだ制御信号は、主局側信号線通信レジスタ群713側から読み出す。
【0048】
DR信号761と、CS信号763は、主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタDR771、レジスタCS773へ書き込むが、おのおの従局側信号線通信レジスタ群712側のレジスタER781、レジスタRS783から信号データを読み出す。このとき、レジスタDR771へ書き込まれた信号761は、レジスタER781からER信号として読まれる。DR771とER781でデータの内容は同じだが、信号名が図3のルールで読み替えられている。同様にレジスタCS773へ書き込まれた信号763は、レジスタRS783からRS信号として読まれる。
【0049】
逆に従局側信号線レジスタ群712側から書き込んで、主局側信号線通信レジスタ群713側から読み出される(出力される)信号は、以下のようになる。
【0050】
DR信号と、CS信号は、従局側信号線通信レジスタ群712側のレジスタDR782、レジスタCS784へ書き込むが、おのおの通信レジスタ群713側のレジスタER772、レジスタRS774から信号データを読み出す。このとき、レジスタDR782へ書き込まれた信号は、レジスタER772からER情報として読まれ、中継局131の主局側132からER信号762として主局101へ伝えられる。レジスタDR782とレジスタCS772でデータの内容は同じだが、信号名が図3のルールで読み替えられている。同様に、レジスタCS784へ書き込まれた信号784は、レジスタRS774からRS情報として読まれ、中継局131の主局側132からRS信号764として主局101へ伝えられる。
【0051】
5.下り電文への制御信号マッピング
図10は、下り電文へ付加する制御信号(DR、CS)の付加方式である。
【0052】
中継局131には、主局(図2の主局101)から制御信号DR(主局のER信号751→中継局131の主局側132のDR信号761→主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタDR771)、CS(主局のRS信号753→中継局131の主局側132のCS信号763→主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタCS773)が入っている(信号のマッピングは、図3による。)。
【0053】
主局からの制御信号は、通信制御回路701の通信レジスタ群711の主局側信号線通信レジスタ群713へ反映される。主局側信号線通信レジスタ群713は、主局が出力した信号が保持され、信号が変化すれば変化した信号が保持され、主局が出力した信号がそのまま保持される。また、主局が読出す信号も主局側信号線通信レジスタ群713にマップされているが、読み出す信号の伝達は、図11で説明する。
【0054】
中継局131の従局(IrDA区間)側135では、制御信号は主局101の状態を伝えなければならないので、図3のルールで信号のマッピングを変更する。これは、通信レジスタ群711の中で行われ、図3のルールで信号名が読み替えられる。
【0055】
すなわち、主局101の制御信号ER751は、中継局131で制御信号DR761として受信され、主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタDR771へ書き込まれる。それは、通信制御回路701では、従局側信号線通信レジスタ群712側のレジスタER781からER情報として読み出される。
【0056】
通信制御回路701は、従局側信号線通信レジスタ群712側のレジスタER781、RS783から読み出したER、RS情報を電文の制御信号ビットC1、C3へ書き込み、電文データの一部とする。
【0057】
制御信号ビットC1へは、通信レジスタ群711を経由して主局101のER信号751がマッピングされている(主局のER信号751→中継局131の主局側132のDR信号761→主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタDR771→従局側信号線通信レジスタ群712側のレジスタER781→制御信号ビットC1)。
【0058】
制御信号ビットC3へは、主局101のRS信号753がマッピングされている(主局のRS信号753→中継局131の主局側132のCS信号763→主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタCS773→従局側信号線通信レジスタ群712側のレジスタRS783→制御信号ビットC3)。
【0059】
送出された電文ビット列は、従局141で受信され、制御信号ビットC1は、通信レジスタ群721のレジスタDR791へ書き込まれ、制御信号ビットC3は通信レジスタ群721のレジスタCS793へ書き込まれる。これにより、通信レジスタ群721のレジスタDR791とCS793は、中継局131の主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタDR771、CS773と等価になる。
【0060】
すなわち、通信レジスタ群721のレジスタDR791、CS793に書き込まれる信号は、主局に対向した中継局の主局側132が見た主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタDR771、CS773に書き込まれる、主局のER信号751、RS信号753に対応する中継局131の主局側132のDR信号761、CS信号763と等価な状態になる。
【0061】
従って、従局141の通信制御プログランム706は、通信レジスタ群721のレジスタDR791、CS793を監視することで、直接主局に対向した中継局131の主局側132に届いた主局のER信号751、RS信号753に対応するDR信号761、CS信号763が書き込まれる主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタDR771、CS773を監視していることとなり、これにより、通信が制御できる。
【0062】
6.上り電文への制御信号マッピング
図11は、上り電文へ付加する制御信号(ER、RS)の付加方式である。
【0063】
従局141では、通信制御プログラム706が通信レジスタ群721のレジスタER792、RS794をセットすると、その値が保持され、通信電文が送出されるたびに通信レジスタ群721の信号がその制御信号ビットC2、C4へセットされて、中継局131へ送信される。
【0064】
中継局131では、通信電文の制御信号ビットC2、C4を通信レジスタ群712のレジスタDR782、CS784へ書き込むことで、主局が監視する主局側信号線通信レジスタ群713へ信号をマップする。これにより、従局141の通信制御プログラム706がセットした通信レジスタ群721のレジスタER792は、主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタER772にセットされ、従局141の通信レジスタ群721のレジスタRS794は、主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタRS774にマップされた。
【0065】
主局101は、中継局131の主局側信号線通信レジスタ群713を読むことで、従局141の通信レジスタ群721と等価な情報を読んでいることとなり、主局は主局側信号線通信レジスタ群713の信号を監視して、従局141の状態を把握できる。
【0066】
以上の仕組みにより、中継局131で観測された主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタDR771、CS773の信号が、従局141の通信レジスタ群721のレジスタDR791、CS793へ反映され、従局141の通信制御プログラム706は主局の状態が監視できた。
【0067】
また、従局141の通信制御プログラム706が通信レジスタ群721へ書き込んだレジスタER792、RS794は、中継局131の主局側信号線通信レジスタ群713側のレジスタER772、RS774へ反映され、主局が監視できるようになった。
【0068】
本実施の形態により、中継局131の主局側信号線通信レジスタ群713は、従局141の通信レジスタ群721と同じ情報を保持しており、主局−従局間に赤外線通信区間や中継局があろうとも、主局−従局間でRS232C制御信号を直接監視、制御できるようになった。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態においては、主局−従局間に赤外線通信区間や中継局があろうとも、主局−従局間でRS232C制御信号を直接監視、制御でき、これにより、主局−従局間でEND−to−ENDの通信制御手順を導入でき、信頼性の高い通信システムを構築できる。
【0070】
(第2の実施の形態)
図12は、第2の実施の形態に係る通信システムの概念図を示す。
【0071】
本実施の形態は、第1の実施の形態を拡張し、IrDA区間を経由したRS232Cの同期通信へ拡張したものである。第1の実施の形態で説明した調歩通信では、制御信号は4線だったが、同期通信では、さらに3本(ST1、ST2、RT信号)が追加される。
【0072】
本実施の形態では、IrDA規格などの赤外線通信を使って、中継局802のRS232C端子の入力信号を、従局側の端末機器(DTE)803へ伝送する。逆に、端末機器803のRS232出力信号を中継局802に伝え、RS232C信号にマップし、主局側の同期モデム(DCE)801を制御する。
【0073】
本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の方式でSD(送信データ)に追加した信号を付加し、時分割多重化することで、相手局に伝えることができる。
【0074】
なお、上記の通信システム及び通信方法は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組合せにより実現することができる。この場合のハードウェア、ソフトウェア構成は特に限定されるものではなく、上述した機能を実現可能なものであれば、いずれの形態でも適用可能である。
【0075】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限定されない。
【0076】
(付記1)主局及び従局間の光通信区間を含むRS232C通信経路に沿って通信を行う通信システムであって、前記光通信区間でRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加することによって、前記主局及び前記従局間で制御信号を伝えることを特徴とする通信システム。
【0077】
(付記2)前記主局及び前記従局間に接続される中継局とを有し、前記従局及び前記中継局間に前記光通信区間が形成され、予め設定されたRS232C通信の信号線のマッピングルールに従い、前記主局の制御信号ビット列、前記中継局の主局側の制御信号ビット列、前記中継局の従局側の制御信号ビット列、前記光通信区間の制御信号ビット列、及び前記従局の制御信号ビット列がそれぞれ対応付けられていることを特徴とする付記1に記載の通信システム。
【0078】
(付記3)前記従局は、前記光通信区間で、RS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加した通信データを前記中継局の従局側に送出すると共に、前記主局からのRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加した通信データを前記中継局の従局側から受信する通信制御回路を有し、前記中継局は、前記主局との間でRS232C通信を行うと共に、前記光通信区間で、前記従局からのRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加した通信データを受信すると共に、前記主局からのRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加したデータを前記従局に送出する通信制御回路を有することを特徴とする付記2に記載の通信システム。
【0079】
(付記4)前記従局の通信制御回路は、前記主局の制御信号ビット列に前記マッピングルールに従い対応付けられた前記従局の制御信号ビット列のデータと、前記従局の制御信号ビット列のデータとを書き込む通信レジスタ群を有し、前記中継局の通信制御回路は、前記主局の制御信号ビット列のデータに前記マッピングルールに従い対応付けられた前記中継局の主局側の制御信号ビット列のデータを書き込む主局側信号線通信レジスタ群と、前記従局の制御信号ビット列のデータに前記マッピングルールに従い対応付けられた前記中継局の従局側の制御信号ビット列のデータを書き込む従局側信号線通信レジスタ群とを有し、前記主局側信号線通信レジスタ群に書き込まれた前記中継局の主局側の制御信号ビット列のデータを、前記マッピングルールに従い対応付けられた前記中継局の従局側の制御信号ビット列のデータとして前記従局側信号線通信レジスタ群に書き込み、前記従局側信号線通信レジスタ群に書き込まれた前記中継局の従局側の制御信号ビット列のデータを、前記マッピングルールに従い対応付けられた前記中継局の主局側の制御信号ビット列のデータとして前記主局側信号線通信レジスタ群に書き込むことを特徴とする付記3に記載の通信システム。
【0080】
(付記5)前記RS232C通信は、調歩通信であり、前記RS232C通信の制御信号は、ER、DR、RS、CS信号を含むことを特徴とする付記1から4のいずれか1項に記載の通信システム。
【0081】
(付記6)前記RS232C通信は、同期通信であり、前記RS232C通信の制御信号は、ER、DR、RS、CS、ST1、ST2、RT信号を含むことを特徴とする付記1から4のいずれか1項に記載の通信システム。
【0082】
(付記7)前記光通信は、赤外線通信であることを特徴とする付記1から6のいずれか1項に記載の通信システム。
【0083】
(付記8)前記赤外線通信は、IrDA規格に準拠したものであることを特徴とする付記7に記載の通信システム。
【0084】
(付記9)主局及び従局間の光通信区間を含むRS232C通信経路に沿って通信を行う通信方法であって、前記光通信区間でRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加することによって、前記主局及び前記従局間でRS232C通信の制御信号を伝えることを特徴とする通信方法。
【0085】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、光通信(IrDAなどの赤外線通信)区間を含むRS232C通信経路での通信システム及び通信方法の用途に利用可能である。本発明は、光通信によるRS232C信号ポート制御を行う主局、従局、中継局、端末機器(DTE)、モデム(DCE)等、又はこれらを構成する送信局(送信局機器)及び受信局(受信局機器)、或いはこれらに搭載される通信制御回路等の用途にも利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
101 主局
111 従局
121 端末機器
131 中継局
132 中継局の主局側
135 中継局の従局側
141 従局(端末機器)
601 送信局
602 通信制御プログラム(送信局)
605 通信制御回路(送信局)
611 受信局
612 通信制御プログラム(受信局)
615 通信制御回路(受信局)
701 通信制御回路(中継局)
705 通信制御回路(従局)
706 通信制御プログラム(従局)
711 通信レジスタ群(中継局)
712 従局側信号線通信レジスタ群
713 主局側信号線通信レジスタ群
721 通信レジスタ群(従局)
801 同期モデム(DCE)
802 中継局
803 端末機器(DTE)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主局及び従局間の光通信区間を含むRS232C通信経路に沿って通信を行う通信システムであって、
前記光通信区間でRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加することによって、前記主局及び前記従局間でRS232C通信の制御信号を伝えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記主局及び前記従局間に接続される中継局を有し、
前記中継局及び前記従局間に前記光通信区間が形成され、
予め設定されたRS232C通信の信号線のマッピングルールに従い、前記主局の制御信号ビット列、前記中継局の主局側の制御信号ビット列、前記中継局の従局側の制御信号ビット列、前記光通信区間の制御信号ビット列、及び前記従局の制御信号ビット列がそれぞれ対応付けられていることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記従局は、前記光通信区間で、RS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加した通信データを前記中継局の従局側に送出すると共に、前記主局からのRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加した通信データを前記中継局の従局側から受信する通信制御回路を有し、
前記中継局は、前記主局との間でRS232C通信を行うと共に、前記光通信区間で、前記従局からのRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加した通信データを受信すると共に、前記主局からのRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加したデータを前記従局に送出する通信制御回路を有することを特徴とする請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記従局の通信制御回路は、
前記主局の制御信号ビット列に前記マッピングルールに従い対応付けられた前記従局の制御信号ビット列のデータと、前記従局の制御信号ビット列のデータとを書き込む通信レジスタ群を有し、
前記中継局の通信制御回路は、
前記主局の制御信号ビット列のデータに前記マッピングルールに従い対応付けられた前記中継局の主局側の制御信号ビット列のデータを書き込む主局側信号線通信レジスタ群と、
前記従局の制御信号ビット列のデータに前記マッピングルールに従い対応付けられた前記中継局の従局側の制御信号ビット列のデータを書き込む従局側信号線通信レジスタ群とを有し、
前記主局側信号線通信レジスタ群に書き込まれた前記中継局の主局側の制御信号ビット列のデータを、前記マッピングルールに従い対応付けられた前記中継局の従局側の制御信号ビット列のデータとして前記従局側信号線通信レジスタ群に書き込み、
前記従局側信号線通信レジスタ群に書き込まれた前記中継局の従局側の制御信号ビット列のデータを、前記マッピングルールに従い対応付けられた前記中継局の主局側の制御信号ビット列のデータとして前記主局側信号線通信レジスタ群に書き込むことを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記RS232C通信は、調歩通信であり、
前記RS232C通信の制御信号は、ER、DR、RS、CS信号を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記RS232C通信は、同期通信であり、
前記RS232C通信の制御信号は、ER、DR、RS、CS、ST1、ST2、RT信号を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記光通信は、赤外線通信であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記赤外線通信は、IrDA規格に準拠したものであることを特徴とする請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
主局及び従局間の光通信区間を含むRS232C通信経路に沿って通信を行う通信方法であって、
前記光通信区間でRS232C通信の通信データビット列に制御信号ビット列を付加することによって、前記主局及び前記従局間でRS232C通信の制御信号を伝えることを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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