説明

通信中継装置

【課題】無線LAN用の普及型TDDモデムをそのまま有効活用し、準ミリ波帯〜ミリ波帯での双方向通信や、有線又は無線による長距離の或いは通信障害物が存在する場合の双方向通信を安定した通信品質で行うことができること。
【解決手段】TDD方式の一のモデム1と他のモデムとの間で送受信される通信信号を中継伝送するものであり、一のモデム1側において通信信号を伝送する基幹信号経路R0と、それよりも他のモデム側に並列に設けられ、各々一のモデム1の送信信号及び受信信号の各々を伝送する第1及び第2の信号経路R1、R2と、基幹信号経路R0からの分岐信号に基づいて一のモデム1から送信信号が発生中であるか否かを検知する送信信号検知回路Z1と、その検知信号に基づいて、基幹信号経路R0を第1若しくは第2の信号経路R1、R2のいずれに接続するかを切り替える高周波スイッチ31とを具備する通信中継装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
時分割多重複信方式の一のモデムと他のモデムとの間で送受信される通信信号を中継伝送する通信中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、個人向けに無線LANシステムが普及し、これに用いられる通信機器が汎用品として大幅に低コスト化されている。
現在普及している無線LANシステムに用いられる汎用化された通信機器(普及品)の代表的なものとして、パーソナルコンピュータ等の通信主体に接続され、時分割多重複信(TDD)方式の通信を行うモデム(以下、TDDモデムという)や、有線による通信信号と2.4GHz帯や5GHz帯の無線信号との間で相互に周波数変換する周波数コンバータ等がある。このような既に普及している通信機器を用いて通信システムを構成すれば、省資源化や低コスト化が図れるので好適である。
【0003】
ところで、無線通信に利用できる電波の周波数(無線周波数)は電波法の規定に基づき割り当てられているが、現在、おおよそ10GHz以下の周波数での周波数帯域の不足が顕在化している。
例えば、2.4GHz帯無線LANシステムは、ISM(Industrial,Science,and Medical)バンドの2.4〜2.5GHz(100MHz帯域)を利用する。この場合、例えば、最大54Mbpsの通信速度を有するIEEE802.11g準拠の無線LANシステムでは、電波干渉なく独立に利用できる無線チャンネルは4チャンネルに限られる。また、5GHz帯無線LANでも状況に大差はなく、電波干渉なく独立して利用できる無線チャンネルは数チャンネルに限られる。近い将来、利用者数が大幅に増加した場合、無線チャンネル数の制限から各端末で十分な通信速度が得られなくなることが懸念される。
また、通信速度の高速化のため、複数モデムを並列させて無線チャンネルを複数チャンネルに多重化することが原理上は可能である。例えば、上記IEEE802.11g準拠の無線チャンネルを2チャンネル多重化することにより、最大108Mbpsの通信速度が得られることになる。しかしこの場合、限られた無線チャンネルの周波数帯域をより多チャンネルで占有することになることから、実用的には問題が多いと考えられる。
【0004】
一方、10GHzを超える準ミリ波〜ミリ波帯には広大な周波数帯域が残されている。この準ミリ波〜ミリ波帯の無線通信周波数としては、電気通信業務向けの加入者無線アクセス(Fixed Wireless Access,FWA)として、22GHz帯、26GHz帯、38GHz帯の周波数が既に割り当てられ、また、公共業務向けに18GHz帯の割り当てが準備されており、これらを合わせると4GHz近い広帯域を利用することが可能となる。
また、準ミリ波〜ミリ波帯の無線通信では、システム構成にもよるが、その通信速度は、通常、数十〜100Mbps以上を実現可能であり、光ファイバーを用いた通信に匹敵する高速通信を無線で実現することが可能である。
従って、この準ミリ波〜ミリ波帯を無線データ通信に活用したブロードバンド無線通信システムの普及により、周波数帯域の不足の問題を解消し得る。
そこで、既に普及している無線LANシステムのモデムを有効活用し、その通信信号を準ミリ波〜ミリ波に周波数変換して無線通信を行えば、省資源化や低コスト化につながり、準ミリ波〜ミリ波帯FWAシステムの普及を促進できると考えられる。
【0005】
従来、既存の無線LANで用いられているTDDモデムを有効活用するものとして、特許文献1には、TDD方式の親局側のモデム(TDDモデム)から子局側のモデム(TDDモデム)への送信信号(2.4GHz帯、5GHz帯)を60GHz帯に周波数変換して無線伝送するミリ波帯無線通信システム(従来例1)が示されている。
図8は、特許文献1に示される従来例1に係る無線通信システムAの基本構成を模式的に表わしたものである。
図8に示すように、従来例1の無線通信システムAは、親局モデム1(TDDモデム)には、その送信信号の周波数をモデムの周波数f0(2.4GHz帯又は5GHz帯)からミリ波帯の周波数f1へ変換する周波数アップコンバータ装置81が接続され、子局モデム2(TDD方式のモデム)には、アンテナによる受信信号の周波数をミリ波帯の周波数f1からモデムの周波数f0に変換する周波数ダウンコンバータ装置82が接続されている。これにより、無線LAN用のTDDモデムを有効活用し、親局→子局の単一方向のミリ波帯での無線伝送が可能となる。
【0006】
また、他の従来例として、非特許文献1には、5GHz帯無線LANの通信信号を25GHz帯に周波数変換するデュアルバンド無線LANシステムが示されている(従来例2)。
図9は、非特許文献1に示される従来例2に係る無線通信システムBの基本構成を模式的に表わしたものである。
図9に示すように、従来例2の無線通信システムBは、親局側及び子局側の各TDDモデム1、2に、その通信信号(ベースバンド信号)を、送受信の各方向についてベースバンド信号周波数f0(5GHz帯)と準ミリ波帯の周波数f1(25GHz帯)との間で双方向に変換する周波数コンバータ装置91、92が接続されている。さらに、モデム1、2と周波数コンバータ装置91、92の間に、スイッチ93、94を備え、これがTDD通信の送受信タイミングに同期して送信側と受信側の信号経路を切り替える。これにより、無線LAN用のTDDモデムの基本機能を活用し、準ミリ波帯での無線通信が可能となる。
その他、親局側TDDモデムと子局側TDDモデムとの距離が長い、或いは通信経路に障害物がある等の場合に、安定した通信を確保するため、それらTDDモデムの間に通信信号を増幅する中継装置を配置したい場合もある。
【特許文献1】特開2003−168986号公報
【非特許文献1】2003年,電子情報通信学会「通信ソサイエティ大会予稿」,B−5−173
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来例1や前記従来例2の構成では、以下に示すように、モデム間の距離が長い、或いは通信経路中に障害物が存在する等の理由により信号減衰が大きい場合、既存のTDDモデムを有効活用して双方向の通信を安定した通信品質を確保しつつ行うことができないという問題点があった。
例えば、前記従来例1の構成では、下り方向(親局→子局)の無線伝送しかできないという問題点があった。また、単に、TDDモデム1、2の通信信号を分岐して、上り側(子局→親局)について子局側に周波数アップコンバータ装置、親局側にダウンコンバータ装置を設けたとしても、自局の送信信号が受信側に回り込んでノイズとして干渉する問題が生じ、安定した通信品質が得られないという問題点があった。特に、通信距離が長くなるほど、或いは通信経路中の障害物等による信号減衰が大きいほど送信波(無線信号)をより増幅しなければならないが、送信波の電力レベルを増幅するほど、自局の送信信号の回り込みによるノイズが顕著になるという問題点があった。
また、前記従来例2の構成では、TDD通信の送受信タイミングの切り替え信号が必要となるが、通常の無線LAN用のTDDモデムはそのような切り替え信号を外部出力する機能を備えていないため、既存のTDDモデムをそのまま有効活用できないという問題点があった。さらに、送信波の電力レベルが大きい場合(即ち、通信距離が長い或いは障害物等による信号減衰が大きい場合)、スイッチ93、94による信号切り替えの分離度が不十分であると、自局の送信信号が受信側に回り込んで周波数コンバータ装置91、92の受信側経路のアンプが飽和する、或いはスイッチ93、94を逆流してベースバンド信号のSN比を劣化させる等により、安定した通信品質が得られないという問題点があった。
ここで、送信信号と受信信号との経路切替(下り信号と上り信号との経路切替)をサーキュレータを用いて行うことが考えられるが、サーキュレータによる信号の分離度(導通方向の信号と遮断方向の信号との減衰比)は高々20dB(減衰比が1/100)程度であるため、単にサーキュレータを設けるだけでは分離度が十分でなく、また、サーキュレータのような比較的高価な部品は用いない構成とすることがより望ましい。
従って、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、2.4GHz帯や5GHz帯等の既存の普及型TDDモデムをそのまま有効活用したより安価な構成により、準ミリ波帯〜ミリ波帯での双方向通信や、有線又は無線による長距離の或いは通信障害物が存在する場合の双方向通信を安定した通信品質で行うことができる通信システムを構築するための通信中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、時分割多重複信方式(TDD方式)の一のモデムと他のモデムとの間で送受信される通信信号を中継伝送するものであり、前記一のモデム側において前記通信信号を伝送する信号経路(以下、第1の基幹信号経路という)と、その第1の基幹信号経路よりも前記他のモデム側に並列に設けられ、各々前記一のモデムの送信信号及び受信信号の各々を伝送する2つの信号経路(以下、送信信号の経路を第1の信号経路、受信信号の経路を第2の信号経路という)と、前記第1の基幹信号経路からの分岐信号に基づいて前記一のモデムから送信信号が発生中であるか否かを検知する送信信号検知手段と、その検知信号に基づいて、前記第1の基幹信号経路を前記第1の信号経路又は前記第2の信号経路のいずれに接続するかを切り替える手段(以下、第1の経路切替手段という)とを具備する通信中継装置として構成されるものである。
このような構成により、モデム(TDDモデム)相互間で送受信される通信信号の伝送方向ごとに、信号経路が前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とに分離されるので、モデムからTDD通信に同期した信号経路切り替え用の制御信号を取り出す必要がなく、既存のTDDモデムをそのまま有効活用できる。
例えば、前記第1の信号経路及び前記第2の信号経路の各々に伝送信号の周波数を変換する周波数変換手段を設ければ、無線LAN用の2.4GHz帯や5GHz帯のTDDモデムの基本機能を活用し、周波数帯域に余裕のある準ミリ波帯〜ミリ波帯での無線通信が可能となる。
また、前記第1の信号経路及び前記第2の信号経路の各々に、伝送信号を増幅する伝送信号増幅手段を設ければ、長距離の或いは通信障害物が存在する場合の双方向通信を安定した通信品質で行うことができる通信システムを構築することが可能となる。なお、前記周波数変換手段が設けられる場合は、前記伝送信号増幅手段も併せて設けられることが一般的である。
【0009】
ここで、当該通信中継装置を、親局のTDDモデムと子局のTDDモデムとの両方の側に設けた場合、即ち、親局モデムを前記一のモデムとする通信中継装置と、子局モデムを前記一のモデムとする通信中継装置とを設けた場合には、前記第1の信号経路及び前記第2の信号経路を相手局側まで延長し、下り信号(親局の送信信号)と上り信号(親局の受信信号)とを信号経路(有線)を分離したまま中継伝送する構成となる。また、前記第1の信号経路と前記第2の信号経路との各々に個別にアンテナ(送信アンテナと受信アンテナ)を設け、この両アンテナを通じて無線信号によって中継伝送する構成となる。
一方、当該通信中継装置に、前記第1の信号経路及び前記第2の信号経路よりも前記他のモデム側において前記通信信号(送信信号及び受信信号)を伝送する信号経路(以下、第2の基幹信号経路という)を設け、前記送信信号検知手段の検知信号に基づいて、前記第2の基幹信号経路を前記第1の信号経路又は前記第2の信号経路のいずれに接続するかを切り替える手段(以下、第2の経路切替手段という)を設けた構成も考えられる。
この場合、通信信号を有線により中継伝送する場合、当該通信中継装置の構成範囲内以外では、信号経路(有線)を1本にすることができる。また、無線により中継伝送する場合は、前記第2の基幹信号経路に設けられた1つのアンテナにより、送信アンテナと受信アンテナとを兼用することが可能となる。
【0010】
ここで、より具体的な前記送信信号検知手段の構成としては、例えば、前記第1の基幹信号経路からの分岐信号を減衰させる分岐信号減衰手段及びその減衰後の信号を検波しその検波結果を検知信号とする高周波検波器により構成されたものが考えられる。
これにより、前記一のモデムの送信信号(送信バースト信号)の方がその受信信号(受信バースト信号)よりも信号レベル(電圧レベル)が高い場合に、前記送信信号検知手段をごくシンプルかつ安価に実現できる。
一方、前記一のモデムの送信信号の方がその受信信号よりも信号レベルが低い場合には、前記送信信号検知手段の具体的な構成としては、例えば、前記第1の基幹信号経路からの分岐信号を減衰させる分岐信号減衰手段及びその減衰後の信号を検波する高周波検波器(以下、第1の高周波検波器という)と、前記分岐信号を増幅する分岐信号増幅手段及びその増幅後の信号を検波する高周波検波器(以下、第2の高周波検波器という)と、それら第1の高周波検波器及び第2の高周波検波器の両検波信号についてXOR演算を施した信号を前記送信信号の検知信号とするXOR演算手段とにより構成されたものが考えられる。
また、前記送信信号検知手段は、前記第1の基幹信号経路に対して方向性結合器を介して前記分岐信号を得る構成とすれば、伝送方向が異なる送信信号と受信信号とをより確実に分離して検知することが可能となり好適である。
【0011】
ところで、TDDモデムは、送信と受信とを時分割で切り替えるので、前記送信信号検知手段により前記一のモデムからの送信信号が検知されている間は、前記第2の信号経路における伝送信号を増幅する必要がなく、むしろ信号増幅を行うべきでない。同様に、前記送信信号検知手段により前記一のモデムからの送信信号が検知されていない間は、前記第1の信号経路における伝送信号を増幅する必要がなく、むしろ信号増幅を行うべきでない。
そこで、前記送信信号検知手段の検知信号に基づいて、前記伝送信号増幅手段のゲインを切り替える手段(以下、第1のゲイン切替手段という)を設ければ、他方の信号経路からの回り込み信号による信号干渉を防止して、送信信号と受信信号との分離度をより高めることができ、良好な通信品質を確保できる。また、省電力化にもなる。
【0012】
また、前記第1の基幹信号経路からの分岐信号に基づいて、前記一のモデムへの受信信号が発生中であるか否かを検知する受信信号検知手段と、その検知信号に基づいて前記第2の信号経路に設けられた前記伝送信号増幅手段のゲインを切り替える手段(以下、第2のゲイン切替手段という)を設けた構成とすれば、受信信号の発生中にのみ、前記第2の信号経路の信号増幅を十分に行うよう制御することができ、信号干渉と省電力化を図る上でなお好適である。
ここで、前記送信信号検知手段が、前記第1の基幹信号経路からの分岐信号を減衰させる分岐信号減衰手段及びその減衰後の信号を検波しその検波結果を検知信号とする高周波検波器により構成されている場合に、前記受信信号検知手段の具体的構成としては、前記第1の基幹信号経路からの分岐信号を増幅する分岐信号増幅手段と、その増幅後の信号を検波しその検波結果を検知信号とする第2の高周波検波器と、前記第1の高周波検波器及び前記第2の高周波検波器の両検波信号についてXOR演算を施した信号を前記受信信号の検知信号とするXOR演算手段とにより構成されたものが考えられる。
これにより、前記一のモデムの送信信号の方がその受信信号よりも信号レベルが高い場合に、受信信号の発生を検知できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、モデム(TDDモデム)相互間で送受信される通信信号の伝送方向ごとに、信号経路が前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とに分離されるので、モデムからTDD通信に同期した信号経路切り替え用の制御信号を取り出す必要がなく、既存のTDDモデムをそのまま有効活用しつつ、準ミリ波での無線通信や長距離の或いは通信障害物が存在する場合の双方向通信を、安定した通信品質で行うことができる。しかも、サーキュレータ等の高価な部品を用いることなく、より安価な構成により実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態及び実施例について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施の形態及び実施例は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに、図1は本発明の第1実施形態に係る通信中継装置X1の概略構成図、図2は通信中継装置X1における各種信号のタイムチャートを表す図、図3は本発明の第2実施形態に係る通信中継装置X2の概略構成図、図4は通信中継装置X2における各種信号のタイムチャートを表す図、図5は本発明の第3実施形態に係る通信中継装置X3の概略構成図、図6は本発明の第4実施形態に係る通信中継装置X4の概略構成図、図7は通信中継装置X4における各種信号のタイムチャートを表す図、図8は従来の無線通信システムAの基本構成を表す図、図9は従来の無線通信システムBの基本構成を表す図である。
【0015】
<第1実施形態>
まず、図1の概略構成図を用いて、本発明の第1実施形態に係る通信中継装置X1について説明する。
通信中継装置X1を構成要素とする通信システムでは、一方にいわゆる無線LANに用いられる時分割多重複信(TDD)方式のモデムである親局TDDモデムが、他方に同じくTDD方式のモデムである子局TDDモデムが存在し、通信中継装置X1は、これらTDD方式の両局のモデム各々に接続され、両モデム間で送受信される通信信号を無線信号により中継伝送するものである。以下、当該通信中継装置X1が接続される自局側のモデム(一のモデム)をTDDモデム1と表記する。なお、自局側のモデムは、親局TDDモデム或いは子局TDDモデムのいずれである場合も考えられる。
また、図1には図示していないが、自局側のTDDモデム1及び相手局側のTDDモデム各々には、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置が、直接或いはHUB等の通信機器を介して接続され、両局のTDDモデムが、送信信号の変調と受信信号の復調とを行う。
【0016】
図1に示すように、通信中継装置X1は、自局のTDDモデム1(一のモデム)側においてそのTDDモデム1の通信信号(送信信号及び受信信号)を伝送する信号経路R0(以下、基幹信号経路という(第1の基幹信号経路に相当))と、その基幹信号経路R0よりも相手局のTDDモデム側に並列に設けられ、各々自局のTDDモデム1の送信信号及び受信信号の各々を伝送する2つの信号経路R1,R2とを備えている。以下、送信信号を伝送する経路を第1の信号経路R1,受信信号を伝送する経路を第2の信号経路R2という。
ここで、第1の信号経路R1には、その経路を伝送される信号の周波数を既定の周波数幅分上げるアップコンバータ11aが設けられ、第2の信号経路R2には、その経路を伝送される信号の周波数を既定の周波数幅分下げるダウンコンバータ21aが設けられている。ここで、アップコンバータ11a及びダウンコンバータ21aが、周波数変換手段の一例である。
図1に示すアップコンバータ11a及びダウンコンバータ21aは、同一の周波数幅分の変換を行うものである。このため、アップコンバータ11aとダウンコンバータ21aは、周波数混合器11、21(ミキサ)は各々個別に設けられているが、それら周波数混合器11、21各々に入力される基準信号(基準周波数信号)を出力する周波数発振器30は、両コンバータ11a、21aにおいて共用する構成となっている。これにより、周波数発振器の数を減らして構成を簡略化及び小型化し、省電力化している。
また、第1の信号経路R1及び第2の信号経路R2の各々には、伝送信号を増幅する送信アンプ12及び受信アンプ22(伝送信号増幅手段の一例)の各々が設けられている。
さらに、第1の信号経路R1の相手局側端部には、TDDモデム1の送信信号を無線出力する送信アンテナ14が、第2の信号経路R2の相手局側端部には、TDDモデム1の受信信号を無線入力する受信アンテナ24が設けられている。
【0017】
例えば、アップコンバータ11aを2.4GHz若しくは5GHz帯から準ミリ波帯若しくはミリ波帯へ変換するものとし、ダウンコンバータ21aを準ミリ波帯若しくはミリ波帯から2.4GHz帯若しくは5GHz帯へ(同一の周波数幅分)周波数変換するものとすれば、自局側及び相手局側のTDDモデムとして2.4GHz帯或いは5GHz帯の無線LAN用のTDDモデムを有効活用して、周波数帯域割当に余裕がある準ミリ波帯〜ミリ波帯等の他の周波数帯域で無線通信(無線中継)を行うといったことも可能となる。
また、アップコンバータ11aを2.4GHz帯から5GHz帯へ変換するものとし、ダウンコンバータ21aを5GHz帯から2.4GHz帯へ(同一の周波数幅分)周波数変換するものとすれば、自局側のTDDモデム1として2.4GHz帯の無線LAN用のTDDモデムを用い、相手局側のTDDモデムとして5GHz帯の無線LAN用のTDDモデムを用いることができる。
【0018】
また、前記基幹信号経路R0には、その信号経路からの分岐信号に基づいてTDDモデム1から送信バースト信号が発生中であるか否かを検知する送信信号検知回路Z1が接続されている。
この通信中継装置X1における送信信号検知回路Z1は、基幹信号経路R0からの分岐信号を減衰させる可変アッテネータ41(分岐信号減衰手段の一例)と、その減衰後の信号を検波しその検波結果(検波信号Sd1)を、送信バースト信号の検知信号Saとして出力する高周波ディテクタ42(高周波検波器)とにより構成されている。この送信信号検知回路Z1は、比較的低周波数の信号に対応した機器で構成することができ、回路の簡素化、小型化及び低コスト化が図れる。
そして、基幹信号経路R0と第1の信号経路R1及び第2の信号経路R2の間には、送信信号検知回路Z1の検知信号Saが制御信号として入力され、その検知信号Saの状態(ON/OFF)に応じて、基幹信号経路R0を第1の信号経路R1又は第2の信号経路R2のいずれに接続するかを切り替える高周波スイッチ31(第1の経路切替手段の一例)が設けられている。具体的には、送信バースト信号が発生中(検知信号SaがONのとき)に、基幹信号経路R0を第1の信号経路R1に接続し、その他の場合に、基幹信号経路R0を第2の信号経路R2に接続する。
さらに、送信アンプ12及び受信アンプ22各々について、送信信号検知回路Z1の検知信号Sa(送信バースト信号の検知信号)の状態に応じて、各アンプ12,22のゲインを切り替えるFETスイッチ13,23(第1のゲイン切替手段の一例)が設けられている。
【0019】
以下、図2に示す各種信号のタイムチャートを参照しつつ、送信信号検知回路Z1の動作について説明する。
通信中継装置X1では、基幹信号経路R0が直接的にTDDモデム1に接続され、TDDモデム1からの送信バースト信号S1がほとんど減衰せずに基幹信号経路R0に到達する一方、相手局からの受信バースト信号S2は、無線信号(電波)で伝送されてくる信号を受信アンテナ24を介して入力されるものであるため、受信アンプ22で増幅されるものの、基幹信号経路R0において送信バースト信号S1よりも信号レベルが低い。
そこで、図2に示すように、高周波ディテクタ42の入力端(即ち、可変アッテネータ41の出力端)において、送信バースト信号S1のレベルと受信バースト信号S2のレベルとの間のレベル(電圧レベル)が、高周波ディテクタ42の検波の閾値レベルVaとなるように、可変アッテネータ41の減衰レベル調節を予め行っておけば、高周波ディテクタ42の出力信号Sd1は、図2に示すように、送信バースト信号S1の発生中のみON(1)となり、その他の場合はOFF(0)となる。即ち、高周波ディテクタ42の出力信号Sd1が、TDDモデム1から出力される送信バースト信号の検知信号Sa(送信信号検知回路Z1の検知信号)となる。
例えば、基幹信号経路R0と送信信号検知回路Z1との結合度が−6dB、高周波ディテクタ42の最低検出感度が−60dBmであり、基幹信号経路R0における送信バースト信号のレベルが+10dBm程度、受信バースト信号のレベルが−30〜−60dBm程度である場合を考える。
この場合、可変アッテネータ41の減衰量(減衰ゲイン)を−40dB程度(減衰)に設定すれば、送信信号検知回路Z1(高周波ディテクタ42)の検出閾値レベルは−14dBmとなり、送信バースト信号のみを検知することができる。
【0020】
図2に示したような送信バースト信号の検知信号Saが、図1に示すように高周波スイッチ31にその制御信号として入力されることにより、高周波スイッチ31は、TDDモデム1からの送信バースト信号が発生中にのみ、基幹信号経路R0を第1の信号経路R1に接続する状態とし、その他の場合は基幹信号経路R0を第2の信号経路R2に接続する状態とするよう切り替える。その結果、TDDモデムにより送受信される通信信号の伝送方向ごとに、信号経路が第1の信号経路R1と第2の信号経路R2とに分離され、TDDモデム1から信号経路切り替え用の制御信号を取り出す必要がなく、既存のTDDモデム1をそのまま有効活用できる。
さらに、通信中継装置X1では、前述したように、FETスイッチ13,23により、送信バースト信号の検知信号Saに基づいて、送信アンプ12及び受信アンプ22のゲインが切り替えられる。なお、受信側のFETスイッチ23には、送信バースト信号の検知信号Saを反転素子32によりON/OFFが反転された信号が入力される。
より具体的には、送信バースト信号が検知されている間(検知信号SaがONの最中)は、第1の信号経路R1における送信アンプ12が高ゲイン(信号を増幅する状態)に設定されるとともに、第2の信号経路R2における受信アンプ22が低ゲイン(信号を減衰させる或いは増幅しない状態)に設定される。
一方、送信バースト信号が検知されていないときは、送信アンプ12が低ゲイン(信号を減衰させる或いは増幅しない状態)に設定されるとともに、第2の信号経路R2における受信アンプ22が高ゲイン(信号を増幅する状態)に設定される。なお、ここでいう「低ゲインに設定する」ことには、実質的に信号伝送を遮断させることが含まれるものとする。
このように、送信バースト信号の検知信号Saに基づいて各アンプ12,22のゲインを切り替えることにより、他方の信号経路からの回り込み信号による信号干渉を防止して、送信信号と受信信号との分離度をより高めることができ、良好な通信品質を確保できる。また、省電力化にもなる。
また、図1に示す構成により、第1信号経路R1と第2信号経路R2との間の分離度を、40dB(=1/10000)程度以上とすることができる。
【0021】
<第2実施形態>
次に、図3に示す概略構成図を用いて、本発明の第2実施形態に係る通信中継装置X2について説明する。なお、前記通信中継装置X1及びそれを含む通信システムと同じ構成要素については、同じ記号で表している。
以下、通信中継装置X2について、前記通信中継装置X1と異なる構成についてのみ説明する。
通信中継装置X2は、前述した通信中継装置X1の構成に対し、さらに、第1の信号経路R1に設けられ、その伝送信号の強度(電圧レベル)を調節する送信側可変利得アンプ15と、第2の信号経路R2に設けられ、その伝送信号の強度を調節する受信側可変利得アンプ25と、TDDモデム1の受信バースト信号を検知する受信信号検知回路Z2とを加えた構成を有するものである。
ここで、送信側可変利得アンプ15は、送信信号検知回路Z1の検知信号Saに応じてそのゲインが切り替わる。具体的には、送信側可変利得アンプ15のゲインは、検知信号SaがONである間(送信バースト信号が発生中)は高ゲインに設定され、検知信号SaがOFFである間は低ゲインに設定される。即ち、送信バースト信号の発生中にのみ高ゲインに設定される。
また、受信側可変利得アンプ25は、受信信号検知回路Z2の検知信号Sbに応じてそのゲインが切り替わる。具体的には、受信側可変利得アンプ25のゲインは、検知信号SbがONである間(受信バースト信号が発生中)は高ゲインに設定され、検知信号SbがOFFである間は低ゲインに設定される。即ち、受信バースト信号の発生中にのみ高ゲインに設定される。この受信側可変利得アンプ25が備えるゲイン切り替え回路(不図示)が、第2のゲイン切替手段の一例である。
これにより、FETスイッチ13,23による送信アンプ12及び受信アンプ22のゲイン切り替えと同様に、送信信号と受信信号との分離度をより高めることができ、良好な通信品質を確保できる。また、省電力化にもなる。特に、受信側可変利得アンプ25が、TDDモデム1の受信信号が発生中にのみ高ゲインに設定されるので、送信信号と受信信号との分離度をより高めることができる。
なお、受信側可変利得アンプ25は、受信バースト信号について補助的なレベル制御を行うためのものである。
【0022】
また、通信中継装置X2における受信信号検知回路Z2は、図3に示すように、基幹信号経路R0(第1の基幹信号経路)からの分岐信号を増幅する可変利得アンプ43(分岐信号増幅手段の一例)と、その増幅後の信号を検波してその検波結果を検知信号Sd2とする高周波ディテクタ44(第2の高周波検波器の一例)と、送信信号検知回路Z1を構成する高周波ディテクタ42(第1の高周波検波器の一例)及び受信信号検知回路Z2を構成する高周波ディテクタ44の両検波信号Sd1、Sd2についてXOR演算を施した信号を受信バースト信号の検知信号Sbとして出力するXOR演算器45とにより構成されている。
【0023】
以下、図4に示す各種信号のタイムチャートを参照しつつ、送信信号検知回路Z1及び受信信号検知回路Z2の動作について説明する。
通信中継装置X2も、前述した通信中継装置X1と同様に、基幹信号経路R0が直接的にTDDモデム1に接続され、基幹信号経路R0において送信バースト信号S1よりも受信バースト信号S2の方が信号レベルが低い。
ここで、高周波ディテクタ42の入出力端の信号レベルについては、図2に示したのと同様であるので、ここでは説明を省略する。
一方、図4に示すように、もう一方の高周波ディテクタ44の入力端(即ち、可変利得アンプ43の出力端)において、受信バースト信号S2のレベルと通信信号がないときの信号レベルとの間のレベル(電圧レベル)が、高周波ディテクタ44の検波の閾値レベルVbとなるように、可変利得アンプ43の増幅レベル調節を予め行っておけば、高周波ディテクタ44の出力信号Sd2は、図4に示すように、送信バースト信号S1及び受信バースト信号S2各々の発生中のみON(1)となり、その他の場合はOFF(0)となる。
このため、両高周波ディテクタ42,44の出力信号Sd1,Sd2のXOR演算を行うXOR演算器45の出力信号は、受信バースト信号S2の発生中のみON(1)となり、その他の場合はOFF(0)となる。
即ち、XOR演算器45の出力信号が、TDDモデム1へ入力される受信バースト信号の検知信号Sb(受信信号検知回路Z2の検知信号)となる。
図3に示すような構成により、送信バースト信号S1及び受信バースト信号S2を、ごく簡易な回路構成によって検知することが可能となる。
例えば、基幹信号経路R0と送信信号検知回路Z1との結合度が−6dB、高周波ディテクタ42の最低検出感度が−60dBmであり、基幹信号経路R0における送信バースト信号のレベルが+10dBm程度、受信バースト信号のレベルが−30〜−60dBm程度である場合を考える。
この場合、可変アッテネータ41の減衰量(減衰ゲイン)を−40dB程度に、可変利得アンプ43のゲインを+20dB(増幅)に設定すれば、送信信号検知回路Z1(高周波ディテクタ42)及び受信信号検知回路Z2(高周波ディテクタ44)各々の検出閾値レベルは−14dBm及び−74dBmとなり、高周波ディテクタ42では送信バースト信号のみを、高周波ディテクタ44では送信バースト信号及び受信バースト信号の両方を検知することができる。
【0024】
<第3実施形態>
次に、図5に示す概略構成図を用いて、本発明の第3実施形態に係る通信中継装置X3について説明する。なお、前記通信中継装置X1、X2及びそれを含む通信システムと同じ構成要素については、同じ記号で表している。
以下、通信中継装置X3について、前記通信中継装置X2と異なる構成についてのみ説明する。
通信中継装置X3は、前述した通信中継装置X2の構成に対し、さらに、第1の信号経路R1と前記送信信号検知回路Z1及び前記受信信号検知回路Z2との間に接続された方向性結合器46を加えた構成を有するものである。
即ち、通信中継装置X3では、送信信号検知回路Z1及び受信信号検知回路Z2の各々が、基幹信号経路R0(第1の基幹信号経路)から方向性結合器46を介して分岐信号を得るよう構成され、TDDモデム1からの送信バースト信号の分岐信号が送信信号検知回路Z1に流れ、それと伝送方向が異なる受信バースト信号の分岐信号が受信信号検知回路Z2に流れるよう構成されている。
これにより、可変アッテネータ41及び可変利得アンプ43各々のゲイン調節の際に、受信バースト信号の分岐信号がどのようなレベルで送信信号検知回路Z1の高周波ディテクタ42に入力されるか、或いは送信バースト信号の分岐信号がどのようなレベルで受信信号検知回路Z2の高周波ディテクタ44に入力されるかを考慮する必要がなくなり、ゲイン調節の自由度が高まる。例えば、可変利得アンプ43各々のゲインを高く設定し過ぎることにより、増幅された受信バースト信号の分岐信号により高周波ディテクタ44が破壊されてしまう、といったことを考慮する必要がなくなる。
その結果、伝送方向が異なる送信バースト信号と受信バースト信号とをより確実に分離して検知できるよう、可変アッテネータ41及び可変利得アンプ43各々のゲインを設定することが可能となる。
【0025】
<第4実施形態>
次に、図6に示す概略構成図を用いて、本発明の第4実施形態に係る通信中継装置X4について説明する。なお、前記通信中継装置X1〜X3及びそれを含む通信システムと同じ構成要素については、同じ記号で表している。
以下、通信中継装置X4について、前記通信中継装置X1と異なる構成についてのみ説明する。
通信中継装置X4は、前述した通信中継装置X1の構成に対し、アップコンバータ11a、ダウンコンバータ21aが除かれ、第2の基幹信号経路R3及び第2の高周波スイッチ33、並びに前記通信中継装置X2が備えるものと同機能のの送信側可変利得アンプ15が加えられ、さらに、送信信号検知回路Z1がこれと同じ送信バースト信号検知機能を有する送信信号検知回路Z1’に置き換えられた構成を有するものである。なお、便宜上、通信中継装置X4における基幹信号経路R0及び高周波スイッチ31の各々を、以下、第1の基幹信号経路及び第1の高周波スイッチと表記する。
ここで、第2の基幹信号経路R3は、第1の信号経路R1及び第2の信号経路R2よりもTDDモデム1の相手局となるTDDモデム2側において、TDDモデム1の送信信号及び受信信号(通信信号)を伝送する信号経路である。
また、第2の高周波スイッチ33は、送信信号検知回路Z1’の検知信号Saが入力され、その検知信号Saの状態(ON/OFF)がに応じて、第2の基幹信号経路R3を第1の信号経路R1又は第2の信号経路R2のいずれに接続するかを切り替えるスイッチである(第2の経路切替手段の一例)。
【0026】
この通信中継装置X4は、相互に通信を行うTDDモデム1,2の通信経路に配置され、通信信号をその伝送方向ごとに分離してそれぞれ増幅して中継伝送するものである。なお、図6は、親局側のTDDモデムを自局側のTDDモデム1とし、子局側のTDDモデムを相手局側のTDDモデム2とした場合の例を示すが、その逆の接続関係とした通信システムも考えられる。
ここで、自局のTDDモデム1との信号伝送形態は、第1の基幹信号経路R0にアンテナ35を設け、このアンテナ35を通じてTDDモデム1のアンテナ1aとの間で通信信号を無線信号により伝送する形態と、TDDモデム1と有線接続して通信信号を伝送する形態とが考えられる。
同様に、相手局のTDDモデム2との信号伝送形態は、第2の基幹信号経路R3にアンテナ34を設け、このアンテナ34とTDDモデム2のアンテナ2aとを通じて通信信号を無線信号により伝送する形態と、TDDモデム2と有線接続して通信信号を伝送する形態とが考えられる。
【0027】
この通信中継装置X4では、TDDモデム1からの送信バースト信号S1は、無線信号の状態を経て大きく減衰した状態で第1の基幹信号経路R0へ到達する一方、相手局からの受信バースト信号S2は、受信アンプ22により増幅されて第1の基幹信号経路R0に到達するため、第1の基幹信号経路R0おいて、送信バースト信号S1よりも受信バースト信号S2の方が信号レベルが高い。
そこで、図6に示すように、通信中継装置X4における送信信号検知回路Z1’は、第1の基幹信号経路R0からの分岐信号を減衰させる可変アッテネータ41’(分岐信号減衰手段の一例)と、その減衰後の信号を検波する第1の高周波ディテクタ42’と、第1の基幹信号経路R0からの分岐信号を増幅する可変利得アンプ43’(分岐信号増幅手段の一例)と、その増幅後の信号を検波する第2の高周波ディテクタ44’と、第1の高周波ディテクタ42’及び第2の高周波ディテクタ44’の両検波信号Sd1’,Sd2’についてXOR演算を施した信号を送信バースト信号の検知信号SaとするXOR演算器45’とにより構成されている。
【0028】
以下、図7に示す各種信号のタイムチャートを参照しつつ、送信信号検知回路Z1’の動作について説明する。
前述したように、通信中継装置X4では、第1の基幹信号経路R0において送信バースト信号S1よりも受信バースト信号S2の方が信号レベルが高い。
ここで、高周波ディテクタ42’の入力端の信号レベルは、図4に示した高周波ディテクタ42の入力端の信号レベルと比較した場合、送信バースト信号と受信バースト信号とのレベル関係が逆となる。このため、図7に示すように、高周波ディテクタ42’の入力端(即ち、可変アッテネータ41’の出力端)において、受信バースト信号S2のレベルと送信バースト信号S1のレベルとの間のレベル(電圧レベル)が、第1の高周波ディテクタ42’の検波の閾値レベルVaとなるように、可変アッテネータ41’の減衰量調節を予め行っておけば、高周波ディテクタ42’の出力信号Sd1’は、受信バースト信号S2の発生中のみON(1)となり、その他の場合はOFF(0)となる。
【0029】
一方、図7に示すように、もう一方の高周波ディテクタ44’の入力端(即ち、可変利得アンプ43’の出力端)において、送信バースト信号S1のレベルと通信信号がないときの信号レベルとの間のレベル(電圧レベル)が、高周波ディテクタ44’の検波の閾値レベルVbとなるように、可変利得アンプ43’の増幅レベル調節を予め行っておけば、高周波ディテクタ44’の出力信号Sd2’は、送信バースト信号S1及び受信バースト信号S2各々の発生中のみON(1)となり、その他の場合はOFF(0)となる。
このため、両高周波ディテクタ42’,44’の出力信号Sd1’,Sd2’のXOR演算を行うXOR演算器45’の出力信号は、送信バースト信号S1の発生中のみON(1)となり、その他の場合はOFF(0)となる。
即ち、XOR演算器45’の出力信号が、TDDモデム1から出力される送信バースト信号の検知信号Sa(送信信号検知回路Z1’の検知信号)となる。
図6に示すような構成により、送信バースト信号S1をごく簡易な回路構成によって検知することが可能となる。
【0030】
以上示した第1〜第3実施形態では、アップコンバータ11aとダウンコンバータ21aとで、同じ周波数幅分の変換を行う通信中継装置X1〜X3について示したが、これに限るものではない。
アップコンバータ11aとダウンコンバータ21aとで、異なる周波数幅分の変換を行う場合は、各々発振周波数が異なる周波数発振器を個別に設ければよい。この場合、信号伝送方向ごとに異なる周波数で無線通信を行うことが可能となる。
また、前記通信中継装置X1〜X3では、便宜上、アップコンバータ11a及びダウンコンバータ21aは一段変換としているが、二段以上重ねて(直列的に)変換する構成であってもよい。
また、前述した第4実施形態の通信中継装置X4における第1の信号経路R1及び第2の信号経路R2の各々に、アップコンバータ11a及びダウンコンバータ21aの各々を設けた構成も考えられる。
また、前述した実施形態では、基幹信号経路R0からの分岐信号を減衰させる手段として、可変アッテネータ(減衰器)を用いたが、この他、可変利得アンプを用いて、そのゲインを減衰側に設定した構成も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、通信中継装置への利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通信中継装置X1の概略構成図。
【図2】通信中継装置X1における各種信号のタイムチャートを表す図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る通信中継装置X2の概略構成図。
【図4】通信中継装置X2における各種信号のタイムチャートを表す図。
【図5】本発明の第3実施形態に係る通信中継装置X3の概略構成図。
【図6】本発明の第4実施形態に係る通信中継装置X4の概略構成図。
【図7】通信中継装置X4における各種信号のタイムチャートを表す図。
【図8】従来の無線通信システムAの基本構成を表す図。
【図9】従来の無線通信システムBの基本構成を表す図。
【符号の説明】
【0033】
1、2…TDDモデム
11a…アップコンバータ
12…送信アンプ
13、23…FETスイッチ
14…送信アンテナ
15…送信側可変利得アンプ
21a…ダウンコンバータ
22…受信アンプ
24…受信アンテナ
25…受信側可変利得アンプ
34、35…アンテナ
41、41’…可変アッテネータ
42、44、42’、44’…高周波ディテクタ
43、43’…可変利得アンプ
45、45’…XOR演算器
X1〜X4…通信中継装置
Z1、Z1’…送信信号検知回路
Z2…受信信号検知回路
R0、R3…基幹信号経路
R1…第1の信号経路
R2…第2の信号経路
Sa…送信バースト信号の検知信号
Sb…受信バースト信号の検知信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時分割多重複信方式の一のモデムと他のモデムとの間で送受信される通信信号を中継伝送する通信中継装置であって、
前記一のモデム側において前記通信信号を伝送する第1の基幹信号経路と、
前記第1の基幹信号経路よりも前記他のモデム側に並列に設けられ、各々前記一のモデムの送信信号及び受信信号の各々を伝送する第1の信号経路及び第2の信号経路と、
前記第1の基幹信号経路からの分岐信号に基づいて前記一のモデムから送信信号が発生中であるか否かを検知する送信信号検知手段と、
前記送信信号検知手段の検知信号に基づいて、前記第1の基幹信号経路を前記第1の信号経路又は前記第2の信号経路のいずれに接続するかを切り替える第1の経路切替手段と、
を具備してなることを特徴とする通信中継装置。
【請求項2】
前記第1の信号経路及び前記第2の信号経路よりも前記他のモデム側において前記通信信号を伝送する第2の基幹信号経路と、
前記送信信号検知手段の検知信号に基づいて、前記第2の基幹信号経路を前記第1の信号経路又は前記第2の信号経路のいずれに接続するかを切り替える第2の経路切替手段と、
を具備してなる請求項1に記載の通信中継装置。
【請求項3】
前記送信信号検知手段が、前記第1の基幹信号経路からの分岐信号を減衰させる分岐信号減衰手段及びその減衰後の信号を検波しその検波結果を検知信号とする高周波検波器により構成されてなる請求項1又は2のいずれかに記載の通信中継装置。
【請求項4】
前記送信信号検知手段が、前記第1の基幹信号経路からの分岐信号を減衰させる分岐信号減衰手段及びその減衰後の信号を検波する第1の高周波検波器と、前記分岐信号を増幅する分岐信号増幅手段及びその増幅後の信号を検波する第2の高周波検波器と、前記第1の高周波検波器及び前記第2の高周波検波器の両検波信号についてXOR演算を施した信号を前記送信信号の検知信号とするXOR演算手段と、により構成されてなる請求項1又は2のいずれかに記載の通信中継装置。
【請求項5】
前記送信信号検知手段が、前記第1の基幹信号経路に対して方向性結合器を介して前記分岐信号を得るものである請求項1〜4のいずれかに記載の通信中継装置。
【請求項6】
前記第1の信号経路及び前記第2の信号経路の各々に伝送信号の周波数を変換する周波数変換手段が設けられてなる請求項1〜4のいずれかに記載の通信中継装置。
【請求項7】
前記第1の信号経路及び前記第2の信号経路の各々に伝送信号を増幅する伝送信号増幅手段が設けられてなる請求項1〜6のいずれかに記載の通信中継装置。
【請求項8】
前記送信信号検知手段の検知信号に基づいて前記伝送信号増幅手段のゲインを切り替える第1のゲイン切替手段を具備してなる請求項7に記載の通信中継装置。
【請求項9】
前記第1の基幹信号経路からの分岐信号に基づいて前記一のモデムへの受信信号が発生中であるか否かを検知する受信信号検知手段と、
前記受信信号検知手段の検知信号に基づいて前記第2の信号経路に設けられた前記伝送信号増幅手段のゲインを切り替える第2のゲイン切替手段を具備してなる請求項7又は8のいずれかに記載の通信中継装置。
【請求項10】
前記送信信号検知手段が、前記第1の基幹信号経路からの分岐信号を減衰させる分岐信号減衰手段及びその減衰後の信号を検波しその検波結果を検知信号とする第1の高周波検波器により構成されている場合に、
前記受信信号検知手段が、前記第1の基幹信号経路からの分岐信号を増幅する分岐信号増幅手段と、その増幅後の信号を検波しその検波結果を検知信号とする第2の高周波検波器と、前記第1の高周波検波器及び前記第2の高周波検波器の両検波信号についてXOR演算を施した信号を前記受信信号の検知信号とするXOR演算手段と、により構成されてなる請求項9に記載の通信中継装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−116340(P2007−116340A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304388(P2005−304388)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】