通信制御装置
【課題】適用されるネットワークが異なる場合であっても、アプリケーションソフトや通信制御用ソフトなどの変更が僅かで済み、それらソフトの汎用性を向上すること。
【解決手段】ネットワーク層3A,3Bにおいて、ネットワーク固有IDが共通IDに変換される。このため、データリンク層2A,2Bにて受領されたネットワーク固有IDが付与された受信信号、及びアプリケーション層5において生成され、共通IDが付与された送信信号が、ネットワーク層3A,3B、ルーター層4、及びアプリケーション層5間において、共通IDにて識別される信号として伝送される。この共通IDは、適用されるネットワークの種別や構成などが異なる場合であっても、通信制御装置において、変更されることなく共通して使用され得るように定められたものである。従って、アプリケーションソフトや通性制御ソフトの仕様を概ね共通化することができる。
【解決手段】ネットワーク層3A,3Bにおいて、ネットワーク固有IDが共通IDに変換される。このため、データリンク層2A,2Bにて受領されたネットワーク固有IDが付与された受信信号、及びアプリケーション層5において生成され、共通IDが付与された送信信号が、ネットワーク層3A,3B、ルーター層4、及びアプリケーション層5間において、共通IDにて識別される信号として伝送される。この共通IDは、適用されるネットワークの種別や構成などが異なる場合であっても、通信制御装置において、変更されることなく共通して使用され得るように定められたものである。従って、アプリケーションソフトや通性制御ソフトの仕様を概ね共通化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに対する信号の通信機能が階層化された通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、インターネット等に対して複数の外部接続を持つマルチホーム接続の環境において、実際のデータ転送状況に応じて動的に通信経路を選択する通信方法が示されている。
【0003】
また、特許文献2には、車両におけるサブネットワークを接続するゲートウェイユニットとして、2つのサブネットワーク間でメッセージをルーティングするモジュールソフトウェアゲートウェイを設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−60956号公報
【特許文献2】特表2006―506862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、車両における各種の制御ECUをネットワーク接続した車内LANなどのネットワーク環境においては、制御ECUの種類や、通信される信号の種類が、車両の種別などにより異なることが多い。このため、通信される信号に対して、その種類に応じたIDを付与して信号を識別するようにした場合、ネットワークごとに信号のIDも異なるものになり易い。
【0006】
従って、その信号を実際に使用するアプリケーションソフトや、その信号をネットワークを介して送受信するための通信制御用ソフトも、適用されるネットワークに依存した部分が多くなり、汎用性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、適用されるネットワークが異なる場合であっても、アプリケーションソフトや通信制御用ソフトなどの変更が僅かで済み、それらソフトの汎用性を向上することが可能な通信制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の通信制御装置は、ネットワークに対する信号の通信機能が階層化され、その階層化された通信機能には、少なくとも、ネットワークから信号を受領するデータリンク層と、各アプリケーションに依存した信号の受信管理を行う複数のアプリケーション層と、データリンク層とアプリケーション層との間で信号を伝達するネットワーク層とが含まれ、
データリンク層により受領される信号には、その信号の種類に応じて、ネットワークに関して取り決められたネットワーク固有IDが付与されており、
ネットワーク層は、データリンク層により受領された信号のネットワーク固有IDを、通信制御装置として共通の共通IDに変換する受信用ID変換テーブルを有し、その受信用ID変換テーブルに従い、ネットワーク固有IDを共通IDに変換するものであり、
さらに、ネットワーク層とアプリケーション層との間に、ネットワーク層により変換された共通IDに基づき、その信号が受信されるべきアプリケーション層へ、当該信号をルーティングするルーター層を設けたことを特徴とする。
【0009】
このように、請求項1に記載の通信制御装置では、ネットワーク層において、ネットワーク固有IDが共通IDに変換される。このため、データリンク層にて受領された、ネットワーク固有IDが付与された信号は、ネットワーク層、ルーター層、及びアプリケーション層間においては、共通IDにて識別される信号として伝送されることになる。この共通IDは、適用されるネットワークの種別や構成などが異なる場合であっても、通信制御装置において、変更されることなく共通して使用され得るように定められたものである。従って、アプリケーション層をなす、各アプリケーションを実現するためのアプリケーションソフトや、通信制御用ソフトにより実現されるルーター層に関しては、共通IDにより識別される信号を扱うだけであるため、それらソフトの仕様を概ね共通化することができる。その結果、それらソフトの汎用性を向上することができるようになる。
【0010】
請求項2に記載したように、ネットワーク層の受信用ID変換テーブルは、1つのネットワーク固有IDに対して、複数の共通IDが対応するように定められた対応関係を含むものであっても良い。受信用ID変換テーブルにおいて、上記のような対応関係を定めることにより、あるネットワーク固有IDが付与された信号が、そのネットワーク固有IDに対応する複数の共通IDに従って、複数のアプリケーション層によって受信されるようになる。信号によっては、複数のアプリケーションで必要とされる場合もあるためである。
【0011】
請求項3に記載したように、ネットワーク層、及びアプリケーション層には、通信制御装置として共通の層IDがそれぞれ定められており、信号の共通IDには、当該信号を受信したネットワーク層の層ID及びその信号が受信されるべきアプリケーション層の層IDが組み込まれ、かつ各信号の種別に応じて、各信号の共通IDをユニークにするためのインデックス部分が含まれるように、ID変換テーブルが定められていることが好ましい。このようにすれば、例えばネットワーク層の数や、アプリケーション層の数が変化した場合などにも、共通IDの設定を簡単に行うことができる。
【0012】
請求項4に記載したように、ネットワーク層は、異なるネットワークに接続される第1ネットワーク層と第2ネットワーク層とを含み、第1ネットワーク層及び第2ネットワーク層の少なくとも一方の受信用ID変換テーブルには、所定のネットワーク固有IDに対して、一方のネットワーク層を受信元とし、他方のネットワーク層を受信先として指示する共通IDが定められていても良い。このような共通IDを設定することにより、第1及び第2のネットワーク層及びルーター層を介して、所定のネットワーク固有IDが付与された信号を、異なるネットワーク間でゲートウェイさせることができる。
【0013】
請求項5に記載したように、各アプリケーション層の少なくとも1つは、ネットワークに信号を送出する必要が生じたとき、その信号の種類に応じた共通IDを当該信号に付与し、ルーター層は、その信号に付与された共通IDに基づき、該当するネットワーク層に当該信号をルーティングし、ネットワーク層は、信号に付与された共通IDを、ネットワーク固有IDに変換する送信用ID変換テーブルを有し、その送信用ID変換テーブルに従い、共通IDをネットワーク固有IDに変換して、データリンク層に与え、データリンク層は、ネットワーク固有IDが付与された信号をネットワークに送出することが好ましい。このような構成を採用することにより、アプリケーション層、ルーター層、及びネットワーク層間において、信号を識別するために共通IDを用いながら、ネットワークに対しては、ネットワーク固有IDが付与された信号を送出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態による通信制御装置の構成を示す構成図である。
【図2】それぞれのネットワーク層3A,3B及びアプリケーション層5を特定するための層IDを示す図である。
【図3】(a)は、受信信号の共通IDの構造を示す図であり、(b)は、送信信号の共通IDの構造を示す図である。
【図4】ネットワークAに対応するネットワーク層3Aが保持する受信信号用ID変換テーブルの一例を示す図である
【図5】ネットワークBに対応するネットワーク層3Bが保持する受信信号用ID変換テーブルの一例を示す図である。
【図6】ネットワークA,Bから信号を受信する際のネットワーク層3A,3Bにおける処理を示すフローチャートである。
【図7】受信信号に対する、ルーター層4におけるルーティング処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】各アプリケーション層5及びネットワーク層3A,3Bの層IDと、ルーター層4から各アプリケーション層5及びネットワーク層3A,3Bへ受信信号を引き渡すための関数との対応関係を示す受信通知先層IDテーブルの一例を示す図である。
【図9】送信信号に対する、ルーター層4におけるルーティング処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】ネットワーク層3A,3Bの層IDと、ルーター層4から各ネットワーク層3A,3Bへ送信信号を引き渡すための関数との対応関係を示す送信要求先層IDテーブルの一例を示す図である。
【図11】ネットワークAに対応するネットワーク層3Aが保持する送信信号用ID変換テーブルの一例を示す図である。
【図12】ネットワークBに対応するネットワーク層3Bが保持する送信信号用ID変換テーブルの一例を示す図である。
【図13】送信信号に対するID変換処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態による通信制御装置は、例えば車両における各種の制御ECU等をネットワーク接続した車内LANなどの、閉じたネットワーク環境において適用されるものである。
【0016】
図1において、物理層1A,1Bは、ネットワークケーブル等、実際に電気的に信号を伝送する媒体に相当するものである。そして、物理層1A及び物理層1Bは、別個のサブネットワークであるネットワークA及びネットワークBをそれぞれ構成している。なお、サブネットワークであるネットワークA,Bでは、例えばCANやLINなどの通信プロトコルに従って信号の通信が行われる。
【0017】
データリンク層2A,2Bは、それぞれ、物理層1A,1B、すなわちネットワークA,Bに接続され、それらネットワークA,Bを伝送される信号を受領したり、それらネットワークA,Bに信号を送出したりするためのものである。このデータリンク層2A,2Bは、図1に示すように、ソフトウエア(データリンク層ソフトウエアモジュール)によって実現される。
【0018】
ネットワークA,Bには、図1に示すような通信制御装置が複数接続され、それら通信制御装置間で、センサ検出信号や、所定の演算結果を示す信号、制御状態を示す信号等、各種の信号が送受信される。それら各種の信号がネットワークA,Bを伝送される段階では、各信号の種別に応じたIDであるネットワーク固有IDが、各信号に付与されている。このネットワーク固有IDは、ネットワークの種別や構成などにより、各ネットワークでそれぞれ独自に定められるものである。データリンク層2A,2Bは、そのネットワーク固有ID信号を手掛かりとして、ネットワークA,Bにおいて伝送される信号の中から、必要な信号を選択して受領する受信処理を行う。さらに、データリンク層2A,2Bは、後述するアプリケーション層5において生成され、ネットワーク層3A,3Bにてネットワーク固有IDが付与された信号を、ネットワークA,Bに送出する送信処理を行う。
【0019】
物理層1A,1Bとデータリンク層2A,2Bとは、それぞれ2系統のチャンネルCH1,CH2を介して接続されている。そして、データリンク層2A,2Bにおいて、受信処理或いは送信処理する信号のネットワーク固有IDに応じて、いずれのチャンネルCH1,CH2にて、該当する信号を受信したり、送信したりするかが予め定められている。
【0020】
ネットワーク層3A,3Bは、それぞれ、データリンク層2A,2Bと接続されている。このネットワーク層3A,3Bも、データリンク層2A,2Bと同様に、ソフトウエア(ネットワーク層ソフトウエアモジュール)によって実現される。
【0021】
ネットワーク層3A,3Bは、データリンク層2A,2Bにて信号が受信されたとき、その受信信号を受け取り、受信信号に付されているネットワーク固有IDを、通信制御装置として共通するように定められた共通IDに変換する受信信号ID変換処理を行う。この共通IDは、同じネットワーク内に設けられた通信制御装置ばかりでなく、適用されるネットワークが異なる通信制御装置においても、共通して用いられるものである。このID変換処理が施された受信信号は、後述するルーター層4に与えられる。
【0022】
さらに、ネットワーク層3A,3Bは、アプリケーション層5において生成された、送信されるべき信号を受け取ったとき、その信号に付与されている共通IDをネットワーク固有IDに変換する送信信号ID変換処理を行う。このID変換処理が施され、ネットワーク固有IDが付与された送信信号は、データリンク層2A,2Bに与えられ、データリンク層2A,2Bにより、ネットワークA,Bに送出される。
【0023】
ネットワーク層3A、3Bは、上述した受信信号ID変換処理及び送信信号ID変換処理を実行するために、各信号についてネットワーク固有IDと共通IDとの対応関係を示す受信信号用ID変換テーブル及び送信信号用ID変換テーブルを有している。なお、共通ID、受信信号用ID変換テーブル及び送信信号用ID変換テーブルについては、後に詳しく説明する。
【0024】
ルーター層4は、ネットワーク層3A,3Bとアプリケーション層5との間に位置し、ネットワーク層3A,3Bとアプリケーション層5間における信号の伝送を制御するものである。このルーター層4も、データリンク層2A,2B、及びネットワーク層3A,3Bと同様にソフトウエア(ルーター層ソフトウエアモジュール)により実現される。そして、データリンク層2A,2B、ネットワーク層3A,3B及びルーター層4をなすソフトウエアが、通信制御用ソフトとなる。
【0025】
具体的には、ルーター層4は、受信信号に関してネットワーク層3A,3Bにおいて受信信号ID変換処理が実行されると、その変換された共通IDに基づき、その信号が受信されるべきアプリケーション層5へ、当該信号をルーティングするルーター機能を備えている。詳しくは後述するが、共通ID内には、その信号が受信されるべきアプリケーション層5を示す層IDが含まれている。ルーター層4は、その層IDを参照することにより、ルーティング先のアプリケーション層5を特定する。
【0026】
また、ルーター層4は、送信信号が、アプリケーション層5において生成されると、その送信信号に付与されている共通IDに基づき、その送信信号に関して、ID変換等の送信のための処理が行われるべきネットワーク層3A,3B及びデータリンク層2A,2Bに向けて、送信信号をルーティングする機能も備えている。この送信信号のルーティングにおいても、ルーター層4は、共通ID内に含まれている、送信のための処理が行われるべきネットワーク層3A,3Bを示す層IDを参照し、ルーティング先のネットワーク層3A,3Bを特定する、
アプリケーション層5は、各アプリケーションに依存した信号の送受信管理を行うべく、複数設けられている。すなわち、各アプリケーションにおいて、それぞれのアプリケーションを実行するために必要となる受信信号は全体として異なり、また、生成する送信信号の種類も異なるので、アプリケーションごとに、それぞれアプリケーション層5が設定されている。なお、このアプリケーション層5も、他の層と同様に、ソフトウエア(アプリケーション層ソフトウエアモジュール)によって実現される。
【0027】
次に、共通IDについて説明する。まず、上述したネットワーク層3A,3B及び各アプリケーション層5には、図2に示すように、それぞれを特定するための層IDが定められている。なお、図2においては、各層IDを16進法にて示している。また、図2には、2個のネットワーク層3A,3B、及び3個のアプリケーション層5に対して、層IDを定めた例を示しているが、ネットワーク層3A,3Bやアプリケーション層5の数は、この例に制限されるものではない。特に、適用されるネットワークが異なる場合には、ネットワーク層3A,3Bやアプリケーション層5の数が異なることは当然に起こりえることである。
【0028】
本実施形態では、上述したネットワーク層3A,3Bの層ID及びアプリケーション層5の層IDを利用して、共通IDを定めている。以下、具体例について説明する。
【0029】
まず、図3(a)は、受信信号の共通IDの構造を示す図である。受信信号の共通IDは、受信信号のID変換処理を行ったネットワーク層の層ID、その受信信号が受信されるべきアプリケーション層5の層ID、及びその受信信号を他の種類の受信信号と識別するためのインデックスを組み合わせて構成される。
【0030】
また、図3(b)は、送信信号の共通IDの構造を示すものである。送信信号の共通IDは、その送信信号を生成したアプリケーション層5の層ID、その送信信号に対してID変換処理を実行すべきネットワーク層3A,3Bの層ID、及びその送信信号を他の種類の送信信号と識別するためのインデックスを組み合わせて構成される。
【0031】
一例として、上述したネットワーク層3A,3Bの層ID及びアプリケーション層5の層IDは、それぞれ1byteのデータ長を有し、インデックスは2byteのデータ長を有する。従って、共通IDのデータ長は、4byteとなる。そして、図3(a)に示すように、例えば、受信信号の共通IDの1byte目はネットワーク層の層ID、2byte目はアプリケーション層5の層ID、3〜4byte目にインデックスが配置される。また、図3(b)に示すように、例えば、送信信号の共通IDの1byte目はアプリケーション層5の層ID、2byte目はネットワーク層の層ID、3〜4byte目にインデックスが配置される。
【0032】
このように、共通ID内に、受信信号が受信されるべきアプリケーション層5の層ID、あるいは送信信号に対してID変換処理を実行すべきネットワーク層3A,3Bの層IDを組み入れることにより、ルーター層4は、それらの層IDを参照して、ルーティング先を特定することが可能となる。また、ネットワーク層3A,3Bの層ID及びアプリケーション層5の層IDを利用して共通IDを定めることで、適用されるネットワークが異なり、例えばネットワーク層3A,3Bの数や、アプリケーション層5の数が変化した場合などにも、共通IDの設定を簡単に行うことができる。
【0033】
次に、受信信号用ID変換テーブルについて説明する。図4は、ネットワークAに対応するネットワーク層3Aが保持する受信信号用ID変換テーブルの一例を示すものであり、図5は、ネットワークBに対応するネットワーク層3Bが保持する受信信号用ID変換テーブルの一例を示すものである。
【0034】
図4及び図5に示すように、受信信号用ID変換テーブルにおいては、ネットワークA,Bの伝送段階において各信号に付与されるネットワーク固有IDに対応する共通IDが規定されている。各ネットワーク層3A,3Bは、この受信信号用ID変換テーブルに規定された対応関係に従って、ネットワーク固有IDを共通IDに変換する。なお、上述したように、データリンク層2A,2Bにおいて、ネットワーク固有IDに応じて、いずれのチャンネルCH1,CH2にて、該当する信号を受信したり、送信したりするかが予め定められている。このため、受信信号用ID変換テーブルにおいても、ネットワーク固有IDとともに、そのネットワーク固有IDを有する信号が、いずれのチャンネルで受信されるかが定められている。
【0035】
ここで、受信信号用ID変換テーブルに関して、注目すべき点が2点ある。まず、第1点目は、受信信号用ID変換テーブルは、1つのネットワーク固有IDに対して、複数の共通IDが対応するように定められた対応関係を含むことが可能であるという点である。例えば、図4に示す例では、1つのネットワーク固有ID(7E5)に対して、2つの共通ID(0x1303,0x1401)が対応するように定められている。
【0036】
受信信号用ID変換テーブルにおいて、上記のような対応関係を定めることにより、所定のネットワーク固有ID(7E5)が付与された信号が、そのネットワーク固有IDに対応する複数の共通ID(0x1303,0x1401)に従い、複数のアプリケーション層5によってそれぞれ受信されることになる。信号の種類によっては、複数のアプリケーションで必要とされる場合もあるが、上記手法によれば、簡単に必要な信号を複数のアプリケーションに与えることができる。
【0037】
次に、第2点目は、受信信号用ID変換テーブルは、受信信号が受信されるべき層IDとして、アプリケーション層5の層IDではなく、ネットワーク層3A,3Bの層IDを記した共通IDを含んでも良いという点である。図4に示す例では、ネットワーク固有ID(80F)に対応する共通ID(0x1202)が該当する。つまり、この共通IDは、受信信号の共通IDの構成規則に従えば、層IDが0x1のネットワーク層3Aから信号が送られ、その信号が、層IDが0x2のネットワーク層3Bにて受信されることを意味する。
【0038】
そのため、このような共通IDを設定することにより、ネットワークAにおいて受信された信号が、ネットワーク層3Aからルーター層4を介してネットワーク層3Bに至り、データリンク層2BによりネットワークBに送出されることになる。従って、異なるネットワーク間で所望の信号をゲートウェイさせることができるようになる。なお、ネットワーク層3A,3Bは、信号をゲートウェイさせる際、ネットワークA,Bの通信プロトコルが相違している場合、プロトコル変換も併せて行う。
【0039】
次に、ネットワークA,Bから信号を受信する際のネットワーク層3A,3Bにおける処理について図6のフローチャートに従って説明する。なお、図6のフローチャートに示す処理は、データリンク層2A,2Bにおいて、信号が受信されて、その受信信号がネットワーク層3A,3Bに与えられたときに実行される。
【0040】
まず、ステップS100では、データリンク層2A,2Bからネットワーク層3A,3Bに与えられた信号に付与されているネットワーク固有IDと、受信信号用ID変換テーブルに含まれるネットワーク固有IDとを順番に1つずつ対比することで、受信信号用ID変換テーブルにおいて一致するネットワーク固有IDを検索する。この検索処理は、ステップS120によるループ処理により、一致するネットワーク固有IDが見つかるまで続けられる。
【0041】
ステップS110では、ネットワーク層3A,3Bが受信した信号に付与されているネットワーク固有IDに一致するネットワーク固有IDが、受信信号用ID変換テーブルにおいてみつかったか否かが判定される。そして、一致するネットワーク固有IDが見つかった場合には、ステップS130に進んで、受信信号用ID変換テーブルに従い、該当するネットワーク固有IDを共通IDに変換するとともに、ルーター層4に対して受信通知を発信する。例えば、ネットワーク層3A,3Bは、ネットワーク層3A,3Bからルーター層4へ受信信号を引き渡すための関数を呼び出すことにより、ルーター層4に対して受信通知を発する。そして、呼び出した関数に、受信信号の共通ID,データ本体、データ長などを入力することにより、受信信号をルーター層4に引き渡す。
【0042】
ルーター層4は、引き渡された受信信号における共通IDの2byte目の層IDを参照して、その受信信号が受信されるべきアプリケーション層5或いはネットワーク層3A,3Bを特定する。そして、特定したアプリケーション層5あるいはネットワーク層3A,3Bに向けて受信信号をルーティングする。
【0043】
ルーター層4におけるルーティング処理の具体例が、図7のフローチャートに示されている。まず、ステップS200では、受信信号の共通IDにおいて、受信先のアプリケーション層5あるいはネットワーク層3A,3Bを示す層IDと一致する層IDを、受信通知先層IDテーブルにおいて検索する。
【0044】
ここで、受信通知先層IDテーブルは、ルーター層4が保持しているもので、例えば図8に示すように、各アプリケーション層5及びネットワーク層3A,3Bの層IDと、ルーター層4から各アプリケーション層5及びネットワーク層3A,3Bへ受信信号を引き渡すための関数との対応関係を示すものである。
【0045】
ステップS210では、受信通知先層IDテーブルにおいて、一致する層IDが見つかったか否かを判定する。この判定処理は、ステップS220によるループ処理により、一致する層IDが見つかるまで繰り返される。そして、ステップS210における判定処理において、一致する層IDが見つかったと判定されるとステップS230の処理に進む。
【0046】
ステップS230では、受信通知先層IDテーブルに従い、該当する層IDに対応するアプリケーション層5或いはネットワーク層3A,3Bから、受信信号を引き渡すための関数を呼び出すことにより受信通知を行う。そして、呼び出した関数に、受信信号の共通ID,データ本体、データ長などを入力することにより、受信信号を引き渡す。
【0047】
次に、送信信号用ID変換テーブルについて説明する。ただし、送信信号は、各アプリケーション層5において生成されるとともに、アプリケーション層5により、信号の種類に応じた共通IDが付与される。この送信信号が、ネットワーク層3A,3Bに引き渡されたとき、上記送信信号用ID変換テーブルを用いて、送信信号の共通IDがネットワーク固有IDに変換される。そのため、まず、アプリケーション層5において生成された、共通IDが付与された送信信号が、どのようにしてネットワーク層3A,3Bに引き渡されるかに関して説明する。
【0048】
まず、アプリケーション層5は、送信すべき送信信号を生成し、その送信信号に対して、信号種別に応じた共通IDを付与すると、その送信信号をルーター層4に引き渡すための関数を呼び出す。そして、アプリケーション層5は、呼び出した関数に、送信信号の共通ID,データ本体、データ長などを入力することにより、送信信号をルーター層4に引き渡す。
【0049】
すると、ルーター層4は、図9のフローチャートに示す処理を実行することにより、その送信信号のルーティングを実行する。ここで、ルーター層4は、例えば図10に示すような送信要求先層IDテーブルを保持している。この送信要求先層IDテーブルは、ネットワーク層3A,3Bの層IDと、ルーター層4から各ネットワーク層3A,3Bへ送信信号を引き渡すための関数との対応関係を示すものである。
【0050】
図9のフローチャートのステップS300では、送信信号に付与された共通IDにおいて、送信先のネットワーク層3A,3Bを示す層IDと一致する層IDを、送信要求先層IDテーブルにおいて検索する。ステップS310では、送信要求先層IDテーブルにおいて、一致する層IDが見つかったか否かを判定する。この判定処理は、ステップS320によるループ処理により、一致する層IDが見つかるまで繰り返される。そして、ステップS310における判定処理において、一致する層IDが見つかったと判定されるとステップS330の処理に進む。
【0051】
ステップS330では、送信要求先層IDテーブルに従い、該当する層IDに対応するネットワーク層3A,3Bから、送信信号を引き渡すための関数を呼び出すことにより送信要求を出す。そして、呼び出した関数に、送信信号の共通ID,データ本体、データ長などを入力することにより、送信信号をネットワーク層3A,3B引き渡す。
【0052】
このようにして、ネットワーク層3A,3Bが、共通IDを付与された送信信号を受け取ると、各自が保持している送信信号用ID変換テーブルを参照して、共通IDをネットワーク固有IDに変換する。図11は、ネットワークAに対応するネットワーク層3Aが保持する送信信号用ID変換テーブルの一例を示すものであり、図12は、ネットワークBに対応するネットワーク層3Bが保持する送信信号用ID変換テーブルの一例を示すものである。
【0053】
図11及び図12に示すように、送信信号用ID変換テーブルにおいては、共通IDに対応するネットワーク固有IDが規定されている。さらに、送信信号用ID変換テーブルには、それぞれの信号がいずれのチャンネルを通じてネットワークA,Bに送出されるべきかを示すチャンネル情報も含まれている。
【0054】
各ネットワーク層3A,3Bは、図13のフローチャートのステップS400に示すように、送信信号用ID変換テーブルに規定された対応関係に従って、共通IDをネットワーク固有IDに変換して、送信信号に付与する。そして、各ネットワーク層3A,3Bは、送信信号用IDテーブルに規定されたチャンネルCH1,CH2を通じて、ネットワーク固有IDが付与された送信信号をデータリンク層2A,2Bに送信する。すると、データリンク層2A,2Bは、その送信信号を、ネットワークA,Bに送出する送信処理を実行する。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態の通信制御装置によれば、ネットワーク層3A,3Bにおいて、ネットワーク固有IDが共通IDに変換される。このため、データリンク層2A,2Bにて受領されたネットワーク固有IDが付与された受信信号、及びアプリケーション層5において生成され、共通IDが付与された送信信号が、ネットワーク層3A,3B、ルーター層4、及びアプリケーション層5間において、共通IDにて識別される信号として伝送される。この共通IDは、適用されるネットワークの種別や構成などが異なる場合であっても、通信制御装置において、変更されることなく共通して使用され得るように定められたものである。従って、アプリケーション層5をなす、各アプリケーションを実現するためのアプリケーションソフトや、通信制御用ソフトにより実現されるルーター層4に関しては、共通IDにより識別される信号を扱うだけであるため、それらソフトの仕様を概ね共通化することができる。つまり、例えばネットワーク固有IDが異なる場合や、通信制御装置におけるネットワーク層3A,3Bやアプリケーション層の数が異なる場合であっても、必要となるのは、ネットワーク固有IDと共通IDとの対応関係や、層IDとデータ引渡し関数との対応関係の定義の変更のみである。そのため、上述したアプリケーションソフトや通信制御用ソフトの汎用性を向上することができるようになる。
【0056】
なお、上述した実施形態は、本発明を実施する上で好ましいものではあるが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形することが可能である。
【0057】
例えば、上述した実施形態では、ネットワーク層3A,3B、及びアプリケーション層5のそれぞれに層IDを定め、共通IDは、それら層IDを組み込むことによって設定されていた。しかしながら、共通IDは、通信制御装置として共通であるかぎり、層IDを利用せずに定められたものであっても良い。
【符号の説明】
【0058】
1A,1B…物理層
2A.2B…データリンク層
3A,3B…ネットワーク層
4…ルーター層
5…アプリケーション層
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに対する信号の通信機能が階層化された通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、インターネット等に対して複数の外部接続を持つマルチホーム接続の環境において、実際のデータ転送状況に応じて動的に通信経路を選択する通信方法が示されている。
【0003】
また、特許文献2には、車両におけるサブネットワークを接続するゲートウェイユニットとして、2つのサブネットワーク間でメッセージをルーティングするモジュールソフトウェアゲートウェイを設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−60956号公報
【特許文献2】特表2006―506862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、車両における各種の制御ECUをネットワーク接続した車内LANなどのネットワーク環境においては、制御ECUの種類や、通信される信号の種類が、車両の種別などにより異なることが多い。このため、通信される信号に対して、その種類に応じたIDを付与して信号を識別するようにした場合、ネットワークごとに信号のIDも異なるものになり易い。
【0006】
従って、その信号を実際に使用するアプリケーションソフトや、その信号をネットワークを介して送受信するための通信制御用ソフトも、適用されるネットワークに依存した部分が多くなり、汎用性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、適用されるネットワークが異なる場合であっても、アプリケーションソフトや通信制御用ソフトなどの変更が僅かで済み、それらソフトの汎用性を向上することが可能な通信制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の通信制御装置は、ネットワークに対する信号の通信機能が階層化され、その階層化された通信機能には、少なくとも、ネットワークから信号を受領するデータリンク層と、各アプリケーションに依存した信号の受信管理を行う複数のアプリケーション層と、データリンク層とアプリケーション層との間で信号を伝達するネットワーク層とが含まれ、
データリンク層により受領される信号には、その信号の種類に応じて、ネットワークに関して取り決められたネットワーク固有IDが付与されており、
ネットワーク層は、データリンク層により受領された信号のネットワーク固有IDを、通信制御装置として共通の共通IDに変換する受信用ID変換テーブルを有し、その受信用ID変換テーブルに従い、ネットワーク固有IDを共通IDに変換するものであり、
さらに、ネットワーク層とアプリケーション層との間に、ネットワーク層により変換された共通IDに基づき、その信号が受信されるべきアプリケーション層へ、当該信号をルーティングするルーター層を設けたことを特徴とする。
【0009】
このように、請求項1に記載の通信制御装置では、ネットワーク層において、ネットワーク固有IDが共通IDに変換される。このため、データリンク層にて受領された、ネットワーク固有IDが付与された信号は、ネットワーク層、ルーター層、及びアプリケーション層間においては、共通IDにて識別される信号として伝送されることになる。この共通IDは、適用されるネットワークの種別や構成などが異なる場合であっても、通信制御装置において、変更されることなく共通して使用され得るように定められたものである。従って、アプリケーション層をなす、各アプリケーションを実現するためのアプリケーションソフトや、通信制御用ソフトにより実現されるルーター層に関しては、共通IDにより識別される信号を扱うだけであるため、それらソフトの仕様を概ね共通化することができる。その結果、それらソフトの汎用性を向上することができるようになる。
【0010】
請求項2に記載したように、ネットワーク層の受信用ID変換テーブルは、1つのネットワーク固有IDに対して、複数の共通IDが対応するように定められた対応関係を含むものであっても良い。受信用ID変換テーブルにおいて、上記のような対応関係を定めることにより、あるネットワーク固有IDが付与された信号が、そのネットワーク固有IDに対応する複数の共通IDに従って、複数のアプリケーション層によって受信されるようになる。信号によっては、複数のアプリケーションで必要とされる場合もあるためである。
【0011】
請求項3に記載したように、ネットワーク層、及びアプリケーション層には、通信制御装置として共通の層IDがそれぞれ定められており、信号の共通IDには、当該信号を受信したネットワーク層の層ID及びその信号が受信されるべきアプリケーション層の層IDが組み込まれ、かつ各信号の種別に応じて、各信号の共通IDをユニークにするためのインデックス部分が含まれるように、ID変換テーブルが定められていることが好ましい。このようにすれば、例えばネットワーク層の数や、アプリケーション層の数が変化した場合などにも、共通IDの設定を簡単に行うことができる。
【0012】
請求項4に記載したように、ネットワーク層は、異なるネットワークに接続される第1ネットワーク層と第2ネットワーク層とを含み、第1ネットワーク層及び第2ネットワーク層の少なくとも一方の受信用ID変換テーブルには、所定のネットワーク固有IDに対して、一方のネットワーク層を受信元とし、他方のネットワーク層を受信先として指示する共通IDが定められていても良い。このような共通IDを設定することにより、第1及び第2のネットワーク層及びルーター層を介して、所定のネットワーク固有IDが付与された信号を、異なるネットワーク間でゲートウェイさせることができる。
【0013】
請求項5に記載したように、各アプリケーション層の少なくとも1つは、ネットワークに信号を送出する必要が生じたとき、その信号の種類に応じた共通IDを当該信号に付与し、ルーター層は、その信号に付与された共通IDに基づき、該当するネットワーク層に当該信号をルーティングし、ネットワーク層は、信号に付与された共通IDを、ネットワーク固有IDに変換する送信用ID変換テーブルを有し、その送信用ID変換テーブルに従い、共通IDをネットワーク固有IDに変換して、データリンク層に与え、データリンク層は、ネットワーク固有IDが付与された信号をネットワークに送出することが好ましい。このような構成を採用することにより、アプリケーション層、ルーター層、及びネットワーク層間において、信号を識別するために共通IDを用いながら、ネットワークに対しては、ネットワーク固有IDが付与された信号を送出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態による通信制御装置の構成を示す構成図である。
【図2】それぞれのネットワーク層3A,3B及びアプリケーション層5を特定するための層IDを示す図である。
【図3】(a)は、受信信号の共通IDの構造を示す図であり、(b)は、送信信号の共通IDの構造を示す図である。
【図4】ネットワークAに対応するネットワーク層3Aが保持する受信信号用ID変換テーブルの一例を示す図である
【図5】ネットワークBに対応するネットワーク層3Bが保持する受信信号用ID変換テーブルの一例を示す図である。
【図6】ネットワークA,Bから信号を受信する際のネットワーク層3A,3Bにおける処理を示すフローチャートである。
【図7】受信信号に対する、ルーター層4におけるルーティング処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】各アプリケーション層5及びネットワーク層3A,3Bの層IDと、ルーター層4から各アプリケーション層5及びネットワーク層3A,3Bへ受信信号を引き渡すための関数との対応関係を示す受信通知先層IDテーブルの一例を示す図である。
【図9】送信信号に対する、ルーター層4におけるルーティング処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】ネットワーク層3A,3Bの層IDと、ルーター層4から各ネットワーク層3A,3Bへ送信信号を引き渡すための関数との対応関係を示す送信要求先層IDテーブルの一例を示す図である。
【図11】ネットワークAに対応するネットワーク層3Aが保持する送信信号用ID変換テーブルの一例を示す図である。
【図12】ネットワークBに対応するネットワーク層3Bが保持する送信信号用ID変換テーブルの一例を示す図である。
【図13】送信信号に対するID変換処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態による通信制御装置は、例えば車両における各種の制御ECU等をネットワーク接続した車内LANなどの、閉じたネットワーク環境において適用されるものである。
【0016】
図1において、物理層1A,1Bは、ネットワークケーブル等、実際に電気的に信号を伝送する媒体に相当するものである。そして、物理層1A及び物理層1Bは、別個のサブネットワークであるネットワークA及びネットワークBをそれぞれ構成している。なお、サブネットワークであるネットワークA,Bでは、例えばCANやLINなどの通信プロトコルに従って信号の通信が行われる。
【0017】
データリンク層2A,2Bは、それぞれ、物理層1A,1B、すなわちネットワークA,Bに接続され、それらネットワークA,Bを伝送される信号を受領したり、それらネットワークA,Bに信号を送出したりするためのものである。このデータリンク層2A,2Bは、図1に示すように、ソフトウエア(データリンク層ソフトウエアモジュール)によって実現される。
【0018】
ネットワークA,Bには、図1に示すような通信制御装置が複数接続され、それら通信制御装置間で、センサ検出信号や、所定の演算結果を示す信号、制御状態を示す信号等、各種の信号が送受信される。それら各種の信号がネットワークA,Bを伝送される段階では、各信号の種別に応じたIDであるネットワーク固有IDが、各信号に付与されている。このネットワーク固有IDは、ネットワークの種別や構成などにより、各ネットワークでそれぞれ独自に定められるものである。データリンク層2A,2Bは、そのネットワーク固有ID信号を手掛かりとして、ネットワークA,Bにおいて伝送される信号の中から、必要な信号を選択して受領する受信処理を行う。さらに、データリンク層2A,2Bは、後述するアプリケーション層5において生成され、ネットワーク層3A,3Bにてネットワーク固有IDが付与された信号を、ネットワークA,Bに送出する送信処理を行う。
【0019】
物理層1A,1Bとデータリンク層2A,2Bとは、それぞれ2系統のチャンネルCH1,CH2を介して接続されている。そして、データリンク層2A,2Bにおいて、受信処理或いは送信処理する信号のネットワーク固有IDに応じて、いずれのチャンネルCH1,CH2にて、該当する信号を受信したり、送信したりするかが予め定められている。
【0020】
ネットワーク層3A,3Bは、それぞれ、データリンク層2A,2Bと接続されている。このネットワーク層3A,3Bも、データリンク層2A,2Bと同様に、ソフトウエア(ネットワーク層ソフトウエアモジュール)によって実現される。
【0021】
ネットワーク層3A,3Bは、データリンク層2A,2Bにて信号が受信されたとき、その受信信号を受け取り、受信信号に付されているネットワーク固有IDを、通信制御装置として共通するように定められた共通IDに変換する受信信号ID変換処理を行う。この共通IDは、同じネットワーク内に設けられた通信制御装置ばかりでなく、適用されるネットワークが異なる通信制御装置においても、共通して用いられるものである。このID変換処理が施された受信信号は、後述するルーター層4に与えられる。
【0022】
さらに、ネットワーク層3A,3Bは、アプリケーション層5において生成された、送信されるべき信号を受け取ったとき、その信号に付与されている共通IDをネットワーク固有IDに変換する送信信号ID変換処理を行う。このID変換処理が施され、ネットワーク固有IDが付与された送信信号は、データリンク層2A,2Bに与えられ、データリンク層2A,2Bにより、ネットワークA,Bに送出される。
【0023】
ネットワーク層3A、3Bは、上述した受信信号ID変換処理及び送信信号ID変換処理を実行するために、各信号についてネットワーク固有IDと共通IDとの対応関係を示す受信信号用ID変換テーブル及び送信信号用ID変換テーブルを有している。なお、共通ID、受信信号用ID変換テーブル及び送信信号用ID変換テーブルについては、後に詳しく説明する。
【0024】
ルーター層4は、ネットワーク層3A,3Bとアプリケーション層5との間に位置し、ネットワーク層3A,3Bとアプリケーション層5間における信号の伝送を制御するものである。このルーター層4も、データリンク層2A,2B、及びネットワーク層3A,3Bと同様にソフトウエア(ルーター層ソフトウエアモジュール)により実現される。そして、データリンク層2A,2B、ネットワーク層3A,3B及びルーター層4をなすソフトウエアが、通信制御用ソフトとなる。
【0025】
具体的には、ルーター層4は、受信信号に関してネットワーク層3A,3Bにおいて受信信号ID変換処理が実行されると、その変換された共通IDに基づき、その信号が受信されるべきアプリケーション層5へ、当該信号をルーティングするルーター機能を備えている。詳しくは後述するが、共通ID内には、その信号が受信されるべきアプリケーション層5を示す層IDが含まれている。ルーター層4は、その層IDを参照することにより、ルーティング先のアプリケーション層5を特定する。
【0026】
また、ルーター層4は、送信信号が、アプリケーション層5において生成されると、その送信信号に付与されている共通IDに基づき、その送信信号に関して、ID変換等の送信のための処理が行われるべきネットワーク層3A,3B及びデータリンク層2A,2Bに向けて、送信信号をルーティングする機能も備えている。この送信信号のルーティングにおいても、ルーター層4は、共通ID内に含まれている、送信のための処理が行われるべきネットワーク層3A,3Bを示す層IDを参照し、ルーティング先のネットワーク層3A,3Bを特定する、
アプリケーション層5は、各アプリケーションに依存した信号の送受信管理を行うべく、複数設けられている。すなわち、各アプリケーションにおいて、それぞれのアプリケーションを実行するために必要となる受信信号は全体として異なり、また、生成する送信信号の種類も異なるので、アプリケーションごとに、それぞれアプリケーション層5が設定されている。なお、このアプリケーション層5も、他の層と同様に、ソフトウエア(アプリケーション層ソフトウエアモジュール)によって実現される。
【0027】
次に、共通IDについて説明する。まず、上述したネットワーク層3A,3B及び各アプリケーション層5には、図2に示すように、それぞれを特定するための層IDが定められている。なお、図2においては、各層IDを16進法にて示している。また、図2には、2個のネットワーク層3A,3B、及び3個のアプリケーション層5に対して、層IDを定めた例を示しているが、ネットワーク層3A,3Bやアプリケーション層5の数は、この例に制限されるものではない。特に、適用されるネットワークが異なる場合には、ネットワーク層3A,3Bやアプリケーション層5の数が異なることは当然に起こりえることである。
【0028】
本実施形態では、上述したネットワーク層3A,3Bの層ID及びアプリケーション層5の層IDを利用して、共通IDを定めている。以下、具体例について説明する。
【0029】
まず、図3(a)は、受信信号の共通IDの構造を示す図である。受信信号の共通IDは、受信信号のID変換処理を行ったネットワーク層の層ID、その受信信号が受信されるべきアプリケーション層5の層ID、及びその受信信号を他の種類の受信信号と識別するためのインデックスを組み合わせて構成される。
【0030】
また、図3(b)は、送信信号の共通IDの構造を示すものである。送信信号の共通IDは、その送信信号を生成したアプリケーション層5の層ID、その送信信号に対してID変換処理を実行すべきネットワーク層3A,3Bの層ID、及びその送信信号を他の種類の送信信号と識別するためのインデックスを組み合わせて構成される。
【0031】
一例として、上述したネットワーク層3A,3Bの層ID及びアプリケーション層5の層IDは、それぞれ1byteのデータ長を有し、インデックスは2byteのデータ長を有する。従って、共通IDのデータ長は、4byteとなる。そして、図3(a)に示すように、例えば、受信信号の共通IDの1byte目はネットワーク層の層ID、2byte目はアプリケーション層5の層ID、3〜4byte目にインデックスが配置される。また、図3(b)に示すように、例えば、送信信号の共通IDの1byte目はアプリケーション層5の層ID、2byte目はネットワーク層の層ID、3〜4byte目にインデックスが配置される。
【0032】
このように、共通ID内に、受信信号が受信されるべきアプリケーション層5の層ID、あるいは送信信号に対してID変換処理を実行すべきネットワーク層3A,3Bの層IDを組み入れることにより、ルーター層4は、それらの層IDを参照して、ルーティング先を特定することが可能となる。また、ネットワーク層3A,3Bの層ID及びアプリケーション層5の層IDを利用して共通IDを定めることで、適用されるネットワークが異なり、例えばネットワーク層3A,3Bの数や、アプリケーション層5の数が変化した場合などにも、共通IDの設定を簡単に行うことができる。
【0033】
次に、受信信号用ID変換テーブルについて説明する。図4は、ネットワークAに対応するネットワーク層3Aが保持する受信信号用ID変換テーブルの一例を示すものであり、図5は、ネットワークBに対応するネットワーク層3Bが保持する受信信号用ID変換テーブルの一例を示すものである。
【0034】
図4及び図5に示すように、受信信号用ID変換テーブルにおいては、ネットワークA,Bの伝送段階において各信号に付与されるネットワーク固有IDに対応する共通IDが規定されている。各ネットワーク層3A,3Bは、この受信信号用ID変換テーブルに規定された対応関係に従って、ネットワーク固有IDを共通IDに変換する。なお、上述したように、データリンク層2A,2Bにおいて、ネットワーク固有IDに応じて、いずれのチャンネルCH1,CH2にて、該当する信号を受信したり、送信したりするかが予め定められている。このため、受信信号用ID変換テーブルにおいても、ネットワーク固有IDとともに、そのネットワーク固有IDを有する信号が、いずれのチャンネルで受信されるかが定められている。
【0035】
ここで、受信信号用ID変換テーブルに関して、注目すべき点が2点ある。まず、第1点目は、受信信号用ID変換テーブルは、1つのネットワーク固有IDに対して、複数の共通IDが対応するように定められた対応関係を含むことが可能であるという点である。例えば、図4に示す例では、1つのネットワーク固有ID(7E5)に対して、2つの共通ID(0x1303,0x1401)が対応するように定められている。
【0036】
受信信号用ID変換テーブルにおいて、上記のような対応関係を定めることにより、所定のネットワーク固有ID(7E5)が付与された信号が、そのネットワーク固有IDに対応する複数の共通ID(0x1303,0x1401)に従い、複数のアプリケーション層5によってそれぞれ受信されることになる。信号の種類によっては、複数のアプリケーションで必要とされる場合もあるが、上記手法によれば、簡単に必要な信号を複数のアプリケーションに与えることができる。
【0037】
次に、第2点目は、受信信号用ID変換テーブルは、受信信号が受信されるべき層IDとして、アプリケーション層5の層IDではなく、ネットワーク層3A,3Bの層IDを記した共通IDを含んでも良いという点である。図4に示す例では、ネットワーク固有ID(80F)に対応する共通ID(0x1202)が該当する。つまり、この共通IDは、受信信号の共通IDの構成規則に従えば、層IDが0x1のネットワーク層3Aから信号が送られ、その信号が、層IDが0x2のネットワーク層3Bにて受信されることを意味する。
【0038】
そのため、このような共通IDを設定することにより、ネットワークAにおいて受信された信号が、ネットワーク層3Aからルーター層4を介してネットワーク層3Bに至り、データリンク層2BによりネットワークBに送出されることになる。従って、異なるネットワーク間で所望の信号をゲートウェイさせることができるようになる。なお、ネットワーク層3A,3Bは、信号をゲートウェイさせる際、ネットワークA,Bの通信プロトコルが相違している場合、プロトコル変換も併せて行う。
【0039】
次に、ネットワークA,Bから信号を受信する際のネットワーク層3A,3Bにおける処理について図6のフローチャートに従って説明する。なお、図6のフローチャートに示す処理は、データリンク層2A,2Bにおいて、信号が受信されて、その受信信号がネットワーク層3A,3Bに与えられたときに実行される。
【0040】
まず、ステップS100では、データリンク層2A,2Bからネットワーク層3A,3Bに与えられた信号に付与されているネットワーク固有IDと、受信信号用ID変換テーブルに含まれるネットワーク固有IDとを順番に1つずつ対比することで、受信信号用ID変換テーブルにおいて一致するネットワーク固有IDを検索する。この検索処理は、ステップS120によるループ処理により、一致するネットワーク固有IDが見つかるまで続けられる。
【0041】
ステップS110では、ネットワーク層3A,3Bが受信した信号に付与されているネットワーク固有IDに一致するネットワーク固有IDが、受信信号用ID変換テーブルにおいてみつかったか否かが判定される。そして、一致するネットワーク固有IDが見つかった場合には、ステップS130に進んで、受信信号用ID変換テーブルに従い、該当するネットワーク固有IDを共通IDに変換するとともに、ルーター層4に対して受信通知を発信する。例えば、ネットワーク層3A,3Bは、ネットワーク層3A,3Bからルーター層4へ受信信号を引き渡すための関数を呼び出すことにより、ルーター層4に対して受信通知を発する。そして、呼び出した関数に、受信信号の共通ID,データ本体、データ長などを入力することにより、受信信号をルーター層4に引き渡す。
【0042】
ルーター層4は、引き渡された受信信号における共通IDの2byte目の層IDを参照して、その受信信号が受信されるべきアプリケーション層5或いはネットワーク層3A,3Bを特定する。そして、特定したアプリケーション層5あるいはネットワーク層3A,3Bに向けて受信信号をルーティングする。
【0043】
ルーター層4におけるルーティング処理の具体例が、図7のフローチャートに示されている。まず、ステップS200では、受信信号の共通IDにおいて、受信先のアプリケーション層5あるいはネットワーク層3A,3Bを示す層IDと一致する層IDを、受信通知先層IDテーブルにおいて検索する。
【0044】
ここで、受信通知先層IDテーブルは、ルーター層4が保持しているもので、例えば図8に示すように、各アプリケーション層5及びネットワーク層3A,3Bの層IDと、ルーター層4から各アプリケーション層5及びネットワーク層3A,3Bへ受信信号を引き渡すための関数との対応関係を示すものである。
【0045】
ステップS210では、受信通知先層IDテーブルにおいて、一致する層IDが見つかったか否かを判定する。この判定処理は、ステップS220によるループ処理により、一致する層IDが見つかるまで繰り返される。そして、ステップS210における判定処理において、一致する層IDが見つかったと判定されるとステップS230の処理に進む。
【0046】
ステップS230では、受信通知先層IDテーブルに従い、該当する層IDに対応するアプリケーション層5或いはネットワーク層3A,3Bから、受信信号を引き渡すための関数を呼び出すことにより受信通知を行う。そして、呼び出した関数に、受信信号の共通ID,データ本体、データ長などを入力することにより、受信信号を引き渡す。
【0047】
次に、送信信号用ID変換テーブルについて説明する。ただし、送信信号は、各アプリケーション層5において生成されるとともに、アプリケーション層5により、信号の種類に応じた共通IDが付与される。この送信信号が、ネットワーク層3A,3Bに引き渡されたとき、上記送信信号用ID変換テーブルを用いて、送信信号の共通IDがネットワーク固有IDに変換される。そのため、まず、アプリケーション層5において生成された、共通IDが付与された送信信号が、どのようにしてネットワーク層3A,3Bに引き渡されるかに関して説明する。
【0048】
まず、アプリケーション層5は、送信すべき送信信号を生成し、その送信信号に対して、信号種別に応じた共通IDを付与すると、その送信信号をルーター層4に引き渡すための関数を呼び出す。そして、アプリケーション層5は、呼び出した関数に、送信信号の共通ID,データ本体、データ長などを入力することにより、送信信号をルーター層4に引き渡す。
【0049】
すると、ルーター層4は、図9のフローチャートに示す処理を実行することにより、その送信信号のルーティングを実行する。ここで、ルーター層4は、例えば図10に示すような送信要求先層IDテーブルを保持している。この送信要求先層IDテーブルは、ネットワーク層3A,3Bの層IDと、ルーター層4から各ネットワーク層3A,3Bへ送信信号を引き渡すための関数との対応関係を示すものである。
【0050】
図9のフローチャートのステップS300では、送信信号に付与された共通IDにおいて、送信先のネットワーク層3A,3Bを示す層IDと一致する層IDを、送信要求先層IDテーブルにおいて検索する。ステップS310では、送信要求先層IDテーブルにおいて、一致する層IDが見つかったか否かを判定する。この判定処理は、ステップS320によるループ処理により、一致する層IDが見つかるまで繰り返される。そして、ステップS310における判定処理において、一致する層IDが見つかったと判定されるとステップS330の処理に進む。
【0051】
ステップS330では、送信要求先層IDテーブルに従い、該当する層IDに対応するネットワーク層3A,3Bから、送信信号を引き渡すための関数を呼び出すことにより送信要求を出す。そして、呼び出した関数に、送信信号の共通ID,データ本体、データ長などを入力することにより、送信信号をネットワーク層3A,3B引き渡す。
【0052】
このようにして、ネットワーク層3A,3Bが、共通IDを付与された送信信号を受け取ると、各自が保持している送信信号用ID変換テーブルを参照して、共通IDをネットワーク固有IDに変換する。図11は、ネットワークAに対応するネットワーク層3Aが保持する送信信号用ID変換テーブルの一例を示すものであり、図12は、ネットワークBに対応するネットワーク層3Bが保持する送信信号用ID変換テーブルの一例を示すものである。
【0053】
図11及び図12に示すように、送信信号用ID変換テーブルにおいては、共通IDに対応するネットワーク固有IDが規定されている。さらに、送信信号用ID変換テーブルには、それぞれの信号がいずれのチャンネルを通じてネットワークA,Bに送出されるべきかを示すチャンネル情報も含まれている。
【0054】
各ネットワーク層3A,3Bは、図13のフローチャートのステップS400に示すように、送信信号用ID変換テーブルに規定された対応関係に従って、共通IDをネットワーク固有IDに変換して、送信信号に付与する。そして、各ネットワーク層3A,3Bは、送信信号用IDテーブルに規定されたチャンネルCH1,CH2を通じて、ネットワーク固有IDが付与された送信信号をデータリンク層2A,2Bに送信する。すると、データリンク層2A,2Bは、その送信信号を、ネットワークA,Bに送出する送信処理を実行する。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態の通信制御装置によれば、ネットワーク層3A,3Bにおいて、ネットワーク固有IDが共通IDに変換される。このため、データリンク層2A,2Bにて受領されたネットワーク固有IDが付与された受信信号、及びアプリケーション層5において生成され、共通IDが付与された送信信号が、ネットワーク層3A,3B、ルーター層4、及びアプリケーション層5間において、共通IDにて識別される信号として伝送される。この共通IDは、適用されるネットワークの種別や構成などが異なる場合であっても、通信制御装置において、変更されることなく共通して使用され得るように定められたものである。従って、アプリケーション層5をなす、各アプリケーションを実現するためのアプリケーションソフトや、通信制御用ソフトにより実現されるルーター層4に関しては、共通IDにより識別される信号を扱うだけであるため、それらソフトの仕様を概ね共通化することができる。つまり、例えばネットワーク固有IDが異なる場合や、通信制御装置におけるネットワーク層3A,3Bやアプリケーション層の数が異なる場合であっても、必要となるのは、ネットワーク固有IDと共通IDとの対応関係や、層IDとデータ引渡し関数との対応関係の定義の変更のみである。そのため、上述したアプリケーションソフトや通信制御用ソフトの汎用性を向上することができるようになる。
【0056】
なお、上述した実施形態は、本発明を実施する上で好ましいものではあるが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形することが可能である。
【0057】
例えば、上述した実施形態では、ネットワーク層3A,3B、及びアプリケーション層5のそれぞれに層IDを定め、共通IDは、それら層IDを組み込むことによって設定されていた。しかしながら、共通IDは、通信制御装置として共通であるかぎり、層IDを利用せずに定められたものであっても良い。
【符号の説明】
【0058】
1A,1B…物理層
2A.2B…データリンク層
3A,3B…ネットワーク層
4…ルーター層
5…アプリケーション層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに対する信号の通信機能が階層化され、その階層化された通信機能には、少なくとも、前記ネットワークから信号を受領するデータリンク層と、各アプリケーションに依存した信号の受信管理を行う複数のアプリケーション層と、前記データリンク層と前記アプリケーション層との間で信号を伝達するネットワーク層とが含まれる通信制御装置であって、
前記データリンク層により受領される信号には、その信号の種類に応じて、前記ネットワークに関して取り決められたネットワーク固有IDが付与されており、
前記ネットワーク層は、前記データリンク層により受領された信号のネットワーク固有IDを、前記通信制御装置として共通の共通IDに変換する受信用ID変換テーブルを有し、その受信用ID変換テーブルに従い、前記ネットワーク固有IDを共通IDに変換するものであり、
さらに、前記ネットワーク層と前記アプリケーション層との間に、前記ネットワーク層により変換された共通IDに基づき、その信号が受信されるべきアプリケーション層へ、当該信号をルーティングするルーター層を設けたことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記ネットワーク層の受信用ID変換テーブルは、1つのネットワーク固有IDに対して、複数の共通IDが対応するように定められた対応関係を含み、それにより、前記ネットワーク固有IDが付与された信号が、前記複数の共通IDに従って複数のアプリケーション層に受信されることを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記ネットワーク層、及び前記アプリケーション層には、前記通信制御装置として共通の層IDがそれぞれ定められており、
前記信号の共通IDには、当該信号を受信したネットワーク層の層ID及びその信号が受信されるべきアプリケーション層の層IDが組み込まれ、かつ各信号の種別に応じて、各信号の共通IDをユニークにするためのインデックス部分が含まれるように、前記ID変換テーブルが定められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記ネットワーク層は、異なるネットワークに接続される第1ネットワーク層と第2ネットワーク層とを含み、
前記第1ネットワーク層及び第2ネットワーク層の少なくとも一方の受信用ID変換テーブルには、所定のネットワーク固有IDに対して、一方のネットワーク層を受信元とし、他方のネットワーク層を受信先として指示する共通IDが定められており、それにより、前記第1及び第2のネットワーク層及び前記ルーター層を介して、前記所定のネットワーク固有IDが付与された信号を、異なるネットワーク間でゲートウェイすることを特徴とする請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記各アプリケーション層の少なくとも1つは、前記ネットワークに信号を送出する必要が生じたとき、その信号の種類に応じた共通IDを当該信号に付与し、
前記ルーター層は、前記信号に付与された共通IDに基づき、該当するネットワーク層に当該信号をルーティングし、
前記ネットワーク層は、前記信号に付与された共通IDを、前記ネットワーク固有IDに変換する送信用ID変換テーブルを有し、その送信用ID変換テーブルに従い、前記共通IDを前記ネットワーク固有IDに変換して、前記データリンク層に与え、
前記データリンク層は、前記ネットワーク固有IDが付与された信号を前記ネットワークに送出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項1】
ネットワークに対する信号の通信機能が階層化され、その階層化された通信機能には、少なくとも、前記ネットワークから信号を受領するデータリンク層と、各アプリケーションに依存した信号の受信管理を行う複数のアプリケーション層と、前記データリンク層と前記アプリケーション層との間で信号を伝達するネットワーク層とが含まれる通信制御装置であって、
前記データリンク層により受領される信号には、その信号の種類に応じて、前記ネットワークに関して取り決められたネットワーク固有IDが付与されており、
前記ネットワーク層は、前記データリンク層により受領された信号のネットワーク固有IDを、前記通信制御装置として共通の共通IDに変換する受信用ID変換テーブルを有し、その受信用ID変換テーブルに従い、前記ネットワーク固有IDを共通IDに変換するものであり、
さらに、前記ネットワーク層と前記アプリケーション層との間に、前記ネットワーク層により変換された共通IDに基づき、その信号が受信されるべきアプリケーション層へ、当該信号をルーティングするルーター層を設けたことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記ネットワーク層の受信用ID変換テーブルは、1つのネットワーク固有IDに対して、複数の共通IDが対応するように定められた対応関係を含み、それにより、前記ネットワーク固有IDが付与された信号が、前記複数の共通IDに従って複数のアプリケーション層に受信されることを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記ネットワーク層、及び前記アプリケーション層には、前記通信制御装置として共通の層IDがそれぞれ定められており、
前記信号の共通IDには、当該信号を受信したネットワーク層の層ID及びその信号が受信されるべきアプリケーション層の層IDが組み込まれ、かつ各信号の種別に応じて、各信号の共通IDをユニークにするためのインデックス部分が含まれるように、前記ID変換テーブルが定められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記ネットワーク層は、異なるネットワークに接続される第1ネットワーク層と第2ネットワーク層とを含み、
前記第1ネットワーク層及び第2ネットワーク層の少なくとも一方の受信用ID変換テーブルには、所定のネットワーク固有IDに対して、一方のネットワーク層を受信元とし、他方のネットワーク層を受信先として指示する共通IDが定められており、それにより、前記第1及び第2のネットワーク層及び前記ルーター層を介して、前記所定のネットワーク固有IDが付与された信号を、異なるネットワーク間でゲートウェイすることを特徴とする請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記各アプリケーション層の少なくとも1つは、前記ネットワークに信号を送出する必要が生じたとき、その信号の種類に応じた共通IDを当該信号に付与し、
前記ルーター層は、前記信号に付与された共通IDに基づき、該当するネットワーク層に当該信号をルーティングし、
前記ネットワーク層は、前記信号に付与された共通IDを、前記ネットワーク固有IDに変換する送信用ID変換テーブルを有し、その送信用ID変換テーブルに従い、前記共通IDを前記ネットワーク固有IDに変換して、前記データリンク層に与え、
前記データリンク層は、前記ネットワーク固有IDが付与された信号を前記ネットワークに送出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の通信制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−106205(P2013−106205A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248991(P2011−248991)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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