説明

通信方法及び通信装置

【課題】 1対1の局間通信や一斉同報通信などの、リモートI/Oシステムが備えるべき通信形態を、マスタ局およびリモートI/O局の接続台数ならびに転送距離によらず、ほぼ一定の速度で実現できるようにする。
【解決手段】 複数のノードをデイジーチェーン接続して構成され、1台のノード10は他のノードとの通信を制御する主体通信制御部を有し、他のノード20,30,40は従属通信制御部を有するシステムで通信を行う場合に、主体通信制御部を有するノード以外のノードとして、デイジーチェーン接続された前段のノードから受信したデータを入力するとともに、デイジーチェーン接続された後段のノードに送信させ、デイジーチェーン接続された後段のノードから受信したデータと、当該ノードの出力データとを、デイジーチェーン接続された前段のノードへと送信させる構成として、デイジーチェーン接続された特定の2台のノード間で直接データ伝送できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば100BASE−TX方式等の通信方式を適用して、デイジーチェーン型トポロジで物理的に接続される通信方法、及びその通信方法に使用される通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のリモートI/O局を伝送ケーブルで接続して構成されるリモートI/Oシステムは、主にリモートI/Oシステム全体の制御を行うマスタ局、マスタ局からの要求でマスタ局と通信を行うリモートI/O局、および伝送路から構成され、プログラマブル・コントローラ等の制御装置と、各種生産ライン等に取り付けられるリミットスイッチやバルブ等の制御対象との情報のやりとりに用いられる。生産スピードを高速化するためには、プログラマブル・コントローラの処理性能向上や、リモートI/O転送速度の高速化が必要である。また、大規模なラインを1台のプログラマブル・コントローラで制御するためには、リモートI/O転送距離を延長する必要がある。
【0003】
現在公知のリモートI/O通信方式としては、例えばデバイスネット(DeviceNet)と称されるものがある。デバイスネットは、データ転送距離が100m未満であれば500kbpsでの転送が可能であるが、転送距離を500mまで延長すると転送速度が125kbpsに低下してしまう。その理由は、回線にデータを送信するリモートI/O局の送信部が通信回線全体をドライブする必要があり、転送距離を延長することにより送信信号が減衰して通信が不可能となり、また、伝送路を信号が通過する時間が増加するので、回線上の信号衝突検出が正しく行われないためである。
【0004】
この問題を解決するためには、例えば、各リモートI/O局間を1対1で通信させることで、物理的にはデイジーチェーン型トポロジのリモートI/O通信方式とすることが知られている(特許文献1)。
【0005】
図8は、従来の各リモートI/O局間をデイジーチェーン接続した構成例を示した図である。この例では、通信装置である4台のノード1,2,3,4を、伝送路9a,9b,9cで接続させてある。リモートI/Oシステムでは、この内の1台がマスタ局になり、他のノードが、リモートI/O局となる。
【0006】
各ノード1,2,3,4は、データの中継を行うスイッチ1a,2a,3a,4aと、データ処理を行う内部回路(パケット処理部)1b,2b,3b,4bとを備える。ノード1からノード2、ノード2からノード3、ノード3からノード4へのデータ伝送については、各ノードの内部回路1b,2b,3b,4b間をケーブル9a,9b,9cで直接接続させてある。ノード4からノード3、ノード3からノード2、ノード2からノード1へのデータ伝送については、それぞれスイッチ4a,3a,2a,1a間を接続してあり、図8に示すようなリング型接続となっている。
【特許文献1】特開2000−151665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この図8に示すリング型接続のネットワーク構成で、特定の2台のノード間でデータ転送するような場合には、信号が通過する経路が複雑かつ多大であり、その分通信に遅延が発生し、また、故障率も増大する問題があった。
【0008】
即ち、図8に示すリング型接続のネットワーク構成の場合には、リングを構成する各ノードの持つ情報を、リング全体で共用するような使用方法には適しているが、リモートI/Oシステムのように、マスタ局とリモートI/O局が1対1で通信を行う場合には不向きである。例えば、ノード1が、ノード2の情報をノード1の内部回路1aに取り込む場合、情報は一度ノード2から伝送路9bを介してノード3に入力され、ノード3のパケット処理部3bからさらに伝送路9cを経由してノード4に取り込まれる。以降、ノード4のパケット処理部4b→ノード4のスイッチ部4a→伝送路9c→ノード3のスイッチ部3a→伝送路9b→ノード2のスイッチ部2a→伝送路9a→ノード1のスイッチ部1aと信号を伝達し、ノード1の内部回路1bに取り込まれる。このように、図8の例では、信号が通過する経路が複雑かつ多大であり、その分通信に遅延が発生し、また、故障率も増大する問題があった。
【0009】
本発明の目的は、1対1の局間通信や一斉同報通信などの、リモートI/Oシステムが備えるべき通信形態を、マスタ局およびリモートI/O局の接続台数ならびに転送距離によらず、ほぼ一定の速度で実現できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のノードをデイジーチェーン接続して構成されるシステムで通信を行う場合に、各ノードの構成として、デイジーチェーン接続された前段のノードから受信したデータを入力するとともに、デイジーチェーン接続された後段のノードに送信させ、デイジーチェーン接続された後段のノードから受信したデータと、当該ノードの出力データとを、デイジーチェーン接続された前段のノードへと送信させる構成として、デイジーチェーン接続された特定の2台のノード間で直接データ伝送できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、デイジーチェーン接続された特定の2台のノード間で直接データ伝送が行え、デイジーチェーン接続でありながら、遅延の少ない良好なデータ転送が行え、例えば、1対1のマスタ局とリモートI/O局間通信や、1対1のマスタ局間通信が少ない遅延で良好に行えるとともに、デイジーチェーン接続であるので、マスタ局および/またはリモートI/O局からの一斉同報通信についても良好に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態を、図1〜図4を参照して説明する。
図1は、本例のシステム構成例を示した図である。この例では、4台のノード(通信装置)10,20,30,40を伝送路91,92,93で順に接続したデイジーチェーン接続で、システムを構成させてある。4台の通信装置10〜40の内、通信装置10は、主体通信機能を有するリモートI/O局(以下マスタと称する)の通信装置として設定してあり、他の通信装置20,30,40は、マスタからの指令で通信が行われる、従属通信機能を有する複数のリモートI/O局(以下スレーブと称する)の通信装置として設定してある。このように4台の通信装置10〜40を伝送路91〜93で接続させて、ここでは例えば100BASE−TXと称される方式の回線として接続させてある。100BASE−TX方式の場合、例えば局間の伝送距離が100m以内であれば、100Mbpsのデータ転送速度でデータ転送が可能である。
【0013】
各通信装置10〜40は、通信制御などのための論理演算部であるMPU(Micro Processing Unit)11,21,31,41を備え、各通信装置10〜40のMPU11,21,31,41の制御で、送信及び受信に必要なデータ処理を実行する。マスタの通信装置10の場合には、MPU11が主体通信機能を実行する制御構成としてある。スレーブの通信装置20,30,40の場合には、それぞれのMPU21,31,41が従属通信機能を実行する制御構成としてある。
【0014】
各通信装置10〜40が備える通信手段としては、データリンク層の機能を実現するMAC(Media Access Control)層12,22,32,42と、そのMAC層で処理されたデータの送信及び受信を行う物理層機能部13,14,23,24,25,26,33,34,35,36,43,44,45,46を備える。ここでは物理層機能部として、送信用物理層機能部13,23,25,33,35,43,45と、受信用物理層機能部14,24,26,34,36,44,46とを分けて示してある。各物理層機能部に設けられたポートが、伝送路91,92,93を構成するケーブルに接続される。伝送路91,92,93は、例えば、ツイストペアケーブルや光ファイバーケーブルが適用可能である。
【0015】
マスタの通信装置10は、物理層機能部として、1組の送信用物理層機能部13及び受信用物理層機能部14を備える。スレーブの通信装置20は、物理層機能部として、2組の送信用物理層機能部23,25及び受信用物理層機能部24,26を備える。他のスレーブの通信装置30,40についても、物理層機能部として、同様に2組の送信用物理層機能部及び受信用物理層機能部を備える。なお、マスタの通信装置10から見て、末尾に接続されたスレーブの通信装置40については、一方の送信用物理層機能部43及び受信用物理層機能部44だけが伝送路に接続され、他方の送信用物理層機能部45及び受信用物理層機能部46には何も接続されていない。図1の例では、3つのスレーブの通信装置20,30,40を共通の構成として示したが、スレーブの通信装置40として、他方の送信用物理層機能部45及び受信用物理層機能部46を設けない構成として、常時ネットワークの末尾に接続される構成としてもよい。なお、図1に矢印で示した信号経路についての説明は後述する。
【0016】
図2は、スレーブの通信装置20の構成例を示した図である。通信装置20に接続される一方及び他方の伝送路91,92の内、一方の伝送路91は、送信用物理層機能部23及び受信用物理層機能部24に接続してあり、他方の伝送路92は、送信用物理層機能部25及び受信用物理層機能部26に接続してある。一方の伝送路91が接続された受信用物理層機能部24で受信したデータ(パケット)は、MAC層機能部22で受信データの入力処理を行うとともに、バッファ回路28bを介して送信用物理層機能部25に送って、他方の伝送路92に送出させる。他方の伝送路92が接続された受信用物理層機能部26で受信したデータは、バッファ回路28aを介して送信用物理層機能部23に送って、一方の伝送路91に送出させる。MAC層機能部22から出力される送信データについても、送信用物理層機能部23に送って、一方の伝送路91に送出させる。ここで、MAC層機能部22から出力される送信データと、受信用物理層機能部26で受信したデータとが輻輳しないように、送信用物理層機能部23の入力部には重複調停回路27が接続させてある。
【0017】
重複調停回路27は、MAC層機能部22及び受信用物理層機能部26のデータ出力開始を検出し、優先制御を行う機能を有する。例えば、一方がデータを出力している途中で他方がデータ出力を開始する場合、先に出力しているデータを優先し、また、同時にデータ出力を開始した場合はMAC層機能部22からのデータを優先する。いずれの場合も、非優先となったデータは破棄されるが、これを重複調停回路27内部に蓄積し、優先するデータの送信終了後に順次出力する方法もある。尚、この重複調停回路27は設けない構成としてもよい。
【0018】
なお、受信用物理層機能部26で受信したデータは、バッファ回路28aを介して、重複調停回路27側に供給するようにしてあり、受信用物理層機能部24で受信したデータは、バッファ回路28bを介して、送信用物理層機能部25に送るようにしてある。それぞれのバッファ回路28a,28bを設けたことで、2組の物理層機能部のクロックエッジの違いを吸収するようにしてある。
【0019】
また本例の通信装置20は、プロセス入出力回路29を備えて、MPU21に供給された受信データを、プロセス入出力回路29を介してプロセス処理部(図示せず)に送るようにしてある。また、プロセス入出力回路29に得られたデータを、MPU21の制御でMAC層機能部22から送信用物理層機能部23に送って、送信させるようにしてある。なお、通信装置30、40についても、通信装置20と同様の構成である。
【0020】
次に、このように構成されるシステムでデータを送信させる際の処理例について説明する。ここでは、データの送信元がマスタの通信装置10であり、データの送信先がスレーブの通信装置30であるとする。このときマスタの通信装置10から送信されるパケットには、送信先アドレスとして、通信装置30を特定するアドレスが付与される。
【0021】
従って、図1の接続例中に太線の矢印で示すように、マスタの通信装置10のMAC層機能部12から出力された送信データは、送信用物理層機能部13で送信処理されて、伝送路91を介して次段の通信装置20の受信用物理層機能部24に送られ、受信用物理層機能部24で受信処理される。受信用物理層機能部24で受信されたパケットは、MAC層機能部22に送られるが、MAC層機能部22では自局のアドレスが送信先アドレスではないので、このとき受信したパケットの入力処理を行わない。
【0022】
そして、通信装置20の受信用物理層機能部24で受信されたパケットは、伝送路92に接続された送信用物理層機能部25に送られ、次段の通信装置30の受信用物理層機能部34に送られ、受信用物理層機能部34で受信処理される。受信用物理層機能部34で受信されたパケットは、MAC層機能部32に送られ、MAC層機能部32で自局のアドレスが送信先アドレスであることを確認し、このとき受信したパケットの入力処理を行う。
【0023】
また、通信装置30の受信用物理層機能部34で受信されたパケットは、送信用物理層機能部35で送信処理されて、伝送路93を介して次段の通信装置40の受信用物理層機能部44に送られ、受信用物理層機能部44で受信処理される。受信用物理層機能部44で受信されたパケットは、MAC層機能部42に送られるが、MAC層機能部42では自局のアドレスが送信先アドレスではないので、このとき受信したパケットの通信装置40での入力処理を行わない。
【0024】
このようにして、送信元の通信装置10から伝送路に送出されたパケットは、送信先アドレスである通信装置30で受信される。通信装置30で、その受信したパケットデータに対する応答が必要な場合には、逆の経路で通信装置30から通信装置10へパケットが返送される。
【0025】
図3は、通信装置30から通信装置10へパケットが返送される状態を示した図であり、太線の矢印で伝送経路を示す。図3に示すように、通信装置30のMAC層機能部32から出力されたパケットが、送信用物理層機能部33で送信処理されて、伝送路92を介して前段の通信装置20の受信用物理層機能部26に送られる。通信装置20の受信用物理層機能部26で受信したパケットは、送信用物理層機能部23に送られて送信処理されて、伝送路91を介して前段の通信装置10の受信用物理層機能部14に送られる。
【0026】
通信装置10の受信用物理層機能部14で受信したパケットは、MAC層機能部12に送られて、自局宛てのパケットであることが判別されて、受信パケットの入力処理が行われる。
【0027】
なお、図3のように伝送される場合、例えばスレーブの通信装置20では、受信用物理層機能部26で受信したパケットは、バッファ回路28a及び重複調停回路27を介して送信用物理層機能部23に送られる。バッファ回路28aでは、タイミングを補正する処理が行われ、重複調停回路27では内部のMAC層機能部22からの信号と衝突がないことを確認した上で、送信用物理層機能部23にパケットが送られる。このネットワークシステムが正常に作動している限りは、重複調停回路27で衝突を検出することはない。
【0028】
このような通信装置10と通信装置30との間での伝送状態を図4に時系列で示すと、通信装置10から通信装置20への伝送(ステップS1)、通信装置20から通信装置30への伝送(ステップS2)が順に行われて、通信装置30で自局宛てであることが判別されて、受信データが入力処理される。そして、通信装置30から送信される返送パケットについては、通信装置30から通信装置20への伝送(ステップS3)、通信装置20から通信装置10への伝送(ステップS4)が順に行われて、通信装置10で自局宛ての返送パケットであることが判別されて、受信データが入力処理される。なお、通信装置10から送信されたパケットについては、通信装置30から通信装置40への伝送(ステップS5)についても行われるが、通信装置40が受信先ではないので、通信装置40では入力処理は行われない。
【0029】
このように通信が行われることで、主体通信制御部を有するマスタの通信装置10と、択一的に定められる、従属通信制御部を有するリモートI/O局としてのスレーブの通信装置(20,30,40のいずれか)との間で、1対1の通信を行うことができる。即ち、ネットワークの接続状態としては、4台の通信装置10〜40を伝送路91〜93で順に接続したデイジーチェーン接続であるが、マスタ局と、スレーブの任意のリモートI/O局との間で、1対1の通信を行うことができる。従って、マスタ局と、スレーブの任意のリモートI/O局との間でデータ転送を行う際の、データ転送される距離を最短にすることができ、データ転送時の遅延を最小限に抑えることができ、また伝送時のトラブル発生を最小限に抑えることができる。データ転送速度についても、1対1の通信を行う2局間の直接的な伝送路の距離で定まるので、効率の良い高速伝送が可能になる。なお、上述した例では、マスタ局と、スレーブのリモートI/O局との間で1対1で通信を行う例としたが、マスタ局又はスレーブのリモートI/O局から一斉同報通信を行うことも可能である。
【0030】
なお、各通信装置10,20,30,40として、電源を供給する構成を、物理層機能部と、MAC層機能部とで分けるようにしてもよい。即ち、例えば図5に示すように、通信装置20′内に備える電源ユニット81から各部に電源を供給する構成として、MPU21とMAC層機能部22とプロセス入出力回路29等で構成される範囲a1に供給する第1の電源供給経路と、物理層機能部23,24,25,26と、重複調停回路27と、バッファ回路28a,28b等で構成される範囲a2に供給する第2の電源供給経路とを設ける。そして、例えば、第1の電源供給経路による電源供給については、この通信装置を構成する局の状態に応じてオン・オフさせ、第2の電源供給経路による電源供給については、この通信装置の状態に係わらず常時供給するようにする。図5の例では、通信装置20についての電源供給を示した通信装置20′の例としたが、その他の通信装置を同様に構成してもよい。
【0031】
このように構成することで、スレーブの任意のリモートI/O局がオフ状態であっても、その通信装置の前段に接続された通信装置と、後段に接続された通信装置との間で、データ転送が行え、通信ネットワークを維持することができる。なお、図5の例では、1つの電源ユニット81から2つの範囲a1,aに電源を個別に供給する構成としたが、例えば物理層機能部23,24,25,26とその周辺回路には、通信装置の外部から供給される電源で作動させるようにしてもよい。
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態を、図6及び図7を参照して説明する。この図6及び図7において、既に説明した第1の実施の形態で説明した図1〜図5に対応する部分には同一符号を付す。
【0033】
図6は、本例のシステム構成例を示した図である。この例でも第1の実施の形態と同様に、4台のノード(通信装置)を伝送路で順に接続したデイジーチェーン接続で、システムを構成させてあるが、本例では主体通信機能を有するリモートI/O局(マスタ)としての通信装置50として、2組の物理層機能部を有し、それぞれの物理層機能部に、個別にスレーブの通信装置を接続してある。
【0034】
即ち、図6に示すように、通信装置50としては、MPU51とMAC層機能部52と一方の物理層機能部53,54と他方の物理層機能部55,56とを備える。通信装置50の一方の物理層機能部53,54には、伝送路91を介してスレーブの通信装置20が接続させてある。ここではスレーブの通信装置20の後段には、別の通信装置を接続させていない。
【0035】
そして、通信装置50の他方の物理層機能部55,56には、伝送路92を介してスレーブの通信装置30が接続させてある。さらに、通信装置30の後段には、別のスレーブの通信装置40が接続させてある。各スレーブの通信装置20,30,40については、既に第1の実施の形態で説明したスレーブの通信装置20,30,40と同じ構成でよい。
【0036】
図7は、マスタの通信装置50の構成例を示した図である。この例の通信装置50は、一方及び他方の2つの伝送路91,92に接続できるように構成してあり、一方の伝送路91は、送信用物理層機能部53及び受信用物理層機能部54に接続してあり、他方の伝送路92は、送信用物理層機能部55及び受信用物理層機能部56に接続してある。一方の伝送路91が接続された受信用物理層機能部54で受信したデータ(パケット)は、MAC層機能部52で受信データの入力処理を行うとともに、バッファ回路58b及び重複調停回路57bを介して送信用物理層機能部55に送って、他方の伝送路92に送出させる。
【0037】
他方の伝送路92が接続された受信用物理層機能部56で受信したデータは、MAC層機能部52で受信データの入力処理を行うとともに、バッファ回路58a及び重複調停回路57bを介して送信用物理層機能部53に送って、一方の伝送路91に送出させる。
【0038】
MAC層機能部52から出力される送信データは、重複調停回路57aを介して送信用物理層機能部53に送って、一方の伝送路91に送出させるとともに、重複調停回路57bを介して送信用物理層機能部55に送って、他方の伝送路91に送出させる。各重複調停回路57a及び57bについては、MAC層機能部52から出力される送信データと、受信用物理層機能部54又は56で受信したデータとが輻輳しないように設けてある。バッファ回路58a,58bについては、2組の物理層機能部のクロックエッジの違いを吸収する回路である。
【0039】
また本例の通信装置50は、プロセス入出力回路59を備えて、MPU51に供給された受信データを、プロセス入出力回路59を介してプロセス処理部(図示せず)に送るようにしてある。また、プロセス入出力回路59に得られたデータを、MPU51の制御でMAC層機能部52から送信用物理層機能部53及び55に送って、2つの伝送路91,92に同時に送信させるようにしてある。
【0040】
このようにしてマスタの通信装置50に2組の伝送路91,92を接続可能に構成したことで、図6に示すように複数台の通信装置をデイジーチェーン接続した場合に、その接続の途中にマスタの通信装置を配置することが出来、接続の自由度が向上する。この図6に示した接続構成とした本実施の形態の場合にも、第1の実施の形態の場合と同様に、ネットワーク内の2台の通信装置間で1対1の通信が行える。従って、第1の実施の形態の場合と同様に、マスタ局と、スレーブの任意のリモートI/O局との間でデータ転送を行う際の、データ転送される距離を最短にすることができ、データ転送時の遅延を最小限に抑えることができ、また伝送時のトラブル発生を最小限に抑えることができる効果を有する。また、図6に示した構成の通信装置50をマスタ局として使用することで、デイジーチェーン接続されたネットワーク内に、複数台のマスタ局を接続することも可能になり、その複数台のマスタ局間で直接通信を行うこともできる。
【0041】
なお、図7に示した通信装置50の場合にも、図5に示した通信装置20′と同様に、物理層機能部(及びその周辺回路)とその他の部分とで電源供給を分けるようにして、通信装置50の状態にかかわらず常時、伝送の中継ができるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるシステム接続例を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による機器構成例を示す構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態によるシステム接続での通信状態の例を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による通信状態の例を示すタイミング図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の変形例による機器構成例を示す構成図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態によるシステム接続例を示す構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態による機器構成例を示す構成図である。
【図8】従来のシステム構成例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0043】
10,20,30,40,50…ノード(リモートI/Oユニット)、11,21,31,41,51…MPU、12,22,32,42,52…MAC層機能部、13,23,25,33,35,43,45,53,55…送信用物理層機能部、14,24,26,34,36,44,46,54,56…受信用物理層機能部、27,57a,57b…重複調停回路、28a,28b,58a,58b…バッファ回路、29,59…プロセス入出力回路、91,92,93…伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードをデイジーチェーン接続して構成され、少なくとも1台のノードは、他のノードとの通信を制御する主体通信制御部を有し、前記主体通信制御部を有するノード以外の他のノードは、従属通信制御部を有するシステムで行われる通信方法において、
前記主体通信制御部を有するノード以外のノードとして、
デイジーチェーン接続された前段のノードから受信したデータを入力するとともに、デイジーチェーン接続された後段のノードに送信させ、
デイジーチェーン接続された後段のノードから受信したデータと、当該ノードの出力データとを、デイジーチェーン接続された前段のノードへと送信させる構成として、
デイジーチェーン接続された特定の2台のノード間で直接データ伝送できるようにしたことを特徴とする通信方法。
【請求項2】
請求項1記載の通信方法において、
ノード内で、前記デイジーチェーン接続された後段のノードから受信したデータと、当該ノードの出力データとの重複を調停することを特徴とする通信方法。
【請求項3】
請求項1記載の通信方法において、
前記主体通信制御部を有するノードについても、前段のノードと後段のノードを接続可能とし、
前段のノードから受信したデータと、後段のノードから受信したデータとを入力し、
当該ノードの出力データを、前段のノードと後段のノードから送信させることを特徴とする通信方法。
【請求項4】
請求項1記載の通信方法において、
前記ノードは、前記主体通信制御部又は前記従属通信制御部と、前記送信及び受信を行う物理層機能部とを、個別に電源制御できるようにしたことを特徴とする通信方法。
【請求項5】
デイジーチェーン接続され、そのデイジーチェーン接続された通信装置の内の少なくとも1台は、他の通信装置との通信を制御する主体通信制御部を有し、前記主体通信制御部を有する通信装置以外の他の通信装置は、従属通信制御部を有するシステムを構成する通信装置において、
前段の通信装置とデイジーチェーン接続される第1の物理層機能部と、
前記第1の物理層機能部で受信されたデータを入力し、出力データを前記第1の物理層機能部から送信させ、前記主体通信制御部又は前記従属通信制御部として機能する通信制御部と、
後段の通信装置と接続され、前記第1の物理層機能部が受信したデータを後段の通信装置に送信させ、後段の通信装置から受信したデータを前記第1の物理層機能部で送信させる第2の物理層機能部とを備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項6】
請求項5記載の通信装置において、
前記第2の物理層機能部で受信したデータと、前記通信制御部の出力データとの重複を調停する重複調停部を備えたことを特徴とする通信方式。
【請求項7】
請求項5記載の通信装置において、
前記通信制御部が主体通信制御部であり、前記第1の物理層機能部で受信されたデータを前記第2の物理層機能部から送信させることを特徴とする通信装置。
【請求項8】
請求項5記載の通信装置において、
前記通信制御部と、前記第1及び第2の物理層機能部とを、個別に電源制御できるようにしたことを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−109258(P2006−109258A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295162(P2004−295162)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社 日立ハイコス (359)
【Fターム(参考)】