説明

通信機器の密閉強制冷却構造

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は通信機器における密閉筺体の強制冷却構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の各種通信機器は、小型・軽量化に伴う電子部品や構成ユニットの高密度実装構造による発熱、あるいは無線部の電波対策のためのシールド構造等による発熱の放熱処理が重要な課題となる。
【0003】通常、発熱処理は、単体装置の筐体内や複数のユニットを実装するラック内の対流による自然空冷が一般的であるが、使用環境,設置環境によっては自然空冷では不十分で、強制空冷が要求される。
【0004】このような要求に対応する強制空冷の方法として、例えば実開平5−95093号公報に「電子機器の伝導冷却板の構造」が提案されている。
【0005】この電子機器の伝導冷却板の構造は、複数の貫通穴を内部に備えた冷却板本体の貫通穴それぞれにパイプを圧入し、圧入したパイプ間をU字状の連結管で連結した後止め金具で固定して冷却板本体内に蛇行する冷却水路を形成し、別に用意されたタンクから水等の冷媒をポンピングして冷却板本体の冷却水路へ給水して、冷却板本体の表面部に実装あるいは接触して取り付けられた電子機器(発熱素子)を冷却するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の電子機器の伝導冷却板構造は、複数の貫通穴を内部に備えた冷却板本体の貫通穴それぞれにパイプを圧入し、圧入したパイプ間をU字状の連結管で連結した後止め金具で固定して冷却板本体内に蛇行する冷却水路を形成し、別に用意されたタンクから水等の冷媒をポンピングして冷却板本体の冷却水路へ給水して、冷却板本体の表面部に実装あるいは接触して取り付けられた電子機器(発熱素子)を冷却するものであるので、冷却板本体に対する貫通穴の切削工程,パイプの加工工程,U字状の連結管の加工工程,止め金具の加工工程,貫通穴へのパイプの圧入工程等、製作,組立工程が多岐に亘り且つ、部品点数も多いので、生産性が低く量産には適さない。
【0007】また、圧入したパイプと冷却板本体との接触は金属面接触であるため、十分な導伝効果は期待できず、従って、電子機器の性能を十分確保できない危険性がある。
【0008】本発明の目的は、生産性および信頼性が十分で且つ、小型・軽量化が可能な通信機器の密閉強制冷却構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の通信機器の密閉強制冷却構造は、一面が開放した箱状の底面部に、所定の幅および長さの一端に冷媒の流入、他端に冷媒の流出のためのホースニップルを備える冷媒流路を形成し、且つ放熱部品,無線回路を搭載したプリント基板を所定の位置に取り付けて前記箱状の開放面に蓋をして封止すると共に、前記ホースニップルと前記プリント基板への電源および各種信号を接続するためのソケットを有する密閉構造のシールドケースから成ることを特徴とする。
【0010】また、一面が開放した箱状の底面部に、所定の幅および長さの一端に冷媒の流入、他端に冷媒の流出のためのホースニップルを備える冷媒流路を形成し、且つ放熱部品,無線回路を搭載したプリント基板を取り付けて前記箱状の開放面に蓋をすると共に、前記ホースニップルと前記プリント基板への電源および各種信号を接続するためのソケットを有するシールドケースをプリント基板に取り付け、ラックに実装可能なユニットを構成することを特徴とする。
【0011】また、前記ラックは熱変換装置と、複数の前記ユニット個々の前記ソケットに対応するコネクタと前記ホースニップルに対応する弁付コネクタを備えるバックボードとを有し、前記ユニットを前記ラックの所定の位置に挿入したとき、前記ホースニップルが前記弁付コネクタの弁を押し開き、前記熱変換装置との間に冷媒の流路を形成し、前記熱変換装置からの冷媒を前記ホースニップルを介して前記シールドケース内部の前記冷媒流路を循環させ前記シールドケース内部に発生した熱を吸収して熱変換することを特徴とする。
【0012】また、一面が開放した箱状の底面部に、所定の幅および長さの一端に冷媒の流入、他端に冷媒の流出のためのホースニップルを備える冷媒流路を形成し、且つ放熱部品,無線回路を搭載したプリント基板を取り付けて前記箱状の開放面に蓋をすると共に、前記ホースニップルと前記プリント基板への電源および各種信号を接続するためのソケットを有する密閉構造のシールドケースに前記熱変換装置を実装し単体の通信装置の筐体とすることを特徴とする。
【0013】このように、冷却板はシールドケースとダイキャストの一体成形で、かつ冷却板自身に冷媒を通すための中空トンネル状の冷媒流路を設けているので、部品点数を削減できる。また、組立、部品単位による寸法のバラツキも無く一様に冷却効果を期待できるので製品の信頼性も上がる。
【0014】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の密閉強制冷却構造の通信機器ユニットの一例を示す図である。図2は図1の冷却板の構造を示す図であり、(A)は斜視図,(B),(C)は断面図である。図3は複数の通信機器ユニットのラック実装例を示す斜視図である。図4は密閉強制冷却構造の単体通信装置の斜視図である。図5は冷却板の成型例を説明する図であり、(A)は金型構造を示し、(B)〜(E)は成型過程を示す図である。
【0015】図1の通信機器ユニット10は、電子回路12の電源および各種信号を接続するためのソケット11と、発熱部品や無線回路を搭載したプリント基板22をサポート24を用いて冷却板21に取り付けた後、カバー23をネジ25により蝶着し、且つプリント基板22の電源および各種信号を接続するソケット26とを備える密閉構造の箱型形状のシールドケース20とから構成されている。
【0016】また、この通信機器ユニットを図3に示すようにラックに実装するためラック側には、実装する各種通信機器ユニット10の電子回路のソケット11に対応するコネクタ31,シールドケース内のプリント基板22のソケット26に対応するコネクタ32,冷却板のホースニップル21−a,21−bにそれおぞれ対応する弁付コネクタ33,34を備えたバックボード30が実装されている。
【0017】シールドケース20の一方が開口した底面部には図2(B)に示す冷却板21−1とプリント基板取付ボス21−4が一体成型され、冷却板21に別に成型された両端にホースニップル21−3aおよび21−3bを有する樋状あるいはU字の冷媒流路21−2がろう付け等により溶接されている。
【0018】なお、冷却板21を使用ぜすにシールドケース20の底面部にプリント基板取付ボスを一体成型し、冷媒流路21−5をろう付け等により溶接してもよい。また、冷媒流路は成型する際の型抜きが容易な形状であれば樋状あるいはU字状でなくてもよい。
【0019】また、冷却板21をダイキャスト成型する他の方法は、図2(C)に示すように射出口A21−5および射出口B21−6からアルミニューム容媒を射出した後、前記射出口A及びBよりガス(例えば窒素等)を注入し、注入されたガスは硬化速度の遅い厚肉の蛇行した凸部21−7に従って中空状のトンネルを形成するように進み射出口A21−5および射出口B21−6から各々注入されたガスが出会った所にて保圧、冷却することによりトンネル(冷媒流路)が形成され、その始終端には冷媒流入および流出用のホースニップル21−3aおよび21−3bを設ける。
【0020】例えば、図5(A)に示すように、金型A100を冷却板21の外周で且つ厚さ分凹状に堀込み、更にこの凹状の底面に冷媒流路用の溝103を堀込み、溝の両端に金属溶剤を注入するための射出口101,102を設け、金型B105で金型A100を封止した後、図5(B)に示すように射出口101,102から金属溶剤(アルミニューム溶剤)を射出する。
【0021】アルミニューム溶剤を射出した後、ガス(例えば窒素ガス)を射出口101,102から注入する。注入されたガスは図5(C)に示すように硬化速度が遅い肉厚の溝103に沿って中空状のトンネルを形成するように進み、図5(D)に示すように射出口101と102とから注入されたガスが出合った所で、保圧,冷却する。
【0022】金型が十分冷却した後、金型A100と金型B105とを分離し、図5(E)示すように金型A100から冷却板21を取出す。
【0023】図5は冷却板21単体を成型する場合を例に説明したが、シールドケースの金型の底面部に同様の処理を行うことにより、冷却板21とシールドケース20とを一体成型することができる。
【0024】このように構成した通信機器ユニット10を実装するラック40には、図3に示すようにシールドケース20内に密閉実装したプリント基板に搭載した電子部品で発生する熱を吸収した冷媒の温度を熱変換して冷却するための小型熱変換装置50が実装されている。
【0025】プリント基板22を密閉内蔵するシルードケースを搭載した通信機器ユニット10を図3に示すようにラック40に実装すべく、ガイドレール(図示せず)に沿って挿入すると、通信機器ユニット10のソケット11およびソケット26がラック40の内部に設けられたバックボード30のコネクタ31,32と嵌合すると同時に、冷媒流路のホースニップル21−3a,21−3bが弁付コネクタ33,34と嵌合する。
【0026】弁付コネクタ21−3a,21−3bは、冷媒流路のホースニップル21−3a,21−3bが挿入されるときのみ弁付が押し開かれ、挿入後は嵌合部分が密閉される構造となっている。
【0027】弁付コネクタの弁が押し開かれると、ラック40に実装されている小型熱変換装置50から冷却水,硫化水素等の冷媒が一方のホースニップル、例えば21−3aから流入し、シールドケース内に設けた冷媒流路の中を循環し、シールドケース内に発生した熱を吸収し熱変換され、ホースニップル21−3bから小型熱変換装置50へ戻る。シールドケース内の熱を吸収して上昇した冷媒温度は、小型熱変換装置50により熱変換され冷却され、再びホースニップル21−3aからシールドケース内の冷媒流路21−2に流入し、シールドケース内部の発熱を吸収しホースニップル21−2bを介して小型熱変換装置50へ戻る。
【0028】次に第2の実施の形態について図4を参照して説明する。図4は屋外等に設置する通信装置に本発明の密閉強制冷却構造を適用した場合の一例を示す図である。
【0029】この通信装置は小型熱変換装置50を内蔵する筐体60内に図2に示す冷却板を実装した場合、あるいは冷却板を内蔵したシールドケースそのものを通信装置の筐体60として、小型熱変換装置50を実装すると共に、通信装置を構成する電子回路を一括内蔵してネジ71によりカバー70を取り付け筐体自身を密閉強制冷却構造とした場合の単体の通信装置である。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、一面が開放した箱状のシールドケースと、所定の幅および長さの樋状またはU字状の一端に冷媒の流入、他端に冷媒の流出のためのホースニップルを備える冷媒流路をそれぞれ個別にダイキャスト成型し、冷媒流路をシールドケースの底面部にろう付け等により溶接すると共にシールドケース底面部に発熱素子等の電子部品や無線回路を搭載したプリント基板を取り付けて箱状の開放面に蓋をすると共に、ホースニップルとプリント基板への電源および各種信号を接続するためのソケットとを外部接続端子として突出させて密閉構造のシールドケースを形成するよう構成したので、複雑な製作,組立工程を除去でき、且つ部品点数も少なく生産性の向上、コスト削減が可能である。
【0031】また、冷媒流路と冷却板,シールドケースがダイキャストの一体成型であるため、熱変換効率がよく、効率の良い冷却効果が期待でき、更に、電波対策すなわち、電波の封じ込め(EMI)、他電波からの影響を受けない(EMS)に十分対応することができ、信頼性の高い通信機器ユニット,通信装置装置,通信システムを構築することがきる。
【0032】また、通信機器ユニット単位に密閉強制冷却構造とするこにより、自然空冷のための対流路を必要としないので、高密度実装が可能となり通信装置,通信システムの小型・軽量化に寄与する。
【0033】また、密閉構造のシールドケースに熱変換装置を実装しシールドケースを筐体とするため、屋外に設置する通信装置を容易に実現でき且つ防水効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の密閉強制冷却構造の通信機器ユニットの一例を示す図である。
【図2】図1の冷却板の構造を示す図であり、(A)は斜視図,(B),(C)は断面図である。
【図3】本発明の複数の通信機器ユニットのラック実装例を示す斜視図である。
【図4】本発明の密閉強制冷却構造を適用した屋外等に設置する通信装置の一例を示す図である。
【図5】冷却板の成型例を説明する図であり、(A)は金型構造を示し、(B)〜(E)は成型過程を示す図である。
【符号の説明】
10 通信機器ユニット
11 ソケット
12 電子回路
20 シールドケース
21 冷却板
21−2 冷媒流路
21−2a ホースニップル
21−3b ホースニップル
21−4 プリント基板取付ボス
21−5 射出口A
21−6 射出口B
21−7 凸部
22 プリント基板
23 カバー
24 サポート
25 ネジ
30 ラックのバックボード
31,32 コネクタ
33,34 弁付コネクタ
40 ラック
50 小型熱変換装置
60 筐体
70 カバー
71 ネジ
100 金型A
101,102 射出口
103 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一面が開放した箱状の底面部に、所定の幅および長さの一端に冷媒の流入、他端に冷媒の流出のためのホースニップルを備える冷媒流路を形成し、且つ発熱部品,無線回路を搭載したプリント基板を所定の位置に取り付けて前記箱状の開放面に蓋をして封止すると共に、前記ホースニップルと前記プリント基板への電源および各種信号を接続するためのソケットを有する密閉構造のシールドケースから成ることを特徴とする通信機機器の密閉強制冷却構造。
【請求項2】 一面が開放した箱状の底面部に、所定の幅および長さの一端に冷媒の流入、他端に冷媒の流出のためのホースニップルを備える冷媒流路を形成し、且つ発熱部品,無線回路を搭載したプリント基板を取り付けて前記箱状の開放面に蓋をすると共に、前記ホースニップルと前記プリント基板への電源および各種信号を接続するためのソケットを有するシールドケースをプリント基板に取り付け、ラックに実装可能なユニットを構成することを特徴とする通信機器の密閉強制冷却構造。
【請求項3】 前記ラックは熱変換装置と、複数の前記ユニット個々の前記ソケットに対応するコネクタと前記ホースニップルに対応する弁付コネクタを備えるバックボードとを有し、前記ユニットを前記ラックの所定の位置に挿入したとき、前記ホースニップルが前記弁付コネクタの弁を押し開き、前記熱変換装置との間に冷媒の流路を形成し、前記熱変換装置からの冷媒を前記ホースニップルを介して前記シールドケース内部の前記冷媒流路を循環させ前記シールドケース内部に発生した熱を吸収して熱変換することを特徴とする請求項2記載の通信機器の密閉強制冷却構造。
【請求項4】 一面が開放した箱状の底面部に、所定の幅および長さの一端に冷媒の流入、他端に冷媒の流出のためのホースニップルを備える冷媒流路を形成し、且つ発熱部品,無線回路を搭載したプリント基板を取り付けて前記箱状の開放面に蓋をすると共に、前記ホースニップルと前記プリント基板への電源および各種信号を接続するためのソケットを有する密閉構造のシールドケースに前記熱変換装置を実装し単体の通信装置の筐体とすることを特徴とする通信機器の密閉強制冷却構造。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【特許番号】第2842851号
【登録日】平成10年(1998)10月23日
【発行日】平成11年(1999)1月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−225099
【出願日】平成8年(1996)8月27日
【公開番号】特開平10−70386
【公開日】平成10年(1998)3月10日
【審査請求日】平成8年(1996)8月27日
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【参考文献】
【文献】実開 平6−2782(JP,U)
【文献】実開 平3−61350(JP,U)