説明

通信用キャビネット

【課題】内部の防音性を維持すると共に通信機器から発生する熱を外部に効率よく排出することが可能な通信用キャビネットを提供すること。
【解決手段】VDSL装置41及びONU42を収納する通信機器収納部15と、内部に空気を導入する吸気口4A及び外部に空気を排出する排気口5Aとを有し、吸気口4A及び通信機器収納部15の間と、排気口5A及び通信機器収納部15の間とに、曲部を有する流路26、36がそれぞれ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、VDSL(Very high-speed Digital Subscriber Line:超高速デジタル加入者線)装置などの通信機器が内部に設置される通信用キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバやCATV(Cable Television)に代表される高速の通信回線を用いたブロードバンドサービスが普及している。これは、加入者宅に光ファイバケーブルを施設するFTTH(Fiber To The Home)方式によって構築されており、このようなブロードバンドサービスに加入することで、高速、大容量のブロードバンドサービスによる放送、映画、音楽などを視聴することが可能となる。しかし、一般的に既存のマンションや集合住宅において、加入者宅へ光ファイバケーブルを新たに敷設するには、配管やスペース確保、工事面で困難が伴うため、経路の一部に光ファイバケーブルを用いて既存の電話回線またはLAN(Local Area Network)用メタル配線をそのまま使用することができるVDSL方式を用いることが主流となりつつある。
【0003】
これは、マンションや集合住宅の共用部分に、VDSL装置や光信号を電気信号に変換すると共に電気信号を光信号に変換するONU(Optical Network Unit:光加入者終端装置)などの通信機器を備えたキャビネットを設置し、このキャビネットを介して光ファイバケーブルと既存の電話回線またはLAN用メタル配線とを接続するものである。
このような通信用キャビネットにおいても、天井面に取り付けることによって占有面積を小さくすることなく通行の妨害を除いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この通信用キャビネットには、スリット状の通風口が適宜形成されており、通信機器の駆動によって発生した熱を通風口から外部に排出している。
【特許文献1】特開2005−129787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の通信用キャビネットでは、通風口を形成することで通信機器の駆動により発生した熱を外部に効率よく排出することができるが、通信機器の駆動音が外部に漏れる場合や、雨や塵などが内部に吹き込む場合がある。そこで、通風口を塞いで密閉状態とすることでこれらを防止することが考えられるが、通信機器の駆動により発生した熱を外部に排出することが困難となる。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、内部の防音性を維持すると共に通信機器から発生する熱を外部に効率よく排出することが可能な通信用キャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の通信用キャビネットは、内部に通信機器が収納可能であり、該通信機器を介して外部からの信号を各戸へ分配する通信キャビネットであって、前記通信機器を収納する通信機器収納部と、該通信機器収納部に気体を導入する吸気口及び前記通信機器収納部から気体を排出する排気口とを有し、前記吸気口及び前記通信機器収納部の間と、前記排気口及び前記通信機器収納部の間とに、流路がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、吸気口及び排気口によって通信機器収納部が外部と接続されることで通信機器から発生した熱を外部に排出することができ、流路を設けることで通信機器の駆動音が外部に漏れにくくなると共に雨や塵などが通信機器収納部に吹き込むことを防止する。
すなわち、流路を設けることで、通信機器から発生した駆動音が、吸気口や排気口に向けて直接伝播せずに、流路の内面で反射する。この流路の内面における反射時に、駆動音が減衰される。また、通信機器収納部と吸気口や排気口とを直接接続することと比較して、流路が長くなることによっても、駆動音が流路の内面において反射する回数が多くなることから、吸気口や排気口から漏出する駆動音を減衰できる。
また、吸気口や排気口から内部空間に向けて雨や塵などが吹き込んでも、通信機器収納部に直接到達することなく流路の内面で阻害されやすくなる。これにより、雨や塵などが通信機器収納部に到達しにくくなる。
以上より、内部の防音性や防水性、防塵性を維持すると共に通信機器から発生する熱を外部に効率よく排出することができる。
【0008】
また、本発明の通信用キャビネットは、前記流路の内の少なくとも一方に、曲部が少なくとも1つ設けられていることが好ましい。
この発明では、流路に曲部を設けることで、直線状の流路で接続することと比較して流路が長くなることにより、駆動音が流路の内面において反射する回数が多くなることから、吸気口や排気口から漏出する駆動音をより減衰できる。また、流路に曲部を設けることで、雨や塵などが通信機器収納部により到達しにくくなる。
【0009】
また、本発明の通信用キャビネットは、前記流路の内面に、吸音部材が設けられていることが好ましい。
この発明では、流路内を伝播する駆動音が流路の内面で反射する際に吸音部材で吸収されるので、吸気口や排気口から漏出する駆動音をより確実に減衰できる。
【0010】
また、本発明の通信用キャビネットは、前記吸気口及び前記排気口の少なくとも一方に、防塵用のフィルタが設けられていることが好ましい。
この発明では、フィルタによって吸気口や排気口から流路内に塵などが吹き込みにくくなる。
【0011】
また、本発明の通信用キャビネットは、前記通信機器収納部に、前記通信機器の一側面を前記通信機器収納部のうち前記流路との連結口が形成された内壁に密着させると共に前記流路を流通する前記気体を前記通信機器の内部に流通させる密着弾性部材が設けられていることが好ましい。
この発明では、通信機器を通信機器収納部のうち流路との連結口が形成された側壁に密着させることで、流路と通信機器内部との間で気体漏れが低減される。これにより、通信機器から発生する熱を外部により効率よく排出することができる。
【0012】
また、本発明の通信用キャビネットは、前記流路の少なくとも一方に、前記気体の流通を促進させる送風部材が取り付け可能であることが好ましい。
この発明では、送風部材を取り付けることで流路中の気体の流通を促進させ、通信機器から発生した熱を効率よく排出することができる。
【0013】
また、本発明の通信用キャビネットは、外表面の一部が、天井面に取り付けられることとしてもよい。
この発明では、天井面に取り付けることによって占有面積を小さくすることなく通行の妨害を除くことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の通信用キャビネットによれば、吸気口及び排気口と通信機器収納部とを接続するそれぞれの流路に曲部を少なくとも1つ設けることで、通信機器から発生した熱を外部に排出することができ、通信機器の駆動音を外部に漏れにくくすると共に雨や塵などが通信機器収納部に吹き込むことを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかる通信キャビネット装置の一実施形態を、図を参照しながら説明する。ここで、図1は本実施形態における通信用キャビネットの概略斜視図及び概略分解斜視図、図2は筐体本体の概略斜視図、図3は通信用キャビネットの部分拡大断面図、図4は密着弾性部材の概略斜視図、図5及び図6は流路部材の概略断面図、図7は通信用キャビネットのエアフローの説明図を示している。
【0016】
本実施形態における通信用キャビネット(以下、キャビネットと省略する)1は、例えば、VDSL(Very high-bit-rate Digital Subscriber Line:超高速デジタル加入者線)方式で用いる通信機器を内部に設置可能な通信用キャビネットであって、マンションや集合住宅などの共用部分の天井面に設置されるものである。
このキャビネット1は、図1から図5に示すように、ほぼ箱状の筐体本体2と、この筐体本体2の開口部を覆う蓋体3と、筐体本体2の左右両側面にそれぞれ取り付けられた流路部材4、5とを備えている。なお、本実施形態において、図1に示す+X側を前方、+Y側を右方、+Z側を上方とする。
そして、キャビネット1には、図5(a)、(b)に示す通信機器部6とこの通信機器部6に電力を供給するタップ(図示略)とが設けられている。
【0017】
筐体本体2は、図1(a)、(b)及び図2に示すように、前面及び底面に開口を有するほぼ箱状の部材であり、矩形に組み立てられる天板11、右側板12、左側板13及び後側板14によって構成されている。そして、筐体本体2は、蓋体3により開口部を覆うことで内部に通信機器部6を収容する通信機器収納部15を形成する。
【0018】
天板11は、矩形状を有した板部材であって、キャビネット1の上面全体を覆っており、取付金具(図示略)を用いて天井面に取り付けられている。
【0019】
右側板12には、流路部材4に形成された後述する連結口23A、23Bに対応する位置にそれぞれ連結口12A、12Bが形成されている。
連結口12Aは、右側板12の前方側に形成された矩形状の開口によって構成されている。
また、連結口12Bは、右側板12の後方側の上端に形成された開口によって構成されている。
【0020】
また、右側板12には、連結口12Aを覆うように密着用板バネ(密着弾性部材)16が設けられている。
この密着用板バネ16は、図3(a)、(b)及び図4に示すように、板状部材を屈曲させたものであって、装置当接部16Aと装置当接部16Aの両端にそれぞれ設けられた屈曲部16B、16Cと、屈曲部16B、16Cにそれぞれ連続して設けられた側板当接部16D、16Eとを備えている。
装置当接部16Aは、後述するVDSL装置41の右側面が当接され、ほぼ中央部であって連結口12Aと対応する位置に開口16Fが形成されており、右側板12と平行となるような構成となっている。また、装置当接部16Aの両側面にはゴムシート(図示略)が貼着されており、上記VDSL装置41や右側板12との密着性を向上させている。
屈曲部16B、16Cは、装置当接部16Aの両端部から離間するにしたがって右側板12に接近するように屈曲させることによって形成されている。
側板当接部16D、16Eは、右側板12と平行となるような構成となっており、右側板12にネジ止め固定されている。また、側板当接部16Eに形成されたネジ止め用の穴は長穴となっており、側板当接部16Eが側板当接部16Dに対して前後に移動可能となっている。
【0021】
したがって、密着用板バネ16は、図3(b)に示すように右側板12にネジ止めされた後、VDSL装置41を装置当接部16Aに当接させて押し込むと、図3(a)に示すように屈曲部16B、16Cが弾性変形して側板当接部16Eが前方に移動すると共に装置当接部16Aが右側板12に向けて移動する。そして、VDSL装置41と右側板12とが、密着用板バネ16の弾性力によって密着する。これにより、VDSL装置41の右側面と右側板12との間に間隙が形成されても、VDSL装置41が密着用板バネ16によって右側板12に密着し、連結口12AとVDSL装置41の右側面との間の気体漏れが抑制される。
【0022】
左側板13には、図1及び図2に示すように、流路部材5に形成された後述する連結口33A、33Bに対応する位置にそれぞれ連結口13A、13Bが形成されている。
連結口13Aは、連結口12Aと同様に、左側板13の前方側に形成された矩形状の開口によって構成されている。
また、連結口13Bは、連結口13Bと同様に、左側板13の後方側の上端に形成された開口によって構成されている。
また、左側板13にも、右側板12と同様に、上述した密着用板バネ16がネジ止め固定されている。
【0023】
後側板14には、図2に示すように、図示しない光ファイバケーブルやメタルケーブルを導入出させるためのケーブル導入出口14Aが形成されている。そして、このケーブル導入出口14Aにはゴムシート14Bが張設されており、上記各ケーブルを導入出する際にこのゴムシート14Bに切り込みを入れることによって筐体本体2の内部にケーブルを導入できるように構成されている。
【0024】
蓋体3は、図1及び図2に示すように、L字状に屈曲して形成されており、筐体本体2の開口部を覆ったときに天板11と対向配置される底面部17と、後側板14と対向配置される前面部18とによって構成されている。
底面部17は、後側板14と抜差し蝶番(図示略)によって固定されており、この蝶番により後側板14側の端辺を軸として回動可能となっている。
前面部18の左右両側縁部には、鍵穴(図示略)が設けられている。そして、この鍵穴に鍵(図示略)を差し込んで旋回させることにより前面部18の両側縁からロック板片(図示略)が突出する構成となっている。これにより、前面部18は、鍵を旋回してロック板片を突出させることで、右側板12と左側板13とにそれぞれ形成されたロック用スリット(図示略)に係止するよう構成となっている。
以上より、筐体本体2の開口部を蓋体3で覆った場合、通信機器収納部15は、連結口12A、12B、13A、13Bを除いて通風口が形成されていない。
【0025】
流路部材4は、図1(a)、(b)に示すように、中空の直方体形状を有しており、筐体本体2の右側板12にネジ止め固定されている。
また、図3(a)に示すように、流路部材4の内部には、仕切板21が設けられている。この仕切板21は、流路部材4の左右幅方向にわたって設けられており、流路部材4の内部空間を前方側の空間と後方側の空間との独立した2つの空間に分割している。
【0026】
そして、図5(a)、(b)に示すように、流路部材4の右側面には、外部から流路部材4の前方側の内部空間に空気(気体)を送り込むための吸気口4Aが形成されている。
この吸気口4Aは、流路部材4の右側面の前方側の上端に形成された開口によって構成されている。また、吸気口4Aは、防塵用であって交換可能なフィルタ22によって覆われている。
【0027】
また、流路部材4の左側面には、連結口23A、23Bが形成されている。
この連結口23Aは、左側面の前方側に形成された矩形状の開口によって構成されている。そして、連結口23Aは、流路部材4の前方側の内部空間から通信機器収納部15に空気を送り出す構成となっている。
また、連結口23Bは、左側面の後方側の上端に形成された開口によって構成されている。
流路部材4は、連結口23Aの周囲であって筐体本体2の外部側にゴムリング24を配置した状態で、連結口23Aと筐体本体2の右側板12に形成された連結口12Aとが一致するように左側面を筐体本体2の右側板12に当接させてネジ止め固定される。このように、連結口23Aと連結口12Aとの間にゴムリング24を介在させた状態で流路部材4を筐体本体2に固定することで、連結口23Aと連結口12Aとが密着され、流路部材4の前方側の内部空間から通信機器収納部15への空気の流通時における空気漏れを防止できる。
【0028】
また、流路部材4の前方側の内部空間には、流路形成板25A、25Bが設けられており、これら流路形成板25A、25Bによって流路26が形成されている。
流路形成板25Aは、流路部材4の前方側の内部空間の前後方向の前方から仕切板21の前方側の側面にわたって天面から底面に向けて突出するように設けられており、底面側の端辺と底面との間に空隙が形成されている。
また、流路形成板25Bは、流路形成板25Aと同様に、流路部材4の前方側の内部空間の前方から仕切板21の前方側の側面にわたって底面から天面に向けて突出するように設けられており、天面側の端辺と底面との間に空隙が形成されている。
【0029】
したがって、流路26は、流路形成板25Aと底面との間に形成された空隙によって構成される曲部26Aと、流路形成板25Bと天面との間に形成された空隙によって構成される曲部26Bとを有しており、図5(b)に示すように、2つの曲部26A、26Bにおいて折り曲げられたほぼZ字状の流路となっている。そして、流路26は、吸気口4Aから流路部材4の内部に空気を取り込み、取り込んだ空気を流路形成板25Aと右側面との間で底面に向けて下降させ、曲部26Aを経た後で流路形成板25A、25Bの間で天面に向けて上昇させ、曲部26Bを経た後で流路形成板25Bと左側板との間で底面に向けて下降させ、連結口23Aから連結口12Aを介して通信機器収納部15へ送り出す構造となっている。
【0030】
また、流路26を形成する流路形成板25A、25Bの表面や流路部材4の内側面には、吸音部材(図示略)が貼着されている。この吸音部材は、例えばウレタンの繊維などをシート状にすることによって形成されており、内部に多数の空隙を有することによって音波を吸収する。
なお、流路26中には、空気の流通を促進させるファンなどの送風部材が取り付け可能となっている。
以上より、流路部材4は、吸気口4Aや連結口23A、23Bを除いて通風口が形成されていない。
【0031】
流路部材5は、図1(a)、(b)に示すように、流路部材4と同様に、中空の直方体形状を有しており、筐体本体2の左側板13にネジ止め固定されている。
また、図6(a)に示すように、流路部材5の内部には、仕切板31が設けられている。この仕切板31は、流路部材5の左右幅方向にわたって設けられており、流路部材5の内部空間を前方側の空間と後方側の空間との独立した2つの空間に分割している。
【0032】
そして、図6(a)、(b)に示すように、流路部材5の左側面には、流路部材5の前方側の空間から外部に空気を送り出すための排気口5Aが形成されている。
この排気口は、流路部材5の左側面の前方側の上端に形成された開口によって構成されている。また、排気口5Aは、吸気口4Aと同様にフィルタ32によって覆われている。
【0033】
また、流路部材5の右側面には、連結口33A、33Bが形成されている。
この連結口33Aは、右側面の前方側に形成された矩形状の開口によって構成されている。そして、連結口33Aは、通信機器収納部15から流路部材5の前方側の内部空間に空気を送り込む構成となっている。
また、連結口33Bは、右側面の後方側の上端に形成された開口によって構成されている。そして、連結口33Bは、通信機器収納部15と流路部材5の後方側の内部空間との間で空気の流通を可能としている。
流路部材5は、連結口33Aの周囲であって筐体本体2の外部側にゴムリング34を配置した状態で、連結口33Aと筐体本体2の左側板13に形成された連結口13Aとが一致するように左側面を筐体本体2の左側板13に当接させてネジ止め固定される。
【0034】
また、流路部材5の前方側の内部空間には、流路形成板35A、35Bが設けられており、これら流路形成板35A、35Bによって流路36が形成されている。
流路形成板35Aは、流路部材5の前方側の内部空間の前方から仕切板31の前方側の側面にわたって底面から天面に向けて突出するように設けられており、天面側の端辺と底面との間に空隙が形成されている。
また、流路形成板35Bは、流路形成板35Aと同様に、流路部材5の前方側の内部空間の前後方向の前方から仕切板31の前方側の側面にわたって天面から底面に向けて突出するように設けられており、底面側の端辺と底面との間に空隙が形成されている。
【0035】
したがって、流路36は、流路形成板35Aと天面との間に形成された空隙によって構成される曲部36Aと、流路形成板35Bと底面との間に形成された空隙によって構成される曲部36Bとを有しており、図6(b)に示すように、2つの曲部36A、36Bにおいて折り曲げられたほぼZ字状の流路となっている。そして、流路36は、連結口33Aから通信機器収納部15内の空気を取り込み、取り込んだ空気を流路形成板35Aと右側板との間で天面に向けて上昇させ、曲部36Aを経た後で流路形成板35A、35Bの間で底面に向けて下降させ、曲部36Bを経た後で流路形成板35Bと左側板との間で天面に向けて上昇させ、排気口5Aから外部に送り出す構造となっている。
【0036】
また、流路部材5の後側面には、放熱口5Bが形成されている。この放熱口5Bは、後側面の上端に形成された開口によって構成されている。また、放熱口5Bは、吸気口4A及び排気口5Aと同様に、フィルタ38によって覆われている。そして、放熱口5Bは、流路部材5の後方側の内部空間とキャビネット1の外部との間で空気の流通を可能としている。すなわち、流路部材5の後方側の内部空間には、流路36と独立した副流路39が形成されている。
【0037】
また、流路36を形成する流路形成板35A、35Bの表面や流路部材5の内側面には、流路26と同様に、吸音部材(図示略)が貼着されている。
なお、流路36中には、流路36と同様に、空気の流通を促進させるファンなどの送風部材が取り付け可能となっている。
以上より、流路部材5は、排気口5Aや放熱口5B、連結口33A、33Bを除いて通風口が形成されていない。
【0038】
通信機器部6は、図7(a)、(b)に示すように、筐体本体2の通信機器収納部15に配置されており、VDSL装置(通信機器)41とONU(通信機器)42とを備えている。
VDSL装置41は、マンションや集合住宅にあらかじめ設けられている電話回線用のメタル屋内配線やLAN(Local Area Network)用のメタルケーブル配線を用いてLANを構築する装置である。
そして、VDSL装置41は、メタルケーブルを介してキャビネット1の外部との間で電気信号の送受信を行う構成となっている。また、VDSL装置41は、ONU42との間で信号を送受信するように構成されている。
【0039】
このVDSL装置41は、その外形が扁平の直方体形状を有しており、左右両側面にそれぞれ内部への吸気や外部への排気を行うためのスリット(図示略)が形成されている。そして、VDSL装置41の内部の右側面の近傍には、内部に空気を取り込んで強制的に空冷するためのファン43が設けられている。
また、VDSL装置41は、通信機器収納部15において左右両側面に形成された上記スリットが連結口12A、13Aにそれぞれ臨むように配置されている。ここで、VDSL装置41は、連結口12A、13Aの周囲であって筐体本体2の内部側にそれぞれ設けられた密着用板バネ16を介在させた状態で左右両側面が右側板12及び左側板13にそれぞれ当接するように配置されている。
【0040】
ONU42は、光ファイバケーブルを介してキャビネット1の外部との間で光信号の送受信を行う構成となっている。
このONU42は、その外形が扁平の直方体形状を有しており、通信機器収納部15においてVDSL装置41と空隙を開けて配置されている。ここで、ONU42は、右側板12及び左側板13と接触しない位置に配置されている。
このようにVDSL装置41及びONU42が配置されることによって、通信機器収納部15には、筐体本体2の右側板12に形成された連結口12Aから吸気し、VDSL装置41の内部を経て連結口13Aから排出するエアフローと、連結口12Aから吸気してVDSL装置41の内部を経て連結口13Bから排出するエアフローとが形成される。
なお、本実施形態では、通信機器部6が、VDSL装置41及びONU42をそれぞれ1つずつ有しているが、加入者の回線数に応じて複数有する構成としてもよい。
また、上記タップは、雷害防御機能を有しており、通信機器収納部15に設けられている。
【0041】
以上のような構成のキャビネット1では、以下のようにして通信機器部6を構成するVDSL装置41及びONU42の空冷を行う。
まず、通信機器部6を駆動してVDSL装置41のファン43を回転させると、図7(a)、(b)に示す矢印R1のように、吸気口4Aから流路26内にキャビネット1外の空気が強制的に取り込まれる。そして、空気は、矢印R2のように流路形成板25Aと右側面との間で底面に向けて下降し、矢印R3のように曲部26Aを経た後で流路形成板25A、25Bの間で天面に向けて上昇する。さらに、空気は、矢印R4のように曲部26Bを経た後で流路形成板25Bと左側板との間で底面に向けて下降し、連結口23Aから連結口12Aを介して通信機器収納部15へ送り出される。ここで、VDSL装置41と右側板12との間に密着用板バネ16が設けられているので、連結口12AとVDSL装置41の右側面との間の気体漏れが抑制される。
【0042】
VDSL装置41は、連結口12Aから送り出された空気を吸気し、VDSL装置41の内部を経て、取り込んだ空気の一部を連結口13Aから排出する。このとき、VDSL装置41の駆動によって発生した熱が、VDSL装置41の内部に空気を流通させることでVDSL装置41外に排出される。
VDSL装置41から排出された空気は、矢印R5のように連結口13Aを介して連結口33Aに送り出され、流路36内を流通する。すなわち、空気は、矢印R6のように流路形成板35Aと右側板との間で天面に向けて上昇し、矢印R7のように曲部36Aを経た後で流路形成板35A、35Bの間で底面に向けて下降する。ここで、上述と同様に、VDSL装置41と左側板13との間にも密着用板バネ16が設けられているので、連結口13AとVDSL装置41の右側面との間の気体漏れが抑制される。
そして、空気は、曲部36Bを経た後で流路形成板35Bと左側板との間で天面に向けて上昇し、矢印R8のように排気口5Aからキャビネット1外に排出される。
【0043】
また、VDSL装置41の発熱により、通信機器収納部15内には、空気が矢印R9に示すように連結口13Bを経て連結口33Bから副流路39に排出されるエアフローが形成される。このとき、ONU42の駆動によって発生した熱が、通信機器収納部15内に空気を流通させることでONU42外に排出される。
そして、連結口33Bから排出された空気は、矢印R9のように副流路39を流通した後、矢印R10のように放熱口5Bからキャビネット1外に排出される。
以上のようにして、通信機器部6を構成するVDSL装置41及びONU42の空冷を行う。
【0044】
ここで、VDSL装置41及びONU42を駆動することにより、ファン43の回転音などの駆動音が発生する。この駆動音は、流路26、36や副流路39を通って吸気口4Aや排気口5A、放熱口5Bからキャビネット1外に向けて伝播される。しかし、流路26、36に曲部26A、26B、36A、36Bが設けられていることから、駆動音は、流路26、36内を伝播するときに各流路26、36の内面で反射し、この反射時に減衰する。また、流路26、36の内面に吸音部材が設けられていることによっても駆動音が減衰する。これにより、駆動音がキャビネット1の外部に漏れにくくなる。
また、吸気口4Aや排気口5Aからキャビネット1内に雨や塵などが吹き込んでも、流路26、36に曲部26A、26B、36A、36Bが設けられているので、雨や塵などが通信機器収納部15に吹き込むことが防止される。このとき、吸気口4Aや排気口5A、放熱口5Bをフィルタ22、32、38で覆うことで、雨や塵などの吹き込みがより確実に防止される。
【0045】
続いて、本実施形態におけるキャビネット1を用いたネットワークの構成について、図8を参照しながら説明する。
内部に通信機器部6が収容されたキャビネット1は、図1に示すように、マンションや集合住宅などの共用部分の天井面に設置されている。また、共用部分の他の箇所には、端子盤51やMDF(Main Distributing Frame:本配線盤)52が配置されている。
VDSL装置41はメタルケーブルを介してマンションや集合住宅の各加入者宅53内に配置されたモデム54に接続されており、このモデム54がパーソナルコンピュータ55や電話機56に接続されている。また、VDSL装置41は、メタルケーブルにより、端子盤51を介して電話局57内に配置された電話交換機58に接続されている。
一方、ONU42は、光ケーブルにより、電話局57内に配置されたOLT(Optical Line Terminal:光伝送路終端装置)59に接続されており、このOLT59がルータ60を介してインターネットのネットワークに接続されている。
したがって、電話網は、加入者宅53の電話機56、モデム54からキャビネット1内のVDSL装置41を経てMDF52、電話交換機58を経由することで構成されている。また、インターネット網は、パーソナルコンピュータ55、モデム54からキャビネット1内のVDSL装置41、ONU42を経てOLT59、ルータ60を経由することで構成されている。
【0046】
このように構成されたキャビネット1によれば、吸気口4A及び排気口5Aと通信機器収納部15とを接続するそれぞれの流路26、36に曲部26A、26B、36A、36Bを設けることで、VDSL装置41及びONU42の駆動音を外部に漏れにくくすると共に雨や塵などが通信機器収納部15に吹き込むことを防止すると共に、別途強制空冷を行うためのファンなどを設けることなくVDSL装置41及びONU42から発生した熱を外部に排出することができる。
また、流路26、36内を伝播する駆動音が流路の内面で反射する際に上記吸音部材で吸収されるので、吸気口4Aや排気口5A、放熱口5Bから漏出する駆動音をより確実に減衰できる。
さらに、フィルタ22、32、38によって吸気口4Aや排気口5A、放熱口5Bから流路26、36や副流路39内に塵などが吹き込みにくくなる。
また、VDSL装置41が密着用板バネ16によって右側板12及び左側板13に密着しているので、VDSL装置41の右側面と右側板12との間や左側面と左側板13との間に間隙が形成されても、連結口12A、13AとVDSL装置41の左右両側面との間の気体漏れが抑制される。
また、流路26、36にファンを取り付け可能とすることで流路26、36中の空気の流通を促進させ、VDSL装置41及びONU42から発生した熱を効率よく排出することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、キャビネットを天井面に取り付け固定しているが、キャビネットの取り付け位置は天井面に限らない。
また、流路が形成された流路部材を筐体本体とは別部材としているが、筐体本体に流路を形成し、一体化した構成としてもよい。
また、流路の2箇所に曲部を設けているが、少なくとも1箇所に曲部が設けられていればよく、流路における空気の流通が確保されていれば、3箇所以上であってもよい。さらに、図9(a)、(b)に示すように、流路部材104、105のそれぞれに流路形成板を設けず、流路126、136に曲部を設けない構成のキャビネット100としてもよい。
また、流路がほぼZ字状の形状を有しているが、流路における空気の流通や駆動音の減衰が維持されれば、Z字状に限らない。
また、流路の内面に吸音部材を貼着しているが、流路の内面における反射によって駆動音が十分に減衰できれば、吸音部材を設けなくてもよい。
また、密着用板バネを設けているが、流路とVDSL装置との間で空気の流通が良好に行われれば、密着用板バネを設けなくてもよい。
また、流路にファンなどの送風部材を取り付け可能としているが、取り付け可能でなくてもよい。
また、副流路を設けているが、副流路を設けなくてもよい。
また、吸気口、排気口及び放熱口のそれぞれを防塵用のフィルタで覆っているが、いずれか1つを覆ってもよく、流路による通信機器収納部への防塵効果が維持されれば、フィルタで覆わなくてもよい。
また、VDSL装置の左右両側面を筐体本体の左右両側板にゴムリングを介して接触させているが、VDSL装置と筐体本体の左右両側板との間に空隙を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態におけるキャビネットを示すもので、(a)は概略斜視図で、(b)は概略分解斜視図である。
【図2】図1の筐体本体を示す概略斜視図である。
【図3】図1の筐体本体を示すもので、(a)は部分拡大断面図、(b)はVDSL装置の搭載前の部分拡大断面図である。
【図4】図3の密着用板バネを示す概略斜視図である。
【図5】図1の流路部材を示すもので、(a)は概略断面平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図6】同様に、図1の流路部材を示すもので、(a)は概略断面平面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図7】図1のキャビネットのエアフローを示す説明図である。
【図8】図1のキャビネットを用いたネットワークの構成図である。
【図9】本発明を適用可能な、他のキャビネットを示すのキャビネットの概略断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1、100 キャビネット(通信用キャビネット)
4A 吸気口
5A 排気口
12A、13A 連結口
16 密着用板バネ(密着弾性部材)
22、32、38 フィルタ
26、36、126、136 流路
26A、26B、36A、36B 曲部
41 VDSL装置(通信機器)
42 ONU(通信機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に通信機器が収納可能であり、該通信機器を介して外部からの信号を各戸へ分配する通信キャビネットであって、
前記通信機器を収納する通信機器収納部と、該通信機器収納部に気体を導入する吸気口及び前記通信機器収納部から気体を排出する排気口とを有し、
前記吸気口及び前記通信機器収納部の間と、前記排気口及び前記通信機器収納部の間とに、流路がそれぞれ設けられていることを特徴とする通信用キャビネット。
【請求項2】
前記流路の内の少なくとも一方に、曲部が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の通信用キャビネット。
【請求項3】
前記流路の内面に、吸音部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の通信用キャビネット。
【請求項4】
前記吸気口及び前記排気口の少なくとも一方が、防塵用のフィルタで被覆されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信用キャビネット。
【請求項5】
前記通信機器収納部に、前記通信機器の一側面を前記通信機器収納部のうち前記流路との連結口が形成された内壁に密着させると共に前記流路を流通する前記気体を前記通信機器の内部に流通させる密着弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信用キャビネット。
【請求項6】
前記流路の少なくとも一方に、前記気体の流通を促進させる送風部材が取り付け可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信用キャビネット。
【請求項7】
外表面の一部が、天井面に取り付けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信用キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−214323(P2007−214323A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32166(P2006−32166)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(506046311)株式会社NTT東日本−東京東 (1)
【出願人】(390002635)タマチ電機株式会社 (9)
【Fターム(参考)】