説明

通信用複合ケーブル

【課題】同軸ケーブル、LANケーブル、電話ケーブルの敷設作業時間が短縮でき敷設コストの削減が図れるとともに、各ケーブルの端末処理作業を一層容易に行なうことができる通信用複合ケーブルを提供する。
【解決手段】本発明は、同軸ケーブルに、LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものを並設し、絶縁性の共通シースで略メガネ状に被覆した通信用複合ケーブルであって、共通シースの一部を剥離するための第1、第2ノッチを、前記同軸ケーブルの中心角70°〜50°の位置上の前記同軸ケーブル側の共通シースに、ケーブル延長方向に沿って設けたことを特徴とする通信用複合ケーブルの構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブル、LANケーブル及び電話ケーブルを1つのケーブルとした通信用複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物へのTV、インターネット、電話のサービス提供において、同軸ケーブル(TV)、LANケーブル(インターネット)、電話ケーブル(電話)を配線するが、その配線は、バラ配線とするか又はこれらのケーブルを一括集合させた丸型ケーブルが使用されている。
【0003】
バラ配線をした場合には、異なる種類のケーブルを一度に敷設する際、ケーブルがまとまっていないために作業性が非常によくない。
【0004】
他方、丸型ケーブルを使用する場合、TVとインターネット、電話とで施工業者が異なるため、ケーブル敷設後に、同軸ケーブル、LANケーブル、電話ケーブルの分離作業に手間取り、TV、インターネット、電話の施工作業に速やかに取り掛かることができない等の問題があった。さらに、丸形ケーブルの末端処理をする際、引き裂き又はカッター等を使用して外被を除去し、さらに押え巻きテープを除去した後に、各ケーブルをそれぞれコネクタへ取り付ける作業を行っており、作業が極めて煩雑であった。
【0005】
その他に、敷設作業時間を短縮すべく特許文献1、2に記載の所謂メガネ型ケーブルが提案されている。特許文献1に記載の発明「情報通信複合ケーブル」は、布設作業時間を短縮できるとともに、将来の増設に対応でき、且つ美観を損なわない情報通信複合ケーブルとして、外部導体(1)まで仕上げた同軸ケーブルコアー(2)とLANケーブル(3)、電話ケーブル(4)とを撚り合わせ又は並列に並べ、引き裂き紐(5)を縦添えしてなる複合ケーブル芯(A)とを並設し、その上に共通シース(6)をメガネ状に施したことを特徴とする(請求項1)。また、同軸ケーブル(7)、LANケーブル(3)、電話ケーブル(4)及びプラスチックパイプ(8)を撚り合わせ、その上に押さえテープ(9)を巻回し、その上に引き裂き紐(5)を縦添えし、さらにその上にシース(10)を施したことを特徴とする(請求項2)。
【0006】
また、特許文献2に記載の発明「複合ケーブル」は、UTPケーブル,ペアケーブルおよび同軸ケーブルからなる複合ケーブルにあって、各専用ケーブルを複合化してマルチメディア配線に対応させる際、UTPケーブルが側圧やしごきによる外力を受けることなく特性を維持でき、しかも複合化で大型サイズ化することなく既存サイズのケーブル敷設管に挿通させて用いることができるようにするため、外被であるシース44の断面が眼鏡形状に成形され、その眼鏡形状の一側にUTPケーブル20にペアケーブル30を巻き付けたものを収容し、他側は同軸ケーブル40の外部導体である編組43上に施されている。
【0007】
さらに、同軸ケーブル、LANケーブル、電話線の敷設作業時間の短縮及び敷設コストの削減が図れるとともに、ケーブルの端末処理作業を容易に行なうことができ、また、低圧屋内電力配線との隔壁の役割を持たせるために二重シース化した通信用複合ケーブルを提供することを目的として、特許文献3の発明が公開されている。
【0008】
特許文献3に記載の発明「通信用複合ケーブル」は、第1に、LANケーブルと電話線を縦添えしたものと、外被が施された同軸ケーブルとを並設し、その上に絶縁性の隔壁を構成する共通シースをメガネ状に施したことを特徴とする(請求項1)。第2に、前記LANケーブル及び電話線上に施された前記共通シースの外周部、及び前記同軸ケーブル上に施された前記共通シースの外周部それぞれの2箇所に、引き裂き用の溝がケーブルの延長方向に沿って形成されていることを特徴とする(請求項2)。第3に、前記電話線は、絶縁された芯線が撚り合わされた2本の対撚り線上に共通シースがメガネ状に施されて構成されていることを特徴とする(請求項3)。
【0009】
そして、特許文献3に記載の通信用複合ケーブルは、同文献請求項2及び図3に記載のように、LANケーブル及び電話線上に施された共通シースの外周部、及び同軸ケーブル上に施された共通シースの外周部に、それぞれ2箇所、引き裂き内部ケーブルを引き出すための溝が通信用複合ケーブルの共通シースの延長方向に沿って形成され、引き裂性を向上させている。その結果、各ケーブル敷設時間の短縮、ケーブルの末端作業が簡易になるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−133949号公報
【特許文献2】特開2003−45237号公報
【特許文献3】特開2009−158308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3の図3に記載されているように、特許文献3に記載の発明の溝42の位置は、同軸ケーブル側と電話線及びLANケーブル側とで形成されるメガネ状の共通シースの連結部の接続点(ブリッジ)と、前記両側の中心を結んだ線を挟んで、それぞれ対向した位置、即ち、前記接続点から90°の位置で、かつそれぞれ180°の位置に、同軸ケーブル側の共通シースと電話線及びLANケーブル側の共通シースの両側に設けられている。
【0012】
しかしながら、溝42を特許文献3のそのような位置に配置しても、例えば、同軸ケーブル側の溝42と溝42の位置で同軸ケーブル側の共通シースの一部(反電話線及びLANケーブル側)を剥離する場合、前記共通シースの一部を摘むことは極めて困難であった。また、電話線及びLANケーブル側の溝42、溝42間を引き裂き剥離する場合も同様である。更に、共通シースの一部を引き裂くには相当の張力を要し、困難な作業であった。
【0013】
そこで、本発明は、同軸ケーブル、LANケーブル、電話ケーブルの敷設作業時間が短縮でき敷設コストの削減が図れるとともに、各ケーブルの端末処理作業を一層容易に行なうことができる通信用複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、同軸ケーブルに、LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものを並設し、絶縁性の共通シースで略メガネ状に被覆した通信用複合ケーブルであって、共通シースの一部を剥離するための第1、第2ノッチを、前記同軸ケーブルの中心角70°〜50°の位置上の前記同軸ケーブル側の共通シースに、ケーブル延長方向に沿って設けたことを特徴とする通信用複合ケーブルの構成とした。
【0015】
また、前記第1、第2ノッチを、前記LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものの反対側に設けたことを特徴とする前記記載の通信用複合ケーブルの構成とした。さらに、前記第1、第2ノッチを、前記同軸ケーブルの中心と、前記LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものの横方向及び縦方向の中心とを結ぶ線に対して、等距離の位置に設けたことを特徴とする前記記載の通信用複合ケーブルの構成とした。
【0016】
加えて、共通シースの一部を剥離するための第3、第4ノッチを、前記LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものの横方向及び縦方向の中心角70°〜50°の位置上の前記LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたもの側の共通シースに、ケーブル延長方向に沿って設けたことを特徴とする前記何れかに記載の通信用複合ケーブルの構成とした。
【0017】
また、前記第3、第4ノッチを、前記同軸ケーブルの反対側に設けたことを特徴とする前記記載の通信用複合ケーブルの構成とした。さらに、前記第3、第4ノッチを、前記同軸ケーブルの中心と、前記LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものの中心とを結ぶ線に対して、等距離の位置に設けたことを特徴とする前記記載の通信用複合ケーブルの構成とした。
【0018】
さらに、前記電話線ケーブルが、絶縁された芯線2本1組として絶縁外被でメガネ状に施されて構成され、かつ前記外被の連結部が、前記同軸ケーブルとLANケーブルの中心を結ぶ線上に位置することを特徴とする前記何れかに記載の通信用複合ケーブルの構成とした。
【0019】
そして、前記共通シースの厚さが0.7mmであって、前記第1〜第4ノッチの深さが0.3mmであることを特徴とする前記何れかに記載の通信用複合ケーブルの構成とした。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記構成であるので、同軸ケーブル、LANケーブル、電話ケーブルの敷設作業時間が短縮でき敷設コストの削減が図れる。さらに、各ケーブルの端末処理作業を一層容易に行なうことができる。即ち、低い張力で、共通シースの一部を剥離でき、容易に内部ケーブルを取り出すことでき、各コネクタとの接続が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明である通信用複合ケーブルの一の実施形態の断面図である。
【図2】第2ノッチ部分の拡大断面図である。
【図3】共通シースのノッチの位置を変更したときの引き裂き張力を試験した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明である通信用複合ケーブルについて詳述する。
【実施例1】
【0023】
図1に示すように、本発明の一実施形態である通信用複合ケーブル1は、同軸ケーブル2に、LANケーブル3及び電話ケーブル4を縦添えしたものを並設し、絶縁性の共通シース5で略メガネ状に被覆してなる。
【0024】
そして、共通シース5は、肉薄部5fを有する連結部5eを隔てて形成される。肉薄部5fは、同軸ケーブル2側とLANケーブル3及び電話ケーブル4側を引き裂き易くするために設けられる。
【0025】
さらに、共通シース5には、同軸ケーブル2側の共通シース5の一部を剥離するための第1、第2ノッチ5a、5bが形成されている。第1、第2ノッチ5a、5bは、同軸ケーブル2の中心(O)角の60°の位置上の同軸ケーブル2側の共通シース5に、ケーブル延長方向に沿って形成されている。第1、第2ノッチ5a、5bの配置位置は、中心(O)角70°〜50°の範囲であればよい。
【0026】
そして、第1、第2ノッチ5a、5bは、LANケーブル3及び電話ケーブル4を縦添えしたものの反対側に位置することが望ましい。さらに望ましくは、第1、第2ノッチ5a、5bを、同軸ケーブル2の中心(O)と、LANケーブル3及び電話ケーブル4を縦添えしたものの横方向及び縦方向の中心(P)とを結ぶ線(図中一点鎖線)に対して、等距離の位置に設ける。同軸ケーブル2側の共通シース5の一部(第1ノッチ5a及び第2ノッチ5b間であって、反LANケーブル3及び電話ケーブル4側の共通シース5)の剥離張力が一層低下する。
【0027】
同様に、共通シース5には、LANケーブル3及び電話ケーブル4側の共通シース5の一部を剥離するための第3、第4ノッチ5c、5dが形成されている。第3、第4ノッチ5c、5dは、LANケーブル3及び電話ケーブル4を縦添えしたものの横方向及び縦方向の中心(P)角60°の位置上のLANケーブル3及び電話ケーブル4を縦添えしたもの側の共通シース5に、ケーブル延長方向に沿って形成されている。第3、第4ノッチ5c、5dの配置位置は、中心(O)角70°〜50°の範囲であればよい。
【0028】
そして、第3、第4ノッチ5c、5dは、同軸ケーブル2の反対側に位置することが望ましい。さらに望ましくは、第3、第4ノッチ5c、5dを、同軸ケーブル2の中心(O)と、LANケーブル3及び電話ケーブル4を縦添えしたものの横方向及び縦方向の中心(P)とを結ぶ線(図中一点鎖線)に対して、等距離の位置に設ける。LANケーブル3及び電話ケーブル4側の共通シース5の一部(第3ノッチ5c及び第4ノッチ5d間であって、反LANケーブル3及び電話ケーブル4側の共通シース5)の剥離張力が一層低下する。
【0029】
なお、ノッチの形状は、図1、2にあるように、V字型の他、U字型、スリットなど、形状は特に限定されないが、ノッチ先端部が尖った形状が引き裂き張力を一層低くすることができ望ましい。
【0030】
同軸ケーブル2は、内部導体2aを絶縁体2bで覆い、さらに銅などの線を編んだ網線或いはアルミ箔などの外部導体2cを捲き、その上から絶縁体の外被2dで覆われている。同軸ケーブル2は、一般に流通しているものを使用することができる。
【0031】
LANケーブル3は、導体の芯線3aをポリエチレン等の樹脂で絶縁被覆3bした線心を2本(対撚線3d)又は4本撚り合わせ、それを1対又は複数対束ねた上で、外側を絶縁外被3cで被覆する。周囲環境からケーブルへのノイズ侵入を抑制したり、ケーブルから放射されるノイズを抑制する場合には、さらにシールドを施すこともある。LANケーブル3は、一般に流通しているものを使用することができる。
【0032】
電話ケーブル4は、導体の芯線4aを絶縁被覆4bして、さらに2本1組をメガネ状に外被4cで束ねられている。
【0033】
そして、電話ケーブル4は、外被4cの連結部4dが、同軸ケーブル2とLANケーブル3の中心を結ぶ線上に位置することが望ましい。LANケーブル3及び電話ケーブル4側の共通シース5を剥離する力が均等に共通シース5にかかり、張力を低下させることができる。
【0034】
また、第1〜第4ノッチ5a〜5dは、図2に示すように、共通シース5の厚さ(L)を0.7mmとした場合には、ノッチの深さ(L1)は0.3mmとすると、張力が低く、流通段階での剥離がなく、安定して剥離作業をすることが可能である。
【実施例2】
【0035】
図3は、共通シースのノッチの位置を変更したときの引き裂き張力を試験した結果である。縦軸は、引き裂き張力(N)、横軸は図1において、第1、第2ノッチ5a、5bの配置位置(中心(O)角)である。引き裂き時の張力(N)は、通信用複合ケーブルの一端を固定し、他端の第1ノッチと第2ノッチの間であって、反LANケーブル3及び電話ケーブル4側の共通シース5に張力計(アイコーエンジニアリング株式会社製、型番:RX−10)を引っ掛け、手で引き裂いたときの最大張力である。
【0036】
試験の結果、中心角(幅)が狭い方が、張力は低く、特に中心角70°〜50°の範囲においては、第1、第2ノッチ5a、5bを対向した位置(中心角180°)に配置したときの1/2程度に低下し、極めて容易に共通シース5の一部を剥離することができた。
【0037】
また、中心角(幅)が狭すぎると、第1、第2ノッチ5a、5b間を指で掴むことが困難な上、共通シース5の一部が剥離の途中でちぎれてしまうことがあり剥離が困難であった。また、切り取られた共通シース5の間から、内部ケーブルを取り出すことも容易でなかった。
【0038】
従って、第1、第2ノッチ5a、5bは、中心(O)角70°〜50°の範囲で、共通シース5に形成することが望ましい。同様に、第3、第4ノッチ5c、5dも、中心(P)角70°〜50°の範囲で、共通シース5に形成することが望ましい。
【符号の説明】
【0039】
1 通信用複合ケーブル
2 同軸ケーブル
2a 内部導体
2b 絶縁体
2c 外部導体
2d 外被
3 LANケーブル
3a 芯線
3b 絶縁被覆
3c 外被
3d 対撚線
4 電話ケーブル
4a 芯線
4b 絶縁被覆
4c 外被
4d 連結部
5 共通シース
5a 第1ノッチ
5b 第2ノッチ
5c 第3ノッチ
5d 第4ノッチ
5e 連結部
5f 肉薄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルに、LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものを並設し、絶縁性の共通シースで略メガネ状に被覆した通信用複合ケーブルであって、
共通シースの一部を剥離するための第1、第2ノッチを、前記同軸ケーブルの中心角70°〜50°の位置上の前記同軸ケーブル側の共通シースに、ケーブル延長方向に沿って設けたことを特徴とする通信用複合ケーブル。
【請求項2】
前記第1、第2ノッチを、前記LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものの反対側に設けたことを特徴とする請求項1に記載の通信用複合ケーブル。
【請求項3】
前記第1、第2ノッチを、前記同軸ケーブルの中心と、前記LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものの横方向及び縦方向の中心とを結ぶ線に対して、等距離の位置に設けたことを特徴とする請求項2に記載の通信用複合ケーブル。
【請求項4】
共通シースの一部を剥離するための第3、第4ノッチを、前記LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものの横方向及び縦方向の中心角70°〜50°の位置上の前記LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたもの側の共通シースに、ケーブル延長方向に沿って設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の通信用複合ケーブル。
【請求項5】
前記第3、第4ノッチを、前記同軸ケーブルの反対側に設けたことを特徴とする請求項4に記載の通信用複合ケーブル。
【請求項6】
前記第3、第4ノッチを、前記同軸ケーブルの中心と、前記LANケーブル及び電話ケーブルを縦添えしたものの中心とを結ぶ線に対して、等距離の位置に設けたことを特徴とする請求項5に記載の通信用複合ケーブル。
【請求項7】
前記電話線ケーブルが、絶縁された芯線2本1組として絶縁外被でメガネ状に施されて構成され、かつ前記外被の連結部が、前記同軸ケーブルとLANケーブルの中心を結ぶ線上に位置することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の通信用複合ケーブル。
【請求項8】
前記共通シースの厚さが0.7mmであって、前記第1〜第4ノッチの深さが0.3mmであることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の通信用複合ケーブル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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