通信装置および通信システム
【課題】MC-CDMA方式等の信号が2つの通信路で同一の装置に送信される場合に、その装置で受信される信号のビット誤り率を充分に向上させる。
【解決手段】基地局用受信部31は、MC-CDMA方式の信号を基地局から受信する。送信制御部33は、基地局チャネル情報と中継局チャネル情報とに基づいて、各サブバンドの中継局13から端末へのチャネルの状態が、そのサブバンドの基地局から端末へのチャネルの状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する。送信部34は、各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの端末用の信号に重み付けを行う。送信アンテナ36は、重み付けされた端末用の信号を端末に送信する。本発明は、例えば、MC-CDMA方式の通信システムに適用することができる。
【解決手段】基地局用受信部31は、MC-CDMA方式の信号を基地局から受信する。送信制御部33は、基地局チャネル情報と中継局チャネル情報とに基づいて、各サブバンドの中継局13から端末へのチャネルの状態が、そのサブバンドの基地局から端末へのチャネルの状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する。送信部34は、各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの端末用の信号に重み付けを行う。送信アンテナ36は、重み付けされた端末用の信号を端末に送信する。本発明は、例えば、MC-CDMA方式の通信システムに適用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置および通信システムに関し、例えば、MC-CDMA方式の信号が2つの通信路で同一の装置に送信される場合に、その装置で受信される信号のビット誤り率を充分に向上させることができるようにした通信装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
MC-CDMA(Multi-Carrier Code Division Multiple Access)方式は、マルチキャリア通信の1つであり、遅延波に高い耐性を有するOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式と、周波数利用効率の高いCDMA(Code Division Multiple Access)方式とを組み合わせた方式である。
【0003】
このMC-CDMA方式では、複数の周波数に亘って同一のデータシンボルが複製され、サブキャリア方向に拡散符号が掛け合わされ、拡散伝送される。これにより、MC-CDMA方式は、伝搬遅延に強く周波数利用効率の高いセルラーネットワークの実現を可能にする。
【0004】
また、MC-CDMA方式では、同一の基地局から複数のユーザの信号が同時に伝送される場合、全てのユーザの信号において同期が確保される。さらに、同一の受信機では、同一の通信路を通って信号が受信されるため、各ユーザの信号の送信時に利用された拡散符号が直交している場合、各ユーザの信号間の干渉は少なく、復調を良好に行うことができる。
【0005】
しかしながら、複数の送信機から送信されたMC-CDMA方式の信号が受信機で合成される場合、異なるチャネルの影響を受けた信号が受信機で合成される。そのため、各ユーザの信号の送信時に利用された拡張符号が直交していても、合成時に直交性が崩れ、マルチアクセス干渉(MAI(Multiple Access Interference))といわれる大きな干渉を与えることになる。
【0006】
このようなマルチアクセス干渉は、本来基地局から多重化して通信を行う場合には、考慮しなくてよいものであるが、基地局と受信機の間に中継局が設けられる場合には考慮する必要がある。
【0007】
具体的には、セルラーシステムでは、基地局から離れたセル端での受信機における通信品質が大幅に劣化する。従って、受信機における受信信号のレベルと品質を改善するために、基地局と受信機の間には中継局が設けられる場合がある。この場合、中継局は、受信信号を増幅して受信機に再送信することにより、受信機における受信信号のレベルと品質を改善する。これにより、送信信号の到達範囲を拡大するとともに、スループットを改善することができる。
【0008】
しかしながら、MC-CDMA方式のセルラーシステムにおいて中継局が設けられる場合、基地局から中継局を経由する通信路と、基地局からの直通の通信路を通った2つの信号が受信機で受信される。即ち、中継局から送信されてくる信号と基地局から送信されてくる信号は、異なるチャネルの影響を受けて受信される。これにより、拡張符号として同一基地局から送信した際に周波数共有特性の高い直交符号が用いられる場合、受信信号の拡散符号の直交性が崩れ、大きなマルチアクセス干渉が発生する。その結果、中継局を利用することにより逆にビット誤り率(BER)が増加する場合があった。
【0009】
そこで、本発明者は、基地局から受信機へのチャネル(通信路)の状態と、中継局から受信機へのチャネルの状態に基づいて、中継局から受信機へ送信する送信信号の全帯域において、送信信号のチャネルの状態が基地局から受信機へのチャネルの状態と同一となるように、送信信号に重み付けを行うことで、受信機におけるマルチアクセス干渉を抑制する中継局を提案した(例えば、非特許文献1参照)。
【0010】
このような中継局により、MC-CDMA方式のセルラーシステムにおいても、効果的に中継局を活用することができる。
【0011】
一方、中継局を備えるMC-CDMA方式のセルラーシステムとしては、直交する符号語を基地局と中継局に割り当て、このとき中継局と受信機をグループ化することで多数の直交符号を消費することを回避するシステムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、基地局と中継局の両方が信号を送信する場合に受信機において発生するマルチアクセス干渉を抑制する方法については考えられていない。
【0012】
また、送信局と1以上の中継局と宛先局とからなる無線中継伝送システムにおいて、各局が自局と他局の間の経路の伝達関数を推定し、中継局が推定した伝達関数を送信局等へ送信することが考案されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−252677号公報
【特許文献2】特開2010−11128号公報
【特許文献3】特開2010−11349号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】鄭 海燕,藤井 威生,「MC-CDMA中継システムための中継局における伝搬路補償法の検討」,電子情報通信学会ソサイエティ大会,2009-9,B-5-120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、MC-CDMA方式等のセルラーシステムにおいて、非特許文献1に記載されている中継局が用いられる場合、中継局が送信信号のチャネル状態を全帯域単位で補償するので、複数の通信路を利用して伝送することにより得られるダイバーシチゲインが得られない。その結果、ビット誤り率を充分に向上させることはできない。
【0016】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、MC-CDMA方式等の信号が2つの通信路で同一の装置に送信される場合に、その装置で受信される信号のビット誤り率を充分に向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の側面の通信装置は、通信信号を第1の他の通信装置から受信する信号受信手段と、前記第1の他の通信装置から、前記第1の他の通信装置から前記通信信号を受信する第2の他の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報と、自分の通信装置から前記第2の他の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の他の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けを行う重み付け手段と、前記重み付け手段により重み付けされた前記送信信号を前記第2の他の通信装置に送信する送信手段とを備える通信装置である。
【0018】
本発明の第1の側面においては、通信信号が第1の他の通信装置から受信され、前記第1の他の通信装置から、前記第1の他の通信装置から前記通信信号を受信する第2の他の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報と、自分の通信装置から前記第2の他の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みが決定され、決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の他の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けが行われ、重み付けされた前記送信信号が前記第2の他の通信装置に送信される。
【0019】
本発明の第2の側面の通信システムは、通信信号を第1の通信装置から受信する第2の通信装置と第3の通信装置から構成される通信システムにおいて、前記第2の通信装置は、前記通信信号を前記第1の通信装置から受信する第1の信号受信手段と、前記第1の通信装置から前記第2の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報を、前記第3の通信装置に送信する情報送信手段とを備え、前記第3の通信装置は、前記通信信号を前記第1の通信装置から受信する第2の信号受信手段と、前記第2の通信装置から前記第1の通信路情報を受信する情報受信手段と、前記情報受信手段により受信された前記第1の通信路情報と、前記第3の通信装置から前記第2の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する決定手段と、前記決定手段により決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けを行う重み付け手段と、前記重み付け手段により重み付けされた前記送信信号を前記第2の通信装置に送信する送信手段とを備える通信システムである。
【0020】
本発明の第2の側面においては、通信信号を第1の通信装置から受信する第2の通信装置が、前記通信信号を前記第1の通信装置から受信し、前記第1の通信装置から前記第2の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報を、通信信号を第1の通信装置から受信する第3の通信装置に送信する。また、前記第3の通信装置が、前記通信信号を前記第1の通信装置から受信し、前記第2の通信装置から前記第1の通信路情報を受信し、受信された前記第1の通信路情報と、前記第3の通信装置から前記第2の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定し、決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けを行い、重み付けされた前記送信信号を前記第2の通信装置に送信する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、MC-CDMA方式等の信号が2つの通信路で同一の装置に送信される場合に、その装置で受信される信号のビット誤り率を充分に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した通信システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】図1の中継局の構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の端末用信号復調部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図2の送信制御部の構成例を示すブロック図である。
【図5】図2の送信部の構成例を示すブロック図である。
【図6】シミュレーションにおけるサブバンドの構成を示す図である。
【図7】シミュレーションの条件を示す図である。
【図8】重み付けが行われない場合のビット誤り率を示す図である。
【図9】非特許文献1に記載されている方法によるビット誤り率を示す図である。
【図10】図1の通信システムにおけるビット誤り率を示す図である。
【図11】図1の通信システムによる再送処理を説明するフローチャートである。
【図12】サブキャリアの信号を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<一実施の形態>
[通信システムの一実施の形態の構成例]
図1は、本発明を適用した通信システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【0024】
図1の通信システム10は、基地局11(第1の他の通信装置、第1の通信装置)、端末12(第2の他の通信装置、第2の通信装置)、および中継局13(通信装置、第3の通信装置)により構成される。通信システム10では、基地局11から端末12を含む複数の端末用の信号(以下、複数端末信号という)が送信され、端末12が、複数端末信号の受信に失敗した場合、基地局11から複数端末信号が再送されるとともに、中継局13から端末12用の信号が送信される。
【0025】
具体的には、通信システム10の基地局11は、MC-CDMA方式で複数端末信号を送信することにより、マルチユーザ通信を行う。
【0026】
なお、信号を複数のサブキャリアに分割して送信する際、信号を拡散することにより、マルチユーザ通信を可能にする方式としては、MC-CDMA方式の他に、MC-DS-CDMA(Multi-Carrier Direct Sequence Code Division Multiple Access)方式もある。
【0027】
MC-CDMA方式は、信号を周波数方向の拡散符号で拡散する方式であり、符号化が行われない場合であっても、周波数ダイバーシチ利得が得られる利点がある。MC-CDMA方式は、下り回線で用いられる場合、高い品質と大きな容量を得ることができる。
【0028】
一方、MC-DS-CDMA方式は、信号を直並列変換した後、時間方向の拡散符号で拡散する方式であり、遅延スプレッドが大きい環境でも符号の直交性を保つことが容易であるという特徴がある。MC-DS-CDMA方式は、上り回線での利用が想定されている。
【0029】
基地局11は、以上のようなMC-CDMA方式とMC-DS−CDMA方式のうちのMC-CDMA方式で複数端末信号を送信する。また、基地局11は、端末12から再送要求信号が送信されてきた場合、複数端末信号を再送する。
【0030】
端末12は、基地局11から送信されてくる複数端末信号を受信し、その複数端末信号に含まれる端末12用の信号を取得する。また、端末12は、基地局11から送信されてくる複数端末信号の受信に失敗した場合、再送要求信号を基地局11に送信するとともに、再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報を中継局13に送信する。
【0031】
なお、基地局チャネル情報(第1の通信路情報)は、基地局11と端末12の間のチャネルの状況を表す情報であり、ここでは、各サブキャリアの基地局11から端末12へのチャネル(第1の通信路)の伝搬路推定値であるものとする。この基地局チャネル情報は、例えば、基地局11から送信されてくる複数端末信号のうちのパイロットシンボルを用いて求められる。
【0032】
また、中継局チャネル情報(第2の通信路情報)は、中継局13と端末12の間のチャネルの状況を表す情報であり、ここでは、各サブキャリアの中継局13から端末12へのチャネル(第2の通信路)の伝搬路推定値であるものとする。
【0033】
端末12は、再送要求に応じて基地局11から送信されてくる複数端末信号と、中継局13から送信されてくる端末12用の信号を受信する。そして、端末12は、複数端末信号のうちの端末12用の信号と、中継局13からの端末12用の信号を合成し、端末12用の信号として取得する。
【0034】
中継局13は、基地局11から送信されてくる複数端末信号を受信する。中継局13は、端末12から送信されてくる再送要求信号に基づいて、受信された複数端末信号から端末12用の信号を抽出する。また、中継局13は、再送要求信号とともに送信されてきた基地局チャネル情報および中継局チャネル情報に基づいて、複数のサブキャリアからなるサブバンドごとに、基地局11から端末12へのチャネルの状態と中継局13から端末12へのチャネルの状態が同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する。そして、中継局13は、端末12用の信号に対して、サブキャリアごとに、決定された重みに基づく重み付けを行い、その結果得られる信号を端末12に送信する。なお、サブバンドを構成するサブキャリアの数は、MC-CDMA方式の拡散利得SFの整数倍である。
【0035】
[中継局の構成例]
図2は、図1の中継局13の構成例を示すブロック図である。
【0036】
図2に示すように、中継局13は、基地局用受信部31、端末用受信部32、送信制御部33、送信部34、RF(Radio Frequency)変換部35、および送信アンテナ36により構成される。
【0037】
基地局受信部31(信号受信手段)は、受信アンテナ41、IF(Intermediate Frequency)変換部42、端末用信号復調部43、および蓄積部44により構成される。
【0038】
受信アンテナ41は、図1の基地局11から送信されてくる複数端末信号のRF信号を受信し、IF変換部42に供給する。
【0039】
IF変換部42は、受信アンテナ41から供給される複数端末信号のRF信号をIF信号に変換して保持しておく。
【0040】
端末用信号復調部43は、再送要求信号を送信してきた端末12を特定する情報が送信制御部33から供給されると、IF変換部42に保持されている複数端末信号を読み出す。そして、端末用信号復調部43は、その端末12を特定する情報に基づいて、読み出された複数端末信号のうちの端末12用の信号を復調する。端末用信号復調部43は、復調の結果得られる端末12用の信号を蓄積部44に供給する。
【0041】
蓄積部44は、端末用信号復調部43から供給される端末12用の信号を記憶する。
【0042】
端末用受信部32(情報受信手段)は、受信アンテナ51、IF変換部52、再送要求信号復調部53、および蓄積部54により構成される。
【0043】
受信アンテナ51は、図1の端末12から送信されてくる再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報のRF信号を受信し、IF変換部52に供給する。
【0044】
IF変換部52は、受信アンテナ51から供給される再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報のRF信号をIF信号に変換し、再送要求信号復調部53に供給する。
【0045】
再送要求信号復調部53は、IF変換部52から供給される再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報を復調し、その結果得られる再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報を蓄積部54に供給する。
【0046】
蓄積部54は、再送要求信号復調部53から供給される再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報を記憶する。
【0047】
送信制御部33は、蓄積部54から再送要求信号を読み出し、その再送要求信号に基づいて再送要求信号を送信してきた端末12を特定する情報を端末用信号復調部43に供給する。具体的には、例えば、再送要求信号には、再送要求を表す信号と再送要求元である端末12を特定する信号が含まれており、送信制御部33は、再送要求信号から再送要求元である端末12を特定する信号を抽出して、その端末12を特定する情報を端末用信号復調部43に供給する。
【0048】
また、送信制御部33(決定手段)は、蓄積部54から基地局チャネル情報と中継局チャネル情報を読み出す。送信制御部33は、その基地局チャネル情報と中継局チャネル情報に基づいて、各サブバンドの基地局11から端末12へのチャネルの状態が、そのサブバンドの中継局13から端末12へのチャネルの状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する。
【0049】
具体的には、送信制御部33は、以下の式(1)を用いて、各サブキャリアの重みWkを決定する。
【0050】
Wk=βmHrk*Hdk
・・・(1)
【0051】
なお、式(1)において、kは、サブキャリアの番号を表し、mは、サブバンドの番号を表す。また、βmは、端末12用の信号の送信電力をサブバンドごとに一定にするための正規化係数を表し、以下の式(2)で定義される。さらに、式(1)において、Hrkは、中継局チャネル情報を表し、Hdkは基地局チャネル情報を表す。また、式(1)において、*は複素共役を表す。これらのことは、以降の記述においても同様である。
【0052】
【数1】
【0053】
なお、式(2)において、Kは、全サブキャリア数を表し、Mは、全サブバンド数を表している。これらのことは、以降の記述においても同様である。
【0054】
送信制御部33は、以上のようにして決定された各サブキャリアの重みWkを送信部34に供給する。
【0055】
送信部34(重み付け手段)は、蓄積部44から端末12用の信号を読み出す。送信部34は、送信制御部33から供給される各サブキャリアの重みWkに基づいて、そのサブキャリアの端末12用の信号に重み付けを行う。
【0056】
具体的には、送信部34は、以下の式(3)により、各サブキャリアの端末12用の信号に対して、そのサブキャリアの重みWkを用いた重み付けを行う。
【0057】
Sk=WkSrk
・・・(3)
【0058】
なお、式(3)において、Skは、k番目のサブキャリアの重み付け後の端末12用の信号を表し、Srkは、k番目のサブキャリアの重み付け前の端末12用の信号を表している。これらのことは、以降の記述においても同様である。
【0059】
また、以上のようにして式(3)により重み付けされた端末12用の信号が、端末12に送信されるとき、端末12で受信される各サブキャリアの端末12用の信号Rkは、以下の式(4)で表される。
【0060】
Rk=HrkβmHrk*HdkSrk=βm|Hrk|2HdkSrk
・・・(4)
【0061】
式(4)によれば、端末12において中継局13から受信される端末12用の信号Rmは、サブバンド単位で、基地局11から受信される複数端末信号と同一の周波数選択性フェージングを受けた信号になる。その結果、サブバンド単位で、端末12で取得される各端末用の信号の直交性が大きく劣化しない。従って、マルチアクセス干渉によるビット誤り率の増加を抑制することができる。
【0062】
また、βmは、上述した式(2)で定義される、送信電力をサブバンドごとに一定にするための正規化係数であるので、端末12において中継局13から受信される端末12用の信号は、帯域全体では、中継局13から端末12へのチャネルの特性を有している。その結果、ダイバーシチ効果を得ることができる。
【0063】
送信部34は、上述した式(3)によりサブキャリアごとに重み付けされた端末12用の信号をRF変換部35に供給する。
【0064】
RF変換部35は、送信部34から供給されるIF信号である端末12用の信号をRF信号に変換し、送信アンテナ36に供給する。
【0065】
送信アンテナ36(送信手段)は、RF変換部35から供給されるRF信号を外部に送信する。このRF信号は、例えば、端末12により受信される。
【0066】
なお、図2では、受信アンテナ41と受信アンテナ51が別々に設けられるものしたが、受信アンテナ41と受信アンテナ51は、一体化されていてもよい。
【0067】
[復調部の構成例]
図3は、図2の端末用信号復調部43の構成例を示すブロック図である。
【0068】
図3に示すように、端末用信号復調部43は、GI除去部61、FFT(Fast Fourier Transform)部62、乗算部63−1乃至63−K、復調部64−1乃至64−K、およびP/S(Parallel/Signal)変換部65により構成される。
【0069】
端末用信号復調部43のGI除去部61は、IF変換部42(図2)から供給される複数端末信号から、ガードインターバル(GI)を除去し、FFT部62に供給する。
【0070】
FFT部62は、GI除去部61から供給される信号、すなわちガードインターバルが除去された複数端末信号に対してFFTを行い、その結果得られるK個の各信号を乗算部63−1乃至63−Kにそれぞれ供給する。
【0071】
乗算部63−1乃至63−Kは、それぞれ、送信制御部33(図2)から供給される端末12を特定する情報に基づいて、その端末12用の信号を抽出するために必要な符号を、FFT部62から供給される信号に乗算する。これにより、乗算部63−1乃至63−Kは、それぞれ、FFT部62から供給される複数端末信号のうちの端末12用の信号を抽出する。乗算部63−1乃至63−Kは、抽出された端末12用の信号を復調部64−1乃至64−Kにそれぞれ供給する。
【0072】
復調部64−1乃至64−Kは、それぞれ、乗算部63−1乃至63−Kから供給される端末12用の信号を復調し、その結果得られる信号をP/S変換部65に供給する。
【0073】
P/S変換部65は、復調部64−1乃至64−Kから供給されるK個の端末12用の信号を、1個の端末12用の信号にシリアル化し、図2の蓄積部44に供給する。
【0074】
なお、図3では、端末用信号復調部43の構成について説明したが、図2の再送要求信号復調部53も同様に構成される。
【0075】
[送信制御部の構成例]
図4は、図2の送信制御部33の構成例を示すブロック図である。
【0076】
図4に示すように、送信制御部33は、取得部71、取得部72、および重み算出部73により構成される。
【0077】
送信制御部33の取得部71は、図2の蓄積部54から再送要求信号を読み出して取得する。取得部71は、その再送要求信号に基づいて再送要求信号を送信してきた端末12を特定する情報を端末用信号復調部43に供給する。
【0078】
取得部72は、蓄積部54から基地局チャネル情報と中継局チャネル情報を読み出して取得し、重み算出部73に供給する。
【0079】
重み算出部73は、その基地局チャネル情報と中継局チャネル情報に基づいて、上述した式(1)により各サブキャリアの重みWkを決定する。重み算出部73は、その結果得られる全サブキャリア数K個の重みWkを、図2の送信部34に供給する。
【0080】
[送信部の構成例]
図5は、図2の送信部34の構成例を示すブロック図である。
【0081】
図5に示すように、送信部34は、S/P(Signal/Parallel)変換部81、複製部82−1乃至82−P、乗算部83−1乃至83−K、乗算部84−1乃至84−K、変調部85−1乃至85−K、IFFT(Inverse Fast Fourier transform)部86、およびGI挿入部87により構成される。
【0082】
送信部34のS/P変換部81は、図2の蓄積部44から、図3の端末用信号復調部43のP/S変換部65によりシリアル化されている端末12用の信号を読み出す。S/P変換部81は、その端末12用の信号をP個の端末12用の信号にパラレル化する。なお、Pは、全サブキャリア数KからMC-CDMA方式の拡散利得SFを除算した値である。S/P変換部81は、P個の端末12用の信号を1つずつ複製部82−1乃至82−Pに供給する。
【0083】
複製部82−1乃至82−Pは、それぞれ、S/P変換部81から供給される端末12用の信号を、拡散利得SF回だけ複製する。複製部82−1乃至82−Pそれぞれにより生成された合計K(=SF×P)個の端末12用の信号は、乗算部83−1乃至83−Kに1つずつ供給される。
【0084】
乗算部83−1乃至83−Kは、それぞれ、複製部82−1乃至82−Pのいずれかから供給される端末12用の信号に対して所定の符号を乗算し、その結果得られる端末12用の信号を乗算部84−1乃至84−Nに供給する。
【0085】
乗算部84−1乃至84−Kには、それぞれ、図2の送信制御部33から、その乗算部84−1乃至84−Kに対応するサブキャリアの重みWkが入力される。乗算部84−1乃至84−Kは、それぞれ、乗算部83−1乃至83−Kから供給される端末12用の信号をSrkとして、上述した式(3)により、送信制御部33から供給される重みWkを用いた重み付けを行う。そして、乗算部84−1乃至84−Kは、その結果得られる重み付け後の端末12用の信号Skを、それぞれ、変調部85−1乃至85−Kに供給する。
【0086】
変調部85−1乃至85−Kは、それぞれ、乗算部84−1乃至84−Kから供給される端末12用の信号Skを変調し、IFFT部86に供給する。
【0087】
IFFT部86は、変調部85−1乃至85−Kから供給されるK個の端末12用の信号に対してIFFTを行い、その結果得られる端末12用の信号をGI挿入部87に供給する。
【0088】
GI挿入部87は、IFFT部86から供給される端末12用の信号に対してガードインターバルを挿入し、その結果得られる端末12用の信号をRF変換部35(図2)に供給する。
【0089】
[通信システムによる効果の説明]
図6乃至図10は、図1の通信システム10による効果を説明する図である。
【0090】
本出願人は、通信システム10による効果を説明するために、図6に示すようにサブバンドを構成し、図7に示すような条件でシミュレーションを行った。
【0091】
即ち、シミュレーションでは、図6に示すように、全サブキャリア数Kが128個であり、その128個のサブキャリアが16分割され、分割された8個のサブキャリアが各サブバンドとされる。具体的には、図6に示すように、1乃至8番目のサブキャリアが1番目のサブバンドとされ、9乃至16番目のサブキャリアが2番目のサブバンドとされる。その後も順に8個のサブキャリアごとにサブバンドが構成され、最後に121乃至128番目のサブキャリアが16番目のサブバンドとされる。
【0092】
また、シミュレーションでは、図7に示すように、変調方式(Modulation method)がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式であり、サブキャリア数(The number of carriers)が上述したように128個である。また、パケット数(Number of packet)が1000個であり、ガードインターバルの長さ(Length of guard interval)が24である。さらに、拡散利得SF(Spreading Factor)が8であり、拡散符号(Short spreading code)がウォルシュアダマール行列(Walsh_Hadamard code)である。また、信号の暗号化方式(Long scrambling code)がランダム方式(Random code)であり、端末12における合成方式(Combing method)が、等利得合成方式(EGC(Equal Gain Combining))である。
【0093】
さらに、シミュレーションでは、中継局13で受信された複数端末信号は完全なものであると仮定し、複数端末信号は、端末12を含む3つの端末用の信号であるものとする。
【0094】
図8は、通信システム10と同様に構成されるMC-CDMA方式の通信システムにおいて、中継局が重み付けを行わずに端末用の信号を送信する場合に、端末で取得される端末用の信号のビット誤り率を示す図である。
【0095】
なお、図8において、横軸は、SN比(SNR)を表し、縦軸はビット誤り率(BER)を表している。また、aは、端末において中継局から受信された信号の振幅を基地局から受信された信号の振幅で正規化した値である。即ち、a=0である場合、中継局から受信された信号の振幅は0であり、a=1である場合、中継局から受信された信号の振幅は、基地局から受信された信号の振幅と同一であることを示している。これらのことは、後述する図9および図10においても同様である。
【0096】
図8のグラフから、値aが大きくなるほど、即ち基地局から受信された信号の振幅で正規化された中継局から受信された信号の振幅が大きくなればなるほど、ビット誤り率が増加することがわかる。
【0097】
これは、基地局から送信された信号と中継局から送信された信号が異なる周波数選択性フェージングを受け、端末でマルチアクセス干渉が発生するためである。
【0098】
このようなマルチアクセス干渉の発生は、チャネルの伝達関数が周波数方向に平坦でない、即ち周波数選択性を有することに起因する。そして、このような周波数選択性はチャネルの遅延スプレッドが大きい場合に発生するものであり、シンボル長が長くなるほど影響が大きい。
【0099】
そこで、このような周波数選択性の違いを補償するために、非特許文献1に記載されている方法が考案されている。この方法では、以下の式(5)によりサブキャリアごとの重みWk´が決定される。
【0100】
Wk´=βHrk*Hdk
・・・(5)
【0101】
なお、式(5)におけるβは、端末用の信号の送信電力を全帯域で一定にするための正規化係数であり、以下の式(6)で定義される。
【0102】
【数2】
【0103】
図9は、通信システム10と同様に構成されるMC-CDMA方式の通信システムにおいて、中継局が非特許文献1に記載されている方法で端末用の信号を送信する場合に、端末で取得される端末用の信号のビット誤り率を示す図である。
【0104】
なお、図9のグラフにおいて、実線は、図8に示した中継局が重み付けを行わずに端末用の信号を送信する場合のビット誤り率を表し、点線は、中継局が非特許文献1に記載されている方法で端末用の信号を送信する場合のビット誤り率を表す。
【0105】
図9のグラフによれば、中継局が重み付けを行わずに端末用の信号を送信する場合、値aが大きくなるほどビット誤り率が増加するが、中継局が非特許文献1に記載されている方法で端末用の信号を送信する場合、値aが大きくなるほど中継局の効果が現れ、ビット誤り率が低下することがわかる。これにより、非特許文献1に記載されている方法は、マルチアクセス干渉の低減に有効な方法であることがわかる。
【0106】
しかしながら、非特許文献1に記載されている方法では、βが上述した式(5)で定義される、送信電力を全帯域で一定にするための正規化係数であるので、中継局から送信される信号のチャネル状態が全帯域単位で補償される。従って、中継局を用いることによる代表的な効果の1つであるダイバーシチゲインが得られない。その結果、ビット誤り率が充分に減少していない。
【0107】
図10は、通信システム10において端末12で取得される端末12用の信号のビット誤り率を示す図である。
【0108】
なお、図10のグラフにおいて、点線は、図9に示した中継局が非特許文献1に記載されている方法で端末用の信号を送信する場合のビット誤り率を表し、一点鎖線は、通信システム10において端末12で取得される端末12用の信号のビット誤り率を表す。
【0109】
図10のグラフによれば、端末12が取得する端末12用の信号のビット誤り率が、非特許文献1に記載されている方法が用いられた場合に比べて減少していることがわかる。
【0110】
これは、マルチアクセス干渉の抑制による効果とダイバーシチ効果の双方が得られることで、中継局13から送信される端末12用の信号の振幅の増加により、大幅にビット誤り率が減少するためである。
【0111】
なお、サブバンド数が増えるほど、ビット誤り率は減少する傾向がある。但し、中継局13が、拡散符号の途中でサブバンドが異なるように拡散を行うと、ビット誤り率は急激に増加する。
【0112】
[通信システムの処理の説明]
図11は、図1の通信システム10による再送処理を説明するフローチャートである。
【0113】
図11のステップS11において、基地局11(図1)は、複数端末信号のRF信号をMC-CDMA方式で送信する。
【0114】
ステップS21において、端末12は、ステップS11で基地局11から送信されてくる複数端末信号のRF信号を受信する。ステップS22において、端末12は、ステップS11で基地局11から送信されてきた複数端末信号の受信に成功したかどうかを判定する。
【0115】
ステップS22で複数端末信号の受信に成功したと判定された場合、処理は終了する。一方、ステップS22で複数端末信号の受信に成功していないと判定された場合、ステップS23において、端末12は、再送要求信号のRF信号を基地局11に送信する。ステップS24において、端末12は、基地局チャネル情報と中継局チャネル情報を取得し、その基地局チャネル情報と中継局チャネル情報を再送要求信号とともにRF信号で中継局13に送信する。
【0116】
一方、ステップS31において、中継局13の受信アンテナ41(図2)は、ステップS11で基地局11から送信されてくる複数端末信号のRF信号を受信し、IF変換部42に供給する。ステップS32において、IF変換部42は、受信アンテナ41から供給される複数端末信号のRF信号をIF信号に変換し、保持する。
【0117】
ステップS33において、中継局13の受信アンテナ51は、ステップS24で端末12から送信されてくる再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報のRF信号を受信し、IF変換部52に供給する。IF変換部52に供給された再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報のRF信号はIF信号に変換され、再送要求信号復調部53で復調されて、蓄積部54に蓄積される。送信制御部33の取得部71(図4)は、蓄積部54に記憶された再送要求信号に基づいて、再送要求信号を送信してきた端末12を特定する情報を端末用信号復調部43に供給する。
【0118】
ステップS34において、端末用信号復調部43は、送信制御部33から供給される端末12を特定する情報に基づいて、IF変換部42に保持されている複数端末信号から端末用の信号を抽出して復調し、蓄積部44に供給して記憶させる。
【0119】
ステップS35において、送信制御部33の重み算出部73は、取得部72により蓄積部54から取得された基地局チャネル情報と中継局チャネル情報に基づいて、上述した式(1)の演算を行い、各サブチャネルの重みWkを決定する。送信制御部33は、その各サブチャネルの重みWkを送信部34に供給する。
【0120】
ステップS36において、送信部34は、上述した式(3)により、送信制御部33から供給される各サブキャリアの重みWkに基づいて、そのサブキャリアの蓄積部44に記憶されている端末12用の信号に対して重み付けを行う。重み付け後の端末12用の信号は、RF変換部35によりRF信号に変換され、送信アンテナ36に供給される。
【0121】
ステップS37において、送信アンテナ36は、RF変換部35から供給される重み付け後の端末12用の信号のRF信号を端末12に送信する。
【0122】
一方、ステップS12において、基地局11は、ステップS23で端末12から送信されてきた再送要求信号を受信する。ステップS13において、基地局11は、複数端末信号をMC-CDMA方式で再送する。
【0123】
ステップS25において、端末12は、ステップS13で基地局11から再送された複数端末信号を受信するとともに、ステップS37で中継局13から送信されてきた端末12用の信号を受信する。ステップS26において、端末12は、ステップS25で基地局11から受信された複数端末信号のうちの端末12用の信号と、中継局13から受信された端末12用の信号を合成する。そして、処理は終了する。
【0124】
なお、ステップS26の処理後、端末12は、基地局11から送信されてくる複数端末信号および中継局13から送信されてくる端末12用の信号の受信が成功したかどうかを判定し、受信が成功していないと判定された場合には、ステップS23の処理に戻り、以降の処理が繰り返されるようにしてもよい。
【0125】
以上のように、通信システム10では、中継局13が、中継局チャネル情報と基地局チャネル情報に基づいて、各サブバンドの中継局13から端末12へのチャネルの状態が、そのサブバンドの基地局11から端末12へのチャネルの状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定し、その重みに基づいて端末12に送信する端末12用の信号に重み付けを行う。これにより、サブバンド単位では中継局13から端末12へのチャネルの状態が補償され、帯域全体では中継局13から端末12へのチャネルの特性が維持される。その結果、端末12において、マルチアクセス干渉を抑制するとともに、ダイバーシチ効果を得ることができる。
【0126】
従って、通信システム10を次世代のセルラーシステムに適用することにより、将来の移動通信の高品質化および高データレート化を実現することができる。
【0127】
なお、上述した説明では、中継局チャネル情報が端末12から中継局13に送信されたが、中継局チャネル情報は、中継局13で取得されるようにしてもよい。
【0128】
なお、本発明は、拡散利得SFで周波数方向に拡散するMC-CDMA方式だけでなく、拡散利得PGが周波数方向と時間方向に分割されて拡散符号が決定されるOFCDM(Orthogonal Frequency Code Division Multiplexing)方式等にも適用することができる。この場合、送信部34の乗算部83−1乃至83−K(図5)のそれぞれから出力されるSF個のサブキャリアの信号は、図12に示すようになる。即ち、信号は周波数方向にSF個拡散され、時間方向にPG-SF個拡散される。
【0129】
また、本発明は、MC-CDMA方式等で通信を行う次世代セルラーシステム、次世代無線LAN(Local Area Network)路車間通信システム、複数ユーザで利用する高速無線システムなどに適用することができる。
【0130】
本実施の形態では、通信システム10に基地局11、端末12、および中継局13が1つずつ設けられたが、基地局11、端末12、および中継局13は複数設けられてもよい。
【0131】
本明細書において、フローチャートの各ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0132】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0133】
さらに、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
10 通信システム, 11 基地局, 12 端末, 13 中継局, 31 基地局用受信部, 32 端末用受信部, 33 送信制御部, 34 送信部, 36 送信アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置および通信システムに関し、例えば、MC-CDMA方式の信号が2つの通信路で同一の装置に送信される場合に、その装置で受信される信号のビット誤り率を充分に向上させることができるようにした通信装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
MC-CDMA(Multi-Carrier Code Division Multiple Access)方式は、マルチキャリア通信の1つであり、遅延波に高い耐性を有するOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式と、周波数利用効率の高いCDMA(Code Division Multiple Access)方式とを組み合わせた方式である。
【0003】
このMC-CDMA方式では、複数の周波数に亘って同一のデータシンボルが複製され、サブキャリア方向に拡散符号が掛け合わされ、拡散伝送される。これにより、MC-CDMA方式は、伝搬遅延に強く周波数利用効率の高いセルラーネットワークの実現を可能にする。
【0004】
また、MC-CDMA方式では、同一の基地局から複数のユーザの信号が同時に伝送される場合、全てのユーザの信号において同期が確保される。さらに、同一の受信機では、同一の通信路を通って信号が受信されるため、各ユーザの信号の送信時に利用された拡散符号が直交している場合、各ユーザの信号間の干渉は少なく、復調を良好に行うことができる。
【0005】
しかしながら、複数の送信機から送信されたMC-CDMA方式の信号が受信機で合成される場合、異なるチャネルの影響を受けた信号が受信機で合成される。そのため、各ユーザの信号の送信時に利用された拡張符号が直交していても、合成時に直交性が崩れ、マルチアクセス干渉(MAI(Multiple Access Interference))といわれる大きな干渉を与えることになる。
【0006】
このようなマルチアクセス干渉は、本来基地局から多重化して通信を行う場合には、考慮しなくてよいものであるが、基地局と受信機の間に中継局が設けられる場合には考慮する必要がある。
【0007】
具体的には、セルラーシステムでは、基地局から離れたセル端での受信機における通信品質が大幅に劣化する。従って、受信機における受信信号のレベルと品質を改善するために、基地局と受信機の間には中継局が設けられる場合がある。この場合、中継局は、受信信号を増幅して受信機に再送信することにより、受信機における受信信号のレベルと品質を改善する。これにより、送信信号の到達範囲を拡大するとともに、スループットを改善することができる。
【0008】
しかしながら、MC-CDMA方式のセルラーシステムにおいて中継局が設けられる場合、基地局から中継局を経由する通信路と、基地局からの直通の通信路を通った2つの信号が受信機で受信される。即ち、中継局から送信されてくる信号と基地局から送信されてくる信号は、異なるチャネルの影響を受けて受信される。これにより、拡張符号として同一基地局から送信した際に周波数共有特性の高い直交符号が用いられる場合、受信信号の拡散符号の直交性が崩れ、大きなマルチアクセス干渉が発生する。その結果、中継局を利用することにより逆にビット誤り率(BER)が増加する場合があった。
【0009】
そこで、本発明者は、基地局から受信機へのチャネル(通信路)の状態と、中継局から受信機へのチャネルの状態に基づいて、中継局から受信機へ送信する送信信号の全帯域において、送信信号のチャネルの状態が基地局から受信機へのチャネルの状態と同一となるように、送信信号に重み付けを行うことで、受信機におけるマルチアクセス干渉を抑制する中継局を提案した(例えば、非特許文献1参照)。
【0010】
このような中継局により、MC-CDMA方式のセルラーシステムにおいても、効果的に中継局を活用することができる。
【0011】
一方、中継局を備えるMC-CDMA方式のセルラーシステムとしては、直交する符号語を基地局と中継局に割り当て、このとき中継局と受信機をグループ化することで多数の直交符号を消費することを回避するシステムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、基地局と中継局の両方が信号を送信する場合に受信機において発生するマルチアクセス干渉を抑制する方法については考えられていない。
【0012】
また、送信局と1以上の中継局と宛先局とからなる無線中継伝送システムにおいて、各局が自局と他局の間の経路の伝達関数を推定し、中継局が推定した伝達関数を送信局等へ送信することが考案されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−252677号公報
【特許文献2】特開2010−11128号公報
【特許文献3】特開2010−11349号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】鄭 海燕,藤井 威生,「MC-CDMA中継システムための中継局における伝搬路補償法の検討」,電子情報通信学会ソサイエティ大会,2009-9,B-5-120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、MC-CDMA方式等のセルラーシステムにおいて、非特許文献1に記載されている中継局が用いられる場合、中継局が送信信号のチャネル状態を全帯域単位で補償するので、複数の通信路を利用して伝送することにより得られるダイバーシチゲインが得られない。その結果、ビット誤り率を充分に向上させることはできない。
【0016】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、MC-CDMA方式等の信号が2つの通信路で同一の装置に送信される場合に、その装置で受信される信号のビット誤り率を充分に向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の側面の通信装置は、通信信号を第1の他の通信装置から受信する信号受信手段と、前記第1の他の通信装置から、前記第1の他の通信装置から前記通信信号を受信する第2の他の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報と、自分の通信装置から前記第2の他の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の他の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けを行う重み付け手段と、前記重み付け手段により重み付けされた前記送信信号を前記第2の他の通信装置に送信する送信手段とを備える通信装置である。
【0018】
本発明の第1の側面においては、通信信号が第1の他の通信装置から受信され、前記第1の他の通信装置から、前記第1の他の通信装置から前記通信信号を受信する第2の他の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報と、自分の通信装置から前記第2の他の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みが決定され、決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の他の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けが行われ、重み付けされた前記送信信号が前記第2の他の通信装置に送信される。
【0019】
本発明の第2の側面の通信システムは、通信信号を第1の通信装置から受信する第2の通信装置と第3の通信装置から構成される通信システムにおいて、前記第2の通信装置は、前記通信信号を前記第1の通信装置から受信する第1の信号受信手段と、前記第1の通信装置から前記第2の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報を、前記第3の通信装置に送信する情報送信手段とを備え、前記第3の通信装置は、前記通信信号を前記第1の通信装置から受信する第2の信号受信手段と、前記第2の通信装置から前記第1の通信路情報を受信する情報受信手段と、前記情報受信手段により受信された前記第1の通信路情報と、前記第3の通信装置から前記第2の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する決定手段と、前記決定手段により決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けを行う重み付け手段と、前記重み付け手段により重み付けされた前記送信信号を前記第2の通信装置に送信する送信手段とを備える通信システムである。
【0020】
本発明の第2の側面においては、通信信号を第1の通信装置から受信する第2の通信装置が、前記通信信号を前記第1の通信装置から受信し、前記第1の通信装置から前記第2の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報を、通信信号を第1の通信装置から受信する第3の通信装置に送信する。また、前記第3の通信装置が、前記通信信号を前記第1の通信装置から受信し、前記第2の通信装置から前記第1の通信路情報を受信し、受信された前記第1の通信路情報と、前記第3の通信装置から前記第2の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定し、決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けを行い、重み付けされた前記送信信号を前記第2の通信装置に送信する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、MC-CDMA方式等の信号が2つの通信路で同一の装置に送信される場合に、その装置で受信される信号のビット誤り率を充分に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した通信システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】図1の中継局の構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の端末用信号復調部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図2の送信制御部の構成例を示すブロック図である。
【図5】図2の送信部の構成例を示すブロック図である。
【図6】シミュレーションにおけるサブバンドの構成を示す図である。
【図7】シミュレーションの条件を示す図である。
【図8】重み付けが行われない場合のビット誤り率を示す図である。
【図9】非特許文献1に記載されている方法によるビット誤り率を示す図である。
【図10】図1の通信システムにおけるビット誤り率を示す図である。
【図11】図1の通信システムによる再送処理を説明するフローチャートである。
【図12】サブキャリアの信号を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<一実施の形態>
[通信システムの一実施の形態の構成例]
図1は、本発明を適用した通信システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【0024】
図1の通信システム10は、基地局11(第1の他の通信装置、第1の通信装置)、端末12(第2の他の通信装置、第2の通信装置)、および中継局13(通信装置、第3の通信装置)により構成される。通信システム10では、基地局11から端末12を含む複数の端末用の信号(以下、複数端末信号という)が送信され、端末12が、複数端末信号の受信に失敗した場合、基地局11から複数端末信号が再送されるとともに、中継局13から端末12用の信号が送信される。
【0025】
具体的には、通信システム10の基地局11は、MC-CDMA方式で複数端末信号を送信することにより、マルチユーザ通信を行う。
【0026】
なお、信号を複数のサブキャリアに分割して送信する際、信号を拡散することにより、マルチユーザ通信を可能にする方式としては、MC-CDMA方式の他に、MC-DS-CDMA(Multi-Carrier Direct Sequence Code Division Multiple Access)方式もある。
【0027】
MC-CDMA方式は、信号を周波数方向の拡散符号で拡散する方式であり、符号化が行われない場合であっても、周波数ダイバーシチ利得が得られる利点がある。MC-CDMA方式は、下り回線で用いられる場合、高い品質と大きな容量を得ることができる。
【0028】
一方、MC-DS-CDMA方式は、信号を直並列変換した後、時間方向の拡散符号で拡散する方式であり、遅延スプレッドが大きい環境でも符号の直交性を保つことが容易であるという特徴がある。MC-DS-CDMA方式は、上り回線での利用が想定されている。
【0029】
基地局11は、以上のようなMC-CDMA方式とMC-DS−CDMA方式のうちのMC-CDMA方式で複数端末信号を送信する。また、基地局11は、端末12から再送要求信号が送信されてきた場合、複数端末信号を再送する。
【0030】
端末12は、基地局11から送信されてくる複数端末信号を受信し、その複数端末信号に含まれる端末12用の信号を取得する。また、端末12は、基地局11から送信されてくる複数端末信号の受信に失敗した場合、再送要求信号を基地局11に送信するとともに、再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報を中継局13に送信する。
【0031】
なお、基地局チャネル情報(第1の通信路情報)は、基地局11と端末12の間のチャネルの状況を表す情報であり、ここでは、各サブキャリアの基地局11から端末12へのチャネル(第1の通信路)の伝搬路推定値であるものとする。この基地局チャネル情報は、例えば、基地局11から送信されてくる複数端末信号のうちのパイロットシンボルを用いて求められる。
【0032】
また、中継局チャネル情報(第2の通信路情報)は、中継局13と端末12の間のチャネルの状況を表す情報であり、ここでは、各サブキャリアの中継局13から端末12へのチャネル(第2の通信路)の伝搬路推定値であるものとする。
【0033】
端末12は、再送要求に応じて基地局11から送信されてくる複数端末信号と、中継局13から送信されてくる端末12用の信号を受信する。そして、端末12は、複数端末信号のうちの端末12用の信号と、中継局13からの端末12用の信号を合成し、端末12用の信号として取得する。
【0034】
中継局13は、基地局11から送信されてくる複数端末信号を受信する。中継局13は、端末12から送信されてくる再送要求信号に基づいて、受信された複数端末信号から端末12用の信号を抽出する。また、中継局13は、再送要求信号とともに送信されてきた基地局チャネル情報および中継局チャネル情報に基づいて、複数のサブキャリアからなるサブバンドごとに、基地局11から端末12へのチャネルの状態と中継局13から端末12へのチャネルの状態が同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する。そして、中継局13は、端末12用の信号に対して、サブキャリアごとに、決定された重みに基づく重み付けを行い、その結果得られる信号を端末12に送信する。なお、サブバンドを構成するサブキャリアの数は、MC-CDMA方式の拡散利得SFの整数倍である。
【0035】
[中継局の構成例]
図2は、図1の中継局13の構成例を示すブロック図である。
【0036】
図2に示すように、中継局13は、基地局用受信部31、端末用受信部32、送信制御部33、送信部34、RF(Radio Frequency)変換部35、および送信アンテナ36により構成される。
【0037】
基地局受信部31(信号受信手段)は、受信アンテナ41、IF(Intermediate Frequency)変換部42、端末用信号復調部43、および蓄積部44により構成される。
【0038】
受信アンテナ41は、図1の基地局11から送信されてくる複数端末信号のRF信号を受信し、IF変換部42に供給する。
【0039】
IF変換部42は、受信アンテナ41から供給される複数端末信号のRF信号をIF信号に変換して保持しておく。
【0040】
端末用信号復調部43は、再送要求信号を送信してきた端末12を特定する情報が送信制御部33から供給されると、IF変換部42に保持されている複数端末信号を読み出す。そして、端末用信号復調部43は、その端末12を特定する情報に基づいて、読み出された複数端末信号のうちの端末12用の信号を復調する。端末用信号復調部43は、復調の結果得られる端末12用の信号を蓄積部44に供給する。
【0041】
蓄積部44は、端末用信号復調部43から供給される端末12用の信号を記憶する。
【0042】
端末用受信部32(情報受信手段)は、受信アンテナ51、IF変換部52、再送要求信号復調部53、および蓄積部54により構成される。
【0043】
受信アンテナ51は、図1の端末12から送信されてくる再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報のRF信号を受信し、IF変換部52に供給する。
【0044】
IF変換部52は、受信アンテナ51から供給される再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報のRF信号をIF信号に変換し、再送要求信号復調部53に供給する。
【0045】
再送要求信号復調部53は、IF変換部52から供給される再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報を復調し、その結果得られる再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報を蓄積部54に供給する。
【0046】
蓄積部54は、再送要求信号復調部53から供給される再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報を記憶する。
【0047】
送信制御部33は、蓄積部54から再送要求信号を読み出し、その再送要求信号に基づいて再送要求信号を送信してきた端末12を特定する情報を端末用信号復調部43に供給する。具体的には、例えば、再送要求信号には、再送要求を表す信号と再送要求元である端末12を特定する信号が含まれており、送信制御部33は、再送要求信号から再送要求元である端末12を特定する信号を抽出して、その端末12を特定する情報を端末用信号復調部43に供給する。
【0048】
また、送信制御部33(決定手段)は、蓄積部54から基地局チャネル情報と中継局チャネル情報を読み出す。送信制御部33は、その基地局チャネル情報と中継局チャネル情報に基づいて、各サブバンドの基地局11から端末12へのチャネルの状態が、そのサブバンドの中継局13から端末12へのチャネルの状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する。
【0049】
具体的には、送信制御部33は、以下の式(1)を用いて、各サブキャリアの重みWkを決定する。
【0050】
Wk=βmHrk*Hdk
・・・(1)
【0051】
なお、式(1)において、kは、サブキャリアの番号を表し、mは、サブバンドの番号を表す。また、βmは、端末12用の信号の送信電力をサブバンドごとに一定にするための正規化係数を表し、以下の式(2)で定義される。さらに、式(1)において、Hrkは、中継局チャネル情報を表し、Hdkは基地局チャネル情報を表す。また、式(1)において、*は複素共役を表す。これらのことは、以降の記述においても同様である。
【0052】
【数1】
【0053】
なお、式(2)において、Kは、全サブキャリア数を表し、Mは、全サブバンド数を表している。これらのことは、以降の記述においても同様である。
【0054】
送信制御部33は、以上のようにして決定された各サブキャリアの重みWkを送信部34に供給する。
【0055】
送信部34(重み付け手段)は、蓄積部44から端末12用の信号を読み出す。送信部34は、送信制御部33から供給される各サブキャリアの重みWkに基づいて、そのサブキャリアの端末12用の信号に重み付けを行う。
【0056】
具体的には、送信部34は、以下の式(3)により、各サブキャリアの端末12用の信号に対して、そのサブキャリアの重みWkを用いた重み付けを行う。
【0057】
Sk=WkSrk
・・・(3)
【0058】
なお、式(3)において、Skは、k番目のサブキャリアの重み付け後の端末12用の信号を表し、Srkは、k番目のサブキャリアの重み付け前の端末12用の信号を表している。これらのことは、以降の記述においても同様である。
【0059】
また、以上のようにして式(3)により重み付けされた端末12用の信号が、端末12に送信されるとき、端末12で受信される各サブキャリアの端末12用の信号Rkは、以下の式(4)で表される。
【0060】
Rk=HrkβmHrk*HdkSrk=βm|Hrk|2HdkSrk
・・・(4)
【0061】
式(4)によれば、端末12において中継局13から受信される端末12用の信号Rmは、サブバンド単位で、基地局11から受信される複数端末信号と同一の周波数選択性フェージングを受けた信号になる。その結果、サブバンド単位で、端末12で取得される各端末用の信号の直交性が大きく劣化しない。従って、マルチアクセス干渉によるビット誤り率の増加を抑制することができる。
【0062】
また、βmは、上述した式(2)で定義される、送信電力をサブバンドごとに一定にするための正規化係数であるので、端末12において中継局13から受信される端末12用の信号は、帯域全体では、中継局13から端末12へのチャネルの特性を有している。その結果、ダイバーシチ効果を得ることができる。
【0063】
送信部34は、上述した式(3)によりサブキャリアごとに重み付けされた端末12用の信号をRF変換部35に供給する。
【0064】
RF変換部35は、送信部34から供給されるIF信号である端末12用の信号をRF信号に変換し、送信アンテナ36に供給する。
【0065】
送信アンテナ36(送信手段)は、RF変換部35から供給されるRF信号を外部に送信する。このRF信号は、例えば、端末12により受信される。
【0066】
なお、図2では、受信アンテナ41と受信アンテナ51が別々に設けられるものしたが、受信アンテナ41と受信アンテナ51は、一体化されていてもよい。
【0067】
[復調部の構成例]
図3は、図2の端末用信号復調部43の構成例を示すブロック図である。
【0068】
図3に示すように、端末用信号復調部43は、GI除去部61、FFT(Fast Fourier Transform)部62、乗算部63−1乃至63−K、復調部64−1乃至64−K、およびP/S(Parallel/Signal)変換部65により構成される。
【0069】
端末用信号復調部43のGI除去部61は、IF変換部42(図2)から供給される複数端末信号から、ガードインターバル(GI)を除去し、FFT部62に供給する。
【0070】
FFT部62は、GI除去部61から供給される信号、すなわちガードインターバルが除去された複数端末信号に対してFFTを行い、その結果得られるK個の各信号を乗算部63−1乃至63−Kにそれぞれ供給する。
【0071】
乗算部63−1乃至63−Kは、それぞれ、送信制御部33(図2)から供給される端末12を特定する情報に基づいて、その端末12用の信号を抽出するために必要な符号を、FFT部62から供給される信号に乗算する。これにより、乗算部63−1乃至63−Kは、それぞれ、FFT部62から供給される複数端末信号のうちの端末12用の信号を抽出する。乗算部63−1乃至63−Kは、抽出された端末12用の信号を復調部64−1乃至64−Kにそれぞれ供給する。
【0072】
復調部64−1乃至64−Kは、それぞれ、乗算部63−1乃至63−Kから供給される端末12用の信号を復調し、その結果得られる信号をP/S変換部65に供給する。
【0073】
P/S変換部65は、復調部64−1乃至64−Kから供給されるK個の端末12用の信号を、1個の端末12用の信号にシリアル化し、図2の蓄積部44に供給する。
【0074】
なお、図3では、端末用信号復調部43の構成について説明したが、図2の再送要求信号復調部53も同様に構成される。
【0075】
[送信制御部の構成例]
図4は、図2の送信制御部33の構成例を示すブロック図である。
【0076】
図4に示すように、送信制御部33は、取得部71、取得部72、および重み算出部73により構成される。
【0077】
送信制御部33の取得部71は、図2の蓄積部54から再送要求信号を読み出して取得する。取得部71は、その再送要求信号に基づいて再送要求信号を送信してきた端末12を特定する情報を端末用信号復調部43に供給する。
【0078】
取得部72は、蓄積部54から基地局チャネル情報と中継局チャネル情報を読み出して取得し、重み算出部73に供給する。
【0079】
重み算出部73は、その基地局チャネル情報と中継局チャネル情報に基づいて、上述した式(1)により各サブキャリアの重みWkを決定する。重み算出部73は、その結果得られる全サブキャリア数K個の重みWkを、図2の送信部34に供給する。
【0080】
[送信部の構成例]
図5は、図2の送信部34の構成例を示すブロック図である。
【0081】
図5に示すように、送信部34は、S/P(Signal/Parallel)変換部81、複製部82−1乃至82−P、乗算部83−1乃至83−K、乗算部84−1乃至84−K、変調部85−1乃至85−K、IFFT(Inverse Fast Fourier transform)部86、およびGI挿入部87により構成される。
【0082】
送信部34のS/P変換部81は、図2の蓄積部44から、図3の端末用信号復調部43のP/S変換部65によりシリアル化されている端末12用の信号を読み出す。S/P変換部81は、その端末12用の信号をP個の端末12用の信号にパラレル化する。なお、Pは、全サブキャリア数KからMC-CDMA方式の拡散利得SFを除算した値である。S/P変換部81は、P個の端末12用の信号を1つずつ複製部82−1乃至82−Pに供給する。
【0083】
複製部82−1乃至82−Pは、それぞれ、S/P変換部81から供給される端末12用の信号を、拡散利得SF回だけ複製する。複製部82−1乃至82−Pそれぞれにより生成された合計K(=SF×P)個の端末12用の信号は、乗算部83−1乃至83−Kに1つずつ供給される。
【0084】
乗算部83−1乃至83−Kは、それぞれ、複製部82−1乃至82−Pのいずれかから供給される端末12用の信号に対して所定の符号を乗算し、その結果得られる端末12用の信号を乗算部84−1乃至84−Nに供給する。
【0085】
乗算部84−1乃至84−Kには、それぞれ、図2の送信制御部33から、その乗算部84−1乃至84−Kに対応するサブキャリアの重みWkが入力される。乗算部84−1乃至84−Kは、それぞれ、乗算部83−1乃至83−Kから供給される端末12用の信号をSrkとして、上述した式(3)により、送信制御部33から供給される重みWkを用いた重み付けを行う。そして、乗算部84−1乃至84−Kは、その結果得られる重み付け後の端末12用の信号Skを、それぞれ、変調部85−1乃至85−Kに供給する。
【0086】
変調部85−1乃至85−Kは、それぞれ、乗算部84−1乃至84−Kから供給される端末12用の信号Skを変調し、IFFT部86に供給する。
【0087】
IFFT部86は、変調部85−1乃至85−Kから供給されるK個の端末12用の信号に対してIFFTを行い、その結果得られる端末12用の信号をGI挿入部87に供給する。
【0088】
GI挿入部87は、IFFT部86から供給される端末12用の信号に対してガードインターバルを挿入し、その結果得られる端末12用の信号をRF変換部35(図2)に供給する。
【0089】
[通信システムによる効果の説明]
図6乃至図10は、図1の通信システム10による効果を説明する図である。
【0090】
本出願人は、通信システム10による効果を説明するために、図6に示すようにサブバンドを構成し、図7に示すような条件でシミュレーションを行った。
【0091】
即ち、シミュレーションでは、図6に示すように、全サブキャリア数Kが128個であり、その128個のサブキャリアが16分割され、分割された8個のサブキャリアが各サブバンドとされる。具体的には、図6に示すように、1乃至8番目のサブキャリアが1番目のサブバンドとされ、9乃至16番目のサブキャリアが2番目のサブバンドとされる。その後も順に8個のサブキャリアごとにサブバンドが構成され、最後に121乃至128番目のサブキャリアが16番目のサブバンドとされる。
【0092】
また、シミュレーションでは、図7に示すように、変調方式(Modulation method)がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式であり、サブキャリア数(The number of carriers)が上述したように128個である。また、パケット数(Number of packet)が1000個であり、ガードインターバルの長さ(Length of guard interval)が24である。さらに、拡散利得SF(Spreading Factor)が8であり、拡散符号(Short spreading code)がウォルシュアダマール行列(Walsh_Hadamard code)である。また、信号の暗号化方式(Long scrambling code)がランダム方式(Random code)であり、端末12における合成方式(Combing method)が、等利得合成方式(EGC(Equal Gain Combining))である。
【0093】
さらに、シミュレーションでは、中継局13で受信された複数端末信号は完全なものであると仮定し、複数端末信号は、端末12を含む3つの端末用の信号であるものとする。
【0094】
図8は、通信システム10と同様に構成されるMC-CDMA方式の通信システムにおいて、中継局が重み付けを行わずに端末用の信号を送信する場合に、端末で取得される端末用の信号のビット誤り率を示す図である。
【0095】
なお、図8において、横軸は、SN比(SNR)を表し、縦軸はビット誤り率(BER)を表している。また、aは、端末において中継局から受信された信号の振幅を基地局から受信された信号の振幅で正規化した値である。即ち、a=0である場合、中継局から受信された信号の振幅は0であり、a=1である場合、中継局から受信された信号の振幅は、基地局から受信された信号の振幅と同一であることを示している。これらのことは、後述する図9および図10においても同様である。
【0096】
図8のグラフから、値aが大きくなるほど、即ち基地局から受信された信号の振幅で正規化された中継局から受信された信号の振幅が大きくなればなるほど、ビット誤り率が増加することがわかる。
【0097】
これは、基地局から送信された信号と中継局から送信された信号が異なる周波数選択性フェージングを受け、端末でマルチアクセス干渉が発生するためである。
【0098】
このようなマルチアクセス干渉の発生は、チャネルの伝達関数が周波数方向に平坦でない、即ち周波数選択性を有することに起因する。そして、このような周波数選択性はチャネルの遅延スプレッドが大きい場合に発生するものであり、シンボル長が長くなるほど影響が大きい。
【0099】
そこで、このような周波数選択性の違いを補償するために、非特許文献1に記載されている方法が考案されている。この方法では、以下の式(5)によりサブキャリアごとの重みWk´が決定される。
【0100】
Wk´=βHrk*Hdk
・・・(5)
【0101】
なお、式(5)におけるβは、端末用の信号の送信電力を全帯域で一定にするための正規化係数であり、以下の式(6)で定義される。
【0102】
【数2】
【0103】
図9は、通信システム10と同様に構成されるMC-CDMA方式の通信システムにおいて、中継局が非特許文献1に記載されている方法で端末用の信号を送信する場合に、端末で取得される端末用の信号のビット誤り率を示す図である。
【0104】
なお、図9のグラフにおいて、実線は、図8に示した中継局が重み付けを行わずに端末用の信号を送信する場合のビット誤り率を表し、点線は、中継局が非特許文献1に記載されている方法で端末用の信号を送信する場合のビット誤り率を表す。
【0105】
図9のグラフによれば、中継局が重み付けを行わずに端末用の信号を送信する場合、値aが大きくなるほどビット誤り率が増加するが、中継局が非特許文献1に記載されている方法で端末用の信号を送信する場合、値aが大きくなるほど中継局の効果が現れ、ビット誤り率が低下することがわかる。これにより、非特許文献1に記載されている方法は、マルチアクセス干渉の低減に有効な方法であることがわかる。
【0106】
しかしながら、非特許文献1に記載されている方法では、βが上述した式(5)で定義される、送信電力を全帯域で一定にするための正規化係数であるので、中継局から送信される信号のチャネル状態が全帯域単位で補償される。従って、中継局を用いることによる代表的な効果の1つであるダイバーシチゲインが得られない。その結果、ビット誤り率が充分に減少していない。
【0107】
図10は、通信システム10において端末12で取得される端末12用の信号のビット誤り率を示す図である。
【0108】
なお、図10のグラフにおいて、点線は、図9に示した中継局が非特許文献1に記載されている方法で端末用の信号を送信する場合のビット誤り率を表し、一点鎖線は、通信システム10において端末12で取得される端末12用の信号のビット誤り率を表す。
【0109】
図10のグラフによれば、端末12が取得する端末12用の信号のビット誤り率が、非特許文献1に記載されている方法が用いられた場合に比べて減少していることがわかる。
【0110】
これは、マルチアクセス干渉の抑制による効果とダイバーシチ効果の双方が得られることで、中継局13から送信される端末12用の信号の振幅の増加により、大幅にビット誤り率が減少するためである。
【0111】
なお、サブバンド数が増えるほど、ビット誤り率は減少する傾向がある。但し、中継局13が、拡散符号の途中でサブバンドが異なるように拡散を行うと、ビット誤り率は急激に増加する。
【0112】
[通信システムの処理の説明]
図11は、図1の通信システム10による再送処理を説明するフローチャートである。
【0113】
図11のステップS11において、基地局11(図1)は、複数端末信号のRF信号をMC-CDMA方式で送信する。
【0114】
ステップS21において、端末12は、ステップS11で基地局11から送信されてくる複数端末信号のRF信号を受信する。ステップS22において、端末12は、ステップS11で基地局11から送信されてきた複数端末信号の受信に成功したかどうかを判定する。
【0115】
ステップS22で複数端末信号の受信に成功したと判定された場合、処理は終了する。一方、ステップS22で複数端末信号の受信に成功していないと判定された場合、ステップS23において、端末12は、再送要求信号のRF信号を基地局11に送信する。ステップS24において、端末12は、基地局チャネル情報と中継局チャネル情報を取得し、その基地局チャネル情報と中継局チャネル情報を再送要求信号とともにRF信号で中継局13に送信する。
【0116】
一方、ステップS31において、中継局13の受信アンテナ41(図2)は、ステップS11で基地局11から送信されてくる複数端末信号のRF信号を受信し、IF変換部42に供給する。ステップS32において、IF変換部42は、受信アンテナ41から供給される複数端末信号のRF信号をIF信号に変換し、保持する。
【0117】
ステップS33において、中継局13の受信アンテナ51は、ステップS24で端末12から送信されてくる再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報のRF信号を受信し、IF変換部52に供給する。IF変換部52に供給された再送要求信号、基地局チャネル情報、および中継局チャネル情報のRF信号はIF信号に変換され、再送要求信号復調部53で復調されて、蓄積部54に蓄積される。送信制御部33の取得部71(図4)は、蓄積部54に記憶された再送要求信号に基づいて、再送要求信号を送信してきた端末12を特定する情報を端末用信号復調部43に供給する。
【0118】
ステップS34において、端末用信号復調部43は、送信制御部33から供給される端末12を特定する情報に基づいて、IF変換部42に保持されている複数端末信号から端末用の信号を抽出して復調し、蓄積部44に供給して記憶させる。
【0119】
ステップS35において、送信制御部33の重み算出部73は、取得部72により蓄積部54から取得された基地局チャネル情報と中継局チャネル情報に基づいて、上述した式(1)の演算を行い、各サブチャネルの重みWkを決定する。送信制御部33は、その各サブチャネルの重みWkを送信部34に供給する。
【0120】
ステップS36において、送信部34は、上述した式(3)により、送信制御部33から供給される各サブキャリアの重みWkに基づいて、そのサブキャリアの蓄積部44に記憶されている端末12用の信号に対して重み付けを行う。重み付け後の端末12用の信号は、RF変換部35によりRF信号に変換され、送信アンテナ36に供給される。
【0121】
ステップS37において、送信アンテナ36は、RF変換部35から供給される重み付け後の端末12用の信号のRF信号を端末12に送信する。
【0122】
一方、ステップS12において、基地局11は、ステップS23で端末12から送信されてきた再送要求信号を受信する。ステップS13において、基地局11は、複数端末信号をMC-CDMA方式で再送する。
【0123】
ステップS25において、端末12は、ステップS13で基地局11から再送された複数端末信号を受信するとともに、ステップS37で中継局13から送信されてきた端末12用の信号を受信する。ステップS26において、端末12は、ステップS25で基地局11から受信された複数端末信号のうちの端末12用の信号と、中継局13から受信された端末12用の信号を合成する。そして、処理は終了する。
【0124】
なお、ステップS26の処理後、端末12は、基地局11から送信されてくる複数端末信号および中継局13から送信されてくる端末12用の信号の受信が成功したかどうかを判定し、受信が成功していないと判定された場合には、ステップS23の処理に戻り、以降の処理が繰り返されるようにしてもよい。
【0125】
以上のように、通信システム10では、中継局13が、中継局チャネル情報と基地局チャネル情報に基づいて、各サブバンドの中継局13から端末12へのチャネルの状態が、そのサブバンドの基地局11から端末12へのチャネルの状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定し、その重みに基づいて端末12に送信する端末12用の信号に重み付けを行う。これにより、サブバンド単位では中継局13から端末12へのチャネルの状態が補償され、帯域全体では中継局13から端末12へのチャネルの特性が維持される。その結果、端末12において、マルチアクセス干渉を抑制するとともに、ダイバーシチ効果を得ることができる。
【0126】
従って、通信システム10を次世代のセルラーシステムに適用することにより、将来の移動通信の高品質化および高データレート化を実現することができる。
【0127】
なお、上述した説明では、中継局チャネル情報が端末12から中継局13に送信されたが、中継局チャネル情報は、中継局13で取得されるようにしてもよい。
【0128】
なお、本発明は、拡散利得SFで周波数方向に拡散するMC-CDMA方式だけでなく、拡散利得PGが周波数方向と時間方向に分割されて拡散符号が決定されるOFCDM(Orthogonal Frequency Code Division Multiplexing)方式等にも適用することができる。この場合、送信部34の乗算部83−1乃至83−K(図5)のそれぞれから出力されるSF個のサブキャリアの信号は、図12に示すようになる。即ち、信号は周波数方向にSF個拡散され、時間方向にPG-SF個拡散される。
【0129】
また、本発明は、MC-CDMA方式等で通信を行う次世代セルラーシステム、次世代無線LAN(Local Area Network)路車間通信システム、複数ユーザで利用する高速無線システムなどに適用することができる。
【0130】
本実施の形態では、通信システム10に基地局11、端末12、および中継局13が1つずつ設けられたが、基地局11、端末12、および中継局13は複数設けられてもよい。
【0131】
本明細書において、フローチャートの各ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0132】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0133】
さらに、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
10 通信システム, 11 基地局, 12 端末, 13 中継局, 31 基地局用受信部, 32 端末用受信部, 33 送信制御部, 34 送信部, 36 送信アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信信号を第1の他の通信装置から受信する信号受信手段と、
前記第1の他の通信装置から、前記第1の他の通信装置から前記通信信号を受信する第2の他の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報と、自分の通信装置から前記第2の他の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の他の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けを行う重み付け手段と、
前記重み付け手段により重み付けされた前記送信信号を前記第2の他の通信装置に送信する送信手段と
を備える通信装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記送信信号の送信電力を前記サブバンドごとに一定にするするための正規化係数、並びに、そのサブバンドの各サブキャリアの前記第1の通信路の伝搬路推定値および前記第2の通信路の伝搬路推定値の複素共役を乗算し、その結果得られる乗算値を、そのサブキャリアの重みに決定する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記サブバンドのサブキャリア数は、前記通信信号の拡散利得の整数倍である
請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第2の通信装置から前記第1の通信路情報を受信する情報受信手段
をさらに備える
請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
通信信号を第1の通信装置から受信する第2の通信装置と第3の通信装置から構成される通信システムにおいて、
前記第2の通信装置は、
前記通信信号を前記第1の通信装置から受信する第1の信号受信手段と、
前記第1の通信装置から前記第2の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報を、前記第3の通信装置に送信する情報送信手段と
を備え、
前記第3の通信装置は、
前記通信信号を前記第1の通信装置から受信する第2の信号受信手段と、
前記第2の通信装置から前記第1の通信路情報を受信する情報受信手段と、
前記情報受信手段により受信された前記第1の通信路情報と、前記第3の通信装置から前記第2の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けを行う重み付け手段と、
前記重み付け手段により重み付けされた前記送信信号を前記第2の通信装置に送信する送信手段と
を備える
通信システム。
【請求項1】
通信信号を第1の他の通信装置から受信する信号受信手段と、
前記第1の他の通信装置から、前記第1の他の通信装置から前記通信信号を受信する第2の他の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報と、自分の通信装置から前記第2の他の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の他の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けを行う重み付け手段と、
前記重み付け手段により重み付けされた前記送信信号を前記第2の他の通信装置に送信する送信手段と
を備える通信装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記送信信号の送信電力を前記サブバンドごとに一定にするするための正規化係数、並びに、そのサブバンドの各サブキャリアの前記第1の通信路の伝搬路推定値および前記第2の通信路の伝搬路推定値の複素共役を乗算し、その結果得られる乗算値を、そのサブキャリアの重みに決定する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記サブバンドのサブキャリア数は、前記通信信号の拡散利得の整数倍である
請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第2の通信装置から前記第1の通信路情報を受信する情報受信手段
をさらに備える
請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
通信信号を第1の通信装置から受信する第2の通信装置と第3の通信装置から構成される通信システムにおいて、
前記第2の通信装置は、
前記通信信号を前記第1の通信装置から受信する第1の信号受信手段と、
前記第1の通信装置から前記第2の通信装置への第1の通信路の状態を表す情報である第1の通信路情報を、前記第3の通信装置に送信する情報送信手段と
を備え、
前記第3の通信装置は、
前記通信信号を前記第1の通信装置から受信する第2の信号受信手段と、
前記第2の通信装置から前記第1の通信路情報を受信する情報受信手段と、
前記情報受信手段により受信された前記第1の通信路情報と、前記第3の通信装置から前記第2の通信装置への第2の通信路の状態を表す情報である第2の通信路情報とに基づいて、前記通信信号の全サブキャリアを複数のサブバンドに分割することにより得られる各サブバンドの前記第2の通信路の状態が、そのサブバンドの前記第1の通信路の状態と同一になるように、各サブキャリアの重みを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記各サブキャリアの重みに基づいて、そのサブキャリアの前記通信信号のうちの前記第2の通信装置に送信する信号である送信信号に重み付けを行う重み付け手段と、
前記重み付け手段により重み付けされた前記送信信号を前記第2の通信装置に送信する送信手段と
を備える
通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−217108(P2011−217108A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83168(P2010−83168)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「電源資源拡大のための研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「電源資源拡大のための研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】
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