説明

通信装置および通信方法

【課題】通信装置と通信媒体との間の最大通信距離を確保しつつ受信電力過多による通信媒体の破損または性能低下を回避する。
【解決手段】通信装置10のアンテナ16に生起される搬送波電圧を監視することで、通信距離検出部19が通信装置10と通信媒体30との間の距離に対応する値の監視電圧を得、その監視電圧が小さくなるに従って、すなわち通信媒体30が通信装置10に近づくに従って、送信電力制御部20が送信アンプ15を制御して、通信装置10の送信電力を低減させる。通信媒体30が通信装置10から遠く離れているときには、通信装置10を最大の送信電力に固定制御することで最大通信距離を確保することができ、通信媒体30が通信装置10に近づくほど、送信電力を低減することにより、通信媒体30が受信電力過多になることが回避され、その結果、破損または性能低下をなくすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置および通信方法に関し、特に非接触IC(Integrated Circuit)チップを搭載したカードや携帯端末などの通信媒体との間で通信を行う通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば自動改札機においては、リーダ・ライタとして機能する通信装置が組み込まれており、その通信装置は、通信媒体が近づくことによって、通信媒体に対して電源を供給しながら通信を行っている。
【0003】
図10は通信装置および通信媒体の一般的な構成例を示すブロック図である。
通信装置100は、送信するデータと受信したデータとを処理するデータ処理部101と、送信するデータから変調する信号を生成する変調生成回路102と、搬送波を生成する搬送波生成回路103とを備えている。変調生成回路102および搬送波生成回路103の出力は、変調器104に入力され、搬送波生成回路103によって生成された搬送波が変調生成回路102によって生成された信号により変調される。変調された信号は、送信アンプ105で増幅されてアンテナ106に出力される。アンテナ106は、受信した信号を検波する検波回路107に接続されており、検波された信号は、復調回路108により復調されて、データ処理部101に送出される。
【0004】
一方、通信媒体110は、通信装置100のアンテナ106と電磁誘導により電磁的に結合することで電力の供給とデータの送受信を行うアンテナ111を備えている。通信媒体110は、また、アンテナ111で受信した信号からデータを抽出する検波・復調回路112と、抽出されたデータを処理するデータ処理部113と、処理された応答データを変調してアンテナ111に送出する変調回路114とを備えている。
【0005】
通信装置100は、これに通信媒体110を接近させることによって通信媒体110と非接触での通信が可能になる。この通信中に通信装置100と通信媒体110との距離が変わると、通信条件が変化するため、通信品質も変化してしまうことがある。たとえば、通信媒体110を通信装置100に接近させていくと、同調周波数がずれてしまう現象が生じ、通信装置100に接近させるに連れて通信品質が低下してしまうようになる。これに対し、通信装置100と通信媒体110との距離が変わっても、同調周波数が変化しないように制御して、通信品質を安定させることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
また、通信装置100では、通信媒体110との処理を高速に行うために、通信可能範囲を広くしてより遠方にあるときから通信できるようにしている。これは、通信装置100の送信アンプの送信電力を高くすることによって実現している。通信装置100は、送信アンプの送信電力を高くすることにより、通信可能範囲内にある通信媒体110と安定して通信することができる。ただ、通信媒体110は、通信装置100から最大通信可能距離離れたときに内部回路が動作するのに必要な最小限の電力の供給を受け、通信装置100の近傍では、不必要に大きな電力の供給を受けることになる。このため通信媒体110は、電力供給が過多になっても、内部回路が故障することがないよう保護回路を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−329674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通信媒体は、受信電力を整流して内部回路の規格に合う電源電圧に調整しているが、受信電力が過多になると、保護回路が働いてオーバーした電位が特定の電位まで強制的に低下される。しかしながら、保護回路が電位を低下させるには、必ず熱の発生が伴うので、通信媒体を通信装置に置いたままにするなどして受信電力の過多の状態が長時間継続するようなことがあると、通信媒体が発熱により故障に至ってしまう可能性があることから、結局、通信装置は、その送信アンプの送信電力を高くすることができないという問題点があった。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、送信アンプの高い送信電力を維持しつつ通信媒体が長時間近接状態にあっても通信媒体が発熱で破損または性能低下することがないようにした通信装置および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では上記の課題を解決するために、通信媒体に対し電力の供給をしつつ通信を行う通信装置であって、前記通信媒体との距離を検出する通信距離検出部と、検出された距離に応じて送信アンプの送信電力を制御する送信電力制御部と、を備える通信装置が提供される。
【0011】
また、本発明では、通信装置が通信媒体に対し電力の供給をしつつ通信を行う通信方法において、前記通信装置が前記通信媒体との間の距離を検出し、検出された距離が短くなるに従って前記通信装置の送信アンプの送信電力を低減する通信方法が提供される。
【0012】
このような通信装置および通信方法によれば、通信媒体が通信装置の近くにないとき、通信装置の送信アンプの送信電力を最大にできるので、最大通信距離を延ばすことができ、通信媒体が通信装置に近づくほど通信装置の送信アンプの送信電力を低下させるので、通信媒体が異常に高い受信電力を受けることはなくなる。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の通信装置および通信方法は、通信装置に対して通信媒体が遠方の場合は、送信アンプが高い送信電力を維持できるので最大限の通信距離を確保することができ、逆に、通信装置に対して通信媒体が近傍の場合は、通信装置の送信電力が通信媒体との通信に必要な送信電力にまで低減されるので、通信媒体では受信電力過多による破損または性能低下を防止することができ、通信装置では電力の消費を低減することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による通信装置の原理的な構成を示すブロック図である。
【図2】通信媒体の近接に対するアンテナにおける搬送波電圧の遷移を示す説明図である。
【図3】第1の実施の形態に係る通信装置の構成例を示す概略的な回路図である。
【図4】第1の実施の形態に係る通信装置が有する通信距離に対する送信電力の制御パターンを示す図である。
【図5】通信距離に対する搬送波の変化および監視電圧の検出イメージを示す図である。
【図6】通信媒体の受信電圧特性を示す図である。
【図7】第2の実施の形態に係る通信装置の構成例を示す概略的な回路図である。
【図8】第2の実施の形態に係る通信装置が有する通信距離に対する送信電力の制御パターンを示す図である。
【図9】第3の実施の形態に係る通信装置の構成例を示す概略的な回路図である。
【図10】通信装置および通信媒体の一般的な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明による通信装置の原理的な構成を示すブロック図、図2は通信媒体の近接に対するアンテナにおける搬送波電圧の遷移を示す説明図である。
【0016】
通信装置10は、データ処理部11、変調生成回路12、搬送波生成回路13、変調器14、送信アンプ15、アンテナ16、検波回路17および復調回路18を備え、図10に示した構成と同じ構成を有している。本発明による通信装置10は、さらに、アンテナ16の搬送波電圧を監視して通信媒体30との距離を検出する通信距離検出部19および送信アンプ15の送信電力を制御する送信電力制御部20を備えている。通信媒体30は、アンテナ31、検波・復調回路32、データ処理部33および変調回路34を備え、図10に示した構成と同じ構成を有している。
【0017】
通信媒体30が通信装置10との通信可能な範囲に近接すると、通信装置10では、搬送波生成回路13で生成された搬送波が送信アンプ15およびアンテナ16を介して通信媒体30に送信される。通信媒体30では、アンテナ31で受信した搬送波を整流し、所定の電圧に調整して電源を生成する。
【0018】
ここで、データ処理部11で処理されたデータを通信媒体30に送信する場合は、データを変調生成回路12にて二値波形のベースバンド信号にし、変調器14にて搬送波をベースバンド信号により変調し、変調された約10%の変調度のASK(Amplitude Shift Keying)信号が送信アンプ15およびアンテナ16を介して送信される。
【0019】
通信媒体30では、アンテナ31で受信したASK信号を検波・復調回路32で検波および復号してデータを復元し、そのデータは、データ処理部33に入力され、データ処理される。
【0020】
通信媒体30から通信装置10にデータを送信する場合は、通信媒体30が通信装置10から無変調の搬送波を受信している状態で、データが変調回路34で変調し、アンテナ31が受信している搬送波を変化させる。通信装置10では、その通信媒体30の側の変化がアンテナ16に電流変化として現われるので、それが検波回路17で検波され、復調回路18で復調されてデータが復元され、データ処理部11に送出される。
【0021】
また、通信装置10のアンテナ16における搬送波電圧は、図2に示したように、通信媒体30が通信装置10の最大通信距離の外側にあるときには、搬送波の振幅が最大になる。また、通信媒体30が通信装置10に近接した位置に置かれると、搬送波の振幅が減衰し、その減衰の程度は、通信装置10と通信媒体30との間の距離に応じて変化するような相関関係がある。この搬送波電圧と通信距離との変化特性から、通信距離検出部19は、アンテナ16の搬送波電圧を監視することによって通信媒体30までの距離を検出することができる。
【0022】
送信電力制御部20は、通信距離検出部19が検出した通信媒体30までの距離に応じて、送信アンプ15の送信電力を制御する。このとき、通信媒体30までの距離が所定の距離に到達するまでは、送信アンプ15の送信電力を最大の固定値に制御し、通信媒体30までの距離が所定の距離より短くなるに従って、送信アンプ15の送信電力を低減制御する。
【0023】
これにより、通信装置10に対して通信媒体30が遠方の場合、送信アンプ15の送信電力は制限がかけられることはなく最大を維持するので、最大限の通信距離を確保することができる。通信装置10に対して通信媒体30が近傍の場合、送信アンプ15の送信電力は通信媒体との通信に必要な送信電力にまで低減されるので、通信装置10の電力の消費を低減することができる。通信媒体30においても、通信装置10の近傍の場合に受信電力が過多になることはないので、その保護回路が働くことによる発熱はなく、したがって、受信電力過多による破損または性能低下をなくすことができる。
【0024】
図3は第1の実施の形態に係る通信装置の構成例を示す概略的な回路図、図4は第1の実施の形態に係る通信装置が有する通信距離に対する送信電力の制御パターンを示す図、図5は通信距離に対する搬送波の変化および監視電圧の検出イメージを示す図、図6は通信媒体の受信電圧特性を示す図である。なお、図4において、横軸は、通信装置10と通信媒体30との間の距離を表し、縦軸は、送信アンプ15の送信電力を表している。図5においては、横軸は、通信装置10と通信媒体30との間の距離を表し、縦軸は、搬送波電圧および監視電圧を表している。図6においては、横軸は、通信装置10と通信媒体30との間の距離を表し、縦軸は、通信媒体30の受信電圧を表している。
【0025】
第1の実施の形態に係る通信装置10では、送信アンプ15の送信電力の制御は、送信アンプ15を構成しているトランジスタのベースバイアス電圧を制御することで実現している。
【0026】
送信アンプ15は、特定周波数の差動増幅回路を構成する2つのトランジスタT1,T2を有し、これらのベースには、ベースバイアス電圧を受ける抵抗R1,R2が接続され、エミッタは抵抗R3,R4を介してグランドに接続されている。トランジスタT1,T2のコレクタは、インダクタL1,L2を介して電源に接続されるとともに、アンテナ16にも接続されている。アンテナ16には、並列共振回路を構成するコンデンサCが接続されている。
【0027】
アンテナ16の両端の端子は、整流回路40に接続されている。この整流回路40は、図1の通信距離検出部19に対応するもので、アンテナ16に生起される交流の搬送波電圧を次段の電力制御回路50の動作レベルに合うよう適当な分圧比で減衰し、それを整流することによって、通信装置10に対する通信媒体30の距離に対応した直流の値に変換する。この通信媒体30との距離を表す信号は、電力制御回路50に監視電圧として供給される。
【0028】
電力制御回路50は、図1の送信電力制御部20に対応するもので、整流回路40からの信号を受けるバッファ回路51を有し、その出力はローパスフィルタ(LPF)52に接続され、ここで不要なノイズが除去される。ローパスフィルタ52の出力は、一方では、ダイオードD1を介して送信アンプ15の抵抗R1,R2に接続され、他方では、比較器53の非反転入力に接続されている。比較器53の反転入力には、基準電圧Vrefが接続されている。この基準電圧Vrefの電圧値は、送信アンプ15の送信電力を固定制御と可変制御とに切り換える電力監視ポイントの電圧に相当する。比較器53の出力は、抵抗R5を介してトランジスタT3のベースに接続されている。トランジスタT3のベースは、抵抗R6を介してグランドに接続され、エミッタは、直接グランドに接続されている。トランジスタT3のコレクタは、トランジスタT4のゲートに接続されるとともに、抵抗R7を介して固定電圧の電源に接続されている。トランジスタT4のソースは、固定電圧の電源に接続され、ドレインは、ダイオードD2を介して送信アンプ15の抵抗R1,R2に接続されている。トランジスタT3,T4は、比較器53の出力に応じて固定電圧を出力したり固定電圧の出力を禁止したりするスイッチング素子を構成している。ダイオードD1,D2は、論理和回路を構成しており、それぞれのアノード側電位の高い方の電圧がベースバイアス電圧として送信アンプ15に供給される。
【0029】
送信アンプ15は、変調器14から無変調または変調された搬送波が送信信号として相補型の形態で入力されると、その送信信号は、トランジスタT1,T2により増幅されてアンテナ16に供給される。
【0030】
アンテナ16の搬送波電圧は、整流回路40によって受けられ、通信装置10に対する通信媒体30の距離を表す信号に変換される。変換された信号は、電力制御回路50のバッファ回路51に監視電圧として入力され、その出力は、ローパスフィルタ52に入力され、ノイズを除去するとともに監視電圧の急変を抑制している。
【0031】
ローパスフィルタ52の出力の監視電圧は、比較器53にて基準電圧Vrefと比較される。通信装置10に対して通信媒体30が遠方の場合には、送信アンプ15の送信電力は最大に設定されていて、監視電圧は基準電圧Vrefよりも大きいので、比較器53は、ハイレベルの信号を出力する。これにより、トランジスタT3はオンとなり、トランジスタT4もオンとなって、送信アンプ15の抵抗R1,R2には、ダイオードD2を介して固定電圧に略等しい電圧が供給される。この電圧がベースバイアス電圧としてトランジスタT1,T2のベースに供給されることにより、送信アンプ15は、搬送波を最大に増幅してアンテナ16に供給する。この送信アンプ15の送信電力の最大制御は、図4に示したように、通信媒体30が通信装置10に電力監視ポイントと呼ばれる所定の距離に近づくまで継続される。このとき、図5に示したように、搬送波電圧は、図2に示した低下傾向と同様、通信媒体30が通信装置10に近づくに連れて漸減し、したがって、監視電圧も、通信媒体30が通信装置10に近づくに連れて漸減する。
【0032】
通信媒体30が通信装置10にさらに近づくことにより、監視電圧が低減して電力監視ポイントの基準電圧Vrefより低い電圧になると、比較器53の出力が反転し、ローレベルの信号を出力する。これにより、トランジスタT3はオフとなり、トランジスタT4もオフとなって、ダイオードD2を介して送信アンプ15の抵抗R1,R2に供給していた固定電圧は、0になる。その代わりに、ローパスフィルタ52の出力の監視電圧がダイオードD1を介して送信アンプ15の抵抗R1,R2に供給されるようになる。この監視電圧は、図5に示したように、通信媒体30との距離が小さくなるに従って漸減するので、トランジスタT1,T2のベースにベースバイアス電圧として供給される電圧も漸減することになる。この結果、送信アンプ15は、図4に示したように、通信媒体30との距離が小さくなるに従って送信アンプ15の送信電力が低下する送信電力可変制御が行われる。
【0033】
通信媒体30が通信装置10に近づくに従って、途中までは、最大の送信電力に固定する制御を行い、途中からは、送信電力を小さくなるよう可変制御したことによって、通信媒体30が受信できる最大通信距離を確保しつつ受信する電力が過多になることがなくなる。すなわち、通信装置10が送信電力制御なしで送信している場合、図6に曲線P0で示したように、通信媒体30が遠くから通信装置10へ近づいていくと、それに応じて受信電圧も上がっていき、通信媒体30の保護回路が動作する距離を超えて近づくと、受信電圧は保護回路が動作する電圧Vpよりもさらに増加している。これに対し、保護回路が動作する電圧Vpよりも低いポイントPcで、通信装置10の送信アンプ15の送信電力を低下制御することにより、図6に曲線P1で示したように、通信媒体30の受信電圧は、保護回路が動作する電圧Vpを超えることがなくなる。これにより、通信媒体30は、受信電力過多による発熱によって破損または性能低下してしまうことを回避できるようになる。
【0034】
図7は第2の実施の形態に係る通信装置の構成例を示す概略的な回路図、図8は第2の実施の形態に係る通信装置が有する通信距離に対する送信電力の制御パターンを示す図である。図7において、図3に示した構成要素と同様のものについては同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0035】
この第2の実施の形態に係る通信装置10は、通信媒体30が近づくに従って送信アンプ15の送信電力の低下制御をするとき、送信アンプ15の送信電力が低下し過ぎて電力不足が生じてしまわないように、最低の電力を保証するようにしている。
【0036】
そのため、第2の実施の形態に係る通信装置10では、その電力制御回路50に最低電力保証回路54を設けている。この最低電力保証回路54は、2つの直列接続の抵抗R8,R9からなる分圧器と、その抵抗R8,R9の接続点に接続されたダイオードD3とを有している。可変の監視電圧を供給するダイオードD1、高い固定電圧を供給するダイオードD2および最低電力保証用の低い固定電圧を供給するダイオードD3は、論理和回路を構成しており、それぞれのアノード側電位の中で最も高い電圧がベースバイアス電圧として送信アンプ15に供給される。
【0037】
電力制御回路50が論理和回路を介して2つの固定電圧と1つの可変電圧とのいずれか1つを送信アンプ15に供給することにより、通信装置10は、図8に示したような送信電力特性となる。すなわち、通信媒体30が通信装置10に近づくに従って送信電力が低下していく途中で、ローパスフィルタ52の出力である監視電圧が最低電力保証回路54の出力電圧よりも低くなると、ベースバイアス電圧は、最低電力保証回路54の固定の電圧に切り換わり、それ以上低下しなくなる。これにより、通信装置10は、その近傍位置まで通信媒体30が近づくことにより送信アンプ15の送信電力が低下していっても、電力不足に陥ることがないので、通信媒体30との通信品質を低下させることがない。
【0038】
図9は第3の実施の形態に係る通信装置の構成例を示す概略的な回路図である。この図9において、図3および図7に示した構成要素と同様のものについては同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
第3の実施の形態に係る通信装置10は、送信アンプ15の送信電力の制御を、送信アンプ15に入力する信号のレベル、すなわち、変調または無変調の搬送波の振幅を減衰させることにより行っている。
【0040】
送信アンプ15に入力する信号の減衰は、この実施の形態では、信号を受ける入力回路の電源電圧を低下させることによって行っている。すなわち、電力制御回路50は、ローパスフィルタ52から出力される監視電圧を受けて、電源電圧から電圧可変の出力電圧に調整する電圧レギュレータ55を備え、送信アンプ15は、その入力段に、たとえば、バッファ回路60を備える。このとき、送信アンプ15を構成するトランジスタのベースバイアス電圧は、固定にしてある。
【0041】
電圧レギュレータ55は、たとえば、図8に示した特性と同様の制御特性を有しており、監視電圧の入力により、制御特性に従って調整された出力電圧を出力する。この電圧可変の出力電圧は、送信アンプ15のバッファ回路60の電源電圧にしている。バッファ回路60は、たとえば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)で構成したインバータ回路とすることができ、変調器14から受けた入力信号の振幅は、電圧レギュレータ55の出力電圧に応じて可変される。このように、送信アンプ15は、トランジスタのベースに入力されるベース信号が可変されることにより、ベースバイアス電圧を可変にしたときの制御と同様の送信電力可変制御が実現されることになる。
【0042】
なお、この実施の形態では、電圧レギュレータ55の制御特性は、その一例として、図8に示した特性と同様の制御特性にしたが、図4に示した特性と同様の制御特性にしてもよい。
【0043】
以上、本発明をその好適な実施の形態について説明したが、本発明はこの特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲で各種変化変形が可能であることはいうまでもない。たとえば、電力制御回路50は、ハードウェアによる構成によって実現しているが、整流回路40が出力する監視電圧をアナログ・デジタル変換器にてデータ化し、それをソフトウェアによりデータ処理して送信アンプ15の増幅度を制御するようにしてもよい。また、電力制御回路50は、比較器53によって監視電圧を基準電圧Vrefと比較することで、固定された特定の電力監視ポイントを検出しているが、この電力監視ポイントは、機器により、または、経年変化により変わるので、監視電圧をソフトウェアにより監視し、電力監視ポイントを条件に応じて動的に設定し、常に最適なポイントに変更させることができる。
【符号の説明】
【0044】
10……通信装置、11……データ処理部、12……変調生成回路、13……搬送波生成回路、14……変調器、15……送信アンプ、16……アンテナ、17……検波回路、18……復調回路、19……通信距離検出部、20……送信電力制御部、30……通信媒体、31……アンテナ、32……検波・復調回路、33……データ処理部、34……変調回路、40……整流回路、50……電力制御回路、51……バッファ回路、52……ローパスフィルタ、53……比較器、54……最低電力保証回路、55……電圧レギュレータ、60……バッファ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信媒体に対し電力の供給をしつつ通信を行う通信装置であって、
前記通信媒体との距離を検出する通信距離検出部と、
検出された距離に応じて送信アンプの送信電力を制御する送信電力制御部と、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記送信電力制御部は、前記通信距離検出部によって検出された前記通信媒体との距離が短くなるに従って前記送信アンプの前記送信電力を低下させるよう制御する請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記送信電力制御部は、前記通信距離検出部によって検出された前記通信媒体との距離が所定距離より長いとき、前記送信アンプの前記送信電力を固定制御し、前記所定距離よりも短いとき、前記通信媒体との距離が短くなるに従って前記送信アンプの前記送信電力を低下させるよう可変制御する請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
前記送信電力制御部は、前記通信距離検出部によって検出された前記通信媒体との距離が第1の所定距離より長いとき、前記送信アンプの前記送信電力を固定制御し、前記第1の所定距離以下であって前記第1の所定距離より短い第2の所定距離以上では、前記通信媒体との距離が短くなるに従って前記送信アンプの前記送信電力を低下させるよう可変制御し、前記第2の所定距離より短いとき、前記送信アンプの前記送信電力を固定制御する請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信距離検出部は、搬送波電圧を検出し、その検出結果に応じて前記通信媒体との距離を検出する請求項1記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信距離検出部は、検出した搬送波電圧を整流することにより前記通信媒体との距離に対応する値の信号を監視電圧として出力する整流回路を有する請求項1記載の通信装置。
【請求項7】
前記整流回路は、前記検出した搬送波電圧を前記送信電力制御部の動作レベルまで減衰させてから整流する請求項6記載の通信装置。
【請求項8】
前記送信電力制御部は、前記送信アンプを構成するトランジスタのベースに供給するバイアス電圧を前記監視電圧に応じて可変することにより前記送信アンプの前記送信電力を制御する請求項6記載の通信装置。
【請求項9】
前記送信電力制御部は、前記監視電圧を前記通信媒体との距離が所定距離のときに対応する値の基準電圧と比較する比較器と、前記監視電圧が前記基準電圧より高いことを前記比較器が検出したとき所定の固定電圧を前記バイアス電圧として前記送信アンプに出力するスイッチング素子とを有し、前記比較器が固定電圧を出力していないとき、前記監視電圧を前記バイアス電圧として前記送信アンプに出力する請求項8記載の通信装置。
【請求項10】
前記送信電力制御部は、前記監視電圧を前記通信媒体との距離が所定距離のときに対応する値の基準電圧と比較する比較器と、前記監視電圧が前記基準電圧より高いことを前記比較器が検出したとき第1の固定電圧を前記バイアス電圧として前記送信アンプに出力するスイッチング素子と、前記基準電圧より低い第2の固定電圧を前記バイアス電圧として前記送信アンプに出力する最低電力保証回路とを有し、前記比較器が前記第1の固定電圧を出力しておらず前記最低電力保証回路が前記第2の固定電圧を出力していないとき、前記監視電圧を前記バイアス電圧として前記送信アンプに出力する請求項8記載の通信装置。
【請求項11】
前記送信電力制御部は、前記送信アンプに入力された信号の振幅を前記監視電圧に応じて可変することにより前記送信アンプの前記送信電力を制御する請求項6記載の通信装置。
【請求項12】
前記送信アンプに入力された信号の振幅は、前記送信アンプの入力段に設けたバッファ回路の電圧を可変することにより制御する請求項11記載の通信装置。
【請求項13】
前記送信電力制御部は、前記監視電圧が所定の第1の電圧より高いとき、第1の固定電圧を前記バッファ回路の電源として出力し、前記監視電圧が前記第1の電圧より低い所定の第2の電圧より低いとき、前記第1の固定電圧より低い第2の固定電圧を前記バッファ回路の電源として出力し、前記監視電圧が前記第1の電圧以下で前記第2の電圧以上のとき、前記監視電圧が前記第1の電圧から前記第2の電圧へ変化するのに従って前記第1の固定電圧から前記第2の固定電圧へ変化する可変電圧を出力する電圧レギュレータを有している請求項12記載の通信装置。
【請求項14】
通信装置が通信媒体に対し電力の供給をしつつ通信を行う通信方法において、
前記通信装置が前記通信媒体との間の距離を検出し、
検出された距離が短くなるに従って前記通信装置の送信アンプの送信電力を低減する通信方法。
【請求項15】
前記送信電力の低減は、検出された距離が所定距離よりも短いとき行う請求項14記載の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−234183(P2011−234183A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103359(P2010−103359)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】