説明

通信装置

【課題】低電圧の通信用電源を用いて何台もの電気機器を接続でき、且つ、通信線の極性を考慮することなく機器同士の接続ができる安全性の高い通信装置を提供する。
【解決手段】通信ポートを介し、2本の通信線L1、L2にて相互接続された複数の通信ユニットU1〜Um間でシリアル信号のデータ通信を行う通信装置であって、各通信ユニットU1〜Umは、それぞれ2組の通信ポートA1A2、B1B2を備え、前記通信線L1、L2にて接続された各々一対の通信ユニット間に送信用素子PS2、PS4および受信用素子PS1、PS3の直列回路で成るカレントループ通信回路20、20’が形成されると共に、各々カレントループ通信回路20、20’に通信用の電源装置E、E’が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房装置や給湯装置等に用いられ、これら複数の電気機器間のシリアル通信を行う通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電気機器の間で機器の温度情報や制御情報等を相互に伝達するための通信装置が提案されており、例えば、特許文献1には、空気調和機の室内ユニットと室外ユニットの間で相互通信を行う通信装置が開示されている。
特許文献1において、室内ユニットと室外ユニットの各ユニットは、送信用フォトカプラと受信用フォトカプラの直列回路で成る通信回路を備えており、双方の通信回路が1本の通信線により接続されて一つのシリアルな通信装置を構成している。この通信装置によれば、室内ユニットの送信用フォトカプラのON/OFF信号を室外ユニットの受信用フォトカプラで受信し、室外ユニットの送信用フォトカプラのON/OFF信号を室内ユニットの受信用フォトカプラで受信することができる。
【0003】
係る構成の通信装置にて3台以上の電気機器を接続した従来例を図3に示す。
図3では、各電気機器1〜Mがそれぞれ受信用フォトカプラPS1と送信用フォトカプラPS2を直列に接続した通信回路を備え、各機器1〜Mにおいて、各通信回路の受信用フォトカプラPS1の出力側(フォトトランジスタ)が受信制御部に接続され、送信用フォトカプラの入力側(フォトダイオード)が送信制御部に接続されている。そして、これらの通信回路が通信線によって直列に接続されて一つのカレントループ型の通信装置を構成し、この通信装置に抵抗R1を介して直流電源装置Eが接続され、この直流電源装置によって各電気機器1〜Mの通信回路を駆動するようになっている。
【0004】
上記構成では、例えば、電気機器1の送信制御部がシリアル信号を発信すると、フォトカプラPS2のフォトトランジスタがカレントループ通信回路の電流をON/OFFしてパルス電流を発生し、このパルス電流が各電気機器1〜MのフォトカプラPS1のフォトダイオードをON/OFFするため、各電気機器1〜Mの各受信制御部にシリアル信号を同時に伝達することができる。
【特許文献1】特開2002−39603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成の通信装置は、接続する電気機器の台数に比例して高電圧の直流電源装置Eが必要であって、例えば、20台の電気機器を接続するには40V以上の高い直流電圧が必要となる。このため、接続台数は自ずと制限されると共に、通信回路を構成する各送信用、受信用のフォトカプラは高価な高耐圧タイプの素子を用いる必要があった。
【0006】
また、通信形態に極性を有するRS232C通信やRS485通信等を用いる場合は、通信線の誤配線により通信回路が動作不能になったり、場合によっては、回路素子が破壊するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、低電圧の電源装置を用いて電気機器を何台でも接続でき、且つ、通信線の極性を考慮することなく電気機器同士の接続が行える安全性の高い通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、通信ポートを介し、2本の通信線にて相互に接続された複数の通信ユニット間でシリアル信号のデータ通信を行う通信装置であって、各通信ユニットは、それぞれ2組の通信ポートを備え、前記通信線にて接続された各々一対の通信ユニット間に送信用素子および受信用素子の直列回路で成るカレントループ通信回路が形成されると共に、各々カレントループ通信回路に通信用の電源装置が設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の通信装置において、前記各カレントループ回路は、前記通信線に対して直列に介装されたダイオードブリッジ回路を備えることを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2の何れかに記載の通信装置において、少なくとも3台以上の通信ユニットが接続されて成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各カレントループ通信回路に通信用の電源装置を設けたので、従来のように高電圧の電源装置を用いることなく、低電圧の電源装置を用いて通信ユニットを何台でも接続できるようになると共に、各通信ユニットにおいては、通信回路を構成する送信、受信用素子として安価な低耐圧タイプの素子を使用することができるようになる。
【0012】
また、通信線に対して直列にダイオードブリッジ回路を介装することにより、通信ユニット間の接続の際に通信線の極性を考慮する必要が無くなり、よって、従来のような誤配線による通信回路の動作不能や回路素子の破損を回避できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1に基づいて本発明に係る通信装置の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態による通信装置の概略構成を示している。
【0014】
図1に示すように、複数の電気機器1〜M(3)には、それぞれ、通信ユニットU1〜Umが接続されている。
【0015】
各通信ユニットU1〜Umは、ダイオードブリッジ回路DB(DB’、DB”)、通信用の直流電源装置E(E’)、送信用フォトカプラPS2、PS4(PS2’、PS4’、PS2”、PS4”)、受信用フォトカプラPS1、PS3(PS1’、PS3’、PS1”、PS3”)、通信制御部10(10’、10”)等で構成されている。通信制御部10(10’、10”)は、例えば、マイクロコンピューター等で構成されており、この通信制御部10(10’、10”)を介して、各電気機器1〜M(例えば、暖房装置や給湯装置等)の通信ユニット間で様々な運転情報の伝送が行われる。
尚、本実施形態では、電気機器1は端末で、通信ポートB1、B2は使用されないため、図1において通信ユニットU1のフォトカプラPS3、PS4等は省略され、同様に電気機器Mは端末で通信ポートA1”、A2”は使用されないため、通信ユニットUmのフォトカプラPS2”、PS1”等は省略されている。
【0016】
各通信ユニットU1〜Umは、一対の通信ポートA1A2(A1’A2’、A1”A2”)と一対の通信ポートB1B2(B1’B2’、B1”B2”)の2組の通信ポートを備え、上位の通信ユニット(例えば、通信ユニットU1)の通信ポートA1A2とその下位の通信ユニット(例えば、通信ユニットU2)の通信ポートB1’B2’が2本の通信線L1、L2により接続され、同様にして、全ての通信ユニットU1〜Umがこの2本の信号線L1、L2にて順次直列に接続されて、本実施形態の通信装置が構成されている。
【0017】
通信ユニットU2において、通信ポートB1’B2’は、それぞれダイオードブリッジ回路DB’のAC端子(〜)に接続され、ダイオードブリッジ回路DB’の+端子はフォトカプラPS3’のフォトダイオードのアノードに接続され、カソードがフォトカプラPS4’のフォトトランジスタのコレクタに接続され、エミッタがダイオードブリッジ回路DB’の−端子に接続されている。
【0018】
また、通信ユニットU2において、通信ポートA1’は、フォトカプラPS2’のフォトトランジスタのコレクタに接続され、エミッタが直流電源装置E’の−端子(0V)に接続されている。通信ポートA2’は、フォトカプラPS1’のホトダイオードのカソードに接続され、アノードが直流電源装置E’の+端子(DC+12V)に接続されている。
【0019】
また、通信制御部10’の受信制御端子T2には、フォトカプラPS3’とPS1’のフォトトランジスタのコレクタ出力のOR出力が接続され、通信制御部10’の送信制御端子T1には、フォトカプラPS4’のフォトダイオードのカソードが接続され、フォトカプラPS2’のフォトダイオードのカソードにはフォトカプラPS3’のフォトトランジスタのコレクタと通信制御部10’の送信制御端子T1がOR接続されている。
【0020】
他方、上位端末である通信ユニットU1においては、フォトカプラPS2のフォトダイオードのカソードが通信制御部10の送信制御端子T1に接続され、フォトカプラPS1のフォトトランジスタのコレクタが受信制御端子T2に接続されている。
【0021】
また、下位端末である通信ユニットUmにおいては、フォトカプラPS3”のフォトトランジスタのコレクタが通信制御部10”の受信制御端子T2に接続され、フォトカプラPS4”のフォトダイオードのカソードが送信制御端子T1に接続されている。
【0022】
そして、通信ユニットU2の通信ポートB1’B2’が通信線L1、L2により上位の通信ユニットU1の通信ポートA1A2に接続されることにより、通信ユニットU1と通信ユニットU2の間に直流電源装置E(+)〜フォトカプラPS1〜ダイオードブリッジ回路DB’〜フォトカプラPS3’〜フォトカプラPS4’〜ダイオードブリッジ回路DB’〜フォトカプラPS2〜直流電源装置E(−)によるカレントループ通信回路20が形成される。
【0023】
他方、通信ユニットU2の通信ポートA1’A2’が通信線L1、L2により下位の通信ユニットUmの通信ポートB1”B2”に接続されることにより、通信ユニットU2と通信ユニットUmの間に直流電源装置E’(+)〜フォトカプラPS1’〜ダイオードブリッジ回路DB”〜フォトカプラPS3”〜フォトカプラPS4”〜ダイオードブリッジ回路DB”〜フォトカプラPS2’〜直流電源装置E’(−)によるカレントループ通信回路20’が形成される。
【0024】
この通信装置において、例えば、通信ユニットU1から他の通信ユニットに情報を送信する場合は、送信側である通信ユニットU1の通信制御部10の送信制御端子T1から電気機器の運転情報となる、例えば、RS485形式のシリアル信号が出力され、フォトカプラPS2がON/OFFされることで、上記したカレントループ通信回路20のループ電流がON/OFF制御され(この時、受信側である通信ユニットU2のフォトカプラPS4’はON状態にされている)、このループ電流が受信側である通信ユニットU2のフォトカプラPS3’にて検出され、検出信号が受信制御端子T2を介して通信ユニットU2の通信制御部10’に取り込まれる。尚、この場合、送信側である通信ユニットU1においても、フォトカプラPS1によりループ電流が検出され、自身の送信信号が受信制御端子T2を介して通信制御部10に取り込まれる。
【0025】
同時に、通信ユニットU2において、フォトカプラPS3’の検出信号によりフォトカプラPS2’がON/OFFされることにより、上記したカレントループ通信回路20’のループ電流がON/OFF制御され(この時、受信側である通信ユニットUmのフォトカプラPS4”はON状態とされている)、このループ電流が受信側である通信ユニットUmのフォトカプラPS3”で検出され、受信制御端子T2を介して通信ユニットUmの通信制御部10”に取り込まれる。
【0026】
このようにして、通信ユニットU1からのシリアル信号が各通信ユニット間に形成された各々カレントループ通信回路20、20’を介して逐次通信ユニットU3以降の多数の通信ユニットに送信される。
【0027】
他方、通信ユニットU2から他の通信ユニットに情報を送信する場合は、送信側となる通信ユニットU2の通信制御部10’の送信制御端子T1からシリアル信号が出力され、フォトカプラPS4’をON/OFFすることで、上記したカレントループ通信回路20のループ電流がON/OFF制御され(この時、受信側である通信ユニットU1のフォトカプラPS2はON状態にされている)、このループ電流が受信側である通信ユニットU1のフォトカプラPS1で検出され、検出信号が受信制御端子T2を介して通信ユニットU1の通信制御部10に取り込まれる。尚、この場合、送信側である通信ユニットU2においても、フォトカプラPS3によりこのループ電流が検出され、自身の送信信号が受信制御端子T2を介して通信制御部10に取り込まれる。
【0028】
同時に、通信ユニットU2において、上記した通信制御部10’の送信制御端子T1からのシリアル信号により、フォトカプラPS2’がON/OFFされることにより、上記したカレントループ通信回路20’のループ電流がON/OFF制御され(この時、受信側である通信ユニットUmのフォトカプラPS4”はON状態にされている)、そのループ電流が受信側である通信ユニットUmのフォトカプラPS3”で検出され、受信信号が受信制御端子T2を介して通信ユニットUmの通信制御部10”に取り込まれる。
【0029】
このようにして、通信ユニットU2からのシリアル信号が各通信ユニット間のカレントループ通信回路20、20’を介して逐次送信される。
【0030】
以上のように、本発明では、通信線L1、L2にて接続される各一対の通信ユニット間にそれぞれカレントループ通信回路20、20’を形成し、これらカレントループ通信回路20、20’毎に通信用の直流電源装置Eを設けたので、従来のように高電圧の電源装置を用いることなく、低電圧の電源装置にて通信ユニットを何台でも接続できるようになると共に、各通信ユニットU1〜Umにおいては、通信回路を構成する送信、受信用素子として安価な低耐圧タイプのフォトカプラを使用することができる。
【0031】
また、通信線L1、L2に対して直列にダイオードブリッジ回路DBを介装することにより、通信ユニット間の接続の際に通信線L1、L2の極性を考慮する必要が無くなり、よって、従来のような誤配線による通信回路の動作不能や回路素子の破損を回避できる。
【0032】
図2は、図1の通信装置の具体的な回路構成を示しており、図1と同じ回路部品には図1と同じ符号を付してある。
【0033】
図2に示すように、各通信ユニットU1〜Umは、全て同じ回路構成を有し、その内、上位端末である通信ユニットU1の通信ポートB1B2の付加回路(フォトカプラPS3、PS4による送受信回路)は、通信制御部10のポートB制御端子T3からの制御信号(”H”レベル)によって動作無効とされ、他方、下位端末である通信ユニットUmでは、通信ポートA1”A2”の付加回路(フォトカプラPS1”、PS2”による送受信回路)が通信制御部10”のポートA制御端子T4からの制御信号(”H”レベル)により動作無効とされている。
このように、本発明の通信装置では、各通信ユニットU1〜Umの回路構成を同一とし、各通信ユニットにおける通信ポートの有効/無効を各通信制御部からの”H”/”L”レベルのポート制御信号により制御することで通信ユニットの共用化が図られている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る通信装置の概略構成を示す図。
【図2】同、通信装置の具体的な回路構成を示す図。
【図3】従来の通信装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0035】
20 カレントループ通信回路
A1A2、B1B2 通信ポート
DB ダイオードブリッジ回路
E 電源装置(直流電源装置)
L1、L2 通信線
PS2、PS4 送信用素子(送信用フォトカプラ)
PS1、PS3 受信用素子(受信用フォトカプラ)
U1〜Um 通信ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ポートを介し、2本の通信線にて相互に接続された複数の通信ユニット間でシリアル信号のデータ通信を行う通信装置であって、
各通信ユニットは、それぞれ2組の通信ポートを備え、前記通信線にて接続された各々一対の通信ユニット間に送信用素子および受信用素子の直列回路で成るカレントループ通信回路が形成されると共に、各々カレントループ通信回路に通信用の電源装置が設けられていることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記各カレントループ通信回路は、前記通信線に対して直列に介装されたダイオードブリッジ回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
少なくとも3台以上の通信ユニットが接続されて成ることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−278561(P2007−278561A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103157(P2006−103157)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(591032954)株式会社巴商会 (9)
【Fターム(参考)】