説明

通報装置

【課題】キャッシュレジスター及びその周囲の画像を監視して非常通報を行なう通報装置。
【解決手段】
不特定の人物が出入りを許可された第1のエリアと、特定の人物のみが出入りを許可された第2のエリアと、キャッシュレジスターが設けられた第3のエリアから構成された監視領域内の人物の行動を監視する通報装置において、前記第1及び第2のエリアに人物が存在することを検出する人物位置検出手段と、前記第3のエリアの商品を検出する商品検出手段と、キャッシュレジスターの開放を検知するレジ開放検知手段を有する監視手段と、前記レジ開放検知手段を検知したとき、前記人物位置検出手段にて所定位置の人物を検出し、前記商品検出手段にて商品の存在を検出しないときに非常通報要と判定する通報判定手段とを備え、前記通報判定手段によって通報要と判定された場合に通報を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強盗などの非常事態の発生を検出して通報する通報装置に関し、特に、通報ボタン等の操作を要しない通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗や事務所などの利用者が強盗などの非常事態を外部に通報するための通報装置として、いわゆる非常ボタンの操作により、非常信号とともに監視カメラが撮像している画像を遠隔の監視センタに送出するものが広く知られている。
この種の通報装置は、利用者の自発的な操作に基づくために非常事態を誤って通報することが少ない反面、強盗などの非常事態が発生したときに当該強盗により非常ボタンの操作が妨げられたり、利用者の気が動転して非常ボタンの操作を失念してしまうことがあり、通報の確実性に欠けるという問題があった。
【0003】
また、客と対面して現金の受け渡しに従事している人は、強奪目的の加害者が凶器などを所有していることから迂闊にカウンター下部等に取り付けてある警察等への通知機能を作動させる行為をとると加害者を刺激し傷害を負う可能性がある。
特許文献1には、カメラ等で取り込んだ来訪者の顔の映像を画像処理することにより、不審人物の可能性があると判断されたとき、リアルに管理者等に通報が行える警報装置を提供することを目的として、不特定多数の人が利用するゾーンにおいて、顔の要素を検出し、一部隠している場合等に不審人物の可能性があると判断し通報する警報装置が開示されている。
また特許文献2には、異常な行動をしている不審者を特定して識別できる不審行動検知システムを提供することを目的として、ステレオカメラの映像を利用して、監視対象の移動軌跡情報を取得する移動軌跡取得部と、移動軌跡情報に基づいて監視対象の行動状態を識別して、監視対象の不審行動を自動で判定する行動識別部とを備え監視対象の不審行動を検知する不審行動検知システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−35992号公報
【特許文献2】特開2008−217602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に提案される通報装置によれば、顔の一部を隠蔽した人物を不審者の可能性があるとして外部に通報することができる。
また、特許文献2に提案される不審行動検知システムによれば、移動軌跡から不審な行動を識別して外部に通報することができる。
【0006】
しかしながら、顔の一部をマスクやサングラスで隠していたとしても、顔の隠蔽のみを検知して通報するようにすると、誤動作を多発する可能性があり、ひいては通報を受ける監視センタの負荷が増加し、通報装置の信頼性が低下する。
【0007】
また、例えばコンビニなどの店舗などで発生する強盗事件において、強盗犯人の行動パターンは類型化しており、例えば、直接にレジカウンターや店員の直近まで接近し、商品をレジカウンターに置くことなく、店員を脅してキャシュレジスターを強制的に開けさせて、現金を奪うという行動をとる場合がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、不特定多数の人の出入りが許可されている店舗等において、強盗行為においてのみ取られる人の行動を検知して通報することができる通報装置の提案を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明による通報装置は、
不特定の人物が出入りを許可された第1のエリアと、特定の人物のみが出入りを許可された第2のエリアと、代金の清算時に商品が載置されるカウンターが設けられた第3のエリアから構成された監視領域内を監視する通報装置において、前記第1及び第2のエリアに人物が存在することを検出する人物位置検出手段と、前記第3のエリアの商品を検出する商品検出手段と、キャッシュレジスターの開放を検知するレジ開放検知手段と、前記レジ開放検知手段がキャッシュレジスターの開放を検知したとき、前記人物位置検出手段にて所定位置の人物を検出し、前記商品検出手段が商品の存在を検出しないときに非常通報要と判定する通報判定手段と、前記通報判定手段によって通報要と判定された場合に通報を行う通報手段と、を備える。
【0010】
これにより、通報装置は、強盗犯特有の行動を検知して通報することを防止できる。
【0011】
また、本発明の通報装置において、更に顔隠蔽検出手段を有し、前記通報判定手段は、前記顔隠蔽検出手段にて顔を検出した人物が第1のエリア存在する場合に通報要と判定する。これにより、非常事態時以外に誤って通報することを防止できる。
【0012】
さらに、本発明の通報装置において、非常通報の送信をキャンセルするキャンセルボタンを設け、前記通報手段は前記キャンセルボタンの起動により非常通報を中止する。これにより、非常事態時以外に誤って通報することを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常の営業時には生じることのない強盗犯特有の行動を検出した場合、例えばキャッシュレジスターが商品の授受がないにも拘らず開放されとき、さらに顔を隠蔽した人物を検出したときに非常通報を行なうので誤通報を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の通報装置による通報システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の通報装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の通報装置の監視処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の画像監視処理に用いる基準画像を示す図である。
【図5】本発明の画像監視処理に用いる画像データを示す図である。
【図6】本発明の画像監視処理に用いる画像データを示す図である。
【図7】本発明の画像監視処理に用いる画像データを示す図である。
【図8】本発明の通報装置の監視処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態では、例えば金融機関や商店などの営業所を監視対象とし、この監視対象の監視領域として店舗エリア(第1のエリア)、レジカウンター内エリア(第2のエリア)とレジカウンター及びレジカウンターの上部空間である第3のエリアが設けられている場合を例示するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の通報装置を用いた通報システム1を示す構成図である。
図1は、外部との出入口を有する第1のエリア(店舗エリア)2a、第2のエリア(レジカウンター内エリア)2b及び第3のエリア(レジカウンター22及びレジカウンター22の上部空間)2cからなる監視エリア2と、監視エリア2に設置される監視カメラ3と、熱線センサや開閉センサなどの警備センサ7と、この監視カメラ3及び警備センサ7が接続される通報装置4との関係を模式的に平面図上に示している。
【0017】
ここで、本実施形態において、監視エリア2は、店舗エリア2aと、レジカウンター内エリア2bと、レジカウンター22及びレジカウンター22の上部空間である第3のエリア2cに分割されている。
店舗エリア2aは一般の客など不特定の人物の出入りが認められている空間である。
レジカウンター内エリア2bは店員24など、特定の人物みの出入りが認められている専用エリアである。第3のエリア2cは、店舗エリア2aと、レジカウンターエリア2bを隔てているレジカウンター22及びレジカウンター22の上部の空間であり、通常は客と店員24にて商品や金銭の受け渡しが行なわれる。
図1に示すように、店舗エリア2aは、外部との出入口として店舗出入口21が設けられている。
【0018】
図1の例では、店舗エリア2aの店舗出入口21を含む店舗エリア2aとレジカウンター内エリア2b及びレジカウンター22及びレジカウンター22の上部空間である第3のエリア2c全体が撮像可能な位置に監視カメラ3aが設置されている。また、レジカウンター22の直上の天井には、キャッシュレジスター23及びレジカウンター22の周囲を撮影する監視カメラ3bが設置されている。
これら監視カメラ3a、3bと通報装置4とは図示しないLANにより接続され、通報装置4は更に遠隔の監視センタ5と通信回線網6を介して接続されている。
【0019】
また、店舗エリア2aの店舗出入口21に開閉センサ71が設置され、店舗エリア2a及びレジカウンターエリア2bには図示しない熱線センサが設置されている。これらの警備センサ7は通報装置4と監視カメラ3とを結ぶLANに接続されている。
【0020】
監視カメラ3bは、レジカウンター22の直上の天井に設置され、レジカウンター22及びその周囲の監視情報を生成する監視手段である。監視カメラ3aは、監視カメラ3を識別するカメラ番号を記憶しており、撮像素子から入力される画像信号を所定の撮影間隔(例えば0.2秒周期、すなわち5fps(フレーム/秒))でデジタル信号に変換し、圧縮符号化処理を行い所定の規格(例えばJPEG規格)に準拠した画像データを生成する。生成された画像データは、LANに出力され通報装置4に送信される。このとき送信される画像データには、カメラ番号が含まれる。なお、監視カメラ3aは、マイクから入力される音声信号を圧縮符号化して音声データを生成し、画像データと音声データを多重化してLANに出力してもよい。
【0021】
警備センサ7は、監視エリア2の内部へ侵入する侵入者を検出する監視手段である。警備センサ7は、予め各警備センサ7を識別するセンサ番号を記憶しており、侵入者を検出するとセンサ番号を含む検出信号を通報装置4に出力する。
【0022】
通報装置4は、警備センサ7からの検出信号及び監視エリア2に設定された警備モードに基づき監視エリア2に侵入する侵入者を監視する。警備モードには、監視モードとしての警備セットモードと、非監視モードとしての警備解除モードとがある。警備セットモードは、監視エリア2に利用者が存在しない無人状態において設定するモードであり、通報装置4は、この警備セットモードが設定されている場合、警備センサ7から検出信号を受信したとき侵入異常と判定し、侵入検出信号を監視センタ5に送信する。警備解除モードは、監視エリア2に利用者が存在する有人状態において設定するモードであり、通報装置4は、この警備解除モードが設定されている場合において、警備センサ7から検出信号を受信しても侵入異常と判定せず、侵入検出信号を監視センタ5に送信しない。
【0023】
また、通報装置4は、監視カメラ3から入力される画像データを受信して、監視エリア2の人物の行動およびキャッシュレジスター23の状態から、通報要と判定されると、通信回線網6を介して監視センタ5に非常通報信号を通報するとともに、監視カメラ3から受信する画像データを監視センタ5に送信する。画像データの送信処理は監視センタ5又は監視エリア2の利用者から停止入力があるまで継続して行われる。
【0024】
特に、本実施形態において、通報装置4は、監視エリア2のエリア情報として、店舗エリア2aとレジカウンター内エリア2b及びレジカウンター22の上部空間である第3のエリア2cの画像上の位置情報であるエリア情報を記憶している。
通報装置4は、レジカウンター22で行なわれる客と店員の精算行動を監視し、商品を購入すること無く、キャッシュレジスター23が開放された場合に非常通報の処理を実行する。
【0025】
監視センタ5は、警備会社などが運営するセンタ装置51を備えた施設である。センタ装置51は、1又は複数のコンピュータで構成されており、本発明に関連する監視センタ5の機能を実現する。監視センタ5では、センタ装置51により各種機器が制御され、通報装置4から非常通報として受信した不審者検出信号を記録するとともに、通報装置4から送信される画像データをディスプレイ52に表示することで、監視員が監視対象となる複数の監視エリア2を監視している。
【0026】
<通報装置>
次に、図2を用いて通報装置4の構成について説明する。図2は、通報装置4の構成を示すブロック図である。
通報装置4は、監視領域2内(本実施形態ではレジカウンター内エリア2b)に設置され、監視カメラ3、警備センサ7と接続され、通信回線網6を介して監視センタ5と接続されている。
【0027】
通報装置4は、LANに接続される通信I/F(インタフェース)としての監視情報取得部41と、通信回線網6と接続される通信部42と、利用者が入力操作を行う操作部43と、HDDやメモリなどで構成される記憶部44と、MPUやマイコンなどで構成され各部の制御を行う制御部45とを有して概略構成される。
【0028】
監視情報取得部41は、監視カメラ3a、3b及び警備センサ7と接続され、監視領域2の監視情報として監視カメラ3から出力されるカメラ番号及び画像データ、警備センサ7から出力される検出信号を受信して制御部45にこれらデータを出力する。
通信部42は、通信回線網6を介してセンタ装置51と接続されて監視センタ5との間で通信を行う。通信部42は、制御部45にて通報要と判定されると、自己のアドレス情報を含む非常通報信号および監視カメラ3が撮像する画像データを監視センタ5に送信する。
また、通信部42は、制御部45にて警備セットモードに設定されている監視エリア2内に侵入者が存在すると判定されたとき、自己のアドレス情報を含む侵入検出信号を監視センタ5に送信する。
操作部43は、警備モードの設定操作など各設定情報が入力可能なスイッチである。
【0029】
記憶部44は、ROMやRAM、又はHDDにて構成され自己を特定するためのアドレス情報と各種プログラムなどを記憶しており、更に通報装置4を動作させるための各種情報を記憶する。具体的に、記憶部44は、キャッシュレジスター23の現金収容部の開放や、人物及びレジカウンター22上の商品を検出するための背景情報となる基準画像データと、現在の警備モードを示すモード情報と、人物の居場所を判定するためのエリア情報とを記憶している。また、記憶部44には、監視カメラ3から出力された過去所定時間分の画像データが記憶されている。
【0030】
ここで、記憶部44に記憶される基準データは、後述する画像監視処理にて現在の画像データと比較して監視領域2内の移動物体を抽出するために用いられる比較基準情報であり、予め無人時の監視領域2を撮像して取得された画像データである。
また、レジカウンター22及びレジカウンター22上部の空間を監視するための基準データである画像データには、キャッシュレジスター23の現金収容部が閉鎖されている状態の画像データが記憶されている。
【0031】
モード情報は、監視領域2に現在設定されている警備モード(警備セットモード又は警備解除モード)を記憶している。警備モードは利用者による操作部43への操作入力に基づき制御部45にて設定される。
【0032】
エリア情報は、監視領域2の店舗エリア2aとレジカウンター内エリア2b及びレジカウンター22及びレジカウンター22の上部空間である第3のエリア3cを画像上で区別するための位置情報である。
【0033】
制御部45は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ及びその周辺回路で構成され、上述した各部を制御する。そのために、制御部45は、このマイクロコンピュータ及びマイクロコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、現在日時を取得する時計手段としての電子カレンダ部450と、監視領域2の警備モードを設定/変更するモード設定部451と、監視領域2内への侵入者を検出する侵入者検出部452と、監視領域2の画像を監視する画像監視部453と、人物の顔の隠蔽を監視する顔隠蔽監視部454と、通信部42による通信処理を制御する通信制御部455を備えている。
【0034】
モード設定部451は、利用者が警備モードを設定する際に操作部43から入力する情報を照合し、照合OKと判定できれば、操作部43の入力に基づいて監視領域2の警備モードを警備セットモードまたは警備解除モードに設定する。モード設定部451にて設定された警備モードは、記憶部44のモード情報に記憶される。
【0035】
上述したように、警備セットモードは、例えば営業時間外や休日など監視領域2が無人となるときに設定され、警備センサ7が事象の変化を検出したときに通信部42を介して遠隔の監視センタ5に侵入検出信号により異常通報を行うモードである。また、警備解除モードは、監視領域2が有人のときに設定され、警備センサ7による事象の変化の検出による異常通報を行わないモードである。
【0036】
侵入者検出部452は、警備センサ7から監視情報取得部41を介して検出信号の入力があると、記憶部44に記憶されたモード情報を参照して、現在の警備モードが警備セットモード時に警備センサ7が検出信号を出力した場合に、監視領域2内に侵入者が存在すると判定する。一方、現在の警備モードが警備解除モード時に警備センサ7が検出信号を出力した場合には、侵入者の存在を判定しない。侵入者検出部452が侵入者を検出した情報、及び検出信号を出力した警備センサ7の情報は、記憶部44に記憶され侵入検出信号として監視センタ5へ通報される。
【0037】
画像監視部453は、記憶部44にて記憶されている基準の画像データと監視情報取得部41より入力された画像データを比較して非常事態の発生を監視する。具体的には、レジカウンター22の直上の天井に設置された監視カメラ3bの画像を所定周期で基準画像と比較し、レジカウンター内エリア2bに立つ店員24による操作によりキャスレジスター23の現金収容部231が開放されたことを検出した場合に、店舗エリア2aの所定領域に人物を検知し、且つレジカウンター22の上に商品が置かれていない場合に非常通報の必要があると判定する。
【0038】
顔隠蔽監視部454は、監視カメラ3aから監視情報取得部41で取得した画像データに人相が判別可能な顔特徴部分となる各部位(目、鼻、口)を隠蔽している(顔の各部位が検出できない)人物が存在することを検出し、検出した人物の画像上の位置情報を算出して記憶部44に記憶する。顔隠蔽監視部454は、顔領域において顔特徴部分を検出するための公知の様々な方法を用いることができる。
【0039】
具体的には、顔隠蔽監視部454は顔隠蔽監視部の処理として、監視情報取得部41で取得した画像データにてラベリングされた変動領域のエッジ成分を抽出し、エッジ画像データにおいて顔の輪郭形状に近似した楕円形状のエッジ分布を検出して、そのエッジ分布に囲まれた楕円領域内の色情報が、肌色(例えばHSV表色系において色相(H)成分が0から30にある画素)を含む場合に当該楕円領域を顔領域として抽出する。そして、この顔領域内に、顔特徴部分となるエッジ(例えば、目、口などの水平エッジ)が現れているか否かを判定し、このような顔特徴部分が検出できない顔領域を顔隠蔽であると判定する。
【0040】
また、顔隠蔽監視部454は、顔領域の輝度分布からサングラスとマスクを装着した顔領域を個別に検出する。サングラスとマスクを装着した顔領域は、上方に暗い画素が集中するため縦方向の輝度重心が中心より低い位置となる。また、横方向に見たライン毎の輝度値が小さくなるのに対し縦方向に見たライン毎の輝度値の分散は大きい。
さらに、サングラスの部分により輝度値が極端に低いという性質がある。そこで、顔領域の輝度重心のY座標が顔領域の中心より下方にあり、更に、X方向の標準偏差とY方向の標準偏差の比が所定しきい値より大きく、更に、輝度値の低い画素の割合がしきい値以上となる場合に、この顔領域内の画像はサングラスとマスクを装着した顔の画像であると判定して、当該顔領域を顔隠蔽であると判定する。顔隠蔽検出部454は、顔隠蔽した人物を検出した場合には、顔を隠蔽した人物の画像上の位置情報を算出して記憶部44に記憶する。
【0041】
通信制御部455は、画像監視部453または顔隠蔽監視部454により非常通報の必要が有ると判定された場合、監視センタ5に非常通報信号を送信する。非常通報信号には通報装置4のアドレス情報が含まれる。
また、通信制御部455は、非常通報が必要と判定された場合、監視カメラ3から入力される画像データを監視センタ5に送信開始する。送信される画像データにはカメラ番号と通報装置4のアドレス情報がヘッダ情報として付加され、監視カメラ3から入力される都度継続的に現在の画像データを送信する。そして、通信制御部455は、操作部43の停止入力による画像送信停止信号、又は監視センタ5から送信される画像送信の停止信号の何れかを受け付けると監視センタ5への画像データ送信処理を停止する。
通信制御部455は、侵入者検出部452により警備セットモードに設定されている監視領域2内に侵入者が存在すると判定されると、監視センタ5に侵入検出信号を送信する。
【0042】
<動作の説明>
以上のように構成された通報システム1について、図面を参照してその動作を説明する。ここでは、主として通報装置4による非常通報処理に関する動作について説明する。図3は通報装置4にて繰り返し実行される監視プログラムの動作を示すフローチャートである。
【0043】
図3に示す監視プログラムが実行されると、制御部45は、画像監視部453を動作させて監視情報取得部41からレジカウンター22及びレジカウンター22の上部空間である第3のエリア3cの画像データを取得し、記憶部44から読み出した基準画像データと比較する。画像データは記憶部44に記憶され、通常時は所定時間(例えば30秒間)経過すると消去される。
基準画像データは、客や店員24及びレジカウンター22上に商品が無い状態の画像データで、図4に示すようにキャッシュレジスター23の現金収容部231の開放時の画像上の位置2C1、精算のために商品が載置されるエリア2C2、客が精算のために立つエリア2a1、店員24が立つエリア2b1が予め記憶されている。
【0044】
図5は、店員24が強盗25に脅されてキャッシュレジスター23を開放している場面を示す例である。図5(a)は監視カメラ3bによって撮影された画像データ、図5(b)は、基準画像との差分画像を模式的に示した図である。
図5(b)に示すようにキャッシュレジスター23の現金収容部231の開放位置2C1に差分画像が現れたことによりキャシュレジスター23の現金収容部231が開放したことを検知する(ステップST02:YES)とST03に移行する。ここでキャッシュレジスター23の現金収容部231の位置2C1に差分画像が現れない場合には、ステップST01に戻る。
【0045】
ステップST03では、店舗内エリア2a近傍のエリア2a1とレジカウンターエリア2bのキャッシュレジスター23近傍の2b1に人物が居るか否かを検知する。人物の検知は差分画像からまず頭部領域を検出する。頭部は真上から見ると略円形状であるので差分画像を処理して例えばHough変換すると円に近似する領域として頭部領域が抽出される。この抽出した頭部領域にラベンリング処理を行なった後に当該頭部領域を挟んで対称となる位置(例えば左右や上下)に肩領域が検出されると人物と判定する。
ここで、エリア2a1に人物が検知されないときには、カウンターエリア2bの店員が現金補充等のためにキャシュレジスター23の現金収容部231を開放したものとして、ステップST01に戻る。
【0046】
ステップST02で、キャシュレジスター23の現金収容部231が開放したことを検知し、ステップST03でエリア2a1とエリア2b1に人物が居ることを検知すると、次に、画像監視部453はレジカウンター22の上に商品が置かれているか否かを検知する(ステップST04)。つまり、客が商品の代金を支払う場面では、レジカウンター22の上に商品が置かれるので、この商品を検知することにより、通常の商品購入の場面か否か判別できる。商品の検知は、差分画像からレジカウンター22の商品載置エリア2C2内に所定大きさ以上の差分画像領域が存在するか否かを検知する。図5(b)に示す例では、商品載置エリア2C2内に差分画像が現れていないので商品が置かれていないと判断する。
【0047】
尚、ステップST04における商品検知処理は、記憶部44に記憶されている所定時間例えば30秒前までの画像データまで遡って基準データと比較する。これは、レジで精算するときに商品の受け渡しが終わった後で、現金の支払いが行なわれる場合があり、キャッシュレジスター23の現金収容部231が開放した時点では、レジカウンター22の上には商品が存在しない状況が有る為である。この場合でも、現金収容部231が開放した時点の所定時間前には商品の受け渡しが行なわれて、レジカウンター22の商品載置エリア2C2上に商品が置かれて検知されることになる。
【0048】
図6は、レジカウンター22の上に商品が置かれている状態を示す例である。
図6(a)は監視カメラ2bの画像、図6(b)は差分画像である。図6に示す例では、現金収容部231の開放位置2C1、エリア2a1、エリア2b1、商品載置エリア2C2内のいずれにも差分画像が検知されるので、通常の商品を購入してレジで精算する場面であると判断する。
【0049】
尚、図7(b)に示すように商品載置エリア2C2に差分画像領域を検知した場合であっても、エリア2a1に居る人物の画像領域から連続している差分画像領域については、商品と判定しないようにする。これは、強盗25がレジカウンター22上に手を突き出して刃物などの凶器で店員24を脅している場合には、レジカウンター22の商品載置エリア2C2に所定大きさ以上の差分画像領域が現れる為である。
尚、客が商品をレジカウンター22に置く時には一時的にエリア2a1に居る人物の画像領域から商品載置エリア2C2まで連続している差分画像領域が現れるが、そのときには未だキャッシュレジスター23の現金収容部231は開放していないので、キャッシュレジスター23の現金収容部231の開放位置2C1に差分画像が現れることが無い。
【0050】
図5(b)のように、レジカウンター22の商品載置エリア2C2に商品が置かれていないあるいは所定時間遡って商品が置かれていなかった場合には(ステップST04:No)、店員24によりキャンセル操作が行なわれた否かを検知する。これは、強盗が発生していない場合にも両替などで、商品の受け渡しが行なわれないのに、現金の受け渡しが行なわれる状況が生じた場合に誤通報が行なわれるのを防止するためである。
キャンセル操作は、レジカウンター内エリア2b内の店舗2aから見えない箇所に設置される操作ボタンを店員が事前または所定時間内の事後に押すことにより行なわれる。キャンセル操作が行なわれた場合には(ステップST05:YES )、ステップST01に戻る。
【0051】
そして、キャシュレジスター23の現金収容部231が開放し、キャッシュレジスター23近傍の店舗内エリア2aとレジカウンターエリア2bにおける人物を検知し、レジカウンター22の上の商品未載置を検知し、キャンセル操作が無い場合は(ステップST05:No)、強盗事案が発生したものと判定して、非常通報信号の通報動作に移行する。
【0052】
通信制御部455が監視センタ5に非常通報信号を送信し(ステップST06)、監視カメラ3から入力される画像データを監視センタ5に送信開始する。画像データの送信は、操作部43から又は監視センタ5から画像送信の停止信号が入力されるまで継続して行われる。操作部43から又は監視センタ5から画像送信の停止信号が入力されると、監視センタ5への画像データの送信を停止して処理を終了する。
【0053】
次に図8を参照して、本発明による通報装置の第2の実施例を説明する。
図8は通報装置4にて繰り返し実行される監視プログラムの動作を示すフローチャートである。
本実施例は、上述の第1の実施例の画像監視処理であるキャシュレジスター23の現金収容部231が開放検知、キャッシュレジスター23近傍の店舗内エリア2aとレジカウンターエリア2bにおける人物を検知、レジカウンター22の上の商品未載置の検知に加えて、店舗内エリア2aの人物が顔を隠蔽しているか否かを検知することにより、非常通報信号の通報動作に移行する。
【0054】
図8に示す監視プログラムが実行されると、制御部45は、画像監視部453を動作させて監視情報取得部41からレジカウンター22及びレジカウンター22の上部空間である第3のエリア2cの画像データを取得し、記憶部44から読み出した基準画像データと比較する。基準画像データは、客や店員24及びレジカウンター22上に商品が無い状態の画像データで、図4に示すようにキャッシュレジスター23の現金収容部231の開放時の画像上の位置2C1、精算のために商品が載置されるエリア2C2、客が精算のために立つエリア2a1、店員24が立つエリア2b1が予め記憶されている。
【0055】
図5は、店員24が強盗25に脅されてキャッシュレジスター23を開放している場面を示す例である。図5(a)は監視カメラ3bによって撮影された画像データ、図5(b)は、基準画像との差分画像を模式的に示した図である。
図5(b)に示すようにキャッシュレジスター23の現金収容部231の開放位置2C1に差分画像が現れたことによりキャシュレジスター23の現金収容部231が開放したことを検知する(ステップST12:YES)とステップST13に移行する。ここでキャッシュレジスター23の現金収容部231の位置2C1に差分画像が現れない場合には、ステップST11に戻る。
【0056】
以下、ステップST13〜ステップST15の動作は、第1の実施例のステップST03〜ステップST05と同様であるので説明を省略する。
ステップST15において、キャンセル操作が無いことを検知すると、制御部45は、顔隠蔽監視部454を作動する。顔隠蔽監視部454は、監視カメラ3aで撮像した店舗エリア2aの画像を、領域監視情報取得部41を経由して取得し、取得した画像データに人相が判別可能な顔特徴部分となる各部位(目、鼻、口)を隠蔽している(顔の各部位が検出できない)人物が存在することを検出する。顔を隠蔽した人物を検知した場合には(ステップST16:YES)、強盗事案が発生したものと判定して、ステップST17の非常通報信号の通報動作に移行する。
【0057】
通信制御部456が監視センタ5に非常通報信号を送信する動作は、第一の実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0059】
例えば、本実施形態では、監視情報取得部41が監視対象2の監視情報として画像データを取得し、この画像データを用いて監視を行う例について説明したが、これに限定されない。すなわち、監視情報としては画像データに限らず、監視対象2の人物及び商品を識別できる情報であればよい。例えば、監視カメラ3に換えて、若しくは監視カメラ3の他に、監視手段として監視対象2内にレーザ光を照射しながら所定周期で空間走査を行い、光路上にある物体にて反射した反射光を受光することで、区域内に存在する物体までの距離データと照射方向を得て当該物体の位置を検出するレーザ走査型距離センサを用いてもよい。
【0060】
この場合、監視情報取得部41には、監視情報としてレーザ走査型距離センサから監視エリア2内の物体の位置(距離データと照射方向)が入力される。基準データとしては無人時に計測した既設物体の位置が記憶され、この基準データと現在の監視エリア2内の物体の位置との差分から変動物体が抽出され判別される。

【符号の説明】
【0061】
1 通報システム
2 監視エリア
2a 店舗エリア
2b レジカウンターエリア
3 監視カメラ
21 店舗出入口
4 通報装置
41 監視情報取得部
42 通信部
43 操作部
44 記憶部
45 制御部
450 電子カレンダ部
451 モード設定部
452 侵入者検出部
453 画像監視部
454 顔隠蔽監視部
455 通報判定部
456 通信制御部
5 監視センタ
51 センタ装置
52 ディスプレイ
6 通信回線網
7 警備センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不特定の人物が出入りを許可された第1のエリアと、特定の人物のみが出入りを許可された第2のエリアと、代金の清算時に商品が載置されるカウンターが設けられた第3のエリアから構成された監視領域内を監視する通報装置において、
前記第1及び第2のエリアに人物が存在することを検出する人物位置検出手段と、
前記第3のエリアの商品を検出する商品検出手段と、
キャッシュレジスターの開放を検知するレジ開放検知手段と、
前記レジ開放検知手段がキャッシュレジスターの開放を検知したとき、前記人物位置検出手段にて所定位置の人物を検出し、前記商品検出手段が商品の存在を検出しないときに非常通報要と判定する通報判定手段と、
前記通報判定手段によって通報要と判定された場合に通報を行う通報手段と、
を備えたことを特徴とする通報装置。

【請求項2】
更に顔隠蔽検出手段を有し、前記通報判定手段は、前記顔隠蔽検出手段にて検出した人物の行動が、第1のエリア存在する場合に通報要と判定することを特徴とした請求項1記載の通報装置。

【請求項3】
更に、前記通報をキャンセルするキャンセルボタンを設けたことを特徴とした請求項1記載の通報装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−43068(P2012−43068A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181860(P2010−181860)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】