説明

通気性のウエア

【課題】通気性のウエアの着用者がどのような姿勢をとっても通気口を塞ぐことがなく、体温により発生する熱と湿気を効率よく外部に排出し、風雨の強い場合でも通気口からの雨滴の浸入が確実に防止でき、しかもデザイン性にも優れた通気性のウエアを提供する。
【解決手段】内面にメッシュ状布帛が取り付けられた通気性のウエアであって、上下に分割された布片の上段布片4と下段布片6とで重ね合せ部を形成し、該下段布片6の上端部を外側に折り返して雨水浸入防止用堰を形成して、該折り返し部と上段布片4との間に第1の通気口103を設け、該上段布片の端部と下段布片の間に第2の通気口20を設け、該折り返し部と上段布片の端部を連結手段42で連結して、該第2の通気口が拡大すると、該連結手段で雨水浸入防止用堰の折り返し角度を拡大させて、第1の開口への雨水の浸入を防止するよう構成するとともに、該重ね合せ部を上衣の前身頃及び後身頃に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨衣、ヤッケ、各種作業衣、アノラック、ウインドブレーカーなど衣服の上から着用する通気性のウエア、あるいは素肌の上に直接着用するランニングウエアに関するものである。特にウエアの内部に蓄積する体熱と湿気を外部に効率よく放散することができ、しかも、風雨が強い時でも外部からの雨滴の浸入を防止できる、通気性に優れたウエアに関するものである。
本発明の通気性のウエアは、防水加工されて生地自体の通気性が乏しいため内部に体熱と湿気が蓄積しやすいレインウエアに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の通気性のウエアとして、防水ズボンに設けられた排気口の上面に覆いを下向きに取り付けて、排気口を下向きに開口させたものがある(特許文献1参照)。
また、後身頃の上部にメッシュ状布帛を用いて縫製し、メッシュ状布帛およびメッシュ状布帛の下端につながる後身頃部分に背ヨークを重ね、下向きの開口部を残して背ヨークを後身頃に縫いつけてメッシュ状布帛と外気とを連通させ、重なり部分の開口部近傍に身巾方向に延びるスペーサを設けたものがある(特許文献2参照)。
更に、排気口での通気性を向上させるために覆いと布で形成される隙間に隙間を開放するばねを設置しているものがある(特許文献3参照)。
また本願出願人が提案した、覆い布に多数の独立空気室を有するシートを使用したものがある(特許文献4参照)。
更に、本願出願人は、上下に分割された複数の布片から構成し、上段布片を下段布片に重ね合わせ、該重ね合せ部にメッシュ状布帛を縫製し、しかも下段布片の上端と上段布片の下端間にメッシュ状布帛を縫製した通気性ウエアを提案した(特許文献5参照)。
【0003】
雨滴の浸入を防止するウエアとして、後身頃の上端部を複数回折り返し、重合する折り目の近傍を接合して複数個の溝を形成し、前かがみの姿勢で作業を行う時に雨滴が通気路内を逆流して内部に侵入することを防ぐレインウエアがある(特許文献6参照)。
また、上側と下側の生地が相互に重ね合わさった開口部を設け、重ね合わさった下側の生地の端部を重ね合わせ側で下方に折り返し、かつ該開口部には重ね合わさった生地の相互間に隙間ができるように弾性体を張設した雨衣がある(特許文献7参照)。
更に、背下部と、この背下部の上部を被う背上部とを備え、背下部と背上部との間に、衣料内外を通過する通気経路を形成した防水衣料であって、背下部の上部にその横方向全体にわたって背上部側に折り返し部を設け、背上部の内面上部と該折り返し部の外面とを接続する接続部材を張設した防水衣料がある(特許文献8参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−75604号公報(第2頁、図2)
【特許文献2】実用新案登録第3045954号公報(第6頁、図2)
【特許文献3】実開平1−83010号公報(第2頁、図4)
【特許文献4】特開2002−146604号公報(第4頁、図6)
【特許文献5】特願2007−239539号明細書
【特許文献6】特許第2810315号公報(第3頁、図3)
【特許文献7】実開昭59−185221号公報(第8頁、図5)
【特許文献8】実開平7−24920号公報(図3〜図5)
【0005】
特許文献1のウエアは、排気口の上面に覆いを下向きに取り付けているだけのため、風雨が強い場合には覆いがめくれて、排気口から雨滴が浸入する。また、ズボンと防水ズボンとの間で発生する湿気により、覆いが防水ズボンに密着して排気口が閉塞されて排気ができなくなる。排気ができなくなるとズボンと防水ズボンとの間で発生する湿気で防水ズボンの内面が結露し、着用者に水漏れしたような錯覚を与え、またズボンに張り付いて防水ズボンが脱ぎ難いという問題がある。
【0006】
特許文献2のウエアは、重なり部分の開放口近傍に身巾方向に延びるスペーサを設けている。この身巾方向に延びるスペーサは雨滴の内部への侵入を防止するのに適しているが、ウエアを着て前かがみの状態で動作する場合、ウエアの背中部分が引っ張られ、身巾方向に延びるスペーサと背ヨークが密着して、解放口が完全に塞がれるため通気性が維持できなくなる問題がある。
【0007】
特許文献3のウエアは、覆いと布の間に開放用ばねを設けて、常時隙間を設けるようにしているため、隙間から雨滴が浸入するという問題がある。
また特許文献4のウエアは、排気口に設けた覆いに多数の独立気泡室を有するシートを用いているが、風雨が強い場合には覆いがめくれて、排気口から雨滴が浸入する。更に、独立気泡室の空気が時間の経過とともに漏れて萎むと、排気口が閉塞されるという問題がある。
【0008】
特許文献5のウエアは、上下に分割された複数の布片の上段布片を下段布片に重ね合わせ、該重ね合せ部にメッシュ状布帛を縫製したため、通気性は改善されるが、風雨が強いときに着用すると重ね合わせ部から雨滴が浸入するという問題がある。
【0009】
特許文献6のウエアは、後身頃の上端部を複数回折り返し、重合する折り目の近傍を接合して得た端部に複数個の溝を形成しているため、比較的風雨の弱いときに、前かがみの姿勢で作業を行うと、カバー布が引っ張られて後身頃に密着して、通気開口部が閉止され、雨滴逆流防止用堰により逆流する雨滴の背中側への浸入が防止される。しかし、風雨の激しいときには、カバー布がめくりあがり、例え前かがみの姿勢を取ったとしても雨滴の背中側への浸入は避けられない。
【0010】
特許文献7のウエアは、上側と下側の生地が相互に重ね合わさった開口部を設け、重ね合わさった下側の生地の端部を重ね合わせ側で下方に折り返し、かつ該開口部に、重ね合わさった生地の相互間に強制的に隙間を生じるような弾性板を張設している。比較的風雨の弱いときには、隙間から侵入する雨滴を下側の生地の折返し部で止めることができるが、風雨の激しいときには、弾性体で強制的に設けられた隙間から侵入する激しい風に雨滴が同伴して、下側の生地の折返し部を越流して内部に浸入する恐れがある。また強風で上側の生地がめくりあがると雨滴が直接メッシュ地から内部に浸入する。風雨が激しいときに、弾性板の中間部がフラット状態になるようにその端部を特定の袋状勘合部に勘合すると通気用の隙間が閉塞され、通気性が失われるという問題がある。
【0011】
特許文献8のウエアは、背下部の上部にその横方向全体にわたって背上部側に折り返した折り返し部を設け、背上部の内面上部と該折り返し部の外面との間に、これらを接続する接続部材を張設している。作業者が屈み込んで作業する時は、背上部の上面と折り返し部を連結するメッシュシートが上方に引っ張られることにより、折り返し部の外面が上方に引き上げられて拡大し、通気通路からの雨滴の浸入が防止できる。しかし風雨の強い場合は、屈み込み作業時に背上部がめくれ上がり衣料内部への雨滴の進入を防止することは困難で、また作業者が屈み込み以外の姿勢で作業を行うと背上部がめくれ上がり、直接通気経路から雨滴が衣料内部に浸入する。更に風雨により背上部が背下部に密着し、通気経路を閉塞することがある。風雨が比較的弱い場合でも通気経路から吹き込んだ雨滴が背下部に形成された折返し片を越流して衣料内部に浸入する。特許文献8に開示された衣料は屈み込み作業時には雨滴の浸入が防止できるが、これは風雨の比較的弱い時であり、背上部がめくりあがるような風雨が強い時では、衣料内部への雨滴の浸入は避けられない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、ウエアの内部に蓄積する体熱と湿気を外部に効率よく放散することができ、しかも、風雨が強い時でもウエア内部への雨滴の浸入を確実に防止できる通気性のウエアを提供することである。
更に、本発明の第二の目的は、激しい風雨のときに雨衣を着用した作業者が、前かがみ姿勢を含むどのような姿勢を取ったとしても、ウエア内部への雨滴の浸入を各日に防止できる通気性のウエアを提供することである。
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)内面にメッシュ状布帛が取り付けられた通気性のウエアであって、上下に分割された布片の上段布片と下段布片とで重ね合せ部を設け、該下段布片の上端部を外側に折り返して雨水浸入防止用堰を形成して、該折り返し部と上段布片との間に第1の通気口、該上段布片の端部と下段布片との間に第2の通気口を設けるとともに、該折り返し部と上段布片の端部を連結手段で連結して、該第2の通気口が拡大すると、該連結手段で雨水浸入防止用堰の折り返し角度を拡大させて、第1の通気口への雨水の浸入を防止するよう構成し、該重ね合せ部を上衣の前身頃及び後身頃に設けたことを特徴とする通気性のウエアである。
【0014】
(2)上衣の袖口であって、外袖と内袖で形成される円筒状袖口の内部に、先端部を外側に折り返した円筒状の内部袖口を挿入し、該折り返し部の端部を円筒状袖口に接合して雨水浸入防止用堰を形成するとともに、該外袖側の折り返し部に通気用の多数の開孔を設けた上記(1)に記載の通気性のウエアである。
【0015】
(3)上衣とズボンからなる通気性のウエアであって、該重ね合せ部をズボンの前身頃に設けた上記(1)に記載の通気性のウエアである。
【0016】
(4)ズボンの裾口であって、前身頃と後身頃で形成される円筒状裾口の内部に、先端部を外側に折り返した円筒状の内部裾口を挿入し、該折り返し部の端部を円筒状裾口に接合して雨水浸入防止用堰を形成するとともに、該折り返し部に通気用の多数の開孔を設けた上記(3)に記載の通気性のウエアである。
【0017】
(5)該重ね合せ部を上下に複数設け、下段の重ね合せ部に形成された第2の通気口からウエア内部に侵入する外気を、上段の重ね合せ部に形成された第2の通気口から排出するよう構成した上記(1),(3)に記載の通気性のウエアである。
【0018】
(6)該下段布片の折り返し部と上段布片の端部を連結する連結手段が、少なくとも50mm間隔で配設された、厚み2〜6mmの細幅の布帛である上記(1),(3)に記載の通気性のウエアである。
【0019】
(7)該連結手段が、厚み1〜3mmの細幅の2枚の布帛の重ね合せ体であって、該重ね合せ体の端部が上段布片の折り返し部を挟んで接合されてなる上記(6)記載の通気性のウエアである。
【0020】
(8)該上段布片の端部と、該重ね合せ部の下端部から3〜5cm上部の下段布片との間を、少なくとも50mm間隔で配設された、厚み2〜6mm、長さ3〜5cmの細幅の布帛で連結して、上衣の捲り上がりを防止する上記(1),(3)、(5)、(6),(7)記載の通気性のウエアである。
【0021】
(9)該布帛が、3次元立体編物、面ファスナー、織物、メッシュである上記(6)〜(8)に記載の通気性のウエアである。
【0022】
(10)該通気性のウエアが、雨衣、各種作業衣、アノラック、ウインドブレーカーなどの衣服の上から着用するウエア、あるいは素肌の上に直接着用するランニングウエアである上記(1)〜(9)に記載の通気性ウエアである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の通気性のウエアは、上下段に分割された布片を重ね合わせて重ね合わせ部を設け、下段布片の上端を外側に折り返して雨水浸入防止用堰を形成し、該重ね合わせ部の折り返し部と上段布片との間に第1の通気口を設け、該重ね合せ部の上段布片の端部と下段布片との間に第2の通気口を設けるとともに、該折り返し部と上段布片の端部を連結手段で連結したことに第一の特徴を有している。
かかる特徴により、風雨の強い時に上段布片のめくり上がりが防止できる。また、第2の通気口が拡大すると連結手段により雨水浸入防止用のV字状堰を構成する折り返し角度が拡大し、雨滴が堰を越して第1の通気口からウエアの内部へ浸入することが防止できる。また、V字状堰の角度の拡大に比例して、堰と上段布片で形成される第一の通気口の幅が狭められるため、大きく開かれた第二の通気口から進入する強風は、狭くなった第一の通気口が抵抗となってウエア内部への浸入を少なくすることができる。そのため風雨の強度に関係なく、第一の通気口を通過する通気量を一定量に調節することができる。また、強風時に大量の空気がウエア内部に浸入して、ウエア着用者の体を冷やすことも防止できる。また連結部材により通気性のウエアの型崩れが防止でという効果を奏している。
【0024】
更に、該重ね合せ部を、上衣の前身頃と後身頃、ズボンの前身頃の上下に複数設けたことに第二の特徴を有している。
上段及び下段の重ね合せ部に設けられた通気口によるベンチュレーション効果によって、下段重ね合せ部の第2の通気口からウエア内部に導入された外気が、ウエア内部に蓄積する体熱や湿気を同伴して上段重ね合せ部の第2の通気口から外部に効率よく排出される。そのため梅雨時の運動や作業時にウエアを着用してもむれが生じにくく、発汗を遅らせることができる。
オーバーコート型の雨衣などは、通気性を向上させるために、上下に二箇所以上の重ね合せ部を設けることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0025】
次に本発明の通気性のウエアの一実施例を図面にて説明する。図1は本発明の通気性のウエア(上着)の前身頃の一例をモデル的に示す概略図であり、図2は図1に示す上衣の後身頃の一例をモデル的に示す概略図である。また図3は本発明の通気性のウエア(ズボン)の一例をモデル的に示す概略図であり、図4は、ズボンの他の一例をモデル的に示す概略図である。図5は本発明の他の通気性のウエア(上着)の前身頃の一例をモデル的に示す概略図であり、図6は図5に示す上衣の後身頃の一例をモデル的に示す概略図である。
【0026】
図1に示すように、上着の前身頃は右前身頃aと右脇身頃bを縫製して、右縫い合せラインAを形成している。また左前身頃a’と左脇身頃b’を縫製して、左縫い合せラインA’を形成している。更に右脇身頃b及び左脇身頃b’と後身頃を縫製して、右及び左縫い合せラインB,B’を形成している。なお、本発明の通気性のウエアは、縫付縫製に限らず、各種の縫製方法、例えば接着縫製など公知の接合手段を用いてもよい。また縫付部に沿ってシームテープを貼り付けると、これらの縫付部からの雨滴の浸入を防ぐことができ好ましい。
【0027】
左右の前身頃a,a’は夫々上中下段に3分割された3枚の布片1,2,3及び1’,2’,3’で構成されている。また左右の脇身頃b,b’は夫々3枚の布片4,5,6及び4’,5’,6’で構成されている。上中下段に3分割された3枚の布片は上段布片の下部分を、中段の布片の上部分の表面に重ね合せた重ね合わせ部S有している。各重ね合わせ部Sの下端に下向きの第二の通気口が設けられる。図1では左右の前身頃に上部通気口20,21及び下部通気口20’,21’が設けられ、左右の脇身頃に上部通気口22,23及び下部通気口22’,23’が設けられている。重ね合せ部Sは上着内での空気の対流の停滞による通気効果の減少を防ぐために、少なくとも上部と下部に2ヶ所設けることが好ましい。
【0028】
上部と下部の2ヶ所に設けられた重ね合せ部Sは、上着の低い位置(下部第二の通気口)から外部の空気を吸い込み、高い位置(上部第二の通気口)から暖かく湿った空気を排出するベンチュレーション効果を促進する作用がある。また図1の左右の前身頃a,a’に設けられた上部第二の通気口20,20’及び左右の脇身頃b,b’に設けられた第二の通気口22,23及び22’,23’は、上着内部の湿った空気の排出を容易にするため傾斜させている。運動や作業時にも効果的、かつ適度な排出効果を確保するには、第二の通気口の位置が重要である。第二の通気口の形状と位置及び大きさはウエアの種類(上着及びズボン、コート)、着用者の身体の大きさ、着用場所、外気温等により適宜決定される。35は裾調節機能である。
【0029】
また図2に示す後身頃cも前身頃と同様に、上中下段に3分割された3枚の布片7,8,9で構成されている。上中下段に3分割された上段布片7の下部分を、下中の布片8の上部分の表面に重ね合せた重ね合せ部Sに下向きの第二の通気口24,25が設けられている。上着の背中の上部に湿気が溜まりやすいため、重ね合せ部は襟に近い部分に設けることが好ましい。また着用者が前かがみで作業するときに、上段の布片が引っ張られて第二の通気口から雨滴が浸入しないように、重ね合せ部Sの長さを6〜12cm、通常8〜10cmに設定することが好ましい。重ね合せ部Sの長さが6cm未満では、風で上段の布片がめくられると雨滴が簡単に浸入する恐れがある。また12cmを超えると前かがみ等の姿勢をとった場合に、上段の布片が下段の布片に重なって密着し、通気性に問題を生ずる恐れがある。36は雨天時に頭に被るフードの収納部である。
【0030】
右外袖10と右内袖11を縫い合せラインC,Dで縫製した右袖d及び左外袖10’と、左内袖11’を縫い合せラインC’,D’で縫製した左袖d’が前身頃a,a’と脇身頃b,b’、さらに後身頃cに縫製されて前袖縫い合せラインE,E’と後袖縫い合せラインF,F’が形成されている。また左右の袖d,d’に設けられる重ね合せ部Sは湿気が溜まりやすい脇の内側近く、すなわち内袖11,11’に設けられる。そのため左右の内袖11,11’は上下段に2分割された2枚の布片12,13及び12’,13’の上段布片12,12’の下部分を、下段の布片13,13’の上部分の表面に重ね合せ、重ね合わせ部Sに下向きの第二の通気口26,26’を設けている。袖の場合は袖口が下部通気口となるため重ね合わせ部は1ヶで良い。前袖縫い合せラインE,E’と後袖縫い合せラインF,F’には、日が暮れるのが早い雨天の日の安全性を確保するため、再帰反射素材のパイピングを施こすことが好ましい。
【0031】
ズボンでは、図3に示すようにズボンの右左の前身頃e,e’と右左の後身頃f,f’が内側縫い合せラインG,及び外側縫い合せラインH’で縫い合わされている。また前身頃e,e’は夫々上、中、下段に3分割された3枚の布片50,51,52及び50’,51’,52’で構成されている。上中下段に3分割された3枚の布片は上段布片の下部分を、中段の布片の上部分の表面に重ね合せて重ね合わせ部Sを設けている。ズボンでは腹部付近に重ね合わせ部を設けると、座った時にごわつき感があるため、ベルト芯縫付ラインIから斜めに重ね合わせ部Sを設けることが好ましい。また下段の重ね合わせ部は、脚の動きをサポートしやすい膝下部に設けられている。
【0032】
図4は、ズボンの他の例であり、ズボンのベルト芯縫付ラインIの近くに取り付けた、幅1〜5cm、好ましくは2〜3cmのメッシュ布帛101を上段の第二の通気口としている。メッシュ布帛の強度が弱いため、メッシュ布帛101の幅が5cmを超えるとズボンの強度が劣るとともに、デザイン的に劣る恐れがある。また1cm未満ではメッシュ布帛の取り付けが面倒で、通気性が劣るという問題がある。メッシュ布帛の強度を補強するため、ベルト芯縫付ラインIとズボンの端部の間を細幅の布製布帛からなる補強部材102で連結している。上着を着用するとズボン上部のベルト芯縫付ラインIは、上着で隠れるため、ベルト付近にメッシュ布帛101を設けても外観上支障はない。メッシュ布帛を上部通気口に使用したズボンは、図3に示す上部通気口27、27’を設けたズボンと比べ製造が容易で、安価である。
【0033】
図5に上着の他の例を示すように、この上着は、右前身頃a及び左前身頃a’が後身頃と縫製されて右及び左縫い合せラインB,B’を形成している。左右の前身頃a,a’は夫々上中下段に3分割された3枚の布片1,2,3及び1’,2’,3’で構成されている。上中下段に3分割された3枚の布片は上段布片の下部分を、中段の布片の上部分の表面に重ね合せ、各重ね合わせ部Sの下端に下向きの第二の通気口が設けられる。図5では左右の前身頃に上部第二の通気口20,21及び下部第二の通気口20’,21’が設けられている。
【0034】
図6に示す後身頃cも前身頃と同様に、上中下段に3分割された3枚の布片7,8,9で構成されている。上中下段に3分割された上段布片7の下部分を、中段布片8の上部分の表面に重ね合せ、各重ね合わせ部Sに下向きの第二の通気口24,25が設けられている。
【0035】
図7は図1に示す右前身頃bのT−T断面図であり、上段重ね合せ部Sと下段重ね合せ部Sの構造を示している。右前身頃bを構成する上段布片4の下部が中間段布片5の上部に重ね合され、重ね合わせ部Sが設けられ、該重ね合わせ部Sの端部に下向きに開口する上部第二の通気口20が設けられている。また中間段布片5の下部が下段布片6の上部に重ね合されて重ね合わせ部Sが設けられ、該重ね合わせ部Sの端部に下部第二の通気口21が設けられている。31は通気性のウエア内部全体に設けられたメッシュ布帛である。中間段布片5の上端は外側に折り返されてV字状の堰40を形成している。該折り返し部41の長さは10mm〜30mm、通常20mmが適当である。10mm未満では、堰で止められた雨滴が堰を越えて第一の通気口から内部に進入する恐れがある。
30mmを超えると堰を形成する折り返し部が変形して雨滴の通路が形成される恐れがある。
折り返しは単層であっても複層であっても良い。複数回折り返す場合は、重合する複数の折目の近傍を縫製してV字状の堰を一体化する必要がある。複層の場合は折り返し部の長さが短くても確実に風雨の進入が防止でき好適である。
【0036】
また上段布片4の端部と中間段布片5の折り返し部41は連結手段42で連結されている。連結手段の厚みは2〜6mm、通常3〜5mmが適当である。連結手段42は中間段布片5の折り返し部41及び上段布片4の端部に、幅10mm〜30mm、厚さ2〜6mmの布帛が、例えば5〜12cm間隔で取り付けられている。かかる連結手段により上段布片4と中間段布片5の折り返し部41との間に幅2〜6mm、長さ5〜12cmの第一の通気口103が形成される。
【0037】
また連結手段42として、厚み2〜6mmの細幅、例えば10mm〜30mm、通常15〜20mm幅の布巾、メッシュ状布帛、3次元立体織物、面ファスナーなどを使用する場合は、連結手段は5〜12cm間隔、通常5〜8cmの間隔で取り付けられる。厚みが2mm以下では、第一の通気口103を形成する隙間が小さく通気性が不十分である。また6mmを超えると強風時に雨滴が堰を越えて内部に進入する恐れがある。厚さ2mm以下の薄い布帛、面ファスナーからなる連結手段42を用いる場合は、連結手段の両端の厚みが2〜6mmとなるように複数回折り畳み、該折り畳み部を折り返し部41と上段布片4の端部に取り付けて第一の通気口を形成する隙間を形成するか、折り返し部41と上段布片4の端部に、幅10〜30mm、長さ10〜30mmの布帛を5〜12cm間隔で取り付けて第一の通気口103を確保するようにしてもよい。
【0037】
風雨の強い時にウエアを着用すると、第二の通気口20,21が拡大して雨滴が内部に浸入する恐れがあるが、本発明の通気性のウエアは、図8及び図9(図8のV部詳細説明図)に示すように、第二の通気口20が拡大すると連結手段42により中間段布片5の折り返し部41が引っ張られてV字状の雨水浸入防止用堰40が開き、この堰に雨滴が集められて中間段布片5に沿って流下するため、ウエア内部への雨水の浸入が確実に防止できる。また第二の通気口20が拡大すると第一の通気口103は連結部42によって隙間が狭められて第一の通気口103を通過する風量を低下させることができるため、強風でも着用者の体が冷えることを防止できる。
【0038】
連結部材42は上段布片4の端から5〜15mm内側に取り付けられて上段布片4の端部に雨滴切り104が設けられている。該雨滴切り104は上段布片4表面を流下する雨滴を切れやすくしている。上段布片4の端部は切りっぱなしでも、図9に示すように端部を折り返してもよい。折り返す場合は、折り返し部に連結部材42の端を接続すればよい。連結手段42に細幅の薄い布帛、面ファスナー等からなる連結手段42を複数枚重ね合わせて厚みを2〜6mmに調整する場合は、図11に示すように中間段布片5の折り返し部41の端を、連結手段42を構成する2枚の薄い布帛の端で挟み込んで縫製等で一体化すると第一の開口の通気性が妨げられることがなく好ましい。
【0039】
該折り返し部と上段布片の端部を連結手段で連結したことで、風雨の強い時に上段布片4のめくり上がりが防止できるが、突風等で第二の通気口22が大きく拡大する恐れがある。第二の通気口が拡大すると第一の通気口103も拡大する恐れがある。第一の通気口103の拡大を防止するため、図12に示すように上段布片4の端部と、該重ね合せ部の下端から3〜5cm上部の下段布片5との間を、少なくとも50mm間隔で配置された、厚み2〜6mm、長さ3〜5cmの細幅の布帛105などで連結すると第二の通気口22の拡大が防止できる。通気性ウエアの着用時間が長くなるとウエア内部が汗で蒸れウエアが衣服に密着することがあるが、通気性のウエア内部全体に設けられたメッシュ状布帛31で衣服と通気性ウエアとの間に隙間が形成されて、内部の蒸れによるウエアの衣服への密着が防止される。また上記メッシュ状布帛31により上着を着用する時にスムーズに着用できるという利点がある。
【0040】
図10は図1に示す右脇身頃bのU−U断面図であり、上段布片4と中間段布片5の両端が隣接する右前身頃aの中間段布片2と後身頃cの下段布片9と縫い合わせラインA,Bで一体に縫い合わされる。また上段布片4の端部と中間段布片5の折り返し部を連結する通気性の連結手段42が、例えば8mmで取り付けられている。
【0041】
本発明では、前身頃及び後身頃に設けられた上段布片と中間段布片、中間段布片と下段布片で形成される重ね合せ部Sの両端は、隣接する縫い合せラインB,B’で一体に縫製される。また袖に設けられた上段布片と下段布片の両端は、縫い合せラインC,C’で縫製される。ズボンの場合も同様である。
【0042】
図13は、上衣の袖口の一例を示す説明図であり、図14は図13のW部詳細説明図である。外袖10と内袖11で形成される円筒状袖口の内部に、先端部を外側に折り返した折り返し部106を有する円筒状の内部袖口107を挿入し、該折り返し部106の端部を円筒状袖口の内面に縫い付けて雨水浸入防止用堰を形成している。該外袖10側の折り返し部106には通気用の多数の開孔108が設けられている。折り返し部の長さは60mm以上、通常90〜100mmである。多数の開孔108は折り返し部106の全周の1/3の領域で、かつ該開孔から雨滴が内部に侵入しないような位置、例えば折り返し頂部から10mm以上、通常50mm離れた外袖10側に設けておけば、雨滴の袖口内部への進入が防止できる。通常直径2〜5mmの多数の開孔がランダムに設けられている。開孔の代わりに、折り返し部106の頂部から10mm以上離れ、かつ外袖10側に内袖の全周囲の1/3の領域を切り取って開口を設け、該開口にメッシュ布帛を取り付けてもよい。また内部袖口107の先端全周にリング状の空洞を設け、この空洞内にゴム又は細紐を挿入して、ウエア着用時に着用者の手首を締め付けるようにすると袖口からの雨滴の進入を確実に阻止できる。110は袖の内部に取り付けられたメッシュ布帛であり、内部袖107の先端折り返し部に縫い付けられている。112、113は縫付ラインである。内部袖口107の先端を面ファスナー114で着用者の手首を締め付けた状態を図15に示す。袖口の先端部に面ファスナー114を使用した例は、例えば特開2005−213696、特開2001−207316、実開昭53−88309号、実開昭49−64116号に記載されている。面ファスナー114を使用すると内部袖口の先端部を手首に締め付ける作業が容易である。
【0043】
図16は、ズボンの裾口の一例を示す説明図であり、図17は図16のX部詳細説明図である。ズボンの裾口の場合も袖口と同様に、前身頃と後身頃で形成される円筒状裾口の内部に、先端部を外側に折り返した折り返し部115を有する円筒状の内部裾口116を挿入し、該折り返し部の端部を円筒状裾口の内面に縫い付けて雨水浸入防止用堰を形成するとともに、該折り返し部115に通気用の直径2〜5mmの多数の開孔117が設けられている。該多数の開孔117からの雨滴の浸入を防止するため、開孔は折り返し部の頂から約10mm離れた全周囲にランダムに設けられる。雨滴は裾の内面を流下するため裾口全周囲に開口を設けても雨滴の裾口内部への進入は防止できる。118は裾の内部に取り付けられたメッシュ布帛であり、内部裾116の先端折り返し部に縫い付けられている。119、120は縫付ラインである。
上記袖口や裾口の縫付部に沿ってシームテープを貼り付けると、これらの縫付部からの雨滴の浸入を防ぐことができて好ましい。
【0044】
図18〜図20は本発明の通気性のウエアを着用した状態を示す写真である。
図18は正面図、図19は側面図、図20は背面図を示す。図18〜図20に示すように本発明の通気性のウエアは型崩れがなく、デザイン性に優れている。
【0045】
図21は脱着可能な袖を有する通気性ウエアの一例を示す一部断面図であり、図22は図21のY部詳細説明図である。円筒状の右半袖121の内部に、着脱可能な袖122の先端部を収容し、該袖122の先端を折り返して折り返し部123を設けるとともに、袖122の折り返し部123の外周面に等間隔で複数のボタン124を取り付けている。半袖121の内部に袖122の先端部を収容して、該ボタンを半袖121の先端部の周囲に設けられたボタン孔(図示せず)に嵌めると該袖122を半袖121に取り付けることができる。またボタンを外すと袖121の取り外しが可能である。
【0046】
該袖122の上部側の折り返し部123には通気用の多数の開孔125が設けられている。該多数の開孔125は折り返し部123の全周の1/3の領域で、かつ袖122の上部側で、しかも開孔から雨滴が内部に侵入しないような位置、例えば折り返し頂部から10mm以上、通常50mm離れた位置に設けておけば、雨滴の半袖内への進入が防止できる。通常直径2〜5mmの多数の開孔がランダムに設けられている。開孔の代わりに、折り返し部123上部の全周の1/3の領域を切り取り、その開口にメッシュ布帛を取り付けてもよい。袖122の先端全周にリング状の空洞に設け、このリング状の空洞にゴム又は細紐を挿入し、ウエア着用時に着用者の手首を締め付けておくと袖口からの雨滴の進入が確実に阻止できる。また図15に示すように袖122の先端部に面ファスナを取り付けることができる。126はメッシュ布帛であり、先端部が袖121に縫い付けられている。127は縫付ラインである。
【0047】
図23は、脱着可能な裾130を有する通気性ウエアのズボンの一例を示す一部断面図であり、図24は図23のZ部詳細説明図である。ズボンの場合も上衣の袖と同様に、前身頃と後身頃で形成される半ズボン128の裾口の内部に、先端部を外側に折り返した折り返し部129を有する着脱可能な裾130の先端部を挿入する。該裾の先端折り返し部129の外周面に取り付けられた複数のボタン131を半ズボン128の裾口に挿入し、裾口先端部の周囲に設けられたボタン孔(図示せず)に嵌めると、裾13を半ズボン128の裾口に着脱可能に取り付けることができる。該折り返し部129の周囲には通気用の直径2〜5mmの多数の開孔132がランダムに設けられている。該多数の開孔132は雨滴が内部に侵入しないような位置、例えば折り返し頂部から10mm以上離れた位置に設けておけば、半ズボン128内への雨滴の進入が防止できる。
【0048】
本発明の通気性のウエアに使用する布片は、レインウエアでは通気性及び浸水性のないナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらを併用したもの等を用いることができる。さらに裏面をウレタンコーティング、ウレタンラミネートあるいはアクリルコーティングで防水加工を施したものを用いてもよい。また作業ウエア、あるいはランニングウエアでは通常ポリエステル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、綿・麻などの天然繊維、再生繊維等の任意の繊維が用いられる。
【0049】
連結手段としては、メッシュ状布帛、布帛、紐状体などが使用できる。通気性を向上させるためには、通常厚い布帛を使用するのが好ましい。また連結手段として3次元立体編物は、表裏面二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸とから構成されており、具体的な構造は特開平10−102363号公報、特開20002−138352号公報、特開平02−74648号公報等に記載されている。
【0050】
3次元立体編物は、通常ダブルラッセル編機、ダブルトリコット編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等で編成される。表裏面二層の編地を構成する糸としてはポリエステル系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維などの非吸水性の繊維が用いられる。また表裏面二層の編地を連結する連結糸は上記表裏面二層の編地と同じ繊維が使用されるが、通常圧縮回復率の優れたポリエステル系繊維が用いられる。
【0051】
3次元立体編物は繊維メーカー各社から販売されており、例えば、ユニチカ(株)の「キュービックアイ」(登録商標)、住江織物(株)の「スウィングネット」(登録商標)、旭化成せんい(株)の「フュージョン」(登録商標)、東洋紡(株)の「ブレスエアー」(登録商標)などが知られている。
【0052】
また連結手段に使用される面ファスナーとしては、(株)クラレの「マジックテープ」(登録商標)などが知られている。中でも、雄雌両用の面ファスナー「フリーマジック」(登録商標)が雄雌の区別がなく好ましく使用できる。
本発明では上記3次元立体編物や面ファスナーが好ましく使用される。
【0053】
図25は、ランニングウエアの一例を示す概略図であり、前身頃133と後見頃134の2枚の生地を左右の両側面J,Kで縫合している。
前身頃133及び後見頃134は夫々上中下段に3分割された3枚の布片135、136、137及び135’、136’、137’(図示せず)で構成されている。上中下段に3分割された3枚の布片は上段布片の下部分を、中段の布片の上部分の表面に重ね合せ、各重ね合わせ部Sの下端に下向きの第二の通気口が設けられている。図では前身頃133及び後見頃134に上部第二の通気口138,138’(図示せず)及び下部第二の通気口139,139’(図示せず)が設けられている。上部第二の通気口138,138’(図示せず)及び下部第二の通気口139,139’(図示せず)の構造は、図7に示す構造と同一であり、説明を省略する。
【0054】
実施例1、実施例2及び比較例1
次に本発明の通気性のウエアの効果を実施例1、2及び比較例1にて説明する。
図1及び図2に示す重ね合せ部を上下2箇所に設けた通気性のウエア(雨衣用上着)を実施例1で使用する雨衣用上着とした。また実施例1と同じウエアで、第二の通気口を1箇所(下段通気口のないウエア)設けたウエアを実施例2とした。
【0055】
比較例1として市販の通常の雨衣用上着を用いた。綿の肌着の上にポリエステル綿混のスポーツシャツを着た被試験者に上記雨衣の上着を着用させて、温度25℃、湿度70%、風速1mに設定した恒温恒湿装置内に設置したベルト歩行運動器で、5分間安静、2分間歩行、5分間安静、2分間歩行を繰り返させて、温湿度センサー(Thermo Recorder「おんどとりRH」TR−72S)で温度と湿度の変化を測定した。湿度センサーは着用者の背中の下着の上、温度センサーはスポーツシャツの背中の上に貼着した。
試験に用いた雨衣用上着
比較例1(通常の市販の雨衣)
表:ナイロン(PVCコーティング)
裏:ポリエステル(メッシュ布帛)
実施例1及び実施例2
表:ナイロン(PVCコーティング)
裏:ポリエステル(メッシュ布帛)
【0056】
試験結果
不快指数は、着用者の背中の下着の上に貼着した湿度センサーで測定した湿度とスポーツシャツの背中の上に貼着した温度センサーで測定した温度から次式により算出した。
不快指数=0.81T+0.01U(0.99T−14.3)+46.3
T:温度(℃) U:湿度(%)
比較例1と実施例1及び実施例2における温度と湿度から不快指数を算出した結果を図26に示す。なお、試験時の外気の不快指数は74であった
図26から明らかなように比較例1では不快指数93以上「たまらない」になるが、実施例1は不快指数78以上「やや暑い」で緩和し、実施例2は不快指数84以上「やや不快」で緩和した。実施例1,2と比較例1には明確な差が認められ、本発明の通気のウエア、特に重ね合せ部Sを上下に2箇所に設けた実例1で使用した通気性のウエアは、体温により発生する熱と湿気を効率良く外部に排出していることが明らかである。
【0057】
実施例3及び比較例2
次に実施例1で使用した本発明の通気性のウエア(実施例3)と、図1に示すウエアで連結部材を設けていないウエア(比較例2)の強風下における第一の通気口からの雨水の侵入の有無について試験した。綿の肌着の上にポリエステル綿混のスポーツシャツを着た被試験者に温恒湿装置内で上記ウエアを着用させて、恒温恒湿装置内を風速30mの強風の状態とし、更に水を滴下させて風雨の激しい状態とした。次に恒温恒湿装置内で被験者に体操をしてもらった。
【0058】
実施例3では、上記、第二の通気口から風と雨滴が進入しても、V字状の雨水浸入防止用堰で雨滴の進入が阻止され、第一の通気口からウエア内部に進入する雨滴はなかった。また第一の通気口を形成する隙間が狭まったためか、第一の通気口から内部へ侵入する通気量の減少により、強風で被験者の体が冷やされることはなかった。不快指数も85以上「やや不快」で緩和した。また運動状態における湿度の上昇も少なく完全不快とされる領域に達することはなかった。一方比較例2では、V字状の雨水浸入防止用堰が拡大しないため、体操開始後すぐに雨滴がウエア内部に侵入した。また第一の通気口の隙間が大きく開いているため強風がそのまま内部に進入し、被験者の体が急激に冷やされた。また湿度が急激に上昇したため、体操開始後5分後には完全不快とされる不快指数90以上に達した。
【0059】
実施例4及び比較例3
図25に示す、ポリエステル綿混の通気性のランニングウエア(内側にポリエステル製のメッシュ布帛使用)を実施例4で使用した。また比較例3として市販のポリエステル綿混のランニングウエア(内側にポリエステル製のメッシュ布帛使用)を使用した。被験者の素肌の上に直接ランニングウエアを着用させて、実施例1と同じ条件で恒温恒湿装置内に設置したベルト歩行運動器で、歩行と安静を繰り返えさせて、被試験者の背中の上とランニングウエアの背中の上に貼着した温湿度センサー(Thermo Recorder「おんどとりRH」TR−72S)で温度と湿度の変化を測定した。
【0060】
実施例4と比較例3における温度と湿度から不快指数を算出した結果を図27に示す。なお、試験時の外気の不快指数は74であった
図27から明らかなように比較例3では不快指数92以上「たまらない」になるが、実施例4では不快指数78以上「やや暑い」で緩和し、両者には明確な差が認められ、本発明のランニングウエアは体温により発生する熱と湿気を効率良く外部に排出していることが明らかである。
【0061】
実施例5、6及び比較例3、4
次に実施例1で使用した本発明の通気性のウエア(実施例5、6)と、市販の通常の雨衣用上着(比較例3、4)を、綿の肌着の上にポリエステル綿混のスポーツシャツを着た被試験者に着用させて、温度20℃、湿度56%に設定した、1周15m(2.5m×5m)の恒温恒湿装置内を1周10秒間のペースで10分間歩行、5分間安静、10分間歩行、5分間安静を繰り返させて、温湿度センサー(Thermo Recorder「おんどとりRH」TR−72S)で被試験者の衣服内の温度と湿度の変化を測定した。温湿度センサーは被試験者の下着の背中(実施例5及び比較例3)と胸部(実施例6及び比較例4)に貼着した。
【0062】
試験結果
実施例5と比較例3における温度と湿度から不快指数を算出した結果を図28に示す。なお、試験時の外気の不快指数は72であった
図28から明らかなように比較例3及び4では背中と胸部とも不快指数90前後「たまらない」になるが、実施例5及び6はどちらも不快指数85前後「やや不快」で緩和した。実施例と比較例には明確な差が認められ、本発明の通気のウエアは、体温により発生する熱と湿気を効率良く外部に排出していることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】通気性のウエア(上着)の前身頃の一例をモデル的に示す概略図である。
【図2】図1に示す通気性のウエア(上着)の後身頃の一例をモデル的に示す概略図である。
【図3】通気性のウエア(ズボン)の一例をモデル的に示す概略図である。
【図4】通気性のウエア(ズボン)の他の一例をモデル的に示す概略図である。
【図5】通気性のウエア(上着)の前身頃の他の一例をモデル的に示す概略図である。
【図6】図5の通気性のウエア(上着)の後身頃の他の一例をモデル的に示す概略図である。
【図7】図1に示す通気性のウエア(上着)のT−T断面図である。
【図8】通気口が開いた状態を示すA−A断面図である。
【図9】図8のV部詳細説明図である。
【図10】図1に示す通気性のウエア(上着)のU−U断面図である。
【図11】折り返し部と連結手段の接合状態を示す説明図である。
【図12】折り返し部と連結手段の他の接合状態を示す説明図である。
【0064】
【図13】上衣の袖口の一例を示す説明図である。
【図14】図13に示すW部詳細説明図である。
【図15】内部袖口の先端部構造を示す説明図である。
【図16】ズボンの裾口の一例を示す説明図である。
【図17】図15に示すX部詳細説明図である。
【図18】本発明の通気性のウエアの着用例を示す正面図である。
【図19】本発明の通気性のウアの着用例を示す側面図である。
【図20】本発明の通気性のウエアの着用例を示す背面図である。
【図21】着脱可能な袖を有する上衣の一例を示す説明図である。
【図22】図20に示すY部詳細説明図である。
【図23】着脱可能な裾を有するズボンの一例を示す説明図である。
【図24】図21に示すZ部詳細説明図である。
【図25】本発明のランニングウエアの一例をモデル的に示す概略図である。
【図26】比較例1と実施例1及び2における不快指数の経時変化を示すグラフである。
【図27】実施例4と比較例3における不快指数の経時変化を示すグラフである。
【図28】実施例5及び6と比較例3及び4における不快指数の経時変化を示すグラフである。
【0065】
a,a’ ・・・右、左前身頃
b,b’ ・・・右、左脇身頃
c ・・・後身頃
d,d’ ・・・右、左袖
e,e’ ・・・ズボンの右、左身頃
A,A’ ・・・前身頃と脇身頃の右、左縫い合せライン
B,B’ ・・・脇身頃と後身頃の右、左縫い合せライン
C,D ・・・右袖を構成する外袖と内袖の縫い合せライン
C’,D’ ・・・左袖を構成する外袖と内袖の縫い合せライン
E,E’ ・・・右前身頃と右袖、左前身頃と左袖の縫い合せライン
F,F’ ・・・後身頃と右袖、左袖の縫い合せライン
G,G’ ・・・ズボンの内側縫い合せライン
H,H’ ・・・ズボンの外側縫い合せライン
I ・・・ベルト芯縫付ライン
1,1’ ・・・右、左前身頃の上段布片
2,2’ ・・・右、左前身頃の中段布片
3,3’ ・・・右、左前身頃の下段布片
4,4’ ・・・右、左脇身頃の上段布片
5,5’ ・・・右、左脇身頃の中段布片
6,6’ ・・・右、左脇身頃の下段布片
7 ・・・後身頃の上段布片
8 ・・・後身頃の中段布片
9 ・・・後身頃の下段布片
【0066】
10,10’ ・・・右、左の外袖
11,11’ ・・・右、左の内袖
12,12’ ・・・内袖の上段布片
13,13’ ・・・内袖の下段布片
20.20’,21,21’ ・・・右、左前身頃に設けられた上下の第二の通気口
22,22’,23,23’ ・・・右、左脇身頃に設けられた上下の第二の通気口
24,25 ・・・後身頃に設けられた上下の第二の通気口
26,26’ ・・・右、左の袖に設けられた第二の通気口
27,27’ ・・・ズボンの右、左に設けられた第二の上部通気口
28,28’ ・・・ズボンの右、左に設けられた第二の下部通気口
31、101 ・・・メッシュ状布帛
40 ・・・V字状の堰
41 ・・・折り返し部
42 ・・・連結手段
102 ・・・補強部材
103 ・・・第一の通気口
104 ・・・雨滴切り
106、115 ・・・切り返し部
107 ・・・内部袖口
114 ・・・面ファスナー
116 ・・・裾口
122 ・・・着脱可能な袖
130 ・・・着脱可能な裾

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面にメッシュ状布帛が取り付けられた通気性のウエアであって、上下に分割された布片の上段布片と下段布片とで重ね合せ部を設け、該下段布片の上端部を外側に折り返して雨水浸入防止用堰を形成して、該折り返し部と上段布片との間に第1の通気口、該上段布片の端部と下段布片との間に第2の通気口を設けるとともに、該折り返し部と上段布片の端部を連結手段で連結して、該第2の通気口が拡大すると、該連結手段で雨水浸入防止用堰の折り返し角度を拡大させて、第1の通気口への雨水の浸入を防止するよう構成し、該重ね合せ部を上衣の前身頃及び後身頃に設けたことを特徴とする通気性のウエア。
【請求項2】
上衣の袖口であって、外袖と内袖で形成される円筒状袖口の内部に、先端部を外側に折り返した円筒状の内部袖口を挿入し、該折り返し部の端部を円筒状袖口に接合して雨水浸入防止用堰を形成するとともに、該外袖側の折り返し部に通気用の多数の開孔を設けた請求項1記載の通気性のウエア。
【請求項3】
上衣とズボンからなる通気性のウエアであって、上下に分割された布片の上段布片と下段布片とで重ね合せ部をズボンの前身頃に設けた請求項1記載の通気性のウエア。
【請求項4】
ズボンの裾口であって、前身頃と後身頃で形成される円筒状裾口の内部に、先端部を外側に折り返した円筒状の内部裾口を挿入し、該折り返し部の端部を円筒状裾口に接合して雨水浸入防止用堰を形成するとともに、該折り返し部に通気用の多数の開孔を設けた請求項3記載の通気性のウエア。
【請求項5】
該重ね合せ部を上下に複数設け、下段の重ね合せ部に形成された第2の通気口からウエア内部に侵入する外気を、上段の重ね合せ部に形成された第2の通気口から排出するよう構成した請求項1、3記載の通気性のウエア。
【請求項6】
該下段布片の折り返し部と上段布片の端部を連結する連結手段が、少なくとも50mm間隔で配設された、厚み2〜6mmの細幅の布帛である請求項1、3記載の通気性のウエア。
【請求項7】
該連結手段が、厚み1〜3mmの細幅の2枚の布帛の重ね合せ体であって、該重ね合せ体の端部が上段布片の折り返し部を挟んで接合されてなり、該重ね合せ体の他端が上衣の端から少なくとも5mm内部に接合されてなる請求項6記載の通気性のウエア。
【請求項8】
該上段布片の端部と、該重ね合せ部の下端部から3〜5cm上部の下段布片との間を、少なくとも50mm間隔で配設された、厚み2〜6mm、長さ3〜5cmの細幅の布帛で連結して、上衣の捲り上がりを防止する請求項1,3、5、6,7記載の通気性のウエア。
【請求項9】
該布帛が、3次元立体編物、面ファスナー、織物、メッシュである請求項6〜8記載の通気性のウエア。
【請求項10】
該通気性のウエアが、雨衣、各種作業衣、アノラック、ウインドブレーカーなどの衣服の上から着用するウエア、あるいは素肌の上に直接着用するランニングウエアである請求項1〜9記載の通気性のウエア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2009−299251(P2009−299251A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103414(P2009−103414)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(300045846)
【Fターム(参考)】