通気性消臭シートおよびこれを用いた吸収性物品
【課題】臭気を気にする成人用の失禁パッドや紙おむつ等の吸収性物品で、これらに使用されている通気性多孔質シートは、臭気までも通過させてしまうため、使用できない、あるいは使用したとしても十分な通気性が確保できなかった、通気性を十分に確保しつつ臭気の通過を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】合成樹脂に粒子201,202を混合した原料を用いてシートを形成した後、このシートを延伸して得られる通気性多孔質シート200において、粒子の一部または全部として消臭粒子201を用い、通気孔203内に消臭粒子を存在させる。
【解決手段】合成樹脂に粒子201,202を混合した原料を用いてシートを形成した後、このシートを延伸して得られる通気性多孔質シート200において、粒子の一部または全部として消臭粒子201を用い、通気孔203内に消臭粒子を存在させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性消臭シートおよびこれを用いた紙おむつ、失禁用吸収パッド、生理用ナプキン等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幼児や大人のテープ式やパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、内面側のトップシートと、外面側の液の透過を防止するバックシートと、これらのシート間に介在され、トップシートを透過した排泄液を受け入れ保持する吸収要素とを基本要素としている。
この基本要素に対し、バックシートの裏面側にたとえば不織布などからなる外装シートを設け、前記バックシートとしてプラスチックシートを使用した場合における肌触りを改良する形態、内面側に突出するバリヤーカフスを形成する形態など、ウエスト周りや腹周りのフィット性を改良するために弾性伸縮性を付与する形態などが、適宜付加される。
特に近年では、蒸れ防止の観点から、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られる通気性多孔質シートが、バックシート等として使用されるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−225680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の通気性多孔質シートは、臭気までも通過させてしまうため、臭いを気にする吸収性物品、例えば成人用の失禁パッドや紙おむつでは使用できない、あるいは使用したとしても十分な通気性を確保できないといった問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、通気性を十分に確保しつつ臭気の通過を抑制できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
合成樹脂に粒子を混合した原料を用いてシートを形成した後、このシートを延伸して得られる通気性多孔質シートにおいて、
前記粒子の一部または全部として、消臭粒子を用いたことを特徴とする通気性多孔質シート。
【0005】
(作用効果)
このような多孔質シートは、シートの延伸に際して粒子が延伸しないため、粒子の周囲に空隙が形成され、この空隙が単独または複数連なってシートの表裏に連通する通気孔が形成される。よって、粒子の一部または全部として消臭粒子を用いることで、通気孔内に消臭粒子を存在させることができ、臭気が通気孔を通過する過程で消臭される結果、極めて効果的な消臭が可能となる。しかも従来の通気性多孔質シートと比較して、通気孔内の粒子が消臭粒子であるか否かの違いしかないため、通気性を損ねることが無く、十分な通気性を確保することができる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
前記消臭粒子の平均粒径が5μm以下であり、シートの厚さが10〜90μmである、請求項1記載の通気性多孔質シート。
【0007】
(作用効果)
消臭粒子の大きさ及びシートの厚さが本項記載の範囲内にあると、シートの薄さ及び通気性をバランスよく確保できるため好ましい。なお、平均粒径とは個数平均粒径を意味する。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記消臭粒子を0.1重量%以上含有する、請求項1または2記載の通気性多孔質シート。
【0009】
(作用効果)
消臭粒子が少な過ぎると、消臭効果が不十分になるおそれがあるため、消臭粒子の含有量は本項記載のように0.1重量%以上とするのが好ましい。
【0010】
<請求項4記載の発明>
JIS Z 0208に規定される透湿度が3000cc/m2・h以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【0011】
(作用効果)
透湿度が低過ぎると、失禁パッドや紙おむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品へ適用した場合、通気性が不十分となり、蒸れ防止効果に乏しくなる。
【0012】
<請求項5記載の発明>
前記消臭粒子が、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【0013】
(作用効果)
このようなゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子を用いると、消臭 効果のみならず、抗菌効果も発揮されるため、好ましい。
【0014】
<請求項6記載の発明>
通液性を有しない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【0015】
(作用効果)
通液性を有しないことにより、例えば吸収性物品における液不透過性のバックシート等として用いることができるようになる。
【0016】
<請求項7記載の発明>
前記通気孔が通液性を有するか、または前記通気孔とは別に通液孔を形成してなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【0017】
(作用効果)
通液性を有することにより、例えば吸収性物品における液透過性のトップシート等として用いることができるようになる。
【0018】
<請求項8記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記バックシートの一部または全部を請求項6記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
バックシートは、吸収体に対して外側に位置し、液分の漏出を遮るものである。バックシートとしては、以前はポリエチレンシート等のように通気性も通液性も無いものが用いられていたが、内側が蒸れ易く、かぶれ等の原因になることもあり、近年では、粒子を含む合成樹脂原料で形成したシートを延伸して得られる通気性かつ非通液性の多孔質シートが用いられるようになっている。しかしながら、前述のとおり、このような通気性多孔質シートは排泄物の臭気までも通過させてしまうため、バックシートのように吸収体の外側を覆うシートとして用いると、臭気の放出が顕著になってしまう。このため、従来の製品では、せっかく通気性シートを用いながらも、その通気性を低く抑えざるを得なかった。
これに対して、本項記載のように、通液性を有しない本発明の通気性多孔質シートを用いると、通気孔に存在する消臭粒子によって通気そのものの消臭がなされるため、通気性を犠牲にせずに消臭を図ることができるようになる。
【0020】
<請求項9記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体と、吸収体を包む包被シートとを有する吸収性物品において、
前記包被シートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
吸収性物品における主たる臭気の発生源は、排泄物を吸収し保持する吸収体であり、その多くは、構成材料を所定の構造に保持するために包被シートで包まれている。よって、このような場合に、包被シートの一部または全部として、通液性を有する本発明の通気性シートを用いると、消臭機能を有するシートで臭気発生源を包囲できるため、吸収体から外部への臭気放出を効果的に防止することができる。
【0022】
<請求項10記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有し、かつ吸収体の両側に、身体側に突出するバリヤーカフスを有する吸収性物品において、
前記バリヤーカフスの一部または全部を請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0023】
(作用効果)
吸収性物品の中でも、特に紙おむつや一部の生理用ナプキンでは、身体(特に脚周り)に対するフィット性を高めるために、内面側にバリヤーカフスが突出しており、このバリヤーカフスにより吸収性物品の身体側と外部とが遮断される。よって、このような場合に、バリヤーカフスの一部または全部として、通液性を有しない本発明の通気性シートを用いると、バリヤーカフスにおける通気性を向上させつつ、通気性向上に起因する臭気の放出を防止することができる。
【0024】
<請求項11記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記吸収体内に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートを有することを特徴とする吸収性物品。
【0025】
(作用効果)
本発明の通気性多孔質シートは、吸収性物品の身体側から外側へ通気を行う部材に用いるのが好ましいが、これに限られるものではなく、例えば本項記載のように吸収体内に設けることもできる。本発明の通気性多孔質シートは、臭気と接触する限り消臭機能が発揮される。
【0026】
<請求項12記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記トップシートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0027】
(作用効果)
殆どの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する。通液性を有する本発明の通気性シートは、本項記載のようにトップシートの一部または全部として用いることができ、その場合、吸収体のトップシート面からの臭気の放出を抑制することができる。
【0028】
<請求項13記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体と、前記トップシートと吸収体との間に介在された液透過性の中間シートとを有する吸収性物品において、
前記中間シートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0029】
(作用効果)
吸収性物品では、トップシートを透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシートより液の透過速度が速い中間シートをトップシートと吸収体との間に設ける場合がある。通液性を有する本発明の通気性シートは、この中間シートの一部または全部として用いることができ、その場合、吸収体のトップシート側からの臭気の放出を抑制することができる。
【0030】
<請求項14記載の発明>
包装シートにより個別に包装された吸収性物品において、
前記包装シートの一部または全部を請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0031】
(作用効果)
吸収性物品、中でも生理用ナプキンにおいては、衛生面の観点から、吸収性物品を一つずつ包装する個別包装が行われている。そして、このような個別包装が行われている商品では、使用者にもよるが、使用済みの吸収性物品を包装シートで包んで廃棄することが行われている。よって、このような場合、本項記載のように包装シートの一部または全部として、本発明の消臭機能を有する通気性シートを用いると、使用済みの吸収性物品を包装シートで包んで廃棄することで、使用済みの吸収性物品から放出される臭気を抑制できるという利点がもたらされる。
【発明の効果】
【0032】
以上のとおり、本発明によれば、通気性を十分に確保しつつ臭気の通過を抑制できるようになる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
<通気性多孔質シートの実施形態>
本発明の通気性多孔質シートは、合成樹脂に粒子を混合した原料を用いてシートを形成した後、このシートを延伸して得られるものである。
【0034】
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等、各種の樹脂を使用できる。具体的には、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリビニル、ポリカーボネート、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂等を用いることができ、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を用いることができ、これらは単独で用いる他、二種以上併用することができる。ポリオレフィン系樹脂の中で好ましいのは、LDPEであり、特に好ましいのはLLDPEである。
【0035】
合成樹脂に充填する粒子としては、本発明では少なくともその一部として消臭粒子を用いる。消臭粒子は特に限定されるものではなく、公知の如何なる粒子も用いることができるが、ゼオライト粒子、中でも、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなる抗菌消臭性ゼオライト粒子を用いるのが好適である。ゼオライト粒子としては、天然および合成ゼオライトのどちらも用いることができるが、コストおよび入手安定性の観点から合成ゼオライトが好ましい。ゼオライトは、三次元骨格構造をもつアルミノシリケートであり、一般式aM2/n0・xAl2O3・ySiO2・zH2Oで表される。式中のa、x、y、zはそれぞれ金属酸化物、酸化アルミ、酸化ケイ素、結晶水の数を表す整数である。Mは陽イオンであり、上記抗菌消臭性ゼオライト粒子は、このMとして少なくとも銀イオンを含む。他の陽イオンの種類としては、亜鉛のほか、アルカリ金属(ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)、アンモニウムイオンなどが挙げられる。陽イオンMとしては、銀イオンおよび亜鉛イオンを含むものが好適である。上記一般式におけるnは陽イオンの原子価である。x:yの比率に特に限定はないが、通常1:1〜1:10、好ましくは約1:2〜1:5である。また上記一般式における結晶水数を表すzに関しても特に制限はない。ゼオライトの具体例としては、例えばA型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、T型ゼオライト、高シリカゼオライトなどが挙げられ、消臭効果が優れるという点でA型ゼオライト、X型ゼオライトおよびY型ゼオライトが好ましく、なかでもA型ゼオライトが特に好ましい。
【0036】
本発明では、全ての粒子を消臭粒子で賄うこともできるが、通気性を高める場合に費用が嵩むため、必要に応じて他の公知の粒子、例えばクレイ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、シリコン等の無機粒子を併用することができる。
【0037】
充填粒子の大きさは、消臭粒子であるか否かに関わらず、平均粒径で5μm以下、特に0.5〜3μmであるのが好ましい。充填粒子が大き過ぎると、粒子を保持するためにシートを薄くできない、液不透過性にし難くなる等の点に留意する必要がある。充填粒子が小さ過ぎると、通気性を十分に高くすることが困難になる。
【0038】
充填粒子は、樹脂100重量部に対して、通常50〜200重量部、特に100〜150重量部程度添加するのが好ましい。また、消臭粒子は、シートにおける含有量で0.1重量%以上、特に0.1〜10重量%混合するのが好ましい。消臭粒子が少な過ぎると、消臭効果が不十分になるおそれがあり、多過ぎると費用対効果が低下する。特に、必要十分な量の消臭粒子を用いるとともに、残りを汎用粒子で補うのが好ましい。
【0039】
製造に際しては、先ず、上記原料をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型混合機等を用いて混合した後、通常の一軸あるいは二軸スクリュー型押出機によってペレット化する。次いで、これらのペレットを必要に応じ、他のペレット状ポリオレフィン系樹脂を加えた後、ベースレジンの融点以上、好ましくは融点+20度以上かつ分解温度以下で、インフレーション成形機またはTダイ成形機を用いて一次シートを溶融成形する。場合によってはペレット化せず直接押出機でシート化することもできる。しかる後、製造した一次シートを、ロール法、テンター法等の公知の方法で少なくとも一軸方向に延伸を行い、粒子の周囲に空隙を形成することにより、通気性を有する多孔性フィルムを得ることができる。延伸は多段階に分けても良いし、二軸延伸の場合は逐次2軸延伸でも良いが同時二軸延伸が好ましい。延伸倍率は適宜設定することができ、その変更により任意の通気孔径を得ることができるが、通常は2倍〜10倍程度とするのが好ましい。
【0040】
かくして得られる本発明の通気性シートでは、図14に示すように、シート200の延伸に際して粒子201,202が延伸しないことにより粒子201,202の周囲に空隙が形成され、この空隙が単独または複数連なることでシート200の表裏に連通する通気孔203が形成され、その通気孔203内に消臭粒子201が存在するようになる。よって、臭気が通気孔203を通過する過程で消臭粒子201に吸着され消臭される。
【0041】
通気性シートの厚みについては、特に制限はないが10〜90μm程度が好ましい。薄すぎると粒子を保持できなくなるとともに破れ易くなり、厚すぎると通気性が向上し難くなる、用途によっては剛性が高くなりすぎる、生産性が悪くなる等の点に留意が必要である。
【0042】
また、通気性についても適宜調整することができるが、JIS Z 0208に規定される透湿度が3000cc/m2・h以上、特に50000cc/m2・h以上であるのが好ましい。透湿度が低過ぎると、通気性が悪いだけでなく、消臭機能も発揮され難くなる。透湿度は高いにこしたことはないが、透湿度を過度に高めた場合、液不透過性が犠牲になったり、シートが破れ易くなったりするおそれがある。
【0043】
本発明の通気性シートは、用途に応じて、通液性の有無を選択することができる。この場合、通気孔の大小により通液性の有無を変更できる他、通気孔からは通液しないシートに、別途、針刺し加工や打ち抜き加工、エンボス加工等により多数の通液孔を形成することもできる。後者の場合、通液孔はシートの一部または全体に形成することができる。単一の通液孔の有効開口面積は3〜75mm2が好適であり、また開口面積率(非開口部分に対する開口部分の面積の割合)が10〜80%が好適である。
【0044】
さらに、本発明の通気性シートは、肌触り等の表面特性を変えるために、表裏少なくとも一方の面に不織布等の他のシートを張り合わせたラミネートシートとすることができる。他のシートとしては、通気性が無くならない範囲であれば特に限定なく用いることができる。他のシートの張り合わせにはホットメルト接着剤やエンボス加工、超音波シール、ヒートシール等、公知の手段を用いることができる。
【0045】
<吸収性物品の実施形態>
次に、本発明に係る吸収性物品の一実施形態について、紙おむつを例に取り詳説する。
<パンツ型使い捨ておむつの例>
図1には、パンツ型使い捨ておむつの例が示されている。このパンツ型使い捨ておむつ10は、外面(裏面)側の外装シート12と内面(表面)側の吸収性本体20とを備え、外装シート12に吸収性本体20が固定されている。吸収性本体20は、尿や軟便などの排泄物(生理用ナプキンにあっては経血)を受け止めて吸収保持する部分である。外装シート12は着用者に装着するための部分である。
【0046】
外装シート12はたとえば図示のように砂時計形状となり、両側が括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。吸収性本体20は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。
【0047】
外装シート12は、図2に示すように、吸収性本体20が所定位置に設置され固定された後、前後に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。これによって、図1に示す構造の、ウエスト開口部WOと一対のレッグ開口部LOを有するパンツ型使い捨ておむつが得られる。
【0048】
図示の吸収性本体20の長手方向(すなわち図2の上下方向。製品の前後方向でもある。)の中間の幅は、外装シート12の括れた部分を繋ぐ幅より短い形態が示されている。この幅の関係は逆でもよいし、同一の幅でもよい。
【0049】
外装シート12は望ましくは2枚のシートからなり、これらのシート間に弾性伸縮部材を介在させて、その収縮力により着用者にフィットさせる形態が望ましい。シートとしては撥水性不織布等を使用でき、弾性伸縮部材としては、糸ゴムや弾性発泡体の帯状物などを使用できる。図示の形態では、糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域Wにおいては幅方向に連続して設けられ、腰下領域Uにおいては両側部分のみに設けられ、股下領域Lにおいては設けられていない。糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域W及び腰下領域Uの両者に設けられていることで、糸ゴム12C自体の収縮力が弱いとしても、全体としては腰下領域Uにおいても着用者に当たるので、製品が着用者に好適にフィットする。
【0050】
(吸収性本体)
実施の形態の吸収性本体20は、図3に示されるように、液を透過させるトップシート30と、中間シート(セカンドシート)40と吸収要素50とを備えている。また、吸収体56の裏面側には液不透過性バックシート70が設けられている。この液不透過性バックシート70の裏面側には、前記の外装シート12が設けられている。さらに、両側にバリヤーカフス60、60を備えている。なお、図示しないが、吸収性本体20の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、スパイラル、サミットまたはカーテン塗布などにより相互に固定される。
【0051】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有する。したがって、トップシート30の素材は、この液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0052】
本発明では、トップシート30の一部または全部として、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることも提案される。この場合、トップシート30表面からの臭気の放出が抑制される。通気性多孔質シートとしては前述の通液孔を多数形成した孔開きシート等、通液性を有するものが用いられる。トップシートは身体に接触する部分であるため、図8に示すように、通気性多孔質シート32の肌面側に不織布等の肌触りの良いシート31をホットメルト接着またはエンボス加工により貼り合わせたラミネートシートを用いるのが好適である。
【0053】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0054】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、通常「セカンドシート」と呼ばれる中間シート40を、トップシート30と吸収体との間(図示形態ではトップシート30と後述する包被シート58との間)に介在させることができる。この中間シートは、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。図5に示すように、中間シート(セカンドシート)40を設けない形態も使用可能である。
【0055】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0056】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
【0057】
本発明では、この中間シート40の一部または全部として、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることも提案される。通気性多孔質シートとしては、図9に示すように、前述の通液孔を多数形成した孔開きシート等、通液性を有するものが用いられる。この場合、吸収体56のトップシート30側からの臭気の放出が抑制される。
【0058】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有している。
【0059】
吸収体56としては、綿状パルプのように短繊維を積繊した短繊維集合体の他、トウを開繊して得られるフィラメント52,52…の集合体等を使用できる。フィラメント52,52…の集合体は、実質的に連続繊維とみなされる繊維で構成されたトウ(繊維束)を開繊したものである。トウ構成繊維としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
【0060】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸された繊維であってもよい。
【0061】
好適に採用できるセルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0062】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0063】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。特に好ましいセルロースエステルは、セルロースジアセテートである。
【0064】
トウ構成繊維は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0065】
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexが望ましい。トウ構成繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。トウ構成繊維は、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
【0066】
トウは、繊維間の絡み合いが弱いため、主に形状を維持する目的で、繊維の接触部分を接着または融着する作用を有するバインダーを用いることができる。バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0067】
バインダーとして使用する熱可塑性樹脂には、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性または水難溶性樹脂、および水溶性樹脂が含まれる。水不溶性または水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
【0068】
水不溶性または水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
【0069】
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
【0070】
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0071】
しかし、可能な限り、高吸収性ポリマー粒子の侵入を阻害するバインダー成分の使用は避けるべきである。高吸収性ポリマー粒子の侵入を阻害するバインダー成分は使用しないのが最善である。
【0072】
トウは公知の方法により製造できるので詳説はしない。吸収体56に好適に使用できるセルロースジアセテートのトウのベールは、セラニーズ社やダイセル化学工業などにより市販されている。セルロースジアセテートのトウのベールは、密度は約0.5g/cm3であり、総重量は400〜600kgである。
【0073】
このベールから、トウを引き剥がし、所望のサイズ、嵩となるように広い帯状に開繊する。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは製品の吸収体の幅の100〜300mm程度とすることができる。また、トウの開繊度合いを調整することにより、フィラメント集合体の繊維密度を調整することができる。好ましい繊維密度は、0.03〜0.25g/cm3である。
【0074】
トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛け渡し、トウの進行に伴って次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアーを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
【0075】
吸収体56には、必要に応じて高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)を含有させることができる。この場合、高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)は、吸収体56の少なくとも液受け入れ領域において実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。この実質的に厚み方向全体に分散されている状態を図3の要部拡大図として概念的に示した。
【0076】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、吸収体56に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が吸収体56中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が吸収体56を通り抜けて包被シート58上にある形態や図6に示されるように保持シート80上にある形態も排除されるものではない。
【0077】
高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む意味である。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の吸収性物品に使用される平均粒径のものをそのまま使用でき、平均粒径が100〜1000μm、特に200〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が50g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0078】
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0079】
また、高吸収性ポリマー粒子54としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、トウを用いることにより嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0080】
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜500g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量を50g/m2以下とすることにより、ポリマーの重量による軽量化阻害を防止できる。500g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰により、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0081】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子54は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0082】
必要により、高吸収性ポリマー粒子54として、粒径分布が異なる複数用意し、厚み方向に順次散布・投射できる。たとえば、先に粒径分布が小さいものを散布・投射した後に、粒径分布が大きいものを散布・投射することで、吸収体56内の下側に粒径分布が小さいものを、上側に粒径分布が大きいものを分布させることができる。
【0083】
高吸収性ポリマー粒子54と繊維との割合は吸収特性を左右する。吸収体56における液を直接受ける領域での5cm×5cmの平面面積内における重量比としては、高吸収性ポリマー粒子/繊維重量が、0.1〜14、特に0.5〜9であることが望ましい。
【0084】
本発明では、図7に示すように、吸収体56内に、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シート53を配置することも提案される。なお、吸収体56内とは、その表面(トップシート30側面)および裏面(バックシート70側面)を含む。通気性多孔質シート53は、表面及び裏面の両方に設ける等、複数箇所に設けることもできる。通気性多孔質シート53としては、吸収体56の厚さ方向表面側に配置される場合には通液性のものが良いが、裏面側に配置される場合には通液性であっても非通液性のものであっても良い。この形態では、臭気を発生源の直近で消臭することができる。
【0085】
(吸収体のサイズ・重量)
他方、吸収体56のサイズは、平面投影面積が100cm2以上であり、かつ厚さが1〜10mm、特に1〜8mmであるのが好ましい。吸収体のサイズがこの範囲内にあると、重量や厚さ、コストの増加を来たさずに復元性を向上する上で、極めて有利である。また、吸収体の重量は40g以下、特に5〜35gとなるように構成するのが好ましい。吸収体の重量がこの範囲内にあると、専用部材を用いないことによる利点が特に顕著になる。
【0086】
(包被シート)
吸収体56は、構成材料を所定の構造に保持するために包被シート58で包むのが好ましい。包被シート58は、図3のように、吸収体56全体を包む形態のほか、たとえば吸収体56の裏面から両側面にかけて包む形態でもよい。また、吸収体56を上下2層のシートで挟む形態や、吸収体56の下面のみに包被シート58を配置する形態でもよい。
【0087】
包被シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子54を用いる場合にはこれが抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、8〜30g/m2、特に10〜25g/m2のものが望ましい。
【0088】
本発明では、この包被シート58の一部または全部として、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることも提案される。通気性多孔質シートとしては通液性を有するものが用いられる。この場合、消臭機能を有するシートで臭気発生源を包囲できるため、吸収体から外部への臭気放出を効果的に防止することができる。
【0089】
(保持シート)
図6に示すように、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80を設けることができる。吸収体56内の高吸収性ポリマー粒子54は、製造時やその後の工程、あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、吸収体56を通過し、抜け落ちることがある。これらの粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。そこで、吸収体56と包被シート58との間に粒子の保持性能を有する保持シート80を介在させるのである。この保持シート80は、ティッシュペーパ(クレープ紙)などの包被シート58のみでは足りないコシを補強して、消費者が使用する際に手で触ったとき違和感を軽減又は防止する。
【0090】
保持シート80の素材は、特に限定されず、粒子の保持性能を有するものであれば足りる。具体的には、例えば、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維等を例示することができる。
【0091】
保持シート80を不織布とする場合、その保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
【0092】
保持シート80を設ける理由は先にも触れたように、たとえば吸収体56の裏面側に位置する粒子を保持することにある。したがって、使用者は、包被シート58及び保持シート80を介して粒子に接触するため、ジャリジャリした違和感を感じ難くなるのである。特に上記の縮エネルギー及び圧縮レジリエンスである不織布であると、この機能が十分に発揮する。
【0093】
また、高吸収性ポリマー粒子は、保持シート80によって保持され、包被シート58上を移動することがないため、吸収能力が偏るおそれも低減する。特に、保持シート80上を粒子が移動するのを防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布することができる。また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面とすることで粒子の移動を防止するようにしてもよい。このための粗面化又は毛羽立ち手段としては、不織布の製造時におけるネット面でない非ネット面とする、マーブル加工を行う、ニードルパンチにより加工する、ブラシッング加工するなどを挙げることができる。
【0094】
保持シート80は、図7等に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図6に示すように、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。
【0095】
上記例は、吸収体56と包被シート58の裏面側部位との間に保持シート80を設ける例であるが、保持シート80は、包被シートより裏面側であってもよく(その形態は図示していない)、要は、吸収体56に対して裏面側に保持シート80を設ければ、製品の裏面から触る場合におけるジャリジャリした違和感を軽減させるあるいは生じさせないものとなる。
【0096】
(液不透過性バックシート)
吸収体56の裏面側に配される液不透過性バックシート70は、吸収体から更に外方に液分が移動するのを防止するものである。したがって、液不透過性バックシートは、液を透過しない限り、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性バックシートが構成される。)などを例示することができる。
【0097】
このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られる公知の多孔質シートを例示することができる。
【0098】
さらに、本発明では、液不透過性バックシート70の一部または全部として、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることも提案される。通気性多孔質シートとしては通液性を有しないものが用いられる。この場合、通気妨害の主要因である液不透過性バックシート70において、通気性とともに、通気の消臭機能が付与される。
【0099】
(バリヤーカフス)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側にバリヤーカフス60、60を設けることができる。
【0100】
図示のバリヤーカフス60は、シートを二重に貼り合わせてなり、吸収体56の裏面側からトップシート30の下方への折り込み部分を覆って、表面側に突出するように形成されている。バリヤーカフスを構成する二重のシートとしては、例えば撥水性不織布シートを用いることができる。
【0101】
また、図示の例では、バリヤーカフス60の突出部の先端部及び中間部に弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム62が伸張下で固定され、使用状態においてその収縮力により、バリヤーカフス60が起立するようになっている。中間部の糸ゴム62が先端部の糸ゴム62、62よりも中央側に位置してトップシート30の前後端部に固定される関係で、図3のように、バリヤーカフス60の基部側は中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端部は外側に斜めに起立する形態となる。バリヤーカフス60自体の形状は適宜に設計可能である。
【0102】
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿を阻止するために、特に、二重のシート間に、液不透過性バックシート70とは別体の液不透過性サイドシート72を挿入し、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在させることができる。また、図6に示すように、液不透過性バックシート70の側部70Sを二重のシート間に挿入し、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在させることもできる。この形態によれば、バリヤーカフス60の起立部分内まで液不透過性サイドシート72またはバックシート70が延在しているので、トップシート30を伝わって横に拡散した液やバリヤーカフス60、60間の軟便の横漏れを防止できる利点もある。
【0103】
本発明では、バリヤーカフス60の一部または全部として、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることも提案する。具体的には、バリヤーカフスの外面を構成する二重のシート、液不透過性サイドシート72、および液不透過性バックシート70の少なくとも一つとして、通気性多孔質シートを用いることができる。後二者の場合、通気性多孔質シートとしては非通液性のものを用いることになるが、前者の場合には通液性のものでも、非通液性のものでも用いることができる。この形態では、バリヤーカフス60における通気性を阻害することなく、バリヤーカフスを通過する臭気を消臭することができる。
【0104】
(エンボス加工)
トップシート30の表面側から厚み方向にエンボスによる凹部Eを形成してもよい。この場合、トップシート30のみにエンボスによる凹部Eを形成するほか、図7に示すように、トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成方したり、トップシート30の表面側から吸収体56の厚さ方向一部または略全体に達するようにエンボスによる凹部を形成したり(図示せず)することができる。トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成させるためには、中間シート40としては、坪量が8〜50g/m2、厚さ0.2〜10mm、トップシート30としては、坪量が15〜80g/m2、厚さ0.2〜3.5mmの範囲にあるのが、透液性を阻害しない条件で、エンボス加工を充分に行える点で望ましい。
【0105】
また、トップシート30に凹部を形成することなく、中間シート40のみにエンボスによる凹部を形成してもよく、さらにトップシート30及び中間シート40に凹部を形成することなく、吸収要素56のみにエンボスによる凹部を形成しても、また、トップシート30、中間シート40および包被シート58に凹部を形成することなく、吸収体58のみにエンボスによる凹部を形成してもよい。
【0106】
凹部Eはこれが延在する方向に、液を誘導し拡散させる効果がある。よって、凹部Eを実質的に溝状に連続させる(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)と、液は、吸収体に到達する前に表面側層の凹部Eを伝って拡散するようになり、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになる。よって、製品全体の吸収容量が増大し、吸収容量不足に基づく側方からの漏れや逆戻りが発生し難い吸収性物品となる。
【0107】
一方、トウからなる吸収体56は従来のパルプ物と比べて剛性が低下し易いが、吸収体56にエンボスによる凹部を形成すると剛性を高めることができるため好ましい。図示しないが、吸収要素50の剛性を高めるために、吸収体56の裏面側(トップシート30側に対して反対側)から厚み方向にエンボスによる凹部を形成するのも好ましい形態である。この裏面側の凹部を形成するために、保持シート80、包被シート58、液不透過性バックシート70または外装シート12の裏面側から、吸収体56まで達するように一体的にエンボス加工を施すことができる。また、このような裏面側の凹部は、表面側の凹部Eとともに形成するのが好ましいが、表面側の凹部Eを形成せずに裏面側の凹部のみ形成することもできる。凹部を表裏両側に設ける場合には、凹部の形態を表裏共通にしても良く、また表裏異なるものとしても良い。
【0108】
エンボスによる凹部はその延在方向に液を誘導し拡散させる効果がある。また剛性を高める効果もある。よって、エンボスによる凹部の形態はこれらの効果を考慮して決定するのが望ましい。例えば、凹部は、実質的に溝状に連続するもの(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)の他、複数の凹部が間隔を空けて点状に配置されるものであっても良い。また、平面パターンとしては、溝状または点状の凹部が、製品の長手方向、幅方向、これらを組み合わせた格子状、幅方向に往復するジグザグ状(千鳥状)、あるいは不規則に配置された形態等を採ることができる。さらに、ピン状、富士山状、蛇腹状等、適宜の形態を採用することができる。
【0109】
(その他)
消臭機能を有する通気性多孔質シートは複数積層して使用することができ、この場合、全体を積層する形態の他、例えば図4及び図5に示すバックシート70のように、排泄物集中部位のみ局所的に積層する形態を採ることができる。なお、図4に示す形態では、下層のバックシート70により吸収体56の裏面全体を覆うとともに、その幅方向中央部上に上層のバックシート70を積層したものである。また、図5に示す形態では、幅方向両側にバックシート70をそれぞれ配置するとともに、これらの幅方向中央側の端部を重ねることにより、幅方向中央部においてバックシート70が二層構造となるように構成したものである。これらのバックシート70として消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることにより、排泄物集中部位のみ局所的に消臭機能を高めることができる。
【0110】
また、消臭機能を有する通気性多孔質シートは、バックシート70等の一つの部材だけに用いる他、バックシート70とバリヤーカフス60の両者に用いる等、複数の部材に用いることができる。
【0111】
(テープ式使い捨ておむつの例)
一方、図10及び図11はテープ式使い捨ておむつの例を示している。図11は図10における11−11線矢視図であるが、吸収性本体20についてはやや誇張して図示してある。
【0112】
テープ式使い捨ておむつ10Aは、おむつの背側両側端部に取り付けられたファスニング片130を有し、このファスニング片130の止着面にフック要素130Aを有するとともに、おむつの裏面を構成する外装シート12Aを不織布積層体とし、おむつの装着に当り、ファスニング片130のフック要素を外装シート12Aの表面の任意個所に係合可能となしたおむつである。
【0113】
吸収性本体20は、トップシート30と、液不透過性バックシート70との間に、吸収体56を介在させたものとなっている。この吸収体56は、ティッシュペーパによる包被シート58により全体が包まれており、平面的に視て長方形をなしている。吸収体56と包被シート58との間には保持シート80が設けられている。
【0114】
さらに、トップシート30と吸収体56との間には、中間シート40が介在されている。液不透過性バックシート70は吸収体56より幅広の長方形をなし、その外方に砂時計形状の不織布からなる外装シート12Aが設けられている。
【0115】
トップシート30は吸収体56より幅広の長方形をなし、吸収体56の側縁より若干外方に延在し、液不透過性バックシート70とホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0116】
おむつの両側部には、使用面側に突出するバリヤーカフス60Aが形成され、このバリヤーカフス60Aは、実質的に幅方向に連続した不織布からなるバリヤーシート64と、弾性伸縮部材、例えば糸ゴムからなる1本の又は複数本の脚周り用弾性伸縮部材としての糸ゴム62とにより構成されている。130は面ファスナーによるファスニング片である。
【0117】
バリヤーシート64の内面は、トップシート30の側縁と離間した位置において固着始端を有し、この固着始端から液不透過性バックシート70の延在縁にかけて、幅方向外方部分がホットメルト接着剤などにより固着されている。バリヤーシート64の外面は、その下面において外装シート12Aにホットメルト接着剤などにより固着されている。さらに、ガスケットカフス用弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム66が設けられている。
【0118】
バリヤーシート64の内面の、液不透過性バックシート70への固着始端は、バリヤーカフス60Aの起立端を形成している。脚周りにおいては、この起立端より内側は、製品本体に固定されていない自由部分であり、この自由部分が糸ゴム62の収縮力により起立するようになる。
【0119】
本例では、ファスニング片130として、面ファスナーを用いることで、外装シート12Aに対して、メカニカルに止着できる。したがって、いわゆるターゲットテープを省略することもでき、かつ、ファスニング片130による止着位置を自由に選択できる。
【0120】
ファスニング片130は、プラスチック、ポリラミ不織布、紙製などのファスニング基材の基部が外装シート12Aに、例えば接着剤により接合されており、先端側にフック要素130Aを有する。フック要素130Aはファスニング基材に接着剤により接合されている。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合片を有する。フック要素130Aより先端側に仮止め接着剤部130Bを有する。製品の組立て末期において、仮止め接着剤部130Bがバリヤーシート64に接着されることによりファスニング片130の先端側の剥離を防止するようにしている。使用時には、その接着力に抗して剥離し、ファスニング片130の先端側を前身頃に持ち込むものである。仮止め接着剤部130Bより先端側はファスニング基材が露出して摘みタブ部とされている。
【0121】
前身頃の開口部側には、外装シート12Aの内面側に、デザインシートとしてのターゲット印刷シート74が設けられ、ファスニング片130のフック要素130Aを止着する位置の目安となるデザインが施されたターゲット印刷がなされ、外部から外装シート12Aを通して視認可能なように施されている。
【0122】
おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム62の収縮力が作用するので、脚周りでは、糸ゴム62の収縮力によりバリヤーカフス60Aが起立する。
【0123】
バリヤーカフス60Aの起立部で囲まれる空間は、尿又は軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿はトップシート30を通って吸収体56内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、バリヤーカフス60Aの起立部がバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。万一、起立部の起立遠位側縁を乗り越えて横に漏れた尿は、平面当り部によるストップ機能により横漏れが防止される。
【0124】
本形態において、各起立カフスを形成するバリヤーシート64は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましい。また、本発明の表面シート(不織布積層体)に対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。いずれにしても、バリヤーシート64及び外装シート12Aは、それぞれ通気性があり、かつバリヤーシート64及び外装シート12Aは、それぞれ耐水圧が100mmH2O以上のシートであるのが好適である。これによって、製品の幅方向側部において通気性を示すものとなり、着用者のムレを防止できる。
【0125】
このようなテープ式使い捨ておむつにおいても、前述のパンツ型紙おむつの場合と同様に、バックシート等に前述の通気性多孔質シートを用いることができる。他の点、例えば各部の使用素材等については、前述のパンツ型紙おむつの場合と同じであるため、敢えて説明を省略する。
【0126】
(個別包装の実施形態)
他方、図12及び図13は、生理用ナプキンの個別包装を示している。包装シート101上に、三つ折り等された生理用ナプキン102が配置された状態で、包装シート101の縦方向の両端部101A,101Cが中央部101B側に折り返され、一方の端部101Aが他方の端部101Cの上に重ね合わされ、一方の端部101Aの表面から他方の端部101Cの表面にかけて粘着テープ103が貼付され、封止されている。図中の「*」印は粘着テープの粘着剤を示している。また、幅方向の両端縁は重なり合う部分101D,101Dが加熱エンボス等によりシールされている。かくして、包装シート101によりナプキン2が包装された個別包装体Pが構成されている。
【0127】
かかる個別包装においては、粘着テープ103を包装シート101の他方の端部101C側から一方の端部101A側へ引き剥がしていくと、粘着テープ102が包装シート101の他方の端部101Cから完全に剥離された後、包装シート101の一方側端部101Aが粘着テープを介して持ち上げられ、両側縁のシール101D、101Dが順次引き剥がされた後に開封されるようになっている。
【0128】
そして、この包装シート101は、使用済みのナプキンを包んで捨てる若しくは捨てるまで持ち歩くためにも使用され(以下、後処理ともいう)、この場合、ナプキン102を包装シート101上に配置した状態でこれらを粘着テープ103側とは反対側の端部101Cを始端として巻いた後、終端を粘着テープ103で止めるといった使用法が採られている。
【0129】
本発明では、この包装シート101の一部または全部として、前述の通気性多孔質シートを用いることも提案される。この通気性多孔質シートとしては、通液性であっても非通液性のものであっても良い。この形態では、使用済みのナプキン102を包装シート101で包んで廃棄する際、ナプキン102から放出される臭気は包装シート101を通過する過程で消臭される。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】パンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
【図2】パンツ型使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図3】図2の3―3線矢視断面図である。
【図4】他の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図5】別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図6】別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図7】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図8】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図9】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図10】テープ式使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図11】図10の11−11断面図である。
【図12】生理用ナプキンの個別包装の斜視図である。
【図13】生理用ナプキンの個別包装の断面図である。
【図14】通気性多孔質シートの断面概略図である。
【符号の説明】
【0132】
10…パンツ型使い捨ておむつ、10A…テープ式使い捨ておむつ、12…外装シート、12A…バックシート、20…吸収性本体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…フィラメント、52X…ベール、52Y…トウ、52Z…フィラメントの集合体、53…通気性多孔質シート、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、58…包被シート、60、60A…バリヤーカフス、64…バリヤーシート、70…液不透過性バックシート、72…液不透過性サイドシート、80…保持シート、101…包装シート、102…生理用ナプキン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性消臭シートおよびこれを用いた紙おむつ、失禁用吸収パッド、生理用ナプキン等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幼児や大人のテープ式やパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、内面側のトップシートと、外面側の液の透過を防止するバックシートと、これらのシート間に介在され、トップシートを透過した排泄液を受け入れ保持する吸収要素とを基本要素としている。
この基本要素に対し、バックシートの裏面側にたとえば不織布などからなる外装シートを設け、前記バックシートとしてプラスチックシートを使用した場合における肌触りを改良する形態、内面側に突出するバリヤーカフスを形成する形態など、ウエスト周りや腹周りのフィット性を改良するために弾性伸縮性を付与する形態などが、適宜付加される。
特に近年では、蒸れ防止の観点から、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られる通気性多孔質シートが、バックシート等として使用されるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−225680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の通気性多孔質シートは、臭気までも通過させてしまうため、臭いを気にする吸収性物品、例えば成人用の失禁パッドや紙おむつでは使用できない、あるいは使用したとしても十分な通気性を確保できないといった問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、通気性を十分に確保しつつ臭気の通過を抑制できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
合成樹脂に粒子を混合した原料を用いてシートを形成した後、このシートを延伸して得られる通気性多孔質シートにおいて、
前記粒子の一部または全部として、消臭粒子を用いたことを特徴とする通気性多孔質シート。
【0005】
(作用効果)
このような多孔質シートは、シートの延伸に際して粒子が延伸しないため、粒子の周囲に空隙が形成され、この空隙が単独または複数連なってシートの表裏に連通する通気孔が形成される。よって、粒子の一部または全部として消臭粒子を用いることで、通気孔内に消臭粒子を存在させることができ、臭気が通気孔を通過する過程で消臭される結果、極めて効果的な消臭が可能となる。しかも従来の通気性多孔質シートと比較して、通気孔内の粒子が消臭粒子であるか否かの違いしかないため、通気性を損ねることが無く、十分な通気性を確保することができる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
前記消臭粒子の平均粒径が5μm以下であり、シートの厚さが10〜90μmである、請求項1記載の通気性多孔質シート。
【0007】
(作用効果)
消臭粒子の大きさ及びシートの厚さが本項記載の範囲内にあると、シートの薄さ及び通気性をバランスよく確保できるため好ましい。なお、平均粒径とは個数平均粒径を意味する。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記消臭粒子を0.1重量%以上含有する、請求項1または2記載の通気性多孔質シート。
【0009】
(作用効果)
消臭粒子が少な過ぎると、消臭効果が不十分になるおそれがあるため、消臭粒子の含有量は本項記載のように0.1重量%以上とするのが好ましい。
【0010】
<請求項4記載の発明>
JIS Z 0208に規定される透湿度が3000cc/m2・h以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【0011】
(作用効果)
透湿度が低過ぎると、失禁パッドや紙おむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品へ適用した場合、通気性が不十分となり、蒸れ防止効果に乏しくなる。
【0012】
<請求項5記載の発明>
前記消臭粒子が、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【0013】
(作用効果)
このようなゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子を用いると、消臭 効果のみならず、抗菌効果も発揮されるため、好ましい。
【0014】
<請求項6記載の発明>
通液性を有しない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【0015】
(作用効果)
通液性を有しないことにより、例えば吸収性物品における液不透過性のバックシート等として用いることができるようになる。
【0016】
<請求項7記載の発明>
前記通気孔が通液性を有するか、または前記通気孔とは別に通液孔を形成してなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【0017】
(作用効果)
通液性を有することにより、例えば吸収性物品における液透過性のトップシート等として用いることができるようになる。
【0018】
<請求項8記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記バックシートの一部または全部を請求項6記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
バックシートは、吸収体に対して外側に位置し、液分の漏出を遮るものである。バックシートとしては、以前はポリエチレンシート等のように通気性も通液性も無いものが用いられていたが、内側が蒸れ易く、かぶれ等の原因になることもあり、近年では、粒子を含む合成樹脂原料で形成したシートを延伸して得られる通気性かつ非通液性の多孔質シートが用いられるようになっている。しかしながら、前述のとおり、このような通気性多孔質シートは排泄物の臭気までも通過させてしまうため、バックシートのように吸収体の外側を覆うシートとして用いると、臭気の放出が顕著になってしまう。このため、従来の製品では、せっかく通気性シートを用いながらも、その通気性を低く抑えざるを得なかった。
これに対して、本項記載のように、通液性を有しない本発明の通気性多孔質シートを用いると、通気孔に存在する消臭粒子によって通気そのものの消臭がなされるため、通気性を犠牲にせずに消臭を図ることができるようになる。
【0020】
<請求項9記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体と、吸収体を包む包被シートとを有する吸収性物品において、
前記包被シートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
吸収性物品における主たる臭気の発生源は、排泄物を吸収し保持する吸収体であり、その多くは、構成材料を所定の構造に保持するために包被シートで包まれている。よって、このような場合に、包被シートの一部または全部として、通液性を有する本発明の通気性シートを用いると、消臭機能を有するシートで臭気発生源を包囲できるため、吸収体から外部への臭気放出を効果的に防止することができる。
【0022】
<請求項10記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有し、かつ吸収体の両側に、身体側に突出するバリヤーカフスを有する吸収性物品において、
前記バリヤーカフスの一部または全部を請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0023】
(作用効果)
吸収性物品の中でも、特に紙おむつや一部の生理用ナプキンでは、身体(特に脚周り)に対するフィット性を高めるために、内面側にバリヤーカフスが突出しており、このバリヤーカフスにより吸収性物品の身体側と外部とが遮断される。よって、このような場合に、バリヤーカフスの一部または全部として、通液性を有しない本発明の通気性シートを用いると、バリヤーカフスにおける通気性を向上させつつ、通気性向上に起因する臭気の放出を防止することができる。
【0024】
<請求項11記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記吸収体内に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートを有することを特徴とする吸収性物品。
【0025】
(作用効果)
本発明の通気性多孔質シートは、吸収性物品の身体側から外側へ通気を行う部材に用いるのが好ましいが、これに限られるものではなく、例えば本項記載のように吸収体内に設けることもできる。本発明の通気性多孔質シートは、臭気と接触する限り消臭機能が発揮される。
【0026】
<請求項12記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記トップシートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0027】
(作用効果)
殆どの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する。通液性を有する本発明の通気性シートは、本項記載のようにトップシートの一部または全部として用いることができ、その場合、吸収体のトップシート面からの臭気の放出を抑制することができる。
【0028】
<請求項13記載の発明>
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体と、前記トップシートと吸収体との間に介在された液透過性の中間シートとを有する吸収性物品において、
前記中間シートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0029】
(作用効果)
吸収性物品では、トップシートを透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシートより液の透過速度が速い中間シートをトップシートと吸収体との間に設ける場合がある。通液性を有する本発明の通気性シートは、この中間シートの一部または全部として用いることができ、その場合、吸収体のトップシート側からの臭気の放出を抑制することができる。
【0030】
<請求項14記載の発明>
包装シートにより個別に包装された吸収性物品において、
前記包装シートの一部または全部を請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【0031】
(作用効果)
吸収性物品、中でも生理用ナプキンにおいては、衛生面の観点から、吸収性物品を一つずつ包装する個別包装が行われている。そして、このような個別包装が行われている商品では、使用者にもよるが、使用済みの吸収性物品を包装シートで包んで廃棄することが行われている。よって、このような場合、本項記載のように包装シートの一部または全部として、本発明の消臭機能を有する通気性シートを用いると、使用済みの吸収性物品を包装シートで包んで廃棄することで、使用済みの吸収性物品から放出される臭気を抑制できるという利点がもたらされる。
【発明の効果】
【0032】
以上のとおり、本発明によれば、通気性を十分に確保しつつ臭気の通過を抑制できるようになる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
<通気性多孔質シートの実施形態>
本発明の通気性多孔質シートは、合成樹脂に粒子を混合した原料を用いてシートを形成した後、このシートを延伸して得られるものである。
【0034】
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等、各種の樹脂を使用できる。具体的には、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリビニル、ポリカーボネート、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂等を用いることができ、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を用いることができ、これらは単独で用いる他、二種以上併用することができる。ポリオレフィン系樹脂の中で好ましいのは、LDPEであり、特に好ましいのはLLDPEである。
【0035】
合成樹脂に充填する粒子としては、本発明では少なくともその一部として消臭粒子を用いる。消臭粒子は特に限定されるものではなく、公知の如何なる粒子も用いることができるが、ゼオライト粒子、中でも、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなる抗菌消臭性ゼオライト粒子を用いるのが好適である。ゼオライト粒子としては、天然および合成ゼオライトのどちらも用いることができるが、コストおよび入手安定性の観点から合成ゼオライトが好ましい。ゼオライトは、三次元骨格構造をもつアルミノシリケートであり、一般式aM2/n0・xAl2O3・ySiO2・zH2Oで表される。式中のa、x、y、zはそれぞれ金属酸化物、酸化アルミ、酸化ケイ素、結晶水の数を表す整数である。Mは陽イオンであり、上記抗菌消臭性ゼオライト粒子は、このMとして少なくとも銀イオンを含む。他の陽イオンの種類としては、亜鉛のほか、アルカリ金属(ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)、アンモニウムイオンなどが挙げられる。陽イオンMとしては、銀イオンおよび亜鉛イオンを含むものが好適である。上記一般式におけるnは陽イオンの原子価である。x:yの比率に特に限定はないが、通常1:1〜1:10、好ましくは約1:2〜1:5である。また上記一般式における結晶水数を表すzに関しても特に制限はない。ゼオライトの具体例としては、例えばA型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、T型ゼオライト、高シリカゼオライトなどが挙げられ、消臭効果が優れるという点でA型ゼオライト、X型ゼオライトおよびY型ゼオライトが好ましく、なかでもA型ゼオライトが特に好ましい。
【0036】
本発明では、全ての粒子を消臭粒子で賄うこともできるが、通気性を高める場合に費用が嵩むため、必要に応じて他の公知の粒子、例えばクレイ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、シリコン等の無機粒子を併用することができる。
【0037】
充填粒子の大きさは、消臭粒子であるか否かに関わらず、平均粒径で5μm以下、特に0.5〜3μmであるのが好ましい。充填粒子が大き過ぎると、粒子を保持するためにシートを薄くできない、液不透過性にし難くなる等の点に留意する必要がある。充填粒子が小さ過ぎると、通気性を十分に高くすることが困難になる。
【0038】
充填粒子は、樹脂100重量部に対して、通常50〜200重量部、特に100〜150重量部程度添加するのが好ましい。また、消臭粒子は、シートにおける含有量で0.1重量%以上、特に0.1〜10重量%混合するのが好ましい。消臭粒子が少な過ぎると、消臭効果が不十分になるおそれがあり、多過ぎると費用対効果が低下する。特に、必要十分な量の消臭粒子を用いるとともに、残りを汎用粒子で補うのが好ましい。
【0039】
製造に際しては、先ず、上記原料をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型混合機等を用いて混合した後、通常の一軸あるいは二軸スクリュー型押出機によってペレット化する。次いで、これらのペレットを必要に応じ、他のペレット状ポリオレフィン系樹脂を加えた後、ベースレジンの融点以上、好ましくは融点+20度以上かつ分解温度以下で、インフレーション成形機またはTダイ成形機を用いて一次シートを溶融成形する。場合によってはペレット化せず直接押出機でシート化することもできる。しかる後、製造した一次シートを、ロール法、テンター法等の公知の方法で少なくとも一軸方向に延伸を行い、粒子の周囲に空隙を形成することにより、通気性を有する多孔性フィルムを得ることができる。延伸は多段階に分けても良いし、二軸延伸の場合は逐次2軸延伸でも良いが同時二軸延伸が好ましい。延伸倍率は適宜設定することができ、その変更により任意の通気孔径を得ることができるが、通常は2倍〜10倍程度とするのが好ましい。
【0040】
かくして得られる本発明の通気性シートでは、図14に示すように、シート200の延伸に際して粒子201,202が延伸しないことにより粒子201,202の周囲に空隙が形成され、この空隙が単独または複数連なることでシート200の表裏に連通する通気孔203が形成され、その通気孔203内に消臭粒子201が存在するようになる。よって、臭気が通気孔203を通過する過程で消臭粒子201に吸着され消臭される。
【0041】
通気性シートの厚みについては、特に制限はないが10〜90μm程度が好ましい。薄すぎると粒子を保持できなくなるとともに破れ易くなり、厚すぎると通気性が向上し難くなる、用途によっては剛性が高くなりすぎる、生産性が悪くなる等の点に留意が必要である。
【0042】
また、通気性についても適宜調整することができるが、JIS Z 0208に規定される透湿度が3000cc/m2・h以上、特に50000cc/m2・h以上であるのが好ましい。透湿度が低過ぎると、通気性が悪いだけでなく、消臭機能も発揮され難くなる。透湿度は高いにこしたことはないが、透湿度を過度に高めた場合、液不透過性が犠牲になったり、シートが破れ易くなったりするおそれがある。
【0043】
本発明の通気性シートは、用途に応じて、通液性の有無を選択することができる。この場合、通気孔の大小により通液性の有無を変更できる他、通気孔からは通液しないシートに、別途、針刺し加工や打ち抜き加工、エンボス加工等により多数の通液孔を形成することもできる。後者の場合、通液孔はシートの一部または全体に形成することができる。単一の通液孔の有効開口面積は3〜75mm2が好適であり、また開口面積率(非開口部分に対する開口部分の面積の割合)が10〜80%が好適である。
【0044】
さらに、本発明の通気性シートは、肌触り等の表面特性を変えるために、表裏少なくとも一方の面に不織布等の他のシートを張り合わせたラミネートシートとすることができる。他のシートとしては、通気性が無くならない範囲であれば特に限定なく用いることができる。他のシートの張り合わせにはホットメルト接着剤やエンボス加工、超音波シール、ヒートシール等、公知の手段を用いることができる。
【0045】
<吸収性物品の実施形態>
次に、本発明に係る吸収性物品の一実施形態について、紙おむつを例に取り詳説する。
<パンツ型使い捨ておむつの例>
図1には、パンツ型使い捨ておむつの例が示されている。このパンツ型使い捨ておむつ10は、外面(裏面)側の外装シート12と内面(表面)側の吸収性本体20とを備え、外装シート12に吸収性本体20が固定されている。吸収性本体20は、尿や軟便などの排泄物(生理用ナプキンにあっては経血)を受け止めて吸収保持する部分である。外装シート12は着用者に装着するための部分である。
【0046】
外装シート12はたとえば図示のように砂時計形状となり、両側が括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。吸収性本体20は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。
【0047】
外装シート12は、図2に示すように、吸収性本体20が所定位置に設置され固定された後、前後に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。これによって、図1に示す構造の、ウエスト開口部WOと一対のレッグ開口部LOを有するパンツ型使い捨ておむつが得られる。
【0048】
図示の吸収性本体20の長手方向(すなわち図2の上下方向。製品の前後方向でもある。)の中間の幅は、外装シート12の括れた部分を繋ぐ幅より短い形態が示されている。この幅の関係は逆でもよいし、同一の幅でもよい。
【0049】
外装シート12は望ましくは2枚のシートからなり、これらのシート間に弾性伸縮部材を介在させて、その収縮力により着用者にフィットさせる形態が望ましい。シートとしては撥水性不織布等を使用でき、弾性伸縮部材としては、糸ゴムや弾性発泡体の帯状物などを使用できる。図示の形態では、糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域Wにおいては幅方向に連続して設けられ、腰下領域Uにおいては両側部分のみに設けられ、股下領域Lにおいては設けられていない。糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域W及び腰下領域Uの両者に設けられていることで、糸ゴム12C自体の収縮力が弱いとしても、全体としては腰下領域Uにおいても着用者に当たるので、製品が着用者に好適にフィットする。
【0050】
(吸収性本体)
実施の形態の吸収性本体20は、図3に示されるように、液を透過させるトップシート30と、中間シート(セカンドシート)40と吸収要素50とを備えている。また、吸収体56の裏面側には液不透過性バックシート70が設けられている。この液不透過性バックシート70の裏面側には、前記の外装シート12が設けられている。さらに、両側にバリヤーカフス60、60を備えている。なお、図示しないが、吸収性本体20の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、スパイラル、サミットまたはカーテン塗布などにより相互に固定される。
【0051】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有する。したがって、トップシート30の素材は、この液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0052】
本発明では、トップシート30の一部または全部として、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることも提案される。この場合、トップシート30表面からの臭気の放出が抑制される。通気性多孔質シートとしては前述の通液孔を多数形成した孔開きシート等、通液性を有するものが用いられる。トップシートは身体に接触する部分であるため、図8に示すように、通気性多孔質シート32の肌面側に不織布等の肌触りの良いシート31をホットメルト接着またはエンボス加工により貼り合わせたラミネートシートを用いるのが好適である。
【0053】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0054】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、通常「セカンドシート」と呼ばれる中間シート40を、トップシート30と吸収体との間(図示形態ではトップシート30と後述する包被シート58との間)に介在させることができる。この中間シートは、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。図5に示すように、中間シート(セカンドシート)40を設けない形態も使用可能である。
【0055】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0056】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
【0057】
本発明では、この中間シート40の一部または全部として、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることも提案される。通気性多孔質シートとしては、図9に示すように、前述の通液孔を多数形成した孔開きシート等、通液性を有するものが用いられる。この場合、吸収体56のトップシート30側からの臭気の放出が抑制される。
【0058】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有している。
【0059】
吸収体56としては、綿状パルプのように短繊維を積繊した短繊維集合体の他、トウを開繊して得られるフィラメント52,52…の集合体等を使用できる。フィラメント52,52…の集合体は、実質的に連続繊維とみなされる繊維で構成されたトウ(繊維束)を開繊したものである。トウ構成繊維としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
【0060】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸された繊維であってもよい。
【0061】
好適に採用できるセルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0062】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0063】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。特に好ましいセルロースエステルは、セルロースジアセテートである。
【0064】
トウ構成繊維は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0065】
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexが望ましい。トウ構成繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。トウ構成繊維は、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
【0066】
トウは、繊維間の絡み合いが弱いため、主に形状を維持する目的で、繊維の接触部分を接着または融着する作用を有するバインダーを用いることができる。バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0067】
バインダーとして使用する熱可塑性樹脂には、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性または水難溶性樹脂、および水溶性樹脂が含まれる。水不溶性または水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
【0068】
水不溶性または水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
【0069】
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
【0070】
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0071】
しかし、可能な限り、高吸収性ポリマー粒子の侵入を阻害するバインダー成分の使用は避けるべきである。高吸収性ポリマー粒子の侵入を阻害するバインダー成分は使用しないのが最善である。
【0072】
トウは公知の方法により製造できるので詳説はしない。吸収体56に好適に使用できるセルロースジアセテートのトウのベールは、セラニーズ社やダイセル化学工業などにより市販されている。セルロースジアセテートのトウのベールは、密度は約0.5g/cm3であり、総重量は400〜600kgである。
【0073】
このベールから、トウを引き剥がし、所望のサイズ、嵩となるように広い帯状に開繊する。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは製品の吸収体の幅の100〜300mm程度とすることができる。また、トウの開繊度合いを調整することにより、フィラメント集合体の繊維密度を調整することができる。好ましい繊維密度は、0.03〜0.25g/cm3である。
【0074】
トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛け渡し、トウの進行に伴って次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアーを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
【0075】
吸収体56には、必要に応じて高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)を含有させることができる。この場合、高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)は、吸収体56の少なくとも液受け入れ領域において実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。この実質的に厚み方向全体に分散されている状態を図3の要部拡大図として概念的に示した。
【0076】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、吸収体56に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が吸収体56中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が吸収体56を通り抜けて包被シート58上にある形態や図6に示されるように保持シート80上にある形態も排除されるものではない。
【0077】
高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む意味である。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の吸収性物品に使用される平均粒径のものをそのまま使用でき、平均粒径が100〜1000μm、特に200〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が50g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0078】
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0079】
また、高吸収性ポリマー粒子54としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、トウを用いることにより嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0080】
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜500g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量を50g/m2以下とすることにより、ポリマーの重量による軽量化阻害を防止できる。500g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰により、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0081】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子54は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0082】
必要により、高吸収性ポリマー粒子54として、粒径分布が異なる複数用意し、厚み方向に順次散布・投射できる。たとえば、先に粒径分布が小さいものを散布・投射した後に、粒径分布が大きいものを散布・投射することで、吸収体56内の下側に粒径分布が小さいものを、上側に粒径分布が大きいものを分布させることができる。
【0083】
高吸収性ポリマー粒子54と繊維との割合は吸収特性を左右する。吸収体56における液を直接受ける領域での5cm×5cmの平面面積内における重量比としては、高吸収性ポリマー粒子/繊維重量が、0.1〜14、特に0.5〜9であることが望ましい。
【0084】
本発明では、図7に示すように、吸収体56内に、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シート53を配置することも提案される。なお、吸収体56内とは、その表面(トップシート30側面)および裏面(バックシート70側面)を含む。通気性多孔質シート53は、表面及び裏面の両方に設ける等、複数箇所に設けることもできる。通気性多孔質シート53としては、吸収体56の厚さ方向表面側に配置される場合には通液性のものが良いが、裏面側に配置される場合には通液性であっても非通液性のものであっても良い。この形態では、臭気を発生源の直近で消臭することができる。
【0085】
(吸収体のサイズ・重量)
他方、吸収体56のサイズは、平面投影面積が100cm2以上であり、かつ厚さが1〜10mm、特に1〜8mmであるのが好ましい。吸収体のサイズがこの範囲内にあると、重量や厚さ、コストの増加を来たさずに復元性を向上する上で、極めて有利である。また、吸収体の重量は40g以下、特に5〜35gとなるように構成するのが好ましい。吸収体の重量がこの範囲内にあると、専用部材を用いないことによる利点が特に顕著になる。
【0086】
(包被シート)
吸収体56は、構成材料を所定の構造に保持するために包被シート58で包むのが好ましい。包被シート58は、図3のように、吸収体56全体を包む形態のほか、たとえば吸収体56の裏面から両側面にかけて包む形態でもよい。また、吸収体56を上下2層のシートで挟む形態や、吸収体56の下面のみに包被シート58を配置する形態でもよい。
【0087】
包被シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子54を用いる場合にはこれが抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、8〜30g/m2、特に10〜25g/m2のものが望ましい。
【0088】
本発明では、この包被シート58の一部または全部として、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることも提案される。通気性多孔質シートとしては通液性を有するものが用いられる。この場合、消臭機能を有するシートで臭気発生源を包囲できるため、吸収体から外部への臭気放出を効果的に防止することができる。
【0089】
(保持シート)
図6に示すように、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80を設けることができる。吸収体56内の高吸収性ポリマー粒子54は、製造時やその後の工程、あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、吸収体56を通過し、抜け落ちることがある。これらの粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。そこで、吸収体56と包被シート58との間に粒子の保持性能を有する保持シート80を介在させるのである。この保持シート80は、ティッシュペーパ(クレープ紙)などの包被シート58のみでは足りないコシを補強して、消費者が使用する際に手で触ったとき違和感を軽減又は防止する。
【0090】
保持シート80の素材は、特に限定されず、粒子の保持性能を有するものであれば足りる。具体的には、例えば、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維等を例示することができる。
【0091】
保持シート80を不織布とする場合、その保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
【0092】
保持シート80を設ける理由は先にも触れたように、たとえば吸収体56の裏面側に位置する粒子を保持することにある。したがって、使用者は、包被シート58及び保持シート80を介して粒子に接触するため、ジャリジャリした違和感を感じ難くなるのである。特に上記の縮エネルギー及び圧縮レジリエンスである不織布であると、この機能が十分に発揮する。
【0093】
また、高吸収性ポリマー粒子は、保持シート80によって保持され、包被シート58上を移動することがないため、吸収能力が偏るおそれも低減する。特に、保持シート80上を粒子が移動するのを防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布することができる。また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面とすることで粒子の移動を防止するようにしてもよい。このための粗面化又は毛羽立ち手段としては、不織布の製造時におけるネット面でない非ネット面とする、マーブル加工を行う、ニードルパンチにより加工する、ブラシッング加工するなどを挙げることができる。
【0094】
保持シート80は、図7等に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図6に示すように、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。
【0095】
上記例は、吸収体56と包被シート58の裏面側部位との間に保持シート80を設ける例であるが、保持シート80は、包被シートより裏面側であってもよく(その形態は図示していない)、要は、吸収体56に対して裏面側に保持シート80を設ければ、製品の裏面から触る場合におけるジャリジャリした違和感を軽減させるあるいは生じさせないものとなる。
【0096】
(液不透過性バックシート)
吸収体56の裏面側に配される液不透過性バックシート70は、吸収体から更に外方に液分が移動するのを防止するものである。したがって、液不透過性バックシートは、液を透過しない限り、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性バックシートが構成される。)などを例示することができる。
【0097】
このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られる公知の多孔質シートを例示することができる。
【0098】
さらに、本発明では、液不透過性バックシート70の一部または全部として、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることも提案される。通気性多孔質シートとしては通液性を有しないものが用いられる。この場合、通気妨害の主要因である液不透過性バックシート70において、通気性とともに、通気の消臭機能が付与される。
【0099】
(バリヤーカフス)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側にバリヤーカフス60、60を設けることができる。
【0100】
図示のバリヤーカフス60は、シートを二重に貼り合わせてなり、吸収体56の裏面側からトップシート30の下方への折り込み部分を覆って、表面側に突出するように形成されている。バリヤーカフスを構成する二重のシートとしては、例えば撥水性不織布シートを用いることができる。
【0101】
また、図示の例では、バリヤーカフス60の突出部の先端部及び中間部に弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム62が伸張下で固定され、使用状態においてその収縮力により、バリヤーカフス60が起立するようになっている。中間部の糸ゴム62が先端部の糸ゴム62、62よりも中央側に位置してトップシート30の前後端部に固定される関係で、図3のように、バリヤーカフス60の基部側は中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端部は外側に斜めに起立する形態となる。バリヤーカフス60自体の形状は適宜に設計可能である。
【0102】
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿を阻止するために、特に、二重のシート間に、液不透過性バックシート70とは別体の液不透過性サイドシート72を挿入し、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在させることができる。また、図6に示すように、液不透過性バックシート70の側部70Sを二重のシート間に挿入し、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在させることもできる。この形態によれば、バリヤーカフス60の起立部分内まで液不透過性サイドシート72またはバックシート70が延在しているので、トップシート30を伝わって横に拡散した液やバリヤーカフス60、60間の軟便の横漏れを防止できる利点もある。
【0103】
本発明では、バリヤーカフス60の一部または全部として、前述の消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることも提案する。具体的には、バリヤーカフスの外面を構成する二重のシート、液不透過性サイドシート72、および液不透過性バックシート70の少なくとも一つとして、通気性多孔質シートを用いることができる。後二者の場合、通気性多孔質シートとしては非通液性のものを用いることになるが、前者の場合には通液性のものでも、非通液性のものでも用いることができる。この形態では、バリヤーカフス60における通気性を阻害することなく、バリヤーカフスを通過する臭気を消臭することができる。
【0104】
(エンボス加工)
トップシート30の表面側から厚み方向にエンボスによる凹部Eを形成してもよい。この場合、トップシート30のみにエンボスによる凹部Eを形成するほか、図7に示すように、トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成方したり、トップシート30の表面側から吸収体56の厚さ方向一部または略全体に達するようにエンボスによる凹部を形成したり(図示せず)することができる。トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成させるためには、中間シート40としては、坪量が8〜50g/m2、厚さ0.2〜10mm、トップシート30としては、坪量が15〜80g/m2、厚さ0.2〜3.5mmの範囲にあるのが、透液性を阻害しない条件で、エンボス加工を充分に行える点で望ましい。
【0105】
また、トップシート30に凹部を形成することなく、中間シート40のみにエンボスによる凹部を形成してもよく、さらにトップシート30及び中間シート40に凹部を形成することなく、吸収要素56のみにエンボスによる凹部を形成しても、また、トップシート30、中間シート40および包被シート58に凹部を形成することなく、吸収体58のみにエンボスによる凹部を形成してもよい。
【0106】
凹部Eはこれが延在する方向に、液を誘導し拡散させる効果がある。よって、凹部Eを実質的に溝状に連続させる(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)と、液は、吸収体に到達する前に表面側層の凹部Eを伝って拡散するようになり、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになる。よって、製品全体の吸収容量が増大し、吸収容量不足に基づく側方からの漏れや逆戻りが発生し難い吸収性物品となる。
【0107】
一方、トウからなる吸収体56は従来のパルプ物と比べて剛性が低下し易いが、吸収体56にエンボスによる凹部を形成すると剛性を高めることができるため好ましい。図示しないが、吸収要素50の剛性を高めるために、吸収体56の裏面側(トップシート30側に対して反対側)から厚み方向にエンボスによる凹部を形成するのも好ましい形態である。この裏面側の凹部を形成するために、保持シート80、包被シート58、液不透過性バックシート70または外装シート12の裏面側から、吸収体56まで達するように一体的にエンボス加工を施すことができる。また、このような裏面側の凹部は、表面側の凹部Eとともに形成するのが好ましいが、表面側の凹部Eを形成せずに裏面側の凹部のみ形成することもできる。凹部を表裏両側に設ける場合には、凹部の形態を表裏共通にしても良く、また表裏異なるものとしても良い。
【0108】
エンボスによる凹部はその延在方向に液を誘導し拡散させる効果がある。また剛性を高める効果もある。よって、エンボスによる凹部の形態はこれらの効果を考慮して決定するのが望ましい。例えば、凹部は、実質的に溝状に連続するもの(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)の他、複数の凹部が間隔を空けて点状に配置されるものであっても良い。また、平面パターンとしては、溝状または点状の凹部が、製品の長手方向、幅方向、これらを組み合わせた格子状、幅方向に往復するジグザグ状(千鳥状)、あるいは不規則に配置された形態等を採ることができる。さらに、ピン状、富士山状、蛇腹状等、適宜の形態を採用することができる。
【0109】
(その他)
消臭機能を有する通気性多孔質シートは複数積層して使用することができ、この場合、全体を積層する形態の他、例えば図4及び図5に示すバックシート70のように、排泄物集中部位のみ局所的に積層する形態を採ることができる。なお、図4に示す形態では、下層のバックシート70により吸収体56の裏面全体を覆うとともに、その幅方向中央部上に上層のバックシート70を積層したものである。また、図5に示す形態では、幅方向両側にバックシート70をそれぞれ配置するとともに、これらの幅方向中央側の端部を重ねることにより、幅方向中央部においてバックシート70が二層構造となるように構成したものである。これらのバックシート70として消臭機能を有する通気性多孔質シートを用いることにより、排泄物集中部位のみ局所的に消臭機能を高めることができる。
【0110】
また、消臭機能を有する通気性多孔質シートは、バックシート70等の一つの部材だけに用いる他、バックシート70とバリヤーカフス60の両者に用いる等、複数の部材に用いることができる。
【0111】
(テープ式使い捨ておむつの例)
一方、図10及び図11はテープ式使い捨ておむつの例を示している。図11は図10における11−11線矢視図であるが、吸収性本体20についてはやや誇張して図示してある。
【0112】
テープ式使い捨ておむつ10Aは、おむつの背側両側端部に取り付けられたファスニング片130を有し、このファスニング片130の止着面にフック要素130Aを有するとともに、おむつの裏面を構成する外装シート12Aを不織布積層体とし、おむつの装着に当り、ファスニング片130のフック要素を外装シート12Aの表面の任意個所に係合可能となしたおむつである。
【0113】
吸収性本体20は、トップシート30と、液不透過性バックシート70との間に、吸収体56を介在させたものとなっている。この吸収体56は、ティッシュペーパによる包被シート58により全体が包まれており、平面的に視て長方形をなしている。吸収体56と包被シート58との間には保持シート80が設けられている。
【0114】
さらに、トップシート30と吸収体56との間には、中間シート40が介在されている。液不透過性バックシート70は吸収体56より幅広の長方形をなし、その外方に砂時計形状の不織布からなる外装シート12Aが設けられている。
【0115】
トップシート30は吸収体56より幅広の長方形をなし、吸収体56の側縁より若干外方に延在し、液不透過性バックシート70とホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0116】
おむつの両側部には、使用面側に突出するバリヤーカフス60Aが形成され、このバリヤーカフス60Aは、実質的に幅方向に連続した不織布からなるバリヤーシート64と、弾性伸縮部材、例えば糸ゴムからなる1本の又は複数本の脚周り用弾性伸縮部材としての糸ゴム62とにより構成されている。130は面ファスナーによるファスニング片である。
【0117】
バリヤーシート64の内面は、トップシート30の側縁と離間した位置において固着始端を有し、この固着始端から液不透過性バックシート70の延在縁にかけて、幅方向外方部分がホットメルト接着剤などにより固着されている。バリヤーシート64の外面は、その下面において外装シート12Aにホットメルト接着剤などにより固着されている。さらに、ガスケットカフス用弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム66が設けられている。
【0118】
バリヤーシート64の内面の、液不透過性バックシート70への固着始端は、バリヤーカフス60Aの起立端を形成している。脚周りにおいては、この起立端より内側は、製品本体に固定されていない自由部分であり、この自由部分が糸ゴム62の収縮力により起立するようになる。
【0119】
本例では、ファスニング片130として、面ファスナーを用いることで、外装シート12Aに対して、メカニカルに止着できる。したがって、いわゆるターゲットテープを省略することもでき、かつ、ファスニング片130による止着位置を自由に選択できる。
【0120】
ファスニング片130は、プラスチック、ポリラミ不織布、紙製などのファスニング基材の基部が外装シート12Aに、例えば接着剤により接合されており、先端側にフック要素130Aを有する。フック要素130Aはファスニング基材に接着剤により接合されている。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合片を有する。フック要素130Aより先端側に仮止め接着剤部130Bを有する。製品の組立て末期において、仮止め接着剤部130Bがバリヤーシート64に接着されることによりファスニング片130の先端側の剥離を防止するようにしている。使用時には、その接着力に抗して剥離し、ファスニング片130の先端側を前身頃に持ち込むものである。仮止め接着剤部130Bより先端側はファスニング基材が露出して摘みタブ部とされている。
【0121】
前身頃の開口部側には、外装シート12Aの内面側に、デザインシートとしてのターゲット印刷シート74が設けられ、ファスニング片130のフック要素130Aを止着する位置の目安となるデザインが施されたターゲット印刷がなされ、外部から外装シート12Aを通して視認可能なように施されている。
【0122】
おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム62の収縮力が作用するので、脚周りでは、糸ゴム62の収縮力によりバリヤーカフス60Aが起立する。
【0123】
バリヤーカフス60Aの起立部で囲まれる空間は、尿又は軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿はトップシート30を通って吸収体56内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、バリヤーカフス60Aの起立部がバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。万一、起立部の起立遠位側縁を乗り越えて横に漏れた尿は、平面当り部によるストップ機能により横漏れが防止される。
【0124】
本形態において、各起立カフスを形成するバリヤーシート64は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましい。また、本発明の表面シート(不織布積層体)に対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。いずれにしても、バリヤーシート64及び外装シート12Aは、それぞれ通気性があり、かつバリヤーシート64及び外装シート12Aは、それぞれ耐水圧が100mmH2O以上のシートであるのが好適である。これによって、製品の幅方向側部において通気性を示すものとなり、着用者のムレを防止できる。
【0125】
このようなテープ式使い捨ておむつにおいても、前述のパンツ型紙おむつの場合と同様に、バックシート等に前述の通気性多孔質シートを用いることができる。他の点、例えば各部の使用素材等については、前述のパンツ型紙おむつの場合と同じであるため、敢えて説明を省略する。
【0126】
(個別包装の実施形態)
他方、図12及び図13は、生理用ナプキンの個別包装を示している。包装シート101上に、三つ折り等された生理用ナプキン102が配置された状態で、包装シート101の縦方向の両端部101A,101Cが中央部101B側に折り返され、一方の端部101Aが他方の端部101Cの上に重ね合わされ、一方の端部101Aの表面から他方の端部101Cの表面にかけて粘着テープ103が貼付され、封止されている。図中の「*」印は粘着テープの粘着剤を示している。また、幅方向の両端縁は重なり合う部分101D,101Dが加熱エンボス等によりシールされている。かくして、包装シート101によりナプキン2が包装された個別包装体Pが構成されている。
【0127】
かかる個別包装においては、粘着テープ103を包装シート101の他方の端部101C側から一方の端部101A側へ引き剥がしていくと、粘着テープ102が包装シート101の他方の端部101Cから完全に剥離された後、包装シート101の一方側端部101Aが粘着テープを介して持ち上げられ、両側縁のシール101D、101Dが順次引き剥がされた後に開封されるようになっている。
【0128】
そして、この包装シート101は、使用済みのナプキンを包んで捨てる若しくは捨てるまで持ち歩くためにも使用され(以下、後処理ともいう)、この場合、ナプキン102を包装シート101上に配置した状態でこれらを粘着テープ103側とは反対側の端部101Cを始端として巻いた後、終端を粘着テープ103で止めるといった使用法が採られている。
【0129】
本発明では、この包装シート101の一部または全部として、前述の通気性多孔質シートを用いることも提案される。この通気性多孔質シートとしては、通液性であっても非通液性のものであっても良い。この形態では、使用済みのナプキン102を包装シート101で包んで廃棄する際、ナプキン102から放出される臭気は包装シート101を通過する過程で消臭される。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】パンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
【図2】パンツ型使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図3】図2の3―3線矢視断面図である。
【図4】他の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図5】別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図6】別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図7】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図8】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図9】さらに別の例の3―3線矢視相当断面図である。
【図10】テープ式使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図11】図10の11−11断面図である。
【図12】生理用ナプキンの個別包装の斜視図である。
【図13】生理用ナプキンの個別包装の断面図である。
【図14】通気性多孔質シートの断面概略図である。
【符号の説明】
【0132】
10…パンツ型使い捨ておむつ、10A…テープ式使い捨ておむつ、12…外装シート、12A…バックシート、20…吸収性本体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…フィラメント、52X…ベール、52Y…トウ、52Z…フィラメントの集合体、53…通気性多孔質シート、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、58…包被シート、60、60A…バリヤーカフス、64…バリヤーシート、70…液不透過性バックシート、72…液不透過性サイドシート、80…保持シート、101…包装シート、102…生理用ナプキン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂に粒子を混合した原料を用いてシートを形成した後、このシートを延伸して得られる通気性多孔質シートにおいて、
前記粒子の一部または全部として、消臭粒子を用いたことを特徴とする通気性多孔質シート。
【請求項2】
前記消臭粒子の平均粒径が5μm以下であり、シートの厚さが10〜90μmである、請求項1記載の通気性多孔質シート。
【請求項3】
前記消臭粒子を0.1重量%以上含有する、請求項1または2記載の通気性多孔質シート。
【請求項4】
JIS Z 0208に規定される透湿度が3000cc/m2・h以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【請求項5】
前記消臭粒子が、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【請求項6】
通液性を有しない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【請求項7】
前記通気孔が通液性を有するか、または前記通気孔とは別に通液孔を形成してなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【請求項8】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記バックシートの一部または全部を請求項6記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体と、吸収体を包む包被シートとを有する吸収性物品において、
前記包被シートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有し、かつ吸収体の両側に、身体側に突出するバリヤーカフスを有する吸収性物品において、
前記バリヤーカフスの一部または全部を請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記吸収体内に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートを有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記トップシートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体と、前記トップシートと吸収体との間に介在された液透過性の中間シートとを有する吸収性物品において、
前記中間シートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
包装シートにより個別に包装された吸収性物品において、
前記包装シートの一部または全部を請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項1】
合成樹脂に粒子を混合した原料を用いてシートを形成した後、このシートを延伸して得られる通気性多孔質シートにおいて、
前記粒子の一部または全部として、消臭粒子を用いたことを特徴とする通気性多孔質シート。
【請求項2】
前記消臭粒子の平均粒径が5μm以下であり、シートの厚さが10〜90μmである、請求項1記載の通気性多孔質シート。
【請求項3】
前記消臭粒子を0.1重量%以上含有する、請求項1または2記載の通気性多孔質シート。
【請求項4】
JIS Z 0208に規定される透湿度が3000cc/m2・h以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【請求項5】
前記消臭粒子が、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【請求項6】
通液性を有しない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【請求項7】
前記通気孔が通液性を有するか、または前記通気孔とは別に通液孔を形成してなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の通気性多孔質シート。
【請求項8】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記バックシートの一部または全部を請求項6記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体と、吸収体を包む包被シートとを有する吸収性物品において、
前記包被シートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有し、かつ吸収体の両側に、身体側に突出するバリヤーカフスを有する吸収性物品において、
前記バリヤーカフスの一部または全部を請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記吸収体内に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートを有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体とを有する吸収性物品において、
前記トップシートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に介在された吸収体と、前記トップシートと吸収体との間に介在された液透過性の中間シートとを有する吸収性物品において、
前記中間シートの一部または全部を請求項7記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
包装シートにより個別に包装された吸収性物品において、
前記包装シートの一部または全部を請求項1〜7のいずれか1項に記載の通気性多孔質シートで形成したことを特徴とする吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−159632(P2007−159632A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356321(P2005−356321)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]