説明

通気手段を有する、内燃機関の吸気を濾過するための装置

本発明は、処理される空気のための入口を有する少なくとも1つの濾過要素(8)と、エンジンに向かう第1の清浄な空気の出口と、外部に向かう第2の空気の出口と、前記第2の空気の出口からの空気を動かすための通気手段(10)とを備え、内燃機関の吸気を濾過するための装置に関する。空気濾過装置は、通気手段が、エンジンから取り出されるガス流によって動かされるタービン(24)によって駆動されるファンホイール(20)を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の分野に関し、詳細には、航空機産業、特に、ヘリコプターで用いられるガスタービンエンジンの分野に関する。本発明は、このようなエンジンの吸気の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプターは、場合により、例えば砂または粉塵などの遊離した粒子がひどく充満した環境の中で巧みに操作される必要がある。ヘリコプターが地面に近接しているとき、つまり、離陸または着陸中に、ヘリコプターは、大量の粒子を巻き上げ、空気中に浮遊させる。このような粒子は、エンジンに吸い込まれる。エンジンは、自身を通過する粒子によって、性能の低下にみまわれ、深刻な腐食を被る。
【0003】
この現象を制限するために、エンジンの吸気を処理するための装置(サンドフィルタと呼ばれている)を備え付けることが知られている。このような装置によって、吸引される空気の中を浮遊する粒子が、吸引される空気から分離され、排気される。
【0004】
知られているサンドフィルタは、渦流型である。サンドフィルタは、平行6面体のチャンバ、または、環状のチャンバを備える。このようなチャンバには、チャンバの一方の壁から他方の壁まで貫通する管状の濾過要素が配置されている。このような濾過要素内で、空気は、旋回運動させられる。第1の軸方向の出口は、エンジンの吸気路と連通しており、第2の側方の出口は、チャンバの内部に通じている。このチャンバの内部は、粒子の充満した空気が、確実に外部に排気されるように、通気される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通気(二次的と呼ばれる)は、粒子の充満した空気を押し出すための装置によって、おこなわれる。このような装置の処理能力は、エンジンの処理能力の10%に達する場合がある。
【0006】
知られている装置は、電気モータによって駆動されるファンを備えている。電気エネルギーは、エンジン自身から、または、ヘリコプターから取り出される。電流供給には、遮断、制御、および保護のシステムが必要である。したがって、この装置は、極めてフレキシブルであるにもかかわらず、つまり、飛行の要求および段階に応じて、電力の要求量を管理することが可能であるにもかかわらず、配線および電気制御の観点から、取り付けることが、比較的重くて不便である。
【0007】
別の知られている解決策は、ベンチュリを用いるエジェクタによる通気を提供することである。エジェクタを作動させるために必要な流れは、エンジンの高圧段から取り出される。このシステムは、極めて信頼でき比較的軽量であるという利点を有する。しかしながら、高圧段からの取り出しは、性能の観点から極めて犠牲が大きく、また、エンジンの飛行エンベロープを縮小する。
【0008】
出願人の目的は、従来技術の欠点をもたない手段を用いて、渦流型濾過システムの通気能力を得ることである。
【0009】
質量、エンジン性能への影響、費用、および、修理の容易さの間により良い妥協点を与える通気装置を提供することもまた、目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、処理される空気のための入口と、エンジンに向かう第1の清浄な空気の出口と、外部に向かう第2の空気の出口とを有する少なくとも1つの濾過要素と、前記第2の空気の出口からの空気を押し出す通気手段とを備える、内燃機関の吸気を濾過するための装置であって、通気手段が、エンジンから取り出されるガス流により動かされるタービンによって駆動されるファンホイールを備え、タービンおよびファンホイールが、互いに対して同心に配置されることを特徴とする、装置によって達成される。
【0011】
タービンの使用によって、排気される空気の量を、エジェクタを用いるシステムと比べて減少させることが可能になる。また、ガス流の圧力レベルは、中間圧縮レベルのそれであってもよいし、さらには、より低いタービン段のそれであってもよい。
【0012】
詳細には、タービンを形成するブレードが、ファンブレードの外端を接続するリングの外側上に半径方向に配置される。
【0013】
安価に保守される一体化された組立品が、このような方法により達成され得る。
【0014】
有利には、タービンは、衝動型(action type)である。
【0015】
このような方法により、タービンおよびファンホイールのそれぞれを通過する2つの流れの間を気密的に分離しておく必要性が、低下する。
【0016】
好ましい実施形態によると、ファンホイールおよびタービンが、ケーシング内に取り付けられるロータを形成し、ケーシングには、通気される空気用の中央の流路と、タービンへの供給用の流路(少なくとも1つの扇形体(ring sector)の形態の)とが形成される。詳細には、ファンホイールおよびタービンが、前記ケーシングのノーズコーン内に取り付けられる中心軸の端部にロータを形成する。
【0017】
ガスは、好ましくは、圧縮機から取り出されてもよいし、もしくは、出力タービンと高圧タービンとの間から取り出されてもよく、または、出力タービンの段の間から取り出されてもよい。
【0018】
さらなる特徴および利点が、図面の参照をともなう、非限定的な実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ガスタービンエンジンの空気取入口に取り付けられる渦流型濾過装置を模式的に示す。
【図2】図1の装置の濾過要素を示す。
【図3】軸方向断面で見た本発明の実施形態を示す。
【図4】図3の切断線A−Aにおける図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1の略図は、ガスタービンエンジンの例を示している。ガスタービンエンジンは、吸気路6を通して受け入れられる空気のための圧縮部2と、燃焼室3と、タービン部4とを備える(これらは、ガスタービンエンジンの主軸線XXに沿って順番に配置されている)。エンジンは、一軸エンジンであっても、または、低圧軸および高圧軸を有する複軸エンジンであってもよい。圧縮部は、1つ以上の軸流段、および/または、1つ以上の遠心段を備えてもよい。同様に、タービン部は、中心軸によって対応する圧縮段に接続される1つ以上の直列段を備えてもよい。タービン部は、動力取出軸に接続されるフリータービンを備えてもよい。
【0021】
サンドフィルタ8は、空気取入路6にまたがって取り付けられている。フィルタは、吸気路の形状に応じて、平行6面体の形状であっても、または、環状であってもよい。
【0022】
フィルタ8は、相互に間隔を空けて配置された2つの壁8Aおよび8Bを備える。空気は、上流の壁8Aに形成されたオリフィス通って流入する。そして、空気は、自身に充満している可能性のある粒子が除去された状態で、下流の壁8Bのオリフィスを通って流出する。「下流」および「上流」という用語は、エンジンを通過する空気の流れに関して規定されている。
【0023】
この浄化を達成するために、濾過要素80が、2つの壁の間に配置されている。また、濾過要素80は、壁8Aおよび8Bのオリフィスに通じている。図2は、これらの要素の動作原理を示している。要素80は、壁8Aのオリフィスに通じている管81を備えている。要素80には、壁8Aのオリフィス8A1を通って流入する空気に旋回運動を与えることに適したベーン82が備え付けられている。壁8Bに向かって、管81は、円錐台状の管83に対する開口(この事例では環状の)を形成している。円錐台状の管83は、下流の壁8Bに形成されたオリフィスに通じている。動作中、壁8Aを通過した空気は、管81の上流部内で旋回運動させられる。空気に充満している可能性がある粒子が、管81の壁の内面に沿って遠心分離され、流れS2とともに、管81の間かつ壁8Aおよび8Bの間の空間内に排出される。管81の中心では、浄化された空気流S1が、管83に流入し、壁8Bを通して排気される。浄化された空気流S1は、流路6に受け入れられ、その後、圧縮部に向けて案内される。
【0024】
汚染された空気を外部へ確実に通気および排気するために、ファン10は、フィルタ8のチャンバの内側から空気を吸引し、これを排出する。
【0025】
本発明による通気モジュール10は、図3の軸方向断面図に示されている。
【0026】
通気モジュール10は、ケーシング30内に回転可能に取り付けられたファンホイール20を備える。ホイールは、中心軸22の片側に伸びるハブ21を備える。ファンブレード23は、中心軸22の軸線に平行に流れる空気が軸方向に横切るように形成されており、ハブ21上に半径方向に固定されている。軸流タービンブレード24は、ファンブレード23によって形成されたこのホイールの外周上に半径方向に配置されている。リング25は、通気される空気の流れをタービンブレードを軸方向に通過するガス流から分離する。ホイールは、有利には、1つのブロックを機械加工することによって、一体の構造体として実現されてもよい。
【0027】
中心軸22は、ケーシング30のノーズコーン31内に片持ちされるように、回転可能に取り付けられている。ケーシングは、第1の円筒シェル33を有する。第1の円筒シェル33は、ノーズコーン31とともに、軸方向の気流F1のための第1の環状流路を形成している。ガイドベーン34は、ノーズコーン31の表面をシェル33に半径方向に接続している。流れF1のための気流路は、ファンブレード23が横切る気流路の開口に対応する開口を有する。シェルは、流れ分離リング25によって下流側に延長されている。
【0028】
シェル33の外側に、ケーシングは、第2の流路を形成している。第2の流路は、第1の流路と同心であり、2つの壁要素35および36を有する。軸方向断面図で見ると、壁35は、半径方向の入口に対して屈曲部を形成している。この屈曲部は、円筒壁に接線方向に接続されている。壁35から半径方向に間隔を空けて配置された壁36もまた、半径方向の入口に対して屈曲部を形成している。この屈曲部は、円筒壁33の半径より大きい半径を有する円筒壁37に接線方向に接続されている。したがって、この第2の流路は、半径方向の入口および軸方向の出口を有する。ガス流F2のための第2の流路は、扇形体の形状を有するか、または、環状である。円筒壁は、ロータ1の周囲にシールリングを形成している。より詳細には、円筒壁は、タービンブレード24のためのシールリングを形成しており、タービンブレード24の先端との隙間が最小である。ガイドベーン38は、タービンブレード24の方向にガスインジェクタを形成している。タービンは、好ましくは、インジェクタ38内で減圧されたガス圧を受ける衝動タービンである。このような方法により、ファンロータ20を通過する流れF1およびF2の間をシールするという問題が回避される。図4は、図3の線A−Aにおける断面において、タービンブレード24の形状、および、インジェクタを形成しているガイドベーン38の形状を示している。
【0029】
上流のフランジ33Aにより、装置をサンドフィルタからの導管に取り付けることが可能である。フランジ35Aおよび36Aにより、モータの取出口と連通する導管への取り付けが可能である。また、フランジ37Aにより、排気導管への取り付けが可能である。
【0030】
エンジンの動作中、通気装置10は、エンジンから取り出されるガスF2を受け入れる。ガスF2は、第2の流路によって、タービンブレード24に向けて案内される。ガスF2は、タービンブレード24を動かし、これにより、ファンホイールが駆動される。ファンホイールが回転することによって、通気ブレード23は、フィルタ8の内側から空気F1を吸引する。2つの流れF1およびF2は、ホイール20の下流で合流され、外部に誘導される。
【0031】
要約すれば、本発明による装置は、その構造により、簡単に取り外せる(したがって、保守手順を簡略化する)ホイールを提供する。また、この装置は、部品数の少ない機械を実現する。例えば、ロータ21は、後方から容易に交換され得る。
【0032】
さらに、衝動タービンを使用することによって、ディストリビュータ(部分的噴射を許容する)を単純化することが可能である。そのノズルは、簡単な穿孔によって作られてもよい。また、それは、ホイール上の低圧デルタを通る漏れの影響を制限する。
【0033】
有利には、ガスの取り出し点は:
高圧タービンと出力タービンとの間、
出力タービンの中間段の区域(多段タービンの場合)、
圧縮機のさまざまな段、のいずれかに配置されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理される空気のための入口と、エンジンに向かう第1の清浄な空気の出口と、外部に向かう第2の空気の出口とを有する少なくとも1つの濾過要素(8)と、前記第2の空気の出口からの空気を押し出す通気手段とを備える、内燃機関の吸気を濾過するための装置であって、通気手段が、エンジンから取り出されるガス流により動かされるタービン(24)によって駆動されるファンホイール(23)を備え、タービン(24)およびファンホイール(23)が、互いに対して同心に配置されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
タービン(24)を形成するブレードが、ファンブレード(23)の外端を接続するリング(25)の外側に半径方向に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
タービン(24)が、衝動型である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
ファンホイール(23)およびタービン(24)が、ケーシング(30)内に取り付けられるロータ(20)を形成し、ケーシング(30)には、通気される空気用の第1の中央の流路と、タービンへの供給用の第2の流路とが形成され、第2の流路が、少なくとも1つの扇形体の形状を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
ファンホイールおよびタービンが、前記ケーシングのノーズコーン(31)内に取り付けられる中心軸(22)の端部にロータを形成する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
エンジンが、ガスタービンエンジンであり、ガスが、圧縮機、または、出力タービンと高圧タービンとの間、または、出力タービンの段の間、のいずれかから取り出される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−507571(P2013−507571A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533627(P2012−533627)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065392
【国際公開番号】WO2011/045363
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(501107994)ターボメカ (44)
【氏名又は名称原語表記】TURBOMECA