説明

通線用リード線

【課題】従来のものよりも通線性に優れた電気配線および通信ケーブル通線用リード線の提供する。
【解決手段】線状物を配管内に配線するに際して使用する通線用リード線であって、芯部にポリエステル系樹脂、鞘部にポリエステル系樹脂95〜60重量%と無機粒子5〜40重量%との混合物を使用してなる芯鞘複合構造合成樹脂モノフィラメントを構成素材の少なくとも一部とすることを特徴とする通線用リード線を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線や通信ケーブル類などの線状物を配管内に配線する際して使用する通線用リード線の改良に関するものであり、さらに詳しくは、通線性に優れ、かつ十分な強度及び耐久性を有するに通線用リード線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、オフィス、商店、住宅および工場などにおける配線工事では、建物の内装工事が完了した段階で、予め敷設した配管内へ電気配線や通信ケーブル類などの線状物を通線する方法が採用されており、具体的には、まずリード線と呼ばれる呼び線を予め敷設した配管内に通線し、このリード線の一端側に電気配線や通信ケーブル類などを連結した後、リード線の多端側からこれを配管外へ引き抜くことにより、所望の線状物を配管内に配線している。
【0003】
従来、これらの通線作業においてはスチール製のリード線が主に使用されてきたが、スチール製のリード線は通電性を持つために、配線作業中に感電するなどの危険性があった。
【0004】
そこで、近年では、スチール製のリード線に代わり、絶縁性のプラスチックを素材に使用したリード線が注目されており、例えば、合成樹脂製モノフィラメントと金属線とからなる複合線状体を基本構造とする電気配線用リード線(例えば、特許文献1参照)、断面形状が多角形の合成樹脂線材を延伸処理し、捻り回転を付与して外面に螺旋状綾線を形成したリード線(例えば、特許文献2参照)、および合成樹脂モノフィラメントの曲げ硬さを補うためポリエステル系樹脂にポリエチレンナフタレートを添加して通線性を改善したリード線(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0005】
これらのリード線は、いずれも配線作業中に感電する心配もなく、従来のスチール製リード線と同等の強度を持つなどの特徴を有しているが、配管内へスムーズに通線しにくく使い勝手が悪いなどの問題を残しており、さらなる改善が必要とされていた。
【0006】
また、近年では、電気配線や通信ケーブル類の軽量化に伴い、配管経も小径化の傾向にある。その結果、プラスチック素材を使用したリード線も細くなるため、曲げ硬さが不足することになり、通線性がさらに低下するといった深刻な問題が生じるようになった。
【0007】
したがって、十分な強度および耐久性を維持しつつ、且つ従来のものより通線性に優れたプラスチック製リード線の実現が頻りに求められていた。
【特許文献1】特開2001−352630号公報
【特許文献2】特開2000−217217号公報
【特許文献3】特開2007−138314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術における問題点を課題として検討した結果、達成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、十分な強度や耐久性を維持しつつ、且つ従来のものよりも通線性に優れた通線用リード線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明によれば、線状物を配管内に配線するに際して使用する通線用リード線であって、芯部にポリエステル系樹脂、鞘部にポリエステル系樹脂95〜60重量%と無機粒子5〜40重量%との混合物を使用してなる芯鞘複合構造合成樹脂モノフィラメントを構成素材の少なくとも一部とすることを特徴とする通線用リード線が提供される。
【0011】
なお、本発明の通線用リード線においては、
前記芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントの芯部/鞘部複合比率が、重量比で70〜95/30〜5の範囲にあること、
前記無機粒子の粒径が、研磨材粒度JIS R6001に示される番手で#46〜#500の範囲にあること、
前記芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントを少なくとも1本使用して複数本のモノフィラメントが撚り合わされていること、および
直径または外接円直径が2.0〜3.5mmの範囲にあること、
がいずれも好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満たすことにより、より優れた効果を取得することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下に説明するとおり、十分な強度や耐久性を維持しつつ、且つ従来のものよりも通線性に優れた通線用リード線が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明品の通線用リード線(以下、単にリード線と言う)について具体的に説明する。
【0014】
本発明のリード線は、芯部にポリエステル系樹脂、鞘部にポリエステル系樹脂95〜60重量%と無機粒子5〜40重量%との混合物を使用してなる芯鞘複合構造合成樹脂モノフィラメントを構成素材の少なくとも一部とすることを特徴とするものである。
【0015】
まず、本発明のリード線に使用する芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントは、芯鞘複合構造であって、鞘部を構成するポリエステル系樹脂に無機粉体が5〜40重量%含有されてことが必要であり、さらには10〜20重量%含有されていることが好ましい。
【0016】
芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントの鞘部中の無機粉体の含有量が上記範囲を下回る場合には、合成樹脂モノフィラメントの表面に突出する粉体の量が少なくなる傾向となり、通線性の改良効果が得られなくなるため好ましくない。逆に無機粉体の含有量が上記範囲を上回る場合には、合成樹脂モノフィラメントの強度が低下する傾向となり、配管内へ通信ケーブルを導く際に合成樹脂モノフィラメントが破断しやすくなるため好ましくない。
【0017】
また、芯鞘複合構造ではなく単に無機粒子を5〜30重量%含有するモノフィラメントの場合は、モノフィラメント全体に無機粒子が分散するため強度が低下する傾向となることから、配管内へリード線を導く際にモノフィラメントが破断しやすくなる傾向となるため好ましくない。
【0018】
なお、本発明の芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントを構成するポリエステル系樹脂については特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリメチレンナフタレートまたはこれら2種類以上を共重合したものあるいはブレンドしたものを挙げることができる。
【0019】
また、本発明で使用するポリエステル系樹脂には、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびジオール成分を含有することができ、例えば、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびデカリンジカルボン酸などが挙げられ、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族グリコール、o−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ジフェニルスルホンなどの芳香族グリコール、およびヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルスルホンなどを挙げることができる。
【0020】
ここで、芯部を構成するポリエステル系樹脂と、鞘部を構成するポリエステル系樹脂とは、同種のものでもまた異種のものであってもよいが、同種のものであることが芯部と鞘部との接合性の面で好ましい。
【0021】
上記芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントの鞘部が含有する無機粒子としては、ガラスビーズ、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、酸化ジルコニア、フッ化リチウム、カオリン、およびタルクなどが挙げられる。
【0022】
これら無機粒子の粒径は、研磨材粒度JIS R6001に示される番手で#46〜#500の範囲にあることが好ましい。好ましくは#80〜#180、さらに好ましくは#100〜#120の範囲である。無機粒子の粒径が#500未満では、モノフィラメント表面の無機粒子による凹凸が少なく、通線性が劣る傾向となる。また#46を越えると、モノフィラメント表面に亀裂が生じて強度が低下する傾向となるため好ましくない。
【0023】
なお、芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントの芯部および鞘部を構成するポリエステル系樹脂には、耐熱剤、耐候剤、耐光剤、耐加水分解剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、平滑剤、ワックス類、シリコーンオイル、界面活性剤、染料、顔料などの公知の添加剤成分を必要に応じて任意に添加することもできる。
【0024】
さらに、本発明のリード線に使用する芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントの芯部/鞘部複合比率、重量比で70〜95/30〜5、好ましくは・・〜・・/・・〜・・の範囲にあることが望ましく、芯部の割合が上記の範囲未満では、通線性の改良効果に多くを望めず、また上記の範囲を越えると、合成樹脂モノフィラメントの強度が低下し、配管内へ通信ケーブルを導く際に合成樹脂モノフィラメントが破断しやすくなるため好ましくない。
【0025】
また、本発明のリード線に使用する合成樹脂モノフィラメントの直径は、リード線の使用目的に応じて適宜選定するのができ、特に限定されないが、1.0〜2.5mmの範囲が好ましく、さらに1.3〜2.0mmの範囲がより好ましい。
【0026】
本発明のリード線は、上述の芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントを少なくとも一部に使用したものであるが、図1に示すように、上述の芯鞘複合合成樹脂モノフィラメント2を複数本撚り合わせた撚り線からなるリード線1である場合には特に好ましい効果が得られる。
【0027】
なお、この撚り線の場合には、上述の芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントを少なくとも1本使用し、他は通常のモノフィラメントを使用することもできるが、複数本の総てを上述の芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントから構成することが好ましい。
【0028】
また、撚り線からなるリード線1の場合の合成樹脂モノフィラメントの撚り回数についても、リード線の使用目的に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、配管内の壁面との接触が面接触から点接触となり、摩擦抵抗が低減して通線性が向上する傾向にあるとの理由から、26〜58ターン/mであることがより好ましく、さらには34〜48ターン/mであることがより好ましい。
【0029】
本発明のリード線に使用する芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントの断面形状は、特に限定はされないが、円形の他にも、楕円、三角形、四角形、五角形などの多角形、星形、多葉形などの異形断面形状を挙げることができ、さらに1本の芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントに捻りを掛けて使用することもできる。
【0030】
本発明のリード線の直径は、一般に配管径の10〜40%程度のものが好ましく使用されるが、上述の通り、近年では配管径が小経化の傾向にあるため、リード線も細くする必要がある。
【0031】
しかし、細すぎるとリード線の曲げ硬さが小さくなるばかりか、リード線を配管内に押し込む際の力も伝わりにくくなるため、通線がしにくくなる場合があり、逆に、太すぎるとリード線が硬くなるため、配管のコーナー部分において、通線がしにくくなる場合がある。
【0032】
したがって、本発明のリード線の直径または外接円直径は、2.0〜3.5mmの範囲にあることが好ましく、さらには2.1〜3.2mmの範囲にあることが好ましい。
【0033】
なお、リード線を予め敷設した配管内に通線し、このリード線の端末に電気配線や通信ケーブル類を連結した後、リード線を配管外へ引き抜く際に、リード線には大きな張力が掛かるため、リード線はこの張力に耐えうる強度を有することが好ましい。
【0034】
次に、本発明のリード線の製造方法の一例について説明する。
【0035】
本発明のリード線の製造方法は、何ら特殊な製造装置を使用する必要はなく、公知の方法で製造することができる。
【0036】
例えば、芯部としてのポリエステル系樹脂、鞘部としてのポリエステル系樹脂95〜60重量%と無機粒子5〜40重量%との混合物を、それぞれ2基のエクストルダー型複合紡糸機に供し、260℃の温度で溶融混練した後、所望の芯鞘複合重量比で芯鞘複合口金孔から押し出す。そして、押し出された未延伸糸を冷却水槽の表面を動揺させながら60〜90℃で冷却固化した後、合成樹脂組成物のガラス転移以上の熱媒温度で4.0〜8.5倍に1段または2段に延伸し、次いで0.85〜1.0倍に弛緩ないし定長熱処理することにより、まず芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントを得る。
【0037】
こうして得られた芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントは、次にリード線に加工されるが、本発明においては、得られた芯鞘複合合成樹脂モノフィラメント単糸をそのままリード線に使用することも可能である。
【0038】
また、芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントを複数本撚り合わせてリード線に加工する場合には、例えば、複数本の芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントを合成樹脂のガラス転移点以上の温度でS撚り、またはZ撚りすることにより得ることができる。
【0039】
こうして得られた本発明のリード線は、電気配線や通信ケーブル類などの線状物を配管内に通線するに際して、十分な強度や耐久性を維持しつつ、且つ従来のものよりも通線性に優れたものであるため、その実用性が極めて高いものである。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明のリード線についてさらに詳しく説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
なお、上記および下記の合成樹脂モノフィラメントの各種特性値およびリード線の通線性の評価は以下の方法にしたがって測定したものである。
【0042】
[直径または外接円直径]
デジタルマイクロメーター(MITUTOYO製)を使用して、合成樹脂モノフィラメントの直径を繊維軸方向に沿って5箇所測定し、その平均値を直径または外接円直径(mm)とした。
【0043】
[通線テスト]
内径14mmの配管(市販品)を図2に示すように形設し、AからBへとリード線を通線作業した場合のリード線の通線性について次の3段階で評価した。また、AからBまでのリード線の通線所要時間についても測定した。
○:AからBまで、途中引っ掛かることなくスムーズに通線することができた、
△:AからBまでの半分以上の所までスムーズに通線することができたが、それ以降は途中で引っ掛かる所があった、
×:AからBまでの半分も行かないところで引っ掛かった。
【0044】
なお、各コーナーにおける配管は、電気配管用エルボ(市販品)を使用し、各直線部分a〜fの長さは次の通りとした。
a:1.0m
b:1.0m
c:3.7m
d:11.0m
e:3.7m
f:5.0m
【0045】
[実施例1〜4]
芯部にPET樹脂(東レ社製 T701T)、鞘部にPET(東レ社製 T701T)と表1に示した種類、添加量の無機粒子(ニートレック製ガラスビーズ)の混合物を使用し、これらをそれぞれ2基のエクストルダー型複合紡糸機に供して、300℃の温度で溶融混練した後、表1に示す芯鞘複合比率で芯鞘複合口金孔から押し出した。
【0046】
そして、押し出された未延伸糸を、冷却水槽の表面を動揺させながら60〜90℃で冷却固化した後、PET樹脂のガラス転移以上の熱媒温度で4.0〜8.5倍に1段または2段に延伸し、次いで0.85〜1.0倍に弛緩ないし定長熱処理することにより、まず芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0047】
次に、得られた芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントを3本引き揃え、Z撚りに34ターン/mに撚り合わせた後、乾熱浴中で熱固定し、外接円直径が2.9mmのリード線を製造した。
【0048】
得られたリード線の各評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例5]
実施例1において、無機粒子を昭和電工製の炭化珪素の粒度番手#60に変更した以外は、同様にして得られたリード線の評価結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1]
実施例1において、無機粒子であるガラスビーズ#60の含有量を3重量%に変更した以外は、同様にして得られたリード線の評価結果を表1に示す。
【0051】
[比較例2]
実施例1において、無機粒子であるガラスビーズ#60の含有量を50重量%に変更し、同様に紡糸・延伸したところ、延伸時に糸切れが生じてしまい芯鞘複合モノフィラメントを得ることができなかった。
【0052】
[比較例3]
PET樹脂単独を紡糸機に供し、300℃の温度で溶融した後、口金孔から押し出した。そして押し出された未延伸糸を冷却水槽の表面を動揺させながら60〜90℃で冷却固化した後、合成樹脂組成物のガラス転移以上の熱媒温度で4.0〜8.5倍に1段または2段に延伸し、次いで0.85〜1.0倍に弛緩ないし定長熱処理することにより、まず合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0053】
次に、得られた合成樹脂モノフィラメントを3本引き揃え、Z撚りに34ターン/mに撚り合わせた後、乾熱浴中で熱固定し、外接円直径が2.9mmのリード線を製造した。得られたリード線の各評価結果を表1に示す。を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から分かるように、本発明のリード線は、通線性が十分に優れたものである。
【0056】
これに対して、本発明の条件に満たないリード線、具体的には無機粒子の含有量を3重量にしたリード線(比較例1)は、通線性が実施例に比べて低く、無機粒子含有量を50重量%にした場合(比較例2)は、紡糸時の延伸で糸切れを生じて芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントが得られず、また、PETのみからなる合成樹脂モノフィラメントを使用したリード線(比較例3)は、通線性が実施例に比べて低いという結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のリード線は、通線抵抗が極めて小さく、配管内をスムーズに通線することができるため、特に近年小経化しつつある配管内に、電気配線および通信ケーブルを効率よく配線することができる。
【0058】
また、本発明のリード線には、必要に応じてその端末に電気接続用端子を接着、融着またはかしめて使用することができ、さらには通信ケーブル通線用リード線以外の用途として、プルコードなどにも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のリード線の一例を示した斜視図である。
【図2】実施例において通線性評価に使用した配管の平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 リード線
2 合成樹脂モノフィラメント
3 無機粒子
A 通線性評価用配管の入口
B 通線性評価用配管の出口
a〜f 通線性評価用配管の各部の長さ(m)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状物を配管内に配線するに際して使用する通線用リード線であって、芯部にポリエステル系樹脂、鞘部にポリエステル系樹脂95〜60重量%と無機粒子5〜40重量%との混合物を使用してなる芯鞘複合構造合成樹脂モノフィラメントを構成素材の少なくとも一部とすることを特徴とする通線用リード線。
【請求項2】
前記芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントの芯部/鞘部複合比率が、重量比で70〜95/30〜5の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の通線用リード線。
【請求項3】
前記無機粒子の粒径が、研磨材粒度JIS R6001に示される番手で#46〜#500の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の通線用リード線。
【請求項4】
前記芯鞘複合合成樹脂モノフィラメントを少なくとも1本使用して複数本のモノフィラメントが撚り合わされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の通線用リード線。
【請求項5】
直径または外接円直径が2.0〜3.5mmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の通線用リード線。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−130999(P2009−130999A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301440(P2007−301440)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】