説明

通船ゲート

【課題】 簡易な構成により浮沈させることができ、製造コスト、およびメンテナンスコストを大幅に削減することのできる通船ゲートを提供する。
【解決手段】 網場13の一部に対向して垂設された一対のガイド部材2a,2bと、前記各ガイド部材2a,2b間に上下に移動可能に支持され、内部が空洞に形成された浮子4a,4bと、前記浮子4a,4b内に空気を流出入させるための空気源10a,10bと、前記浮子4a,4bの下部に形成され、前記浮子4a,4b内に水を流出入させる水出入口6と、前記浮子4a,4bの下面に長手方向に張設された網11と、前記網11の下縁に配設された重り12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河や貯水池、ダム等に設置され、塵芥や流木等の漂流物を集積するための網場において、網場の一部を開閉して船舶の通船を可能とする通船ゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、河や貯水池、ダム等において、塵芥や流木等の漂流物を集積するために網場が設置され、この網場には、船舶が通過する際に一部を沈下させ、船舶が通過した後、再びこの一部を浮上させて網場を構成する通船ゲートが設けられていた。
【0003】
このような従来の通船ゲートの一例としては、網場の途中に通船ゲートが設けられ、この通船ゲートは、枠柱と横枠、プラットホームとからなる扉体挿入用枠体に、外枠と網とからなる扉体の側部が挿入されて構成されている。なお、前記枠柱は、H型鋼に山型鋼を溶接して、扉体の側部が挿入される凹入溝が構成され、そこにレールが固着されている。さらに、扉体の両側部には、前記レールに上下動自在に嵌合するように嵌合材が設けられ、前記レールとの摩擦を軽減するためのライナーが前記レールに取付けられている。
【0004】
前記横枠の両端部には、スプロケットホイールを取付けた伝導軸が軸受で軸支されており、片方の前記枠柱の上部のプラットホームに減速機付電動機が配設され、減速機の出力軸に取付けられたスプロケットホイールとその真下の伝導軸に設けたスプロケットホイールとの間に駆動用チェーンが掛け渡され、前記両枠柱の上端に配設されたチェーンホイールと、その下方の伝道軸に配設されたスプロケットホイールとの間にチェーンが掛け渡され、そのチェーンの両端はそれぞれ扉体の上縁と下縁に連結されている。
【0005】
また、前記プラットホームのうち、一方のプラットホーム上の電動機の隣には開閉指令電波受信用の受信機と制御機が設けられ、他方のプラットホームには太陽電池パネルおよび蓄電池が配設されている。
【0006】
さらに、前記各プラットホームの下面にはそれぞれフロートが配設されており、前記通船ゲートを垂直に浮上保持しており、プラットホームの下面中央より前記プラットホームの巾だけの網を錘下して、流木、塵芥等の流出を阻止するようになっている。
【0007】
このような構成から、電動機を電波指令あるいは手動により駆動させることにより、スプロケットホイールを回転駆動させ、扉体を上下動させて通船ゲートを開閉することができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特公平2−16809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述したような従来の通船ゲートにおいては、通船ゲートを開閉させるための機械的構造が複雑となるとともに、重量も大きい為に、大きなゲート支持浮力が必要になり、浮力体が多くなるとともに、構造も大きくなる。これにより、製造コストが掛かるとともに、開閉駆動時の動力、メンテナンス等に費用が大きく掛かってしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、簡易な構成により浮沈させることができ、製造コスト、およびメンテナンスコストを大幅に削減することのできる通船ゲートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため本発明に係る通船ゲートの特徴は、網場の一部を開閉し、船舶の通船を可能とさせる通船ゲートにおいて、網場の一部に対向して垂設された一対のガイド部材と、前記各ガイド部材間に上下に移動可能に支持され、内部が空洞に形成された浮子と、前記浮子内に空気を流出入させるための空気源と、前記浮子の下部に形成され、前記浮子内に水を流出入させる水出入口と、前記浮子の下面に長手方向に張設された網と、前記網の下縁に配設された重りとを有している点にある。
【0012】
このような構成を採用したことにより、浮子の浮沈の際に機械的構造を必要としないため、製造コストを大幅に削減することができるとともに、メンテナンスの必要もなくなり、維持費用も大幅に削減することができる。
【0013】
また、本発明に係る通船ゲートの他の特徴は、前記一対のガイド部材の各底面に枠状のフレームを固定するとともに、前記一対のガイド部材の上部両側面から前記枠状のフレームにそれぞれステーを張設した点にある。
【0014】
このような構成を採用したことにより、各ガイド部材が、河やダムの水の流れによって流されることを防止して、通船ゲートが撓んでしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の通船ゲートによれば、構成が非常に簡易であり製造コストを大幅に削減することができるとともに、機械的構造を必要としないためメンテナンスコストを大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明に係る通船ゲートの実施形態について説明する。
【0017】
図1は本発明に係る通船ゲートの実施形態を示す正面図、図2は本実施形態の網場を示す上面図、図3は図1および図2のガイド部材の実施形態を示す斜視図、図4は図1の通船ゲートの開状態を示す正面図である。
【0018】
本実施形態における通船ゲート1は、図1および図2に示すように、河や貯水池、ダム等の表層部に浮くようにして張設された網場13の中間の一部に設けられている。具体的には、通船ゲート1を形成する左右一対のガイド部材2a,2bが網場13の端部にそれぞれ垂設されており、これらのガイド部材2a,2bの対向する面にはそれぞれ垂直方向にガイド溝3a,3bが形成されている。なお、前記ガイド溝3a,3bの上端部および下端部には、後述する各浮子4a,4bの突起部4cが抜けることを防止するための抜け止め部3cがそれぞれ形成されている。さらに、前記各ガイド部材2a,2bの各底面には、図3に示すように、枠状のフレーム17が固定されているとともに、前記各ガイド部材2a,2bの側面2c,2d,2e,2fの上部と、前記フレーム17の四隅とには、それぞれステー18が張設されており、河や貯水池、ダム等の水の流れにより、前記通船ゲート1が撓んでしまうことを防止するようになっている。
【0019】
また、前記網場13は、塵芥や流木等を集積するための網14に、複数の浮子15が配設されるとともに、前記網14を引張するための重錘となるチェーン等の重り16が下縁に張設されて形成されている。
【0020】
そして、前記各ガイド部材2a,2b間には、略円柱形状に形成され、内部が空洞に形成された2つの浮子4a,4bが直列配置され、これらの浮子4a,4bは、上面に複数のスペーサ7と、枠状に形成されたパイプ8により連結されている。さらに、前記各浮子4a,4bの長手方向における各外側にはそれぞれ突起部4cが形成されており、前記各ガイド部材2a,2bのガイド溝3a,3bに垂直方向に移動可能に支持されている。
【0021】
前記各浮子4a,4bの上部には、各浮子4a,4b内に空気を流出入させるための空気出入口5がそれぞれ配設されており、これらの空気出入口5はそれぞれエアホース9により空気源としてのコンプレッサ10a,10bに接続されている。
【0022】
また、前記各浮子4a,4bの下部には、前記各浮子4a,4b内に水を流出入させるための水出入口6がそれぞれ配設されており、前記各コンプレッサ10a,10bによる前記各浮子4a,4b内の空気圧の変化により水が流出入するようになっている。
【0023】
さらに、前記各浮子4a,4bの下面には、塵芥や流木等を集積するための網11が前記各浮子4a,4bの長手方向においてそれぞれ張設されており、これらの網11の下縁には、各網11を垂下させるための重錘となるチェーン等の重り12がそれぞれ張設されている。
【0024】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の通船ゲート1の作用について説明する。
【0025】
まず、船舶(図示せず)の通船を必要としないときには、各コンプレッサ10a,10bにより各浮子4a,4b内に空気を送込み、その空気圧により各浮子4a,4b内の水をそれぞれ水出入口6から排出させる。
【0026】
そして、各浮子4a,4b内に空気が充満され各浮子4a,4b内の水が排出されると、その浮力により各浮子4a,4bが各ガイド部材2a,2bのガイド溝3a,3bに沿って垂直に浮上し、各浮子4a,4bの下面にそれぞれ張設された網11が、浮上する各浮子4a,4bと、各網11の下縁に張設された重り12とにより引張されて拡開され、通船ゲート1が閉状態となって網場13の一部となり、塵芥や流木等を集積することができる。
【0027】
また、船舶が通船するときには、各コンプレッサ10a,10bにより各浮子4a,4b内の空気を吸気し、各浮子4a,4b内の空気が吸気されることにより、各浮子4a,4bの水出入口6から各浮子4a,4b内にそれぞれ水が流入し、そして、各浮子4a,4b内に水が充満されるとその重みにより各浮子4a,4bが各ガイド部材2a,2bのガイド溝3a,3bに沿って垂直に沈下し、これに伴って網11もフレーム17の空所部分を経て下方に沈下し、図4に示すように、通船ゲート1が開状態となり、通船が可能となる。そして、船舶が通過した後、再度各コンプレッサ10a,10bにより各浮子4a,4b内に空気を送込み、各浮子4a,4bを浮上させることにより、網場13の一部とすることができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の通船ゲート1によれば、網の巻き上げ用の機械的構造物を設けることなく、各コンプレッサ10a,10bにより各浮子4a,4b内の空気を流出入させることにより、各浮子4a,4b内の水量が変化して各浮子4a,4bの浮力が変化して浮沈動作を制御することができる。そして、機械的構造物を必要としないため、製造コストを大幅に削減することができるとともに、構造が簡易であるため、メンテナンスをほとんど必要としないため、メンテナンスコストを大幅に削減することができる。
【0029】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、本実施形態において、各ガイド部材2a,2b間に2つの浮子4a,4bを配置しているが、長い浮子を1つ配置してもよいし、3つ以上の浮子を連結して配置してもよい。また、各浮子4a,4bに配設された空気出入口5および水出入口6は、各浮子4a,4bに一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る通船ゲートの実施形態を示す正面図
【図2】本実施形態の網場を示す上面図
【図3】図1および図2のガイド部材の実施形態を示す斜視図
【図4】図1の通船ゲートの開状態を示す正面図
【符号の説明】
【0031】
1 通船ゲート
2a,2b ガイド部材
3a,3b ガイド溝
4a,4b 浮子
5 空気出入口
6 水出入口
7 スペーサ
8 パイプ
9 エアホース
10a,10b コンプレッサ
11 網
12 重り
13 網場
14 網
15 浮子
16 重り
17 フレーム
18 ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網場の一部を開閉し、船舶の通船を可能とさせる通船ゲートにおいて、
網場の一部に対向して垂設された一対のガイド部材と、
前記各ガイド部材間に上下に移動可能に支持され、内部が空洞に形成された浮子と、
前記浮子内に空気を流出入させるための空気源と、
前記浮子の下部に形成され、前記浮子内に水を流出入させる水出入口と、
前記浮子の下面に長手方向に張設された網と、
前記網の下縁に配設された重りと
を有することを特徴とする通船ゲート。
【請求項2】
前記一対のガイド部材の各底面に枠状のフレームを固定するとともに、前記一対のガイド部材の上部両側面から前記枠状のフレームにそれぞれステーを張設したことを特徴とする請求項1に記載の通船ゲート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−39950(P2007−39950A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224466(P2005−224466)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【出願人】(000120009)宇部樹脂加工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】