説明

通話を伴うプッシュ型情報通信システム

【課題】放送波を用いて、テレビ機器を通信回線に接続することなく、通話を伴うプッシュ型情報通信システムを実現する。
【解決手段】不特定多数が利用する公衆電話回線および放送を受信するテレビにおいて、二人の通話者が使用するテレビおよびクライアントが、排他的に使用するヘッダ情報を共有する。使用するチャンネルが電話音声によって両者で確認される。通話者の一方は、会話の流れに沿って送信したい任意の情報を選択して送信し、その任意の情報に前記ヘッダ情報が付加されて放送波に乗せて送出される。放送波を受信したテレビは、ヘッダ情報に基づいて通話先が送出した情報のみを抽出して自動的に画面表示する。これにより、他方がテレビの操作をすることなく、視聴覚情報を伴いながら電話で通話することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機、通信回線に接続されたコンピュータとテレビを併用した、通話を伴うプッシュ型情報通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
まもなくテレビがスマートテレビとして高度な機能を付加することが可能になることが想定されている。
電話機と通信回線に接続されたコンピュータを同時一体的に利用した、通話を伴うプッシュ型情報通信を実現するシステムは、特許第4648906号として平成22年12月17日付けで登録されている。この特許においては、不特定多数が利用する通信回線と電話回線の中で、通話者が用いる電話機と端末の一対一関係を特定し、電話機による通話と通信回線による視聴覚情報を併用することにより、通話を伴うプッシュ型情報通信システムを実現している。
この通話を伴うプッシュ型情報通信システムでは、一方の通話者がコンピュータ端末操作をできない高齢者でも、その通話先が任意に送出した情報が自動的に端末上に表示されることで、視覚情報を得ながら通話するという便益が提供される。
テレビがデジタル化、大型化、高精細化した現在、テレビ機器を情報端末として活用することにより、高精細大画面の視覚情報を併用する通話は、通信販売のみならず様々な新しい用途を生み出すとともに、従来はインターネットの恩恵を受けられていなかった高齢者にも簡単に使え、多くの便益を提供することが期待できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通話中に、通話先が送信した情報のみが自動的にテレビ画面に表示されれば、パソコン操作ができない者でも視覚情報を伴う通話という新しいコミュニケーション方法の便益を享受できる。
その場合、公衆電話回線、通信回線、放送波という不特定多数が利用する、それぞれが独立したネットワークにおいて、電話回線を接続している者が使用するテレビとコンピュータ機器の間において、一方から送信された情報のみが他方において選択的に受信されなければならない。
高齢者を含め誰でもが使えるという視点からは、新たな機器の購入、接続や初期設定が不要で、通常使用するテレビと電話機をそのまま使って利用できるという点が重要である。
本発明は、その際の選択的な情報の受送信方法を発明し、通話を伴うプッシュ型情報通信を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下、本明細書における用語の定義は以下のとおりとする。
電話回線は、公衆回線で接続された固定電話、携帯電話などの電話サービスやプロバイダーが提供するIP電話サービスの他、スカイプなど広義のインターネット電話も含む。電話機は、前記電話サービスを行う際の端末となるものを指し、マイクとスピーカーを備えたコンピュータやモバイル端末なども含む。
電話回線と通信回線は、別々でも同一のネットワークでも構わない。
放送波は、地上波、BS、CS、CATV、その他のアナログ、デジタルのいずれの放送波であってもよい。主にはデータ放送を想定している。
【0005】
本発明では、同時並行的に多数の通話者が通話を伴うプッシュ型情報通信を利用している状況下で、〔図1〕の任意の通話者Aと通話者Bが通話している場合において、通話者Bが31クライアントから送出した視聴覚情報が通話者Aの視聴している11テレビに自動的に表示される。
〔図1〕中では、11テレビ、23放送設備、21サーバ、31クライアントは各一つずつしか表示されていないが、実際には〔図2〕のように各テレビ、放送設備(チャンネル)とサーバ、クライアントは多数存在し、それぞれが独立して運用されている状況を前提としている。
その多数の中で、電話回線が接続された任意の10電話機と30電話機において、通話者Bが31クライアントから送出した情報が通話者Aの視聴する11テレビのみに選択的に表示されなければならない。更に、パソコン操作ができない高齢者でも利用可能とするには、利用する前にテレビに何らかの初期設定をする必要がないことが望まれる。
23放送設備は、通話を伴うプッシュ型情報通信を行う不特定多数の利用者を対象に、多彩な情報を放送波に乗せて送出している。11テレビは、23放送設備が送出する多くの情報の中から通話者Bが送出した情報のみを抽出し、表示する。23放送設備は、通常はデータ放送として情報を送出することが想定されるが、11テレビが受信できれば方法は任意である。
11テレビが、23放送設備が送出する多数の情報の中から、通話者Aの通話先である通話者Bが使用する31クライアントの送出した情報のみを選択的に取得するためには、23放送設備は送出情報に何らかのヘッダ情報(以下、単にヘッダと言う。)を付加し、11テレビはそのヘッダに基づいて、31クライアントが送出した情報のみを選択する。
従って本発明は、▲1▼31クライアントがヘッダを取得し、21サーバにヘッダを送信するプロセスと、▲2▼31クライアントが送出した情報が21サーバを介してヘッダを付加されて23放送設備に送信され、放送波に乗せて送出されるプロセスと、▲3▼11テレビにおいて通話者Bが送出した情報のみが選択されて自動的に画面表示されるプロセスで構成される。
【0006】
11テレビと10電話機は、通常は独立した機器であり、両者を接続する12通信回線もない。
▲1▼31クライアントがヘッダを取得し、21サーバにヘッダを送信するプロセスには、幾つかの方法が考えられるが、基本は、11テレビと31クライアントが同一ヘッダを共有し、不特定多数の情報を中継する21サーバにおいて当該ヘッダが他の利用者が使用するヘッダと異なり視聴するチャンネルで排他的に使用されるヘッダであることが確認されることである。
一つ目の方法は、通話者Aが初期設定として11テレビに10通話機の電話番号を登録し、30電話機は発信者電話番号として取得した電話番号情報をヘッダとして31クライアントを介して21サーバに送信する方法がある。
電話番号は機器固有のものであるため、11テレビには複数の電話番号を登録しておいても、11テレビは23放送設備が送出した情報の中から登録された中の任意の電話機の通話先の31クライアントの情報を選択的に抽出できる。
11テレビに登録する情報を電話番号ではなく任意のコードとし、当該登録したコードを10電話機から音声で通話者Bに伝え、あるいはプッシュボタン操作で30電話機に伝えるようにしても良い。
二つ目の方法は、21サーバが23放送設備を介して送出し、11テレビに表示された単数ないし複数の固有コード候補の中から、通話者Aが選択して、テレビのボタン操作で選択情報を11テレビにおいて特定し、同一情報を音声で通話者Bに伝えて通話者Bが31クライアントに入力し、ないしは10電話機のボタン操作で30電話機に伝え、CTI(computer telephony integration)によって31クライアントに伝わり、それが21サーバに送信されて、同一コードが他に利用されていないことが確認され、ヘッダが確定する。
この場合、23放送設備が送出する固有コード候補の情報は、数字の他、熊やリンゴその他の絵として音声で伝えさせるようにしても良い。
三つ目の方法は、11テレビが自動的に固有コードを決定して表示し、それを通話者Aが音声ないしプッシュボタン操作で通話者Bないし30電話機に伝え、31クライアントから21サーバに送信する方法である。
この場合、21サーバで同時刻に同一コードをヘッダとして利用する者が複数いると判明した場合は、それらの者が利用する11テレビに別のコードを選択する旨の情報を送出し、それぞれに固有のヘッダを選択させるようにする。
このように、ヘッダの決定に当っては、通話者Aが11テレビに入力して決定する方法、23放送設備が送出した情報の中からテレビリモコン操作で選択する方法、テレビが自動的に決定する方法などがあり、それらを組み合わせた方法でも良い。例えば、23放送設備が送出した情報の中から選択したコードに電話番号の下4桁を付加したものをヘッダとしても良い。
二つ目、三つ目の方法は、テレビの初期設定が不要である。もし複数の利用者が同時刻に同一ヘッダを選択したことが21サーバで確認された場合は、その情報が31クライアントに伝えられ、同一ヘッダを選択した利用者に別の複数の固有コードが送信され、同様の過程を繰り返して排他的に利用するヘッダを確定する。
尚、11テレビと10電話機を接続する12通信回線がある場合は、21サーバから送出された複数のヘッダ候補が11テレビにおいて自動的に選択され、それが14電話回線、32、33通信回線を介して自動的に21サーバに送信され、21サーバにおいて排他的に使用されていることが確認され、あるいは前記の過程が複数回繰り返して排他的に使用されていることが確認され、ヘッダが決定されるようにしても良い。
以上によって、11テレビが同一チャンネルにおいて排他的に利用するヘッダが決定され、その情報が31クライアントおよび21サーバにおいて共有され、21サーバにおいて排他的であることが確認される。21サーバにおいては、当該排他的に使用されるヘッダと31クライアントのIPアドレスが紐付けられ、31クライアントの送出した情報のみに前記排他的に使用されるヘッダが付加される。
【0007】
▲2▼31クライアントが送出した情報が21サーバを介してヘッダを付加されて23放送設備に送信され、放送波に乗せて送出されるプロセスは、以下のとおりである。
通話者Bは、情報送信に用いるチャンネル名を音声で通話者Aに伝え、通話者Aはテレビのリモコン操作でそのチャンネルを選択する。
または通話者Aが視聴しているチャンネル名を音声で通話者Bに伝え、通話者Bは前記チャンネルの放送設備に情報を送信する21サーバを選択する。この操作は、▲1▼の操作と並行して行われる。この場合の21サーバの選択において、通話者Bは任意のサーバ21を選択して31クライアントを接続し、当該21サーバに対し、通話者Aが視聴している23放送設備に情報を送信するように指定することも可能であるが、その場合は、当該23放送設備に付属するサーバにおいて、ヘッダの排他性が確認されている必要がある。
21サーバでは、31クライアントから先に送信されたヘッダと、31クライアントのIPアドレスが紐付けられる。
通話者Aと通話者Bは、電話で会話している。その会話の流れに沿って、通話者Bは通話者Aが求める情報を推測して特定し、あるいは通話者Bが通話者Aに伝達したい情報を決定し、31クライアントから21サーバに送出する。
21サーバは、31クライアントから受信した情報に先に取得したヘッダを付加して23放送設備に送信し、23放送設備は更に送出された情報がプッシュ型情報通信用の情報であることを示すヘッダを付加して13放送波に乗せて送出する。
【0008】
▲3▼11テレビにおいて通話者Bが送出した情報のみが選択されて自動的に画面表示されるプロセスは、以下のとおりである。
23放送設備からは、同放送設備のチャンネルをプッシュ型情報通信に利用する多数の者の送信情報が13放送波に乗せて送出される。
11テレビは、受信した情報がプッシュ型情報通信用の情報である場合に、その中から排他的に使用しているヘッダの付加された情報のみを抽出し、それまで表示していた画面に代えて、当該情報を画面表示し、また聴覚情報として流す。
10電話機と30電話機間の通話が終了すると、その終了の旨の情報が21サーバ、23放送設備を介して11テレビに送信され、プッシュ型情報通信が終了する。
この動作は、一定時間で自動的に終了するものとして、その時間内に31クライアントが継続要求情報を送信することで継続させるようにしても良い。
【発明の効果】
【0009】
以上により、通話者Aは、不特定多数の中の任意の相手と、テレビを通信回線に接続することも特別な機器を購入することなく、煩わしい初期設定も必要なく、既存の固定電話ないし携帯電話を用いて、通話を伴うプッシュ型情報通信を行うことが可能になる。
通常のテレビ放送を視聴中に、画面表示された番号に電話を掛けてプッシュ型情報通信に移行するような、テレビ放送と連動した『通話を伴うプッシュ型情報通信』も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の機器の基本となる構成
【図2】不特定多数の電話機、テレビ、クライアントと複数のサーバ、放送設備がある環境を示すイメージ図
【符号の説明】
【0011】
10、30:電話機、11:テレビ、31:クライアント(コンピュータ端末)
21:プッシュ型情報通信に用いるサーバ、23:放送設備、22、32、33:通信回線 14:電話回線、12:テレビと電話機を接続する通信回線(原則的には必要ない。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不特定多数が利用する公衆電話回線と放送を受信するテレビを併用し、通話する者の一方が任意のタイミングに任意に選択して送出した情報が、放送波を介して他方の通話者が視聴するテレビにおいて受信され、前記通話する者の一方が送出した情報のみが抽出されて自動的に画面表示されることにより、視聴覚情報を伴いながら通話することが可能になるシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−85205(P2013−85205A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235443(P2011−235443)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(598082950)
【Fターム(参考)】