説明

通路形成部材結合部のシール構造

【課題】第1通路形成部材の第2通路形成部材への合わせ面に設けられる無端状の装着溝に装着されるシール部を有するシール部材が第1および第2通路形成部材間に介装される通路形成部材結合部のシール構造において、シール部材の組み付けの容易化を図るとともに組付けミスが生じないようにしつつ、シール部の全周均等な締め代を確保する。
【解決手段】シール部材12は、シール部12aと、シール部12aの周方向に間隔をあけた複数箇所から合わせ面10に沿って側方に突出する耳部12bと、合わせ面10と直交する方向で耳部12bから第2通路形成部材6とは反対側にそれぞれ突出する突部12cとを一体に有するように形成され、合わせ面10に、耳部12bをそれぞれ収容するようにして装着溝19に連なる凹部21と、前記突部12cを圧入するようにして凹部21に一端を開口させる圧入孔22とが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に結合される第1および第2通路形成部材に結合状態で相互に連通する通路がそれぞれ設けられ、第1通路形成部材の第2通路形成部材への合わせ面に、第1通路形成部材に設けられる通路の前記合わせ面への開口端を無端状に囲む装着溝が設けられ、その装着溝に装着されて無端状に連なるシール部を有するシール部材が第1および第2通路形成部材間に介装される通路形成部材結合部のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
環状の装着溝に装着されるシール部材の外周に、前記装着溝の外周側壁面の複数箇所に突設された突起を弾発接触させることで、シール部材を複数の突起および装着溝の内周壁面間で挟持するようにしたものが特許文献1で知られており、また装着溝に装着されるシール部材の内周壁および外周壁の複数箇所に突設される突起を装着溝の内周壁面および外周壁面に弾発接触せしめることでシール部材を装着溝内で保持するようにしたものが特許文献2で知られている。さらに装着溝の底面に設けられる凹部に、装着溝に装着されるシール部材に突設された凸部を圧入することでシール部材を装着溝内で保持するようにしたものが特許文献3で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−35152号公報
【特許文献2】特開2008−31964号公報
【特許文献3】実開昭59−73578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示されるようにシール部材の外周に装着溝の外周側壁面の突起を弾発接触させるもの、ならびに上記特許文献2で開示されるようにシール部材の内周壁および外周壁の複数箇所に突設される突起を装着溝の内周壁面および外周壁面に弾発接触させるものでは、突起が配置される部分ではシール部材が径方向に逃げるスペースがなく、一対の通路形成部材の結合状態では突起が配置される部分と、他の部分とでシール部材の締め代が変わってしまい、シール部材の周方向で均等な締め代を設定することが困難である。また上記特許文献3で開示されたものでは、凹部への凸部の圧入位置を目視することができず、正確に圧入できているか否かを確認することができないので、シール部材の組み付けミスを排除しきれない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、シール部材の組み付けの容易化を図るとともに組付けミスが生じないようにしつつ、シール部の全周均等な締め代を確保し得るようにした通路形成部材結合部のシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、相互に結合される第1および第2通路形成部材に結合状態で相互に連通する通路がそれぞれ設けられ、第1通路形成部材の第2通路形成部材への合わせ面に、第1通路形成部材に設けられる通路の前記合わせ面への開口端を無端状に囲む装着溝が設けられ、その装着溝に装着されて無端状に連なるシール部を有するシール部材が第1および第2通路形成部材間に介装される通路形成部材結合部のシール構造において、前記シール部材は、前記シール部と、該シール部の周方向に間隔をあけた複数箇所から前記合わせ面に沿って側方に突出する耳部と、前記合わせ面と直交する方向で前記耳部から第2通路形成部材とは反対側にそれぞれ突出する突部とを一体に有するように形成され、第1通路形成部材の前記合わせ面に、前記耳部をそれぞれ収容するようにして前記装着溝に連なる凹部と、前記突部を圧入するようにして前記凹部に一端を開口させる圧入孔とが設けられることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記耳部が、前記合わせ面に直交する方向で第1および第2通路形成部材の結合状態での前記シール部の厚みよりも薄く形成されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記突部の側面に、有底である前記圧入孔への圧入方向に沿って延びる切欠き溝が該突部の全長にわたって形成されることを第3の特徴とする。
【0009】
さらに本発明は、第1〜第3の特徴の構成のいずれかに加えて、前記シール部の周方向に間隔をあけた2箇所に、該シール部から外側方に突出する前記耳部が連設されることを第4の特徴とする。
【0010】
なお実施の形態のスロットルボディ5が本発明の第1通路形成部材に対応し、実施の形態の吸気管6が本発明の第2通路形成部材に対応し、実施の形態の第1合わせ面10が本発明の合わせ面に対応する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば、シール部材は、無端状に連なるシール部と、該シール部の周方向に間隔をあけた複数箇所から側方に突出する複数の耳部と、それらの耳部から突出する突部とを一体に有するように形成されており、第1通路形成部材の前記合わせ面に、シール部を装着するための無端状の装着溝と、耳部をそれぞれ収容するようにして装着溝に連なる凹部と、突部を圧入するようにして凹部に一端を開口させる圧入孔とが設けられるので、圧入孔に突部を圧入することで、シール部材が裏返しで組付けられたり、周方向にずれた位置で組み付けられたりする誤組み付けが生じるのを防止しつつ、シール部を装着溝内に装着した状態でシール部材を第1通路形成部材に安定して保持することができ、搬送や輸送中にシール部材が第1通路形成部材から脱落するのを防止することができる。しかも圧入孔への突部の圧入作業を目視で確認しながら行うことができるので、作業ミスが生じるのを抑制することができる。また耳部がシール部から側方に突出するものであるので、複数の耳部が設けられている部分と、他の部分とでシール部の締め代が変わってしまうことはなく、シール部の周方向で均等な締め代を設定することができる。
【0012】
また本発明の第2の特徴によれば、第1および第2通路形成部材の結合状態でのシール部の厚みよりも薄くなるように耳部が形成されるので、耳部がシール部の締め代に影響を及ぼすことはなく、シール部の全周均等な締め代を確保することができる。
【0013】
本発明の第3の特徴によれば、有底の圧入孔への圧入方向に沿って突部の全長にわたって延びる切欠き溝が突部の側面に形成されるので、突部の圧入孔への圧入時に、圧入孔の閉塞端および突部間が密閉状態となってエアロックが生じることを防止し、組付け性の向上を図ることができる。
【0014】
さらに本発明の第4の特徴によれば、耳部が、シール部の周方向に間隔をあけた2箇所から外側方に突出するので、シール部材の組み付け時に両手で耳部を持って組み付けることが可能であり、組み付け作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】スロットルボディおよび吸気管の結合状態での縦断面図であって図2の1−1線に沿う断面図である。
【図2】図1の2−2線に沿って見たスロットルボディの正面図である。
【図3】シール部材を図1の3−3線矢視方向から見た図である。
【図4】図1の4矢示部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図1〜図4を参照しながら説明すると、先ず図1および図2において、第1通路形成部材であるスロットルボディ5には第1の通路7が設けられ、このスロットルボディ5と、図示しないエンジン本体との間に介設される第2通路形成部材としての吸気管6には、前記スロットルボディ5との結合によって第1の通路7に通じる第2の通路8が設けられる。
【0017】
前記スロットルボディ5および前記吸気管6には、複数のボルト9…によって結合されるフランジ部5a,6aがそれぞれ一体に設けられ、それらのフランジ部5a,6aに形成されて相互に対向する平坦な第1および第2合わせ面10,11間にシール部材12が介装される。
【0018】
前記スロットルボディ5には、第1の通路7を横切るスロットル弁軸13が回動可能に支承されており、このスロットル弁軸13には、第1の通路7内に配置されるバタフライ形のスロットル弁14が、たとえば一対のねじ部材15,15によって締結される。
【0019】
前記スロットルボディ5から突出した前記スロットル弁軸13の一端部にはスロットルドラム16が固定されており、図示しないスロットルワイヤが前記スロットルドラム16に巻き掛け、連結される。またスロットルドラム16およびスロットルボディ5間には、前記スロットル弁14を閉じる側に前記スロットル弁軸13を付勢する戻しばね17が設けられる。さらに前記スロットル弁軸13の他端部に連結されるスロットルセンサ18が前記スロットルボディ5に取り付けられる。
【0020】
前記スロットルボディ5の前記吸気管6への合わせ面、すなわちスロットルボディ5と一体のフランジ部5aに形成される第1合わせ面10には、第1の通路7の第1合わせ面10への開口端を無端状に囲む装着溝19が設けられるとともに、前記スロットル弁14を迂回して前記スロットルボディ5に設けられるバイパス通路20の下流端が前記装着溝19よりも内方で開口される。
【0021】
図3および図4を併せて参照して、前記シール部材12は、前記装着溝19に装着されて無端状に連なるシール部12aと、該シール部12aの周方向に間隔をあけた複数箇所たとえば2箇所から第1合わせ面10に沿って側方たとえば外側方に突出する耳部12b,12bと、第1合わせ面10と直交する方向で前記耳部12b…から前記吸気管6とは反対側にそれぞれ突出する突部12c,12cとを一体に有するように形成される。
【0022】
一方、前記スロットルボディ5の第1合わせ面10には、前記耳部12b…をそれぞれ収容するようにして前記装着溝19に連なる凹部21…と、前記突部12c…を圧入するようにして前記凹部21…に一端を開口させる有底の圧入孔22…とが設けられる。
【0023】
前記シール部12aは、スロットルボディ5および吸気管6間に挟まれていない自然な状態では円形の横断面形状を有するように形成される。前記耳部12b…は、前記シール部12aから外側方に間隔をあけた位置に配置される円板部分12ba…と、前記シール部12aおよび前記円板部分12ba…間を連結する連結首部分12bb…とから成る。しかも前記装着溝19および前記凹部21…の深さは同一に設定されており、前記シール部12aを前記装着溝19に装着したときに前記円板部分12ba…は前記凹部21…の底壁に当接する。しかも前記耳部12b…は、前記スロットルボディ5および前記吸気管6の結合状態での前記シール部12aの第1合わせ面10に直交する方向の厚みよりも薄く形成されており、シール部材12を挟んでスロットルボディ5および吸気管6が結合された状態で、前記耳部12b…および第2合わせ面11間には、図4で明示するように間隙23が生じることになる。
【0024】
前記突部12c…は、前記耳部12b…における前記円板部分12ba…の中央部に突設されており、前記突部12c…を外方から囲む環状壁部24…を形成する環状凹部25…が、前記突部12c…を囲むようにして前記円板部分12ba…に設けられる。
【0025】
また前記突部12c…の側面には、前記圧入孔22…への圧入方向26に沿って延びる切欠き溝27…が該突部12c…の全長にわたって形成される。
【0026】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、スロットルボディ5および吸気管6間に介装されるシール部材12は、スロットルボディ5の吸気管6への合わせ面である第1合わせ面10に設けられて第1の通路7の第1合わせ面10への開口端を囲む無端状の装着溝19に装着されて無端状に連なるシール部12aと、該シール部12aの周方向に間隔をあけた複数箇所から第1合わせ面10に沿って側方に突出する耳部12b…と、第1合わせ面10と直交する方向で前記耳部12b…から吸気管6とは反対側にそれぞれ突出する突部12c…とを一体に有するように形成され、第1合わせ面10に、前記耳部12b…をそれぞれ収容するようにして前記装着溝19に連なる凹部21…と、前記突部12c…を圧入するようにして前記凹部21…に一端を開口させる圧入孔22…とが設けられるので、圧入孔22…に突部12c…を圧入することで、シール部材12が裏返しで組付けられたり、周方向にずれた位置で組み付けられたりする誤組み付けが生じるのを防止しつつ、シール部12aを装着溝19内に装着した状態でシール部材12をスロットルボディ5に安定して保持することができ、搬送や輸送中にシール部材12がスロットルボディ5から脱落するのを防止することができる。
【0027】
しかも圧入孔22…への突部12c…の圧入作業を目視で確認しながら行うことができるので、作業ミスが生じるのを抑制することができる。また耳部12b…がシール部12aから側方に突出するものであるので、複数の耳部12b…が設けられている部分と、他の部分とでシール部12aの締め代が変わってしまうことはなく、シール部12aの周方向で均等な締め代を設定することができる。
【0028】
また前記耳部12b…が、前記スロットルボディ5および前記吸気管6の結合状態での前記シール部12aの第1合わせ面10に直交する方向の厚みよりも薄く形成されるので、耳部12b…がシール部12aの締め代に影響を及ぼすことはなく、シール部12aの全周均等な締め代を確保することができる。
【0029】
また有底である前記圧入孔22…への圧入方向26に沿って前記突部12c…の全長にわたって延びる切欠き溝27…が前記突部12c…の側面に形成されるので、前記突部12c…の圧入孔22…への圧入時に、前記圧入孔22…の閉塞端および前記突部12c…間が密閉状態となってエアロックが生じることを防止し、組付け性の向上を図ることができる。
【0030】
さらに前記シール部12aの周方向に間隔をあけた2箇所に、該シール部12aから外側方に突出する耳部12b…が連設されるので、シール部材12の組み付け時に両手で前記耳部12b…を持って組み付けることが可能であり、組み付け作業が容易となる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0032】
たとえば上記実施の形態では、第1通路形成部材をスロットルボディ5とし、第2通路形成部材を吸気管6として説明したが、それとは逆に、第1通路形成部材を吸気管6とし、第2通路形成部材をスロットルボディ5としてもよい。また本発明は、スロットルボディ5および吸気管6の結合部のシール構造に限定されるものではなく、結合時に連通する通路をそれぞれ有する第1および第2通路形成部材の結合部のシール構造として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
5・・・第1通路形成部材であるスロットルボディ
6・・・第2通路形成部材である吸気管
7,8・・・通路
10・・・合わせ面である第1合わせ面
12・・・シール部材
12a・・・シール部
12b・・・耳部
12c・・・突部
19・・・装着溝
21・・・凹部
22・・・圧入孔
26・・・圧入方向
27・・・切欠き溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に結合される第1および第2通路形成部材(5,6)に結合状態で相互に連通する通路(7,8)がそれぞれ設けられ、第1通路形成部材(5)の第2通路形成部材(6)への合わせ面(10)に、第1通路形成部材(5)に設けられる通路(7)の前記合わせ面(10)への開口端を無端状に囲む装着溝(19)が設けられ、その装着溝(19)に装着されて無端状に連なるシール部(12a)を有するシール部材(12)が第1および第2通路形成部材(5,6)間に介装される通路形成部材結合部のシール構造において、前記シール部材(12)は、前記シール部(12a)と、該シール部(12a)の周方向に間隔をあけた複数箇所から前記合わせ面(10)に沿って側方に突出する耳部(12b)と、前記合わせ面(10)と直交する方向で前記耳部(12b)から第2通路形成部材(6)とは反対側にそれぞれ突出する突部(12c)とを一体に有するように形成され、第1通路形成部材(5)の前記合わせ面(10)に、前記耳部(12b)をそれぞれ収容するようにして前記装着溝(19)に連なる凹部(21)と、前記突部(12c)を圧入するようにして前記凹部(21)に一端を開口させる圧入孔(22)とが設けられることを特徴とする通路形成部材結合部のシール構造。
【請求項2】
前記耳部(12b)が、第1および第2通路形成部材(5,6)の結合状態での前記シール部(12a)の前記合わせ面(10)に直交する方向の厚みよりも薄く形成されることを特徴とする請求項1記載の通路形成部材結合部のシール構造。
【請求項3】
前記突部(12c)の側面に、有底である前記圧入孔(22)への圧入方向(26)に沿って延びる切欠き溝(27)が該突部(12c)の全長にわたって形成されることを特徴とする請求項1または2記載の通路形成部材結合部のシール構造。
【請求項4】
前記シール部(12a)の周方向に間隔をあけた2箇所に、該シール部(12a)から外側方に突出する前記耳部(12b)が連設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の通路形成部材結合部のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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