説明

造型複合材料

【解決手段】この発明は、造型複合材料の生産の方法およびその方法を通して得られる材料に関する。特に、摩擦係数が表面層の組成を変えることによって変更されるディスクブレーキ用複合セラミック材料のディスクを得る方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
より一般的な側面において、本発明は造型複合材料を製造する方法、および前記方法を用いて得ることができる材料、特にブレーキシステム用に関する。
【発明の開示】
【0002】
衝撃、圧縮および摩擦によって発生する熱に対する耐性を要求する用途での複合セラミック材料の使用は、従来知られている。これらの特性は、実際には純粋セラミック材料の固有脆性の理由で純粋セラミック材料によって保証できない。
【0003】
有用な用途は、ブレーキ装置、特にディスクブレーキ用ディスクの調製用である。
【0004】
これらの複合セラミック材料は、実質的にカーボンからなるフィラメントの束、凝集樹脂、ピッチおよび他の添加剤を含み、従来の次の方法に従って製造される:
フィラメントの束が凝集樹脂、ピッチおよび他の添加剤と混合され、その混合物は熱の助けおよび圧力の適用で造型される型内に置かれ、造型半完成品を産する。半完成品は、それから炉内にて樹脂の炭化または熱分解をもたらすような温度で第1焼成に供する。
【0005】
この焼成の効果により半完成品は炭化または熱分解温度での蒸発物質の損失の理由で多少の気孔率を獲得する。次いで、焼成された半完成品はシリコンの存在、シリコンの溶融および前記半完成品の気孔への湿潤をもたらすような温度での第2焼成に供する。
【0006】
シリコンによる湿潤は、カーボンフィラメントの束の結合力を増大させることができ、同時に溶融シリコンが第2焼成の条件下で半完成品のカーボンと部分的に反応し、前記材料の結合特性を改善する効果を有する炭化ケイ素を形成する。
【0007】
次いで、これら材料の組成物は材料の構造を通して迅速に伝達し、その完全な崩壊をもたらす熱および圧縮ストレスによる破損を防ぐために強化繊維の添加を通して改善される(特許出願EP 1 124 071)。ディスクブレーキのための強化繊維を含む造型複合材料のディスクの使用は、ユーザのリスクを適切に低減する。
【0008】
次いで、これらの複合セラミック材料は、シリケート、炭化物、特化ケイ素または純粋シリコンの層で被覆することによってさらに改善された。この方法において、ある期間に亘ってシステムのブレーキ特性の変化を起こし、それゆえそれらが固定される乗り物の性能を低減させるカーボンの重大な消失および表面空隙の形成を持つ材料上の表面酸化現象は回避する(国際出願WO03/056206)。従来のブレーキシステムで知られる複合材料の使用は以下の有益さが得られることを有する:
・高温および圧縮ストレス耐性、
・材料の組成中への強化繊維の存在のために、構造を通しての損失の伝達、それによる完全な崩壊は回避される。
【0009】
・摩擦係数を含むシステムのブレーキ特性は、材料を酸化から保護する表面被覆の適用で実質的に変化しないままになる。
【0010】
この複合材料の優れた特性を耐えることがないので、それは乗り物の種類およびブレーキ性能要求によって容易に変化することができない特定の摩擦係数を有するブレーキシステムを生産するのに使用できる。事実、摩擦係数を変化できるようにディスクおよび/またはパッドの組成を変更することが必要である。しかしながら、そのようなブレーキシステムの材料の変更は高価になることに加え、亀裂、分割または他の構造欠陥を供するかもしれない材料自身の機械的性質に多大な衝撃を有する。
【0011】
異なる種類の乗り物は、それらが意図する使用に依存して異なるブレーキ性能要求を有することが知られている。例えば、競争自動車はブレーキに関する限り、普通使用の自動車のそれと異なる性能を要求し、それらはまた異なる摩擦係数を要求する。
【0012】
それゆえ各種の輸送手段(例えば競争、スポーツ、旅行の乗り物)および本質的にある期間にわたって一定のままであるために特定の摩擦係数を選ぶことができるように非常に使い易くすべきである。この発明によって扱われる技術問題は、適用され、摩擦係数が本質的にある期間にわたって一定のままである乗り物の種類に基づいて予め決定される摩擦係数に特徴付けられる自動車用ブレーキシステムを供することである。
【0013】
ディスクの表面層に性質に影響を受けること、ディスクの支持層の組成および変化しないパッド材料の組成を維持することによってブレーキシステムの摩擦係数を変更できることを示す。驚くべきことに、実質的にカーボンからなるフィラメント、樹脂およびSiCを含む表面層用組成物を使用すること、それら成分のパーセントおよびカーボンフィラメントの長さ、シリケイション後のSiCの粒子寸法のような他のパラメータを適切に変化させることによって、所期の摩擦係数を有する摩擦表面が得られることがわかった。さらに、後者はセラミック材料が供される無視し得る酸化の結果として本質的にある期間にわたって一定のままである。
【0014】
公知技術(WO 03/056206)において、化合物SiCは実質的にカーボンからなるフィラメントに存在するカーボンの一部とシリコンの間の反応の結果としてシリコン(シリケイション)との複合材料の処理の間、その場で形成された。
【0015】
一方、この場合SiCは表面層用混合物に含まれる出発材料の1つである。
【0016】
3つの相はシリケイション相−C,Si,SiC−間に形成し、後者は出発SiCと前記フィラメントのカーボンとシリコンの反応を通してその場で形成されるそれの両方を含む。3相が相互に作用する個所は、“C−Si−SiC境界面”として後に提示される。フィラメント、SiCおよび樹脂の初期パーセントを変動することによって、高もしくは低数、またはC−Si−SiC境界面の総欠乏を持つ摩擦係数が得られ、かつそれらは摩擦が高、中、低のいずれかであるかそれぞれ決定することが明らかである。実質的にカーボンからなる前記フィラメントの長さおよびSiCの粒子寸法もまた摩擦の種類に影響する。高摩擦値は、これら2つのパラメータの高値に対応し、かつ逆の場合も同様である。
【0017】
それゆえ3つのパラメータ、すなわち表面層の組成、フィラメントの長さおよびSiCの粒子寸法、を同様に変動させることによって、所期の摩擦値を有する摩擦表面がシリケイションの後に得ることができる。
【0018】
この発明は、支持層および前記支持層の少なくとも1つの表面に対応する少なくとも1つの表面層を備え、前記支持層が実質的にカーボンからなるフィラメント、バインダ、添加剤および可能な強化繊維であり、前記表面層において前記フィラメント、樹脂およびSiCのパーセント組成、前記フィラメントの長さおよびSiCの粒子寸法は得るために望ましく、以下の製造方法に用いて達成できる摩擦係数に関連して変動することを特徴とする複合セラミック材料に関する。
【0019】
用語“実質的にカーボンからなるフィラメント”は、合成産物、例えばポリアクリロニトリル(PAN)およびポリシラザン、または天然産物、例えばピッチ、植物繊維および木の種々の製品の熱分解によって得られる繊維材料を意味する。
【0020】
実質的にカーボンからなるフィラメントは3000〜50000ユニットで変動し、かつ2〜8μmの径を有するフィラメントのセットを含み、樹脂、例えばポリウレタン樹脂と随伴し含浸されるフィラメントの束から通常得られる。
【0021】
支持層に限っていえば、これらの束は30mm以下、好ましくは7〜10mm、典型的には約8mmの長さを有するようになるまで壊れ、最終的に混合物内に無作為に配置される。
【0022】
フィラメントの束は、一般に束を構成するユニット数、例えば3000,10000,50000および480、000ユニットにそれぞれ対応する3K,10K,50K,480K、などなどに基づいて決められる。
【0023】
これらは、好ましくは0.1〜2mm、より好ましくは0.3〜0.5mmの径を有する。
【0024】
前記バインダは、フェノール樹脂およびアクリル樹脂、パラフィン、ピッチ、ポリエステル等から選択される。好ましいバインダは、ピッチおよびフェノール樹脂から選択される。
【0025】
前記添加剤は、好ましくはグラファイト粉末、シリコン炭化物、または金属炭化物、金属窒化物のような無機材料の粒子である。
【0026】
本発明に係る前記複合セラミック材料は、またその材料の構造内、好ましくはその全形状に亘って、延出する強化繊維を含んでもよい。強化繊維の材料は、好ましくは炭素繊維を含む。SiC,Si34,TiCおよび金属、例えばシリコンとの相互作用の温度に耐えることができる白金のような他の材料も使用してもよい。強化繊維は、種々の手法で本発明に係る材料に組み込まれてもよい。例えば、強化繊維は予め決められた方向に位置する複数の束に配列してもよい。これらの方向は、前記束が織布で形成する場合、縦糸方向、横糸方向であってもよい。
【0027】
択一的に、強化繊維は非織り織布、例えばフェルトを含んでもよい。
【0028】
前記支持層は、前に規定された成分を次の量:実質的にカーボンからなるフィラメント40〜70%、好ましくは50〜60%、バインダ5〜30%、好ましくは15〜25%、添加剤0.5〜20%、好ましくは1〜15%および強化繊維0〜30%、で含む。全てこれらのパーセントは、混合物の体積あたりの体積であることがわかる。
【0029】
前記少なくとも1つの表面層は、異なるパーセントでSiC,実質的にカーボンからなるフィラメントおよび樹脂を含む。これらの樹脂は、好ましくはポリウレタン樹脂である。任意に、前記表面層はバインダ、強化繊維および添加剤を含んでもよい。後者は、支持層の場合に述べられる。本発明の好ましい例において、前記表面層はフェルトである。フェルトは、非織り織布、すなわち実質的にカーボンからなるフィラメントが予め決められた方向(例えば縦糸、横糸)に配置していないが、バインダと共に圧縮の機械的作用を通して密な塊を形成する材料を意味する。フェルトは、全ての個所で均一で型への容易な挿入の非常に重要な性質を有する。
【0030】
本発明の技術的問題は、高、中、低を得るのに望まれる摩擦係数の関連する少なくとも1つの表面層の組成、フィラメントの長さおよびSiCの粒子寸法の両方を同時に変更することによって前述のように解決する。同時に、本質的な酸化に供されず、それゆえ一定期間に亘ってその摩擦係数を維持する材料が得られる。高、中、低の摩擦は、それぞれ0.4〜0.7、0.3〜0.5、0.2〜0.4を意味する。
【0031】
下記表1は、表面層がシリコンで処理された後の所期の摩擦係数(高、中、低)を有する摩擦表面を得るために用いることを必要とする、実質的にカーボンからなるフィラメント、SiCおよび樹脂の重量%を示す。
【表1】

【0032】
ディスクのシリケイション後、摩擦表面A,B,Cはそれゆえ表面層の出発組成物によって得られる。
【0033】
表面Aは、Si,SiCおよびカーボン繊維(20〜40%、好ましくは25〜30%の量で)を含み、高摩擦係数はC−Si−SiC境界面の非常に大きい数による。
【0034】
表面Bは、Si,SiCおよびカーボン繊維(10〜20%、好ましくは15〜19%の量で)を含み、中摩擦係数はC−Si−SiC境界面の小さい数による。
【0035】
表面Cは、SiおよびSiCのみを含み、低摩擦係数はC−Si−SiC境界面の欠乏、Si−SiC境界面のみが存在することによる。
【0036】
下記表2、表3は、適切な組成物の組み合わせにおいて値がシリケイション後に所期の摩擦面を得ることができるフィラメントの長さ範囲およびSiC粒子寸法を示す。
【表2】

【表3】

【0037】
SiC粒子寸法の変動はより長い時間かまたは短い時間で粒状化をなすことによって得られる。長い粒状化時間は、小さい粒子寸法を持つSiCを生成し、一方短い時間の粒状化は大きな寸法の粒子を持つSiCを供する。
【0038】
摩擦係数の調整は、表1、表2で述べられた性状の組合せによって得られる。例えば、低摩擦係数は0.1〜1mmの長さのフィラメントおよび0.01〜0.1mmの粒子寸法を持つSiCを含む組成物C(表1)の混合物で得られる。
【0039】
表面層用混合物中の多い量のSiCは、SiCを得るためのフィラメントのカーボンとシリコンの間の反応を促進する。これは、カーボン相が欠乏すること、それゆえC−Si−SiC境界面が欠乏し、結果として摩擦が低くなることを意味する。実質的にカーボンからなる長いフィラメントの使用は、フィラメントの炭素とシリコンの間の反応を遅らせ、多数のC−Si−SiC境界面の形成およびそれによる高い摩擦をもたらす。小さいSiC粒子寸法の使用は、フィラメントのCとSiの反応を促進し、それゆえC−Si−SiC境界面の数は実質上ゼロに等しくなる。Si−SiC境界面がC−Si−SiC境界面より低い摩擦を生じる理由から、結果として摩擦は低くなる。最終ディスクに関係する前記少なくとも1つの表面層の厚さは、好ましくは0.3〜2mm、より好ましくは0.7〜1.5mm、さらに好ましくは約1mmである。
【0040】
代わって前記支持層の厚さは、用途の種類およびディスク径に依存し、単なる例として高性能乗り物のために24〜30mmである。
【0041】
この発明に係る材料の特徴形態は、実際に前記支持層が連続していかなる破損をせずに前記少なくとも1つの表面層に至るか、または換言すれば前記層間に明確な区切りがない。よって、弱い箇所および表面はディスク内に発生しない。また、ディスクの構造性状を決定する支持層およびシステムの摩擦係数を代わりに調整する表面層の共存は、構造的特徴を不利にすることなく、この発明の課題を達成できる。
【0042】
この発明の好ましい典型例によれば、前記少なくとも1つの表面層はサンドイッチのように材料の前記支持層の2つの面を被覆する。この発明に係る材料を形付ける組成物は、前述したように表面層の組成、実質的にカーボンからなるフィラメントの長さおよびSiCの粒子寸法を変更した引用された公開特許出願EP1124071およびWO 03/056206に述べられた同様な方法を通して生成される。この方法は、
a)30mm以下の長さを有する予め決めた量の実質的にカーボンからなるフィラメントおよび予め決めた量の化学バインダを含む第1混合物を調製すること、
b)実質的にカーボンからなるフィラメント、SiCおよび樹脂を得るために望まれる摩擦係数に依存する種々の量で含む第2混合物を調製すること、
c)亀裂の成長を遅らせるように前記形状に沿って伸びる前記支持層の第1混合物に複数の強化繊維を任意に組み込むこと、
d)前記第1混合物および前記第2混合物を、得るために必要とする製造品の形状を有する型に前記第1混合物が支持層を構成し、かつ前記第2混合物が前記支持層の2側面の少なくとも1つの上に少なくとも1つの表面層を構成するような手法で設置すること、
e)前記第1混合物および前記第2混合物を前記型内で造型し、半完成品を得ること、
f)前記半完成品を前記化学バインダの炭化または熱分解を本質的にもたらすような温度での第1焼成に供すること、
g)前記焼成半完成品をシリコンの存在で前記シリコンの溶融および前記半完成品に同様の浸潤をもたらすような温度の第2焼成に供し、本質的にある期間にわたって一定のままである高、中または低の摩擦係数を持つ前記造型複合材料を得ること
の工程を含む。
【0043】
任意に、項目b)で得られる前記混合物は型のみに挿入し、それから使用される樹脂の種類に依存する、50〜90℃、好ましくは80〜75℃の温度で熱予備成型してもよい。この方法において、前記樹脂は完全に硬くせず、予備高分子化(工程b1)にする。次いで、予備成型層は得るために望まれる製造品の形状を持つ型内に支持層a)(工程c)用混混合物と共に挿入され、項目d),e),f)およびg)に従って処理される。
【0044】
工程b1)で得られた予備成型表面層は、工程f)で指定された手段に従って予備熱分解に供してもよい。この方法において、得るために望まれる製造品の形状を持つ型に挿入するために用意ができた多孔質フェルトが得られる(工程c)。後者の場合、支持層混合物はまた工程c)の前に熱分解され、続く工程f)が不要にする。
【0045】
有益には、前記支持層中のフィラメントおよび/または強化繊維と前記表面層中のフィラメントは本発明に係る方法に従って用いる前に、保護樹脂、好ましくはポリウレタンで被覆されてもよい。
【0046】
択一的に、前記フィラメントおよび/または強化繊維は混合物の調製に用いられるのと同じ化学バインダで被覆されてもよい。この方法において、材料のより大きな密着力および密な製品が得られる。半完成品の第1焼成の間に、樹脂および化学バインダはフィラメントの束および強化繊維上に保護層を創り、かつ引続くシリコンでの処理で可能な解離または溶解さえも防ぐ炭化が起こる。この方法において、フィラメント束およびいくつかの強化繊維は処理を通して初期形状を維持し、従って良好な密着力および強度特性を持つ材料を提供する。
【0047】
前記バインダは、固体状態で前記混合物に添加することが好ましい。例えば、フェノール樹脂はペレット、粉末または顆粒の形で添加してもよい。
【0048】
前記混合物は、またフィラーまたは所期の複合材料の気孔および密度を制御する目的のために用いられる他の従来の添加剤を含んでもよい。
【0049】
混合することは、従来の装置で従来の手法でなされてもよく、かつ前記フィラメントは種々の方向に不規則的に位置してもよい。
【0050】
前記強化繊維は、異なる方法で前記混合物に組み込まれてもよい。方法の1つの例は、公開出願EP1124071に述べられ、ここに引用して盛り込まれる詳細である。
【0051】
前記混合物中に組み込まれる強化繊維の量は、最終複合材料の所期の繊維量に依存し、前記量は材料の体積あたり0〜30体積%内である。
【0052】
本発明に係る方法の造型工程(工程e)の間、前記第1、第2の混合物は前記型内で80〜180℃、好ましくは100〜120℃の温度で加熱され、0.1N/cm2〜5N/cm2、好ましくは0.1〜1N/cm2の圧力がそれらに供される。
【0053】
そのように得られた密な造型半完成品は、前記型から取除かれ、それから化学バインダを炭化(工程f、熱分解)のために第1焼成に供する。
【0054】
この焼成は、従来の炉で用いられるバインダの種類に本質的に依存し、一般的に900〜1200℃の範囲内に置かれる温度にてなされる。
【0055】
焼成は、窒素またはアルゴンのような不活性ガスの流れの存在、10〜100ミリバール、好ましくは20〜30ミリバールの過剰圧力内でなされる。前記流れは、前記熱分解によって化学バインダから放出されるガスを有益に除去することができる。
【0056】
前記方法のこの工程の間、半完成品はより多い気孔を獲得し、気孔は蒸発シリコンを気孔内に湿潤させる理由から引続く焼成に重要である。
【0057】
工程f)のための操作条件は、表面層が予備成型される場合である工程b1)で適用されるそれらと同じである。
【0058】
本発明の1つの典型例に従えば、前記方法は工程f)での第1焼成からもたらされる半完成品の表面を仕上げる工程をさらに含む。これは、前記半完成品のいくつかの表面変形を所期の形状に供するように従来の装置を用いて有益に除去できる。
【0059】
前記仕上げ操作は、好ましくは乾式、例えばダイヤモンドを用いてなされる。
【0060】
工程f)に従って焼成された半完成品は、シリコンの存在の第2焼成(工程g)に供する。
【0061】
前記第2焼成をなすために、仕上げに供された焼成半完成品は容器のチャンバに置かれ、その容器はその半完成品の体積の約2倍の体積および半完成品を囲むシリコンで充填された半完成品とその容器の間に形成された空間を有する。使用されるシリコン量は、それゆえ半完成品の気孔を充填するのに必要であるか、またはそれより僅かに多い量である。純粋シリコン、および/またはシリコンとアルミニウムまたは銅の合金は、粒子または粉末として用いられ、前記ギャップに充填する。
【0062】
チャンバは、焼成の間に放出されたガスを逃がす適切な穴を通して外部と連通してもよい。
【0063】
シリコンが装填された後、前記容器は適切な炉に挿入され、1400〜1700℃の温度で加熱される。前記温度において、前記シリコンは溶融し、かつ半完成品の気孔に湿潤する(シリケイション工程)。
【0064】
焼成は、真空、大気圧(980ミリバール)から1ミリバール、好ましくは1.5ミリバールの減圧下でなされる。
【0065】
前記焼成が完了すると、複合材料は残余のシリコンが容器から容易に回収される小球に固体化するように例えばアルゴンまたは好ましくは窒素を用いて冷却する。
【0066】
この方法で得られた本発明に係る複合材料は、仕上げ操作、従来法での乾式または湿式でなされる例えば表面仕上げに供してもよい。
【0067】
炉内での焼成工程、すなわち熱分解およびシリケイションは単一炉、時間短縮および複雑の生産設備でなされてもよいことは明らかである。
【0068】
本発明に係る複合材料は、最終使用に依存して種々の形に造型してもよい。特に、本発明に係る材料は乗り物用ブレーキ部品、特にディスクブレーキの製造に有益に用いる。
【0069】
用途において、前述の材料はディスクブレーキのブレーキ部品を形成するためにディスク用ブレーキリングまたはバンドに造型してもよい。特許出願に対し同じ出願人名での国際出願No.PCT/IT00/00543(22.12.2000),PCT/IT01/00412(27.07.2001)およびPCT/IT01/00411(27.07.2001)に述べられている、いわゆる通風ディスクは本発明に係る複合材料を用いて構成してもよい。
【0070】
有益さ
摩擦係数が要求される種々のブレーキ性能に関連して選択できることの事実は、買い手の要求に対して個人専用にする乗り物を製造することができる。例えば、レイシングカーはユーザの安全を保証するために非常に高い摩擦係数を要求する。
【0071】
摩擦係数はディスクおよびパッドの材料に依存する理由から、現在、異なる摩擦を得るために後者部品の組成物を変更することが必要である。
【0072】
この発明は、摩擦係数が容易かつ経済的に変更できるブレーキシステムを提供する。実際のところ、表面層の組成物のみ所期の摩擦の関係で変更され、かつこれはコストの本質的な低減および製造速度の向上をもたらす。
【0073】
この発明の特徴および有益さは、以下の本発明に係る造型複合材料の例示調製の詳細から明らかになり、前記詳細は指摘および制限をせず意図して供する。
【0074】

混合物の体積あたり体積パーセントとして、65%の0.3mm〜0.5mmの径および7mm〜10mmの長さ有するカーボンフィラメント、23%の乾式フェノール樹脂および12%の炭化ケイ素粉末を含む第1混合物は、エライ(Erigh)混合器として知られる混合器中、従来法で調製した。
【0075】
混合物の体積あたり体積パーセントとして、15%の0.3mm〜0.5mmの径および約3mmの長さ有するカーボンフィラメント、73%の乾式フェノール樹脂および12%の0.5mmの粒子径を有する炭化ケイ素粉末を含む第2混合物は、同様な方法で調製した。
【0076】
前記第2混合物の部分は、最終製品で約1mmの厚さを有する層を形成するように内径150mm、外径335mmおよび高さ102mmの環状からの空洞にそれから置いた。
【0077】
その表面が水平にした後、前記第1混合物の第2層は最終製品で約30mmの厚さを得るような量でこの層上に広げた。この表面もまた水平にした。
【0078】
前記第2混合物の第3層は、最終製品で約1mmの厚さを有する層を形成するような量で前記第2層上にサンドイッチ構造を形成する方法のように堆積した。
【0079】
次いで、第1、第2の混合物の層は型を100℃の温度で加熱し、かつ1N/cm2の圧力を加えることによって造型し、ディスク形状の粗体を生産した。
【0080】
型から取り出した後、粗ディスクは1100℃の温度に加熱された炉中、12時間の滞留時間で焼成に供した。
【0081】
焼成は、30ミリバールの圧力、30L/分の流れで炉に配送されるアルゴンの存在によって不活性される雰囲気中で行った。
【0082】
焼成後、前記ディスクは表面変形を除去するために従来法で乾式ダイヤモンド仕上げに供した。
【0083】
このとき、粗ディスクはガスの逃散を許容する穴が供された容器に置いた。容器は、シリコンの粒子を要求される量にて充填され、前記ディスクと容器の間に形成されたスペースに充填する。容器は、それから1500℃の温度に加熱された炉に移され、その炉に8時間の期間放置することをもたらした。焼成は、1.5ミリバールの減圧でなされ、続いて大気中で連続的に送られる窒素の炉中で冷却した。
【0084】
冷却後、表面変形を除去し、かつ所期の精度および許容誤差を持つ最終形状を得るために従来法でダイヤモンド仕上げに供される本発明に係る複合材料のディスクを獲得した。
【0085】
得られたディスクの表面層の分析は、0.4の摩擦に対応する、Si−SiCおよび17%の量のカーボン繊維を含む摩擦表面を明らかにした。値は、トライボメータを用いる実験室中、動的試験台上での試験によって測定した。
【0086】
ディスクは、乗り物用ディスクブレーキの成分として試験され、優れた硬度、耐衝撃性、耐久性、圧縮およびブレーキ特性中温度発生される摩擦を有することを供した。また、例示のこのディスクは1000ブレーキサイクル後、従来技術に係るディスクに比べて1/4以下であったカーボン重量の消失を供し、その上初期係数に対して本質的に同一の摩擦係数を有する。
【0087】
前記詳述から明らかなように、本発明に係る複合材料は一定期間に亘る摩擦係数に反映される酸化に対して良好な耐性を有する。また、この複合材料は満足すべき要求(例えばレーシングカー、オートバイ、通常使用の自動車等)に基づいて所期摩擦係数を選択できる。
【0088】
一定期間に亘る種々の乗り物用の最適な摩擦係数は、ブレーキの場合良好な再現性を保証し、それゆえ乗り物の信頼性を改善する。
【0089】
当業者は、特定要件を満たすために次の請求の範囲を超えずに前述した複合セラミック材料の好ましい例に対して他の機能等価を持つ要素の多くの変更、適用および要素の置き換えをしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層および少なくとも1つの表面層を備え、高、中または低の摩擦係数を持つ造型複合材料の製造方法であって、次の工程:
a)実質的にカーボンからなるフィラメントおよび化学バインダを含む第1混合物の調製、
b)SiCおよび樹脂と共に実質的にカーボンからなるフィラメントを含み、実質的にカーボンからなるフィラメント、SiCおよび樹脂の量、実質的にカーボンからなるフィラメントの長さおよびSiCの粒子寸法は得るために望まれる摩擦係数の関係で選択され、かつ実質的にカーボンからなる前記フィラメントの量およびそれらの長さは得るために望まれる摩擦係数の値に対し正比例であり、同時にSiCの量およびその粒子寸法は得るために望まれる摩擦係数の値に対しそれぞれ逆比例および正比例である、第2混合物の調製、
c)前記第1混合物a)および前記第2混合物b)を、得るために必要とする製造品の形状を有する型に前記第1混合物が支持層を構成し、かつ前記第2混合物が前記支持層の2側面の少なくとも1つの上に少なくとも1つの表面層を構成するような手法で設置すること、
d)前記第1混合物および前記第2混合物を前記型内で造型し、半完成品を得ること、
e)前記半完成品を前記化学バインダの炭化または熱分解を本質的にもたらすような温度での第1焼成に供すること、
f)前記焼成半完成品をシリコンの存在で前記シリコンを溶融し、前記半完成品に浸潤させることをもたらすような温度の第2焼成に供し、本質的にある期間にわたって一定のままである高、中または低の摩擦係数を持つ前記造型複合材料を得ること
を含む方法。
【請求項2】
工程b)において、前記混合物は5〜60重量%、好ましくは6〜40重量%の実質的にカーボンからなるフィラメントを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程b)において、前記混合物は1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%のSiCを含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程b)において、前記混合物は40〜80重量%、好ましくは50〜75重量%の樹脂を含む請求項1から3いずれか記載の方法。
【請求項5】
工程b)において、前記混合物は0.1〜8mm、好ましくは0.2〜7mmの長さを持つ実質的にカーボンからなるフィラメントを含む請求項1から4いずれか記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、前記混合物は0.01〜2mm、好ましくは0.02〜1.7mmの粒子寸法を持つSiCを含む請求項1から5いずれか記載の方法。
【請求項7】
工程b)において、前記混合物は高摩擦係数を得るために25〜60重量%の、5〜8mmの長さを持つ実質的にカーボンからなるフィラメント、1〜10重量%の、1〜2mmの粒子寸法を持つSiCおよび40〜75重量%の樹脂を含む請求項1から6いずれか記載の方法。
【請求項8】
工程b)において、前記混合物は中間摩擦係数を得るために10〜25重量%の、1〜5mmの長さを持つ実質的にカーボンからなるフィラメント、10〜15重量%の、0.1〜1mmの粒子寸法を持つSiCおよび60〜80重量%の樹脂を含む請求項1から7いずれか記載の方法。
【請求項9】
工程b)において、前記混合物は低摩擦係数を得るために5〜10重量%の、0.1〜1mmの長さを持つ実質的にカーボンからなるフィラメント、15〜30重量%の、0.01〜0.1mmの粒子寸法を持つSiCおよび40〜70重量%の樹脂を含む請求項1から8いずれか記載の方法。
【請求項10】
工程b)において、前記混合物は高摩擦係数を得るために30〜40重量%の、6〜7mmの長さを持つ実質的にカーボンからなるフィラメント、2〜7重量%の、1.2〜1.7mmの粒子寸法を持つSiCおよび50〜65重量%の樹脂を含む請求項1から6いずれか記載の方法。
【請求項11】
工程b)において、前記混合物は中間摩擦係数を得るために10〜20重量%の、2〜4mmの長さを持つ実質的にカーボンからなるフィラメント、11〜13重量%の、0.1〜1mmの粒子寸法を持つSiCおよび65〜75重量%の樹脂を含む請求項1から10いずれか記載の方法。
【請求項12】
工程b)において、前記混合物は低摩擦係数を得るために6〜8重量%の、0.2〜0.8mmの長さを持つ実質的にカーボンからなるフィラメント、18〜25重量%の、0.02〜0.09mmの粒子寸法を持つSiCおよび50〜65重量%の樹脂を含む請求項1から11いずれか記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂がポリウレタン樹脂である請求項1から12いずれか記載の方法。
【請求項14】
前記第1混合物は、強化繊維および/または添加剤をさらに含む請求項1から13いずれか記載の方法。
【請求項15】
工程a)において、前記混合物は30mm以下、好ましくは7〜10mm、より好ましくは約8mmの長さを持つ実質的にカーボンからなるフィラメントを含む請求項1から14いずれか記載の方法。
【請求項16】
工程a)において、前記混合物は実質的にカーボンからなるフィラメント40〜70体積%、好ましくは50〜60体積%を含む請求項1から15いずれか記載の方法。
【請求項17】
工程a)において、化学バインダ5〜30体積%、好ましくは15〜25体積%を含む請求項1から16いずれか記載の方法。
【請求項18】
工程a)において、前記混合物は添加剤0.5〜20体積%、好ましくは1〜15体積%を含む請求項1から17いずれか記載の方法。
【請求項19】
工程a)において、前記混合物は複数の強化繊維を含む請求項1から18いずれか記載の方法。
【請求項20】
前記強化繊維は0〜30体積%量である請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記工程d)は、80〜180℃、好ましくは100〜120℃の温度でなされる請求項1から20いずれか記載の方法。
【請求項22】
前記工程d)は、0.1N/cm2〜5N/cm2、好ましくは0.5〜1N/cm2の圧力でなされる請求項1から21いずれか記載の方法。
【請求項23】
前記工程e)は、炉内にて900〜1200℃の温度でなされる請求項1から22いずれか記載の方法。
【請求項24】
前記工程e)は、不活性ガスの流れの存在にて、10〜100ミリバール、好ましくは20〜30ミリバールの圧力でなされる請求項1から23いずれか記載の方法。
【請求項25】
工程e)からの半完成品は、表面仕上げ工程に供する請求項1から24いずれか記載の方法。
【請求項26】
前記工程f)において、用いられるシリコンが純粋シリコンおよび/またはシリコンとアルミニウムまたは銅の合金である請求項1から25いずれか記載の方法。
【請求項27】
前記工程f)は炉内にて1400〜1700℃でなされる請求項1から26いずれか記載の方法。
【請求項28】
前記工程f)は約1ミリバール、好ましくは約1.5ミリバールの圧力でなされる請求項1から27いずれか記載の方法。
【請求項29】
前記第2混合物b)は50〜90℃、好ましくは60〜75℃の温度で熱予備成型される(工程b1)請求項1から28いずれか記載の方法。
【請求項30】
前記予備成型混合物は多孔質フェルトを得るために予備熱分解に供され、それから工程c)〜e)に従って処理される請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記第2混合物は予備熱分解化され、それから工程c)〜e)に従って処理される請求項29または30記載の方法。
【請求項32】
請求項1から31のいずれかに従って得ることが可能な造型複合材料。
【請求項33】
ディスクブレーキ用ディスクである請求項32記載の材料。

【公表番号】特表2008−526662(P2008−526662A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548977(P2007−548977)
【出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【国際出願番号】PCT/IT2004/000741
【国際公開番号】WO2006/070418
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506420485)ブレンボ・セラミック・ブレイク・システムス・エス.ピー.エー. (3)
【Fターム(参考)】