造形装置
【課題】 粉末結合法の場合は粉末状形成材料を造形する各層ごとに吐出し、表面をなだらかにしなければならない。
【解決手段】 造形ヘッドには、粉末状形成材料を吐出する吐出部と、この吐出部が吐出した上記粉末状形成材料をならすならし部と、ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出する噴出部とを備えている。この造形ヘッドと、吐出された粉末状形成材料を支持する支持部とは、移動部により相対的に移動可能である。従って、造形ヘッドに着目すると、造形ヘッドは支持部上の任意の位置へ移動可能であり、この移動によって吐出部から支持部上に粉末状形成材料を吐出できる。これとともにならし部によって吐出された粉末状形成材料の表面をならすことができる。そして、ならされた状態で制御部が造形データを用いて上記造形ヘッドにて粉末状形成材料に結合材を噴出させることで、造形を行わせることができる。
【解決手段】 造形ヘッドには、粉末状形成材料を吐出する吐出部と、この吐出部が吐出した上記粉末状形成材料をならすならし部と、ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出する噴出部とを備えている。この造形ヘッドと、吐出された粉末状形成材料を支持する支持部とは、移動部により相対的に移動可能である。従って、造形ヘッドに着目すると、造形ヘッドは支持部上の任意の位置へ移動可能であり、この移動によって吐出部から支持部上に粉末状形成材料を吐出できる。これとともにならし部によって吐出された粉末状形成材料の表面をならすことができる。そして、ならされた状態で制御部が造形データを用いて上記造形ヘッドにて粉末状形成材料に結合材を噴出させることで、造形を行わせることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元の造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体物の造形技術として幾つかの手法が知られている。具体的には、いわゆる光造形法(特許文献1参照)、選択的レーザー焼結法(特許文献2参照)、溶融堆積法(特許文献3参照)、粉末結合法(特許文献4参照)、シート積層法(特許文献5参照)、インクジェットによる材料の直接吐出による造形法(特許文献6参照)等の積層型の造形法が知られている。
【0003】
また、測定対象となる立体物を3次元測定して3次元モデルデータを出力可能な3次元測定器(3次元デジタイザ)が知られている。
また、測定対象物を測定する装置や、コンピューターや、立体物の造形のための装置といった複数の装置からなるシステムによって、立体物のコピーを実現する技術が知られている(特許文献7,8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008‐195069号公報
【特許文献2】特表2010‐510104号公報
【特許文献3】特表2009‐525207号公報
【特許文献4】特表2002‐507940号公報
【特許文献5】特開2001‐301060号公報
【特許文献6】特表2003‐535712号公報
【特許文献7】特開2004‐69403号公報
【特許文献8】特開2006‐250906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉末結合法の場合は粉末状形成材料を造形する各層ごとに吐出し、表面をなだらかにしなければならない。従来は、この過程をコンパクトな構成で実現することができなかった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、構成が簡易な粉末結合法による造形装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、造形ヘッドには、粉末状形成材料を吐出する吐出部と、この吐出部が吐出した上記粉末状形成材料をならすならし部と、ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出する噴出部とを備えている。この造形ヘッドと、吐出された粉末状形成材料を支持する支持部とは、移動部により相対的に移動可能である。従って、造形ヘッドに着目すると、造形ヘッドは支持部上の任意の位置へ移動可能であり、この移動によって吐出部から支持部上に粉末状形成材料を吐出できる。これとともにならし部によって吐出された粉末状形成材料の表面をならすことができる。そして、ならされた状態で制御部が造形データを用いて上記造形ヘッドにて粉末状形成材料に結合材を噴出させることで、造形を行わせることができる。
【0007】
ならし部は吐出された粉末状形成材料の表面をならすものであるが、このならし部は、上記吐出部と上記噴出部とを仕切るように配置し、吐出部から吐出される粉末状形成材料が噴出部の側に回り込まないようにすることができる。
噴出部の側に回り込みにくくする構成として、上記ならし部は、上記噴出部を覆って粉末状形成材料をならす際のならし位置と、上記噴出部を露出させて結合材を噴出可能とする露出位置とを移動可能に設けるようにしてもよい。そして、上記制御部は、吐出部から粉末状形成材料を吐出するときにならし位置に上記ならし部を位置させ、上記噴出部が結合材を噴出するときに露出位置に上記ならし部を位置させるように制御する。これにより、粉末状形成材料が噴出部に付着しにくくできる。
【0008】
さらに、噴出部に付着しにくくするため、上記ならし部は、上記噴出部を囲う形状として形成してもよい。噴出部を囲うことにより、粉末状形成材料は噴出部に付着しにくくなる。
造形物が形成される支持部の構成として、テーブルと、このテーブルを囲む筒部と、この筒部の外でならした粉末状形成材料を回収する回収部とを備えるように構成し、回収した粉末状形成材料を再利用するようにしてもよい。
【0009】
また、上記支持部の上に載ったスキャン対象を立体スキャンするスキャナー部を備えた上で、上記制御部が、このスキャナー部が立体スキャンして得たスキャンデータに基づいて上記造形データを求めるようにしてもよい。
造形データを求める演算には多大な処理能力を必要とする。このため、上記制御部は、自ら演算して上記造形データを求めるか、外部のネットワークを介して外部の複数の演算装置で上記造形データを求めるようにすることができる。
【0010】
造形のみならず、模様の複写も実現可能であり、このためには、上記粉末状形成材料と上記結合材は透明または白であり、上記噴出部は、同結合材に加えて着色剤を噴出可能であり、同着色剤に有色成分を含むように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の造形装置は、粉末状形成材料と結合材とを供給できる造形ヘッドを備えつつ、粉末状形成材料を吐出した上で平坦にならすことができるので、コンパクトな構成で実現可能な造形装置を提供できる。
また、ならし部は吐出部と噴出部とを区切るようにすることで、結合材を噴出する噴出部に粉末状形成材料が付着しにくくすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】造形装置の外観例を示した斜視図である。
【図2】造形装置の構成を概略的に示した図である。
【図3】プラットフォームの構成例を示した図である。
【図4】支持部と移動部と造形ヘッドを概略的に示す斜視図である。
【図5】造形ヘッドを拡大表示する正面図である。
【図6】造形ヘッドの噴出部を下面側から見たときの概略を示す図である。
【図7】造形処理を模式的に示す概略図である。
【図8】造形データをネットワークを介して取得する状況を示す概略図である。
【図9】造形処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】造形処理の要部の手順を示すフローチャートである。
【図11】造形処理の要部の他の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.複合機の構成
図1は、本実施形態にかかる造形装置を適用した3次元複合機10の外観例を斜視図により示している。3次元複合機10は、装置全体を覆う筺体11の前面上部側に扉12を有している。また、筺体11の内部には、処理用空間としてのチャンバー13が形成されている。ユーザは、扉12を開けることで、チャンバー13内にアクセス可能であり、チャンバー13内に測定対象物Mとしての立体物を載置したり、載置した測定対象物Mを取り出したり、チャンバー13内で造形された立体物(造形物R)を取り出したりすることができる。3次元複合機10は、筺体11表面の所定位置に、ユーザに対する表示部としての表示装置11a(液晶パネル等)や、ユーザからの操作を受け付ける操作受付部11bとしてのスイッチやボタンやタッチパネル等を適宜備える。
【0014】
図2は、3次元複合機10の構成を概略的に示している。3次元複合機10は、チャンバー13内に載置された測定対象物Mを3次元測定して3次元モデルデータを取得可能な測定部20と、与えられた3次元モデルデータに基づいてチャンバー13内に造形物Rを造形可能な造形部30と、測定部20と造形部30とを制御する制御部40とを含む。ここで言う与えられた3次元モデルデータとは、外部から3次元複合機10に接続されたコンピューターや記憶媒体(メモリーカード等)から3次元複合機10が読み込む3次元モデルデータと、測定部20によって取得される3次元モデルデータとの両方を含む意味である。つまり、一台の3次元複合機10は、立体物の3次元測定機能と、立体物の造形機能と、これら機能を合わせた立体物の複製機能とを兼ね備えている。また、3次元複合機10は、造形方法に応じた造形のための構造を備え、例えばチャンバー13の底面側に配設された略水平な台(プラットフォーム14)と、プラットフォーム14をチャンバー13内において3次元複合機10の上下方向(縦方向)に移動させることが可能なモーター等からなるプラットフォーム移動機構15を含む。
【0015】
測定部20は、測定対象物Mを3次元測定して3次元モデルデータを取得可能な機構であれば、公知の非接触型の3次元デジタイザを含めて種々の構成を採ることができる。測定部20は、例えば、照射光を発する光源21、光源21から照射された照射光の測定対象物Mからの反射光を読み取るイメージセンサー22、イメージセンサー22による読み取り結果(点群データ)に基づいて所定のフォーマットの3次元モデルデータを生成するファイル生成部23などを備える。ファイル生成部23は、例えば、STLやOBJやIGES等のフォーマットで3次元モデルデータを生成可能である。
【0016】
一例として、ファイル生成部23がSTLフォーマットの3次元モデルデータを生成する場合、3次元モデルデータは、3つの頂点(座標値)を有する三角形の集合により立体を表現する。ここでいう座標値とは、例えば、チャンバー13内に定義された空間(互いに直交するX,Y,Zの3軸により定義された空間)における座標値(X成分値、Y成分値、Z成分値)である。また、各三角形は面法線ベクトルを有し、各面法線ベクトルが向く方向は立体物の表面が向く方向を示している。本実施形態では、Z軸は上記上下方向(縦方向)を向き、これに垂直なXY平面は、水平面を形成するものする。
【0017】
造形部30は、3次元モデルデータに基づいて立体物を造形可能な機構であり、本実施例では積層型の粉末造形法により造形を行なう。造形部30は、例えば、3次元モデルデータを各層の造形のためのスライスデータに変換するデータ変換部31、造形のための可動部(造形ヘッド32)、造形ヘッド32をチャンバー13内においてX,Y軸方向それぞれに移動させることが可能なモーター等からなるヘッド移動機構(移動部)33などを備える。データ変換部31は、3次元モデルデータの断面形状であって、例えば、Z軸方向に垂直な断面形状(XY平面における形状)を演算により取得する。データ変換部31は、このような断面形状をZ軸方向においてスライス幅(造形部30が積層する層の厚さ。なお、スライス幅は一定とは限らない。)間隔で取得する。このようなスライス幅毎の断面形状を表したデータを、スライスデータと呼ぶ。
【0018】
造形ヘッド32は、チャンバー13内にてプラットフォーム14上をヘッド移動機構33によってX,Y軸方向に移動させられながら、一層のスライスデータが示す形状に応じて一層の造形を行なう。本実施例における粉末結合法では、造形ヘッド32はプラットフォーム14上に粉末状形成材料を吐出して粉末層を形成し、結合材をこのプラットフォーム14上の粉末層に吐出する。このようなスライスデータに応じた一層分の造形と、Z軸方向に沿ったプラットフォーム14の当該一層分の移動(下降)とを繰り返すことで、プラットフォーム14上に層単位での造形結果が積層され、造形物Rが完成する。これらの構成については後に詳述する。なお、プラットフォーム14は吐出された粉末状形成材料を支持する支持部に相当する。
【0019】
制御部40は、CPU41やメモリー42などを備え、CPU41がメモリー42に記憶された所定のプログラムに従って測定部20や造形部30を制御する。また制御部40は、造形部30による造形時に、プラットフォーム移動機構15のモーターを数値制御することでプラットフォーム14のZ軸方向の移動距離や移動速度を制御し、ヘッド移動機構33のモーターを数値制御することで造形ヘッド32のX,Y軸方向の移動距離や移動速度を制御する。すなわち、ヘッド移動機構33による造形ヘッド32のX,Y軸方向の移動とともに、プラットフォーム14のZ軸方向の移動を組み合わせることにより、造形ヘッド32と支持部とが相対的に移動することになり、移動部を構成する。
【0020】
図3は、チャンバー13内におけるプラットフォーム14(テーブル14a)の構成例を示している。図3に示すテーブル14aは円形状であり、且つ中心が軸16により下方から支持されている。軸16は、上記プラットフォーム移動機構15によりZ軸方向に沿って移動可能であり且つ回転可能である。この軸16の回転についても制御部40により数値制御される。つまり図3の例では、プラットフォームはターンテーブルとなっている。測定部20による測定対象物Mの測定時には、このターンテーブルとしてのテーブル14aに測定対象物Mが載置され、テーブル14aが回転する状況で測定が行なわれる。回転するターンテーブルに測定対象物Mが載ることで、イメージセンサー22は、それ自体が固定されていても測定対象物Mを360度満遍無く読み取ることができる。つまり、造形用の空間としても使用されるチャンバー13内において効率よく測定対象物Mについての正確な3次元モデルデータを取得できる。一方、造形部30による造形物Rの造形時には、テーブル14aは基本的には回転せず、Z軸方向に沿った移動を行なう。
【0021】
図4はチャンバ13内の支持部と移動部と造形ヘッドを概略的に示す斜視図である。
ヘッド移動機構(移動部)33は、造形ヘッド32を枠内でX,Y方向に移動可能なように支持している。支持部は、テーブル14aと、このテーブル14aを囲む筒部14bと、この筒部14b外の外でならした粉末状形成材料を回収する回収部36aとを備え、回収した粉末状形成材料を再利用できるようになっている。
【0022】
図5は、造形ヘッド32を正面図により拡大表示して示している。
造形ヘッド32は、粉末状形成材料と結合材と着色剤を供給するものである。図に示す右方には上部からチューブで供給される粉末状形成材料を下方の所定の領域に吐出する吐出部34を備え、図に示す左方には上部からチューブで供給される結合材と着色剤を噴出する噴出部32aを備えている。また、吐出部34と噴出部32aとの間には回転駆動可能に支持されるならし部35を備えている。ならし部35は、上記噴出部32aを覆って覆蓋する凹部状に形成されたキャップ35aと、このキャップ35aを両側で半回転可能に支持するアーム35b,35bを有している。キャップ35aの下面には堤防状の突起35a1が形成されており、噴出部32aを覆蓋する位置がならし位置であり、半回転して噴出部32aを露出させる位置が露出位置である。なお、半回転したときに突起35a1は上方に突出することになるが、造形ヘッド32の側には同突起35a1を収容可能な凹みを形成してあるので、造形ヘッド32は半回転可能である。ならし位置では、キャップ35aが噴出部32aを覆蓋しつつ、突起35a1が下に突き出る状態となるので、吐出部34から吐出される粉末状形成材料をならすことができる。
【0023】
図6は、造形ヘッドの噴出部32aを下面側から見たときの概略を示している。噴出部32aは、結合材を噴出する結合材噴出ヘッド32a1と、複数の着色剤をそれぞれ個別に噴出する着色剤ヘッド32a2とを備えている。本実施例においては、粉末状形成材料と結合材は透明または白であり、噴出部32aは有色成分を含む着色剤を同結合材に加えて噴出可能となっている。
【0024】
図7は、本実施例における造形処理を模式的に示している。
造形ヘッド32は、結合材タンク32bと、着色剤タンク32cと、粉末状形成材料タンク36bに対してチューブで接続されており、噴出及び吐出する着色剤と結合材と粉末状形成材料が供給されるようになっている。また、造形ヘッド32が吐出部34から上記テーブル14a上に粉末状形成材料を吐出した後、ならし部35の突起35a1で上面をならし、余分な粉末状形成材料は筒部14bの外に掻き出される。掻き出された粉末状形成材料は回収部36aにて回収されて粉末状形成材料タンク36bに供給されるので、回収した粉末状形成材料を再利用できる。なお、ならすときにはならし部35のキャップ35aが噴出部32aを覆蓋しているので、吐出部34から吐き出されて撒き上がった粉末状形成材料が噴出部32aに付着して詰まらせてしまうことがない。なお、本実施例では、キャップ35aが噴出部32aを覆い被さっているが、少なくとも吐出部34と噴出部32aとを区切るような位置であれば粉末状形成材料が噴出部32aに付着して詰まらせてしまうことを防止できる。
【0025】
図8は、造形データをネットワークを介して取得する状況を示す概略図である。
上述したように本実施例では制御部40が3次元モデルデータを生成したりスライスデータを生成している。しかし、かかる演算処理の負担は大きいのでネットワーク50を介して外部の演算装置51a〜51cに接続し、これらを利用して3次元モデルデータやスライスデータを求めるようにしても良い。このように構成すれば、制御部40のCPU41やメモリー42として処理能力の低いものでも利用できるようになる。
【0026】
2.複製処理の説明
図9は、3次元複合機10によって実行される立体物の複製処理の概略をフローチャートにより示している。なお、フローチャート中の各ステップのうち、ユーザによる行為は鎖線で囲んで示している。
ステップS100では、ユーザにより、チャンバー13内のターンテーブル上に測定対象物Mが載置される。ステップS110では、制御部40は複製処理の開始指示を受け付ける。この場合、ユーザが操作受付部11bを操作して、例えば“コピー”ボタンを押下げ等することで、制御部40は複製処理の開始指示を受け付ける。ステップS120では、制御部40は、測定部20に対して測定実行を指示し、当該指示に応じて測定部20は測定対象物Mを3次元測定して3次元モデルデータを生成する。むろんこのとき、制御部40は、ターンテーブルを回転させる制御も行なう。
【0027】
測定部20による測定の終了後、ステップ130では、制御部40は、測定対象物Mの取り出し催促を外部に対して行なう。測定対象物Mの取り出し催促は、3次元複合機10が備えるスピーカーから所定の音声を出力させたり、表示装置11aに所定のメッセージを表示させたりして行なう。ステップS140では、ターンテーブル上に載置された測定対象物Mがユーザにより3次元複合機10外へ取り出される。ステップS150では、制御部40は、測定対象物Mが取り出されたか否かを所定のセンサー等を介して判定し、取り出しを確認したらステップS160で造形準備を実行する。造形準備とは、造形部30のデータ変換部31に、上記ステップS120で取得された3次元モデルデータをスライスデータへ変換させたり、プラットフォーム14の位置を造形開始のための所定位置に移動させたりする処理等である。
【0028】
造形準備が整った後、ステップS170では、制御部40は、造形部30に対して上記ステップS160で変換させた各スライスデータに基づく造形実行を指示し、当該指示に応じて造形部30は造形ヘッド32を駆動させて造形を実行する。むろんこのとき、制御部40は、造形ヘッド32およびプラットフォーム14を移動させる制御も行なう。ステップS170の結果、プラットフォーム14上にはスライスデータに応じて粉末状形成材料が結合された各層が積み重なり、上記ステップS100で載置された測定対象物Mの複製物である造形物Rが完成する。ステップS180では、制御部40は、造形部30による造形が終了したタイミングで造形物Rの取り出しの催促を外部に対して行なう。造形物Rの取り出し催促も音声やメッセージ表示等により行なう。ステップS190では、プラットフォーム14上に造形された造形物Rがユーザにより3次元複合機10外へ取り出され、ステップS195では、制御部40は、造形物Rが取り出されたか否かをイメージセンサー22を介して判定し、取り出しを確認したら処理を終了する。なお、造形物Rが取り出されたか否かの判定は、プラットフォームに設けた重量センサーや扉12の開閉センサーやその他のセンサーを用いても良いし、ユーザの終了操作で判定しても良い。
【0029】
図10は、造形処理の要部(ステップS170)の手順を示すフローチャートである。
造形処理は、各層ごとに粉末層を形成した後、結合材を噴出して壁部を形成し、さらに着色することになる。この各層の処理の詳細を以下に説明する。
まず、ステップS200では、造形ヘッド32を走査開始位置へ移動させる。走査開始位置は、造形ヘッド32をX,Y平面で移動させる際の起点となる位置であり、この位置から主走査動作と副走査動作を繰り返してプラットフォーム14のテーブル14a上面を満遍なく移動できる。なお、この時点では、ならし部35のキャップ35aはならし位置(カバー位置)にあり、噴出部32aを覆蓋している。
【0030】
走査開始位置から、ステップS210では、粉末状形成材料の吐出を開始する。すなわち、粉末状形成材料をテーブル14a上面に満遍なく吐出する。そして、ステップS220では、ならし走査を開始する。ステップS210で吐出部34から粉末状形成材料をテーブル14aに吐出しただけでは、その表面はなだらかではなく、凹凸が残っている。このため、ステップS220で行なうならし走査では、ならし部35の突起35a1を堆積している粉末状形成材料に突き刺した状態で移動することで表面をならし、必要な平面度を得られるようにする。従って、この時点で粉末層の上面の高さは突起35a1の下端の高さ位置となり、粉末層が完成する。
【0031】
この後、ステップS230では、造形ヘッドを一旦退避位置へ移動させ、ステップS240では、ならし部35のキャップ35aを露出位置へ移動させる。この退避位置は、キャップ35aを移動させることで生じる風により粉末状形成材料が舞い上がらないような位置である。これにより噴出部32aが露出し、結合材と着色剤の噴出が可能となる。続いて、ステップS250では、造形ヘッドを再度走査開始位置に移動させて結合材の噴出走査を開始する。これは上述したスライスデータに基づいて造形物Rの壁部を形成するように、結合させたい粉末状形成材料の部位に対して結合材を噴出させる。このようにして1層分の造形のための処理は完成する。その後、ステップS260では、造形ヘッド32を走査開始位置へ移動させ、ステップS270では、着色剤の噴出走査を開始する。着色剤は壁部における表側にあたる部分に対して行う。最後に、ステップS280では、造形ヘッドを一旦退避位置へ移動させて、ならし部35のキャップ35aをならし位置(カバー位置)に戻し、次の粉末層の形成に備えて、一層の造形処理を終了する。
【0032】
上の例では粉末状形成材料の吐出走査と、ならし走査と、結合材の噴出走査と、着色剤の噴出走査とを個別に行うので、4回の走査が必要になる。しかし、これをより短時間に行うための造形処理を、次に説明する。
図11は、造形処理の要部(ステップS170)の他の手順を示すフローチャートである。
ステップS300では、ステップS200と同様に、造形ヘッドを走査開始位置へ移動する。このときも、ならし部35のキャップ35aはならし位置(カバー位置)にある。次のステップS310では、粉末状形成材料の吐出とならし走査を開始する。先の例では、一旦、粉末状形成材料を吐出し終えた後でならし走査を行ったが、この例では、吐出しながらならし動作を行う。図5に示す造形ヘッド32の場合、右の吐出部34から粉末状形成材料を吐出し、造形ヘッド32を左方から右方へ移動させる。すると、キャップ35aの下方に突き出る突起35a1が吐出されたばかりの粉末状形成材料の表面をならす。テーブル14a上で端から端まで一方向に造形ヘッド32を主走査で移動させたら、副走査するとともに、次の主走査を同様に左の端から右の端まで移動させる。すなわち、常に左から右へ移動させながら、粉末状形成材料の吐出とならしを同時に行う。
【0033】
ステップS330と、ステップS340では、ステップS230とステップS240と同様であり、結合材の吐出のための走査の準備として、造形ヘッド32を走査開始位置へ移動させるとともに、ならし部35のキャップ35aを露出位置へ移動させる。次の、ステップS350では、結合材の吐出と着色剤の噴出走査を開始する。図6に示すように、結合材噴出ヘッド32a1と着色剤ヘッド32a2とは並んで形成されているので、結合材噴出ヘッド32a1から結合材を噴出させながら着色剤ヘッド32a2からも着色剤を噴出させ、テーブル14a上を満遍なく一回走査することで一層の造形と着色とを行う。そして、最後に、ステップS380では、ならし部35のキャップ35aをならし位置(カバー位置)へ移動させ、次の粉末層の形成に備える。
【0034】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
【0035】
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0036】
10…3次元複合機、11…筺体、11a…表示装置、11b…操作受付部、12…扉、13…チャンバー、14…プラットフォーム、14a…テーブル、14b…筒部、15…プラットフォーム移動機構、20…測定部(スキャナー部)、21…光源、22…イメージセンサー、23…ファイル生成部、30…造形部、31…データ変換部、32…造形ヘッド、32a…噴出部、32a1…結合材噴出ヘッド、32a2…着色剤ヘッド、32b…結合材タンク、32c…着色剤タンク、33…ヘッド移動機構(移動部)、34…吐出部、35…ならし部、35a…キャップ、35a1…突起、35b…アーム、36a…回収部、36b…粉末状形成材料タンク、40…制御部、41…CPU、42…メモリー、50…ネットワーク、51a〜51c…外部の演算装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元の造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体物の造形技術として幾つかの手法が知られている。具体的には、いわゆる光造形法(特許文献1参照)、選択的レーザー焼結法(特許文献2参照)、溶融堆積法(特許文献3参照)、粉末結合法(特許文献4参照)、シート積層法(特許文献5参照)、インクジェットによる材料の直接吐出による造形法(特許文献6参照)等の積層型の造形法が知られている。
【0003】
また、測定対象となる立体物を3次元測定して3次元モデルデータを出力可能な3次元測定器(3次元デジタイザ)が知られている。
また、測定対象物を測定する装置や、コンピューターや、立体物の造形のための装置といった複数の装置からなるシステムによって、立体物のコピーを実現する技術が知られている(特許文献7,8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008‐195069号公報
【特許文献2】特表2010‐510104号公報
【特許文献3】特表2009‐525207号公報
【特許文献4】特表2002‐507940号公報
【特許文献5】特開2001‐301060号公報
【特許文献6】特表2003‐535712号公報
【特許文献7】特開2004‐69403号公報
【特許文献8】特開2006‐250906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉末結合法の場合は粉末状形成材料を造形する各層ごとに吐出し、表面をなだらかにしなければならない。従来は、この過程をコンパクトな構成で実現することができなかった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、構成が簡易な粉末結合法による造形装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、造形ヘッドには、粉末状形成材料を吐出する吐出部と、この吐出部が吐出した上記粉末状形成材料をならすならし部と、ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出する噴出部とを備えている。この造形ヘッドと、吐出された粉末状形成材料を支持する支持部とは、移動部により相対的に移動可能である。従って、造形ヘッドに着目すると、造形ヘッドは支持部上の任意の位置へ移動可能であり、この移動によって吐出部から支持部上に粉末状形成材料を吐出できる。これとともにならし部によって吐出された粉末状形成材料の表面をならすことができる。そして、ならされた状態で制御部が造形データを用いて上記造形ヘッドにて粉末状形成材料に結合材を噴出させることで、造形を行わせることができる。
【0007】
ならし部は吐出された粉末状形成材料の表面をならすものであるが、このならし部は、上記吐出部と上記噴出部とを仕切るように配置し、吐出部から吐出される粉末状形成材料が噴出部の側に回り込まないようにすることができる。
噴出部の側に回り込みにくくする構成として、上記ならし部は、上記噴出部を覆って粉末状形成材料をならす際のならし位置と、上記噴出部を露出させて結合材を噴出可能とする露出位置とを移動可能に設けるようにしてもよい。そして、上記制御部は、吐出部から粉末状形成材料を吐出するときにならし位置に上記ならし部を位置させ、上記噴出部が結合材を噴出するときに露出位置に上記ならし部を位置させるように制御する。これにより、粉末状形成材料が噴出部に付着しにくくできる。
【0008】
さらに、噴出部に付着しにくくするため、上記ならし部は、上記噴出部を囲う形状として形成してもよい。噴出部を囲うことにより、粉末状形成材料は噴出部に付着しにくくなる。
造形物が形成される支持部の構成として、テーブルと、このテーブルを囲む筒部と、この筒部の外でならした粉末状形成材料を回収する回収部とを備えるように構成し、回収した粉末状形成材料を再利用するようにしてもよい。
【0009】
また、上記支持部の上に載ったスキャン対象を立体スキャンするスキャナー部を備えた上で、上記制御部が、このスキャナー部が立体スキャンして得たスキャンデータに基づいて上記造形データを求めるようにしてもよい。
造形データを求める演算には多大な処理能力を必要とする。このため、上記制御部は、自ら演算して上記造形データを求めるか、外部のネットワークを介して外部の複数の演算装置で上記造形データを求めるようにすることができる。
【0010】
造形のみならず、模様の複写も実現可能であり、このためには、上記粉末状形成材料と上記結合材は透明または白であり、上記噴出部は、同結合材に加えて着色剤を噴出可能であり、同着色剤に有色成分を含むように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の造形装置は、粉末状形成材料と結合材とを供給できる造形ヘッドを備えつつ、粉末状形成材料を吐出した上で平坦にならすことができるので、コンパクトな構成で実現可能な造形装置を提供できる。
また、ならし部は吐出部と噴出部とを区切るようにすることで、結合材を噴出する噴出部に粉末状形成材料が付着しにくくすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】造形装置の外観例を示した斜視図である。
【図2】造形装置の構成を概略的に示した図である。
【図3】プラットフォームの構成例を示した図である。
【図4】支持部と移動部と造形ヘッドを概略的に示す斜視図である。
【図5】造形ヘッドを拡大表示する正面図である。
【図6】造形ヘッドの噴出部を下面側から見たときの概略を示す図である。
【図7】造形処理を模式的に示す概略図である。
【図8】造形データをネットワークを介して取得する状況を示す概略図である。
【図9】造形処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】造形処理の要部の手順を示すフローチャートである。
【図11】造形処理の要部の他の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.複合機の構成
図1は、本実施形態にかかる造形装置を適用した3次元複合機10の外観例を斜視図により示している。3次元複合機10は、装置全体を覆う筺体11の前面上部側に扉12を有している。また、筺体11の内部には、処理用空間としてのチャンバー13が形成されている。ユーザは、扉12を開けることで、チャンバー13内にアクセス可能であり、チャンバー13内に測定対象物Mとしての立体物を載置したり、載置した測定対象物Mを取り出したり、チャンバー13内で造形された立体物(造形物R)を取り出したりすることができる。3次元複合機10は、筺体11表面の所定位置に、ユーザに対する表示部としての表示装置11a(液晶パネル等)や、ユーザからの操作を受け付ける操作受付部11bとしてのスイッチやボタンやタッチパネル等を適宜備える。
【0014】
図2は、3次元複合機10の構成を概略的に示している。3次元複合機10は、チャンバー13内に載置された測定対象物Mを3次元測定して3次元モデルデータを取得可能な測定部20と、与えられた3次元モデルデータに基づいてチャンバー13内に造形物Rを造形可能な造形部30と、測定部20と造形部30とを制御する制御部40とを含む。ここで言う与えられた3次元モデルデータとは、外部から3次元複合機10に接続されたコンピューターや記憶媒体(メモリーカード等)から3次元複合機10が読み込む3次元モデルデータと、測定部20によって取得される3次元モデルデータとの両方を含む意味である。つまり、一台の3次元複合機10は、立体物の3次元測定機能と、立体物の造形機能と、これら機能を合わせた立体物の複製機能とを兼ね備えている。また、3次元複合機10は、造形方法に応じた造形のための構造を備え、例えばチャンバー13の底面側に配設された略水平な台(プラットフォーム14)と、プラットフォーム14をチャンバー13内において3次元複合機10の上下方向(縦方向)に移動させることが可能なモーター等からなるプラットフォーム移動機構15を含む。
【0015】
測定部20は、測定対象物Mを3次元測定して3次元モデルデータを取得可能な機構であれば、公知の非接触型の3次元デジタイザを含めて種々の構成を採ることができる。測定部20は、例えば、照射光を発する光源21、光源21から照射された照射光の測定対象物Mからの反射光を読み取るイメージセンサー22、イメージセンサー22による読み取り結果(点群データ)に基づいて所定のフォーマットの3次元モデルデータを生成するファイル生成部23などを備える。ファイル生成部23は、例えば、STLやOBJやIGES等のフォーマットで3次元モデルデータを生成可能である。
【0016】
一例として、ファイル生成部23がSTLフォーマットの3次元モデルデータを生成する場合、3次元モデルデータは、3つの頂点(座標値)を有する三角形の集合により立体を表現する。ここでいう座標値とは、例えば、チャンバー13内に定義された空間(互いに直交するX,Y,Zの3軸により定義された空間)における座標値(X成分値、Y成分値、Z成分値)である。また、各三角形は面法線ベクトルを有し、各面法線ベクトルが向く方向は立体物の表面が向く方向を示している。本実施形態では、Z軸は上記上下方向(縦方向)を向き、これに垂直なXY平面は、水平面を形成するものする。
【0017】
造形部30は、3次元モデルデータに基づいて立体物を造形可能な機構であり、本実施例では積層型の粉末造形法により造形を行なう。造形部30は、例えば、3次元モデルデータを各層の造形のためのスライスデータに変換するデータ変換部31、造形のための可動部(造形ヘッド32)、造形ヘッド32をチャンバー13内においてX,Y軸方向それぞれに移動させることが可能なモーター等からなるヘッド移動機構(移動部)33などを備える。データ変換部31は、3次元モデルデータの断面形状であって、例えば、Z軸方向に垂直な断面形状(XY平面における形状)を演算により取得する。データ変換部31は、このような断面形状をZ軸方向においてスライス幅(造形部30が積層する層の厚さ。なお、スライス幅は一定とは限らない。)間隔で取得する。このようなスライス幅毎の断面形状を表したデータを、スライスデータと呼ぶ。
【0018】
造形ヘッド32は、チャンバー13内にてプラットフォーム14上をヘッド移動機構33によってX,Y軸方向に移動させられながら、一層のスライスデータが示す形状に応じて一層の造形を行なう。本実施例における粉末結合法では、造形ヘッド32はプラットフォーム14上に粉末状形成材料を吐出して粉末層を形成し、結合材をこのプラットフォーム14上の粉末層に吐出する。このようなスライスデータに応じた一層分の造形と、Z軸方向に沿ったプラットフォーム14の当該一層分の移動(下降)とを繰り返すことで、プラットフォーム14上に層単位での造形結果が積層され、造形物Rが完成する。これらの構成については後に詳述する。なお、プラットフォーム14は吐出された粉末状形成材料を支持する支持部に相当する。
【0019】
制御部40は、CPU41やメモリー42などを備え、CPU41がメモリー42に記憶された所定のプログラムに従って測定部20や造形部30を制御する。また制御部40は、造形部30による造形時に、プラットフォーム移動機構15のモーターを数値制御することでプラットフォーム14のZ軸方向の移動距離や移動速度を制御し、ヘッド移動機構33のモーターを数値制御することで造形ヘッド32のX,Y軸方向の移動距離や移動速度を制御する。すなわち、ヘッド移動機構33による造形ヘッド32のX,Y軸方向の移動とともに、プラットフォーム14のZ軸方向の移動を組み合わせることにより、造形ヘッド32と支持部とが相対的に移動することになり、移動部を構成する。
【0020】
図3は、チャンバー13内におけるプラットフォーム14(テーブル14a)の構成例を示している。図3に示すテーブル14aは円形状であり、且つ中心が軸16により下方から支持されている。軸16は、上記プラットフォーム移動機構15によりZ軸方向に沿って移動可能であり且つ回転可能である。この軸16の回転についても制御部40により数値制御される。つまり図3の例では、プラットフォームはターンテーブルとなっている。測定部20による測定対象物Mの測定時には、このターンテーブルとしてのテーブル14aに測定対象物Mが載置され、テーブル14aが回転する状況で測定が行なわれる。回転するターンテーブルに測定対象物Mが載ることで、イメージセンサー22は、それ自体が固定されていても測定対象物Mを360度満遍無く読み取ることができる。つまり、造形用の空間としても使用されるチャンバー13内において効率よく測定対象物Mについての正確な3次元モデルデータを取得できる。一方、造形部30による造形物Rの造形時には、テーブル14aは基本的には回転せず、Z軸方向に沿った移動を行なう。
【0021】
図4はチャンバ13内の支持部と移動部と造形ヘッドを概略的に示す斜視図である。
ヘッド移動機構(移動部)33は、造形ヘッド32を枠内でX,Y方向に移動可能なように支持している。支持部は、テーブル14aと、このテーブル14aを囲む筒部14bと、この筒部14b外の外でならした粉末状形成材料を回収する回収部36aとを備え、回収した粉末状形成材料を再利用できるようになっている。
【0022】
図5は、造形ヘッド32を正面図により拡大表示して示している。
造形ヘッド32は、粉末状形成材料と結合材と着色剤を供給するものである。図に示す右方には上部からチューブで供給される粉末状形成材料を下方の所定の領域に吐出する吐出部34を備え、図に示す左方には上部からチューブで供給される結合材と着色剤を噴出する噴出部32aを備えている。また、吐出部34と噴出部32aとの間には回転駆動可能に支持されるならし部35を備えている。ならし部35は、上記噴出部32aを覆って覆蓋する凹部状に形成されたキャップ35aと、このキャップ35aを両側で半回転可能に支持するアーム35b,35bを有している。キャップ35aの下面には堤防状の突起35a1が形成されており、噴出部32aを覆蓋する位置がならし位置であり、半回転して噴出部32aを露出させる位置が露出位置である。なお、半回転したときに突起35a1は上方に突出することになるが、造形ヘッド32の側には同突起35a1を収容可能な凹みを形成してあるので、造形ヘッド32は半回転可能である。ならし位置では、キャップ35aが噴出部32aを覆蓋しつつ、突起35a1が下に突き出る状態となるので、吐出部34から吐出される粉末状形成材料をならすことができる。
【0023】
図6は、造形ヘッドの噴出部32aを下面側から見たときの概略を示している。噴出部32aは、結合材を噴出する結合材噴出ヘッド32a1と、複数の着色剤をそれぞれ個別に噴出する着色剤ヘッド32a2とを備えている。本実施例においては、粉末状形成材料と結合材は透明または白であり、噴出部32aは有色成分を含む着色剤を同結合材に加えて噴出可能となっている。
【0024】
図7は、本実施例における造形処理を模式的に示している。
造形ヘッド32は、結合材タンク32bと、着色剤タンク32cと、粉末状形成材料タンク36bに対してチューブで接続されており、噴出及び吐出する着色剤と結合材と粉末状形成材料が供給されるようになっている。また、造形ヘッド32が吐出部34から上記テーブル14a上に粉末状形成材料を吐出した後、ならし部35の突起35a1で上面をならし、余分な粉末状形成材料は筒部14bの外に掻き出される。掻き出された粉末状形成材料は回収部36aにて回収されて粉末状形成材料タンク36bに供給されるので、回収した粉末状形成材料を再利用できる。なお、ならすときにはならし部35のキャップ35aが噴出部32aを覆蓋しているので、吐出部34から吐き出されて撒き上がった粉末状形成材料が噴出部32aに付着して詰まらせてしまうことがない。なお、本実施例では、キャップ35aが噴出部32aを覆い被さっているが、少なくとも吐出部34と噴出部32aとを区切るような位置であれば粉末状形成材料が噴出部32aに付着して詰まらせてしまうことを防止できる。
【0025】
図8は、造形データをネットワークを介して取得する状況を示す概略図である。
上述したように本実施例では制御部40が3次元モデルデータを生成したりスライスデータを生成している。しかし、かかる演算処理の負担は大きいのでネットワーク50を介して外部の演算装置51a〜51cに接続し、これらを利用して3次元モデルデータやスライスデータを求めるようにしても良い。このように構成すれば、制御部40のCPU41やメモリー42として処理能力の低いものでも利用できるようになる。
【0026】
2.複製処理の説明
図9は、3次元複合機10によって実行される立体物の複製処理の概略をフローチャートにより示している。なお、フローチャート中の各ステップのうち、ユーザによる行為は鎖線で囲んで示している。
ステップS100では、ユーザにより、チャンバー13内のターンテーブル上に測定対象物Mが載置される。ステップS110では、制御部40は複製処理の開始指示を受け付ける。この場合、ユーザが操作受付部11bを操作して、例えば“コピー”ボタンを押下げ等することで、制御部40は複製処理の開始指示を受け付ける。ステップS120では、制御部40は、測定部20に対して測定実行を指示し、当該指示に応じて測定部20は測定対象物Mを3次元測定して3次元モデルデータを生成する。むろんこのとき、制御部40は、ターンテーブルを回転させる制御も行なう。
【0027】
測定部20による測定の終了後、ステップ130では、制御部40は、測定対象物Mの取り出し催促を外部に対して行なう。測定対象物Mの取り出し催促は、3次元複合機10が備えるスピーカーから所定の音声を出力させたり、表示装置11aに所定のメッセージを表示させたりして行なう。ステップS140では、ターンテーブル上に載置された測定対象物Mがユーザにより3次元複合機10外へ取り出される。ステップS150では、制御部40は、測定対象物Mが取り出されたか否かを所定のセンサー等を介して判定し、取り出しを確認したらステップS160で造形準備を実行する。造形準備とは、造形部30のデータ変換部31に、上記ステップS120で取得された3次元モデルデータをスライスデータへ変換させたり、プラットフォーム14の位置を造形開始のための所定位置に移動させたりする処理等である。
【0028】
造形準備が整った後、ステップS170では、制御部40は、造形部30に対して上記ステップS160で変換させた各スライスデータに基づく造形実行を指示し、当該指示に応じて造形部30は造形ヘッド32を駆動させて造形を実行する。むろんこのとき、制御部40は、造形ヘッド32およびプラットフォーム14を移動させる制御も行なう。ステップS170の結果、プラットフォーム14上にはスライスデータに応じて粉末状形成材料が結合された各層が積み重なり、上記ステップS100で載置された測定対象物Mの複製物である造形物Rが完成する。ステップS180では、制御部40は、造形部30による造形が終了したタイミングで造形物Rの取り出しの催促を外部に対して行なう。造形物Rの取り出し催促も音声やメッセージ表示等により行なう。ステップS190では、プラットフォーム14上に造形された造形物Rがユーザにより3次元複合機10外へ取り出され、ステップS195では、制御部40は、造形物Rが取り出されたか否かをイメージセンサー22を介して判定し、取り出しを確認したら処理を終了する。なお、造形物Rが取り出されたか否かの判定は、プラットフォームに設けた重量センサーや扉12の開閉センサーやその他のセンサーを用いても良いし、ユーザの終了操作で判定しても良い。
【0029】
図10は、造形処理の要部(ステップS170)の手順を示すフローチャートである。
造形処理は、各層ごとに粉末層を形成した後、結合材を噴出して壁部を形成し、さらに着色することになる。この各層の処理の詳細を以下に説明する。
まず、ステップS200では、造形ヘッド32を走査開始位置へ移動させる。走査開始位置は、造形ヘッド32をX,Y平面で移動させる際の起点となる位置であり、この位置から主走査動作と副走査動作を繰り返してプラットフォーム14のテーブル14a上面を満遍なく移動できる。なお、この時点では、ならし部35のキャップ35aはならし位置(カバー位置)にあり、噴出部32aを覆蓋している。
【0030】
走査開始位置から、ステップS210では、粉末状形成材料の吐出を開始する。すなわち、粉末状形成材料をテーブル14a上面に満遍なく吐出する。そして、ステップS220では、ならし走査を開始する。ステップS210で吐出部34から粉末状形成材料をテーブル14aに吐出しただけでは、その表面はなだらかではなく、凹凸が残っている。このため、ステップS220で行なうならし走査では、ならし部35の突起35a1を堆積している粉末状形成材料に突き刺した状態で移動することで表面をならし、必要な平面度を得られるようにする。従って、この時点で粉末層の上面の高さは突起35a1の下端の高さ位置となり、粉末層が完成する。
【0031】
この後、ステップS230では、造形ヘッドを一旦退避位置へ移動させ、ステップS240では、ならし部35のキャップ35aを露出位置へ移動させる。この退避位置は、キャップ35aを移動させることで生じる風により粉末状形成材料が舞い上がらないような位置である。これにより噴出部32aが露出し、結合材と着色剤の噴出が可能となる。続いて、ステップS250では、造形ヘッドを再度走査開始位置に移動させて結合材の噴出走査を開始する。これは上述したスライスデータに基づいて造形物Rの壁部を形成するように、結合させたい粉末状形成材料の部位に対して結合材を噴出させる。このようにして1層分の造形のための処理は完成する。その後、ステップS260では、造形ヘッド32を走査開始位置へ移動させ、ステップS270では、着色剤の噴出走査を開始する。着色剤は壁部における表側にあたる部分に対して行う。最後に、ステップS280では、造形ヘッドを一旦退避位置へ移動させて、ならし部35のキャップ35aをならし位置(カバー位置)に戻し、次の粉末層の形成に備えて、一層の造形処理を終了する。
【0032】
上の例では粉末状形成材料の吐出走査と、ならし走査と、結合材の噴出走査と、着色剤の噴出走査とを個別に行うので、4回の走査が必要になる。しかし、これをより短時間に行うための造形処理を、次に説明する。
図11は、造形処理の要部(ステップS170)の他の手順を示すフローチャートである。
ステップS300では、ステップS200と同様に、造形ヘッドを走査開始位置へ移動する。このときも、ならし部35のキャップ35aはならし位置(カバー位置)にある。次のステップS310では、粉末状形成材料の吐出とならし走査を開始する。先の例では、一旦、粉末状形成材料を吐出し終えた後でならし走査を行ったが、この例では、吐出しながらならし動作を行う。図5に示す造形ヘッド32の場合、右の吐出部34から粉末状形成材料を吐出し、造形ヘッド32を左方から右方へ移動させる。すると、キャップ35aの下方に突き出る突起35a1が吐出されたばかりの粉末状形成材料の表面をならす。テーブル14a上で端から端まで一方向に造形ヘッド32を主走査で移動させたら、副走査するとともに、次の主走査を同様に左の端から右の端まで移動させる。すなわち、常に左から右へ移動させながら、粉末状形成材料の吐出とならしを同時に行う。
【0033】
ステップS330と、ステップS340では、ステップS230とステップS240と同様であり、結合材の吐出のための走査の準備として、造形ヘッド32を走査開始位置へ移動させるとともに、ならし部35のキャップ35aを露出位置へ移動させる。次の、ステップS350では、結合材の吐出と着色剤の噴出走査を開始する。図6に示すように、結合材噴出ヘッド32a1と着色剤ヘッド32a2とは並んで形成されているので、結合材噴出ヘッド32a1から結合材を噴出させながら着色剤ヘッド32a2からも着色剤を噴出させ、テーブル14a上を満遍なく一回走査することで一層の造形と着色とを行う。そして、最後に、ステップS380では、ならし部35のキャップ35aをならし位置(カバー位置)へ移動させ、次の粉末層の形成に備える。
【0034】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
【0035】
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0036】
10…3次元複合機、11…筺体、11a…表示装置、11b…操作受付部、12…扉、13…チャンバー、14…プラットフォーム、14a…テーブル、14b…筒部、15…プラットフォーム移動機構、20…測定部(スキャナー部)、21…光源、22…イメージセンサー、23…ファイル生成部、30…造形部、31…データ変換部、32…造形ヘッド、32a…噴出部、32a1…結合材噴出ヘッド、32a2…着色剤ヘッド、32b…結合材タンク、32c…着色剤タンク、33…ヘッド移動機構(移動部)、34…吐出部、35…ならし部、35a…キャップ、35a1…突起、35b…アーム、36a…回収部、36b…粉末状形成材料タンク、40…制御部、41…CPU、42…メモリー、50…ネットワーク、51a〜51c…外部の演算装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状形成材料を吐出する吐出部と、
この吐出部が吐出した上記粉末状形成材料をならすならし部と、
ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出する噴出部と、
を備えた造形ヘッドと、
吐出された粉末状形成材料を支持する支持部と、
上記造形ヘッドと上記支持部とを相対的に移動させる移動部と、
造形データを用いて上記造形ヘッドにて粉末状形成材料に結合材を噴出させて造形を行わせる制御部と
を備えたことを特徴とする造形装置。
【請求項2】
上記ならし部は、上記吐出部と上記噴出部とを仕切ることを特徴とする請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
上記ならし部は、上記噴出部を覆って粉末状形成材料をならす際のならし位置と、上記噴出部を露出させて結合材を噴出可能とする露出位置とを移動可能に設けられ、
上記制御部は、吐出部と粉末状形成材料を吐出するときにならし位置に上記ならし部を位置させ、上記噴出部が結合材を噴出するときに露出位置に上記ならし部を位置させるように制御することを特徴とする請求項2に記載の造形装置。
【請求項4】
上記ならし部は、上記噴出部を囲う形状として形成されていることを特徴とする請求項3に記載の造形装置。
【請求項5】
上記支持部は、テーブルと、このテーブルを囲む筒部と、この筒部の外でならした粉末状形成材料を回収する回収部とを備え、回収した粉末状形成材料を再利用することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の造形装置。
【請求項6】
上記支持部の上に載ったスキャン対象を立体スキャンするスキャナー部と
を備え、
上記制御部は、このスキャナー部が立体スキャンして得たスキャンデータに基づいて上記造形データを求めることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の造形装置。
【請求項7】
上記制御部は、自ら演算して上記造形データを求めるか、外部のネットワークを介して外部の複数の演算装置で上記造形データを求めることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の造形装置。
【請求項8】
上記粉末状形成材料と上記結合材は透明または白であり、上記噴出部は、同結合材に加えて着色剤を噴出可能であり、同着色剤に有色成分を含むことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の造形装置。
【請求項1】
粉末状形成材料を吐出する吐出部と、
この吐出部が吐出した上記粉末状形成材料をならすならし部と、
ならされた粉末状形成材料に結合材を噴出する噴出部と、
を備えた造形ヘッドと、
吐出された粉末状形成材料を支持する支持部と、
上記造形ヘッドと上記支持部とを相対的に移動させる移動部と、
造形データを用いて上記造形ヘッドにて粉末状形成材料に結合材を噴出させて造形を行わせる制御部と
を備えたことを特徴とする造形装置。
【請求項2】
上記ならし部は、上記吐出部と上記噴出部とを仕切ることを特徴とする請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
上記ならし部は、上記噴出部を覆って粉末状形成材料をならす際のならし位置と、上記噴出部を露出させて結合材を噴出可能とする露出位置とを移動可能に設けられ、
上記制御部は、吐出部と粉末状形成材料を吐出するときにならし位置に上記ならし部を位置させ、上記噴出部が結合材を噴出するときに露出位置に上記ならし部を位置させるように制御することを特徴とする請求項2に記載の造形装置。
【請求項4】
上記ならし部は、上記噴出部を囲う形状として形成されていることを特徴とする請求項3に記載の造形装置。
【請求項5】
上記支持部は、テーブルと、このテーブルを囲む筒部と、この筒部の外でならした粉末状形成材料を回収する回収部とを備え、回収した粉末状形成材料を再利用することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の造形装置。
【請求項6】
上記支持部の上に載ったスキャン対象を立体スキャンするスキャナー部と
を備え、
上記制御部は、このスキャナー部が立体スキャンして得たスキャンデータに基づいて上記造形データを求めることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の造形装置。
【請求項7】
上記制御部は、自ら演算して上記造形データを求めるか、外部のネットワークを介して外部の複数の演算装置で上記造形データを求めることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の造形装置。
【請求項8】
上記粉末状形成材料と上記結合材は透明または白であり、上記噴出部は、同結合材に加えて着色剤を噴出可能であり、同着色剤に有色成分を含むことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の造形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−213971(P2012−213971A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81699(P2011−81699)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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