説明

造影剤

本発明は、以下の式(I)の化合物並びに血管新生に関連する受容体に結合するターゲティングベクターとしての使用に関する。そこで、かかる化合物は、例えば悪性疾患、心疾患、子宮内膜症、炎症関連疾患、関節リウマチ及びカポジ肉腫の診断又は治療に使用し得る。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ペプチド系化合物、並びに単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)や陽電子放射型断層撮影(PET)のような画像診断法における使用に関する。さらに具体的には、本発明は、血管新生に関連する受容体、特にインテグリン受容体(例えばαvβ3インテグリン受容体など)に結合するターゲティングベクターとしての上記ペプチド系化合物の使用に関する。そこで、かかる化合物は、例えば悪性疾患、心疾患、子宮内膜症、炎症関連疾患、関節リウマチ及びカポジ肉腫の診断及び治療に使用し得る。
【背景技術】
【0002】
新しい血管は脈管形成と血管新生という2つの異なる機序で形成される。血管新生は既存の血管からの枝分れによる新しい血管の形成である。このプロセスに対する主な刺激として、組織内の細胞への栄養及び酸素の不十分な供給(低酸素)がある。細胞は血管新生因子の分泌によって応答することがある。血管新生因子は多数存在するが、しばしば言及されるその一例は血管内皮増殖因子(VEGF)である。これらの因子は、基底膜のタンパク質を分解するタンパク分解酵素の分泌だけでなく、かかる潜在的に有害な酵素の作用を制限する阻害剤の分泌も惹起する。血管新生因子のもう一つの顕著な作用は内皮細胞を遊走させ分裂させることである。血管の反管腔側に連続層をなす基底膜に付着した内皮細胞は有糸分裂を起こさない。付着の喪失と血管新生因子受容体からのシグナルとの複合作用によって、内皮細胞の移動、増殖及び再配列が起こり、最終的には新血管周囲に基底膜が合成される。
【0003】
血管新生は創傷治癒及び炎症過程を始めとする組織の増殖及びリモデリングに重要である。腫瘍は、ミリメートル大に達すると、その増殖速度を保つため血管新生を惹起しなければならない。血管新生は内皮細胞とそれらの周囲の環境に特徴的な変化を伴う。これらの細胞の表面は遊走に備えてリモデリングされ、基底膜が分解されて、タンパク分解の誘発と制御に関与する各種タンパク質に加えて、隠れた構造が露出される。腫瘍の場合、形成される血管ネットワークは通常はまとまりがなく、鋭いねじれや動静脈シャントの形成を伴う。血管新生の阻害も抗腫瘍療法の有望な方策であると考えられる。血管新生に伴う形質転換も診断に極めて有望であり、その一例は悪性疾患であるが、この方策は、炎症及びアテローム性動脈硬化症を始めとする様々な炎症関連疾患にも極めて有望である。初期アテローム性動脈硬化病変のマクロファージは血管新生因子の潜在的発生源である。
【0004】
細胞接着に関与するリガンドの多くはアルギニン−グリシン−アスパラギン酸のトリペプチド配列(RGD)を含んでいる。RGD配列は、この配列を提示するリガンドと細胞表面の受容体との間の一次認識部位として作用すると考えられている。リガンドと受容体の二次的相互作用は上記相互作用の特異性を高めると一般に考えられている。こうした二次的相互作用は、リガンドと受容体のRGD配列に直接隣接した部分又はRGD配列から離れた部位で起こり得る。
【0005】
血管新生に関連するインテグリン受容体のインビボでの効率的ターゲティング及びイメージングには、化学的に頑強かつ安定で選択性及び親和性の高いRGD系ベクターが要求される。さらに、造影剤の設計に際しては、バックグラウンドノイズに付随する問題を軽減するため排泄経路が重要な要因である。
【0006】
国際公開第03/006491号には、インテグリン血管新生に関連した受容体をターゲットとするペプチド系化合物が記載されている。しかし、かかるペプチド系化合物でSPECTやPETなどの画像診断法並びに治療に有用な化合物はさらに必要とされている。特に、放射性核種のようなレポーター部分の導入に用いられる反応条件に対する安定性の向上したペプチド系化合物が必要とされている。
【特許文献1】国際公開第03/006491号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/77145号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/062819号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5888474号明細書
【特許文献5】国際公開第02/20610号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の第一の態様では、式(I)の化合物を提供する。
【0008】
【化1】

式中、
は次式の基であり、
【0009】
【化2】

(但し、bは0〜10の整数である。)
はC1〜4アルキレン又はC2〜4アルケニレン橋かけ基であり、
は存在しないか、或いは適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される1〜10個のヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜30ヒドロカルビル基であって、優先的にグルタル酸及び/又はコハク酸及び/又はポリエチレングリコール単位及び/又は次式の単位から誘導されたスペーサー基を表し、
【0010】
【化3】

は抗悪性腫瘍薬、キレート剤又はレポーター部分である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好適なキレート剤Zとしては、次の式Aのものが挙げられる。
【0012】
【化4】

式中、
1A、R2A、R3A及びR4Aは各々独立にR基であり、
各R基は独立にH又はC1〜10アルキル、C3〜10アルキルアリール、C2〜10アルコキシアルキル、C1〜10ヒドロキシアルキル、C1〜10アルキルアミン、C1〜10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
或いは、Zは以下の式(I)、(ii)、(iii)又は(iv)のキレート剤であってもよい。
【0013】
【化5】

キレート剤の好ましい例は次の式(v)で表される。
【0014】
【化6】

式(A)のキレート剤を含む式(I)の化合物を放射性標識すると、中性pH付近の水性条件下室温で良好な放射化学的純度(「RCP」)が得られる。
【0015】
スペーサー基Wの役割はペプチド成分の活性部位からZを離隔させることである。例えば、スペーサー基Wはペプチドの活性部位から嵩高い抗悪性腫瘍薬を離隔させるのことができる。
【0016】
適当なキレート剤Zのその他の例は、米国特許第4647447号、国際公開第89/00557号、米国特許第5367080号、米国特許第5364613号に開示されており、さらに以下の表1に挙げるものがある。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

本発明の一態様では、Zは抗悪性腫瘍薬である。この態様では、式(I)の化合物は癌に関連した血管新生部位をターゲティングし、抗悪性腫瘍薬を疾患領域に運搬する。抗悪性腫瘍薬の例として、シクロホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メトトレキセート、シタラビン、フルオロウラシル、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、テニポシド、シスプラチン、アムサクリン、ドセタキセルが挙げられるが、その他幅広い種類の抗悪性腫瘍薬も使用し得る。
【0019】
式(I)の化合物のレポーター部分(Z)はインビボ画像診断法で直接又は間接的に検出できる部分であればよい。検出可能な放射線を直接又は間接的に放出するレポーター部分(例えば、陽電子放射性核種のような放射性核種)が好ましい。
【0020】
磁気共鳴(MR)イメージング用には、レポーター部分は核スピンが0でない同位体(例えば19F)であるか、或いは不対電子スピンを有していて常磁性、超常磁性、フェリ磁性又は強磁性特性を備える物質である。光学イメージング用には、レポーター部分は光散乱体(例えば着色又は非着色粒子)、光吸収体又は発光体である。磁気イメージング用には、レポーターは検出可能な磁性特性を有する。電気インピーダンス式イメージング用には、レポーターは電気インピーダンスに影響を与えるものである。シンチグラフィー、SPECT、PETなどの用途には、レポーターは放射性核種である。
【0021】
概して、レポーター部分は、(1)原子番号の高い(例えば原子番号が37を超える)金属又は多原子金属含有イオン(TcOなど)、常磁性種(例えば遷移金属又はランタニド)又は放射性同位体にキレートした上述のキレート剤、(2)共有結合した非金属種で、不対電子部位(例えば持続性フリーラジカルの酸素又は炭素)、原子番号の高い非金属又は放射性同位体であるもの、(3)原子番号の高い原子を含む多原子クラスター又は結晶で、協同的磁性挙動(例えば超常磁性、フェリ磁性又は強磁性)を示すか或いは放射性核種を含むもの、のいずれでもよい。
【0022】
キレート金属レポーター部分は、好ましくは90Y、99mTc、111In、47Sc、67Ga、68Ga、51Cr、177mSn、62Cu、187Tm、97Ru、188Re、177Lu、199Au、203Pb及び141Ceからなる群から選択され、上述のキレート基でキレートされる。
【0023】
存在するキレート剤を金属化する方法は当業者の技術レベルである。金属は、直接導入法、鋳型合成及び/又はトランスメタレーションの3通りの常法のいずれかでキレート剤に導入し得る。直接導入法が好ましい。
【0024】
そこで、例えば単にキレート剤含有部分の水溶液を好ましくはpH約4〜約11の水溶液中の金属塩に曝露又は混合することによって、金属イオンをキレート剤と容易に錯化できるのが望ましい。塩はどんな塩でもよいが、好ましくはハロゲン塩のような水溶性の金属塩であり、さらに好ましくは、かかる塩は金属イオンとキレート剤との結合を妨害しないものを選択する。キレート剤含有部分は、好ましくはpH約5〜約9、さらに好ましくはpH約6〜約8の水溶液中に存在する。キレート剤含有部分は、至適pHが得られるようにクエン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩及びホウ酸塩のような緩衝塩と混合してもよい。好ましくは、緩衝塩は後段の金属とキレート剤との結合を妨害しないものを選択する。
【0025】
以下の同位体及び同位体対:47Sc21141Ce58188Re75177Lu71199Au7947Sc211315367Cu291315312853188Re7699mTc439039873947Sc2144Sc21903912353146Sm62153Sm62及び9039111In49は、放射性標識法又はキレーターを変更しなくても、イメージングと治療の両方に使用できる。
【0026】
好ましい非金属原子レポーターとしては、123I、131I及び18Fのような放射性同位体、並びに19Fのような核スピンが0でない原子及びIのような重原子が挙げられる。
【0027】
本発明の好ましい態様では、式(I)の化合物のZは、補欠分子族として、又は置換若しくは付加反応又はキレート化によって導入された陽電子放出型放射性核種を含む。この目的に適した陽電子放出型放射性核種としては、11C、18F、15O、13N、75Br、122I、124I、82Rb、68Ga及び62Cuが挙げられるが、11C及び18Fが好ましい。得られた式(I)の化合物は、陽電子放射型断層撮影(PET)イメージングに使用し得る。
【0028】
したがって、本発明の好ましい態様では、次の式(Ia)の化合物を提供する。
【0029】
【化7】

式中、
は単結合又は次式の基であり、
【0030】
【化8】

(但し、aは、1〜30の整数である。)
は次式の基であり、
【0031】
【化9】

(但し、bは、0〜10の整数である。)
はC1〜4アルキレン又はC2〜4アルケニレン橋かけ基であり、
リンカーは適宜1〜10個のヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜30ヒドロカルビル基である。
【0032】
式(Ia)の化合物において、Rは好ましくはC1〜4アルキレン、さらに好ましくは−CH−であり、aは好ましくは1〜10の整数、最も好ましくは5であり、bは好ましくは1である。
【0033】
式(Ia)において、リンカーは、適宜酸素や窒素のような1〜10個のヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜60ヒドロカルビル基であり、好ましい排出特性など、良好なインビボ薬物動態が得られるように選択し得る。
好適なリンカー基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル鎖、芳香族、ポリ芳香族及びヘテロ芳香族環、さらにエチレングリコール、アミノ酸又は炭水化物サブユニットを含むポリマーが挙げられる。リンカーは好ましくは以下の(II)、(III)及び(IV)から選択される。
【0034】
【化10】

式中、nは1〜20の整数であり、mは1〜10の整数であり、pは1〜20の整数であり、qは0〜4の整数であり、rは1〜10の整数である。
【0035】
式(II)において、nは通例2〜6、好適には3であり、mは通例1〜4、好適には2である。
【0036】
式(III)において、pは通例1〜6、好適には3である。
【0037】
式(IV)において、−(CH−基は好適にはアミド基に対してパラ位に結合しており、qは通例0〜4、好適には1であり、rは通例1〜4、好適には2である。
【0038】
後述のインビトロ競合結合試験に示す通り、式(I)及び(Ia)の化合物は、血管新生に関連する受容体に結合する。そこで、これらの化合物は、血管新生に関連した疾患及び病態の治療、インビボ診断及びイメージングに有用であると考えられる。
【0039】
「血管新生に関連した疾患及び病態」という用語には、以下に挙げる疾患及び病態が包含される。これに関しては国際公開第98/47541号も参照できる。
【0040】
血管新生に関連した疾患及び病態としては、例えば様々な形態の癌及び転移、例えば乳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌又は卵巣癌が挙げられる。
【0041】
血管新生に関連したその他の疾患及び病態は、炎症(例えば慢性)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ及び歯肉炎である。
【0042】
血管新生に関連したさらに別の疾患及び病態は、動静脈奇形、星細胞腫、絨毛癌、グリア芽細胞種、神経膠腫、血管腫(小児性、毛細血管性)、肝細胞腫、過形成性子宮内膜症、虚血性心筋症、子宮内膜症、カポジ肉腫、黄斑変性症、黒色腫、神経芽細胞腫、閉塞性末梢動脈疾患、骨関節炎、乾癬、網膜症(糖尿病性、増殖性)、強皮症、精上皮腫及び潰瘍性大腸炎である。
【0043】
したがって、本発明の別の態様では、医療、特に血管新生に関連した疾患又は病態の例えばPETによるインビボ診断又はイメージングに使用するための式(I)又は(Ia)の化合物を提供する。
【0044】
別の態様では、血管新生に関連した疾患又は病態のインビボ診断又はイメージングの方法であって、式(I)又は(Ia)の化合物をヒト又は動物の身体に投与し、次いで身体の一部分又は全体の画像、好適にはPET画像を生成する段階を含む方法を提供する。
さらに、治療に有効な量の式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与する段階を含む血管新生に関連した疾患又は病態の治療方法も提供する。
【0045】
式(I)又は(Ia)の化合物は、好ましくは放射性医薬組成物として投与される。「放射性医薬組成物」とは、本発明では、式(I)又は(Ia)の化合物をヒトなどの哺乳類への投与に適した形態で含む組成物と定義される。投与は、好ましくは放射性医薬組成物を水溶液として注射することによって実施される。かかる放射性医薬組成物は、緩衝剤、薬学的に許容される可溶化剤(例えば、シクロデキストリン、又はPluronic、Tween、リン脂質などの界面活性剤)、薬学的に許容される安定剤又は酸化防止剤(アスコルビン酸、ゲンチシン酸、パラアミノ安息香酸など)、又は凍結乾燥用構造形成剤(塩化ナトリウムやマンニトール)などの追加成分を適宜含んでいてもよい。放射性医薬組成物は、検査すべき疾患の種類又は病態、患者の体重その他当業者に自明の要因を考慮して、信頼性のある画像が得られる量で投与される。レポーター部分が金属を含んでいる場合、信頼性のある画像を得るには、一般に患者の体重1kg当たりイメージング用キレート化金属イオン0.001〜5.0mmolの用量が有効である。PETについて、式(I)又は(Ia)の化合物の適量は0.1〜100mCi、好ましくは1〜20mCiである。
【0046】
したがって、本発明の別の態様では、式(I)又は(Ia)の化合物と薬学的に許容される1種以上の賦形剤を含む放射性医薬組成物を提供する。本発明は、さらに、治療に有効な量の式(I)の化合物又はその塩を、薬学的に許容される1種以上の補助剤、賦形剤又は希釈剤と共に含んでなる組成物も提供する。
【0047】
式(I)の化合物の有効治療線量は、治療すべき病態及び患者によって異なるが、一般に1pmol/kg〜1mmol/1kg体重の範囲内である。
【0048】
式(I)の化合物は、自動ペプチド合成装置を用いたMerrifieldの固相法(J. Am. Chem. Soc., 85: 2149 (1964))及び国際公開第03/006491号に記載のものと同様の方法を始めとする有機合成法で製造し得る。式(I)の化合物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製し得る。
【0049】
式(Ia)の化合物は、以下の式(V)の化合物から、以下の適当な式(VI)の化合物との反応によって製造し得る。
【0050】
【化11】

式中、R、R及びRは、式(I)の化合物について定義した通りであり、Xはクロロ、ブロモ及びヨードから選択される脱離基、好ましくはクロロである。
【0051】
18F−(リンカー)−SH (VI)
式中、リンカーは式(Ia)の化合物について定義した通りである。
【0052】
式(V)の化合物は新規であり、本発明のさらに別の態様をなす。
【0053】
式(V)と(VI)の化合物との反応は、国際公開第03/080544号に記載の方法を用いて実施できる。一般に、この反応は、適当な溶媒(例えばpH5〜11の水性緩衝液)中、5〜70℃の穏和な温度、好ましくは室温で実施し得る。
【0054】
式(V)の化合物は、ペプチド合成の常法、例えば固相ペプチド合成、例えばAtherton,E. and Sheppard,R.C.;“Solid Phase Synthesis”;IRL Press:Oxford, 1989に記載にしたがって、製造し得る。国際公開第03/006491号にも同様のペプチドの合成法が記載されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。橋かけ基Rの導入は、2つの遊離チオール基を含む対応ペプチドとジクロロアルカン又はジクロロアルケン(Rをメチレンとするときはジクロロメタン)との反応で実施し得る。式(V)の化合物の「X−CHC(O)−」基の導入は、ペプチド結合形成の通常の条件下での、ペプチドのN末端又はアミン含有アミノ酸、好ましくはリジンと次の式(VII)の試薬との反応で実施できる。
【0055】
X−CHC(O)Z (VII)
(式中、Xは式(V)の化合物について定義した通りであり、Zは−OH、又はクロロ、ブロモ、フルオロ、−OC(O)CH−X(Xは式(V)の化合物について定義した通りである。)のような適当な活性化基である。)。或いは、Zが−OHの場合、その酸を、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)やN−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスファートN−オキシド(HATU)のようなインサイツ活性化剤を用いて活性化してもよい。
【0056】
式(VI)の化合物は、国際公開第03/080544号に記載されているような常法によって、対応する以下の式(VIa)の化合物を、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドのような適当な溶媒中、通常は昇温下(例えば60〜120℃)で、サイクロトロン生成水性[18F]フッ化物(好適には、塩基(例えば、テトラブチルアンモニウム又はKCO/Kryptofix−222)からの蒸発によって予め活性化しておいたもの)と反応させた後、常法でチオール保護基を除去することによって製造し得る。
【0057】
L−(リンカー)−SR (VIa)
式中、Lはp−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート又はメタンスルホネートのような脱離基であり、リンカーは式(VI)の化合物について定義した通りであり、Rは水素又はチオール保護基である。
【0058】
リンカーが式(II)のものである式(VI)の化合物は、対応する以下の式(VIb)の化合物を、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドのような適当な溶媒中、通常は昇温下(例えば60〜120℃)で、サイクロトロン生成水性[18F]フッ化物(好適には、塩基(例えば、テトラブチルアンモニウム又はKCO/Kryptofix−222)からの蒸発によって予め活性化しておいたもの)と反応させた後、常法でチオール保護基を除去することによって製造し得る。
【0059】
L−(CHCHO)−(CH−SR (VIb)
式中、Lはp−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート又はメタンスルホネートのような脱離基であり、n及びmは式(II)で定義した通りであり、Rは水素又はチオール保護基である。
【0060】
リンカーが式(III)のものである式(VI)の化合物は、対応する以下の式(VIc)の化合物を、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドのような適当な溶媒中、通常は昇温下(例えば60〜120℃)で、サイクロトロン生成水性[18F]フッ化物(好適には、塩基(例えば、テトラブチルアンモニウム又はKCO/Kryptofix−222)からの蒸発によって予め活性化しておいたもの)と反応させた後、常法でチオール保護基を除去することによって製造し得る。
【0061】
L−(CH−SR (VIc)
式中、Lはp−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート又はメタンスルホネートのような脱離基であり、pは式(III)で定義した通りであり、Rは水素又はチオール保護基である。
【0062】
リンカーが式(IV)のものである式(VI)の化合物は、対応する以下の式(VId)の化合物を、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドのような適当な溶媒中、通常は昇温下(例えば60〜120℃)で、サイクロトロン生成水性[18F]フッ化物(好適には、塩基(例えば、テトラブチルアンモニウム又はKCO/Kryptofix−222)からの蒸発によって予め活性化しておいたもの)と反応させた後、常法でチオール保護基を除去することによって製造し得る。
【0063】
【化12】

式中、L′はヨード、p−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート又はメタンスルホネートのような脱離基であり、qが0のときは、L′はニトロ、又はヨードニウム若しくはアンモニウム塩であってもよく、q及びrは式(IV)で定義した通りであり、Rは水素又はチオール保護基である。
【0064】
式(VIa)、(VIb)、(VIc)及び(VId)において、適当なチオール保護基としては、(フェニル)C−(すなわちトリチル)その他、Protecting Groups in Organic Synthesis, Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts, published by John Wiley & Sons Inc.に記載のものが挙げられる。かかるチオール保護基の除去は、上記Greeneの成書に記載されているような常法で実施すればよい。例えば、Rがトリチルの場合、ジクロロメタンのような塩素化溶媒中の希酸(例えばトリフルオロ酢酸)での処理によって、遊離チオールを形成し得る。
【0065】
好ましい態様では、式(VIa)、(VIb)、(VIc)及び(VId)の化合物を、ポリマービーズ又はコーティング(例えばトリチル又はクロロトリチル樹脂など)のような固体担体に結合させてもよい。この態様では、ポリマー結合生成物から過剰の試薬及び放射性フッ素化反応の副生物を洗浄によって分離し得る。上述の脱保護法を用いれば、固体担体から式(VI)の化合物が開裂する。この方法は特に式(VI)の化合物の自動合成に適していると思われる。別法として、チオール脱保護の副生成物が反応混合物に不溶であれば、濾過によって除去できる。
【0066】
本発明の別の態様では、式(I)の放射性フッ素化ペプチド製造用キットであって、式(VIa)、(VIb)、(VIc)又は(VId)の補欠分子族と式(V)の活性化ペプチドとを含むキットを提供する。
【0067】
キットの使用に際して、式(VIa)、(VIb)、(VIc)又は(VId)の化合物を上述の方法を用いて対応する式(VI)の化合物に変換する。好ましくは、式(VI)の化合物又はそのチオール保護前駆体は、反応混合物を固相抽出(SPE)カートリッジに流して、不要な反応体から分離し得る。SPEカートリッジには、グラファイトパッド又はC18固相を含むものがある。チオール保護基は、例えばトリフルオロ酢酸のような酸の添加によって除去できる。式(VI)の化合物のチオール基がトリチル基のような疎水性基で保護されている場合、脱保護はSPEカートリッジで簡便に実施でき、疎水性チオール保護基(トリチルなど)を固相に結合したまま、式(VI)の標識補欠分子族が高い純度及び収率で溶出される。次いで式(VI)の化合物を式(V)の化合物に添加するが、これは水性緩衝液(pH7〜11)に好適に溶解し得る。穏和な温度で1〜60分間反応させた後、標識ペプチドを例えばSPEで精製し、回収すればよい。
【0068】
以下の実施例によって本発明を例証するが、実施例では以下の略語を用いる。
【0069】
DCM:ジクロロメタン、
TFA:トリフルオロ酢酸、
THF:テトラヒドロフラン、
HBTU:2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、
Boc:tert−ブトキシ−カルボニル、
Fmoc:9−フルオレニルメトキシカルボニル、
TIS:トリイソプロピルシラン。
【実施例】
【0070】
実施例1: 3−フルオロ−プロピルスルファニル標識RGD含有ペプチドの製造
標記化合物
【0071】
【化13】

1a) 3−トリチルスルファニル−プロパン−1−オールの合成
【0072】
【化14】

塩化トリチル(27.9mg、0.1mmol)及びトリエチルアミン(49μl、0.5mmol)をDCM(2mL)に溶解してから、3−メルカプト−1−プロパノール(9μl、0.1mmol)を添加した。6時間後、DCMを減圧下で蒸発させ、粗生成物を調製用逆相クロマトグラフィー(Vydac 218TP1022カラム;溶媒A=水/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA;勾配:40分間で30〜70%B;流速10mL/分;254nmで検出)で精製した。収量6mgの精製標品を得た(分析用HPLC:Phenomenex Luna C18,00B−4251−E0カラム;溶媒A=水/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA;勾配:10分間で30〜70%B;流速1.0mL/分;保持時間7.73分、214及び254nmで検出)。構造はNMRで確認した。
【0073】
1b) メタンスルホン酸3−トリチルスルファニル−プロピルエステルの合成
【0074】
【化15】

THF(1mL)中の3−トリチルスルファニル−プロパン−1−オール(5mg、0.015mmol)及びトリエチルアミン(32μl、0.23mmol)の溶液に、塩化メシル(6μl、0.075mmol)を添加した。30分後、THFを減圧下で蒸発させ、粗生成物をDCMに溶解し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液、塩化ナトリウムの飽和溶液で洗浄し、MgSOで乾燥した。減圧下で蒸発させた後、10mgの収量を得た(分析用HPLC:Luna C18,00B−4251−E0カラム;溶媒A=水/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA;勾配:10分間で40〜80%B;流速1.0mL/分;保持時間7.12分、214及び254nmで検出)。構造はNMRで確認した。
【0075】
1c) (3−フルオロ−プロピルスルファニル)トリフェニルメタンの合成
【0076】
【化16】

フッ化カリウム(1.4mg、0.024mmol)及びKryptofix 222(9.0mg、0.024mmol)をアセトニトリル(0.2mL)に(加熱しながら)溶解した。アセトニトリル(0.2mL)中のメタンスルホン酸3−トリチルスルファニル−プロピルエステル(5mg、0.012mmol)を添加した。反応混合物を80℃に90分間加熱した。粗生成物を調製用逆相クロマトグラフィー(Vydac 218TP1022カラム;溶媒A=水/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA;勾配:40分間で40〜90%B;流速10mL/分;254nmで検出)で精製した。収量2mgの精製標品を得た(分析用HPLC:Phenomenex Luna C18,00B−4251−E0カラム;溶媒A=水/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA;勾配:10分間で40〜80%B;流速1.0mL/分;保持時間8.2分、214及び254nmで検出)。構造はNMRで確認した。
【0077】
1d) Fmoc−Lys(Boc)−Cys(StBu)−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Cys(StBu)−Phe−Cys(Trt)−Rink Amide AM樹脂の合成
標記のペプチド配列は、自動ペプチド合成装置ABI 433Aで1mmolアミノ酸カートリッジを用いてRink Amide AM樹脂から0.1mmolスケールで合成した。アミノ酸は、カップリング前に、HBTUを用いて予め活性化しておいた。
【0078】
1e) Fmoc−Lys(Boc)−シクロ[Cys(CH)−Arg(Pmc)−Gly−Asp(OtBu)−Cys]−Phe−Cys(Trt)−Rink Amide AM樹脂の合成
1d)に記載の通り合成したペプチジル樹脂0.05mmolを、トリブチルホスフィン346μL、水100μL及びジメチルホルムアミド2mLの溶液で処理した。90分後、試薬を除去し、樹脂をジメチルホルムアミド及びジクロロメタンで洗浄した。次いで、樹脂をフッ化テトラブチルアンモニウム63mg及びジクロロメタン2mLの溶液で処理した。2時間後に試薬を濾過で除去し、樹脂をジクロロメタンで数回洗浄した。
【0079】
1f) Cl−CHCO−Lys−シクロ[Cys(CH)−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys−NHの合成
【0080】
【化17】

1e)のペプチジル樹脂から9−フルオレニルメトキシカルボニル基を除去し、無水クロロ酢酸を用いてN−末端クロロアセチル化した。次いで、樹脂からのペプチドと側鎖保護基の同時除去を、2.5%のトリイソプロピルシランと2.5%の水を含有するトリフルオロ酢酸(TFA)5mL中で1時間40分実施した。後処理後、粗ペプチド27mgを得た(分析用HPLC;勾配:10分間で0〜40%B、ただし、溶媒A=HO/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA;1mL/分;Phenomenex Luna 3μ C18(2)カラム50×4.6mm;検出UV波長214nm;生成物保持時間7.79分)。エレクトロスプレー質量分析法でさらに生成物の特性決定を行った。M+Hの予測値1018.3、実測値1018.3)。
【0081】
1g) シクロ[CHCO−Lys−シクロ[Cys(CH)−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys−NHの合成
【0082】
【化18】

1f)に記載の通り合成したペプチド生成物27mgを、水/アセトニトリルに溶解した。混合物をアンモニア溶液でpH8に調整し、2時間撹拌した。凍結乾燥後、所望の生成物26mgを得た。調製用HPLC(Phenomenex Luna 5μ C18(2)カラム250×21.20mm)での粗製物の精製を40分間で0〜30%B(ただし、溶媒A=HO/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA)、流速10mL/分で実施した。凍結乾燥後、9mgの純物質を得た(分析用HPLC;勾配:10分間で0〜30%B、ただし、溶媒A=HO/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA;流速1mL/分;Phenomenex Luna 3μ C18(2)カラム50×4.6mm;検出UV波長214nm;生成物保持時間7.00分)。エレクトロスプレー質量分析法でさらに生成物の特性決定を行った。M+Hの予測値982.4、実測値982.3)。
【0083】
1h) シクロ[−CHCO−Lys(Cl−CHCO−アミノ−PEG)−シクロ[Cys(CH)−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys−NHの合成
【0084】
【化19】

1g)に記載の通り合成したペプチド9mg、無水Boc−アミノ−PEG34mg及びN−メチルモルホリン7μLを、ジメチルホルムアミド1mLに溶解し、混合物を30分間撹拌した。N−メチルモルホリン25μLと水2mLの溶液(pH約9)を添加して、反応を奪活した。混合物を2時間撹拌し、次いで蒸発乾固した。残渣を2.5%のトリイソプロピルシランと2.5%の水を含有するTFA溶液5mLで1時間処理した。TFAを減圧下で蒸発させ、残渣にジエチルエーテルを添加し、得られた沈殿をジエチルエーテルで洗浄し、風乾した。沈殿を、無水クロロ酢酸8mg及びN−メチルモルホリン9μLと共にジメチルホルムアミド3mL中に溶解し、混合物をさらに60分間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固した。
【0085】
調製用HPLC(Phenomenex Luna 5μ C18(2)カラム250×21.20mm)での粗製物の精製を、40分間で5〜50%B(ただし、溶媒A=HO/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA)、流速10mL/分で実施した。凍結乾燥後、5mgの純物質を得た(分析用HPLC;勾配:10分間で5〜50%B、ただし、溶媒A=HO/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA;流速1mL/分;Phenomenex Luna 3μ C18(2)カラム50×4.6mm;検出UV波長214nm;生成物保持時間7.08分)。エレクトロスプレー質量分析法でさらに生成物の特性決定を行った。M+Hの予測値1436.5、実測値1436.0)。
【0086】
1i) クロロアセチル修飾(modified)ペプチドへの部位特異的結合
【0087】
【化20】

1c)に記載の(3−フルオロ−プロピルスルファニル)トリフェニルメタン(2.0mg、0.006mmol)のトリチル基を、TIS(10μl)及び水(10μl)の存在下、TFA(100μl)で開裂した(5分間)。混合物を水250μl及びアセトニトリル250μlで希釈してから、1h)で得たc[CHCO−Lys(ClCHCO−アミノ−PEG)−c[Cys(CH)−Arg−Gly−Asp−Cys]−Phe−Cys]−NH(4.0mg、0.003mmol)の水500μl及びアセトニトリル500μl中の溶液を添加し、炭酸カリウム緩衝液(約400μl)でpHを10に調整した。反応混合物を60℃に50分間加熱した。反応混合物をTFAで奪活し、調製用逆相クロマトグラフィー(Phenomenex社製C18,00G−4253−N0カラム;溶媒A=水/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA;勾配:30分間で10〜50%B;流速5mL/分;254nmで検出)を用いて精製した。収量1.1mgの精製標品を得た(分析用HPLC:Vydac 218TP54カラム;溶媒A=水/0.1%TFA、溶媒B=CHCN/0.1%TFA;勾配:10分間で10〜50%B;流速1.0mL/分;保持時間13.20分、214及び254nmで検出)。質量分析法でさらに特性決定を行ったところ、m/z値は1494.1であった。[M−H]は所望生成物に対する予測値通りであった。
【0088】
実施例2: 3−[18F]−フルオロ−プロピルスルファニル標識RGD含有ペプチドの製造
標記化合物
【0089】
【化21】

2a) 18Fシントン:(3−[18F]フルオロ−プロピルスルファニル)トリフェニルメタンの製造
【0090】
【化22】

Kryptofix(登録商標)222(10mg)、炭酸カリウム(1mgを水50μlに溶解したもの)及びアセトニトリル(0.8mL)を仕込んだWheatonバイアル(2mL)に、フッ素−18を含有する水(10mCi、1mL)を添加した。窒素気流中、110℃で1時間加熱して溶媒を除去した。無水アセトニトリル(0.5mL)を添加し、上述の通り再度蒸発させた。この段階を2回繰り返した。バイアルを室温に冷却し、次いで実施例2b)に記載の通り合成したメシル酸エステル(1mg)の無水DMSO(0.2mL)中の溶液を注入した。反応混合物を80℃で5分間撹拌し、HPLCで分析した(勾配1、放射化学収率90%)。
【0091】
反応混合物をDMSO/水(1:1v/v、0.15mL)で希釈し、予めコンディショニング(アセトニトリル10mL、水20mL)しておいたSepPak−Plusカートリッジ(C18、Waters社製)に添加した。カートリッジを水(10mL)で洗浄し、生成物はアセトニトリルで溶出した。放射化学的純度は、99%であった。
【0092】
2b) クロロアセチル修飾ペプチドへの部位特異的結合
2a)に記載の通り合成した(3−[18F]フルオロ−プロピルスルファニル)トリフェニルメタンの脱保護と、その後の1h)に記載の通り合成したクロロアセチル修飾ペプチドとの反応は、実施例1i)に記載のものと同様の方法を用いて行う。
【0093】
生物学的データ
αvβ3インテグリン受容体を発現することが知られている細胞膜標品を用いて、125I−エキスタチン及びF−標識ペプチドを競合リガンドとして用いた競合結合試験を実施した。結合曲線を得てKiをPrism(商標)ソフトウェアで算出した。実施例1の化合物のKiは7nmolであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)の化合物。
【化1】

式中、
は次式の基であり、
【化2】

(但し、bは0〜10の整数である。)
はC1〜4アルキレン又はC2〜4アルケニレン橋かけ基であり、
は存在しないか、或いは適宜酸素、窒素及び硫黄から選択される1〜10個のヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜30ヒドロカルビル基であって、優先的にグルタル酸及び/又はコハク酸及び/又はポリエチレングリコール単位及び/又は次式の単位から誘導されたスペーサー基を表し、
【化3】

は抗悪性腫瘍薬、キレート剤又はレポーター部分である。
【請求項2】
が放射性核種を含むレポーター部分である、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
次の式(Ia)の化合物。
【化4】

式中、
は単結合又は次式の基であり、
【化5】

(但し、aは、1〜30の整数である。)
は次式の基であり、
【化6】

(但し、bは、0〜10の整数である。)
はC1〜4アルキレン又はC2〜4アルケニレン橋かけ基であり、
リンカーは適宜1〜10個のヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜30ヒドロカルビル基である。
【請求項4】
がC1〜4アルキレンであり、aが1〜10の整数であり、bが1である、請求項3記載の式(Ia)の化合物。
【請求項5】
が−CH−であり、aが5である、請求項3又は請求項4記載の式(Ia)の化合物。
【請求項6】
リンカーが以下の(II)、(III)及び(IV)から選択される、請求項3乃至請求項5のいずれか1項記載の式(Ia)の化合物。
【化7】

式中、nは1〜20の整数であり、mは1〜10の整数であり、pは1〜20の整数であり、qは0〜4の整数であり、rは1〜10の整数である。
【請求項7】
次式で表される、請求項3乃至請求項6のいずれか1項記載の式(Ia)の化合物。
【化8】

【請求項8】
医療、特に血管新生に関連した疾患又は病態の、例えばPETによるインビボ診断又はイメージングに使用するための請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の式(I)又は(Ia)の化合物。
【請求項9】
血管新生に関連した疾患又は病態のインビボ診断又はイメージングの方法であって、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の式(I)又は(Ia)の化合物をヒト又は動物の身体に投与し、次いで身体の一部分又は全体の画像、好適にはPET画像を生成する段階を含む方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の式(I)又は(Ia)の化合物、及び薬学的に許容される1種以上の賦形剤を含む放射性医薬組成物。
【請求項11】
請求項3乃至請求項7のいずれか1項記載の式(Ia)の化合物の製造方法であって、式(V)の化合物と適当な式(VI)の化合物との反応を含んでなる方法。
【化9】

(式中、R、R及びRは、式(Ia)の化合物について定義した通りであり、Xはクロロ、ブロモ及びヨードから選択される脱離基、好ましくはクロロである。)
18F−(リンカー)−SH (VI)
(式中、リンカーは式(Ia)の化合物について定義した通りである。)
【請求項12】
請求項11記載の式(V)の化合物。
【請求項13】
請求項3乃至請求項7のいずれか1項記載の式(Ia)の放射性フッ素化ペプチド製造用キットであって、
(i)次の式(VIa)の化合物
L−(リンカー)−SR (VIa)
(式中、Lはp−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート又はメタンスルホネートのような脱離基であり、リンカーは適宜1〜10個のヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜30ヒドロカルビル基であり、Rは水素又はチオール保護基である。)、及び
(ii)請求項11記載の式(V)の活性化ペプチド
を含むキット。
【請求項14】
(i)以下の式(VIb)、(VIc)又は(VId)の化合物
【化10】

(式中、nは1〜20の整数であり、mは1〜10の整数であり、pは1〜20の整数であり、qは0〜4の整数であり、rは1〜10の整数であり、Lはp−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート又はメタンスルホネートのような脱離基であり、L′はヨード、p−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート又はメタンスルホネートのような脱離基であり、qが0のときは、L′はニトロ、又はヨードニウム若しくはアンモニウム塩であってもよく、Rは水素又はチオール保護基である。)、及び
(ii)請求項11記載の式(V)の活性化ペプチド
を含む請求項13記載のキット。

【公表番号】特表2007−523880(P2007−523880A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521646(P2006−521646)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003150
【国際公開番号】WO2005/012335
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】