説明

造粒乾燥機用導電性バッグフィルター

【課題】本発明は縫製加工部からバッグフィルターの外部に粉粒体が漏れ出すことが少なく、かつ静電気等により粉体爆発を引き起こすことのない造粒乾燥機に用いられる導電性濾過布を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は造粒乾燥機に用いられる導電性を有するバッグフィルター3において、縫合加工部分は各部を構成する導電性を有する濾過布を重ね合わせて第1導電糸34で縫合した後、その縫合部分を巻き込むように時計回り又は半時計回りに折り返して前記縫合個所を隠し、隠された第1導電糸34の両側を縫い付けて形成されることを特長とする造粒乾燥機用導電性バッグフィルター3により上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体濾過に用いられる導電性バッグフィルター、特に造粒乾燥機に用いられる導電性バッグフィルターに関するもので、詳しくは粉体爆発のない安全かつ、バッグフィルターのミシン縫合加工部分からの粉体粒子の漏れの少ないバッグフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
調味料、ふりかけなどの顆粒状食品、医薬品用の打錠用顆粒、顆粒状の洗剤などの造粒手段のひとつとして造粒乾燥機が用いられる。一般的に用いられる造粒乾燥機では造粒乾燥機内に任意の粉粒体を投入し、粉粒体層の下方から温風により粉粒体を造粒乾燥機内で対流せしめ、造粒乾燥機内の側壁又は上部から対流している粉粒体にバインダー液を散布し、乾燥させながら造粒乃至造粒物のコーティングをする。前記の温風は造粒乾燥機の下部から導入されて、造粒乾燥機の上部に設けられたバッグフィルターで濾過された後に排気口を通じて大気中に放出される。また、後述の特許文献1のようにバッグフィルターに目詰まりが生じないように、エアシリンダ等の外力によりバッグフィルターを伸縮させることでフィルターに付着した粉粒体を払い落とす方法も提案されている。
【0003】
前記のバッグフィルターとして、非導電性である合成樹脂繊維の織布からなるフィルター基材にステンレス鋼線などの導電線、合成繊維に銀、ニッケルなどの金属やカーボン等を被膜した導電性繊維を格子状に配列させることで、合成樹脂からなる織物に導電性を付与し、排気中の微粉粒子をバッグフィルターで濾過する際に発生、蓄積する静電電荷を外部に逃す技術も知られている。
【0004】
また、バッグフィルターの形状としては、後述の特許文献3のように複数のフィルター部を配してフィルターの表面積を増大させたフィルターも提案されている。先行技術文献としては以下に示す特許文献が見つかった。
【0005】
例えば、特許文献1には最大許容仕込み量が15kg以下のように小型であって、粉粒体の仕込み層高を所定の範囲内で大きくしても、温風による粉粒体の流動状態や乾燥状態と、液体の噴霧による粉粒体への水分の蓄積状態とのバランスを図ることができる流動層造粒装置が提案されている。段落[0013]には造粒容器の上部のフィルターケーシングにはバッグフィルターが内蔵されており、各バッグフィルターにはケーシングの上部に設置されたエアシリンダその他のアクチュエータが連結され、必要に応じ当該アクチュエータによりバッグフィルターを上下方向へ振動させるように構成されている。フィルターケーシングの上部には排気口が設けられ、この排気口には垂直方向に沿う排気ダクトが連通しており、この排気ダクトは途中に排気フィルターが設置された排気パイプへ連通されている、との記載がある。また、段落[0017]には運転中、温風は造粒容器を通過して上方のフィルターケーシングへ導入され、その内部のバッグフィルターで濾過され、ブロアにより排気口、排気ダクト、排気フィルターを有する排気パイプを順に経由して大気中に放出される。さらに、バッグフィルターの濾過能力が低下したときは、上部のエアシリンダを作動させてこれらを払い落とすとの記載がある。
【0006】
また、特許文献2には気体中の粉粒体粒子を捕獲するためのバッグフィルターを備えた粉粒体処理装置において、前記バッグフィルターは織布からなるフィルター基材を備え、前記フィルター基材は帯電防止手段を有し、前記帯電防止手段は合成樹脂繊維に銀被膜を形成した導電性繊維であることを特長とする粉粒体処理装置が提案されている。
【0007】
また、特許文献3には多数の綿状繊維からなる非導電性帯状体間にそれぞれ綿状導電性帯状体を配し、両綿状帯状体をして芯材としての導電性網状基材の表裏両面に摺着せしめた濾布をもって筒状に形成したことを特徴とするバッグフィルターが提案されている。第1図には複数の筒状のバッグフィルターが図示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2002-361066(要約、[0013]、[0017])
【特許文献2】特開2003-1089(請求項1、要約)
【特許文献3】実全昭52-035679(請求項1、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は縫製加工部からバッグフィルターの外部に粉粒体が漏れ出すことが少なく、かつ静電気等により粉体爆発を引き起こすことのない造粒乾燥機に用いられる導電性濾過布を提供することを目的とする。
【0010】
特許文献2に示されるような導電性繊維(導電糸)を非導電性のフィルター基材に配した合成樹脂からなる濾過布(以下、導電性濾過布と称する)を縫い合わせてバッグフィルターを構成する場合には、導電性濾過布同士の縫合面において、格子状に配された導電糸同士を確実に接触させ、粉粒体同士の接触若しくはバッグフィルターと粉粒体の接触により生じる静電電荷を外部に確実に逃すことができるように、電子が外部まで自由に移動できる経路を確保することが必要である。この場合、本願明細書の図2に示されるように縫合箇所において縫合に使用される縫合糸の少なくとも一本を導電糸とすることで、格子状に配された導電糸は確実に導通されるが、複数の導電性濾過布を縫合して複雑な立体形状を有するバッグフィルターを縫製する場合には、当然、縫合個所が多くなるために摩擦、応力等の外力によって導電糸が摩耗したり、切断した縫合箇所が生じやすくなるため、導電糸同士の接触が不十分になり、静電電荷の蓄積、空気中への瞬間的な放電によって粉体爆発が生じるおそれがあった。
【0011】
このためバッグフィルターの形状を単純にして縫合個所を極力少なくして静電気の蓄積を回避するか、例えば図1、2に示されるようなタコ足状の複雑な形状を採用する場合、導電糸が摩耗等で切断した場合に備えて各濾過布の縫合個所を導電糸で橋渡し(ブリッジ)することで、縫い合わされる各濾過布を補助的に導通する必要があった。この場合、導電糸による橋渡しにより蓄積した静電電荷を外部に開放する導通経路は確保されるものの、導電糸で橋渡しすることでその縫い目から微細な粉粒体が漏れ出すおそれがあるという問題があった。特にフィルターの目詰まりを防止するために、エアシリンダ等の外力によりバッグフィルターの足部を伸縮させて粉粒体を払い落とす際には、足部に応力が加わることで縫い目が開き、そこから内部の粉粒体が漏れ出す原因となっていた。この漏れ出した粉粒体は造粒機に付着して故障の原因となったり、工場内に粉粒体が飛散し従業者に防塵マスク等の装着を強いる原因となるなど好ましくないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は造粒乾燥機に用いられる導電性を有するバッグフィルターにおいて、縫合加工部分は各部を構成する導電性を有する濾過布を重ね合わせて導電糸で縫合した後、その縫合部分を巻き込むように時計回り又は半時計回りに折り返して前記縫合個所を隠し、隠された導電糸の両側を縫い付けて形成されることを特長とする造粒乾燥機用導電性バッグフィルターにより上記の課題を解決する。すなわち、ナイロン、ポリエステル等の合成樹脂繊維の織布からなるフィルター基材にステンレス鋼線などの導電線やナイロン、ポリエステル、ガラス繊維などの合成繊維に銀、ニッケルなどの金属やカーボン等を被膜した導電性繊維(以下、導電糸と称する)をフィルター基材上に配列させてなる導電性濾過布を用いて縫製されるバグフィルターにおいて、縫合加工部分を上記の要領で折り返して縫って導電糸を内部に隠すことで、エアシリンダ等の外力でバグフィルターを伸縮させてフィルターの掃除を行う際に生じる摩擦、応力から縫合加工部の導電糸が保護される。これにより、縫合加工部分の導電糸が摩耗により切断するおそれがなくなるため、従来のブリッジによる補助的な導通経路を省略しても長期間にわたって確実にフィルター基材上の導電糸と縫合加工部分の導電糸が電気的に導通して、バッグフィルターにおける静電電荷の蓄積を防ぐことができる。さらに、このように上記の要領で縫合加工部分を形成することによって、縫合加工部分の耐久性が向上するほか、濾過布が縫合加工部分で多重に重なる構造となるためバッグフィルター内部からの粉粒体の漏れを防ぐことができる。ここでフィルター基材上に配される導電糸は縫合加工部分において互いの導電糸が平行にならず、接触できる限り、どのようなパターンで配されてもよいが、格子状のパターンとすれば、縦方向、横方向に導通経路が形成されるので好ましい。
【0013】
導電性を有するバッグフィルターの形状はどのような形状であっても構わないが、例えば天井部と筒状の足部とからなる複数のフィルター部と、前記フィルター部が取り付けられる正面視半円形状の装置取付ベース部と、前記ベース部下方に取り付けられるスカート部とが縫合加工部分により縫い合わされてなる形状とすればよい。このように複数のフィルター部をいわゆるタコ足状に設けることでフィルター部の表面積をより大きくすることができるので、粉体濾過の効率を上昇させることができる。ただこのようなタコ足構造とすることで縫合加工部分が多くなり、導通経路が途切れる可能性が高くなるため従来は図1の如く、各フィルター部をブリッジにより橋渡しすることで、導通経路を確保していたが、本発明を適用することにより、前述のようにブリッジを省略することができるため、このブリッジの最大の問題点であるブリッジの縫い目からの粉粒体の漏れを解消することができる。
【0014】
さらに、筒状の足部及び筒状のスカート部はそれぞれ1枚の導電性濾過布の両端を重ね合わせて筒状にした後、当該重ね合わせた部分を溶着して形成すると、簡便に筒形状を形成することができる。溶着により導電性濾過布を接合すれば、接合部から粉粒体が漏れ出す可能性を最小に抑えることができるので好ましい。また、縫合により濾過布同士を接合した場合、縫合部に多少の厚みが生じるため、どうしても縫合部分の間隙に粉粒体が入り込み易く、バッグフィルターを掃除しても奥まで入り込んだ粉粒体を除去することが難しく、除去しきれなかった粉粒体によりコンタミネーション(異種の残留した粉粒体による汚染)を生じ、製品の品質を害する原因となっていたが、溶着によればコンタミネーションのおそれを未然に防ぐことができる。溶着は溶着部分にホットエアーを吹き付けることによる熱溶着、熱コテによる熱溶着、超音波ミシン等を使用した超音波溶着などの方法を利用する。
【0015】
また、エアシリンダによる清掃の際、応力の加わりやすい上部縫合部の補強が必要な場合には、上記のバッグフィルターの天井部と筒状の足部を縫合した後、この縫合部分に直接外力が加わらないように、当て布でカバーし、当て布ごと前記縫合部の縫合糸の両側を縫いつけることでフィルター部の補強をしてもよい。この当て布を取り付ける際に併せて、造粒乾燥機にバッグフィルターを懸架する際に使用するフック部を取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0016】
縫製加工部からバッグフィルターの外部に粉粒体が漏れ出すことが少なく、かつ静電気等により粉体爆発を引き起こすことのない造粒乾燥機に用いられる導電性濾過布を提供することができる。
【0017】
複雑な形状のバッグフィルターが望まれる場合であっても、本発明を適用すれば、ブリッジを設ける必要がないため、ブリッジの縫い目から粉粒体が外部に漏れ出すおそれを解消することができる。
【0018】
造粒用乾燥機用バッグフィルターの各縫合加工部分を巻き込むようにして縫うことで、濾過布を多重に重ねてミシン掛けすることにより、集塵時・払い落とし時に濾過布に加わる応力に対し、ミシン縫合部の目開きがなく、粉粒体の漏れがない濾過布を提供できる。
【0019】
筒状の足部及び筒状のスカート部を筒状に加工する際に、縫合の代わりに熱溶着法によって加工すれば、コンタミネーションのおそれがないバッグフィルターを簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例につき、従来のバッグフィルターと対比しながら、具体的に説明する。図1は従来の複数のフィルター部を有するバッグフィルターの導通経路を模式的に示した図である。図2は従来のバッグフィルターの断面を模式的に示した図である。図3は本発明の縫合加工部の断面を模式的に示した図である。図4は本発明を適用したバッグフィルターの断面を模式的に示した図である。図5は本発明の足部及びスカート部の縫合断面を模式的に示した図である。図6は従来の溶着法による溶着部の余分な濾過布を示した図である。
【0021】
従来のバッグフィルター1では、まず、フィルター部11の濾過布とベース部14の濾過布を重ね合わせて第1導電糸21で縫合し、その後、図2の如く縫合加工部分において濾過布が4重になるように各濾過布を折り返して最後に導電糸の外側を2本針ステッチ22にて縫合していた。スカート部15とベース部14も同様の方法で縫合されており、いずれの縫合加工部分においても第1導電糸21、第2導電糸23はバッグフィルター1の外側に露出する構造となっていた。また、図2の第1導電糸21と第2導電糸23は図1の第1導通経路24と第2導通経路25とそれぞれ対応しており、フィルター部11とベース部31、ベース部31とスカート部15間の十分な電気的導通を確保するために、ブリッジ20により第1導通経路24と第2導通経路25は接続されていた。既述の通り、このブリッジ20は粉粒体の漏れの原因となっていた。
【0022】
一方、本発明の造粒乾燥機用バグフィルター3ではまず、図4に示されるようにフィルター部32の濾過布とベース部31の濾過布を重ね合わせて第1導電糸34で縫合した後、その縫合部分を巻き込むように半時計回りに折り返して前記縫合個所を隠し、隠された第1導電糸34の両側を縫合糸37で縫い付けて形成される。すなわち、図3に示されるように、縫い合わされる二つの濾過布を便宜上、第1濾過布35、第2濾過布36とした場合、まず第1濾過布35と第2濾過布36を重ね合わせ、第1導電糸34にて第1濾過布35、第2濾過布36を縫い合せる。次に第1濾過布35と第2濾過布36を縫合した導電糸34を回転の中心として時計回り又は反時計回りに折り返して前記縫合個所を隠して、縫合糸37にて第1導電糸34の両側を縫い付けて、縫合加工部分33を形成するのである。本発明の方法で濾過布を縫合すれば、第1導電糸34はフィルターの外部に露出、摩耗する心配がないため、補助的な導通経路となる従来のブリッジ20(図1)を省略することができる。なお、第1濾過布35と第2濾過布36の重ね方についてはどちらが上になっても構わない。また、縫合糸37として導電糸を使用しても構わないが、ナイロン、ポリエステルなどの耐久性のある糸を使用する方が、コストカットの観点から好ましい。
【0023】
本発明を適用するバッグフィルターの形状は直方体、球体、円柱、円錐等どのようなものであっても適用できるが、例えば図4に示されるような天井部39と筒状の足部38からなる複数のフィルター部32と、前記フィルター部32が取り付けられる正面視半円形状の装置取付ベース部31と、前記ベース部31下方に取り付けられるスカート部40とが縫合加工部分により縫い合わされてなる造粒乾燥機用バグフィルター3において特に利用価値が高い。縫合加工部分の内、スカート部40とベース部31を縫合する下部縫合加工部分41、ベース部31及び足部38を縫合する中部縫合加工部分42及び足部38と天井部39を縫合する上部縫合加工部分43として図3に示される縫合加工部分33の構造を採用すれば、本実施例のように複雑な形状を有するバッグフィルターであっても、途中で導通経路が断線する心配がない。
【0024】
また、上部縫合加工部分43の補強が望まれる場合には、図4に示されるように、まず、足部38の濾過布と天井部39の濾過布を導電糸44で縫合して、その後、両端を折り返した当て布45で縫合部を包むようにカバーして、導電糸44の内側を縫合糸46で縫い付けて上部縫合加工部分43を形成すればよい。ここで、造粒乾燥機にバッグフィルターを懸架する際に使用するフック部47を取り付ける場合は、当て布45を縫い付ける前に、フック部47を当て布45と天井部39の濾過布の間に挟み込んで縫い付けるとよい。ここでは導電糸44に代えて縫合糸46と同じ材質の糸で足部38の濾過布及び天井部39の濾過布を縫合してもよい。
【0025】
スカート部40には図4に示されるような、ボタン受入孔48を設けた任意の数の取付布49スカート部の末端に縫い付けると、簡便にバッグフィルター3を図示しない造粒乾燥機に取り付けられるので好ましい。ボタン受入孔48は取付布49の解れが生じないよう、孔の周りをチドリ掛けにて補強する。また、スカート部の端部を折り返して形成されるポケット部50にOリング51を介装しておけば、造粒乾燥機にバッグフィルターを取り付けた際にバッグフィルターと造粒乾燥機の隙間から粉粒体が漏れ出すことを防ぐことができる。なお、スカート部40の濾過布の端部は1回内側に折り返した後、まず、折り返した濾過布が2重になるように縫合糸52で縫い付け、その後、その縫合糸52の両側をスカート部40の濾過布と併せて3重となるように縫合糸53及び縫合糸54で縫い付けるようにすると、濾過布の端部から解れが生じることを防止できるとともに、縫目からの粉粒体の漏れを防ぐことができる。取付布49をスカート部40に取り付ける場合は、縫合糸53及び縫合糸54でポケット部50を閉じてしまう前に取付布49をポケット部50に差込み、縫合糸69で取付布49の下部を固定してから、縫合糸53及び縫合糸54で濾過布が4重(外側から折り返したスカート部40の端部が2枚、取付布49が1枚、スカート部40が1枚)となるように縫合してポケット部50を閉じるようにする。
【0026】
本発明のバッグフィルターの足部38及びスカート部40を筒状の形態に縫製するにはは図5に示されるように、濾過布の一端(第1端部55)と他端(第2端部56)を重ね合わせて巻き込み三本針57で縫合すると縫合部分からの粉粒体の漏れが少なく好ましい。また、図示は省略するが第1端部55と第2端部56を端部から数センチ重なるようにして、重なった部分をホットエアー、熱コテ等を使用して熱溶着したり、超音波ミシン等を使用して超音波溶着すれば、簡便に第1端部55と第2端部56を接合できることに加えて、間隙が全く形成されないため従来のように縫合部分の奥のほうに粉粒体が残留し、コンタミネーションを生じるおそれがなく好ましい。なお、溶着により端部を接合する場合には、溶着部分58の両側に溶着されずに残る余分な濾過布59(図6)が生じないようにすることで、コンタミネーションのおそれを一層低減することができる。具体的にはホットエアーを使用する場合は熱風ノズル幅に対し布の重ね代を同等以下にして、押さえローラーで布の端まで確実に押さえられるようにすればよく、熱コテを使用する場合は熱コテの幅に対し布の重ね代が同等以下となるよう布の端を調整するような治具を使用するとよい。
【0027】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0028】
[実施例1]
バブルポイント法により、導電性濾過布(ブリッジ部のないもの)のミシン目の最大孔径を測定した。試薬はエタノールを使用し、温度は25℃にて測定を行った。測定結果は図7にまとめたとおりである。
【0029】
[比較例1]
ミシン目の最大孔径の測定に供するサンプルとして、ブリッジ部を有する導電性濾過布を使用した他は、実施例2と同様の条件にてミシン目の最大孔径の測定を行った。測定結果は図7にまとめたとおりである。
【0030】
[実施例2]
従来のバッグフィルターに施されたブリッジ部からの粉粒体の漏れと本発明のバッグフィルターの導電性濾過布からの粉粒体の漏れを評価するために、図8に示す装置を用いて粉粒体の漏れを測定した。まず、ポリ塩化ビニル製のパイプを用いて作成したフィルターホルダー61に図のように上部メッシュ62と下部メッシュ63を介装して、該上部メッシュ62と下部メッシュ63の間にフィルターホルダー61の断面(濾過面積19.6cm,直径50mm)に合わせてカットしたテスト濾過布64をセットする。セットされたメッシュはダマになった粉粒体を砕く役割を果たす。そして、フィルターホルダー61の下流には配管を介して、ガラス繊維濾紙65、流量計66をつなぎ、流量計66により吸引量を測定しながら、真空ポンプ67で吸引できるようにしてある。フィルターホルダー61中には2個の払落用鉄球68が備えられており、テスト濾過布64表面に残留した粉粒体を払い落して清掃する際に使用される。テスト濾過布64によりフィルターされずに漏れ出した粉粒体はガラス繊維濾紙65にトラップされ、ガラス繊維濾紙65の重量を測定することにより漏れ出した粉粒体量を算出することができる。測定条件、操作は以下の通りである。
<測定条件>
1.使用粉粒体:JIS標準粉体 10種フライアッシュ(粒径:4.8〜5.7μm)
2.テスト濾過布:ポリエステルのフィルター基材に導電糸を配した導電性濾過布を直径
50mmの円にカットしたもの。
<操作>
1.風速2m/minで10分間吸引し、ガラス繊維濾紙の水分を安定させる。
2.漏れ測定用ガラス繊維濾紙の重量を測定する。
3.フライアッシュ2gをフィルターホルダーの上部メッシュ上に入れる。
4.風速2m/minで吸引しながら、上部を軽く叩きダストを濾布上に落とす。
5.5分間吸引したのち、吸引停止を停止する。
6.ガラス繊維濾紙の重量を測定する。
7.上部メッシュを外す。
8.フィルターホルダーを逆さまにし、払落用鉄球でテスト濾布上のダストを払い落す。
9.3〜8の操作を3回繰り返す。
測定結果は表1及び図9にまとめたとおりである。
【0031】
[比較例2]
使用するテスト濾過布として以下のものを使用した他は実施例1と同様の条件で測定を行った。
テスト濾過布:ポリエステルのフィルター基材に導電糸を配した導電性濾過布を直径50
mmの円にカットし、ブリッジ部に使用する導電糸と同様の糸(20番手)にて3列ミシ
ンがけしたものを使用する。各ステッチの間隔は1cm。針穴の合計は35個とした。
測定結果は表1及び図9にまとめたとおりである。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例1及び比較例1の結果から、ブリッジ部のミシン目は導電糸のミシン目よりも径が大きく粉粒体の漏れの原因となっていることが示唆された。実施例2及び比較例2により実際に粉粒体の漏れを測定したところ、ブリッジ部を有する導電性濾過布では粉粒体の漏れがあったが、ブリッジ部のない導電性濾過布では粉粒体の漏れがほとんどないことが明らかとなった。
【0034】
このように本発明によれば、従来必須であったブリッヂ部を省略することが可能となり粉粒体の漏れが少なく、かつ導電糸の摩耗が生じにくい、耐久性に優れた導電性濾過布を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来の複数のフィルター部を有するバッグフィルターの導通経路を模式的に示した図である。
【図2】従来のバッグフィルターの断面を模式的に示した図である。
【図3】本発明の縫合加工部の断面を模式的に示した図である。
【図4】本発明を適用したバッグフィルターの断面を模式的に示した図である。
【図5】本発明の足部及びスカート部の縫合断面を模式的に示した図である。
【図6】従来の溶着法による溶着部の余分な濾過布を示した図である。
【図7】実施例1及び比較例1でバブルポイント法により測定した導電糸及びブリッジ部のミシン目の最大径の測定結果を示した写真である。
【図8】実施例にて使用した粉粒体の漏れを測定するための装置を模式的に示した図である。
【図9】実施例2及び比較例2の粉粒体の漏れを測定した結果をまとめたグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1 バッグフィルター(従来例)
11 フィルター部
12 天井部
13 足部
14 ベース部
15 スカート部
20 ブリッジ
21 第1導電糸
22 2本針ステッチ
23 第2導電糸
24 第1導通経路
25 第2導通経路
3 バッグフィルター(本発明)
31 ベース部
32 フィルター部
33 縫合加工部分
34 第1導電糸
35 第1濾過布
36 第2濾過布
37 縫合糸
38 足部
39 天井部
40 スカート部
41 下部縫合加工部分
42 中部縫合加工部分
43 上部縫合加工部分
44 導電糸
45 当て布
46 縫合糸
47 フック部
48 ボタン受入孔
49 取付布
50 ポケット部
51 Oリング
52 縫合糸
53 縫合糸
54 縫合糸
55 第1端部
56 第2端部
57 三本針
58 溶着部分
59 余分な濾過布
61 フィルターホルダー
62 上部メッシュ
63 下部メッシュ
64 テスト濾過布
65 ガラス繊維濾紙
66 流量計
67 真空ポンプ
68 払落用鉄球
69 縫合糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒乾燥機に用いられる導電性を有するバッグフィルターにおいて、縫合加工部分は各部を構成する導電性を有する濾過布を重ね合わせて導電糸で縫合した後、その縫合部分を巻き込むように時計回り又は半時計回りに折り返して前記縫合個所を隠し、隠された導電糸の両側を縫い付けて形成されることを特長とする造粒乾燥機用導電性バッグフィルター。
【請求項2】
導電性を有するバッグフィルターは天井部と筒状の足部からなる複数のフィルター部と、前記フィルター部が取り付けられる正面視半円形状の装置取付ベース部と、前記ベース部下方に取り付けられる筒状のスカート部とが縫合加工部分により縫い合わされてなる請求項1記載の造粒乾燥機用導電性バッグフィルター。
【請求項3】
筒状の足部及び筒状のスカート部は1枚の導電性濾過布の両端を重ね合わせて筒状にした後、当該重ね合わせた部分を溶着して形成される請求項2記載の造粒乾燥機用導電性バッグフィルター。
【請求項4】
天井部と筒状の足部を縫合した後、この縫合部分に直接外力が加わらないように、当て布でカバーし、当て布ごと前記縫合部の縫合糸の両側を縫いつけた請求項2記載の造粒乾燥機用導電性バッグフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22976(P2010−22976A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189875(P2008−189875)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(592062552)中尾フイルター工業株式会社 (6)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】