説明

造粒物の締め固め方法

【課題】効率的かつ密実に造粒物を締め固めることを可能とした造粒物の締め固め方法を提供する。
【解決手段】粒状ベントナイト等の造粒物2を撒き出して造粒物層1を形成する撒き出し工程と、振動プレートにより造粒物層1に振動を加えることで造粒物層1の粒状密度を増加させる密度増加工程と、振動ローラーもしくは振動プレートにより造粒物層1を転圧することで造粒物2を圧縮する圧縮工程とを備える造粒物の締め固め方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的な造粒物の締め固め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場等では、粒状ベントナイトや粒状改良土等の造粒物により遮水層(ゾーン)を形成する場合がある。
また、造粒物を利用した盛土工や埋め戻し工においては、雨水等の浸透を防止するために、密実に締め固める必要がある。
【0003】
このような遮水層(ゾーン)等の構築は、平面状に撒き出された造粒物を締め固め機で転圧することにより行う。
【0004】
例えば、特許文献1には、ベントナイトと水とを含有する止水材料を、対象領域に平面状に吹き付けた後、転圧ローラー等により転圧することにより、密実な遮水層(ゾーン)を構築する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−35885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
層状に撒き出された粒状ベントナイトや粒状改良土等の造粒物101(図5の(a)参照)を過大な起振力で転圧すると、変形し易い造粒物(例えば、粒状ベントナイト)の場合には表面の造粒物101のみが圧縮されてしまい、造粒物101同士の空隙102の空気が排除されずに残存してしまい、残存した空気が抵抗力となって締固め転圧回数(エネルギー)が過大になる場合がある(図5の(b)および(c)参照)。
【0007】
このような観点から、本発明は、締固めの初期の段階で効率的かつ高密度に造粒物を締め固めることにより、残存空気を可能な限り排除して効率的に所定の密度を達成することを可能とした造粒物の締め固め方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の造粒物の締め固め方法は、造粒物を撒き出して造粒物層を形成する撒き出し工程と、前記造粒物層の粒状密度を増加させる密度増加工程と、前記造粒物を圧縮する圧縮工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
かかる造粒物の締め固め方法によれば、撒き出された造粒物を圧縮する前に、造粒物層の密度を増加(空隙を縮小)させて、残留する空気分を排除するため、造粒物を効率的かつ密実に締め固めることができる。
【0010】
前記密度増加工程において、加速度応答値による粒状密度の測定を行えば、密度増加工程から圧縮工程に切り替える時期を適切に判断することが可能となる。
【0011】
前記造粒物は、粒状ベントナイトもしくは粒状改良材であってもよい。
前記密度増加工程では、板状振動体により前記造粒物層に振動を加えることにより前記造粒物層の粒状密度を増加させ、前記圧縮工程では、振動ローラーもしくは振動プレートで転圧することにより前記造粒物を圧縮してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の造粒物の締め固め方法によれば、効率的にかつ密実に造粒物を締め固めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)〜(d)は本発明の実施の形態に係る造粒物の締め固め方法の各施工段階における造粒物層の空隙の量を模式的に表した断面図である。
【図2】加速度応答値検知システムを示すブロック図である。
【図3】(a)は粒状ベントナイトの振動周波数と湿潤密度との関係を示すグラフ、(b)は粒状ベントナイトの振動周波数と湿潤密度増加量を示すグラフである。
【図4】(a)は砂利の振動周波数と湿潤密度との関係を示すグラフ、(b)は砂の振動周波数と湿潤密度との関係を示すグラフである。
【図5】(a)〜(c)は従来の造粒物の締め固め方法の各施工段階における造粒物層の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る造粒物の締め固め方法は、撒き出し工程と、密度増加工程と、圧縮工程とを備えている。
本実施形態では、造粒物の締め固め方法により放射性廃棄物処分場における遮水層(ゾーン)を形成する場合について説明する。
【0015】
撒き出し工程は、造粒物を撒き出して造粒物層を形成する工程である。
本実施形態では、造粒物として、原鉱石や他の鉱物を含有する最大粒径が10mmの比較的軟質な粒状体である粒状ベントナイトを使用する。なお、造粒物の材質は限定させるものではなく、例えば粒状改良土であってもよい。
【0016】
撒き出し工程において形成される造粒物層の層厚は限定されるものではないが、本実施形態では、20cm程度の厚みで撒き出す。
【0017】
撒き出し直後の造粒物層は、図1の(a)に示すように、造粒物2同士の間に空隙3が形成されている。なお、図1では、空隙3の大小を表現するために、造粒物2をあえて点在させているが、実際の造粒物2同士は互いに接している。
【0018】
密度増加工程は、造粒物層1の粒状密度を増加させる工程である。
【0019】
本実施形態の密度増加工程では、造粒物層1に振動を加えることで、造粒物層1の粒状密度を増加させる。造粒物層1に振動を加えると、図1の(b)に示すように、造粒物層1内の空気が排出され、空隙3が縮小する。
空隙3が縮小すると、造粒物層1の層厚が小さくなる(例えば15cm程度)。
【0020】
本実施形態では、振動プレートを備えたプレートコンパクター(図示省略)により造粒物層1に対して振動を加えるものとする。
【0021】
本実施形態のプレートコンパクターは、造粒物層1に対して面で振動を加えるものであって、振動系部品(プーリー、シム、偏心錘等)が改良されていることにより、粒状密度の増加に最適な振動周波数(以下、「最適振動周波数F」という)と比較的小さな振幅および偏心モーメントにより造粒物層1に対して振動を加える。
【0022】
プレートコンパクターにより最適振動周波数F、振幅および偏心モーメントにより造粒物層1に振動を付与することで、造粒物2を潰すことなく粒状密度を増加させることを可能としている。
なお、密度増加工程において使用する機械は、プレートコンパクターに限定されるものではない。
【0023】
密度増加工程における最適振動周波数F、振幅および偏心モーメントは、使用する造粒物2の強度、粒径等に応じて適宜設定する。なお、使用する造粒物2を利用して試験施工や室内試験を実施して、最適振動周波数F、振幅および偏心モーメントを設定してもよい。
本実施形態の最適振動周波数Fは、造粒物層1を基準時間(例えば30秒)加振したときに湿潤密度が最大となる振動周波数、すなわち、単位時間当たりの湿潤密度増加量が最大となる振動周波数である(図3参照)。
【0024】
本実施形態のプレートコンパクターは、加速度センサー41を備えており、プレートコンパクターによる加振と並行して、加速度センサー41により加速度応答値を測定する。
【0025】
加速度応答値を測定することで、加速度応答値により粒状密度の増加(状態変化)をリアルタイムに検知することができるため、圧縮工程への変更時期の判断を適切に行うことが可能となる。
【0026】
加速度応答値を測定する加速度応答値検知システム4の構成は限定されるものではないが、本実施形態の加速度応答検知システム4は、図2に示すように、プレートコンパクターに設置された加速度センサー41、増幅器42、変換器43、CPU44、データ収録装置45、検知表示手段46などを備えている。
【0027】
圧縮工程は、造粒物2を圧縮する工程である。
造粒物2の圧縮は、振動ローラー(図示省略)により造粒物層1を転圧することにより行う。なお、造粒物2を圧縮する機械は、振動ローラーに限定されるものではない。
【0028】
本実施形態では、加速度応答値検知システム4により、粒状密度が十分に増加したことが検知された時点で、密度増加工程から圧縮工程に切り替える。
【0029】
振動ローラーにより圧縮されることで、図1の(c)および(d)に示すように、造粒物2が潰され(破壊され)て、造粒物層1が密実(塊状)に締め固められる。
圧縮工程では、造粒物層1に対して、密度増加工程における加振時よりも大きな振幅、大きな偏心モーメント、最適振動周波数Fと同等以下の振動周波数により圧縮を行う。
【0030】
振動ローラーは、造粒物層1に対して、線状に集中荷重を加えることで、造粒物2を圧縮する。
造粒物層1は、締め固められ、圧縮されることで、さらに層厚が小さくなる(例えば10cm程度)。
【0031】
以上、本実施形態の造粒物の締め固め方法によれば、密度増加工程において、造粒物層の空気が排出されているため、圧縮工程において残留空気の抵抗が少なく、効率的かつ密実に締め固めることができる。
【0032】
また、加速度応答値による粒状密度の測定を行うことで、密度増加工程から圧縮工程に切り替える時期を適切に判断し、より効率的かつより高品質に施工を行うことができる。
【0033】
したがって、本実施形態の造粒物の締め固め方法によれば、効率的に造粒物層を締め固めることで、放射性廃棄物処分場の遮水層(ゾーン)を簡易かつ高品質に構築することができる。
【0034】
以下、本実施形態の造粒物(最大粒径10mmの粒状ベントナイト)について行った、最適振動周波数Fの測定実験結果について説明する。
【0035】
本実験では、粒状ベントナイトに対して、振動周波数fを5,15,25,30,35,40,42.5,45,50,60,80Hzとして30秒間振動を加えた場合の湿潤密度γと湿潤密度増加量Δγを測定した。実験結果を図3の(a)および(b)に示す。
【0036】
図3の(a)および(b)に示すように、振動周波数fが小さいうちは、振動周波数fと比例して湿潤密度γと湿潤密度増加量Δγが増加するが、振動周波数fが40Hzを超えると、湿潤密度γと湿潤密度増加量Δγが、振動周波数fと反比例する結果となった。すなわち、図3のケースにおいて、最適振動周波数Fは、40Hzである。
したがって、粒状ベントナイトに対して最適振動周波数Fにより振動を加えれば、湿潤密度γを効果的に増加させることが可能であることが実証された。
【0037】
なお、最適振動周波数Fは、本願発明者が発見したものであり、砂利や砂にはみられない性質である。
比較例として、砂利および山砂に対して、振動周波数fを10,20,30,40,50,60,70Hzとして30秒間振動を加えた場合の湿潤密度γを測定した。砂利実験結果を図4の(a)、山砂の実験結果を図4の(b)に示す。
【0038】
図4の(a)および(b)に示すように、砂利や山砂に振動を加えた場合には、図3のような振動周波数のピークが現れないことがわかる。
このように、最適振動周波数Fは、造粒物の固有のパラメータであり、比較的軟質な造粒物を締め固める場合に効果的である。
【0039】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0040】
前記実施形態では、密度増加工程では振動プレート(プレートコンパクター)を使用し、圧縮工程では振動ローラーを使用する場合について説明したが、各工程において使用する機械は限定されるものではない。例えば、可変型の振動系統部品(プーリー、シム、偏心錘等)を備えたプレートコンパクターにより、効果的なセッティングパターンに変更することで、1つの機械により密度増加工程と圧縮工程との両方を実施してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 造粒物層
2 造粒物
3 空隙
4 加速度応答値検知システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒物を撒き出して造粒物層を形成する撒き出し工程と、
前記造粒物層の粒状密度を増加させる密度増加工程と、
前記造粒物を圧縮する圧縮工程と、を備えることを特徴とする、造粒物の締め固め方法。
【請求項2】
前記密度増加工程において、加速度応答値により非破壊的に粒状密度の測定を行うことを特徴とする、請求項1に記載の造粒物の締め固め方法。
【請求項3】
前記造粒物が、粒状ベントナイトであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の造粒物の締め固め方法。
【請求項4】
前記密度増加工程では、振動プレートにより前記造粒物層に振動を加えることにより、前記造粒物層の粒状密度を増加させ、
前記圧縮工程では、振動ローラーもしくは振動プレートにより転圧することにより、前記造粒物を圧縮することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の造粒物の締め固め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−76221(P2013−76221A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215243(P2011−215243)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】