説明

連動システム、及び、連動システムにおける動作情報の表示方法

【課題】連動装置の動作が顧客により指示された連動図表どおりに行われるか否かを容易に判別できる連動システムを提供する。
【解決手段】連動システム1は、転てつ器11や信号機9の動作を制御する連動装置3と、連動装置に関する情報を表示するモニタを有する表示制御装置5と、連動装置と接続され、作成基準となる連動図及び連動表を含む連動図表の情報を連動装置の動作を規定する動作用データに変換する変換装置7とを備える。そして、モニタに表示される動作用データは連動表の形式で示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連動システム、及び、連動システムにおける動作情報の表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の運行においては、列車を安全に進行させるために、連動システムが設けられている。連動システムは、転てつ器を列車の進行方向に転換し、信号機と転てつ器との間や、信号機相互間で所定の鎖錠を行う。また、軌道回路による列車位置検知条件に応じて信号機と転てつ器を鎖錠したり、信号機の現示を進路に応じて制御したりする。連動システムは、主に機器室に設置される連動装置と、信号扱所などに設置されるモニタやキーボードなどの表示制御装置とを備えている。そして、かかる連動システムが転てつ器、信号機、軌道回路などに接続されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような連動システムの動作は、顧客から提示されたいわゆる連動図表に応じて決定される。図3に、連動図表の一例を示す。連動図表は、主に連動図と連動表で構成されている。連動図は、図3の上部に示されるように、停車場の構内配線や信号機、転てつ器、軌道回路等の情報を記号化して表現したものである。連動表は、図3の下部に示されるように、鎖錠条件や信号制御を表形式に記述したものである。
【0004】
現在、連動システムの動作設計者は、顧客から連動図表が提示されると、所定の連動図表入力ツールに連動図表の情報を入力し、連動装置の動作を規定する動作用データに変換する。変換された動作用データは、連動装置の制御ROM内に書き込まれると共に、表示制御装置にも入力される。そして、連動装置はかかる動作用データに基づいて制御動作を行うと共に、表示制御装置において制御動作の内容が表示され運行管理者に提供される。
【0005】
図4に、現在、動作用データに基づいた表示として、表示制御装置のモニタに表示される内容を例示する。図4は、転てつ器の定位の情報を表示する画面であり、この例では、21番の転てつ器が定位ではなく、22番の転てつ器が定位にあることを示している。さらに、実際には、転てつ器に関してさらに、反位か否かの情報が別な一画面の表示として示され、転てつ器の鎖錠情報がさらに別な一画面の表示として示される。また、転てつ器以外の例えば、信号機の情報なども同様に、一つの状態につき一画面の表示として表示制御装置のモニタに表示される。
【特許文献1】特開平6−321107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまでの連動システムにおいては、図4に示されるような、表示制御装置における制御動作に適したメモリ状態がそのまま表示制御装置のモニタに表示されていた。よって、顧客や運行管理者が、顧客により指示された連動図表どおりに制御が行われているかを確認したり、今現在の状態が連動図表に対してどのような関係の状態にあるかを確認したりすることが非常に困難であった。実際には、色々な画面を組み合わせて読み取ったり、他の画面への検索や記憶などが必要であり、熟達した知識や判断力が要求されるものであった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、連動装置の動作が顧客により指示された連動図表どおりに行われるか否かを容易に判別できる連動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る連動システムは、転てつ器や信号機の動作を制御する連動装置と、前記連動装置に関する情報を表示するモニタと、前記連動装置と接続され、作成基準となる連動図及び連動表を含む連動図表の情報を連動装置の動作を規定する動作用データに変換する変換装置とを備え、前記モニタに表示される前記動作用データは前記連動表の形式であることを特徴とする。
【0009】
好適には、前記モニタに連動表の形式で表示される情報は、マークの形状、縁取りや塗りつぶしの有無、色分けの少なくとも一つによって動作情報を表す。
【0010】
また、同目的を達成するための本発明に係る連動システムの動作情報の表示方法は、作成基準となる連動図及び連動表を含む連動図表の情報を取り込む工程と、取り込んだ連動図表の情報を、連動装置の動作を規定する動作用データに変換する工程と、前記動作用データを前記連動表の形式で表示する工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、連動図表に極めて近い形式で連動に関する動作情報が表示されるので、複数画面の組み合わせや検索・記憶などを強いられることがなく、また、熟達した知識や判断力が要求されることもなく、連動装置の動作が基準となる連動図表どおりに行われるか否かを容易に判別できる。
【0012】
なお、本発明の他の特徴及びそれによる作用効果は、添付図面を参照し、実施の形態によって更に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る連動システムの実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0014】
図1に示されるように、連動システム1は、主に、連動装置3と、表示制御装置5と、変換装置7とを備えている。通常、連動装置3は機器室に設置されており、表示制御装置5は信号扱所に設置されている。表示制御装置5及び変換装置7は、連動装置3に情報伝達可能な態様で接続されている。表示制御装置5は、情報の表示手段と情報の入力手段を備えている。本実施の形態では表示制御装置5は、通常のパーソナルコンピュータより構成されており、表示手段としてのモニタ及び入力手段としてのキーボードやマウスを有している。
【0015】
また、連動システム1にはこのほか、複数の信号機9、転てつ器11、軌道回路13などが情報伝達可能な態様で接続されている。これら信号機9、転てつ器11、軌道回路13は、それぞれ対応する現場に設置されている。
【0016】
このように構成された連動システム1においては、まず、システム設計者は設計依頼者である顧客から、作成基準となる連動図表を入手する。かかる連動図表は、前述した図3に示したものと同じであり、連動図と連動表で構成されている。連動図は、停車場の構内配線や信号機、転てつ器、軌道回路等の情報を記号化して表現したものであり、連動表は、鎖錠条件や信号制御を表形式に記述したものである。なお、図3の連動図表はあくまでも例示であり、本発明が図示された配線や動作だけに限定されるものではない。また、連動図表の表示態様は周知の態様であり、その詳細な説明は省略する。
【0017】
システム設計者は、作成基準となる連動図表を入手したならば、その情報を変換装置7内に入力する。変換装置7においては、入力された情報に基づいて、表示制御装置5の動作を規定する動作用データへの変換を行う。変換された動作用データは、連動装置3に送られる。そして、連動装置3は、この動作用データに基づいて、例えば、転てつ器11を所定状態に転換したり、信号機9と転てつ器11との間や、信号機11相互間で所定の鎖錠を行う。さらに、軌道回路13による列車位置検知条件に応じて信号機9と転てつ器11を鎖錠したり、信号機9の現示を進路に応じて制御したりする。
【0018】
また、表示制御装置5においては、連動装置3の動作情報、すなわち、信号機9や転てつ器11などの制御対象の動作情報がリアルタイムで入力されている。表示制御装置5は、かかる連動装置3の動作情報を、顧客から提示された連動図表の連動表の形成で、リアルタイムにモニタに表示する。図2にその連動表の形式の表示例を示す。この表示内容は、表示情報が図3の連動図表の内容である場合に対応させている。
【0019】
図2において、まず、名称欄には、進路の種類、転てつ器11、信号機9などの種類が表示される。該当進路において支障が生じた場合には、その名称表示部分が直感的に警告として受け入れやすい色、赤色、オレンジ色、紫色などで表示される。具体的には、赤色等の塗りつぶし枠又は白抜き枠で文字を囲んだり、文字自体を赤色等で表示させたりする。さらに、名称欄には、進路の始点及び着点の名称、着点軌道名、転てつ器11等が表示される。
【0020】
次に、番号欄には、転てつ器11や信号機9などに定められた固有番号と、「設定中」、「照査済」、「接近」、「鎖錠完了」、「現示中」、「進入記憶」、「時素解錠」、「反位保持」、「保守用車」及び「CCR」などの項目が表示される。なお、本発明は、かかる項目が全て表示されていることには限定されず、固有番号に対して少なくとも一つの項目が表示されていることが肝要である。
【0021】
表示項目の意味について説明すると、まず、「設定中」は、進路が設定されているか否かを示す。「照査済」は、転てつ器の開通方向などが確認されたか否かを示す。「鎖錠完了」は、接近鎖錠、進路鎖錠、転てつ器鎖錠などが鎖錠完了したか否かを示す。「現示中」は、信号機が進行現示出力されているか否かを示す。「進入記憶」は、進行現示により進路の内側に入ったか否かを示す。「時素解錠」は、接近時素解錠中か否かを示す。「反位保持」は、進路が反位保持で設定されたか否かを示す。「保守用車」は、進路が保守用車進路で設定されたか否かを示す。最後に、「CCR」は、照査等のてこが鎖錠完了したか否かを示している。
【0022】
これら「設定中」、「照査済」、「接近」、「鎖錠完了」、「現示中」、「進入記憶」、「時素解錠」、「反位保持」、「保守用車」及び「CCR」の項目については、黒塗り、黄色塗り、シアン色塗りなどの彩色を施した菱形などのマークを用いることで各項目の情報を提供する。例えば、「設定中」では、進路設定中は黄色菱形、それ以外の場合は黒色菱形を表示させる。「照査済」では、転てつ器の開通方向などが確認できた場合には黄色菱形、確認できない場合には黒色菱形を表示させる。「鎖錠完了」では、鎖錠が完了した場合には黄色菱形、完了していない場合には黒色菱形を表示させる。「現示中」では、信号機進行現示出力中の場合は黄色菱形、それ以外の場合は黒色菱形を表示させる。「進入記憶」では、進行現示により進路の内側に入った場合には黄色菱形、それ以外の場合は黒色菱形を表示させる。「時素解錠」では、接近時素解錠中の場合は黄色菱形、それ以外の場合は黒色菱形を表示させる。「反位保持」では、進路が反位保持で設定された場合はシアン色菱形、それ以外の場合は黒色菱形を表示させる。「保守用車」では、進路が保守用車進路で設定された場合はシアン色菱形、それ以外の場合は黒色菱形を表示させる。最後に、「CCR」では、照査等のてこが鎖錠完了した場合にはシアン色菱形、それ以外の場合は黒色菱形を表示させる。なお、上記の例は、利用者にとって感覚的に受け入れやすい例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、マークの色や形状は、適宜、改変しうる。
【0023】
次に、鎖錠欄には、転てつ器11の定位・反位、鎖錠か否か、関連進路、軌道回路、外部条件などの情報が必要に応じて表示されている。図2に拡大して示されるように、下段(番号1RBに対応)の21番の転てつ器に関しては、数字「21」はオレンジ色で塗りつぶした四角形のマーク中に表記されており、さらに、そのオレンジ色の四角形マークの周囲はシアン色の四角枠で縁取りされている。また、シアン色の四角枠の近傍には、付記アンダーラインが表記されている。下段の22番の転てつ器に関しては、数字「22」は緑色で塗りつぶした四角形のマーク中に表記されており、さらに、その緑色の四角形マークの周囲はシアン色の四角枠で縁取りされている。また、上段(番号1RAに対応)の21番の転てつ器に関しては、数字「21」は欄の背景色の上に表記されており、その周囲はシアン色の四角枠で縁取りされている。
【0024】
上述の表記の意味は、まず、シアン色の四角枠で縁取りされている状態は鎖錠されている状態を意味する。さらに、数字の周囲がオレンジ色で塗りつぶされている状態は反位に開通すべき転てつ器がそのとおり反位に開通している状態にあることを意味し、数字の周囲が緑色で塗りつぶされている状態は定位に開通すべき転てつ器がそのとおり定位に開通している状態にあることを意味する。また、転てつ器が上記オレンジ色で塗りつぶされた状態及び緑色で塗りつぶされた状態の何れの状態でもない場合には、数字の周囲を画面の背景色で表示しておく。さらに、数字の側方に表示されている付記アンダーラインは、反位転てつ器であることを意味するものである。なお、鎖錠欄の上述した表記態様は、関係者にとって状態を認識する上で直感的に受け入れやすい色や形態ではあるものの、例示であり、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0025】
次に、進路制御又はてっ査鎖錠の欄には、転てつ器11、軌道回路13、外部条件、進路などの情報を表示し、必要に応じて、鎖錠欄のように所定形状のマークや縁取りを用いたり、色分け表示を行う。さらに、進路区分鎖錠欄には軌道回路13や進路の情報を表示し、接近(鎖錠)または保留(鎖錠)の欄には、転てつ器11、軌道回路13、外部条件、進路、時素などの情報を表示する。これらの情報も必要に応じて、所定形状のマークや縁取り、色文字を用いたりして、色分け表示を行う。
【0026】
以上のように、本実施の形態に係る連動システム1によれば、連動図表に極めて近い形式で連動に関する動作情報が表示される。よって、従来のように複数画面の組み合わせや検索・記憶などを強いられることがなく、また、熟達した知識や判断力が要求されることもなく、連動装置の動作が顧客により指示された連動図表どおりに行われているか否かを容易に判別できる。すなわち、顧客はまさに自身が提示した連動図表の上で動作を確認することができ、連動図表に慣れた関係者にとって情報を簡単かつ容易に得ることができる。このことは、現在の状況を迅速に検知することができるだけでなく、問題発生時の原因究明時間を大幅に短縮できることにも寄与する。
【0027】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0028】
まず、本発明における表示制御装置の表示は、図2に示した具体例に限定されるものではなく、背景マークの形状、縁取りや塗りつぶしの有無、さらにはそれらの色分けや色文字を使用するなどの態様を適宜用いることができる。
【0029】
また、図1において点線で示したように、変換装置7で変換された動作用データを直接、表示制御装置5に入力し、連動装置3のリアルタイムの動作情報とは独立して、設計した連動動作を確認的・試験的に再現させるようにすることもできる。このような態様であれば、利用者は、一つの連動システムにおいて、連動装置3の動作情報に関しリアルタイム表示と再現表示とをその都度要望に応じて選択的に表示させることができ、分析上、非常に利用価値の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る連動システムの構成を示す図である。
【図2】連動システムの表示制御装置に表示される連動表形式の情報を示す図である。
【図3】連動図表の一例を示す図である。
【図4】従来の連動システムの表示制御装置に表示されるメモリ形式の情報を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 連動システム
3 連動装置
5 表示制御装置
7 変換装置
9 信号機
11 転てつ器
13 軌道回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
転てつ器や信号機の動作を制御する連動装置と、
前記連動装置に関する情報を表示するモニタと、
前記連動装置と接続され、作成基準となる連動図及び連動表を含む連動図表の情報を連動装置の動作を規定する動作用データに変換する変換装置とを備え、
前記モニタに表示される前記動作用データは前記連動表の形式である、
ことを特徴とする連動システム。
【請求項2】
前記モニタに連動表の形式で表示される情報は、マークの形状、縁取りや塗りつぶしの有無、色分けの少なくとも一つによって動作情報を表すことを特徴とする請求項1に記載の連動システム。
【請求項3】
作成基準となる連動図及び連動表を含む連動図表の情報を取り込む工程と、
取り込んだ連動図表の情報を、連動装置の動作を規定する動作用データに変換する工程と、
前記動作用データを前記連動表の形式で表示する工程と
を備える連動システムにおける動作情報の表示方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−213220(P2006−213220A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29164(P2005−29164)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】